説明

押出造粒装置のスクリーン及び押出造粒装置

【課題】耐久性を向上させた押出造粒装置用のスクリーン、及びかかるスクリーンを有する押出造粒装置、及びかかるスクリーンの形成方法を提供する。
【解決手段】本発明による押出造粒装置(1)用のスクリーン(4)は、内面(12)及び外面(14)と、内面(12)から外面(14)に材料を通過させる多数の孔(16)を有する。スクリーン(4)は、疲労強度が少なくとも300MPaのステンレス鋼で形成される。各孔(16)は、内面側の直線部分(22)と、外面側のテーパ部分(24)を有し、ドリル加工で形成される。本発明はまた、かかるスクリーン(4)を有する押出造粒装置(1)、及び、かかるスクリーン(4)を形成する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出造粒装置のスクリーン及び押出造粒装置に関する。また、本発明は、押出造粒装置のスクリーンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬品、調味料、洗剤、加工食品、飼料、肥料、燃料等の粉状の原料を混練し、混練した原料を、多数の孔を有するスクリーンの内側から外側に押出すことによって造粒する押出造粒装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。原料は、スクリーンの内側に配置された回転羽根によってスクリーンの孔を通して横方向に押出され、造粒された原料は、生産者の希望に応じて、短い棒状であったり、球状であったりする。
【0003】
スクリーンは、一般的には、ステンレス鋼(SUS304)で作られ、その厚さは、例えば、約0.8〜1.2mmである。また、多数の孔は、パンチング加工によって形成され、孔径は、例えば、約0.8〜1.8mmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−293353号公報
【特許文献2】特開2007−061793号公報
【特許文献3】特開2006−231186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したスクリーンが比較的短期間で使用できなくなるという問題が従来からあった。具体的には、スクリーンの内側で回転する羽根が、原料をスクリーンに周期的に押付けることによって、スクリーンの一部が膨らんで亀裂が生じることがあった。この亀裂は、スクリーンの変形、疲労破壊によって生じるものである。生産中にかかる亀裂が生じると、その時点で押出造粒装置を停止させなければならず、その結果、製品ロスが生じ、生産性が低下する。また、生産中の亀裂が生じないように、スクリーンを比較的短いサイクルで新品のスクリーンに交換することも行われている。すなわち、同じ仕様のスクリーンであっても、その実際の耐久性は一様ではなく、1〜2週間で亀裂が生じるものがある。このため、スクリーンの実際の耐久性が3週間以上あるかもしれないものであっても、生産中に機械を停止させないことを優先して、スクリーンを1〜2週間で新品に交換する。その結果、スクリーンのコストが増大する。
【0006】
特許文献1では、スクリーンの耐久性を向上させるために、スクリーンの厚さを厚くする技術が開示されている。しかしながら、スクリーン自体が重くなり、交換作業の負担が大きくなる。
【0007】
そこで、本発明は、耐久性を向上させた押出造粒装置用のスクリーン、及びかかるスクリーンを有する押出造粒装置、及びかかるスクリーンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者は、ステンレス鋼SUS304(疲労強度240MPa)に代えて、それよりも疲労強度の大きいステンレス鋼(例えば、LDX2101(登録商標)、疲労強度500MPa)を用いて、従来と同様のスクリーンを製作することによって、スクリーンの耐久性を向上させることを試みた。しかしながら、予想に反して、耐久性を向上させることができなかった。そこで、疲労強度の大きいステンレス鋼をスクリーンとして使用して、スクリーンの耐久性を向上させるために、様々な試行錯誤を行った結果、本願発明者は、本願発明に想到することができたのである。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によるスクリーンは、押出造粒装置用のスクリーンであって、内面及び外面と、内面から外面に材料を通過させる多数の孔とを有し、疲労強度が少なくとも300MPaのステンレス鋼で形成され、各孔は、内面側の直線部分と、外面側のテーパ部分とを有し、ドリル加工で形成されることを特徴としている。
【0010】
疲労強度の大きいステンレス鋼のスクリーンの耐久性を向上させることができなかった理由は、多数の孔をパンチング加工で形成していたことにあった。すなわち、疲労強度の大きい(少なくとも疲労強度300MPaの)ステンレス鋼に、疲労強度の小さい(例えば、疲労強度240MPa)のステンレス鋼と同じ大きさの孔をパンチング加工であけた場合、孔を無理にあけようとするため内部応力が残り、結果的に、疲労破壊に至るまでの時間が短くなっていた。また、孔の形状は、外面側にテーパ部分を形成すると、造粒性がよいことが分かった。従って、スクリーンが、少なくとも300MPaの疲労強度を有するステンレス鋼で形成される場合、各孔が、内面側の直線部分と、外面側のテーパ部分とを有し、各孔をドリル加工で形成することによって、スクリーンの耐久性を、疲労強度が比較的小さいステンレス鋼で形成されるスクリーンよりも延長させることができることを見出した。
【0011】
本発明のスクリーンの実施形態において、好ましくは、スクリーンは、円筒状又はその一部分であり、スクリーンの外面は、ショットピーニング加工される。
【0012】
スクリーンが円筒状又はその一部分である場合、平らなステンレス鋼を曲げ加工する必要がある。一方、スクリーンが疲労破壊する際、スクリーンが外側に膨らんで亀裂が入ることがしばしばあった。そこで、スクリーンの外面をショットピーニング加工することによって、スクリーンを湾曲させることができると同時に、スクリーンの外方への膨らみに抵抗する内部応力をスクリーン内に残すことができる。その結果、スクリーンの耐久性を更に延長させることができた。
【0013】
本発明のスクリーンの実施形態において、好ましくは、スクリーンの厚さは、0.8〜1.2mmである。
【0014】
このように構成されたスクリーンでは、本発明によるスクリーンを、在来のスクリーンにそのまま置き換えることが可能である。
【0015】
また、上記目的を達成するために、本発明による押出造粒装置は、上述したスクリーンを有することを特徴としている。
【0016】
また、上記目的を達成するために、押出造粒装置のスクリーンの本発明による形成方法は、内面及び外面を有し且つ疲労強度が少なくとも300MPaのステンレス鋼の板を準備する段階と、ステンレス鋼の板に、多数の孔をドリル加工によって形成する段階と、を有し、各孔は、内面側の直線部分と、外面側のテーパ部分とを有することを特徴としている。
【0017】
本発明による形成方法において、好ましくは、更に、多数の孔をドリル加工によって形成したステンレス鋼の板の外面をショットピーニング加工することによって、外面が凸になるようにステンレス鋼の板を湾曲させる段階を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、耐久性を向上させた押出造粒装置用のスクリーン、及びかかるスクリーンを有する押出造粒装置、及びかかるスクリーンの形成方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】押出造粒装置の正面図である。
【図2】押出造粒装置の平面図である。
【図3】本発明によるスクリーンの斜視図である。
【図4】本発明によるスクリーンの孔の断面図である。
【図5】本発明によるスクリーンの孔の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び図2はそれぞれ、押出造粒装置の正面図及び平面図である。図1に示す押出造粒装置1は、粉状の原料を混練してできた混練材料を造粒するためのものである。原料は、例えば、薬品、調味料、洗剤、加工食品、飼料、肥料、燃料である。
【0021】
押出造粒装置1は、混練原料が投入される円筒状のホッパー2と、ホッパー2の下に配置され且つホッパーと略同じ径を有する円筒状のスクリーン4と、ホッパー2及びスクリーン4の内部で回転する複数の羽根6を有している。ホッパー2には、投入口2aが設けられている。
【0022】
図3は、スクリーンの斜視図である。図3に示すように、本実施形態では、スクリーン4は、2つのスクリーン部分4a、4bに分割にされている。各スクリーン部分4a、4bは、半円筒状のスクリーン本体8と、スクリーン部分4a、4bをボルト等によって互いに連結するためにスクリーン本体8の両側に設けられた連結部10とを有している。スクリーン本体8は、内面12及び外面14と、内面12から外面14に材料を通過させる多数の孔16を有している。スクリーン4が押出造粒装置1に取付けられるとき、スクリーン4は、その周囲を補強するフレーム(図示せず)と一緒に取付けられるのがよい。
【0023】
再び図1及び図2を参照すると、押出造粒装置1は、スクリーン4の多数の孔16を通過した材料を排出するためにスクリーンの下方に且その周囲に配置された環状の排出コンベヤ18と、排出コンベヤの1つの箇所に設けられた排出シュート20を有している。
【0024】
スクリーン4は、疲労強度が少なくとも300MPa、好ましくは少なくとも500MPaのステンレス鋼で形成されている。かかるステンレス鋼は、例えば、LDX2101(登録商標、疲労強度500MPa)、SUS301H(疲労強度640MPa)である。疲労強度は、JIS Z2275 に規定されている試験によって測定される。この試験では、応力毎に試験片が疲労破壊するまでの繰り返し回数を測定するが、試験片は、繰り返し回数が10の7乗以上になる応力で疲労破壊を起こさないと定義し、繰り返し回数が10の7乗のときの応力を疲労強度と呼ぶ。
【0025】
図4は、スクリーンの孔の断面図である。各孔は、内面側の直線部分22と、外面側のテーパ部分24とを有している。テーパ部分の断面輪郭は、直線であってもよいし、孔の中心に向かって凸をなすように湾曲していてもよい(図5参照)。各孔は、ドリル加工で形成される。また、直線部分22の内面側端部に、面取り部26を有することが好ましい。
【0026】
ステンレス鋼の厚さWは、例えば、0.5〜50mmである。また、多数の孔は、ドリル加工によって形成され、孔径Dは、例えば、約0.8〜1.8mmである。直線部分22の長さLは、例えば、0〜1.8mmである。また、テーパ部分のテーパ角度θは、例えば、0°〜45°である。
【0027】
次に、スクリーン4の形成方法を説明する。
【0028】
スクリーン4の形成方法は、内面12及び外面14を有し且つ疲労強度が少なくとも300MPa、好ましくは少なくとも500MPaのステンレス鋼の板を準備する段階と、ステンレス鋼の板に、多数の孔16をドリル加工によって形成する段階を有する。
【0029】
孔16をドリル加工によって形成する段階は、内面側の直線部分22を形成する段階と、外面側のテーパ部分24を形成する段階を有する。これらのドリル加工は、適宜、内面側又は外面側から行われる。直線部分22の内面側端部に、面取り部26を設けることが好ましい。
【0030】
孔16をパンチング加工によって形成しないのは、ステンレス鋼の疲労強度が大きく且つ硬いため、加工後にスクリーン4に亀裂が入ることがあるからである。また、加工に大きい力が必要であり、すなわち、加工時にステンレス鋼が引張られ、加工後に、疲労強度に悪影響を及ぼす内部応力が残るからである。孔をレーザー加工又はフォトエッチング加工で形成しないのは、上述した形状の孔を形成することが困難だからである。
【0031】
スクリーン4が円筒状又はその一部分である場合、スクリーン4の形成方法は、更に、多数の孔を形成したステンレス鋼の板を、外面14が凸になるように湾曲させる段階を有する。
【0032】
ステンレス鋼の板を湾曲させる段階は、ステンレス鋼の板を2つの大きいロールの間に挟んでその間で移動させながら湾曲させるロール加工段階を有していてもよいし、ロール加工段階の前に、ステンレス鋼の板の外面14をショットピーニング加工することによって湾曲させてもよい。適当なショットピーニング加工を行うと、スクリーン4を湾曲させることができると同時に、スクリーン4の外方への膨らみに抵抗する内部応力をスクリーン4内に残すことができ、それにより、耐久性を延長させることができる。ここでいうショットピーニング加工は、金属表面に高速で球体をぶつけ、金属表面に圧縮の残留応力を加える方法であり、飛行機の翼、車のギア、鉄道のレールなどの金属の塊に対して行われている加工法である。しかしながら、本発明のような多数の孔を開けた薄い金属板のスクリーンの片面のみにショットピーニング加工を行うことはなされていなかった。ショットピーニング加工された面は凸面に変形するので、更に行うロール加工による成型の負担を軽減させることができる。
【0033】
次に、押出造粒装置1の作動を説明する。
【0034】
予め混練しておいた造粒すべき原料を、投入口2aからホッパー2内に投入する。自重によって及び/又は図示しない羽根によって下方に押し込まれた原料は、羽根6によって、スクリーン4の内面12から外面14に向かってスクリーン4の孔16を通して押出され、その結果、造粒される。造粒された原料は、排出コンベヤ18によって排出シュート20まで搬送され、排出シュート20から排出される。
【0035】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0036】
上記実施形態では、円筒状のスクリーン4が2つのスクリーン部分4a、4bに分割されていたが、1つのスクリーン部分で形成されてもよいし、3つ以上のスクリーン部分に分割されていてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、円筒状又はその一部分のスクリーンを説明したが、スクリーンが羽根6の下に位置して原料が下方に押出される押出造粒装置の場合、スクリーンは平らであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 押出造粒装置
4 スクリーン
12 内面
14 外面
16 孔
22 直線部分
24 テーパ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出造粒装置用のスクリーンであって、
内面及び外面と、
前記内面から前記外面に材料を通過させる多数の孔を有し、
疲労強度が少なくとも300MPaのステンレス鋼で形成され、
各孔は、前記内面側の直線部分と、前記外面側のテーパ部分とを有し、ドリル加工で形成されることを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
前記スクリーンは、円筒状又はその一部分であり、
前記スクリーンの外面は、ショットピーニング加工されることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
前記スクリーンの厚さは、0.8〜1.2mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクリーン。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のスクリーンを有することを特徴とする押出造粒装置。
【請求項5】
押出造粒装置用のスクリーンの形成方法であって、
内面及び外面を有し且つ疲労強度が少なくとも300MPaのステンレス鋼の板を準備する段階と、
ステンレス鋼の板に、多数の孔をドリル加工によって形成する段階と、を有し、
各孔は、前記内面側の直線部分と、前記外面側のテーパ部分とを有することを特徴とする形成方法。
【請求項6】
多数の孔をドリル加工によって形成したステンレス鋼の板の外面をショットピーニング加工することによって、前記外面が凸になるようにステンレス鋼の板を湾曲させる段階を有する、請求項5に記載の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−76052(P2012−76052A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225706(P2010−225706)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】