押出機における脱揮装置及び方法
【課題】本発明は、スクリュセグメントのチップフライト部をねじることにより、輸送能力の付加及びシリンダ内部の原料の過剰充満の防止を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明による押出機における脱揮装置及び方法は、表面更新性スクリュ(6)の各スクリュセグメント(6B,6C)の外周に設けたチップフライト部(20)が隙間(21)を介して互いに非接触で噛み合うと共に、各チップフライト部(20)はねじりが形成されている構成と方法である。
【解決手段】本発明による押出機における脱揮装置及び方法は、表面更新性スクリュ(6)の各スクリュセグメント(6B,6C)の外周に設けたチップフライト部(20)が隙間(21)を介して互いに非接触で噛み合うと共に、各チップフライト部(20)はねじりが形成されている構成と方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機における脱揮装置及び方法に関し、特に、各スクリュセグメントのチップフライト部をねじることにより、輸送能力の付加及びシリンダ内部の原料の過剰充満の防止を得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の押出機における脱揮装置としては、例えば、特許文献1〜4の従来構成を挙げることができる。
すなわち、前述の特許文献1の押出機のスクリュの搬送混練方法においては、図示していないが、混練部と脱揮部が交互に複数ヶ所に設けられ、脱揮部では真空状態になっており、この脱揮部においてスクリュの搬送混練作用により脱揮を行う方法である。
【0003】
また、前述の特許文献2の脱揮用二軸スクリュ押出機においては、前述の特許文献1の構成の場合と同様に、原料に充満部で気密性が保持された脱揮領域で、原料を下流に移送可能なように捩れた混練フライトを有し、材料を下流に送りつつ練り混ぜて揮発分を分離する装置が提示され、図6で示されるように構成されていた。
すなわち、図6において、符号1で示されるものは、全体形状が長手中空状をなすシリンダであり、このシリンダ1の後段側にはシリンダ1内を負圧状態に保つための脱揮用の真空ベント口2が形成されている。
【0004】
前記シリンダ1内には、一対のスクリュ3が互いに噛み合った状態で内設されており、このスクリュ3は、その上流から下流にかけて混練部4及び脱揮領域5が形成されている。
前記脱揮領域5は、その上流側、すなわち、前記混練部4の直後は表面更新性スクリュ6が形成されていると共に、この脱揮領域5の最下流位置には、原料充満部7が形成されている。
【0005】
前記表面更新性スクリュ6は、図7及び図8に示されるように、各ディスク8が順次所定回転角度θずつずらせた状態でスクリュ軸10に取付けられたスクリュセグメント9で構成されている。
次に、前述の構成において、前記シリンダ1の原料供給口(図示せず)からプラスチック原料を供給すると、スクリュ3により下流の混練部4へ輸送され、この混練部4で充満することにより、脱揮領域5の気密性が保たれた状態でこの脱揮領域5へ輸送される。
【0006】
前記脱揮領域5へ輸送されたプラスチック原料は、前記表面更新性スクリュ6によって表面から内部へと入れ替えられ、プラスチック原料に含有されている揮発成分を分離・除去しながら下流へ輸送され、前記原料充満部7を経て、図示しないダイスから水中カッタ装置へ送られる。
尚、前記表面更新性スクリュ6のスクリュセグメント9は、下流方向へ輸送能力を有する混練ピースで、各ディスク8はスクリュ軸10周りに、位相角θ(45度)で配列されている。
【0007】
また、前述の特許文献3に開示されたスクリュ混練押出機においては、図9に示されるように、シリンダ1内に設けられたスクリュ3は、その上流から下流にかけて、攪拌部11、混練輸送部12、表面更新性スクリュピース6及び混練輸送部12aで構成されており、各混錬輸送部12,12a間に表面更新性スクリュピース6が配設されている。
【0008】
また、前述の特許文献4に開示された混合装置及び混合要素においては、図10に示されるように、互いに噛み合う一対のスクリュセグメント9には、その外周位置に互いに180度対向して一対のウィング状のチップフライト部20が形成され、この各チップフライト部20によって表面更新性を促進するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−277604号公報
【特許文献2】特開2010−179575号公報
【特許文献3】特開2004−306547号公報
【特許文献4】特開昭63−151340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の押出機における脱揮装置は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の特許文献1で示される従来構成の場合、脱揮領域で存在する各スクリュの噛み合い部で溶融樹脂の一部を逆流させ、滞留時間を稼ぐことによって脱揮をするが、脱揮の促進には、滞留時間だけでなく、脱揮される樹脂の暴露面積の拡大が必要である。しかし、フライトの繋がった輸送スクリュでは輸送能力が高く、表面更新能力が不足することがあった。
また、脱揮領域でのプラスチック原料の暴露面積が減少しないように、シリンダ内部でプラスチック原料を充満させない輸送能力の高いスクリュピースを配置し、表面更新させることを考慮しなくてはならない。しかし、輸送能力が高いため、滞留時間が低下し、表面更新効率が悪くなるため、多くの混練スクリュを配備し、脱揮領域を長くしないと効果が得られないという欠点があった。
また、特許文献2で示される従来構成の場合、表面の更新を促進させるため、セグメントスクリュの多数のディスクに位相角を持たせた状態で軸方向に積層させなければならず、セグメントスクリュ自体が軸方向に長くなることになっていた。
また、特許文献3で示される従来構成の場合、各混練輸送部の間に表面更新性スクリュピースを設けていたため、スクリュ自体の全長を短縮することが困難であった。
また、特許文献4に示される従来構成の場合、各スクリュセグメントにチップフライト部が形成されているが、このチップフライト部にねじりが加えられていないため、輸送能力を期待することが難しく、過剰な滞留を避けることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による押出機における脱揮装置は、真空ベント口を有するシリンダ内で一対のスクリュが互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域において、前記脱揮領域の上流の混練部の直後に表面更新性スクリュを配置してなる押出機における脱揮装置において、前記表面更新性スクリュの各スクリュセグメントの外周に設けたチップフライト部が、隙間を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部は、ねじりが形成されている構成であり、また、前記チップフライト部は、断面形状で台形をなす構成であり、また、本発明による押出機における脱揮方法は、真空ベント口を有するシリンダ内で一対のスクリュが互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域において、前記脱揮領域の上流の混練部の直後に表面更新性スクリュを配置してなる押出機における脱揮装置を用い、前記表面更新性スクリュの各スクリュセグメントの外周に設けたチップフライト部が、隙間を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部は、ねじりが形成されている状態で用いる方法であり、また、前記チップフライト部は、断面形状で台形をなす方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による押出機における脱揮装置及び方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、真空ベント口を有するシリンダ内で一対のスクリュが互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域において、前記脱揮領域の上流の混練部の直後に表面更新性スクリュを配置してなる押出機における脱揮装置において、前記表面更新性スクリュの各スクリュセグメントの外周に設けたチップフライト部が、隙間を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部は、ねじりが形成されていることにより、混練部直後の脱揮領域に表面更新性スクリュセグメントを配置してスクリュに原料を滞留させ、隣り合うスクリュの羽根が隙間を保ったまま噛み合うことによりプラスチック原料が薄膜化し、表面更新を促進させることができる。また、表面更新性スクリュセグメントに設けられたチップフライト部にねじりを設けることで過剰な滞留を抑制し、減圧雰囲気下に曝されるプラスチック原料の表面積を増加させ原料に含有される揮発成分を効果的に除去することが可能となる。
また、前記チップフライト部は、断面形状で台形をなすことにより、チップフライト部にねじり加工を容易に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による押出機における脱揮装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の比較例を示す概略構成図である。
【図3】図1の表面更新性スクリュセグメントの噛み合い状態を示す断面図である。
【図4】図3のスクリュセグメントの右側面図である。
【図5】図1の押出機における脱揮装置の他の形態を示す概略構成図である。
【図6】従来構成を示す概略構成図である。
【図7】図6の表面更新性スクリュを示す拡大側面図である。
【図8】図7の右側からみた正面図である。
【図9】他の従来構成を示す概略構成図である。
【図10】他の従来構成を示す要部の断面図である。
【図11】各スクリュ形状における脱揮性能を示す特性図である。
【図12】各スクリュ形状における比エネルギーを示す特性図である。
【図13】各スクリュ形状における押出機先端出口樹脂温度を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、各スクリュセグメントのチップフライト部をねじることにより、輸送能力の付加及びシリンダ内部の原料の過剰充満の防止をしながら、表面更新・薄膜化させることにより総暴露面積が拡大し、高い脱揮効果が得られるようにした押出機における脱揮装置及び方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明による押出機における脱揮装置及び方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明する。
図1において符号1で示されるものは全体形状が長手中空形状の円筒形のシリンダであり、このシリンダ1の後段側にシリンダ1内を負圧状態に保つための脱揮用の真空ベント口2が形成されている。
【0016】
前記シリンダ1内には、一対のスクリュ3が互いに噛み合った状態で内設されており、このスクリュ3は、その上流から下流にかけて混練部4及び脱揮領域5が設けられ、この脱揮領域5内には、その上流に表面更新性スクリュ6が形成され、その下流に原料充満部7が形成されている。
【0017】
前記表面更新性スクリュ6は、前記混練部4の直後の脱揮領域5の前段として配設されており、この表面更新性スクリュ6は、表面更新・薄膜化能力の高いスクリュセグメントよりなり、総暴露面積が拡大し、原料中に含まれる揮発成分が効果的に除去されるように構成されている。
【0018】
前記表面更新性スクリュ6は、図3及び図4で示されるように構成されている。
すなわち、前記脱揮領域5に位置する前記表面更新性スクリュ6は、一対のスクリュセグメント6A,6Bと6C,6Dを組み込み、そのうちのスクリュセグメント6Bと6Cのスクリュ軸直角断面における長軸側の両端部に空隙間部22を介して一対のチップフライト部20が形成され、各チップフライト部20同士が狭い隙間21を介して互いに非接触状態で噛み合いかつ二軸同方向回転できるように構成されている。
尚、前記各チップフライト部20による隙間21を保持した状態で各表面更新性スクリュ6が回転することにより、原料の薄膜化が可能となり、表面更新性が促進され、さらに、総暴露面積の拡大により高い脱揮効果が得られる。
また、前記各チップフライト部20は、断面台形状をなすと共に、原料である溶融樹脂の輸送動作を可能とするために、軸方向に沿って螺旋状にねじりが加えられ、このねじりはLEAD数で表わすと、1〜8程度である。
【0019】
次に、動作について説明する。
押出機内に供給された原料は、シリンダ1内部に挿通されたスクリュ3により混練部4まで輸送され、混練部4で剪断作用を付加された後、輸送用のスクリュセグメントにより負圧状態となった脱揮領域5へ輸送される。この脱揮領域5には表面更新性を有するスクリュセグメント6A〜6Dを設置し、原料を練り混ぜながら下流へ輸送することで、効率よく含有する揮発成分を除去する。図3に示すように、表面更新性スクリュセグメント6A〜6Dの形状は、長軸側の両端部に計2ヶ所のフライトチップ部20とそのチップの軸中心方向に有する空隙間部22により構成される。6Aと6Bと6Cと6Dのセグメントのフライトチップ部20は、回転する際に非接触であり、お互いのフライトチップ部20同士が狭い隙間21を保ちながら表面更新を促進することにより、総暴露面積が拡大し高い脱揮効果が得られる。また、シリンダ1内部に原料が過剰に充満すると、減圧雰囲気に曝される原料の面積が低下し、脱揮効率が低下するため、チップフライト部20は軸方向にねじられ、輸送能力を付加することにより、シリンダ1内部に原料を過剰に充満させることなく暴露面積を増加させ、脱揮効率の低下を抑制する。
尚、図2の比較例の構成及び図5の他の形態の構成は、図1の構成の変形であるため、図1と同一又は同等部分には同一符号を付し、その構成の説明は省略している。
【0020】
次に、本出願人が実際に実施を行った実施例について説明する。
図1において、シリンダ1、スクリュ3、真空ベント口2を示す。加熱冷却可能なシリンダ1内に、スクリュ3が2本挿入され、図示しない駆動機にて同方向回転し、2本のスクリュ3はお互いに噛み合っている。
符号5は脱揮領域、4はシール部をなす混練部、6は表面更新スクリュを示す。脱揮領域5は、真空ベント口2から真空装置により吸気され、シール部である原料充満部7において原料が充満することにより気密性が保持され、負圧状態となっている。表面更新性スクリュ6は真空ベント口2の直下は避けるように配置されている。
【0021】
下記に実験条件を示す。
原料:LDPE(Ml=50)
原料含有揮発成分:n−He×(4000ppm)
シリンダ内径:φ69mm
処理能力:150kg/h
スクリュ回転速度:100,150,200rpm
スクリュ形状:図2に比較例のスクリュ構成、及び図5に他のスクリュ構成を示す。
図2に比較例−を示す。比較例−は脱揮領域5に表面更新用スクリュを用いない従来スクリュ構成であり、下流側への輸送能力が高いスクリュセグメント(FF:Forwrd Full-flight)のみで構成されている。
図5に、実施例としての他形態を示す。実施例−は脱揮領域5に、LEAD数が約6とした本発明の表面更新性スクリュ6を8個4セット配置した構成(図5)となる。
【0022】
[結果]
図11,12,13に、スクリュ回転速度を変更した3条件のデータを平均した値を示す。
図11は、各スクリュ形状における脱揮性能を示す。脱揮性能とは、各スクリュ形状での脱揮率とした。脱揮率は、(1−Cout/Cin)*100とする。
Cout=押出機から吐出された原料に含有される揮発成分濃度
Cin =押出機へ供給される前の原料に含有される揮発成分濃度
図12は、各スクリュ形状における比エネルギーを示す。
図13は、各スクリュ形状における押出機先端出口樹脂温度を示す。
羽根にねじりを有する新型表面更新スクリュ6を用いた図5のスクリュは、比較例である図2のスクリュに比べ、樹脂温度、比エネルギーともにほとんど変化がなかったが、脱揮率は11%向上した。
【0023】
本発明の前述の構成をまとめると、次の通りである。
すなわち、真空ベント口2を有するシリンダ1内で一対のスクリュ3が互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域5において、前記脱揮領域5の上流の混練部4の直後に表面更新性スクリュ6を配置してなる押出機における脱揮装置において、前記表面更新性スクリュ6の各スクリュセグメント6B,6Cの外周に設けたチップフライト部20が、隙間21を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部20は、ねじりが形成されている構成であり、また、前記チップフライト部20は、断面形状で台形をなす構成である。
従って、本発明は、混練部4に隣接し、樹脂により気密された脱揮領域5において、混練部4の混練スクリュの直後に、フライトが繋がっていない表面更新性スクリュ6を配備し、また樹脂が充満しないように輸送能力を持たせ、隣り合うチップフライト部20同士が噛み合う形状であるため薄膜形成能力を持っており、滞留時間の増加、混練表面更新効率の向上、薄膜形成能力の向上が可能な脱揮装置及び方法を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明による押出機における脱揮装置及び方法は、表面更新スクリュのスクリュセグメントに設けたチップフライト部にねじりを設け、滞留時間の増加・混練表面更新効率の向上及び薄膜形成能力の向上を得ることを目的とする。
【符号の説明】
【0025】
1 シリンダ
2 真空ベント口
3 スクリュ
4 混練部(シール部)
5 脱揮領域
6 表面更新性スクリュ
6A〜6D スクリュセグメント
7 原料充満部(シール部)
20 チップフライト部
21 隙間
22 空隙間部
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機における脱揮装置及び方法に関し、特に、各スクリュセグメントのチップフライト部をねじることにより、輸送能力の付加及びシリンダ内部の原料の過剰充満の防止を得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の押出機における脱揮装置としては、例えば、特許文献1〜4の従来構成を挙げることができる。
すなわち、前述の特許文献1の押出機のスクリュの搬送混練方法においては、図示していないが、混練部と脱揮部が交互に複数ヶ所に設けられ、脱揮部では真空状態になっており、この脱揮部においてスクリュの搬送混練作用により脱揮を行う方法である。
【0003】
また、前述の特許文献2の脱揮用二軸スクリュ押出機においては、前述の特許文献1の構成の場合と同様に、原料に充満部で気密性が保持された脱揮領域で、原料を下流に移送可能なように捩れた混練フライトを有し、材料を下流に送りつつ練り混ぜて揮発分を分離する装置が提示され、図6で示されるように構成されていた。
すなわち、図6において、符号1で示されるものは、全体形状が長手中空状をなすシリンダであり、このシリンダ1の後段側にはシリンダ1内を負圧状態に保つための脱揮用の真空ベント口2が形成されている。
【0004】
前記シリンダ1内には、一対のスクリュ3が互いに噛み合った状態で内設されており、このスクリュ3は、その上流から下流にかけて混練部4及び脱揮領域5が形成されている。
前記脱揮領域5は、その上流側、すなわち、前記混練部4の直後は表面更新性スクリュ6が形成されていると共に、この脱揮領域5の最下流位置には、原料充満部7が形成されている。
【0005】
前記表面更新性スクリュ6は、図7及び図8に示されるように、各ディスク8が順次所定回転角度θずつずらせた状態でスクリュ軸10に取付けられたスクリュセグメント9で構成されている。
次に、前述の構成において、前記シリンダ1の原料供給口(図示せず)からプラスチック原料を供給すると、スクリュ3により下流の混練部4へ輸送され、この混練部4で充満することにより、脱揮領域5の気密性が保たれた状態でこの脱揮領域5へ輸送される。
【0006】
前記脱揮領域5へ輸送されたプラスチック原料は、前記表面更新性スクリュ6によって表面から内部へと入れ替えられ、プラスチック原料に含有されている揮発成分を分離・除去しながら下流へ輸送され、前記原料充満部7を経て、図示しないダイスから水中カッタ装置へ送られる。
尚、前記表面更新性スクリュ6のスクリュセグメント9は、下流方向へ輸送能力を有する混練ピースで、各ディスク8はスクリュ軸10周りに、位相角θ(45度)で配列されている。
【0007】
また、前述の特許文献3に開示されたスクリュ混練押出機においては、図9に示されるように、シリンダ1内に設けられたスクリュ3は、その上流から下流にかけて、攪拌部11、混練輸送部12、表面更新性スクリュピース6及び混練輸送部12aで構成されており、各混錬輸送部12,12a間に表面更新性スクリュピース6が配設されている。
【0008】
また、前述の特許文献4に開示された混合装置及び混合要素においては、図10に示されるように、互いに噛み合う一対のスクリュセグメント9には、その外周位置に互いに180度対向して一対のウィング状のチップフライト部20が形成され、この各チップフライト部20によって表面更新性を促進するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−277604号公報
【特許文献2】特開2010−179575号公報
【特許文献3】特開2004−306547号公報
【特許文献4】特開昭63−151340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の押出機における脱揮装置は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の特許文献1で示される従来構成の場合、脱揮領域で存在する各スクリュの噛み合い部で溶融樹脂の一部を逆流させ、滞留時間を稼ぐことによって脱揮をするが、脱揮の促進には、滞留時間だけでなく、脱揮される樹脂の暴露面積の拡大が必要である。しかし、フライトの繋がった輸送スクリュでは輸送能力が高く、表面更新能力が不足することがあった。
また、脱揮領域でのプラスチック原料の暴露面積が減少しないように、シリンダ内部でプラスチック原料を充満させない輸送能力の高いスクリュピースを配置し、表面更新させることを考慮しなくてはならない。しかし、輸送能力が高いため、滞留時間が低下し、表面更新効率が悪くなるため、多くの混練スクリュを配備し、脱揮領域を長くしないと効果が得られないという欠点があった。
また、特許文献2で示される従来構成の場合、表面の更新を促進させるため、セグメントスクリュの多数のディスクに位相角を持たせた状態で軸方向に積層させなければならず、セグメントスクリュ自体が軸方向に長くなることになっていた。
また、特許文献3で示される従来構成の場合、各混練輸送部の間に表面更新性スクリュピースを設けていたため、スクリュ自体の全長を短縮することが困難であった。
また、特許文献4に示される従来構成の場合、各スクリュセグメントにチップフライト部が形成されているが、このチップフライト部にねじりが加えられていないため、輸送能力を期待することが難しく、過剰な滞留を避けることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による押出機における脱揮装置は、真空ベント口を有するシリンダ内で一対のスクリュが互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域において、前記脱揮領域の上流の混練部の直後に表面更新性スクリュを配置してなる押出機における脱揮装置において、前記表面更新性スクリュの各スクリュセグメントの外周に設けたチップフライト部が、隙間を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部は、ねじりが形成されている構成であり、また、前記チップフライト部は、断面形状で台形をなす構成であり、また、本発明による押出機における脱揮方法は、真空ベント口を有するシリンダ内で一対のスクリュが互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域において、前記脱揮領域の上流の混練部の直後に表面更新性スクリュを配置してなる押出機における脱揮装置を用い、前記表面更新性スクリュの各スクリュセグメントの外周に設けたチップフライト部が、隙間を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部は、ねじりが形成されている状態で用いる方法であり、また、前記チップフライト部は、断面形状で台形をなす方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による押出機における脱揮装置及び方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、真空ベント口を有するシリンダ内で一対のスクリュが互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域において、前記脱揮領域の上流の混練部の直後に表面更新性スクリュを配置してなる押出機における脱揮装置において、前記表面更新性スクリュの各スクリュセグメントの外周に設けたチップフライト部が、隙間を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部は、ねじりが形成されていることにより、混練部直後の脱揮領域に表面更新性スクリュセグメントを配置してスクリュに原料を滞留させ、隣り合うスクリュの羽根が隙間を保ったまま噛み合うことによりプラスチック原料が薄膜化し、表面更新を促進させることができる。また、表面更新性スクリュセグメントに設けられたチップフライト部にねじりを設けることで過剰な滞留を抑制し、減圧雰囲気下に曝されるプラスチック原料の表面積を増加させ原料に含有される揮発成分を効果的に除去することが可能となる。
また、前記チップフライト部は、断面形状で台形をなすことにより、チップフライト部にねじり加工を容易に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による押出機における脱揮装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の比較例を示す概略構成図である。
【図3】図1の表面更新性スクリュセグメントの噛み合い状態を示す断面図である。
【図4】図3のスクリュセグメントの右側面図である。
【図5】図1の押出機における脱揮装置の他の形態を示す概略構成図である。
【図6】従来構成を示す概略構成図である。
【図7】図6の表面更新性スクリュを示す拡大側面図である。
【図8】図7の右側からみた正面図である。
【図9】他の従来構成を示す概略構成図である。
【図10】他の従来構成を示す要部の断面図である。
【図11】各スクリュ形状における脱揮性能を示す特性図である。
【図12】各スクリュ形状における比エネルギーを示す特性図である。
【図13】各スクリュ形状における押出機先端出口樹脂温度を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、各スクリュセグメントのチップフライト部をねじることにより、輸送能力の付加及びシリンダ内部の原料の過剰充満の防止をしながら、表面更新・薄膜化させることにより総暴露面積が拡大し、高い脱揮効果が得られるようにした押出機における脱揮装置及び方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明による押出機における脱揮装置及び方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明する。
図1において符号1で示されるものは全体形状が長手中空形状の円筒形のシリンダであり、このシリンダ1の後段側にシリンダ1内を負圧状態に保つための脱揮用の真空ベント口2が形成されている。
【0016】
前記シリンダ1内には、一対のスクリュ3が互いに噛み合った状態で内設されており、このスクリュ3は、その上流から下流にかけて混練部4及び脱揮領域5が設けられ、この脱揮領域5内には、その上流に表面更新性スクリュ6が形成され、その下流に原料充満部7が形成されている。
【0017】
前記表面更新性スクリュ6は、前記混練部4の直後の脱揮領域5の前段として配設されており、この表面更新性スクリュ6は、表面更新・薄膜化能力の高いスクリュセグメントよりなり、総暴露面積が拡大し、原料中に含まれる揮発成分が効果的に除去されるように構成されている。
【0018】
前記表面更新性スクリュ6は、図3及び図4で示されるように構成されている。
すなわち、前記脱揮領域5に位置する前記表面更新性スクリュ6は、一対のスクリュセグメント6A,6Bと6C,6Dを組み込み、そのうちのスクリュセグメント6Bと6Cのスクリュ軸直角断面における長軸側の両端部に空隙間部22を介して一対のチップフライト部20が形成され、各チップフライト部20同士が狭い隙間21を介して互いに非接触状態で噛み合いかつ二軸同方向回転できるように構成されている。
尚、前記各チップフライト部20による隙間21を保持した状態で各表面更新性スクリュ6が回転することにより、原料の薄膜化が可能となり、表面更新性が促進され、さらに、総暴露面積の拡大により高い脱揮効果が得られる。
また、前記各チップフライト部20は、断面台形状をなすと共に、原料である溶融樹脂の輸送動作を可能とするために、軸方向に沿って螺旋状にねじりが加えられ、このねじりはLEAD数で表わすと、1〜8程度である。
【0019】
次に、動作について説明する。
押出機内に供給された原料は、シリンダ1内部に挿通されたスクリュ3により混練部4まで輸送され、混練部4で剪断作用を付加された後、輸送用のスクリュセグメントにより負圧状態となった脱揮領域5へ輸送される。この脱揮領域5には表面更新性を有するスクリュセグメント6A〜6Dを設置し、原料を練り混ぜながら下流へ輸送することで、効率よく含有する揮発成分を除去する。図3に示すように、表面更新性スクリュセグメント6A〜6Dの形状は、長軸側の両端部に計2ヶ所のフライトチップ部20とそのチップの軸中心方向に有する空隙間部22により構成される。6Aと6Bと6Cと6Dのセグメントのフライトチップ部20は、回転する際に非接触であり、お互いのフライトチップ部20同士が狭い隙間21を保ちながら表面更新を促進することにより、総暴露面積が拡大し高い脱揮効果が得られる。また、シリンダ1内部に原料が過剰に充満すると、減圧雰囲気に曝される原料の面積が低下し、脱揮効率が低下するため、チップフライト部20は軸方向にねじられ、輸送能力を付加することにより、シリンダ1内部に原料を過剰に充満させることなく暴露面積を増加させ、脱揮効率の低下を抑制する。
尚、図2の比較例の構成及び図5の他の形態の構成は、図1の構成の変形であるため、図1と同一又は同等部分には同一符号を付し、その構成の説明は省略している。
【0020】
次に、本出願人が実際に実施を行った実施例について説明する。
図1において、シリンダ1、スクリュ3、真空ベント口2を示す。加熱冷却可能なシリンダ1内に、スクリュ3が2本挿入され、図示しない駆動機にて同方向回転し、2本のスクリュ3はお互いに噛み合っている。
符号5は脱揮領域、4はシール部をなす混練部、6は表面更新スクリュを示す。脱揮領域5は、真空ベント口2から真空装置により吸気され、シール部である原料充満部7において原料が充満することにより気密性が保持され、負圧状態となっている。表面更新性スクリュ6は真空ベント口2の直下は避けるように配置されている。
【0021】
下記に実験条件を示す。
原料:LDPE(Ml=50)
原料含有揮発成分:n−He×(4000ppm)
シリンダ内径:φ69mm
処理能力:150kg/h
スクリュ回転速度:100,150,200rpm
スクリュ形状:図2に比較例のスクリュ構成、及び図5に他のスクリュ構成を示す。
図2に比較例−を示す。比較例−は脱揮領域5に表面更新用スクリュを用いない従来スクリュ構成であり、下流側への輸送能力が高いスクリュセグメント(FF:Forwrd Full-flight)のみで構成されている。
図5に、実施例としての他形態を示す。実施例−は脱揮領域5に、LEAD数が約6とした本発明の表面更新性スクリュ6を8個4セット配置した構成(図5)となる。
【0022】
[結果]
図11,12,13に、スクリュ回転速度を変更した3条件のデータを平均した値を示す。
図11は、各スクリュ形状における脱揮性能を示す。脱揮性能とは、各スクリュ形状での脱揮率とした。脱揮率は、(1−Cout/Cin)*100とする。
Cout=押出機から吐出された原料に含有される揮発成分濃度
Cin =押出機へ供給される前の原料に含有される揮発成分濃度
図12は、各スクリュ形状における比エネルギーを示す。
図13は、各スクリュ形状における押出機先端出口樹脂温度を示す。
羽根にねじりを有する新型表面更新スクリュ6を用いた図5のスクリュは、比較例である図2のスクリュに比べ、樹脂温度、比エネルギーともにほとんど変化がなかったが、脱揮率は11%向上した。
【0023】
本発明の前述の構成をまとめると、次の通りである。
すなわち、真空ベント口2を有するシリンダ1内で一対のスクリュ3が互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域5において、前記脱揮領域5の上流の混練部4の直後に表面更新性スクリュ6を配置してなる押出機における脱揮装置において、前記表面更新性スクリュ6の各スクリュセグメント6B,6Cの外周に設けたチップフライト部20が、隙間21を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部20は、ねじりが形成されている構成であり、また、前記チップフライト部20は、断面形状で台形をなす構成である。
従って、本発明は、混練部4に隣接し、樹脂により気密された脱揮領域5において、混練部4の混練スクリュの直後に、フライトが繋がっていない表面更新性スクリュ6を配備し、また樹脂が充満しないように輸送能力を持たせ、隣り合うチップフライト部20同士が噛み合う形状であるため薄膜形成能力を持っており、滞留時間の増加、混練表面更新効率の向上、薄膜形成能力の向上が可能な脱揮装置及び方法を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明による押出機における脱揮装置及び方法は、表面更新スクリュのスクリュセグメントに設けたチップフライト部にねじりを設け、滞留時間の増加・混練表面更新効率の向上及び薄膜形成能力の向上を得ることを目的とする。
【符号の説明】
【0025】
1 シリンダ
2 真空ベント口
3 スクリュ
4 混練部(シール部)
5 脱揮領域
6 表面更新性スクリュ
6A〜6D スクリュセグメント
7 原料充満部(シール部)
20 チップフライト部
21 隙間
22 空隙間部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ベント口(2)を有するシリンダ(1)内で一対のスクリュ(3)が互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域(5)において、前記脱揮領域(5)の上流の混練部(4)の直後に表面更新性スクリュ(6)を配置してなる押出機における脱揮装置において、
前記表面更新性スクリュ(6)の各スクリュセグメント(6B,6C)の外周に設けたチップフライト部(20)が、隙間(21)を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部(20)は、ねじりが形成されていることを特徴とする押出機における脱揮装置。
【請求項2】
前記チップフライト部(20)は、断面形状で台形をなすことを特徴とする請求項1記載の押出機における脱揮装置。
【請求項3】
真空ベント口(2)を有するシリンダ(1)内で一対のスクリュ(3)が互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域(5)において、前記脱揮領域(5)の上流の混練部(4)の直後に表面更新性スクリュ(6)を配置してなる押出機における脱揮装置を用い、
前記表面更新性スクリュ(6)の各スクリュセグメント(6B,6C)の外周に設けたチップフライト部(20)が、隙間(21)を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部(20)は、ねじりが形成されている状態で用いることを特徴とする押出機における脱揮方法。
【請求項4】
前記チップフライト部(20)は、断面形状で台形をなすことを特徴とする請求項3記載の押出機における脱揮方法。
【請求項1】
真空ベント口(2)を有するシリンダ(1)内で一対のスクリュ(3)が互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域(5)において、前記脱揮領域(5)の上流の混練部(4)の直後に表面更新性スクリュ(6)を配置してなる押出機における脱揮装置において、
前記表面更新性スクリュ(6)の各スクリュセグメント(6B,6C)の外周に設けたチップフライト部(20)が、隙間(21)を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部(20)は、ねじりが形成されていることを特徴とする押出機における脱揮装置。
【請求項2】
前記チップフライト部(20)は、断面形状で台形をなすことを特徴とする請求項1記載の押出機における脱揮装置。
【請求項3】
真空ベント口(2)を有するシリンダ(1)内で一対のスクリュ(3)が互いに噛み合い同方向に回転する二軸押出機の脱揮領域(5)において、前記脱揮領域(5)の上流の混練部(4)の直後に表面更新性スクリュ(6)を配置してなる押出機における脱揮装置を用い、
前記表面更新性スクリュ(6)の各スクリュセグメント(6B,6C)の外周に設けたチップフライト部(20)が、隙間(21)を介して互いに非接触で噛み合うと共に、前記各チップフライト部(20)は、ねじりが形成されている状態で用いることを特徴とする押出機における脱揮方法。
【請求項4】
前記チップフライト部(20)は、断面形状で台形をなすことを特徴とする請求項3記載の押出機における脱揮方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−28055(P2013−28055A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165201(P2011−165201)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
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