説明

押出成形用エンボス型ロール、及びそれを用いたエチレン系共重合体樹脂シートの製造方法

【課題】 添加剤を含有するエチレン系共重合体樹脂シートの成形においても、ラバーとられが発生せず、生産性を低下させないうえ、エンボス加工性などに優れた押出成形用エンボス型ロール、及びそれを用いたエチレン系共重合体樹脂シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 エチレン系共重合体樹脂シートの押出成形用エンボス型ロールであって、軸芯部の外周にシリコーンゴム層、接着層およびフッ素樹脂層が順次積層されてなり、かつ、算術平均粗さ(Ra)が5.0μm以上であり、最大高さ粗さ(Rz)が25〜40μmであることを特徴とする。このとき、シリコーンゴムのJIS K 6253 デュロメータ タイプAによるゴム硬度が30〜80であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系共重合体樹脂シートの押出成形用エンボス型ロールに関し、特に、添加剤を含有するエチレン系共重合体樹脂シートの成形であっても、ラバーとられが発生することなく、生産性やエンボス加工性などに優れた押出成形用エンボス型ロールに関する。
また、本発明は、このような押出成形用エンボス型ロールを用いたエチレン系共重合体樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出成形では、樹脂組成物を押出機にて溶融混練し、当該溶融樹脂をダイから押出して、一組のロール対で急速冷却しながらシート化する方法が一般的である。上記「一組のロール対」としては、冷却ロールと、当該冷却ロールに溶融樹脂シートを押圧するための押圧ロールとの組合せがよく知られている。
また、押出成形シートの用途、機能その他の目的に応じて、溶融樹脂シートを冷却・押圧すると同時に、エンボス加工を施すことが多い。このエンボス加工は、たとえば前記押圧ロールの表面に意匠を刻設するなど様々な工夫を施すことによって達成されるものである(以下、このエンボス加工を施す押圧ロールのことを「エンボス型ロール」とも言う)。
【0003】
エンボス型ロールとしては、金属製の軸芯部の外周に、押出成形シートの用途、機能その他の目的に応じて、ゴムその他の材料からなる層(単層または複層)が通常設けられている。
例えば、エンボス型ロールとして、ゴム層が設けられたゴムロールを採用した場合、溶融状態の樹脂シートの粘着力は、金属製の冷却ロールに対するものとゴムロールに対するものとでは大きく異なるので、溶融樹脂シートがゴムロール(エンボス型ロール)に付着し易く、生産効率が悪くなるという問題があった。この問題を解決するために、エンボス型ロールの表面材質をフッ素樹脂としたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、エンボス型ロールではないが、軸芯部の外周にゴム被覆層、接着層およびフッ素系樹脂被覆層が積層されてなる鏡面成形ロールも提案されており(特許文献2参照)、上記ゴム被覆層としては、ショアーBゴム硬度が60〜90のゴム材料が好ましく、優れた耐熱性を得る観点からシリコーンゴム等を使用することが好ましい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−16270号公報
【特許文献2】特開平10−249915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、近年、押出成形シートに機能性を付与する為に多種多様な添加剤を樹脂に添加することが検討されている。
これらの添加剤の中には、成形時(加工時)にシート表面にブリードしてきたり、加工時の熱によりベーパーとなったり、ダイのリップに付着したりして、加工適正を悪化させるという問題が生じることがある。特に液状添加剤であると、上記問題は顕著に現れる。成形装置(加工設備)の中でもこのような不具合の影響を特に受けやすいものとしてゴムロールが挙げられる。ゴムロールは、その組成からある種の添加剤が表面に付着し易く、さらには添加剤がゴムロール中に浸透してしまうことがある。このような現象が生じた場合、シート成形時にダイから出てきた溶融樹脂(シート)がゴムロールに粘着してしまう現象(以下「ラバーとられ」という。)が起こりやすい。
ラバーとられが発生すると、ゴムロールに溶融樹脂が巻きついてしまい、装置(すなわち、生産)を一旦止めて清掃する必要が生じて生産性が低下するとともに、ゴムロール自体が使用できなくなることもある。
【0007】
本発明は、以上の諸点を考慮し、添加剤を含有するエチレン系共重合体樹脂シートの成形であっても、ラバーとられが発生せず、生産性を低下させないうえ、エンボス加工性などに優れた押出成形用エンボス型ロール、及びそれを用いたエチレン系共重合体樹脂シートの製造方法を提供することを課題とする。
これに対して、上記特許文献1には、溶融樹脂シートの当該樹脂種や凹凸の具体的形状その他の形態の詳細については何ら記載されていない。
また、上記特許文献2に記載された鏡面成形ロールは、シリコーンゴムと、接着層と、フッ素樹脂層を順次積層してなる構造を有しているものの、鏡面状の平滑面であるプラスチックシートを成形するために、あくまで“鏡面”であって、これとは逆の形態である不均一な凹凸形態については、何ら記載されていない。また、エンボスロールは、金属面にレンズ形状を賦形するための模様が刻設された旨が記載されているものの、その構成および組成並びにエンボスの具体的形状その他の形態の詳細については何ら記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、特定の積層構造、つまり軸芯部の外周に第2層および第3層を有し、かつこれらの層が各々特定の組成、物性を有するエンボス型ロールであれば、様々な添加剤を配合したエチレン系共重合体樹脂であっても、成形時にラバーとられが発生せず、生産性が低下しないうえ、優れたエンボス加工性が維持できることを見出した。
【0009】
本発明は、かかる知見のもとでなし得たものであり、以下の構成を特徴とする。
(1)エチレン系共重合体樹脂シートの押出成形用エンボス型ロールであって、
軸芯部の外周にシリコーンゴム層、接着層およびフッ素樹脂層が順次積層されてなり、かつ、算術平均粗さ(Ra)が5.0μm以上であり、最大高さ粗さ(Rz)が25〜40μmであることを特徴とする押出成形用エンボス型ロール。
(2)前記シリコーンゴムのJIS K 6253 デュロメータ タイプAによるゴム硬度が30〜80である、前記(1)に記載の押出成形用エンボス型ロール。
(3)前記フッ素樹脂層の厚みが0.3〜0.7mmである、前記(1)または(2)に記載の押出成形用エンボス型ロール。
【0010】
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の押出成形用エンボス型ロールを用いたエチレン系共重合体樹脂シートの製造方法であって、
前記エチレン系共重合体樹脂100重量部に対して、添加剤の添加量が1〜30重量部であることを特徴とするエチレン系共重合体樹脂シートの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の押出成形用エンボス型ロールは、様々な添加剤を配合したエチレン系共重合体樹脂の成形であっても、ラバーとられが発生せず、生産性を低下させない、しかもエンボス加工性等が良好なものである。
また、本発明のエチレン系共重合体樹脂シートの製造方法によれば、上記のような優れた効果を発現する押出成形用エンボス型ロールを用いるので、より高品質のシートを高い歩留まりで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の押出成形用エンボス型ロールを示した説明図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の押出成形用エンボス型ロールは、エチレン系共重合体樹脂シートの押出成形用エンボス型ロールであって、軸芯部の外周にシリコーンゴム層、接着層およびフッ素樹脂層が順次積層されてなり、かつ、JIS B 0601−2001(ISO4287−1997準拠)に準拠して測定される算術平均粗さ(Ra)が5.0μm以上であり、最大高さ粗さ(Rz)が25〜40μmであることを特徴とする。
算術平均粗さ(Ra)が5.0μm以上、最大高さ粗さ(Rz)が25〜40μmであると、様々な添加剤を配合したエチレン系共重合体樹脂であっても、成形時にラバーとられがより発生しにくく、エンボス加工もより良好なものとなり、成形されたシートの外観も良好である。
算術平均粗さ(Ra)が5.0μm未満であると、ラバーとられの防止効果が不十分となる。算術平均粗さ(Ra)の上限は、特に限定されず、所望の表面意匠(エンボス型)により適宜設定される。例えば、得られたエチレン系共重合体樹脂シートを太陽電池の封止材として使用する場合には、10μm程度を上限とすることが適している。
最大高さ粗さ(Rz)が25μm未満であると、ラバーとられが発生しやすくなる。40μmを超えると、成形後のシート外観が悪化しやすくなる。
【0014】
図1に、本発明の押出成形用エンボス型ロール10を示す。図1(A)は、エンボス型ロール10の斜視図であり、(B)は、当該ロール10の断面図である。
図1に示すように、本発明の押出成形用エンボス型ロール10は、軸芯部2の外周にシリコーンゴム層3、接着層(非図示)およびフッ素樹脂層4が順次積層されてなる。
【0015】
〈軸芯部〉
軸芯部2は、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で鉄芯等の公知の軸芯を何らの制限なく用いることができる。
【0016】
〈シリコーンゴム層〉
シリコーンゴム層3のゴム硬度は、JIS K 6253 デュロメータ タイプA(ショア A)による硬度が30〜80であることが好ましい。ゴム硬度が30未満であると、シリコーンゴム層3とフッ素樹脂層4の硬度差が大きくなり、フッ素樹脂層4との界面で剥離するおそれがある。また、ゴム硬度が80を超えると、硬くなり過ぎ、エンボス加工が困難となるおそれがある。ゴム硬度は、40〜70であることがより好ましい。
シリコーンゴム層3の厚みは、冷却効率の観点から0.5〜5.0mm程度とすればよい。
【0017】
〈接着層〉
接着層(非図示)は、シリコーンゴム層3とフッ素樹脂層4とを接着させるための層であり、カップリング剤やシリコーン系化合物その他の公知の材料を用いることができる。
【0018】
〈フッ素樹脂層〉
フッ素樹脂層4をなすフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(四フッ素化樹脂、PTFE)等の完全フッ素化樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン(三フッ素化樹脂、PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびポリフッ化ビニル(PVF)等の部分フッ素化樹脂、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)およびエチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等のフッ素化樹脂共重合体を用いることができる。
これらフッ素樹脂の中でも、溶融エチレン系共重合体樹脂に対する剥離姓という観点で、PFAおよび/またはFEPを好適に用いることができる。これらは、デュポン社製“テフロン(登録商標)”、旭硝子社製“フルオン(登録商標)”として入手可能である。
【0019】
フッ素樹脂層4の厚みは、0.3〜0.7mmが好ましく、より好ましくは0.35〜0.5mmである。
フッ素樹脂層4の厚みが0.3mm未満であると、サンドブラストを用いて表面意匠(エンボス型)を形成する場合に、ブラストされるサンドがシリコーンゴム層3に埋没する可能性があり、表面意匠(エンボス型)がつけにくくなるおそれがある。また、0.7mmを超えると冷却効果が低くなり、成形されたシート外観が悪化するおそれがある。
【0020】
〈エンボス型〉
エンボス型については、上記したように、算術平均粗さ(Ra)が5.0μm以上であり、最大高さ粗さ(Rz)が25〜40μmであれば、特に限定されないが、本発明では、凹凸の深さや高さ、分布(分散状態)において規則性や一貫性の無い、すなわち不均一なエンボス型であることが好ましい。
【0021】
このようなエンボス型ロールのシートへの転写率については特に制限されないが、本発明で用いるエンボス型ロールの構成および組成、並びに成形されるエチレン系共重合体樹脂シートとの関係で25〜50%が好ましい。
なお、エンボス型ロールと「一組のロール対」をなす冷却ロールについては、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で公知の金属ロールその他の冷却ロールを何らの制限なく用いることができる。
【0022】
本発明のエチレン系共重合体樹脂シートの製造方法は、以上のような押出成形用エンボス型ロールを用いるものである。本発明では、前述のような押出成形用エンボス型ロールを用いるので、各種添加剤や一般的に樹脂になじみにくいとされる液状添加剤であっても、その配合量をエチレン系共重合体樹脂100重量部に対して1〜30重量部添加しても、ラバーとられが発生することなく成形することができる。
【0023】
本発明で使用されるエチレン系共重合体としては、エチレンと他のオレフィンとの共重合体、オレフィンと極性モノマーの共重合体またはこれらの混合物を挙げることができる。共重合する成分として具体的には、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1あるいはそれ以上高級の各種αオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル等のα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン等のα,β−不飽和カルボン酸及びその塩などが挙げられる。
また、エチレン系共重合体としては、耐熱性、耐光性、耐候性をより高くできることから、架橋構造を形成しうる架橋性エチレン系共重合体であってもよい。
【0024】
架橋性エチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはエチレン−α,β不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体、金属イオンの存在下で架橋しうるエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体またはエチレン−α,β不飽和カルボン酸−α,β不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体が挙げられる。
【0025】
このようなエチレン系共重合体樹脂に配合する添加剤としては、有機過酸化物その他の架橋剤、架橋助剤およびカップリング剤、並びにHALS(ヒンダードアミン系光吸収剤)等の耐光性付与剤(光安定化剤)、UVA(紫外線吸収剤)、AO(酸化防止剤)その他の耐候剤等が挙げられる。
【0026】
架橋剤としては公知のものを制限なく用いることができるが、有機過酸化物が好ましい。
この有機過酸化物としては、例えば、第3級ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、第3ブチルパーオキシアセテート、第3ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ第3ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、第3ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、第3ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、クロルヘキサノンパーオキサイドなどを用いることができる。
【0027】
架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート;トリアリルイソシアネート等の3官能の架橋助剤の他、NKエステル等の単官能の架橋助剤を用いることができる。
【0028】
カップリング剤としては、シランカップリング剤が好ましく、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロロシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を用いることができる。
【0029】
耐光性付与剤(光安定化剤)としては、例えば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2′−カルボキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフエノンなどベンゾフエノン系、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5−第3オクチルフエニル)ベンゾトリアゾールなどベンゾトリアゾール系、フエニルサリチレート、p−オクチルフエニルサリチレートなどのサリチル酸エステル系、ニツケル錯塩系、ヒンダードアミン系などが用いられる。
【0030】
紫外線吸収剤および酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、ホスファイト類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類等、L−アスコルビン酸およびその塩等、あるいはランタニドの酸化物等を用いることができる。
【0031】
本発明では、前述のような加工性を保ちながら良好な剥離性を有する押出成形用エンボス型ロールを用いるので、一般的にエチレン系共重合体樹脂となじみにくいとされる液状添加剤(有機過酸化物、架橋助剤、シランカップリング剤等)が配合されたものであっても、ラバーとられがなく、エンボス加工性などにおいても良好なエチレン系共重合体樹脂シートを得ることができる。
【実施例】
【0032】
実施例1〜7、比較例1〜3
下記配合のエチレン系共重合体樹脂組成物をTダイ押出機より押し出した溶融状態の素シートを、冷却ロールと後述の構成等を有するエンボス型ロールとで挟圧し、表1に示す転写率(%)にて、厚さ450μmのエチレン系共重合体樹脂シートを製造した。
【0033】
〈エチレン系共重合体樹脂組成物配合〉
・エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(酢酸ビニル含有量28%、MFR=18(Kg/10min)):100重量部
・架橋剤(日油(株)製 商品名“ルペロックス331”):2重量部
・架橋助剤(日本化成(株)製 トリアリルイソシアネート):2重量部
・シランカップリング剤(信越化学工業(株)製 商品名“KBM503”):0.3重量部
・フェノール系光安定剤(住友化学(株)製 商品名“SumilizerGP”):0.1重量部
・紫外線吸収剤(共同薬品(株)製 商品名“Viosorb 591”):0.3重量部
・酸化防止剤(共同薬品(株)製 商品名“GSY−101P”):0.05重量部
【0034】
〈エンボス型ロール〉
エンボス型ロールは、“直径35cmの鉄芯部”の外周に、“表1に示すゴム硬度(JIS K 6253 デュロメータ タイプA)と厚さ(mm)を有するシリコーンゴム層”、“接着剤層”、“表1に示すフッ素樹脂からなり、表1に示す厚さ(mm)を有するフッ素樹脂層”が順次積層されてなるものを用いた。
上記フッ素樹脂層には、サンドブラストにより表面意匠(エンボス型)を形成し、各ロールのJIS B 0601−2001(ISO4287−1997準拠)による算術平均粗さ(Ra)(μm)、最大高さ粗さ(Rz)(μm)については表1に示すとおりであった。
【0035】
【表1】

【0036】
比較例4
実施例1におけるエンボス型ロールの代わりに、直径40cmのステンレススティール製金属ロールを使用し、厚さ450μmのエチレン系共重合体樹脂シートを製造した。
【0037】
比較例5
“直径35cmの鉄芯部”の外周に、“表1に示すゴム硬度(JIS K 6253 デュロメータ タイプA)と厚さ(mm)を有するシリコーンゴム層”を積層し、このシリコーンゴム層に、算術平均粗さ(Ra)が6.0μm、最大高さ粗さ(Rz)が35μmとなるように表面意匠(エンボス型)を形成したエンボス型ロールを使用した以外は、実施例1と同様にエチレン系共重合体樹脂シートを製造した。
【0038】
実施例1〜7、比較例1〜5について、ラバーとられの発生状況、エンボス加工性およびシート外観を評価し、その結果を併せて表1に示す。
【0039】
・「ロールとられ(ラバーとられ)の発生状況」は、ラバーとられが発生するまでに要した時間によって、評価基準を以下のとおりとした。
8時間未満 :×
8〜48時間未満 :△
48時間以上 :○
【0040】
・「エンボス加工性」は、比較例4以外について、得られたエチレン系共重合体樹脂シートのエンボス加工性を目視により評価した。
所望の表面意匠が得られたもの:○
表面意匠が不十分なもの :△
【0041】
・得られたシートの外観について、目視にて評価した。
良好 :○
スジやムラが稀にある:△
スジやムラがある :×
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の押出成形用エンボス型ロールによれば、添加剤を含有するエチレン系共重合体樹脂であっても、ラバーとられが発生せず、エンボス加工およびシート外観も良好な押出成形シートを得ることができる。
したがって、本発明の押出成形用エンボス型ロールおよびこれを用いて製造されたエチレン系共重合体樹脂シートは、その目的、用途に応じて様々な分野において有用であるが、例えば、太陽電池セルの封止材、太陽電池セルのバックシートなどに好適である。
【符号の説明】
【0043】
2 軸芯部
3 シリコーンゴム層
4 フッ素樹脂層
10 押出成形用エンボス型ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系共重合体樹脂シートの押出成形用エンボス型ロールであって、
軸芯部の外周にシリコーンゴム層、接着層およびフッ素樹脂層が順次積層されてなり、かつ、算術平均粗さ(Ra)が5.0μm以上であり、最大高さ粗さ(Rz)が25〜40μmであることを特徴とする押出成形用エンボス型ロール。
【請求項2】
前記シリコーンゴムのJIS K 6253 デュロメータ タイプAによるゴム硬度が30〜80である、請求項1に記載の押出成形用エンボス型ロール。
【請求項3】
前記フッ素樹脂層の厚みが0.3〜0.7mmである、請求項1または2に記載の押出成形用エンボス型ロール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の押出成形用エンボス型ロールを用いたエチレン系共重合体樹脂シートの製造方法であって、
前記エチレン系共重合体樹脂100重量部に対して、添加剤の添加量が1〜30重量部であることを特徴とするエチレン系共重合体樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−111179(P2012−111179A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263592(P2010−263592)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】