説明

押ボタンスイッチ装置

【課題】 操作体ないし押ボタン部の押圧部位に関係なく操作荷重をほぼ均一にし、さらに操作荷重の可変設定を行える構造にする。
【解決手段】 操作体70に対し押圧体84を介してタクトスイッチの操作力及びラバー体の復元力による上向きの付勢力を付与し、押ボタン部72の押圧操作により、操作体70が押圧体84の左、右片の後端部を押し下げて、段部88と当接する両当接片を支点として押圧体84前端の作動片を押し上げ、タクトスイッチをオンする。このとき、押ボタン部72の押圧時にその押圧部位に応じて操作体70の回転中心が切り換わり、操作体70の押圧部位と回転中心との距離が押圧部位に関係なくほぼ同じになり、操作体70の押圧部位に関係なく操作荷重がほぼ均一になる。また、押圧体84の支点となる両当接片に当接すべき段部88の位置を変更することで、操作荷重を任意に可変設定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押ボタン部の下向きの押し操作によりオンまたはオフに切り換わるスイッチが押ボタン部の中央より一端側にずれて配設された押ボタンスイッチ装置に関し、例えばスイッチケース内の照光により操作状態を表示する場合に適用されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチケース内の照光により操作状態を表示する場合に適用される押ボタンスイッチ装置は、例えば図12に示すように構成されている。即ち、図12に示すように、スイッチケース1の下面側にプリント基板3が配設され、このプリント基板3の上面に発光ダイオード(以下、LEDと称する)5が実装され、円錐台の周面状の反射面を有しこのLED5の光を上方に反射するリフレクタ7がLED5と共にスイッチケース1内のほぼ中央部に臨んで配設され、プリント基板3のリフレクタ7の右方に、例えばタクトスイッチから成る内蔵スイッチ9が実装されている。
【0003】
さらに、押ボタン11が着脱自在に装着された操作体13がスイッチケース1の上面を閉塞するように配設され、押ボタン11の押圧により操作体13が一体的に押下され、押下された操作体13により、内蔵スイッチ9の上面側に配置されたスイッチ片9aが可撓性を有するラバー体15を介して下方に押されて内蔵スイッチ9がオンするようになっている。
【0004】
このとき、操作体13の左端13aがスイッチケース1の左端の段差部17上に載置されてスイッチケース1の左上端の係止突起19の下面に係止し、操作体13の右端下面に下方に垂下して一体形成された鉤状部13bが、スイッチケース1の右端の断面L字状の係合部21に下方から係脱自在に係合している。
【0005】
そして、ラバー体15の弾性によって操作体13には上向きに付勢力が付与され、押ボタン11の押圧によりこの付勢力に抗して操作体13が押下されると、操作体13の左端13aを支点として操作体13の右端の鉤状部13bが、図12中の矢印のように下方に回転し、操作体13の右端部下面がラバー体15を圧迫して内蔵スイッチ9のスイッチ片9aが押下され、内蔵スイッチ9がオンする。
【0006】
ところで、押ボタン11の押圧を解除すると、ラバー体15の弾性によって操作体13の右端の鉤状部13bが上方に回転し、操作体13の右端の鉤状部13bが再びスイッチケース1の係合部21に係合し、操作体13が押下前の元の状態に復帰する。
【0007】
尚、操作体13への付勢力はラバー体15以外のばね等の付勢手段によって与えられることもある。
【0008】
このような押ボタンスイッチ装置の他の例として、押ボタンの押圧時に押ボタンの一端が当接部材に当接し、その一端を支点として押ボタンの他端側が回転してスイッチを動作させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、異なる例として、押ボタン本体の下面側に一対の支持軸を設け、これら両支持軸に2枚重ねに折り曲げられたバネ部材を係止し、バネ部材の折り返し片によりスイッチを押圧操作するようにし、このとき押ボタン本体のどの部分を押圧しても折り返し片の一部分を支点として押ボタン本体が押し下げられるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献1】特開2004−119238号公報(段落0012、図2)
【特許文献2】特開平5−266754号公報(段落0022,0023,0026、図8、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、これら従来の押ボタンスイッチは、押ボタン或いは押ボタン本体を押圧操作したときの支点が1つだけであるため、押ボタン或いは押ボタン本体の押圧部位によって支点から押圧部位までの距離が大きく異なり、その結果、支点から遠い部位と近い部位とで操作荷重の差が大きくなり、操作者に対して、押圧部位の違いによる操作荷重の軽重に伴う違和感を与えるという問題点があった。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、操作体ないし押ボタン部の押圧部位に関係なく操作荷重をほぼ均一にし、さらに操作荷重の可変設定を行える構造にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するために、請求項1に記載の押ボタンスイッチ装置は、押ボタン部の下向きの押圧操作によりオンまたはオフに切り換わるスイッチが、前記押ボタン部の中央より一端部にずれてスイッチケース内に配設された押ボタンスイッチ装置において、前記押ボタン部の押圧操作、操作解除に連動して上下に移動可能に前記スイッチケース内に配設され、前記スイッチケースから外れないように周縁の複数の係合箇所が前記スイッチケースの周縁に係合し、押圧時に押圧部位に応じた前記係合箇所を回転中心として当該押圧部位が下向きに回転する操作体と、前記スイッチケース内の前記操作体の下方に配設され両端間の任意の位置を支点として一端側及び他端側が上下に互いに反対方向に揺動し一端側の上動によって前記スイッチを押圧する押圧体と、前記押圧体の一端側を下向きに付勢して他端側を上向きに付勢する付勢手段と、前記操作体の下面ほぼ中央に形成されて前記押圧体の他端部に当接し前記押ボタン部の押圧に連動した前記操作体の下動により前記押圧体の他端部を前記付勢手段の付勢力に抗して下動させる当接部とを備えたことを特徴としている。
【0014】
また、請求項2に記載の押ボタンスイッチ装置は、前記付勢手段が前記スイッチであり、前記付勢力が前記スイッチの操作力により発生されることを特徴としている。
【0015】
また、請求項3に記載の押ボタンスイッチ装置は、前記スイッチと前記押圧体の一端部との間に前記スイッチを覆って可撓性ラバー体が設けられ、前記付勢手段が前記ラバー体であり、前記付勢力が前記ラバー体の復元力により発生されることを特徴としている。
【0016】
また、請求項4に記載の押ボタンスイッチ装置は、突部が前記スイッチケースまたは前記押圧体に設けられ、該突部の位置が前記押圧体の前記支点となることを特徴としている。
【0017】
また、請求項5に記載の押ボタンスイッチ装置は、前記突部が、その位置を前記押圧体の一端に向かう方向及び他端に向かう方向に移動自在でかつ固定可能に設けられていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項6に記載の押ボタンスイッチ装置は、前記操作体がほぼ矩形であり、複数の前記係合箇所が前記操作体の四隅に形成されていることを特徴としている。
【0019】
また、請求項7に記載の押ボタンスイッチ装置は、前記スイッチケース内の一端側に配設され前記スイッチと共に発光素子が実装された回路基板と、前記発光素子の光を前記押ボタン部まで導光する導光部材とを備えていることを特徴としている。
【0020】
また、請求項8に記載の押ボタンスイッチ装置は、前記スイッチケースの裏面に平行な両方向にスライド自在かつ着脱自在に取り付けられた裏面カバーと、前記裏面カバーのスライド方向における一方の端部に一体形成されたスイッチ取付保持用の第1フック体と、前記スイッチケースの前記スライド方向における他方の端部に形成された第2フック体と、前記スイッチケースの裏面と前記裏面カバーとの間に配設され前記裏面カバーを前記スイッチケースに対しスライド方向の一方向へ付勢する付勢体とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、操作体の下面中央の当接部が押圧体に当接しているため、押ボタン部を押圧操作しない状態では、操作体は押圧体を介して付勢手段による上向きの付勢力を受けるため、操作体を上向きに付勢するばね等の付勢体を別途必要とせず、部品点数の低減を図って構造の簡略化を図ることができる。
【0022】
さらに、押圧体は下動する操作体の当接部によってその他端側が下方に押し下げられ、押圧体の支点を挟んだ一端側は反対方向の上向きに押し上げられることとなってスイッチが押圧され、スイッチがオンまたはオフする。このとき、押圧体は他端、支点、一端がそれぞれてこの力点、支点、作用点の関係を成すため、スイッチの操作力(操作荷重)はそのスイッチ固有の一定値であるから、支点の位置を適宜設定することで、他端側に加えるべき荷重を可変設定することができる。
【0023】
より具体的には、支点の位置を押圧体の他端(力点)寄りにすると、スイッチを押圧してオンまたはオフするために必要な押圧体の他端側への荷重は大きくなり、これとは逆に支点の位置を押圧体の一端(作用点)寄りにすると、スイッチを押圧してオンまたはオフするために必要な押圧体の他端側への荷重は小さくなる。
【0024】
このように、押圧体の支点位置を変更するだけで、スイッチ操作荷重を適宜変更することができる。
【0025】
また、押ボタン部を押圧操作すると、この押圧操作に連動して、操作体の押圧部位に応じた係合箇所を回転中心として操作体の押圧部位が付勢力に抗して下向きに回転する。
【0026】
そのため、操作体の押圧部位に応じて回転中心が切り換わって、操作体の押圧部位がどこであっても押圧部位と支点との距離がほぼ同じになり、従来のように支点が1つに固定されている場合に比べて、操作体の押圧部位に関係なく操作荷重をほぼ均一にすることができる。
【0027】
また、請求項2に記載の発明によれば、スイッチを付勢手段として用い、スイッチの操作力を付勢力として押圧体を介して操作体に与えるため、操作体の付勢のための付勢体を別途設ける必要がないのは勿論のこと、付勢手段としてばね等を設ける必要もなく、部品点数をよりいっそう低減することができる。
【0028】
また、請求項3に記載の発明によれば、可撓性ラバー体の復元力を用いるため、押圧体を介して操作体に与える付勢力とするにはスイッチの操作力が弱すぎる場合に、装置の大型化を招くことなく非常に有効である。
【0029】
また、請求項4に記載の発明によれば、スイッチケースまたは押圧体に設けた突部を支点とするため、操作体の押圧によって押圧体を確実に揺動させることができる。
【0030】
また、請求項5に記載の発明によれば、スイッチケースまたは押圧体に設けた突部の位置を移動させ、適当な位置で固定することにより、装置を設置する現場において、押圧体の他端側に加えるべき荷重を使用者の好みや使い勝手に合うように簡単に変更することができる。
【0031】
また、請求項6に記載の発明によれば、操作体の複数の係合箇所が操作体の四隅に形成されているため、操作体の押圧部位とその回転中心との距離を押圧部位に関係なくほぼ同じにすることができ、操作荷重の均一性を確保することができる。
【0032】
また、請求項7に記載の発明によれば、同一回路基板上にスイッチと発光素子を実装し、導光部材により発光素子の光を押ボタン部に導光するため、発光素子をスイッチとは別の回路基板に実装し、発光素子を押ボタン部の下方に配置する場合や押ボタン部の下方以外でスイッチとは異なる位置に配置する場合に比べ、装置の大型化を招くこともなく、より薄型の押ボタンスイッチ装置を提供することが可能になる。
【0033】
また、請求項8に記載の発明によれば、押ボタンスイッチ装置を固定部材の所定の取付位置に取り付ける場合に、裏面カバー側の第1フック体を反対側の取付箇所に引っ掛けつつ、裏面カバーをスイッチケースに対して付勢体の付勢力に抗してスライドさせた状態で、スイッチケース側の第2フック体を取付箇所に引っ掛けることで、押ボタンスイッチ装置を所定位置に簡単に取り付けることができるため、装置の取付時の取扱いが非常に容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明の一実施形態について図1ないし図11を参照して説明する。但し、図1は外観斜視図、図2は平面図、図3は図2中のX−X線における切断右側面図、図4は図2中のY−Y線における切断右側面図、図5は押ボタン部を除去した内部構成を示す平面図、図6は図5でさらに操作体を除去した内部構成を示す平面図、図7は斜め上方から見た分解斜視図、図8は斜め下方から見た分解斜視図、図9ないし図11は押ボタンスイッチ装置のそれぞれ異なる状態における取付動作の説明図である。
【0035】
<構成>
本実施形態における押ボタンスイッチ装置は、図1〜8に示すように構成されている。即ち、本実施形態における押ボタンスイッチ装置は、樹脂製スイッチケース50を備えており、スイッチケース50は、矩形の枠体50aと、該枠体50aの上面前寄りの位置に枠体50a内を前後に仕切るべく一定形成された枠体50aの高さのほぼ半分程度の高さを有する仕切板50bと、該仕切板50bによる前端部の空間の上面を閉塞する第1の閉塞板50cと、仕切板50bによる前側を除く中央前寄りから後端にかけての空間の下面を閉塞する第2の閉塞板50dとを備えている。
【0036】
そして、枠体50aと仕切板50bと第1の閉塞板50cとにより、枠体50a内の前端部に形成された平面視横長の長方形状を成す空間が、後述するプリント基板の配置スペース52aとして使用され、枠体50aと仕切板50bと第2の閉塞板50dとにより、枠体50a内の中央前寄りから後端にかけて形成された平面視ほぼ正方形状を成す空間が、後述する押ボタン部の上下への可動スペース52bとして使用される。
【0037】
まず、枠体50a内の前端部に形成された配置スペース52aには、後述する発光素子の点灯制御用の半導体集積回路54をはじめ各種の回路素子が実装されたプリント基板56が配設され、このプリント基板56のほぼ中央部にはタクトスイッチ58が実装されている。なお、プリント基板56はその裏面が第1の閉塞板50cの下面に対向して配設されており、配設状態のプリント基板56の下面側にタクトスイッチ58が位置し、この状態でタクトスイッチ58が、スイッチ固有の所定値以上の操作力によって上向きに押圧されることにより、タクトスイッチ58がオンするようになっている。
【0038】
また、配設状態のプリント基板56の下面後端部には、発光素子である6個(但し、個数は6個に限るものではない)の発光ダイオード(以下、LEDと称する)60が配列状態で実装され、アクリルなどの透明材料からなる断面ほぼL字状の導光部材62によりこれらのLED60の光が、可動スペース52bに配設される後述の押ボタン部72まで導光されるようになっている。
【0039】
このとき、特に図3に示されるように、導光部材62は、可動スペース52bの左右幅よりも幅の狭い平板状基部62aと、該基部62aの前端に上向きにほぼ90゜屈曲した屈曲部62bとから成り、屈曲部62bの上端面は各LED60それぞれに近接して導光し易いように波型形状に加工されると共に、基部62aと屈曲部62bとの境界は、各部62a,62bに対してほぼ45゜の偏向用傾斜面62cが形成されている。そして、基部62aが配置スペース52a側から仕切板50bの下側を経て第2の閉塞板50dに沿って可動スペース52b内に導入され、屈曲部62bの後面が仕切板50bの前面に当接、係止されて導光部材62が枠体50a内に配設され、屈曲部62bの上端面の6個の山部分が各LED60それぞれに近接して対向配置されている。
【0040】
さらに、各LED60の発する光が、屈曲部62bの上端面の近接箇所から屈曲部62b内部に進入すると、傾斜面62cにより反射されてその方向がほぼ90゜偏向され、基部62aの面方向に各LED60の光が拡散し、その上方に配設される押ボタン部72が下方から照光されて押ボタン部72の押圧によるタクトスイッチ58のオン状態が表示、報知されるようになっている。なお、各LED60による押ボタン部72の照光効果を上げるため、導光部材62の下面に沿って白色の反射シート64が配設されている。
【0041】
ところで、プリント基板56に実装状態におけるタクトスイッチ58には、該タクトスイッチ58を下方から覆うように平面視四角形の可撓性ラバー体66が装着されており、このラバー体66の復元力とタクトスイッチ58の操作力とを合わせた下向きの力が、後述する押圧体84を介して押ボタン部72に対して上向きの付勢力として作用する。すなわち、ラバー体66とタクトスイッチ58が、押圧体84の付勢手段として機能する。よって、押ボタン部72を付勢するためのばね等の付勢手段を別途設ける必要がなく、部品点数の低減を図ることができる。
【0042】
つぎに、枠体50a内の中央前寄りから後端にかけて形成された可動スペース52bには、ほぼ正方形の枠状を成す操作体70が上下に移動自在に配設され、この操作体70の内側には透光性を有する樹脂等から成る平面視ほぼ正方形状の押ボタン部72が着脱自在に装着されている。
【0043】
ここで、操作体70は、枠状部70aと、該枠状部70aの上面内周側が一様に切除されて該枠状部70aの内周に沿って形成された段差部70bとを備えており、押ボタン部72は操作体70よりも上方に突出した押圧操作部72aと、その周囲に一体形成された鍔状部72bとを備え、この鍔状部72bの上面側に形成された複数個の切欠部72cに、操作体70の枠状部70aの内周に形成された爪部70cが係合することで、押ボタン部72が操作体70に着脱自在に装着され、押ボタン部72の押圧操作部分72aを押圧操作すると、これに連動して操作体70が枠体50a内で上下に移動する。
【0044】
ところで、操作体70の枠状部70aの各辺の外側面中央には、上下のガイド溝74が形成されると共に、枠体50aの可動スペース52bの内周の前後左右に各ガイド溝74に対応してガイド条76が形成され、操作体70の枠状部70aの左辺の外側上面及び右辺の外側上面の各前後端部には、合計4個の係合凹部78が切り欠き形成され、枠体50aの可動スペース52bの内周の左右に各係合凹部78に対応して下向きの係合爪80が形成されており、操作体70の左右を片方ずつ撓ませてながら可動スペース52b内に操作体70を挿入していくと、両ガイド溝74に両ガイド条76が嵌挿しつつ各係合凹部78に各係合爪80が係合し、操作体70が上方に抜けない状態で可動スペース52b内に上動自在に配設される。
【0045】
このとき、上記したように、後述する押圧体84を介してラバー体66の復元力とタクトスイッチ58の操作力とを合わせた下向きの力が押ボタン部72及び操作体70に上向きの付勢力として加わるため、操作体70に装着された押ボタン部72をこの付勢力に抗して下向きに押圧操作すると、操作体70が押ボタン部72の押圧に連動し、各係合爪80のうち押ボタン部72及び操作体70の押圧部位に応じた係合凹部78及びこれに係合した係合爪80を回転中心として操作体72の押圧部位が下向きに回転する。
【0046】
例えば、押ボタン部72の右前端部を押圧すると、左後側の係合凹部78とこれに係合した係合爪80が回転中心となり、押ボタン部72の左後端部を押圧すると、右前側の係合凹部78とこれに係合した係合爪80が回転中心となり、押ボタン部72の左端中央部を押圧すると、右側の両係合凹部78とこれらに係合した両係合爪80が回転中心となり、押ボタン部72の右端中央部を押圧すると、左側の両係合凹部78とこれらに係合した両係合爪80が回転中心となり、押ボタン部72を介した操作体70の押圧部位に応じて、操作体70の回転中心が切り換わる。
【0047】
図7、図8に示すように、平面視コ字状の金属性の押圧体84が、可動スペース52b内の操作体70の下方に配設されており、押圧体84の左右の両辺84a,84bは、図5、図6に示すように操作体70の左、右辺下方のほぼ中央部から前端にわたって位置すると共に、押圧体84の両辺84a,84bを橋絡する前辺84cは、図3に示すように配置スペース52a内に導入され、前辺84cの前端中央に一体形成された矩形の作動片84dがラバー体66の中央の突部下面に当接している。
【0048】
また、押圧体84の左、右辺84a,84bの外側ほぼ中央に突出して当接片86a,86bがそれぞれ一体形成され、両当接片86a,86bの下方位置におけるスイッチケース50の枠体50a上面それぞれには、押圧体84を支える支点となる突部を成す段部88が上方に盛り上がって一体形成され、操作体70の左右両辺の下面ほぼ中央部にそれぞれ下向きに突設された当接部90が押圧体84の左、右辺84a,84bの後端部上面に当接している。
【0049】
さらに、押圧体84は、左右の段部88に当接する両当接片86a,86bを支点とし、左右の当接部90に当接する押圧体84の左、右辺84a,84bの後端部を力点とし、ラバー体66に当接する作動片84dを作用点とする「てこ」として機能し、押ボタン部72の押圧により、その押圧部位に応じた操作体70の部位が下向きに回転すると、操作体70の両当接部90により押圧体84の左、右辺84a,84bの後端部が下向きの押し下げられ、これにより支点となる両当接片86a,86bを挟んで力点の反対側に位置する作動片84dが上向きに押し上げられてラバー体66を介してタクトスイッチ58がこれらの復元力及び操作力に抗して押圧され、タクトスイッチ58がオンするようになっている。ここでは、左右の段部88に押圧体84の両当接片86a,86bが当接して支点とするようにしているが、当接片86a,86bがなく直接押圧体84の左右の両辺84a,84bの中央部下面に当接するようにしてもよい。
【0050】
なお、押圧体84の力点の位置は、押ボタン部72及び操作体70の中心と平面視でほぼ同列上に並ぶように設定されており、これにより押ボタン部72の押圧部位がどこであっても、押圧体84の力点に加わる操作荷重をほぼ均一にしている。
【0051】
そして、押圧体84の支点の位置、つまり左右の段部88が押圧体84に当接する位置を力点側又は作用点側に変更すれば、押圧体84の力点に加わる操作荷重を任意に可変設定することができる。すなわち、作用点側に加わるべきタクトスイッチ58の操作力とラバー体66の復元力との合力は一定であるため、例えば支点を力点側に寄せれば、タクトスイッチ58の操作力とラバー体66の復元力との合力に打ち勝つだけの操作荷重としてより大きな荷重が必要になり、逆に支点を作用点側に寄せれば、タクトスイッチ58の操作力とラバー体66の復元力との合力に打ち勝つだけの操作荷重はより小さくて済む。
【0052】
ところで、特に図8に示されるように、スイッチケース50の下面側の第2の閉塞板50dには、左右の両端部から外側に張り出して前後方向の突条体92が形成され、これらの突条体92と枠体50aの左右の両辺との間に前後方向のガイド路が形成されている。
【0053】
そして、図3、図4に示すように、スイッチケース50の下面側には該下面を覆う裏面カバー94が設けられ、前記ガイド路をスライド自在に移動する内向きの鉤状係合体96が裏面カバー94の左端前後及び右端前後にそれぞれ一体形成され、これにより裏面カバー94がスイッチケース50の下面を覆って着脱自在に装着されている。
【0054】
この裏面カバー94の後端部上面には、図7に示すように矩形凹部とその左右の線状溝から成る収容部98が形成され、中央が前側に凹状に屈曲した付勢体としての線状ばね100が、その両端を係止しつつ中央部が前後に移動可能に収容部98に収容されている。また、第2の閉塞板50dの後端部下面には、図8に示すように係合突起102が下向きに突出して一体形成され、この係合突起102に線状ばね100中央の屈曲部分が前側から当接し、これにより裏面カバー94が線状ばね100によって前方向に付勢された状態でスイッチケース50の下面側にスライド自在に装着されている。なお、線状ばね100による前方への付勢力が加わっていない状態において、裏面カバー94がスイッチケース50から脱離せず、かつ、裏面カバー94を容易にスライドさせ得るように、特に後側左右の鉤状係合体96と枠体50aには凹凸の組み合わせによる係止構造が採用されている。
【0055】
さらに、裏面カバー94の下面前端には前向き横長のスイッチ取付保持用の第1フック体106が一体形成され、スイッチケース50の枠体50aの下面後端には後向き横長のスイッチ取付保持用の第2フック体108が一体形成されている。
【0056】
そして、組み上がった押ボタンスイッチ装置を所定の固定部材の取付位置に取り付ける場合に、図9ないし図11に示すように、固定部材110にスイッチケース50とほぼ同形状の矩形の取付孔112を穿設し、図10に示すように、取付孔112に第1フック体106を係止し、この状態でスイッチカバー50を前方へ引っ張れば、線状ばね100の付勢力に抗して裏面カバー94がスイッチケース50に対して後方へスライドすることになり、両フック体106,108間の距離が縮まり、第2フック体108を取付孔112も係止することが可能になる。
【0057】
その後、スイッチカバー50の前方への引っ張りを解除すれば、線状ばね100の付勢力により裏面カバー94がスイッチケース50に対して前方へスライドしてもとの状態に戻り、図11に示すように、押ボタンスイッチ装置が固定部材110の取付孔112に取り付けられるのである。
【0058】
<中央押しの動作>
つぎに、押ボタン部72の押圧操作による押ボタンスイッチ装置の具体的動作について詳述するが、押ボタン部72の押圧に操作体70が連動するため、以下の動作等の説明では、押ボタン部72の押圧部位を操作体70の押圧部位と同一に扱って説明することとする。
【0059】
上記の構成を有する押ボタンスイッチ装置が、機器起動用スイッチなどに適用され、使用者が押ボタン部72を押圧操作した場合には、操作体70がタクトスイッチ58の操作力及びラバー体66の復元力による付勢力に抗して押圧され、操作体70の両当接部90が押圧体84の左、右辺84a,84bの後端部を押し下げるため、左右の段部88に当接する両当接片86a,86bを支点として押圧体84の前端の作動片84dが押し上げられ、これによりラバー体66を介してタクトスイッチ58がこれらの復元力や操作力に抗して押圧されてオンする。
【0060】
このとき、タクトスイッチ58のオンにより各LED60が点灯して導光部材62により各LED60の光が押ボタン部72まで導光され、各LED60の点灯状態が所定条件の成立(スイッチ操作後、機器が所定状態になるなど)まで保持され、押ボタン部72が照光されてタクトスイッチ58がオン状態になったことが使用者に目視できるようになっている。
【0061】
いま、図2中に示す押ボタン部72の中央であるB部分が押圧されると、押ボタン部72への押圧力が操作体70のほぼ中央部に加わる。このとき、操作体70は、各係合爪80の各係合凹部78との係合箇所のいずれをも支点とすることがなく、操作体70はラバー体66の復元力及びタクトスイッチ58の操作力による上向きの付勢力に抗して下方に平行移動し、押ボタン部72への押圧力が操作体70の中央付近に位置する両当接部90にそのまま伝わる。このとき、押圧時に両当接部90を介して操作体70が受ける反力は、押圧体84を介して受けるラバー体66の復元力とタクトスイッチ58の操作力とを合わせた力であり、これが操作荷重に相当する。
【0062】
その結果、操作体70の両当接部90により押圧体84の後端部が押し下げられ、上記したように、左右の段部88に当接する両当接片86a,86bを支点として押圧体84の前端の作動片84dが押し上げられ、これによりタクトスイッチ58が押圧されてオンする。
【0063】
<端押しの動作>
次に、図2中に示す押ボタン部72の中央B部分の左側のA部分が押圧されると、押ボタン部72への押圧力が操作体70の左端部寄りに加わるため、押圧体84の左辺84aを介して操作体70の左端部に加わる付勢力に抗して、操作体70の左端部が右側の両係合爪80と両係合凹部78との係合箇所P1,P2を回転中心として下向きに回転し、操作体70の左端部が下動する。
【0064】
そして、操作体70の左端部の下動により、操作体70の特に左側の当接部90が押圧体84の左辺84aを強く押下するが、押圧体84自体がある程度剛性を有するため、左辺84aの押下であっても押圧体84の右辺84bも同様に押下されることになる。
【0065】
その結果、押ボタン部72の中央B部分を押圧したのと同じように、左右の段部88に当接する両当接片86a,86bを支点として押圧体84の前端の作動片84dが押し上げられ、これによりラバー体66を介してタクトスイッチ58がこれらの復元力や操作力に抗して押圧されてオンする。
【0066】
一方、図2中に示す押ボタン72の中央B部分の右側のC部分が押圧されると、押ボタン部72への押圧力が操作体70の右端部寄りに加わるため、押圧体84の右辺84bを介して操作体70の右端部に加わる付勢力に抗して、操作体70の右端部が左側の両係合爪80と両係合凹部78との係合箇所P3,P4を回転中心として下向きに回転し、操作体70の右端部が下動する。
【0067】
そして、操作体70の右端部の下動により、操作体70の特に右側の当接部90が押圧体84の右辺84bを強く押下するが、押圧体84自体の剛性のため右辺84bの押下により押圧体84の左辺84aも同様に押下され、その結果、押ボタン部72の中央B部分を押圧したのと同じように、左右の段部88に当接する両当接片86a,86bを支点として押圧体84の前端の作動片84dが押し上げられ、これによりラバー体66を介してタクトスイッチ58がこれらの復元力や操作力に抗して押圧されてオンする。
【0068】
このとき、押ボタン部72のA部分及びC部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比すると、押圧部位であるA部分から支点P1,P2までの距離と、押圧部位であるC部分から支点P3,P4までの距離とはほぼ同じになり、しかも押ボタン72のA部分及びC部分をそれぞれ押圧したときの操作体70が受ける反力もほとんど同じであるため、押ボタン部72のA部分及びC部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重にほとんど差はない。
【0069】
また、押ボタン部72のB部分及びA(またはC)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比しても、押ボタン部72のB部分及びA(またはC)部分をそれぞれ押圧したときの操作体70が受ける反力に顕著な差はないことから、押ボタン部72のB部分及びA(またはC)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重の差は小さく、従来のように、押ボタンの操作時における支点が1つで、その支点から遠い部位を押圧したときと近い部位を押圧したときの操作荷重の差ほど大きくなることがない。
【0070】
よって、押ボタン部72のB部分及びA(またはC)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重は、使用者が違和感を覚えるほど大きくなることがなく、ほぼ同じような操作荷重になる。
【0071】
ところで、図2中に示す押ボタン部72の中央B部分の後側のE部分が押圧されると、押ボタン部72への押圧力が操作体70の後端部寄りに加わり、各係合爪80と各係合凹部78との係合箇所のうち前側、つまり上記したP2,P4を回転中心として、操作体70の後端部がラバー体66の復元力及びタクトスイッチ58の操作力による上向きの付勢力に抗して下向きに回転し、操作体70の後端部が下動する。
【0072】
そして、操作体70の後端部の下動により、左右の段部88に当接する両当接片86a,86bを支点として押圧体84の前端の作動片84dが押し上げられ、これによりタクトスイッチ58が押圧されてオンする。
【0073】
また、図2中に示す押ボタン72の中央B部分の前側のH部分が押圧されると、押ボタン部72への押圧力が操作体70の前端部寄りに加わり、各係合爪80と各係合凹部78との係合箇所のうち前側、つまり上記したP1,P3を回転中心として、操作体70の前端部がラバー体66の復元力及びタクトスイッチ58の操作力による上向きの付勢力に抗して下向きに回転し、操作体70の前端部が下動する。
【0074】
そして、操作体70の前端部の下動により、左右の段部88に当接する両当接片86a,86bを支点として押圧体84の前端の作動片84dが押し上げられ、これによりタクトスイッチ58が押圧されてオンする。
【0075】
このとき、押ボタン部72のE部分及びH部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比すると、押圧部位であるE部分から支点P2,P4までの距離と、押圧部位であるH部分から支点P1,P3までの距離とはほぼ同じになり、しかも押ボタン部72のE部分及びH部分をそれぞれ押圧したときの操作体70が受ける反力もほとんど同じであるため、押ボタン部72のE部分及びH部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重にほとんど差はない。
【0076】
また、押ボタン部72のB部分及びE(またはH)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比しても、押ボタン部72のB部分及びE(またはH)部分をそれぞれ押圧したときの操作体70が受ける反力に大きな差はないことから、押ボタン部72のB部分及びE(またはH)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重の差は小さく、従来のように、押ボタンの操作時における支点が1つで、その支点から遠い部位を押圧したときと近い部位を押圧したときの操作荷重の差ほど大きくなることはない。
【0077】
よって、押ボタン72のB部分及びE(またはH)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重は、使用者が違和感を覚えるほど大きくなることがなく、ほぼ同じような操作荷重になる。
【0078】
<隅押しの動作>
さらに、図2中に示す押ボタン部72の左後側のD部分が押圧されると、押ボタン部72への押圧力が操作体70の左後端部寄りに加わるため、押圧体84の左辺84aを介して操作体70の左後端部に加わる付勢力に抗して、操作体70の左後端部が右前側の両係合爪80と両係合凹部78との係合箇所P2を回転中心として下向きに回転し、操作体70の左後端部が下動する。
【0079】
また、図2中に示す押ボタン72の右後側のF部分が押圧されると、押ボタン部72への押圧力が操作体70の右後端部寄りに加わるため、押圧体84の右辺84bを介して操作体70の右後端部に加わる付勢力に抗して、操作体70の右後端部が左前側の両係合爪80と両係合凹部78との係合箇所P4を回転中心として下向きに回転し、操作体70の右後端部が下動する。
【0080】
一方、図2中に示す押ボタン72の左前側のG部分が押圧されると、押ボタン部72への押圧力が操作体70の左前端部寄りに加わるため、押圧体84の左辺84aを介して操作体70の左前端部に加わる付勢力に抗して、操作体70の左前端部が右後側の両係合爪80と両係合凹部78との係合箇所P1を回転中心として下向きに回転し、操作体70の左前端部が下動する。
【0081】
さらに、図2中に示す押ボタン72の右前側のI部分が押圧されると、押ボタン部72への押圧力が操作体70の右前端部寄りに加わるため、押圧体84の右辺84bを介して操作体70の右前端部に加わる付勢力に抗して、操作体70の右前端部が左後側の両係合爪80と両係合凹部78との係合箇所P3を回転中心として下向きに回転し、操作体70の右前端部が下動する。
【0082】
そして、操作体70の左後端部、右後端部、左前端部、右前端部のいずれが下動しても、押圧体84自体がある程度剛性を有するため、図2中の押ボタン部72のA,C部分を押圧した場合と同様に、押圧体84全体が押下されることになり、その結果、押ボタン部72の中央B部分を押圧したのと同じように、左右の段部88に当接する両当接片86a,86bを支点として押圧体84の前端の作動片84dが押し上げられ、これによりラバー体66を介してタクトスイッチ58がこれらの復元力や操作力に抗して押圧されてオンする。
【0083】
このとき、押ボタン部72のD部分及びF部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比すると、押圧部位であるD部分から支点P2までの距離と、押圧部位であるF部分から支点P4までの距離とはほぼ同じになり、しかも押ボタン部72のD部分及びF部分をそれぞれ押圧したときの操作体70が受ける反力もほとんど同じであるため、押ボタン部72のD部分及びF部分をぞれぞれ押圧したときの操作荷重にほとんど差はない。
【0084】
また、押ボタン部72のB部分及びD(またはF)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比しても、押ボタン部72のB部分及びD(またはF)部分をそれぞれ押圧したときの操作体70が受ける反力に大きな差はないことから、押ボタン部72のB部分及びD(またはF)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重の差は小さく、従来のように、押ボタンの操作時における支点が1つで、その支点から遠い部位を押圧したときと近い部位を押圧したときの操作荷重の差ほど大きくなることはない。
【0085】
よって、押ボタン部72のB部分及びD(またはF)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重は、使用者が違和感を覚えるほど大きくなることがなく、ほぼ同じような操作荷重になる。
【0086】
尚、押ボタン部72のG部分及びI部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重は、押ボタン部72のD部分及びF部分をそれぞれ押圧したときと同様の理由からほとんど同じになり、押ボタン部72のB部分及びG(またはI)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重の差についても、押ボタン部72のB部分及びD(またはF)部分をそれぞれ押圧したときと同様の理由から、使用者が違和感を覚えるほど大きくなることがなく、ほぼ同じような操作荷重になる。
【0087】
<操作荷重の可変設定>
このような操作荷重は、上記したように、押圧体84の支点の位置を適宜変更することで任意に可変設定することができる。つまり、押圧体84の作用点側に加わるべきタクトスイッチ58の操作力とラバー体66の復元力との合力は一定であることから、例えば操作荷重を現状よりも大きくしたいときには支点を力点側に寄せればよく、操作荷重を現状よりも小さくしたいときには支点を作用点側に寄せればよく、支点位置を変えることにより、非常に広い範囲(前記合力よりも大きい範囲、小さい範囲のどちらでも)で、操作荷重を可変設定できる。そして、支点の位置調整は、段部88を削ったり肉盛りするなどで対応可能である。
【0088】
また望ましくは、支点となる両段部88の位置を前後方向に移動自在であって、かつ、力点、作用点間の任意の位置で両段部88の位置を固定可能に、両段部88をスイッチケース50に設けるのがよい。例えば、スイッチケース50の前後方向のスライド溝を設け、このスライド溝に沿って両段部を同時にスライドできるように支持機構により支持し、スライド溝の途中数箇所に係止部を設けて、いずれかの係止部に支持機構を係止して段部の位置を固定するなどすればよい。
【0089】
従って、上記した実施形態によれば、押ボタン部72の押圧部位に応じて操作体70の回転中心となる係合箇所の位置を切り換えることができるため、押ボタン部72の中央以外の端部や隅部を押圧した場合であっても、押圧時の操作荷重を、押ボタン部72の中央を押圧したのとほぼ同じにすることができ、押ボタン部72の押圧部位に関係なく操作荷重をほぼ均一にすることができる。
【0090】
また、タクトスイッチ58の操作力とラバー体66の復元力との合力を、押圧体84を介して操作体70の付勢力としているため、操作体70の付勢のためにばね等の付勢手段を専用に設ける必要がなく、部品点数の低減を図ることができて装置を安価に構成することが可能になる。
【0091】
さらに、押圧体84の支点の位置を適宜調整することで、スイッチ操作荷重を可変設定することができ、使用者の好みや押ボタンスイッチ装置の使用状況に応じて操作荷重の可変設定を容易に行うことが可能になる。
【0092】
また、押ボタン部72を押圧し続けたときに、押圧体84前端の作動片84dがタクトスイッチ58に当接しつつ、操作体70を介して押圧体84の左、右辺84a,84bの後端に継続的に強い荷重がかかり続ける状況になることがあるが、例えば押圧体を矩形枠状とした場合であって、押ボタン部を押圧し続けたときに、矩形枠状の押圧体の両端部分が内蔵スイッチなどに当接してそれ以上の押下が阻止されつつ、矩形枠状の押圧体の中央部に継続的に強い荷重がかかり続ける状況に成る構成、つまり押圧体の両端部分が支持された状態で押圧体の中央部に荷重がかかる、いわゆる両持ち状態の押ボタンスイッチ装置と比較して、上記した実施形態における押圧体84は、段部88で支持され押圧体84の後端(左右辺84a,84bの後端)に荷重がかかる、いわゆる片持ち状態であり、押圧体84全体に及ぶ負荷は大幅に軽減される。その結果、押圧体84の長寿命化を図ることができ、スイッチ装置全体としての長寿命化が望める。
【0093】
さらに、各LED60をタクトスイッチ58と同じプリント基板56に実装し、導光部材62により各LED60の光を押ボタン部72まで導光するようにしたため、各LED60をタクトスイッチ58と別の回路基板に実装して押ボタン部72の下方に配置したり、押ボタン部72の下方以外でタクトスイッチ58とは異なる位置に配置する場合に比べ、装置の大型化を招くこともなく、より薄型の押ボタンスイッチ装置を得ることができる。
【0094】
また、裏面カバー94側に第1フック体106を設けると共に、スイッチケース50側に第2フック体108を設け、裏面カバー94をスイッチケース50に対して線状ばね100の付勢力に抗してスライドさせた状態で、第1フック体106を所定の箇所に引っ掛けつつ第2フック体108も引っ掛けることができるため、押ボタンスイッチ装置を所定位置に簡単に取り付けることができるため、スイッチ装置の取付作業を非常に容易に行うことができる。
【0095】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0096】
例えば、上記した実施形態では、押圧体84の支点をスイッチケース50に形成した段部88により構成したが、段部88に代えて、突起その他の突部により支点を構成してもよく、或いは、押圧体84側に設けた突部や、該突部とスイッチケース50側の凹部との組み合わせにより支点を構成してもよい。
【0097】
また、上記した実施形態では、ラバー体66及びタクトスイッチ58を押圧体84の付勢手段とした場合について説明したが、押圧体84の付勢のために専用ばねやその他のゴム等の弾性部材を付勢手段として設けてもよいのは勿論である。
【0098】
また、操作体70に付勢力を与えるラバー体66は、特に設ける必要はなく、タクトスイッチ58をはじめとするその他のスイッチの操作力のみで押圧体84を介して操作体70に上向きの付勢力を与えるようにしてもよい。
【0099】
また、上記した実施形態ではスイッチケース50をはじめ、操作体70を平面視矩形にした例を示したが、円形その他の対称形状であってもよいのは勿論であり、この場合にも上記した実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0100】
また、上記した実施形態では、操作体70に押ボタン部72を着脱自在に装着するように構成したが、操作体70に押ボタン部72が一体化された構成であっても構わない。
【0101】
さらに、押ボタンスイッチ装置として、必ずしもLED60やその他ランプ等の発光素子や導光部材62などを内蔵する必要はない。
【0102】
また、スイッチケース50に配設するスイッチも上記したタクトスイッチ60に限定されるものではなく、何らかの操作力を発生し得るスイッチであればよく、例えばリーフスイッチであってもよい。さらに、上記した実施形態のタクトスイッチ60は、押圧によりオンする(いわゆるA接点)として説明したがオフする(いわゆるB接点)構成でもよい。
【0103】
また、タクトスイッチ60のような有接点スイッチ以外に無接点スイッチを用いてもよく、この場合にはラバー体66のような可撓性を有する部材を設けて、ラバー体66の如き可撓性部材の復元力を押圧体84の一端(前端)の付勢力とするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
ところで、本発明の押ボタンスイッチ装置は、上記した実施形態において説明した如く機器起動用に適用でき、その他具体的にはコピー機のスタートスイッチをはじめ、特に発光素子を内蔵してスイッチ操作の有無を発光状態によって報知する電子機器用の各種スイッチをはじめ、その他薄型の操作スイッチに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施形態の外観斜視図である。
【図2】一実施形態の平面図である。
【図3】図2中のX−X線における切断右側面図である。
【図4】図2中のY−Y線における切断右側面図である。
【図5】一実施形態における押ボタン部を除去した内部構成を示す平面図である。
【図6】図5でさらに操作体を除去した内部構成を示す平面図である。
【図7】一実施形態の斜め上方から見た分解斜視図である。
【図8】一実施形態の斜め下方から見た分解斜視図である。
【図9】一実施形態のある状態における取付動作の説明図である。
【図10】一実施形態の異なる状態における取付動作の説明図である。
【図11】一実施形態のさらに異なる状態における取付動作の説明図である。
【図12】従来例の断面図である。
【符号の説明】
【0106】
50……スイッチケース
56……プリント基板(回路基板)
58……タクトスイッチ
60……LED(発光素子)
62……導光部材
66……ラバー体
70……操作体
72……押ボタン部
78……係合凹部(係合箇所)
80……係合爪(係合箇所)
84……押圧体
88……段部(突部)
94……裏面カバー
100……線状ばね(付勢体)
106……第1フック体
108……第2フック体
A,B,C,D,E,F,G,H,I……押圧部位
P1,P2,P3,P4……回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押ボタン部の下向きの押圧操作によりオンまたはオフに切り換わるスイッチが、前記押ボタン部の中央より一端部にずれてスイッチケース内に配設された押ボタンスイッチ装置において、
前記押ボタン部の押圧操作、操作解除に連動して上下に移動可能に前記スイッチケース内に配設され、前記スイッチケースから外れないように周縁の複数の係合箇所が前記スイッチケースの周縁に係合し、押圧時に押圧部位に応じた前記係合箇所を回転中心として当該押圧部位が下向きに回転する操作体と、
前記スイッチケース内の前記操作体の下方に配設され両端間の任意の位置を支点として一端側及び他端側が上下に互いに反対方向に揺動し一端側の上動によって前記スイッチを押圧する押圧体と、
前記押圧体の一端側を下向きに付勢して他端側を上向きに付勢する付勢手段と、
前記操作体の下面ほぼ中央に形成されて前記押圧体の他端部に当接し前記押ボタン部の押圧に連動した前記操作体の下動により前記押圧体の他端部を前記付勢手段の付勢力に抗して下動させる当接部と
を備えたことを特徴する押ボタンスイッチ装置。
【請求項2】
前記付勢手段が前記スイッチであり、前記付勢力が前記スイッチの操作力により発生されることを特徴とする請求項1に記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項3】
前記スイッチと前記押圧体の一端部との間に前記スイッチを覆って可撓性ラバー体が設けられ、前記付勢手段が前記ラバー体であり、前記付勢力が前記ラバー体の復元力により発生されることを特徴とする請求項1に記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項4】
突部が前記スイッチケースまたは前記押圧体に設けられ、該突部の位置が前記押圧体の前記支点となることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項5】
前記突部が、その位置を前記押圧体の一端に向かう方向及び他端に向かう方向に移動自在でかつ固定可能に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項6】
前記操作体がほぼ矩形であり、複数の前記係合箇所が前記操作体の四隅に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項7】
前記スイッチケース内の一端側に配設され前記スイッチと共に発光素子が実装された回路基板と、前記発光素子の光を前記押ボタン部まで導光する導光部材とを備えていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項8】
前記スイッチケースの裏面に平行な両方向にスライド自在かつ着脱自在に取り付けられた裏面カバーと、前記裏面カバーのスライド方向における一方の端部に一体形成されたスイッチ取付保持用の第1フック体と、前記スイッチケースの前記スライド方向における他方の端部に形成された第2フック体と、前記スイッチケースの裏面と前記裏面カバーとの間に配設され前記裏面カバーを前記スイッチケースに対しスライド方向の一方向へ付勢する付勢体とを備えていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の押ボタンスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−59773(P2008−59773A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231756(P2006−231756)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】