説明

折畳み洗髪器

【課題】補助者の洗髪作業を行い易くする。
【解決手段】気体の出し入れによって膨脹収縮する気胴壁1と、該気胴壁1と連続して立設される頸部保持壁2と、これら気胴壁1及び頸部保持壁2の端部に亘って張設される底材3とからボウル状の洗髪流し部4が形成される折畳み洗髪器であって、前記気胴壁1の少なくとも前記頸部保持壁2と対向する先端壁部1dに、該気胴壁1の前記底材3側から反対側端部に向かって徐々に前記頸部保持壁2と離れるように傾斜する傾斜面部1fを形成することにより、先端壁部1dの傾斜面部1fに沿って補助者が腕を差し込むと、手首の関節を無理に曲げなくても、掌が自然に使用者の側頭部や後頭部と対向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば寝たきりの人や病人など、自分で洗髪できない使用者に対し、使用者が寝たままの状態で補助者が洗髪を行う折畳み洗髪器に関する。
詳しくは、空気の注入により膨脹し、内部空気の排出により収縮する折畳み可能な洗髪器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の折畳み洗髪器として、気密性を有する柔軟シートにて膨脹,収縮可能に形成される側周壁と、該側周壁の下端全域にわたって張設される底布とでボウル状かつ平面馬蹄形状の洗髪流し部が形成され、該流し部と排水管を介して接続される汚水収容部が設けられ、前記側周壁の一部を頸部保持部とし、該頸部保持部には硬質板が併設されると共に、前記頸部保持部の上縁任意箇所から頸部嵌合窪みが凹状に形成され、その窪み前方の流し部内底上には枕部を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2592886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の折畳み洗髪器では、側周壁において頸部保持部と対向する先端壁部が、底布に対して略垂直に立設されているため、洗髪流し部内で枕部に頭部を載せた使用者に対し、補助者が洗髪を行う際、腕を垂直な先端壁部に沿って差し入れ、手首の関節を略直角近くまで曲げなければ、使用者の頭部の下に手を入れることができず、洗髪作業が行い難いという問題があった。
このような洗髪姿勢では、補助者の顔が使用者の顔の真上になる位置まで接近する必要があるため、補助者の吐息を使用者が感じて不快感を与えるおそれがあるとともに、補助者が片手でシャワーなどを持ちながら洗髪を行う時には、お湯が使用者の顔にかかり易くなってしまうという問題があった。
また、頸部保持部内には、相似形状に形成した硬質板が併設され、頸部嵌合窪みに頸部が保持された際に、頸部嵌合窪みが硬質板の窪み部に接触することがないようにしている。
しかし、補助者が使用者の頭部を持ち上げ、枕部の上に誘導して載せるため、手が滑るなどにより誤って使用者の頭部を落としてしまった際には、頸部が頸部嵌合窪みに強く当たって痛みを感じるおそれがあった。
そこで、頸部嵌合窪みに対し、ネックガードとして弾性変形可能なパイプの切れ目部分を差し込み固定していた。
しかし、使用者の頸部は、体格によっても微妙に形状が異なり、全ての使用者に対して満足できるクッションを提供することができず、更に洗髪器の折畳みに伴いネックガードが外れて紛失するおそれもあった。
また、排水管が接続される排水口には、硬質材料からなるパイプが、側周壁の頸部保持部に近い個所に貫通して設けられ、この硬質パイプに排水管の一端を連結しているため、使用後に洗髪器を折畳む際、底布に沿って側周壁と頸部保持部を順次折重ねようとしても、排水口の硬質パイプが頸部保持部に突き当たって薄く折重ねることができず、全体をコンパクトに折畳むことが困難であった。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、補助者の洗髪作業を行い易くすること、傾斜面部を任意角度に傾斜させること、使用者の頸部に応じて調整可能なクッションを提供すること、側周壁と頸部保持壁を薄く折畳むこと、などを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明は、気体の出し入れによって膨脹収縮する気胴壁と、該気胴壁と連続して立設される頸部保持壁と、これら気胴壁及び頸部保持壁の端部に亘って張設される底材とからボウル状の洗髪流し部が形成される折畳み洗髪器であって、前記気胴壁の少なくとも前記頸部保持壁と対向する先端壁部に、該気胴壁の前記底材側から反対側端部に向かって徐々に前記頸部保持壁と離れるように傾斜する傾斜面部を形成したことを特徴とする。
【0007】
前述した特徴に加えて、前記傾斜面部が、前記洗髪流し部と対向する前記気胴壁の内面側と、該気胴壁の外面側とを、それぞれ別の柔軟シートで形成し、これら柔軟シートを部分的に貼り合わせることで形成されたことを特徴とする。
【0008】
さらに前述した特徴に加えて、前記頸部保持壁の端部に頸部嵌合窪み部を形成し、該頸部嵌合窪み部に沿って、気体の出し入れにより膨脹収縮する収縮するクッション部を一体形成したことを特徴とする。
【0009】
さらに前述した特徴に加えて、前記気胴壁の前記頸部保持壁と隣り合う側壁部において排水口部を、前記頸部保持壁から該頸部保持壁の高さ寸法よりも離れた位置に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
前述した特徴を有する本発明は、気体の出し入れによって膨脹収縮する気胴壁と、該気胴壁と連続して立設される頸部保持壁と、これら気胴壁及び頸部保持壁の端部に亘って張設される底材とからボウル状の洗髪流し部が形成される折畳み洗髪器であって、前記気胴壁の少なくとも前記頸部保持壁と対向する先端壁部に、該気胴壁の前記底材側から反対側端部に向かって徐々に前記頸部保持壁と離れるように傾斜する傾斜面部を形成することにより、先端壁部の傾斜面部に沿って補助者が腕を差し込むと、手首の関節を無理に曲げなくても、掌が自然に使用者の側頭部や後頭部と対向するので、補助者の洗髪作業を行い易くすることができる。
その結果、補助者が腕を垂直な先端壁部に沿って差し入れ、手首の関節を略直角近くまで曲げなければ、使用者の頭部の下に手を入れることができない従来のものに比べ、補助者が手首の関節を略直角近くまで曲げなくとも使用者の頭部の下に手を入れることができ、補助者の洗髪作業に伴う負担を大幅に軽減することができる。
さらに、補助者の顔が使用者の顔とある程度の距離を保ちながら洗髪作業が行えるので、使用者が補助者の吐息を感じることなく快適であるとともに、補助者が片手でシャワーなどを持ちながら洗髪を行っても、お湯が使用者の顔にかからぬように調整できて使用勝手が良い。
【0011】
さらに、前記傾斜面部が、前記洗髪流し部と対向する前記気胴壁の内面側と、該気胴壁の外面側とを、それぞれ別の柔軟シートで形成し、これら柔軟シートを部分的に貼り合わせることで形成された場合には、気胴壁の内面側に用いられる柔軟シートの周方向寸法を、気胴壁の底材側から反対側端部に向かって徐々に長くなるように設定するとともに、それに比べて気胴壁の外面側に用いられる柔軟シートの周方向寸法を更に長くなるように設定することにより、傾斜面部1fが所定の傾斜角度で形成されるので、傾斜面部を任意角度に傾斜させることができる。
【0012】
また、前記頸部保持壁の端部に頸部嵌合窪み部を形成し、該頸部嵌合窪み部に沿って、気体の出し入れにより膨脹収縮する収縮するクッション部を一体形成した場合には、クッション部内に気体を適度に注入して好みの柔らかさに調節することにより、使用者の頸部に対する負担が和らげられるので、使用者の頸部に応じて調整可能なクッションを提供することができる。
その結果、頸部嵌合窪みに対し、ネックガードとして弾性変形可能なパイプの切れ目部分を差し込み固定していた従来のものに比べ、クッション性が向上し、洗髪器の折畳みに伴って紛失する心配がなく、使用勝手が良い。
【0013】
また、前記気胴壁の前記頸部保持壁と隣り合う側壁部において排水口部を、前記頸部保持壁から該頸部保持壁の高さ寸法よりも離れた位置に設けた場合には、使用後に側周壁と頸部保持壁を底材に沿って順次折重ねたとしても、排水口部が頸部保持壁と当接せずに折畳み可能となるので、側周壁と頸部保持壁を薄く折畳むことができる。
その結果、不使用時には折畳み洗髪器の全体をコンパクトに収納できて持ち運びに便利である。
また、洗髪流し部の中央近くに排水口部が配置されるため、側周壁の頸部保持部近くに排水口が配置される従来のものに比べ、排水効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る折畳み洗髪器を示す縦断正面図である。
【図2】使用方法の一例を示す斜視図である。
【図3】使用方法の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る折畳み洗髪器Aは、図1〜図3に示すように、気体の出し入れによって膨脹収縮する気胴壁1と、気胴壁1と連続して立設される頸部保持壁2と、これら気胴壁1及び頸部保持壁2の下端部に亘って張設される底材3とを備え、これら気胴壁1、頸部保持壁2及び底材3から折畳み可能なボウル状の洗髪流し部4を形成している。
気胴壁1及び頸部保持壁2は、洗髪流し部4の側周壁を構成し、底材3は洗髪流し部4の底面を構成している。
【0016】
洗髪流し部4は、気密性を有する柔軟シート、例えばポリウレタンや塩化ビニル樹脂などの合成樹脂シート、ゴムシート、又は布層の表裏面のいずれか一面若しくは両面に合成樹脂層或いはゴム層を設けた積層構造の所謂ターポリンなどを、後述する気胴壁1、頸部保持壁2又は底材3のパーツ毎にそれぞれ任意の形状に裁断し、これら各パーツの端縁同士を融着又は接着剤による接着などで固着することにより、気密性を有する所望なボウル形状に形成され、その内部には必要に応じて所定量の湯又は水などが貯留可能となっている。
【0017】
図2及び図3に示される例では、洗髪流し部4のボウル形状を、後述する気胴壁1の平面略U字状と、後述する頸部保持壁2の平面直線状とが組み合わされた平面略D字状にしている。
また、その他の例として図示しないが、気胴壁1の平面形状を半円形や半楕円形又は略V字状に形成したり、頸部保持壁2の平面形状を本発明の実施形態に係る折畳み洗髪器Aを使用する使用者Bの肩と略平行に対向するように略弓形に湾曲形成するなど、これらを組み合わせることで、洗髪流し部4のボウル形状を任意な平面形状にすることも可能である。
【0018】
気胴壁1は、柔軟シートを筒状に固着してその内部に気胴室1aが気密状に区画形成され、気胴室1aの任意個所に設けられる注入口1bに対し、ポンプ(図示しない)を接続して、気胴室1aへ空気などの気体を注入することにより、膨脹変形して折畳み不能になるとともに、注入口1bから気胴室1a内の空気などの気体を排出することにより、収縮変形して折畳み可能になるようにしている。
注入口1bの近傍には、キャップ(図示しない)が一体的に形成され、この閉鎖キャップを注入口1bに嵌挿して閉鎖することにより、気胴室1a内の空気などの気体が漏れ出ないようにすることが好ましい。
【0019】
図1〜図3に示される例では、気胴壁1を、上下方向に3つの気胴室1aが後述する底材3の外周縁に沿ってそれと略平行な周方向へそれぞれ延びるように連続形成され、これら気胴室1a同士を連絡路1cでそれぞれ部分的に繋ぐことにより、一つ又は複数の注入口1bから注入される空気などの気体が全ての気胴室1aに行き渡るとともに、全ての気胴室1a内から空気などの気体が一つ又は複数の注入口1bから排出されるようにしている。
また、その他の例として図示しないが、気胴壁1を、上下方向に2つ以下又は4つ以上の気胴室1aを底材3の外周縁に沿って周方向へそれぞれ延びるように連続形成したり、底材3と交差する方向に延びる気胴室を底材3の外周縁に沿って周方向へ多数連続形成することも可能である。
【0020】
そして、気胴壁1は、後述する頸部保持壁2と対向する先端壁部1dと、この先端壁部1dから頸部保持壁2へ向け延びて隣り合う一対の側壁部1eとを有し、これら先端壁部1d及び側壁部1eの両方又は先端壁部1dのみに、気胴壁1の底材3側に配置される下端部からその反対側に配置される上端部に向かって徐々に頸部保持壁2と離れるように傾斜する傾斜面部1fを形成している。
傾斜面部1fは、気胴壁1の洗髪流し部4と対向する内面側とその反対側の外面側とを、それぞれ別の柔軟シート1g,1hで構成し、これら柔軟シート1g,1hを部分的に貼り合わせることで形成される。
つまり、気胴壁1の内面側に用いられる柔軟シート1g、すなわち気胴室1aの内面側を構成する柔軟シート1gの周方向寸法を、気胴壁1の底材3側の下端部からその反対側の上端部に向かって徐々に長くなるように設定するとともに、それに比べて気胴壁1の外面側に用いられる柔軟シート1h、すなわち気胴室1aの外面側を構成する柔軟シート1hの周方向寸法を更に長くなるように設定することで、傾斜面部1fが所定の傾斜角度で形成される。
【0021】
頸部保持壁2は、例えば木製、硬質樹脂製などの硬質板を芯材2aと、その内外面に沿ってそれぞれ配置される柔軟シート2bとを備え、これら柔軟シート2bの端縁同士を融着又は接着剤による接着などで固着することにより、芯材2aが気密状に覆われるものである。
頸部保持壁2の長手方向中央で上端部には、頸部嵌合窪み部2cが凹状に所望深さで形成され、この頸部嵌合窪み部2cに沿って、気体の出し入れにより膨脹収縮するクッション部2dを形成することが好ましい。
【0022】
底材3は、前述した頸部保持壁2と同様に、例えば木製、硬質樹脂製などの硬質板を芯材3aと、その内外面に沿ってそれぞれ配置される柔軟シート3bを備え、これら柔軟シート3bの端縁同士を融着又は接着剤による接着などで固着することにより、芯材3aが気密状に覆われるものである。
底材3の上面には、頸部保持壁2の頸部嵌合窪み部2cと対応するように、例えば面ファスナーなどからなる位置決め係止部3cを設け、この位置決め係止部3cに対し枕部5を着脱自在に取り付けている。
図1に示される例では、枕部5を90度回転して取り付けることにより、高低の2段階で高さ調整可能にしている。
【0023】
また、気胴壁1の下端部或いは底材3には、排水管Bが接続される排水口部6を設けて、洗髪流し部4内の湯又は水を、本発明の実施形態に係る折畳み洗髪器Aとは別に用意した汚水収容部(図示しない)や他の排水設備などに排水可能にすることが好ましい。
【0024】
このような折畳み洗髪器Aによると、図1及び図2に示される使用例のように、気胴壁1の膨脹によってボウル状となった洗髪流し部4を、寝ている状態の使用者(横臥者)Pの頭部下位に差し込み、頸部保持壁2の頸部嵌合窪み部2cが、使用者Pの頸部に嵌るように位置決めし、使用者Pの頭部を枕部5によって支持する。
この状態で、補助者が腕H1を先端壁部1dの傾斜面部1fに沿って差し込むと、手首の関節H2を無理に曲げなくても、掌H3が自然に使用者Pの側頭部P1や後頭部P2と対向して容易に接触可能となる。
それにより、補助者は使用者Pの顔P3とある程度の距離を保ちつつ、無理な姿勢になることなく洗髪作業が容易に行える。
【0025】
また、図3に示される使用例のように、補助者が一方の片手H4でシャワーCなどを持ちながら他方の片手H5のみで洗髪を行っても、他方の腕H1を先端壁部1dの傾斜面部1fに沿って差し込むと、手首の関節H2を無理に曲げなくても、掌H3が自然に使用者Pの側頭部P1や後頭部P2と対向して容易に接触可能となる。
それにより、シャワーCなどからのお湯が使用者の顔P3にかからぬように容易に調整できる。
次に、本発明の一実施例を説明する。
【実施例】
【0026】
この実施例は、図1〜図3に示すように、折畳み洗髪器Aが、平面略U字状に形成された気胴壁1において頸部保持壁2と対向する先端壁部1dのみに傾斜面部1fを形成し、頸部保持壁2と隣り合う一対の側壁部1eが底材3の上面に対して略垂直に立ち上げられるとともに、頸部嵌合窪み部2cに沿って、気体の出し入れにより膨脹収縮するクッション部2dが一体形成され、気胴壁1の下端部に排水口部6が設けられる場合を示すものである。
【0027】
クッション部2dは、前述した気胴壁1と同様に、柔軟シート2bを筒状に固着してその内部に気室2eが気密状に区画形成され、気室2eの任意個所に設けられる注入口(図示しない)に対し、ポンプ(図示しない)を接続して、気室2eへ空気などの気体を注入することにより、膨脹変形して弾性変形可能になるとともに、該注入口から気胴室2e内の空気などの気体を排出することにより、収縮変形して折畳み可能になるようにしている。
【0028】
排水口部6は、気胴壁1において頸部保持壁2と隣り合う一対の側壁部1eの両方又はいずれか一方の下端部に設けられ、硬質材料からなるパイプ6aと、この硬質パイプ6aを気胴壁1の内側から着脱自在に覆うキャップ6bとを備えている。
排水口部6の硬質パイプ6aは、側壁部1eにおいて、頸部保持壁2から該頸部保持壁2の高さ寸法よりも離れた位置に、洗髪流し部4の外部へ向けて突出するように設けられ、その突出する部分には、排水管Bの一端が接続されている。
排水管Bの他端には、汚水収容部(図示しない)などが着脱自在に連結される。
【0029】
また、頸部保持壁2の内面には、使用者Pの肩から胸に亘って掛けられるエプロンDを着脱自在に係止するための、例えば面ファスナーなどからなる係止部2fが設けられている。
【0030】
次に、斯かる折畳み洗髪器Aの使用方法について説明する。
先ず、気胴壁1に空気などを注入して、洗髪流し部4が所定のボウル状となるように膨らませ、クッション部2dにも空気などを注入して膨らませる。
このような洗髪流し部4には、底材3の位置決め係止部3cに枕部5が取り付けられ、頸部保持壁2の係止部2fにエプロンDの端部が取り付けられる。
排水口部6の硬質パイプ6aには、排水管Bの一端を接続し、他端を汚水収容部(図示しない)などに連結し、排水管Bを接続した側の硬質パイプ6aからキャップ6bを開ける。
【0031】
一方、使用者Pが寝ている布団(図示しない)の上には、頭部の下に防水シート(図示しない)を敷く。
そして、補助者は、使用者Pの頭部を持ち上げてから、防水シートの上に折畳み洗髪器Aを差し込み、枕部5の中央に頭部を載せて、エプロンDを使用者Pの胸に掛ける。
この際、使用者Pの頭部に合わせて枕部5を最適な高さに調整し、頸部が当接するクッション部2d内に注入された空気などを適度に抜くか、又は注入し直すことで、クッション部2dを好みの柔らかさに調節することができ、それにより使用者Pの頸部に対する負担が和らげられる。
【0032】
この状態で、補助者は、前述した図2又は図3に示される使用例のように洗髪作業を行う。
洗髪によって生じた汚水は、洗髪流し部4内から排水口部6の硬質パイプ6a及び排水管Bを経て汚水収容部に収容される。
洗髪が終わった後は、排水口部6の硬質パイプ6aをキャップ6bで閉じ、汚水収容部内の汚水を捨てるとともに、気胴壁1及びクッション部2dから空気などを抜いて折畳む。
この際、側周壁1bの側壁部1eにおいて、排水口部6の硬質パイプ6aを、頸部保持壁2から該頸部保持壁2の高さ寸法よりも離れた位置に配置しているため、底材3に沿って側周壁1bと頸部保持壁2を順次折重ねたとしても、排水口部6の硬質パイプ6aが頸部保持壁2と当接せず、薄く折畳むことができる。
それにより、不使用時には折畳み洗髪器Aの全体をコンパクトに収納できる。
【0033】
また、この実施例では、折畳み洗髪器Aが、平面略U字状に形成された気胴壁1と、平面直線状の頸部保持壁2とを平面略D字状に連結し、気胴壁1において頸部保持壁2と対向する先端壁部1dのみに傾斜面部1fを形成するとともに、頸部保持壁2と隣り合う一対の側壁部1eのみを底材3の上面に対して略垂直に立ち上げている。
それにより、空気などの注入により気胴壁1が膨張した使用時には、気胴壁1の側壁部1eと頸部保持壁2との境界部分がコーナー部となり、気胴壁1及びクッション部2dから空気などを抜いて折畳む時には、傾斜面部1fが形成される先端壁部1dの周方向途中から折畳まれ、これら使用時のコーナー部と折畳み時の折り目線が位置ズレして配置される。
【0034】
これに対し、例えば実用新案登録第2592886号公報に記載されるような従来周知の折畳み洗髪器は、平面略U字状の気胴壁と平面直線状の頸部保持壁とを底材の上面に対し略垂直に立ち上げて平面略D字状に形成され、気胴壁が膨張した使用時には気胴壁と頸部保持壁の境界部分がコーナー部となり、気胴壁の折畳み時には該コーナー部が折り目線となって両者が一致する。
それにより、使用時と折畳み時において同じ個所に集中して負荷がかかって擦れるため、時間経過により擦り切れて穴が開くおそれがあった。
しかし、前述した実施例では、使用時のコーナー部と折畳み時の折り目線が位置ズレして配置されるため、一個所に集中して負荷がかからず、長期に亘って使用しても一部が擦り切れ難くなり、従来周知の折畳み洗髪器に比べて寿命を延ばすことができて経済的であるという利点がある。
【0035】
なお、前示実施例では、頸部嵌合窪み部2cに沿って、気体の出し入れにより膨脹収縮するクッション部2dが一体形成され、気胴壁1の下端部に排水口部6が設けられる場合を示したが、これに限定されず、頸部嵌合窪み部2cに沿って弾性変形可能な材料からなるネックガードを装着したり、底材3に排水口部6を設けても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 気胴壁 1d 先端壁部
1e 側壁部 1f 傾斜面部
1g,1h 柔軟シート 2 頸部保持壁
2c 頸部嵌合窪み部 2d クッション部
3 底材 4 洗髪流し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の出し入れによって膨脹収縮する気胴壁と、該気胴壁と連続して立設される頸部保持壁と、これら気胴壁及び頸部保持壁の端部に亘って張設される底材とからボウル状の洗髪流し部が形成される折畳み洗髪器であって、
前記気胴壁の少なくとも前記頸部保持壁と対向する先端壁部に、該気胴壁の前記底材側から反対側端部に向かって徐々に前記頸部保持壁と離れるように傾斜する傾斜面部を形成したことを特徴とする折畳み洗髪器。
【請求項2】
前記傾斜面部が、前記洗髪流し部と対向する前記気胴壁の内面側と、該気胴壁の外面側とを、それぞれ別の柔軟シートで形成し、これら柔軟シートを部分的に貼り合わせることで形成されたことを特徴とする請求項1記載の折畳み洗髪器。
【請求項3】
前記頸部保持壁の端部に頸部嵌合窪み部を形成し、該頸部嵌合窪み部に沿って、気体の出し入れにより膨脹収縮する収縮するクッション部を一体形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の折畳み洗髪器。
【請求項4】
前記気胴壁の前記頸部保持壁と隣り合う側壁部において排水口部を、前記頸部保持壁から該頸部保持壁の高さ寸法よりも離れた位置に設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の折畳み洗髪器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−62293(P2011−62293A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214436(P2009−214436)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】