説明

押えブロック及び該押えブロックを用いたシール装置

【課題】加熱圧着すべき重なり合ったプラスチックフィルムをそれらのずれを抑制しつつ直接押えることのできる押えブロックを提供するものである。
【解決手段】支持ブロック30との間で加熱圧着すべき重なり合うプラスチックフィルムF1、F2を挟む加圧ブロック20に設けられ、支持ブロック30に対して前記プラスチックフィルムF1、F2を押し付ける押えブロック21であって、前記プラスチックフィルムに接する表面に複数の凹部210と、該複数の凹部210のそれぞれの縁から支持ブロック30の方向に突出する凸部211とが形成された構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持ブロックとの間で加熱圧着すべき重なり合うプラスチックフィルムを挟む加圧ブロックに設けられ、前記支持ブロックに対して該プラスチックフィルムを押し付ける押えブロック、及び、該押えブロックを用いたシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パウチ等のプラスチックフィルム製の袋を製造する製袋装置において、重なり合うプラスチックフィルムをヒートシール加工するシール装置が用いられる。従来、低粘着性シート(例えば、ガラス繊維補強フッ素樹脂シート)にて被覆されたヒートシールバーが、重なり合うプラスチックフィルムを低粘着性シートにて被覆されたラバーに対して押え付ける構造となるシール装置が提案されている(特許文献1参照)。このシール装置では、2枚の低粘着性シートで挟まれた状態で重なり合うプラスチックフィルムがヒートシールバーによる加熱及び加圧によって溶着し、その溶着部分でシールされる。このように2枚の低粘着性シートにて加熱圧着すべきプラスチックフィルムが挟まれているので、ヒートシールバーの加圧を解除してヒートシールバーとラバーとの間を開放する際に、プラスチックフィルムの溶着部分がヒートシールバーやラバーにくっついてしまうことを防止することができる。また、プラスチックフィルムの溶着部分に押し付けられた低粘着性シートの凹凸模様(例えば、ガラス繊維の織り模様)が付いてそのシール部分の美麗性を高めることができる。
【0003】
しかし、前述した従来のシール装置においては、低粘着性シートによりヒートシールバーからプラスチックフィルムへの熱伝達の効率が犠牲になっている。このため、高い生産効率を得ることが難しい。例えば、その生産効率を改善するためにヒートシールバーの設定温度を高めると、ヒートシールバーの寿命が短くなり、また、長い寿命を維持するためには、コストがかさむことになる。更に、低粘着性シートは摩耗等によって劣化するが、その交換が生産性を低下させる原因にもなっている。
【0004】
そこで、前述した低粘着性シートを用いることなく適正にシールすることできる溶着金型(ヒートシールバー)が提案されている(特許文献2参照)。この溶着金型は、加熱圧着すべきプラスチックフィルムが接する面に微細な凹部が形成されるとともにその面が離型性樹脂でコーティングされた構造となっている。このような溶着金型では、プラスチックフィルムとの接触面に微細な凹部が形成されているので、プラスチックフィルムとの接触面積を小さくすることができ、また、加熱圧着した際に凹部とプラスチックフィルムとの間の空気が膨張してシートを圧迫するようになる。このため、特に低粘着性シートを用いなくてもプラスチックフィルムが溶着金型から離型し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−310398号公報
【特許文献2】特開2001−212879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような溶着金型を用いたシール装置では、溶着金型が加熱圧着すべき重なり合うプラスチックフィルムを直接押え付けるものであるので、重なり合うプラスチックフィルムにずれが生じ易く、そのまま加熱溶着した際にその溶着部分にしわが生ずるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、加熱圧着すべき重なり合ったプラスチックフィルムをそれらのずれを抑制しつつ直接押えることのできる押えブロック及び該押えブロックを用いたシール装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る押えブロックは、支持ブロックとの間で加熱圧着すべき重なり合うプラスチックフィルムを挟む加圧ブロックに設けられ、前記支持ブロックに対して前記プラスチックフィルムを押し付ける押えブロックであって、前記プラスチックフィルムに接する表面に複数の凹部と、該複数の凹部のそれぞれの縁から前記支持ブロックの方向に突出する凸部とが形成された構成となる。
【0009】
このような構成により、プラスチックフィルムに接する表面に形成された複数の凹部のそれぞれの縁から突出する凸部が形成されているので、加圧ブロックと支持ブロックとが加熱圧着すべき重なり合うプラスチックフィルムを挟んだ状態で、前記加圧ブロックの押えブロックが前記プラスチックフィルムを前記支持ブロックに対して押え付けると、複数の凹部のそれぞれの縁に形成された凸部が前記プラスチックフィルムに食い込むようになる。
【0010】
本発明に係る押えブロックにおいて、前記凸部の前記プラスチックフィルムに接する表面から突出する高さは、前記凹部の深さより小さい構成とすることができる。
【0011】
このような構成により、複数の凹部のそれぞれの縁から突出する凸部の高さが比較的低くなるので、当該凸部のプラスチックフィルムへの過剰な食い込みを防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る押えブロックにおいて、前記凸部の前記プラスチックフィルムに接する表面から突出する高さは、前記プラスチックフィルムの厚さより小さい構成とすることができる。
【0013】
このような構成により、押えブロックに接するプラスチックフィルムを貫通することなく各凹部の縁から突出する凸部が当該プラスチックフィルムに食い込むようになる。
【0014】
更に、本発明に係る押えブロックにおいて、前記複数の凹部それぞれの形状は、錐形状である構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、各凹部が錐形状となって奥にいくほど狭くなるので、押えブロックがプラスチックフィルムを押えつけた際に、各凹部の奥方までプラスチックフィルムが入り込み難くなる。その結果、加圧後にプラスチックフィルムが押えブロックからより離れ易くなる。
【0016】
また、本発明に係る押えブロックにおいて、前記複数の凹部は、錐形状の尖鋭突起を複数有するローレット駒を前記押えブロックの前記プラスチックフィルムに接する表面に押し当てることによって形成されている構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、押えブロックのプラスチックフィルムに接する表面にローレット駒を回転させつつ押し当てることにより、錐形状の複数の凹部が当該表面に転造されるようになるので、比較的容易に複数の凹部を形成することができるようになる。
【0018】
また、本発明に係る押えブロックにおいて、前記複数の凹部及び該複数の凹部のそれぞれの縁から突出する凸部は、隣接する凹部の縁から突出する凸部が重ならないように形成された構成となる。
【0019】
このような構成により、隣接する凹部の縁から突出する凸部が重ならないので、各凸部が単独でプラスチックフィルムに食い込むようになる。従って、各凸部が他の凸部の影響を受けることなく確実にプラスチックフィルムに食い込み得る。
【0020】
更に、本発明に係る押えブロックにおいて、前記プラスチックフィルムに接する表面にフッ素樹脂分散金属メッキが施されている構成とすることができる。
【0021】
このような構成により、プラスチックフィルムのフッ素樹脂分散金属メッキの層に対する脱離性が比較的良好であるので、加圧後にプラスチックフィルムが押えブロックからより離れ易くなる。
【0022】
本発明に係るシール装置は、加圧ブロックと、該加圧ブロックに対向して配置された支持ブロックとを備え、前記加圧ブロックと前記支持ブロックとによって重なり合うプラスチックフィルムを挟んで加熱圧着するシール装置であって、前記加圧ブロックは、前述したいずれかの押えブロックと、該押えブロックを加熱する加熱部とを有する構成となる。
【0023】
このような構成により、加圧ブロックと支持ブロックとによって重なり合うプラスチックフィルムが挟まれた状態で、加熱部により加熱される押えブロックが前記重なり合うプラスチックフィルムを支持ブロックに押え付ける。この押えブロックの加熱及び加圧により、重なり合うプラスチックフィルムが加熱圧着される。その際、押えブロックのプラスチックフィルムに接する表面に形成された複数の凹部のそれぞれの縁から突出する凸部が重なり合うプラスチックフィルムに食い込んで、それら重なり合うプラスチックフィルムをずらすことなく加熱圧着することができる。
【0024】
本発明に係るシール装置において、前記支持ブロックは、前記重なり合うプラスチックフィルムに接して前記加圧ブロックの押えブロックによる前記プラスチックフィルムの押え付けを受ける受け板部材と、該受け板部材を加熱する加熱部とを有する構成とすることができる。
【0025】
このような構成により、加圧ブロックと支持ブロックとによって重なり合うプラスチックフィルムが挟まれた状態で、加熱部により加熱される押えブロックが前記重なり合うプラスチックフィルムを支持ブロックの加熱部により加熱される受け板部材に対して押え付ける。受け板部材からの加熱及び押えブロックの加熱及び加圧により、重なり合うプラスチックフィルムが加熱圧着される。受け板部材及び押えブロックの双方から直接的に加熱されるので、重なり合うプラスチックフィルムをより効率的に加熱圧着することができる。
【0026】
また、本発明に係るシール装置において、前記受け板部材は、耐熱性ゴムにて形成されたゴム板部材と、該ゴム板部材の前記プラスチックフィルム側の表面に設けられた耐熱性樹脂部材と、前記ゴム板部材の前記プラスチックフィルムと逆側の表面に設けられた当該ゴム板部材より剛性の高い耐熱性補強部材とを有する構成とすることができる。
【0027】
このような構成により、受け板部材が耐熱性ゴムにて形成されたゴム板部材を有しているので、加圧ブロックの押えブロックによりプラスチックフィルムが押え付けられる当該受け板部材のクッション性を確保することができる。また、プラスチックフィルムが受け板部材の耐熱性樹脂部材に当接するようになるので、加熱後にプラスチックフィルムが受け板部材からより離れ易くなる。更に、前記ゴム板部材のプラスチックフィルムと逆側の表面に当該ゴム板部材より剛性の高い耐熱性補強部材が設けられているので、より高温にてプラスチックフィルムを加熱圧着する際に、加熱部により加熱される受け板部材の反り返り等の変形を抑制することができるようになる。
【0028】
前記耐熱性樹脂部材及び前記耐熱性補強部材は、同種のガラス繊維補強耐熱性樹脂シートにて構成することができる。
【0029】
更に、本発明に係るシール装置において、前記支持ブロックの加熱部は、前記受け板部材が載せ置かれる金属製ブロックと、該金属製ブロック内に設けられたヒータとを有する構成とすることができる。
【0030】
このような構成により、ヒータにて加熱される金属製ブロックを介して、当該金属製ブロックに載せ置かれた受け板部材が加熱されるようになる。
【0031】
また、本発明に係るシール装置において、前記加圧ブロックの加熱部と、前記支持ブロックの加熱部とは、同じ加熱温度に設定される構成とすることができる。
【0032】
このような構成により、支持ブロック側からも加圧ブロック側からの温度と同等の温度にて重なり合うプラスチックフィルムを加熱することができるようになるので、プラスチックフィルムをより効率的に加熱圧着することができるようになる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る押えブロックによれば、加圧ブロックと支持ブロックとが加熱圧着すべき重なり合うプラスチックフィルムを挟んだ状態で、前記加圧ブロックの押えブロックが前記プラスチックフィルムを前記支持ブロックに対して押え付けると、複数の凹部のそれぞれに形成された凸部が前記プラスチックフィルムに食い込むようになるので、前記重なり合ったプラスチックフィルムをそれらのずれを抑制しつつ直接押えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係るシール装置が適用される製袋装置を示す図である。
【図2】図1に示す製袋装置に適用されるシール装置の構造を示す断面図である。
【図3】図2に示すシール装置における加圧ブロックの押えブロックの構造を示す部分斜視図である。
【図4】図3に示す押えブロックの突出部の先端面を示す拡大図である。
【図5】押えブロックに隣接して形成される2つの穴(凹部)及びそれぞれの縁に形成される盛り上がり部(凸部)の断面の外形線形状を模式的に示す断面図である。
【図6】図2に示すシール装置における支持ブロックの構造を示す部分斜視図である。
【図7】図2に示すシール装置によって加熱圧着されるプラスチックフィルムの状態を示す断面図である。
【図8】図7に示すシール装置によって加熱圧着されるプラスチックフィルムの圧着部分を拡大して示す拡大図である。
【図9】図1に示す製袋装置によって製造される袋の外観を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0036】
本発明の実施の形態に係るシール装置が適用される製袋装置は、図1に示すように構成される。
【0037】
図1において、製袋装置200は、製造すべき袋(例えば、パウチ)の材料となる原材プラスチックフィルムFを供給するフィルム供給部110と、フィルム供給部110から供給される原材プラスチックフィルムFを所定幅の2枚のプラスチックフィルムF1、F2に裁断し、各プラスチックフィルムF1、F2を送るフィルム裁断加工部120と、フィルム裁断加工部120から送られて上下に重ねられるプラスチックフィルムF1、F2の所定部位を加熱圧着によりシールするシール加工部100と、シールされて一体となったプラスチックフィルムF1、F2のシール部分を切断して袋を形成する袋切り出し部130とを有している。
【0038】
フィルム供給部110は、送り出しローラ111から送り出される原材プラスチックフィルムFを回転ローラ112a、112b、112cを介してフィルム裁断加工部120に送る。フィルム裁断加工部120は、裁断機121を有し、裁断機121がフィルム供給部110から送られてくる原材プラスチックフィルムFをその幅方向の中央部位にて裁断して2枚のプラスチックフィルムF1、F2に分ける。一方のプラスチックフィルムF1は上方に送り出されて、回転ローラ122a、122b、122cを介して上方から加工台11に供給され、他方のプラスチックフィルムF2は下方に送り出されて、回転ローラ123a、123b、123cを介して下方から加工台11に供給される。
【0039】
加工台11上にて上側からのプラスチックフィルムF1と下側からのプラスチックフィルムF2とが重ねられ、シール加工部100を通過する。加工台11上のシール加工部100には、縦シール装置12aと縦冷却装置12bとが設置されるとともに、複数の横シール装置13aと複数の横冷却装置13bとが設置されている。縦シール装置12aは、加工台11上で重なり合うプラスチックフィルムF1、F2の幅方向の中央部位を長手方向(搬送方向)に加熱圧着してシールし、縦冷却装置12bは、長手方向に加熱圧着されたシール部分を冷却する。複数の横シール装置13aのそれぞれは、重なり合うプラスチックフィルムF1、F2の幅方向(搬送方向に直交する方向)を所定間隔にて多段階に熱圧着してシールし、複数の横冷却装置13bのそれぞれは、重なり合うプラスチックフィルムF1、F2の幅方向に加熱圧着されたシール部分を冷却する。複数の横シール装置13aは、プラスチックフィルムF1、F2の同じ部位(幅方向全域)を加熱圧着するが、その加熱温度は、同温度に設定されていても、また、例えば、搬送方向の下流側に向かって徐々に高くなるように設定されていてもよい。
【0040】
袋切り出し部130は、カッター14を有している。カッター14は、重なり合うプラスチックフィルムF1、F2の縦シール装置12aによって加熱圧着されたシール部位を連続的に裁断するとともに、横シール装置13aによって加熱圧着されたシール部位を断続的に裁断する。これにより、図9に示すように、縦シール装置12aによって加熱圧着されたシール部分が底シール部41となり、その底シール部41と対向する端部が開放端部42となり、横シール装置13aによってシールされた部分が側シール部43a、43bとなった袋40が2枚ずつ順次形成される。なお、縦シール装置を幅方向両端に備え、重なり合うプラスチックフィルムF1、F2の中央を連続的に裁断するようにして、袋の開放端部同士が向かい合うように形成するようにしてもよい。また、複数の縦シール装置を適宣配置して、幅方向に3枚以上の袋を形成するようにしてもよい。
【0041】
縦シール装置12a及び各横シール装置13aは、例えば、図2に示すように構成されている。なお、縦シール装置12aと横シール装置13aとは同じ構造となっているので、以下、それらを総称して単にシール装置という。
【0042】
図2において、シール装置は、加圧ブロック20と支持ブロック30とを備えている。加圧ブロック20が上側、支持ブロック30が下側に、それぞれ対向するように配置されている。加圧ブロック20と支持ブロック30との間に、前述したようにして重なり合うプラスチックフィルムF1、F2が支持ブロック30の表面上に摺接しつつ間欠的に搬送される(図2において、縦シール装置12aの場合、搬送方向は紙面に垂直な方向A、横シール装置12bの場合、搬送方向は方向B)。下降する加圧ブロック20と固定された支持ブロック30とが重なり合うプラスチックフィルムF1、F2を挟むようになっている。
【0043】
加圧ブロック20は、それぞれ金属製の押えブロック21とヒートブロック22(加熱部)とが一体的に固定された構造を有している。押えブロック21は、ヒートブロック22に固定されるベース部21bとベース部21bの中央部位から突出する直方体形状の突出部21aとによって形成されている。ヒートブロック22内には2本の線状ヒータ22a、22bが設けられている。
【0044】
押えブロック21の突出部21aの先端面には、図3に示すように多数の細かい穴(凹部)210が形成されている。この多数の細かい穴210は、表面に錐形状の尖鋭突起(例えば、四角錘形状の突起)が規則的に形成されたローレット駒を回転させつつ突出部21aの先端面に押し当てるようにしてなされる転造加工によって形成されている。このため、押えブロック21の突出部21aの先端面に形成された多数の穴210は、ローレット駒の錐状の尖鋭突起の形状に対応した形状になるとともに、その配列規則に対応した規則に従って配列されている。例えば、図4に示すように、押えブロック21の突出部21aの先端面には、所定ピッチで長手方向(図面横方向)に配列された穴210の列が、その長手方向に半ピッチずつずらされながら、幅方向(図面縦方向)に所定ピッチにて配列されるように形成される。このように配列される結果、どの3つの穴210も正三角形の頂点に位置するようになる。なお、前記長手方向は、縦シール装置12aにおいて加熱圧着されるべきプラスチックフィルムF1、F2の搬送方向Aに対応し、前記幅方向は、横シール装置13aにおいて加熱圧着されるべきプラスチックフィルムF1、F2の搬送方向Bに対応する。
【0045】
各穴210は、図4に示すように、ローレット駒の尖鋭突起の形状に対応して矩形状に開口する四角錘状の凹部となり、開口形状の四角の対角線が長手方向または幅方向に合致するように形成されている(図4における破線参照)。また、ローレット駒の尖鋭突起が突出部21aの先端面に押し付けられて各穴210が形成されるため、尖鋭突起が押し付けられる部分の金属が形成される穴210の周囲に盛り上がって金属溜まりとなる。このため、各穴210の周縁には当該穴210の形成面(突出部21aの先端面)から盛り上がった盛り上がり部(凸部)211が形成されている。なお、図4に示した各穴210の配列は一例であって、二等辺三角形の頂点に位置するようにしてもよいし、ピッチをずらさずに配列してもよい。配列方向も、長手方向あるいは幅方向に合致させる必要はなく、傾斜していてもよく、要するに、各穴210が整然と配列されていればよい。また、ローレット駒の尖鋭突起の形状に対応する開口形状も、矩形状に限らず、ひし形状、平行四辺形状、亀甲状、あるいは円形状でもよい。
【0046】
図5は、押えブロック21の突出部21aの先端面に形成された隣接する2つの穴210(凹部)及びそれぞれの縁に形成される盛り上がり部211(凸部)の断面(図4における斜め一点鎖線方向の断面)の外形線(プロファイル)を模式的に示す図である。図5に示すように、盛り上がり部211の基準面(当該穴210の形成面)からの高さh1は各穴210の前記基準面からの深さh2より小さい。各穴210の基準面からの深さh2は、例えば、50μm〜100μmの範囲内に設定される。盛り上がり部211の前記基準面からの高さh1は、例えば、10μm〜20μm程度であって、加熱圧着すべき各プラスチックフィルムF1、F2の厚さ(例えば、100μm)よりも小さい。穴210のピッチL2は、例えば、0.4〜1.0mmの範囲内に設定される。隣接する穴210の周縁に形成される盛り上がり部211は重なることがなく、それら隣接する盛り上がり部211の頂部間の長さL1は、例えば、250μm〜650μm程度となり、各穴210の開口径L2−L1は、例えば、160μm〜300μm程度となる。
【0047】
多数の穴210の形成された押えブロック21の突出部21aの先端面にはフッ素樹脂分散金属メッキ(いわゆるテフロン(登録商標)めっき)が施されている。
【0048】
また、支持ブロック30は、図2とともに図6に示すように、受け板部材31と金属製のヒートブロック32(加熱部)とを備えている。受け板部材31は、シリコンゴム(耐熱性ゴム)製のゴム板部材31aのプラスチックフィルムF1、F2側の表面に耐熱性樹脂シート31b(耐熱性樹脂部材)が貼り付けられ、ゴム板部材31aのプラスチックフィルムF1、F2と逆側の表面に耐熱性補強シート31c(耐熱性補強部材)が貼り付けられた構造となっている。耐熱性樹脂シート31b及び耐熱性補強シート31cは、ともに同種のガラス繊維で補強されたフッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))シートにて形成することができる。受け板部材31全体の厚さは、例えば、1mm〜10mmの範囲内で設定され、耐熱性樹脂シート31b及び耐熱性補強シート31cそれぞれの厚さは、ゴム板部材31aの厚さより小さくなるように設定されている。
【0049】
ヒートブロック32内には、加圧ブロック20の場合と同様に、線状ヒータ32a、32bが設けられている。支持ブロック30は、ヒートブロック32上に受け板部材31が接着、ビス止め等によって固定されることなく載せ置かれた構造となっており、線状ヒータ32a、32bによって加熱されるヒートブロック32によって加熱される受け板部材31を介して加熱圧着されるべき重なり合うプラスチックフィルムF1、F2が加熱されるようになっている。なお、受け板部材31は、ヒートブロック32上に固定されていないので、例えば、メンテナンス時における交換が容易となっているが、もちろんビス止め及びフック等によってヒートブロック32に固定してもよい。
【0050】
前述したようなシール装置では、加圧ブロック20のヒートブロック22内の線状ヒータ22a、22bに通電がなされ、その線状ヒータ22a、22bによって加熱されるヒートブロック22によって押えブロック21が加熱されて所定の温度に維持される。また、支持ブロック30のヒートブロック32内の線状ヒータ32a、32bにも通電がなされ、その線状ヒータ32a、32bによって加熱されるヒートブロック32によって受け板部材31が加熱されて所定の温度に維持される。この状態で、加圧機構(図示略)により加圧ブロック20が下降して、図7に示すように、加圧ブロック20と支持ブロック30とが重なり合うプラスチックフィルムF1、F2を挟むと、加圧ブロック20の押えブロック21の突出部21aの先端面が重なり合うプラスチックフィルムF1、F2を支持ブロック30の受け板部材31に押し付ける。
【0051】
加圧ブロック20の押えブロック21が重なり合うプラスチックフィルムF1、F2を支持ブロック30の受け板部材31に対して押し付けると、図8に拡大して示されるように、押えブロック21の突出部21aの先端面に形成された多数の穴210のそれぞれの縁から盛り上がる盛り上がり部211がプラスチックフィルムF1に食い込むようになる。このため、重なり合うプラスチックフィルムF1、F2は、それらのずれが抑制されつつ加圧ブロック20の押えブロック21によって直接押え付けられるようになる。その結果、重なり合うプラスチックフィルムF1、F2が極力ずれることなく加熱圧着され、その加熱圧着された部分におけるしわ等の発生が極力少なく、より適正なシールが可能になる。
【0052】
そして、隣接する穴210の縁から突出する盛り上がり部211が重ならないので(図5参照)、各盛り上がり部211が単独でプラスチックフィルムF1に食い込むようになる。このため、各盛り上がり部211が他の盛り上がり部211の影響を受けることなく確実にプラスチックフィルムF1に食い込み得るようになる。
【0053】
また、前述したシール装置では、加圧ブロック20側のヒートブロック22の加熱温度は、例えば、プラスチックフィルムの内面がポリプロピレンの場合、180℃〜200℃の範囲内の所定温度に設定され、また、支持ブロック30側のヒートブロック32の加熱温度も、加圧ブロック20側と同じ所定温度に設定される。加圧ブロック20側のヒートブロック22の前記加熱温度は、重なり合うプラスチックフィルムを2枚の低粘着性シートで挟んで加熱圧着する従来のシール装置での加圧ブロックの加熱温度、例えば、230℃〜260℃に比べて低い。しかし、ヒートブロック22により加熱される押えブロック21が直接プラスチックフィルムF1、F2に当接するので、プラスチックフィルムF1、F2の加圧及び加熱される部分の温度は従来と同程度か、より高くできる。
【0054】
このように、押えブロック21の突出部21aにより比較的高い温度にてプラスチックフィルムF1、F2が加熱及び加圧されても、その突出部21aの先端面にフッ素樹脂分散金属メッキが施されていること、各穴210内の空気が膨張してプラスチックフィルムF1、F2を圧迫すること、各穴210が錐状(四角錐形状)となり奥方に行くほど狭くなってプラスチックフィルムF1、F2が各穴210内に入り込み難い(図8参照)こと、更に、各穴210のそれぞれの縁に形成された盛り上がり部211の高さが、各穴210の深さより小さくかつプラスチックフィルムF1、F2の厚さより小さいことで各盛り上がり部211のプラスチックフィルムF1への過剰な食い込みが防止されること等が相俟って、その加圧後に押えブロック21の突出部21aからプラスチックフィルムF1、F2がより離れ易くなる。
【0055】
支持ブロック30側のヒートブロック32の前記加熱温度は、前記従来のシール装置での支持ブロックの加熱温度、例えば、100℃〜130℃に比べて高くできる。従来の設定温度が低かったのは、フィルムの加熱効率からすれば、加圧ブロック20と支持ブロック30とを略同程度の温度で加熱するのが望ましいところ、従来のシール装置の支持ブロック30の加熱温度は、ラバー(ゴム板部材に相当)のみをヒートブロックに載置して構成していたため、上記範囲を超える温度に設定すると反り返りや波打ちなどにより表面が変形し、均等な加熱が困難なためである。
【0056】
さらに、ヒートブロック32により加熱される受け板部材31が直接プラスチックフィルムF1、F2に当接するので、プラスチックフィルムF1、F2の受け板部材31側からの加熱温度は、従来よりもかなり高くなる。
【0057】
このように、受け板部材31が比較的高い温度になっても、受け板部材31のゴム板部材31aのプラスチックフィルムと逆側に貼られた耐熱性補強シート31cとなるガラス繊維補強フッ素樹脂シートにより当該ゴム板部材31aの反り返り等の変形が抑制され、更に、ゴム板部材31aのプラスチックフィルム側に耐熱性樹脂シート31bとして貼られたガラス繊維補強フッ素樹脂シートによってもそのゴム板部材31aの変形が抑制されるので、ゴム板部材31aによるクッション性を確保しつつ押えブロック21により押え付けられる重なり合ったプラスチックフィルムF1、F2を受け板部材31によって適正に受けることができる。また、比較的高温となる受け板部材31のゴム板部材31aのプラスチックフィルム側に貼られた耐熱性樹脂シート31b(ガラス繊維補強フッ素樹脂シート)からプラスチックフィルムが比較的離れ易いので、加圧後に受け板部材31からプラスチックフィルムF1、F2がより離れ易くなる。
【0058】
このように、加圧ブロック20及び支持ブロック30によって比較的高い温度にて重なり合うプラスチックフィルムF1、F2を加熱及び加圧しても、プラスチックフィルムF1、F2が加圧ブロック20(押えブロック21の突出部21a)及び支持ブロック30(受け板部材31)にくっつくことなく離れ易いので、プラスチックフィルムF1、F2を比較的高温にて加熱圧着することができる。その結果、短い時間で加熱圧着が可能となり、重なり合うプラスチックフィルムF1、F2をより効率的に加熱圧着することができる。
【0059】
また、加圧ブロック20における押えブロック21の突出部21aの先端面に多数の穴210が規則的に配列されるように形成されているので、その先端面にて押えられて加熱圧着されるプラスチックシートの当該加熱圧着部分には、規則的に配列された多数の穴210による凹凸模様が付くので(図9参照)、そのシール部分の美麗性を高めることもできる。
【0060】
なお、受け板部材31のゴム板部材31aのプラスチックフィルムと逆側に貼り付ける耐熱性補強シート31cとして、ガラス繊維補強フッ素樹脂シートの他、金属板、ガラス繊維補強エポキシ板等を用いることができる。
【0061】
また、なお、縦冷却装置12b及び複数の横冷却装置13bのそれぞれも、その基本的な構造は、前述したシール装置と同じである。ただし、加圧ブロック20及び支持ブロック30には線状ヒータ22a、22b、32a、32bが設けられておらず、ヒートブロック22、32に代えて単なる金属製ブロックが用いられる。また、これらの金属製ブロック内に冷却液を通すようにすることもできる。加圧ブロック20では、ヒートブロック22に代えて用いられる金属製ブロックに前述した構造の押えブロック21が固定される。また、支持ブロック30では、ヒートブロックに代えて用いられる金属製ブロックに前述した構造の受け板部材31が載せ置かれる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上、説明したように、本発明に係る押えブロックは、加熱圧着すべき重なり合ったプラスチックフィルムをそれらのずれを抑制しつつ直接押えることができるという効果を有し、重なり合うプラスチックフィルムの加熱圧着に際して用いられるシール装置や冷却装置における加圧ブロックの押えブロックとして有用である。
【符号の説明】
【0063】
11 加工台
12a 縦シール装置
12b 縦冷却装置
13a 横シール装置
13b 横冷却装置
14 カッター
20 加圧ブロック
21 押えブロック
21a 突出部
21b ベース部
22、32 ヒートブロック(加熱部)
22a、22b、32a、32b 線状ヒータ
210 穴(凹部)
211 盛り上がり部(凸部)
30 支持ブロック
31 受け板部材
31a ゴム板部材
31b 耐熱性樹脂シート(耐熱性樹脂部材)
31c 耐熱性補強シート(耐熱性補強部材)
40 袋
41 底シール部
42 開放端部
43a、43b 側シール部
100 シール加工部
110 フィルム供給部
111 送り出しローラ
112a、112b、112c、122a、122b、122c、123a、123b、123c 回転ローラ
120 フィルム裁断加工部
121 裁断機
130 袋切り出し部
200 製袋装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ブロックとの間で加熱圧着すべき重なり合うプラスチックフィルムを挟む加圧ブロックに設けられ、前記支持ブロックに対して前記プラスチックフィルムを押し付ける押えブロックであって、
前記プラスチックフィルムに接する表面に複数の凹部と、該複数の凹部のそれぞれの縁から前記支持ブロックの方向に突出する凸部とが形成された押えブロック。
【請求項2】
前記凸部の前記プラスチックフィルムに接する表面から突出する高さは、前記凹部の深さより小さい請求項1記載の押えブロック。
【請求項3】
前記凸部の前記プラスチックフィルムに接する表面から突出する高さは、前記プラスチックフィルムの厚さより小さい請求項1または2いずれか記載の押えブロック。
【請求項4】
前記複数の凹部それぞれの形状は、錐形状である請求項1乃至3いずれか記載の押えブロック。
【請求項5】
前記複数の凹部は、錐形状の尖鋭突起を複数有するローレット駒を前記押えブロックの前記プラスチックフィルムに接する表面に押し当てることによって形成されている請求項1乃至4いずれか記載の押えブロック。
【請求項6】
前記複数の凹部及び該複数の凹部のそれぞれの縁から突出する凸部は、隣接する凹部の縁から突出する凸部が重ならないように形成された請求項1乃至5のいずれかに記載の押えブロック。
【請求項7】
前記プラスチックフィルムに接する表面にフッ素樹脂分散金属メッキが施されている請求項1乃至6のいずれかに記載の押えブロック。
【請求項8】
加圧ブロックと、該加圧ブロックに対向して配置された支持ブロックとを備え、前記加圧ブロックと前記支持ブロックとによって重なり合うプラスチックフィルムを挟んで加熱圧着するシール装置であって、
前記加圧ブロックは、請求項1乃至7のいずれかに記載の押えブロックと、
該押えブロックを加熱する加熱部とを有するシール装置。
【請求項9】
前記支持ブロックは、前記重なり合うプラスチックフィルムに接して前記加圧ブロックの押えブロックによる前記プラスチックフィルムの押え付けを受ける受け板部材と、
該受け板部材を加熱する加熱部とを有する請求項8記載のシール装置。
【請求項10】
前記受け板部材は、耐熱性ゴムにて形成されたゴム板部材と、該ゴム板部材の前記プラスチックフィルム側の表面に設けられた耐熱性樹脂部材と、前記ゴム板部材の前記プラスチックフィルムと逆側の表面に設けられた当該ゴム板部材より剛性の高い耐熱性補強部材とを有する請求項9記載のシール装置。
【請求項11】
前記耐熱性樹脂部材は、前記ゴム板部材の前記プラスチックフィルム側の表面に貼り付けられたガラス繊維補強耐熱性樹脂シートにて構成される請求項10記載のシール装置。
【請求項12】
前記耐熱性補強部材は、前記ゴム板部材の前記プラスチックフィルムと逆側の表面に貼り付けられたガラス繊維補強耐熱性樹脂シートにて構成される請求項10または11記載のシール装置。
【請求項13】
前記支持ブロックの加熱部は、前記受け板部材が載せ置かれる金属製ブロックと、該金属製ブロック内に設けられたヒータとを有する請求項10乃至12のいずれかに記載のシール装置。
【請求項14】
前記加圧ブロックの加熱部と、前記支持ブロックの加熱部とは、同じ加熱温度に設定される請求項10乃至13のいずれかに記載のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−56104(P2012−56104A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198842(P2010−198842)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】