説明

抽出装置

【課題】PCB類を含む油性液体試料から、簡単な操作により短時間でPCB類の親水性抽出液を調製できる抽出装置を提供する。
【解決手段】油性液体試料に含まれる不純物を分解して吸着する第一充填剤、および、分解された不純物を吸着する第二充填剤を収容する第一カラム10と、PCB類を吸着する第三充填剤を収容する第二カラム20と、第一カラム10および第二カラム20の接続又は解除が可能な連結手段と、脂肪族炭化水素溶媒を第一カラム10に供給可能な第一貯留部と、第二カラム20をスライドして着脱可能なスライド固定手段91、および、第二カラム20の内部における通液方向を通常状態又はその反転状態に切替可能な切替手段92を備えた保持機構90と、反転状態の第二カラム20に親水性溶媒を供給可能な第二貯留部80と、を備えた抽出装置X。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビフェニル類を含む油性液体から前記ポリ塩化ビフェニル類を抽出する抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスなどの電気機器の電気絶縁油として、電気絶縁性に優れたポリ塩化ビフェニル類(以下、「PCB類」と称する)を含むものが使用されていた。しかし、生体に対するPCB類の毒性が確認されたことから、PCB類を含む電気絶縁油等の使用は実質的に禁止となっている。
【0003】
PCB類の安全な化学分解処理法が確立されたことを背景に、平成13年にいわゆるPCB特別措置法が制定され、平成28年7月までの間にこれまで使用または保管されていたPCB類含有電気絶縁油をはじめとする全てのPCB類廃棄物の処理が義務付けられることとなった。同法対象のPCB類廃棄物は、0.5mg/kg以上のPCB類を含むものとなっている。
既存の電気機器等は、PCB特別措置法上の上述の期限があることから、当該電気絶縁油が前記PCB類廃棄物に該当するか否かの判定をすることが早急に要請されている。
【0004】
電気絶縁油等の油性液体に含まれるPCB類の測定方法として、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS法)やガスクロマトグラフ電子捕獲検出法(GC/ECD法)が公知である。これらの方法は、高感度の分析装置を用いた分析結果に基づいて判定される。ただし、油性液体試料には、分析結果に影響する妨害成分も含まれるため、分析精度を高めるためには、油性液体試料を高度に前処理することが必要になる。
【0005】
例えば特許文献1に記載の前処理方法では、油性液体試料中の有機成分を有機溶媒に抽出した抽出液を調製し、この抽出液をクロマトグラフィーの手法でシリカゲルカラムとアルミナカラムとにこの順で通過させる。この際、抽出液に含まれるPCB類以外の不純成分の一部はシリカゲルカラムを通過する際に分解され、この分解生成物がシリカゲルカラムに捕捉される。そして、アルミナカラムを通過した展開溶媒を採取すると、不純成分が分離されたPCB類含有抽出液が得られる。このPCB類含有抽出液をGC/MS法又はGC/ECD法による分析用試料として用いる。
【0006】
前記油性液体に含まれるPCB類の測定方法として、GC/MS法等のガスクロマトグラフィー法の他に、イムノアッセイ法等のバイオアッセイ法があることが知られている(例えば特許文献2)。
ガスクロマトグラフィー法はPCB類の測定に少なくとも1時間程度を要する。しかし、バイオアッセイ法は、通常、数十分程度の短時間でPCB類を測定可能であるため、PCB類の測定時間の短縮を図る上で有利である。
また、ガスクロマトグラフィー法は、機器を設置するための広い場所が必要であり、しかも、機器の設置環境の温度および湿度を管理する必要がある。しかし、バイオアッセイ法は、当該機器が小型であり、設置環境の管理が実質的に不要である点において、ガスクロマトグラフィー法よりも有利である。
そのため、前記油性液体に含まれるPCB類の測定方法としては、GC/MS法等のガスクロマトグラフィー法よりもバイオアッセイ法を適用するのが好ましい場合がある。
【0007】
【特許文献1】特開2003−114222号公報(段落0004,段落0007)
【特許文献2】特開2006−292654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の前処理方法では、GC/MS法又はGC/ECD法によるPCB類の測定を目的として判定対象物からPCB類を抽出しているため、得られるPCB類含有抽出液はトルエン等の疎水性溶媒溶液となる。そのため、特許文献1に記載の前処理方法により得られる抽出液は、PCB類の親水性溶媒溶液を分析用試料として用いる必要があるバイオアッセイ法への適用が困難である。
さらに、油性液体試料から抽出液を調製する手間が掛かり、また、処理のために必要な時間は2〜3日程度の長時間が必要となる。
【0009】
従って、本発明の目的は、PCB類を含む油性液体試料から、簡単な操作により短時間でPCB類の親水性抽出液を調製できる抽出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る抽出装置の第一特徴構成は、ポリ塩化ビフェニル類を含む油性液体試料から前記ポリ塩化ビフェニル類を抽出するべく、前記油性液体試料に含まれるポリ塩化ビフェニル類以外の不純物の少なくとも一部を分解して吸着する第一充填剤、および、前記分解された不純物の少なくとも一部を吸着する第二充填剤を収容する第一カラムと、ポリ塩化ビフェニル類を吸着する第三充填剤を収容する第二カラムと、前記第一カラムおよび前記第二カラムの接続又は解除が可能な連結手段と、前記ポリ塩化ビフェニル類を溶解する脂肪族炭化水素溶媒を貯留し、当該脂肪族炭化水素溶媒を前記第一カラムに供給可能な第一貯留部と、前記第二カラムをスライドして着脱可能なスライド固定手段、および、前記第二カラムの内部における通液方向を通常状態又はその反転状態に切替可能な切替手段を備えた保持機構と、前記ポリ塩化ビフェニル類を溶解する親水性溶媒を貯留し、前記反転状態の第二カラムに当該親水性溶媒を供給可能な第二貯留部と、を備えた点にある。
【0011】
第一カラムに添加された油性液体試料に含まれるポリ塩化ビフェニル類(PCB類)以外の不純成分は、第一充填剤との反応により速やかに分解される。この分解生成物は、PCB類とともに第一充填剤に保持される。そして、第一貯留部に貯留してある脂肪族炭化水素溶媒を第一カラムに供給すると、第一充填剤に保持されたPCB類および分解生成物の一部は、供給された脂肪族炭化水素溶媒に溶解し、第一充填剤から第二充填剤を経由して第一カラムから排出される。
ここで、分解生成物の一部は第二充填剤に吸着され、第一カラム内に保持される。一方、PCB類は、第一カラムを通過する脂肪族炭化水素溶媒とともに第一カラムから排出される。
【0012】
第一カラムを通過した脂肪族炭化水素溶媒、即ち、PCB類を溶解した脂肪族炭化水素溶媒を連結手段を介して第二カラムへ供給して通過させると、脂肪族炭化水素溶媒に溶解しているPCB類は第三充填剤により捕捉される。また、脂肪族炭化水素溶媒に残留しているPCB類以外の不純成分は第三充填剤により捕捉されずに脂肪族炭化水素溶媒とともに第二カラムを通過する。
【0013】
このとき、第二カラムにおいて、大部分のPCB類は、主に脂肪族炭化水素溶媒の供給側の端部に存在する第三充填剤により捕捉される。
ここで、連結手段における第二カラムの接続を解除して、当該第二カラムを保持機構のスライド固定手段にスライドして装着する。このとき、第二カラムは、単にスライドするだけで保持機構に装着できるため、装着の操作を簡便に行うことができ、迅速に次の工程に移行することができる。
【0014】
第二カラムをスライド固定手段に装着した状態で、切替手段により第二カラムの内部における通液方向を通常状態からその反転状態に切替える。これにより、第三充填剤により捕捉された大部分のPCB類の位置は、第三充填剤において、脂肪族炭化水素溶媒の通液方向における上流側である供給側の端部から、当該通液方向における下流側である排出側の端部に変更される。
【0015】
当該反転状態で第二貯留部に貯留してある親水性溶媒を第二カラムに供給して通過させると、第三充填剤に捕捉されたPCB類は、親水性溶媒に溶解して第二カラムから抽出され、親水性溶媒溶液として確保される。
【0016】
このように、PCB類の密度の高い部位が、前記排出側の端部に存在する状態で親水性溶媒を供給するため、第二カラムにおいて当該排出側の端部付近の第三充填剤に捕捉されたPCB類を溶出すれば、油性液体試料に含まれる殆どのPCB類を抽出できる。そのため、第三充填剤の全体に亘って捕捉されたPCB類を溶出する場合と比べて、少量の親水性溶媒により速やかに所望量のPCB類が抽出できる。
従って、本構成の抽出装置では、簡単な操作により短時間でPCB類の親水性抽出液を調製できることとなり、当該抽出装置により得られるPCB類の親水性溶媒溶液は、PCB類の分解処理(無害化処理)や各種の分析において適用しやすい少量になり得る。
【0017】
本発明に係る抽出装置の第二特徴構成は、前記第一カラムおよび前記第二カラムを各別に加熱する加熱手段を備えた点にある。
【0018】
第一カラムを加熱手段により加熱することで、第一充填剤によって油性液体試料に含まれるPCB類以外の不純物を速やかに分解することができる。また、第二カラムを加熱手段により加熱することで、親水性溶媒によるPCB類の溶解を速やかに行うことができる。
従って、本構成では、より短時間でPCB類の親水性抽出液を調製できる。
【0019】
本発明に係る抽出装置の第三特徴構成は、前記脂肪族炭化水素溶媒を前記第一カラムに供給する際に、前記第一カラムの内部の圧力を調節する圧力調節手段を備えた点にある。
【0020】
本構成によれば、圧力調節手段によって第一カラムの内部の圧力を調節することで、脂肪族炭化水素溶媒が第一カラムを通過する通液速度や、第一カラム内における反応速度を適切な速度に調節することができる。
従って、本構成では、第一カラムにおける脂肪族炭化水素溶媒による反応を確実に行うことができる。
【0021】
本発明に係る抽出装置の第四特徴構成は、前記第二カラムの内部を乾燥させる乾燥手段を備えた点にある。
【0022】
本構成のように、第二カラムに親水性溶媒を供給する前に当該第二カラムの内部を乾燥させることで、親水性溶媒によってPCB類の溶解を行う際に、供給された親水性溶媒が希釈されるのを防止することができる。そのため、希釈された親水性溶媒と比べて、効率よくPCB類の溶解を行うことができる。
【0023】
本発明に係る抽出装置の第五特徴構成は、前記第二カラムの内部に存在する気泡を除去する気泡除去手段を備えた点にある。
【0024】
本構成のように、第二カラムに親水性溶媒を供給する前に、気泡除去手段によって当該第二カラムの内部に存在する気泡を除去することで、第三充填剤と親水性溶媒との接触面積が減少するのを防止できる。そのため、第三充填剤と親水性溶媒との接触機会が低下するのを未然に防止できるため、効率よくPCB類の溶解を行うことができる。
【0025】
本発明に係る抽出装置の第六特徴構成は、前記第一充填剤を硫酸シリカゲルとした点にある。
【0026】
本構成のように、第一充填剤として硫酸シリカゲルを適用すれば、例えば油性液体試料を鉱物油からなる電気絶縁油とした場合、PCB類以外の不純物である芳香族化合物を、確実に分解して吸着することができる。
【0027】
本発明に係る抽出装置の第七特徴構成は、前記第二充填剤を硝酸銀シリカゲルとした点にある。
【0028】
本構成のように、第二充填剤として硝酸銀シリカゲルを適用すれば、例えば油性液体試料を鉱物油からなる電気絶縁油とした場合、PCB類以外の不純物である芳香族化合物を分解して生成した分解生成物を、確実に捕捉することができる。
【0029】
本発明に係る抽出装置の第八特徴構成は、前記第三充填剤をアルミナとした点にある。
【0030】
本構成のように、第三充填剤としてアルミナを適用すれば、油性液体試料に含まれるPCB類を捕捉すると共に、油性液体試料に含まれる芳香族化合物以外の不純成分であるパラフィン類等を、脂肪族炭化水素溶媒に溶解し、当該脂肪族炭化水素溶媒とともに第二カラムを通過させて排出することができる。
従って、本構成では、第三充填剤にて捕捉するPCB類の純度を高めることができる。
【0031】
本発明に係る抽出装置の第九特徴構成は、前記第一カラムおよび前記第二カラムを有するカラムユニットを複数備え、当該カラムユニットのそれぞれを、上面視で同一円周上に等間隔で配置した点にある。
【0032】
本構成のように、複数のカラムユニットを同一円周上に配置することで、各カラムユニットを枠体に保持した場合に、それぞれのカラムユニットにおいて、枠体の外周又は円の中心からカラムユニットまでの距離を等しく設定することができる。また、複数のカラムユニットを等間隔に配置することで、それぞれのカラムユニットの周囲の空間を等しく確保することができる。
そのため、例えば、仮に周囲の温度が変化した場合であっても、各カラムユニットに作用する温度の影響は同じになる等、各カラムユニットを同じ条件で処理することが容易となる。従って、本構成では、複数の検体を同時に短時間で処理してPCB類の親水性抽出液を調製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明は、PCB類を含む油性液体からPCB類を抽出する抽出装置に関する。
【0034】
PCB類を含む油性液体としては、例えば、トランスなどの電気機器において用いられている電気絶縁油、化学実験や化学工場において生成されたPCB類を含む廃有機溶媒、分析のためにPCB類を含む試料から有機溶媒でPCB類を抽出した抽出液およびPCB類の分解処理施設で発生する分解処理液や洗浄液などである。
【0035】
電気絶縁油は、通常、石油を精留して得られる比較的高沸点のパラフィン、ナフテンまたは芳香族化合物などを主成分とする鉱物油からなるものであり、電気絶縁性を高めることを目的としてPCB類が添加された場合や、製造過程においてPCB類が混入することにより、PCB類を含む場合がある。
【0036】
図1〜5に示したように、本発明の抽出装置Xは、精製カラムとしての第一カラム10と、抽出カラムとしての第二カラム20と、第一カラム10および第二カラム20の接続又は解除が可能な連結手段30とを備える。
【0037】
また、抽出装置Xは、PCB類を溶解する脂肪族炭化水素溶媒を貯留し、当該脂肪族炭化水素溶媒を第一カラム10に供給可能な第一貯留部60と、第二カラム20をスライドして着脱可能なスライド固定手段91、および、第二カラム20の内部における通液方向を通常状態又はその反転状態に切替可能な切替手段92を備えた保持機構90と、PCB類を溶解する親水性溶媒を貯留し、反転状態の第二カラム20に当該親水性溶媒を供給可能な第二貯留部80と、を備える。
【0038】
その他、本実施形態の抽出装置Xは、第一カラム10および第二カラム20を各別に加熱する加熱手段40,70、第一カラム10の内部の圧力を調節する圧力調節手段55、第二カラム20の内部を乾燥させる乾燥手段110、第二カラム20の内部に存在する気泡を除去する気泡除去手段120を備える。
【0039】
(第一カラム)
第一カラム10は、油性液体試料に含まれるPCB類以外の不純物の少なくとも一部を分解して吸着する第一充填剤14、および、分解された不純物の少なくとも一部を吸着する第二充填剤15を収容する。
本実施形態では、上層に第一充填剤14、下層に第二充填剤15を有し、これらが多層充填剤構造13を形成する。
【0040】
第一カラム10は、下端部10aの外径および内径が縮小した円筒形状であり、上端部および下端部にそれぞれ開口部11、12を有する。第一カラム10は、例えば、ガラスまたは耐溶媒性および耐熱性を有するプラスチックを用いて形成される。
第一カラム10の大きさ(多層充填剤構造13を充填可能な部分の大きさ)は、内径10〜20mm程度、長さが30〜110mm程度のものが好ましい。
【0041】
第一充填剤14は、例えば硫酸シリカゲルが適用できる。硫酸シリカゲルは、濃硫酸をシリカゲル表面に均一に添加して調製される。硫酸シリカゲルの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.3〜1.1g/cm3に設定するのが好ましく、0.5〜1.0g/cm3に設定するのがより好ましい。
【0042】
第二充填剤15は、例えば硝酸銀シリカゲルが適用できる。硝酸銀シリカゲルは、硝酸銀水溶液をシリカゲル表面に均一に添加した後、減圧加熱により水分を除去して調製される。硝酸銀シリカゲルの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.3〜0.8g/cm3に設定するのが好ましく、0.4〜0.7g/cm3に設定するのがより好ましい。
【0043】
第一充填剤14と第二充填剤15との比率は、硝酸銀シリカゲルに対して硫酸シリカゲルを重量比で1.0〜50倍に設定するのが好ましく、3.0〜30倍に設定するのがより好ましい。硫酸シリカゲルの重量比が50倍を超えるときは、硝酸銀シリカゲルの割合が小さくなるため、吸着作用による油性液体の精製が不十分になる可能性がある。逆に、硫酸シリカゲルの重量比が1.0倍未満のときは、分解作用による油性液体の精製が不十分になる可能性がある。
【0044】
(第二カラム)
第二カラム20は、PCB類を吸着する第三充填剤23を収容する。
第二カラム20は、第一カラム10の下端部10aと外径および内径が略同じに設定された円筒形状であり、上端部および下端部にそれぞれ開口部21、22を有する。第二カラム20は、例えば、ガラスまたは耐溶媒性および耐熱性を有するプラスチックを用いて形成される。
第二カラム20の大きさ(第三充填剤23を充填可能な部分の大きさ)は、内径2.0〜5.0mm程度、長さが10〜200mm程度のものが好ましい。
【0045】
第三充填剤23は、例えばアルミナが適用できる。アルミナとしては、各種の活性度のものを用いることができる。アルミナは、PCB類を吸着可能なものであれば特に限定されるものではなく、塩基性アルミナ、中性アルミナおよび酸性アルミナのいずれのものであってもよい。
【0046】
アルミナの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.5〜1.2g/cm3に設定するのが好ましく、0.8〜1.1g/cm3に設定するのがより好ましい。
【0047】
連結手段30は、第一カラム10の下端部10aと第二カラム20の上端部とを着脱可能に形成してあり、第一カラム10の下端部10aと第二カラム20の上端部とを挿入可能な筒状の部材である。連結手段30は、脂肪族炭化水素溶媒に対して安定な材料、例えば耐溶媒性および耐熱性を有するプラスチックを用いて形成してある。
【0048】
(第一貯留部)
第一貯留部60は、第一カラム10内に保持されたPCB類を溶解する脂肪族炭化水素溶媒を貯留する。第一貯留部60は第一カラム10とフレキシブルなチューブ等により接続して、当該脂肪族炭化水素溶媒を第一カラム10に供給可能に構成してある。
当該脂肪族炭化水素溶媒は、PCB類を溶解可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば脂肪族飽和炭化水素溶媒であるn−ペンタン・n−ヘキサン・n−ヘプタン・n−オクタン・イソオクタン・シクロヘキサンなどが適用できる。特に、n−ヘキサンが好ましい。
【0049】
(保持機構)
保持機構90は、第二カラム20をスライドして着脱可能なスライド固定手段91、および、第二カラム20の内部における通液方向を通常状態又はその反転状態に切替可能な切替手段92を備える。
スライド固定手段91は、例えば第二カラム20をスライドさせるレール溝で構成する。
切替手段92は、例えば第二カラム20の上下方向を反転させるように構成する。本実施形態では、レール溝の端部で固定した状態の第二カラム20と接続する切替手段92を回転することで第二カラム20を回転させる。これにより、第二カラム20の内部における通液方向を、通常状態、或いは、その反転状態に切替えることができる。
当該通常状態とは、第二カラム20に充填された第三充填剤23が上側になるように配置された状態で溶媒を通過させるときの通液方向である。一方、当該反転状態とは、第二カラム20に充填された第三充填剤23が下側になるように配置された状態で溶媒を通過させるときの通液方向である。
【0050】
(第二貯留部)
第二貯留部80は、PCB類を溶解する親水性溶媒を貯留する。本実施形態では、反転状態にした第二カラム20の空間部を第二貯留部80として利用する。ピペット等を使用して、第二貯留部80にPCB類を溶解する親水性溶媒を供給する。
当該親水性溶媒は、PCB類を溶解可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えばジメチルスルホキシドや、アセトニトリル・ジメチルホルムアミド・メタノール・エタノール・プロパノール等が適用できる。このうち、より少量の使用でPCB類を抽出できるジメチルスルホキシドが好ましい。
【0051】
(カラムユニット)
抽出装置Xは、第一カラム10および第二カラム20を有するカラムユニット1を複数備えることが可能である。本実施形態では、6つのカラムユニット1を備える場合を例示する。これら複数のカラムユニット1のそれぞれを、上面視で同一円周上に等間隔で配置してある。
例えば加熱手段による加熱処理を行う場合、各カラムユニット1を同一円周上に等間隔で配置すると、各カラムユニット1を同様の条件で加熱処理し易くなる。
【0052】
カラムユニット1の大きさは、後述する油性液体試料からPCB類を抽出する目的に応じて適宜設定することができる。例えば、油性液体試料に含まれるPCB類の濃度を測定するために油性液体試料からPCB類を抽出する前処理を目的とするときは、油性液体試料から少量若しくは微量の試料を採取して本発明の抽出装置を適用すれば足りるため、それに応じてカラムユニット1を小型に設定することができる。
一方、PCB類で汚染された油性液体試料からPCB類を抽出し、この抽出液においてPCB類の分解処理(無害化処理)を実施するようなときは、比較的多量の油性液体試料を処理する必要があるため、処理すべき油性液体量に応じてカラムユニット1を大型に設定する。
【0053】
例えば、鉱物油からなる電気絶縁油に含まれるPCB類の濃度をバイオアッセイ法により測定するに際しては、通常、当該電気絶縁油から採取した1.0〜500mg程度の油性液体試料からPCB類を抽出する。
【0054】
(加熱手段)
第一カラム10および第二カラム20には、これらを各別に加熱する第一加熱手段40および第二加熱手段70がそれぞれ備えてある。第一加熱手段40および第二加熱手段70は、ヒーターやペルチェ素子などで構成してある。
例えば第一加熱手段40は、第一カラム10の第一充填剤14の全体を所要の温度に加熱するように、第一カラム10において第一充填剤14が充填してある位置(第一カラム10の上層)の周囲に配置する。
また、第二加熱手段70は、第二カラム20の第三充填剤23の全体を所要の温度に加熱するように、第二カラム20において第三充填剤23が充填してある位置の周囲に配置する。
【0055】
(圧力調節手段)
圧力調節手段55は、第一カラム10の内部の圧力を調節する。
脂肪族炭化水素溶媒を第一カラム10に供給する際に、第一カラム10の内部の圧力を調節すると、脂肪族炭化水素溶媒を迅速に通液させることができる。
図5には、脂肪族炭化水素溶媒を第一カラム10に加圧して供給する圧力ポンプ52の下流に圧力調節手段55を配置した状態を示してある。
当該圧力調節手段55は、このような構成の他に、第二カラム20の下端部に吸引装置を配置して構成することができる。吸引装置は、例えば第二カラム20の下端部を気密に収容可能な容器と、当該容器内を減圧するためのポンプとを備える。この容器内には、カラムユニット1を通過する脂肪族炭化水素溶媒を受けるための溶媒容器を配置する。
【0056】
(乾燥手段)
乾燥手段110は、第二カラム20の内部を乾燥させる。当該乾燥手段110は、ドライエア又は窒素ガス等の不活性ガスを供給可能なブロワー等で構成してある。当該乾燥手段110は、第二カラム20の上端に接続できるように、キャップ状の接続部を備える。さらに、乾燥手段110は、当該不活性ガスを封入したボンベ等の流体源を備える。
【0057】
(気泡除去手段)
気泡除去手段120は、第二カラム20の内部に存在する気泡を除去する。当該気泡除去手段120は、例えば超音波によって当該気泡を除去する超音波加振装置で構成する。
【0058】
<PCB類の抽出方法>
本発明の抽出装置Xを用いたPCB類の抽出方法を説明する。ここでは、トランスなどの電気機器において用いられる、鉱物油からなる電気絶縁油に含まれるPCB類の濃度をバイオアッセイ法により測定するために、当該電気絶縁油からPCB類を抽出する場合について説明する(図6)。
【0059】
まず、第一カラム(精製カラム)10および第二カラム(抽出カラム)20をそれぞれ第一加熱手段40および第二加熱手段70にセッティングする(図6:工程A,B)。その後、第一カラム10と第二カラム20とを連結手段30で連結する。
電気絶縁油から1.0〜500mg程度の微量の油性液体試料を採取し、当該油性液体試料を第一カラム10の上端部の開口部11から上層の第一充填剤(硫酸シリカゲル)14へ添加する。そして、第一加熱手段40を作動させ、第一カラム10の上層を加熱しながら所定時間維持する(図6:工程C)。添加された油性液体試料は、第一充填剤14に保持されるため、当該油性液体試料に含まれるPCB類以外の不純物、特に芳香族化合物が第一充填剤14の硫酸シリカゲルと反応し、速やかに分解される。この反応による分解生成物は、第一充填剤14および第二充填剤(硝酸銀シリカゲル)15において捕捉され、第一カラム10に保持される。
【0060】
第一加熱手段40による加熱温度は、少なくとも35℃、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上に設定する。加熱温度が35℃未満の場合は、油性液体試料に含まれる上述の不純物と硫酸シリカゲルとの反応が進行しにくくなるため、油性液体試料から短時間でPCB類を抽出するのが困難になる。
加熱時間は、通常、10分〜8時間に設定するのが好ましい。加熱時間が10分未満の場合は、油性液体試料に含まれる上述の不純物の分解が不十分となり、最終的に得られる抽出液中にPCB類以外の不純成分が混入する可能性がある。
【0061】
油性液体試料がPCB類以外の不純成分を多く含む場合、或いはその可能性がある場合は、この工程において、第一カラム10の第一充填剤14へ油性液体試料を添加するとともに、炭化水素溶媒を添加するのが好ましい(図6:工程D,E)。このようにすると、油性液体試料が炭化水素溶媒により希釈され、油性液体試料と硫酸シリカゲルとの接触効率が向上し、反応効率が高まるため、より短時間で試料に含まれるPCB類以外の不純成分、特に芳香族化合物が短時間で効率的に分解され得る。
【0062】
利用可能な炭化水素溶媒は、通常、炭素数が5〜8個の脂肪族飽和炭化水素溶媒、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンおよびシクロヘキサンなどである。但し、炭化水素溶媒は、第一加熱手段40による加熱温度以上の沸点を有するものを選択する必要がある。炭化水素溶媒の沸点がこの条件を満たさない場合、第一カラム10の加熱時に炭化水素溶媒が速やかに揮発してしまうため、上述の反応効率が高まりにくくなる。
【0063】
炭化水素溶媒は、通常、第一カラム10の第一充填剤14へ油性液体試料を添加した直後に続けて添加してもよいし、予め油性液体試料に添加しておいてもよい。
【0064】
上述の工程において所定時間加熱された第一カラム10は、第一加熱手段40を停止した後、常温(通常は10〜30℃程度の室温)まで冷却される(図6:工程F)。
【0065】
次に、第一カラム10の上端側の開口部11に、第一カラム10へ溶媒を供給するための第一リザーバ60を装着し、この第一リザーバ60内に脂肪族炭化水素溶媒を貯留する。そして、ポンプ52を作動すると、第一リザーバ60内に貯留された脂肪族炭化水素溶媒は徐々に第一カラム10内へ連続的に供給される(図1,図5(a),図6:工程G,H)。
第一カラム10内へ供給された脂肪族炭化水素溶媒は、第一カラム10内を上層の第一充填剤14から下層の第二充填剤15へ流れ、第一カラム10の開口部12から連結手段30を経由し、開口部21から第二カラム20内へ流れる。
【0066】
この際、第一充填剤14に保持されたPCB類は、脂肪族炭化水素溶媒に溶解し、第二カラム20内へ流れる。一方、第一充填剤14に保持された分解生成物の一部は、脂肪族炭化水素溶媒に溶解して下層の第二充填剤15へ移動し、硝酸銀シリカゲルに吸着されて第一カラム10内に保持される。
【0067】
第二カラム20内に流入した脂肪族炭化水素溶媒は、第二カラム20を通過して開口部22から溶媒受け容器53に排出される(図1,図5(a))。この際、第一カラム10からの脂肪族炭化水素溶媒中に溶解しているPCB類は、第二カラム20の第三充填剤(アルミナ)23により捕捉され、第二カラム20内に保持される。
【0068】
特に、PCB類は、アルミナにより捕捉されやすいため、第二カラム20内の上端部の開口部21付近で主に保持される。一方、試料に含まれる芳香族化合物以外の不純成分であるパラフィン類等は、第一リザーバ60からの脂肪族炭化水素溶媒に溶解し、当該脂肪族炭化水素溶媒とともに第二カラム20を通過して溶媒受け容器53に排出される。
【0069】
第一リザーバ60における脂肪族炭化水素溶媒の貯留量、すなわち、第一カラム10へ供給する脂肪族炭化水素溶媒の総量は、通常、10〜120ミリリットルに設定するのが好ましい。また、第一リザーバ60からの脂肪族炭化水素溶媒の供給速度は、ポンプ52による圧力調節により、通常、0.2〜3.0ミリリットル/分に設定するのが好ましい。
【0070】
次に、連結手段30を取り外して第一カラム10と第二カラム20とを分離し、第二カラム20を保持機構90のスライド固定手段91に固定する(図6:工程I)。
第二カラム20の周囲に配置してある第二加熱手段70により第二カラム20を35〜90℃程度に加熱する(図6:工程J)。
第二カラム20の開口部21には乾燥手段110を装着し、ポンプ52を作動させ、上端の開口部21から第二カラム20内にドライエア等の不活性ガスを乾燥手段110により供給する(図2,図5(b),図6:工程K,L)。これにより、第二カラム20内に残留している脂肪族炭化水素溶媒が不活性ガスとともに第二カラム20の下端の開口部22から排出され、第二カラム20内から脂肪族炭化水素溶媒が除去される。この結果、第二カラム20内のアルミナは、乾燥処理される。
【0071】
乾燥手段110を第二カラム20から取り外し、保持機構90の切替手段92により第二カラム20の上下を第二加熱手段70ごと反転させる(図3,図5(c),図6:工程M)。そして、反転により第二カラム20の上端側に移動した開口部22から、所定量の親水性溶媒を第二リザーバ80に供給する(図6:工程N)。
【0072】
第二リザーバ80へ供給された親水性溶媒は、第二リザーバ80から第二カラム20内へ自重により自然に流れ、第二カラム20の下端側に移動した開口部21から溶媒受け容器54に排出される(図5(c),図6:工程O)。この際、親水性溶媒は、第二カラム20のアルミナに捕捉されたPCB類を溶解し、このPCB類を開口部21から排出させる。
このとき、気泡除去手段120により第二カラム20の内部に存在する気泡を除去する。
【0073】
ここで、PCB類は、主に開口部21付近のアルミナにより捕捉されているため、第二カラム20から排出されるときに第二カラム20での移動量が少ない。このため、アルミナに捕捉されたPCB類の実質的に全量は、第二カラム20から排出される主に初流部分の親水性溶媒に溶解した状態になる。したがって、ここで得られるPCB類の親水性溶媒溶液、すなわちPCB類の抽出液は、後述する分析操作において利用しやすい少量になる。また、ここで得られるPCB類の抽出液は、第二カラム20より脂肪族炭化水素溶媒を除去してから第二カラム20へ親水性溶媒を供給して得られたものであるため、脂肪族炭化水素溶媒およびそれに溶解している不純成分の混入が少ない、高純度の抽出液になる。
【0074】
本実施の形態に係る抽出方法によれば、通常、作業開始工程(第一カラム10への試料添加工程)から2〜10時間程度の短時間で上述の抽出液を得ることができる。
【0075】
このような抽出工程において、第二カラム20は、第二加熱手段70により加熱しながら親水性溶媒を供給するのが好ましい。第二カラム20の加熱温度は、通常、少なくとも35℃に設定するのが好ましく、60℃以上に設定するのがより好ましい。このようにすると、第二カラム20のアルミナに捕捉されたPCB類は、より少量の親水性溶媒により全量が抽出されやすくなる。そのため、PCB類の抽出液量を後述するバイオアッセイ法による分析操作、特に、低感度の検出器を用いるバイオアッセイ法による分析操作においてさらに利用しやすいより少量に設定することができる。
【0076】
電気絶縁油に含まれるPCB類の濃度を測定する場合は、上述の抽出操作において得られた抽出液、すなわち、PCB類の親水性溶媒溶液を確保し、この抽出液を分析用試料としてバイオアッセイ法で分析する。バイオアッセイ法としては、酵素結合免疫測定法(Enzyme−linked immuno sorbent assay:ELISA法)および結合平衡除外法(Kinetic exclusion assay:KinExA法)等のイムノアッセイ法やレポータージーンアッセイ法(Chemically−activated luciferase gene expression:CALUX法)などのPCB類の測定に適した方法を採用することができる。
【0077】
〔別実施の形態〕
(1)上述の実施の形態では、第一カラム10を単一のカラムで構成し、その中に多層充填剤構造13を形成しているが、第一カラム10は、二つのカラムを上下に連結し、上側のカラムに硫酸シリカゲルを充填し、下側のカラムに硝酸銀シリカゲルを充填したものであってもよい。
このように第一カラム10を分離した構造とすることで、第一カラム10に第一充填剤14および第二充填剤15を充填する手間が省けるため、第一カラム10の調製を容易に行うことができる。
【0078】
(2)上述の実施の形態では、第二リザーバ80へ供給した親水性溶媒を自重により第二カラム20に対して自然に供給するようにしたが、親水性溶媒は、シリンジポンプなどの定量ポンプを用いて第二カラム20へ供給することもできる。
これにより、第二カラム20における抽出を迅速に行うことができる。
【0079】
(3)上述の実施の形態では、切替手段92は第二カラム20を上下反転させる場合を例示したが、これに限られるものではない。例えば、第二カラム20の内部における通液方向が通常状態となる位置、または、当該通液方向が反転状態となる位置に第二カラム20を平行移動させるように切替手段を構成することができる。この場合、通液方向が通常状態となる位置では、溶媒は上方から第二カラム20に供給する。一方、当該通液方向が反転状態となる位置では、溶媒は下方から第二カラム20に供給する。
本構成では、第二カラム20を反転させる必要がないため、例えばスライド固定手段91により第二カラム20を平行移動させるように構成すれば、保持機構90を簡略化することができる。
【0080】
(4)上述の実施の形態では、鉱物油からなる電気絶縁油に含まれるPCB類の濃度を測定するために、当該電気絶縁油から採取した試料からPCB類を抽出する場合を中心に本発明の抽出装置を説明したが、本発明は他の目的において利用することもできる。例えば、PCB類を含む電気絶縁油や廃有機溶媒などは廃棄処分する際にPCB類を分解して無害化する必要があるが、処分量が多い場合はこのような無害化処理を円滑に進めるのが困難なことがある。そこで、廃棄処分する電気絶縁油等に本発明の抽出装置を適用すれば、電気絶縁油等に含まれるPCB類を少量の親水性溶媒溶液に変換することができるため、PCB類の無害化処理を実施しやすくなる。
【0081】
本発明は、PCB類を含む油性液体からPCB類を抽出する抽出装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の抽出装置の概略図
【図2】第一カラムおよび第二カラムを分離し、第二カラムに乾燥手段を装着したときの抽出装置の概略図
【図3】保持機構の切替手段により第二カラムの上下を反転させたときの抽出装置の概略図
【図4】第一カラムおよび第二カラムを連結手段により接続したときの抽出装置の要部概略図
【図5】各抽出工程における抽出装置を模式的に示した概略図
【図6】各抽出工程を概説した流れ図
【符号の説明】
【0083】
X 抽出装置
1 カラムユニット
10 第一カラム
14 第一充填剤
15 第二充填剤
20 第二カラム
23 第三充填剤
30 連結手段
40 第一加熱手段
55 圧力調節手段
60 第一貯留部
70 第二加熱手段
80 第二貯留部
90 保持機構
91 スライド固定手段
92 切替手段
110 乾燥手段
120 気泡除去手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビフェニル類を含む油性液体試料から前記ポリ塩化ビフェニル類を抽出するべく、
前記油性液体試料に含まれるポリ塩化ビフェニル類以外の不純物の少なくとも一部を分解して吸着する第一充填剤、および、前記分解された不純物の少なくとも一部を吸着する第二充填剤を収容する第一カラムと、
ポリ塩化ビフェニル類を吸着する第三充填剤を収容する第二カラムと、
前記第一カラムおよび前記第二カラムの接続又は解除が可能な連結手段と、
前記ポリ塩化ビフェニル類を溶解する脂肪族炭化水素溶媒を貯留し、当該脂肪族炭化水素溶媒を前記第一カラムに供給可能な第一貯留部と、
前記第二カラムをスライドして着脱可能なスライド固定手段、および、前記第二カラムの内部における通液方向を通常状態又はその反転状態に切替可能な切替手段を備えた保持機構と、
前記ポリ塩化ビフェニル類を溶解する親水性溶媒を貯留し、前記反転状態の第二カラムに当該親水性溶媒を供給可能な第二貯留部と、
を備えた抽出装置。
【請求項2】
前記第一カラムおよび前記第二カラムを各別に加熱する加熱手段を備えた請求項1に記載の抽出装置。
【請求項3】
前記脂肪族炭化水素溶媒を前記第一カラムに供給する際に、前記第一カラムの内部の圧力を調節する圧力調節手段を備えた請求項1又は2に記載の抽出装置。
【請求項4】
前記第二カラムの内部を乾燥させる乾燥手段を備えた請求項1〜3の何れか一項に記載の抽出装置。
【請求項5】
前記第二カラムの内部に存在する気泡を除去する気泡除去手段を備えた請求項1〜4の何れか一項に記載の抽出装置。
【請求項6】
前記第一充填剤が硫酸シリカゲルである請求項1〜5の何れか一項に記載の抽出装置。
【請求項7】
前記第二充填剤が硝酸銀シリカゲルである請求項1〜6の何れか一項に記載の抽出装置。
【請求項8】
前記第三充填剤がアルミナである請求項1〜7の何れか一項に記載の抽出装置。
【請求項9】
前記第一カラムおよび前記第二カラムを有するカラムユニットを複数備え、当該カラムユニットのそれぞれを、上面視で同一円周上に等間隔で配置してある請求項1〜8の何れか一項に記載の抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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