説明

振れ補正機能付き光学ユニット

【課題】振れを補正するために可動体を揺動させた場合でも、フレキシブル配線基板から可動体に加わる負荷を小さく抑えることができる振れ補正機能付き光学ユニットを提供すること。
【解決手段】振れ補正機能付きの光学ユニット100において、振れ補正用駆動機構500を作動させれば、揺動支点180を中心に可動体3を揺動させることができるので、振れを補正することができる。可動体3から引き出されたフレキシブル配線基板420には、可動体3からの引き出し部分421で可動体3の光軸方向後端部分に沿って折り曲げられた折り曲げ部422が構成されており、光軸方向において、折り曲げ部422で可動体3の光軸方向後端部分のY軸方向の他方側−Yの端部に対向する面422aと、フレキシブル配線基板420の固定体200に対する固定部424で光軸方向後側に向く面424aとの間に揺動支点180が位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ付き携帯電話機等に搭載される振れ補正機能付き光学ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機は、撮影用の光学ユニットが搭載された光学機器として構成されている。かかる光学ユニットにおいては、ユーザーの手振れによる撮影画像の乱れを抑制するために、レンズや撮像素子等の光学素子を備えた可動体を固定体に対して揺動可能に支持した構成とし、角速度センサやフォトリフレクタ等による振れの検出結果に基づいて可動体を揺動させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる特許文献1においては、撮像素子を外部と電気的に接続するにあたって、可動体にフレキシブル配線基板を接続し、かかるフレキシブル配線基板を固定体の外部に引き出した構造が提案されている。また、可動体を揺動させる際にフレキシブル配線基板が無用な負荷を可動体に加えないように、フレキシブル配線基板をC字形状に湾曲させた構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−96861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成のように、フレキシブル配線基板をC字形状に湾曲させてフレキシブル配線基板の寸法を長くすることにより、フレキシブル配線基板から可動体に加わる負荷を小さくした構成では、可動体の光軸方向後側に大きなスペースを確保する必要があるため、光学ユニットの光軸方向の寸法が大きくなってしまうという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、振れを補正するために可動体を揺動させた場合でも、フレキシブル配線基板から可動体に加わる負荷を小さく抑えることができる振れ補正機能付き光学ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る振れ補正機能付き光学ユニットは、光学素子を保持する可動体と、該可動体を覆う固定体と、前記可動体から前記固定体の外部まで延在するフレキシブル配線基板と、前記可動体における光軸方向後端部分と前記固定体との間に設けられた揺動支点と、当該揺動支点を中心に前記可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構と、前記フレキシブル配線基板には、前記可動体からの引き出し部分で当該可動体の光軸方向後端部分に沿って折り曲げられた折り曲げ部と、前記固定体から外部への引き出し部分で前記固定体に固定された固定部と、が設けられ、光軸方向において、前記折り曲げ部で前記可動体の光軸方向後端部分に対向する面と、前記固定部で光軸方向後側に向く面との間に前記揺動支点が位置することを特徴とする。
【0008】
本発明において、可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構が設けられているため、光学ユニットに手振れ等の振れが発生した際、かかる振れを相殺するように可動体を揺動させることができる。このため、光学ユニットが振れても光軸の傾きを補正することができる。また、可動体からはフレキシブル配線基板が引き出されており、かかるフレキシブル配線基板には折り曲げ部が設けられているが、かかる折り曲げ部は、可動体からの引き出し部分で可動体の光軸方向後端部分に沿って折り曲げられた構成になっている。このため、フレキシブル配線基板をC字形状に湾曲させた場合と違って、フレキシブル配線基板は大きく湾曲しておらず、可動体の光軸方向後側でフレキシブル配線基板を引き回すスペースが狭く済む。また、折り曲げ部は、可動体からの引き出し部分で可動体の光軸方向後端部分に沿って折り曲げられた構成になっており、フレキシブル配線基板は、固定体から外部への引き出し部分で固定体に固定された固定部を備えている。このため、フレキシブル配線基板は、折り曲げ部から固定部までの間しか変位可能な部分がない。しかるに本発明では、揺動支点は、光軸方向において、折り曲げ部で可動体の光軸方向後端部分に対向する面と、固定部で光軸方向後側に向く面との間に揺動支点が位置するため、可動体が揺動した際でも、フレキシブル配線基板の変位が小さい。それ故、可動体が揺動した際にフレキシブル配線基板が可動体に印加する負荷が小さい。
【0009】
本発明において、前記フレキシブル配線基板は、前記折り曲げ部と前記固定部との間に前記揺動支点の両側を通るように分割された分岐部を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、フレキシブル配線基板が変位した際にフレキシブル配線基板が可動体に印加する負荷が小さいので、可動体を適正に揺動させることができる。
【0010】
本発明において、前記分岐部は、前記揺動支点が位置する側からみて前記固定部の手前に終端部を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、分岐部を固定部として利用する場合と違って、分岐部に長さ寸法の差が発生しない。それ故、分岐部が可動体に余計な負荷を印加することがない。
【0011】
本発明において、前記フレキシブル配線基板は、前記可動体との接続部と前記固定部との間で前記折り曲げ部のみで折り曲げられ、前記折り曲げ部と前記固定部との間の部分は、光軸方向に対して斜めに交差するように延在している構成を採用することができる。
【0012】
本発明において、前記フレキシブル配線基板は、前記可動体との接続部と前記固定部との間で前記折り曲げ部のみで折り曲げられ、前記折り曲げ部と前記固定部との間の部分は、光軸方向に対して直交するように延在している構成を採用してもよい。
【0013】
本発明において、前記可動体は、前記光軸方向後端部分に剛性板を備え、当該剛性板が前記揺動支点を介して前記固定体に支持されていることが好ましい。かかる構成によれば、揺動支点を介して可動体に衝撃が加わったときでも、可動体が損傷することを防止することができる。
【0014】
本発明において、前記剛性板の光軸方向前側に撮像素子が設けられている構成を採用することができる。かかる構成によれば、揺動支点を介して可動体に衝撃が加わったときでも、撮像素子を保護することができる。
【0015】
本発明において、前記折り曲げ部は、前記剛性板の光軸方向後側の面に接着剤により固定されている構成を採用することができる。
【0016】
本発明において、前記剛性板の前記フレキシブル配線基板が接着された領域は、当該領域を周囲よりも突出させる段差部によって区画されているとともに、当該領域には溝状凹部が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、揺動支点を介して可動体に衝撃が加わったときでも、フレキシブル配線基板が可動体から外れることを防止することができる。
【0017】
この場合、前記フレキシブル配線基板は、前記剛性板に接着剤より固定され、当該剛性板の前記フレキシブル配線基板が接着された領域は、当該領域を周囲よりも突出させる段差部によって区画されているとともに、当該領域には溝状凹部が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、溝状凹部が接着剤の溜まり部として機能するため、フレキシブル配線基板と剛性板とを確実に接着することができる。また、フレキシブル配線基板が接着された領域は、当該領域を周囲よりも突出させる段差部によって区画されているため、フレキシブル配線基板を所定の位置に接着することができる。
【0018】
本発明において、前記折り曲げ部の幅方向の両側部分は、角が斜めあるいはR状に切り欠かれた形状を備え、前記剛性板の前記折り曲げ部とは反対側端部の幅方向の両側部分は、角が斜めあるいはR状に切り欠かれた形状を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、可動体が揺動した際、フレキシブル配線基板の折り曲げ部の角や、剛性板の角が固定体と接触することを防止することができるので、可動体の揺動範囲を広く設定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明において、可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構が設けられているため、光学ユニットに手振れ等の振れが発生した際、かかる振れを相殺するように可動体を揺動させることができる。このため、光学ユニットが振れても光軸の傾きを補正することができる。また、可動体からはフレキシブル配線基板が引き出されており、かかるフレキシブル配線基板には折り曲げ部が設けられているが、かかる折り曲げ部は、可動体からの引き出し部分で可動体の光軸方向後端部分に沿って折り曲げられた構成になっている。このため、フレキシブル配線基板をC字形状に湾曲させた場合と違って、フレキシブル配線基板は大きく湾曲しておらず、可動体の光軸方向後側でフレキシブル配線基板を引き回すスペースが狭く済む。また、折り曲げ部は、可動体からの引き出し部分で可動体の光軸方向後端部分に沿って折り曲げられた構成になっており、フレキシブル配線基板は、固定体から外部への引き出し部分で固定体に固定された固定部を備えており、フレキシブル配線基板は、折り曲げ部から固定部までの間しか変位可能な分がない。しかるに本発明では、揺動支点は、光軸方向において、折り曲げ部で可動体の光軸方向後端部分に対向する面と、固定部で光軸方向後側に向く面との間に揺動支点が位置するため、可動体が揺動した際でも、フレキシブル配線基板の変位が小さい。それ故、可動体が揺動した際にフレキシブル配線基板が可動体に印加する負荷が小さいので、可動体を適正に揺動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットを携帯電話機等の光学機器に搭載した様子を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付きの光学ユニットの全体構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付きの光学ユニットの分解斜視図、および固定体側のフレキシブル配線基板の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付きの光学ユニットの可動体等の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付きの光学ユニットの断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付きの光学ユニットを光軸方向後側からみたときの斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る振れ補正機能付きの光学ユニットから下カバーを外した状態を光軸方向後側からみた分解斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る振れ補正機能付きの光学ユニットの断面図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る振れ補正機能付きの光学ユニットの説明図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る振れ補正機能付きの光学ユニットを光軸方向後側からみた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、光学ユニットとして撮像ユニットの手振れを防止するための構成を例示する。また、以下の説明では、互いに直交する3方向を各々X軸、Y軸、Z軸とし、光軸(レンズ光軸)に沿う方向(光軸方向L)をZ軸とする。また、以下の説明では、各方向の振れのうち、X軸周りの回転は、いわゆるピッチング(縦揺れ)に相当し、Y軸周りの回転は、いわゆるヨーイング(横揺れ)に相当し、Z軸周りの回転は、いわゆるローリングに相当する。また、X軸の一方側には+Xを付し、他方側には−Xを付し、Y軸の一方側には+Yを付し、他方側には−Yを付し、Z軸の一方側(被写体側とは反対側/光軸方向Lの後側)には+Zを付し、他方側(被写体側/光軸方向Lの前側)には−Zを付して説明する。
【0022】
[実施の形態1]
(光学ユニットの全体構成)
図1は、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットを携帯電話機等の光学機器に搭載した様子を模式的に示す説明図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付きの光学ユニットの全体構成を示す斜視図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付きの光学ユニットの分解斜視図、および固定体側のフレキシブル配線基板の分解斜視図である。
【0023】
図1に示す光学ユニット100(振れ補正機能付き光学ユニット)は、カメラ付き携帯電話機等の光学機器1000に用いられる薄型カメラであって、光学機器1000のシャーシ1100(機器本体)に支持された状態で搭載される。かかる光学ユニット100では、撮影時に光学機器1000に手振れ等の振れが発生すると、撮像画像に乱れが発生する。そこで、本形態の光学ユニット100には、後述するように、撮像ユニット1を備えた可動体3を固定体200内で揺動可能に支持するとともに、光学ユニット100に搭載したジャイロスコープ(図示せず)、あるいは光学機器1000の本体側に搭載したジャイロスコープ(図示せず)等の振れ検出センサによって手振れを検出した結果に基づいて、可動体3を揺動させる振れ補正用駆動機構(図1では図示せず)が設けられている。
【0024】
図2および図3に示すように、光学ユニット100には、撮像ユニット1や振れ補正用駆動機構への給電等を行うためのフレキシブル配線基板420、450が引き出されており、かかるフレキシブル配線基板420、450は、フレキシブル配線基板410に接続されている。ここで、フレキシブル配線基板420は、撮像ユニット1から信号を出力する機能等を担っている。このため、フレキシブル配線基板420は、可動体3に接続されている。
【0025】
可動体3において、撮像ユニット1は、鋼板等の強磁性板からなる矩形箱状のケース14を有しており、かかるケース14の内側には、レンズ1aを保持するホルダ、ホルダを保持する円筒状のスリーブ、レンズ1aをフォーカシング方向に駆動するレンズ駆動機構、光軸方向Lの後側に配置された撮像素子1b、撮像素子1bを保持する素子ホルダ等が設けられている。かかる撮像ユニット1の外周部分はケース14からなる。本形態において、ケース14の側面は、後述するフォトリフレクタ(第1フォトリフレクタ580および第2フォトリフレクタ590)に対する反射面として利用される。従って、ケース14は、反射性の高い金属部品からなる。
【0026】
図3において、光学ユニット100は、固定体200と、撮像ユニット1を備えた可動体3と、可動体3が固定体200に対して変位可能に支持された状態とする揺動支点180と、可動体3と固定体200との間で可動体3を固定体200に対して相対変位させる磁気駆動力を発生させる振れ補正用駆動機構500とを有している。また、光学ユニット100は、可動体3を揺動支点180に向けて付勢するバネ部材600を有している。
【0027】
固定体200は上カバー250および下カバー700等を備えており、上カバー250は、可動体3の周りを囲む角筒状胴部210と、角筒状胴部210の被写体側の開口部を塞ぐ端板部220とを備えている。端板部220には、被写体からの光が入射する窓220aが形成されている。上カバー250において、角筒状胴部210は、被写体側(光軸が延在している側)とは反対側(+Z側)の端部が開放端になっている。また、角筒状胴部210において、X軸方向で対向する2つの側面には切り欠き219が形成され、Y軸方向で対向する2つの側面には切り欠き218が形成されている。かかる切り欠き218、219のうち、Y軸方向の一方側+Yに位置する切り欠き218は、フレキシブル配線基板420等を外部に引き出すのに利用され、他の切り欠き218、219は、上カバー250と下カバー700とを接着や溶接等により結合するのに利用されている。
【0028】
下カバー700は、金属板に対するプレス加工品であり、略矩形の底板部710と、底板部710の外周縁から被写体側に向けて起立する3つの側板部720とを備えており、側板部720が形成されていない側は、フレキシブル配線基板410等を外部に引き出すのに利用されている。下カバー700の底板部710にはその中央位置に揺動支点180を構成するピボット181が設けられており、かかるピボット181は、可動体3の光軸方向Lの後側端部に当接することにより可動体3を揺動可能に支持している。本形態において、ピボット181は、底板部710の中央位置に形成された孔717(図6参照)によって保持されている。ここで、可動体3の光軸方向Lの後側端部は、後述する剛性板30からなり、かかる剛性板30にピボット181が当接している。
【0029】
(可動体3の構成)
図4は、本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付きの光学ユニット100の可動体3等の説明図であり、図4(a)、(b)は、可動体3等の分解斜視図、および可動体3側のフレキシブル配線基板420等の説明図である。なお、図4では、撮像ユニット1の内部についてはレンズホルダ等の図示を省略してある。
【0030】
図3および図4に示すように、可動体3は、撮像ユニット1、矩形枠状の第1ホルダ71、矩形枠状の第2ホルダ72およびストッパ部材8を備えており、ストッパ部材8は第2ホルダ72の光軸方向Lの後側の面に溶接等の方法で固定されている。本形態において、第1ホルダ71と第2ホルダ72との間には、振れ補正用駆動機構500に用いた平板状の永久磁石520が保持されている。より具体的には、永久磁石520において光軸方向Lの前側の面には第1ホルダ71が固定され、永久磁石520において光軸方向Lの後側の面には第2ホルダ72が固定されており、永久磁石520、第1ホルダ71および第2ホルダ72によって角筒状の永久磁石アセンブリ75が構成されている。このため、角筒状の永久磁石アセンブリ75の内側に撮像ユニット1を挿入した後、撮像ユニット1のケース14の外周面と、永久磁石アセンブリ75の内周面(永久磁石520の内面)とを接着剤等により固定すれば、永久磁石520、第1ホルダ71、第2ホルダ72、ストッパ部材8および撮像ユニット1を一体化して可動体3を構成することができる。
【0031】
(バネ部材600の構成)
バネ部材600は、固定体200側に連結される矩形枠状の固定側連結部620と、可動体3側に連結される可動側連結部610と、可動側連結部610と固定側連結部620の間で延在する複数本のアーム部630とを備えた板状バネ部材であり、アーム部630の両端は各々、可動側連結部610および固定側連結部620に繋がっている。ここで、固定側連結部620は、矩形枠状の本体部分621と、本体部分621の4つの辺部分の中央位置で外側に向けて突出した凸部622とを備えている。
【0032】
かかるバネ部材600を可動体3と固定体200とに接続するにあたって、本形態では、可動側連結部610がストッパ部材8の光軸方向Lの後側端面に溶接等の方法で固定されている。また、固定側連結部620は、凸部622が上カバー250の切り欠き218、219内に嵌った状態で、下カバー700の側板部720の上端部に溶接等の方法で固定されている。かかるバネ部材600は、ベリリウム銅や非磁性のSUS系鋼材等といった非磁性の金属製であり、所定厚の薄板に対するプレス加工、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング加工により形成したものである。
【0033】
ここで、バネ部材600の可動側連結部610を可動体3に連結する一方、固定側連結部620を固定体200に固定すると、可動体3は、揺動支点180によって光軸方向Lの前側に押し上げられた状態となる。このため、バネ部材600において、可動側連結部610は固定側連結部620よりも光軸方向Lの前側に押し上げられた状態となり、バネ部材600のアーム部630は、可動体3を光軸方向Lの後側に付勢する。従って、可動体3は、バネ部材600によって揺動支点180に向けて付勢された状態になり、可動体3は、揺動支点180によって揺動可能な状態に固定体200に支持された状態となる。
【0034】
(振れ補正用駆動機構の構成)
図5は、本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付きの光学ユニット100の断面図であり、図5(a)、(b)は、光学ユニット100のYZ断面図、およびフレキシブル配線基板420の屈曲部分を拡大して示す断面図である。なお、図5では、撮像ユニットの内部についてはレンズホルダ等の図示を省略してある。
【0035】
図3、図4および図5に示すように、本形態の光学ユニット100では、コイル部560と、コイル部560に鎖交する磁界を発生させる永久磁石520とによって、振れ補正用駆動機構500が構成されている。より具体的には、可動体3においてケース14の4つの外面には平板状の永久磁石520が各々固定されており、上カバー250(固定体200)の角筒状胴部210の内面にはコイル部560が固定されている。永久磁石520は、外面側および内面側が異なる極に着磁されている。また、永久磁石520は、光軸方向Lに配置された2つの磁石片からなり、かかる磁石片は、コイル部560と対向する側の面が光軸方向Lで異なる極に着磁されている。また、コイル部560は、四角形の枠状に形成されており、上下の長辺部分が有効辺として利用される。
【0036】
これらの永久磁石520およびコイル部560のうち、可動体3をY軸方向の両側で挟む2箇所に配置された永久磁石520およびコイル部560はY側振れ補正用駆動機構を構成しており、図5に矢印X1、X2で示すように、揺動支点180を通ってX軸方向に延在する軸線X0を中心にして可動体3を揺動させる。また、撮像ユニット1をX軸方向の両側で挟む2箇所に配置された永久磁石520およびコイル部560はX側振れ補正用駆動機構を構成しており、揺動支点180を通ってY軸方向に延在する軸線を中心にして可動体3を揺動させる。
【0037】
かかる振れ補正用駆動機構500(Y側振れ補正用駆動機構およびX側振れ補正用駆動機構)を構成するにあたって、本形態では、上カバー250の4つの内面に沿って延在するシート状コイル体550が用いられており、シート状コイル体550では、4つのコイル部560が所定の間隔を空けて一体に形成されている。また、シート状コイル体550は展開したときに帯状に延在する形状を備えており、上カバー250の4つの内面に沿うように折り曲げた状態で上カバー250の内面に面接着等の方法で固定されている。
【0038】
かかるシート状コイル体550は、導電配線技術を利用して微細な銅配線からなるコイル部560をプリント基板上に形成した構造を有しており、複数層の銅配線(コイル部560)が絶縁膜を介して多層に形成されている。また、銅配線(コイル部560)の表面も絶縁膜で覆われている。かかるシート状コイル体550としては、例えば、旭化成エレクトロニクス株式会社製のFPコイル(ファインパターンコイル(登録商標))を挙げることができる。
【0039】
図3(b)に示すように、矩形に折り曲げられたシート状コイル体550の4つの面のうちの1つの面には、4つのコイル部560から延在する導電層によって複数の端子部565が形成されている。本形態において、端子部565は、シート状コイル体550において永久磁石520と対向する内側とは反対側の外側に向いている。端子部565は、シート状コイル体550に外側で重なるように配置されたフレキシブル配線基板450に電気的に接続されており、フレキシブル配線基板450を介して給電される。
【0040】
このように本形態では、シート状コイル体550が用いられているため、単体の空芯コイルを用いた場合に比して、撮像ユニット1と固定体200との間隔を狭めることができる。従って、光学ユニット100のサイズを小さくすることができる。また、シート状コイル体550の場合、複数のコイル部560が端子部565と一体に設けられているため、光軸周りの複数個所にコイル部560を配置する場合でも、シート状コイル体550を光軸周りに延在させればよい。従って、単体の空芯コイルを用いた場合と違って、光軸周りの複数個所の各々に単体の空芯コイルを配置する必要がないとともに、複数の単体の空芯コイルの各々に電気的な接続を行なう必要がないので、本形態によれば、組立工数が少なく済む。また、シート状コイル体550において、端子部565は、永久磁石520と対向する側とは反対側の外側に向いているため、コイル部560に対する電気的接続、すなわち、端子部565へのフレキシブル配線基板450の接続を容易に行なうことができる。
【0041】
フレキシブル配線基板450は、シート状コイル体550のX軸方向の一方側+X側の面およびY軸方向の一方側+Y側の面に外側で重なるように直角に折り曲げられた第1部分451と第2部分452を備えており、第2部分452の光軸方向Lの後側端部で折れ曲がった端部453は、外部でフレキシブル配線基板410に接続されている。
【0042】
ここで、シート状コイル体550のうち、フレキシブル配線基板450の第1部分451および第2部分452と重なる部分には、矩形の窓558、559が形成されている。また、フレキシブル配線基板450において、第1部分451および第2部分452の内側の面において、窓558、559と重なる位置には第1フォトリフレクタ580および第2フォトリフレクタ590が実装されており、かかる第1フォトリフレクタ580および第2フォトリフレクタ590は各々、シート状コイル体550の窓558、559内に位置する。従って、光学ユニット100を組み立てた際、第1フォトリフレクタ580の発光部および受光部は、可動体3の側面(ケース14の側面)にX軸方向で対向し、第2フォトリフレクタ590の発光部および受光部は、可動体3の側面(ケース14の側面)にY軸方向で対向することになる。
【0043】
(ストッパ機構の構成)
本形態の光学ユニット100において、可動体3は、揺動支点180によって揺動可能な状態に固定体200に支持された状態にある。従って、外部から大きな力が加わって可動体3が大きく変位すると、バネ部材600のアーム部630が塑性変形するおそれがある。そこで、本形態では、以下に説明するストッパ機構が設けられている。
【0044】
まず、本形態では、図4および図5等を参照して説明したように、可動体3では、第2ホルダ72の光軸方向Lの後側端面に矩形枠状のストッパ部材8が溶接等の方法により固定されている。ストッパ部材8は、矩形枠状の本体部分80と、本体部分80から外側に向けて突出した凸部81とを備えており、かかる凸部81は、永久磁石520より外側に突出している。本形態において、凸部81は、本体部分80の4つの辺部分の各々に形成されている。また、凸部81は、本体部分80の4つの辺部分の各々において辺の延在方向で離間する2個所に設けられ、本形態において、凸部81は、本体部分80の4つの辺部分の両端付近(本体部分80の角付近)に設けられている。
【0045】
凸部81は、X軸方向の両側およびY軸方向の両側において、固定体200の側に設けられたシート状コイル体550の下端部分と狭い隙間G1(図5(a)参照)を介して対向している。従って、凸部81およびシート状コイル体550は、光軸方向Lにおける振れ補正用駆動機構500と揺動支点180との間において、可動体3が光軸方向Lに直交する方向に変位した際の可動範囲を規定するストッパ機構810を構成している。より具体的には、凸部81およびシート状コイル体550は、光軸方向Lにおける振れ補正用駆動機構500と揺動支点180との間のうち、振れ補正用駆動機構500とバネ部材600との間において、可動体3が光軸方向Lに直交する方向に変位した際の可動範囲を規定するストッパ機構810を構成している。
【0046】
ここで、シート状コイル体550の場合、空芯コイルと違って、永久磁石520と当接しても巻線が解けることがない。従って、凸部81が当接する箇所は、シート状コイル体550のうち、コイル部560が構成されている箇所、およびコイル部560が構成されていない箇所のいずれでもよいが、本形態では、凸部81が当接する箇所は、シート状コイル体550のうち、コイル部560が構成されていない箇所に設定されている。
【0047】
また、シート状コイル体550と永久磁石520とは狭い隙間G2を介して対向し、かかる隙間G2は、凸部81とシート状コイル体550との隙間G1よりわずかに大である。従って、シート状コイル体550と永久磁石520とは可動体3が揺動した際の揺動範囲を規定するストッパ機構820を構成している。なお、永久磁石520が当接する箇所は、シート状コイル体550のうち、コイル部560が構成されている箇所、およびコイル部560が構成されていない箇所のいずれでもよいが、本形態では、永久磁石520が当接する箇所は、シート状コイル体550のうち、コイル部560が構成されている箇所に設定されている。このようなストッパ機構820によれば、可動体3の揺動範囲を精度よく設定することができる。すなわち、振れ補正用駆動機構500ではシート状コイル体550と永久磁石520との間隔は精度よく設定されるので、シート状コイル体550と永久磁石520とを利用してストッパ機構820を構成すれば、可動体3の揺動範囲を精度よく設定することができる。
【0048】
このように、本形態では、固定体200および可動体3のうちの一方側から突出した凸部81が他方側に当接することにより可動体3が光軸方向Lに直交する方向に変位した際の可動範囲を規定するストッパ機構810が設けられている。より具体的には、本形態では、可動体3から突出した凸部81が固定体200の側に当接することにより可動体3が光軸方向Lに直交する方向に変位した際の可動範囲を規定するストッパ機構810が設けられている。このため、可動体3に衝撃が加わって、可動体3が光軸方向Lに直交する方向に変位したときにでも、可動体3の可動範囲が制限されている。従って、バネ部材600が塑性変形して損傷することがない。また、凸部81(ストッパ機構810)は、光軸方向Lにおいて振れ補正用駆動機構500と揺動支点180との間に設けられているので、可動体3の少ない変位でストッパ機構810が作動するので、バネ部材600の塑性変形を確実に防止することができる。また、凸部81(ストッパ機構810)は、光軸方向Lにおける振れ補正用駆動機構500とバネ部材600との間に設けられている。このため、可動体3が光軸方向Lに直交する方向に変位する際の可動範囲をより狭く制限することができるので、バネ部材600の塑性変形をより確実に防止することができる。
【0049】
また、凸部81は、可動体3から永久磁石520よりシート状コイル体550側に向けて突出してシート状コイル体550に当接する。このため、可動体3が光軸方向Lに直交する方向に変位する際の可動範囲を精度よく設定することができるので、可動体3の揺動を妨げることなく、可動体3が光軸方向Lに直交する方向に変位する際の可動範囲を制限することができる。すなわち、振れ補正用駆動機構500ではシート状コイル体550と永久磁石520との間隔は精度よく設定されるので、凸部81がシート状コイル体550に当接するように構成すれば、凸部81とシート状コイル体550との間隔も精度よく設定されることになる。それ故、可動体3が光軸方向Lに直交する方向に変位する際の可動範囲を精度よく設定することができる。また、凸部81は、四角形状の4つの辺の各々において互いに離間する2個所に設けられている。このため、ストッパ機構810が作動した際、可動体3に捩じれ方向の力が加わらないので、バネ部材600に捩じれ方向の塑性変形が発生することを防止することができる。
【0050】
(振れ補正動作)
本形態の光学ユニット100において、図1に示す光学機器1000が振れると、かかる振れはジャイロスコープによって検出されるとともに、上位の制御部では、ジャイロスコープでの検出に基づいて、振れ補正用駆動機構500を制御する。すなわち、ジャイロスコープで検出した振れを打ち消すような駆動電流をフレキシブル配線基板410およびフレキシブル配線基板450を介してシート状コイル体550のコイル部560に供給する。その結果、振れ補正用駆動機構500は、揺動支点180を中心に撮像ユニット1をY軸周りに揺動させる。また、振れ補正用駆動機構500は、揺動支点180を中心に撮像ユニット1をX軸周りに揺動させる。また、撮像ユニット1のX軸周りの揺動、およびY軸周りの揺動を合成すれば、XY面全体に対して撮像ユニット1を変位させることができる。それ故、光学ユニット100で想定される全ての振れを確実に補正することができる。
【0051】
かかる撮像ユニット1に対する駆動の際、撮像ユニット1の変位は、図3に示す第1フォトリフレクタ580および第2フォトリフレクタ590によって監視される。すなわち、第1フォトリフレクタ580での検出結果によれば、可動体3が振れ補正用駆動機構500により駆動されて揺動支点180を通ってY軸方向に延在する軸線周りに回転した際の可動体3との距離変化が分かるので、可動体3のX軸方向への変位を監視することができる。また、第2フォトリフレクタ590での検出結果によれば、可動体3が振れ補正用駆動機構500により駆動されて揺動支点180を通ってX軸方向に延在する軸線周りに回転した際の可動体3との距離変化が分かるので、Y軸方向への変位を監視することができる。それ故、可動体3の軸線周りに回転した際の変位、および軸線周りに回転した際の変位を監視することができるので、可動体3の軸線周りの回転、および軸線周りの回転を制御することができる。
【0052】
(フレキシブル配線基板420および剛性板30の構成)
図6は、本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付きの光学ユニット100を光軸方向Lの後側からみたときの斜視図であり、図6(a)、(b)は、振れ補正機能付きの光学ユニット100から下カバー700を外した状態の分解斜視図、および剛性板30を抜き出した状態の分解斜視図である。
【0053】
図3、図4、図5および図6に示すように、本形態の光学ユニット100において、可動体3の撮像ユニット1には、フレキシブル配線基板420の一方の端部が接続されており、可動体3を揺動させた際にフレキシブル配線基板420が可動体3に大きな負荷を印加すると、可動体3を適正に揺動させるのに支障がある。
【0054】
そこで、フレキシブル配線基板420は、以下の構成を有している。まず、フレキシブル配線基板420は、可動体3の内側において撮像ユニット1に連結された接続部426を有しており、かかる接続部426の光軸方向Lの前側の面には撮像素子1bが実装されている。
【0055】
また、フレキシブル配線基板420は、可動体3のY軸方向の他方側−Yの側面から引き出されており、かかるフレキシブル配線基板420には、可動体3からの引き出し部分421の近傍に、可動体3の光軸方向Lの後端部分に沿ってY軸方向の一方側+Yに向けて折り曲げられた折り曲げ部422が設けられている。また、フレキシブル配線基板420は、折り曲げ部422からY軸方向の一方側+Yに向けて延在した後、固定体200の外部まで引き出されている。ここで、フレキシブル配線基板420には、固定体200から引き出される部分で固定体200に接着剤等により固定された固定部424が設けられている。本形態において、フレキシブル配線基板420は、固定体200のうち、下カバー700の底板部710において、Y軸方向の一方側+Yに位置する部分で角筒状胴部210の端部と重なる位置に接着されており、かかる部分が固定部424になっている。なお、フレキシブル配線基板420において固定部424の先端側は、固定体200からの引き出し部分425になっており、かかる引き出し部分425には補強板439が貼られている。
【0056】
かかるフレキシブル配線基板420では、折り曲げ部422と固定部424とはZ軸方向で異なる位置にある。より具体的には、固定部424は、折り曲げ部分422よりZ軸方向の一方側+Zに位置する。このため、フレキシブル配線基板420において、折り曲げ部422と固定部424との間の部分423は、光軸方向Lと斜めに交差するように延在している。従って、Z軸方向において、折り曲げ部422で可動体3の光軸方向Lの後端部分のうち、Y軸方向の他方側−Yの端部に対向する面422aと、固定部424で光軸方向Lの後側に向く面424bとの間に、揺動支点180において可動体3と固定体200とが接する箇所(ピボット181の箇所)が位置することになる。
【0057】
ここで、フレキシブル配線基板420が折り曲げ部422から固定部424に向けて延在する部分423は揺動支点180が設けられている箇所と重なっている。そこで、本形態では、フレキシブル配線基板420において折り曲げ部422と固定部424との間の部分423には、スリット423aによって揺動支点180の両側を通るように分割された分岐部423b、423cが設けられており、揺動支点180は、スリット423aの内側に位置する。本形態において、スリット423aは、フレキシブル配線基板420の固定部424まで延在している。このように本形態では、フレキシブル配線基板420は比較的広幅になっているが、揺動支点180の両側を通る分岐部423b、423cは、幅寸法の狭い2本の帯状部分になっている。
【0058】
ここで、可動体3は、金属板等の剛性板30を有しており、かかる剛性板30は、フレキシブル配線基板420の可動体3との接続部426(撮像ユニット1との接続部)に対して光軸方向Lの後側の面に接着剤48等により接合されて、可動体3の光軸方向Lの後側端部を構成している。このため、剛性板30に対して光軸方向Lの前側に撮像素子1bが位置する。また、剛性板30は、撮像ユニット1に連結された接続部426と、折り曲げ部422と固定部424との間の部分423とに挟まれている。
【0059】
また、可動体3は、剛性板30を介して揺動支点180によって支持されている。ここで、剛性板30の中央には光軸方向Lの後側に突出した凸部38が形成されており、かかる凸部38において光軸方向Lの後側に位置する端面が、揺動支点180を構成するピボット181が当接する受け部182になっている。
【0060】
本形態では、フレキシブル配線基板420の折り曲げ部422は、剛性板30の光軸方向Lの後側の面35に接着剤39により固定されている。また、剛性板30のフレキシブル配線基板420が接着された領域31は、領域31を周囲よりも突出させる段差部31cによって区画されている。具体的には、剛性板30の光軸方向Lの後側の面35には、Y軸方向の他方側−Yの端部に沿って凹部31bが帯状に形成されている。また、剛性板30の光軸方向Lの後側の面35において、凹部31bに対してY軸方向の一方+Yには、凹部31bに平行に延在する溝状の開口部37が形成されており、開口部37と凹部31bとによって挟まれた部分が、フレキシブル配線基板420が接着された領域31になっている。また、フレキシブル配線基板420が接着された領域31には、領域31の短手方向(Y軸方向)の間に領域31の長手方向(X軸方向)に沿って延在する溝31aが形成されており、かかる溝31aは、接着剤39の溜まり部になっている。従って、フレキシブル配線基板420の折り曲げ部422は、剛性板30の光軸方向Lの後側の面35に接着剤39により確実に固定されているので、揺動支点180を介して可動体3に衝撃が加わったときでも、フレキシブル配線基板420が可動体3から外れることを防止することができる。また、フレキシブル配線基板420が接着されている領域31は、段差部31cによって、周囲よりも突出した領域として構成されている。従って、フレキシブル配線基板420を剛性板30の所定の位置に確実に接着することができる。
【0061】
本形態において、折り曲げ部422の幅方向の両側部分422gは、角が斜めあるいはR状に切り欠かれた形状になっている。このため、折り曲げ部422の幅方向の両側部分422gでは、剛性板30の角部分が露出している。従って、可動体3が揺動した際、フレキシブル配線基板420の折り曲げ部422も一緒に変位しても、剛性板30の角部分がフレキシブル配線基板420で覆われている場合に比して可動体3の揺動範囲が広い。
【0062】
また、剛性板30において折り曲げ部422とは反対側端部の幅方向の両側部分30bは、角が斜めあるいはR状に切り欠かれた形状になっている。従って、可動体3が揺動した際、剛性板30の両側部分30bが角になっている場合に比して可動体3の揺動範囲が広い。
【0063】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の光学ユニット100(振れ補正機能付き光学ユニット)では、可動体3が固定体200の揺動支点180によって揺動可能に支持されているため、振れ補正用駆動機構500を作動させれば、揺動支点180を中心に可動体3を揺動させることができる。従って、手振れ等に起因して光学ユニット100に振れが生じた場合でも、可動体3を揺動させることによって、振れを補正することができる。
【0064】
また、可動体3からはフレキシブル配線基板420が引き出されており、かかるフレキシブル配線基板420には折り曲げ部422が1個所、設けられており、かかる折り曲げ部422は、可動体3からの引き出し部分421で可動体3の光軸方向Lの後端部分に沿って折り曲げられた構成になっている。このため、フレキシブル配線基板420をC字形状に湾曲させた場合と違って、フレキシブル配線基板420は大きく湾曲しておらず、可動体3の光軸方向Lの後側でフレキシブル配線基板420を引き回すスペースが狭く済む。
【0065】
また、折り曲げ部422は、可動体3からの引き出し部分421で可動体3の光軸方向Lの後端部分に沿って折り曲げられた構成になっており、フレキシブル配線基板420は、固定体200から外部への引き出し部分で固定体200に固定された固定部424を備えている。このため、フレキシブル配線基板420は、折り曲げ部422から固定部424までの間しか変位可能な部分がない。しかるに本形態では、Z軸方向(光軸の方向)において、折り曲げ部422で、可動体3の光軸方向Lの後端部分のY軸方向の他方側−Yの端部に対向する面422aと、固定部424で光軸方向Lの後側に向く面424aとの間に、揺動支点180において可動体3と固定体200とが接する箇所(ピボット181の箇所)が位置する。このため、可動体3が揺動した際でも、フレキシブル配線基板420の変位が小さい。それ故、可動体3が揺動した際にフレキシブル配線基板420が可動体3に印加する負荷が小さいので、可動体3を適正に揺動させることができる。
【0066】
また、フレキシブル配線基板420は比較的広幅になっているが、揺動支点180の両側を通る分岐部423b、423cは、幅寸法の狭い2本の帯状部分になっている。このため、フレキシブル配線基板420が変位した際にフレキシブル配線基板420が可動体3に印加する負荷が小さいので、可動体3を適正に揺動させることができる。
【0067】
さらに、可動体3は、光軸方向Lの後端部分に剛性板30を備え、剛性板30が揺動支点180を介して固定体200に支持されている。このため、揺動支点180を介して可動体3に衝撃が加わったときでも、可動体3が損傷することを防止することができる。また、剛性板30の光軸方向Lの前側に撮像素子1bが設けられているため、揺動支点180を介して可動体3に衝撃が加わったときでも、撮像素子1bを保護することを防止することができる。
【0068】
[実施の形態2]
図7は、本発明の実施の形態2に係る振れ補正機能付きの光学ユニット100から下カバー700を外した状態を光軸方向Lの後側からみた分解斜視図である。なお、本形態の基本的な構成は実施の形態1と同様であるため、共通する部分に同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0069】
実施の形態1では、図6を参照して説明したように、分岐部423b、423cを形成するスリット423aがフレキシブル配線基板420の固定部424まで延在していたが、本形態では、図7に示すように、本形態において、スリット423aおよび分岐部423b、423cは、揺動支点180が位置する側からみて固定部424の手前に終端部を備えている。かかる構成によれば、分岐部423b、423cを固定部として利用する場合と違って、分岐部423b、423cに長さ寸法の差が発生しない。それ故、分岐部423b、423cが可動体3に余計な負荷を印加することがない。
【0070】
[実施の形態3]
図8は、本発明の実施の形態3に係る振れ補正機能付きの光学ユニット100の断面図であり、図8(a)、(b)は、光学ユニット100のYZ断面図、およびフレキシブル配線基板420の屈曲部分を拡大して示す断面図である。なお、本形態の基本的な構成は実施の形態1と同様であるため、共通する部分に同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0071】
実施の形態1では、剛性板30の光軸方向Lの後側の面35において、開口部37と凹部31bとによって挟まれた部分が、フレキシブル配線基板420が接着された領域31になっていたが、本形態では、図8に示すように、開口部37に代えて凹部422eになっている。かかる構成でも、フレキシブル配線基板420が接着された領域31は、領域31を周囲よりも突出させる段差部31cによって区画されているため、フレキシブル配線基板420を剛性板30の所定の位置に確実に接着することができる。
【0072】
[実施の形態4]
図9は、本発明の実施の形態4に係る振れ補正機能付きの光学ユニット100の説明図であり、図9(a)、(b)は、斜視図および断面図である。図10は、本発明の実施の形態4に係る振れ補正機能付きの光学ユニット100を光軸方向Lの後側からみた説明図であり、図10(a)、(b)、(c)は、光学ユニット100から下カバー700を外した状態を光軸方向Lの後側からみた分解斜視図、さらに可動体からフレキシブル配線基板420を外した状態を光軸方向Lの後側からみた分解斜視図、およびさらに剛性板30をフレキシブル配線基板420を外した状態を光軸方向Lの後側からみた分解斜視図である。なお、本形態の基本的な構成は実施の形態1と同様であるため、共通する部分に同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0073】
本発明は、図9および図10に示す振れ補正機能付きの光学ユニット100に適用することができる。図9および図10に示す振れ補正機能付きの光学ユニット100でも、実施の形態1と同様、可動体3の撮像ユニット1には、フレキシブル配線基板420の一方の端部が接続されている。フレキシブル配線基板420は、まず、可動体3の内側において撮像ユニット1に連結された接続部426を有しており、かかる接続部426の光軸方向Lの前側の面には撮像素子1bが実装されている。本形態において、接続部426は、フレキシブル配線基板420の端部に金属板等を貼り合わせて剛性を高めた構造になっている。
【0074】
また、フレキシブル配線基板420は、可動体3のY軸方向の他方側−Yの側面から引き出されており、かかるフレキシブル配線基板420には、可動体3からの引き出し部分421で可動体3の光軸方向Lの後端部分に沿ってY軸方向の一方側+Yに向けて折り曲げられた折り曲げ部422が設けられている。また、フレキシブル配線基板420は、折り曲げ部422からY軸方向の一方側+Yに向けて延在した後、固定体200の外部まで引き出されている。
【0075】
ここで、固定体200のY軸方向の一方側+Yの側面にはL字形の支持板260の垂直板部261が固定されており、支持板260の水平板部262にフレキシブル配線基板420の固定部424が接着剤等により固定されている。このため、フレキシブル配線基板420では、折り曲げ部422と固定部424とはZ軸方向で同一の位置にある。このため、フレキシブル配線基板420において、折り曲げ部422と固定部424との間の部分423は、光軸と直交するように延在している。
【0076】
かかる構成のフレキシブル配線基板420でも、実施の形態1と同様、Z軸方向において、折り曲げ部422で可動体3の光軸方向Lの後端部分のうち、Y軸方向の他方側−Yの端部に対向する面422aと、固定部424で光軸方向Lの後側に向く面424aとの間に、揺動支点180において可動体3と固定体200とが接する箇所(ピボット181の箇所)が位置することになる。
【0077】
ここで、フレキシブル配線基板420が折り曲げ部422から固定部424に向けて延在する部分423は揺動支点180が設けられている箇所と重なっている。そこで、本形態では、フレキシブル配線基板420において折り曲げ部422と固定部424との間の部分423には、スリット423aによって揺動支点180の両側を通るように分割された帯状の分岐部423b、423cが設けられており、揺動支点180は、スリット423aの内側に位置する。本形態において、スリット423aは、フレキシブル配線基板420の固定部424より先端側まで延在し、固定体200から外部への引き出し部分425の途中まで延在している。
【0078】
ここで、可動体3は剛性板30を有しており、かかる剛性板30は、フレキシブル配線基板420の接続部426に対して光軸方向Lの後側の面に接着剤48等により接合されて、可動体3の光軸方向Lの後側端部を構成している。このため、剛性板30に対して光軸方向Lの前側に撮像素子1bが位置する。また、可動体3は、剛性板30を介して揺動支点180によって支持されている。ここで、剛性板30の中央には光軸方向Lの後側に突出した凸部38が形成されており、かかる凸部38において光軸方向Lの後側に位置する端面が、揺動支点180を構成するピボット181が当接する受け部182になっている。
【0079】
本形態では、フレキシブル配線基板420の折り曲げ部422は、剛性板30の光軸方向Lの後側の面35に可撓性の粘着シート36により固定されている。また、剛性板30のフレキシブル配線基板420が接着された領域31は、領域31を周囲よりも突出させる段差部31fによって区画されている。具体的には、剛性板30の光軸方向Lの後側の面35には、Y軸方向の他方側−Yの端部に平行に延在する溝状の凹部31eが形成されている。このため、フレキシブル配線基板420が固定されている領域31は、段差部31fによって、周囲よりも突出した領域として構成されている。従って、フレキシブル配線基板420を剛性板30の所定の位置に確実に固定することができる。
【0080】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、カメラ付き携帯電話機に用いる光学ユニット100に本発明を適用した例を説明したが、薄型のデジタルカメラ等に用いる光学ユニット100に本発明を適用してもよい。また、上記形態では、撮像ユニット1にレンズ駆動機構等が構成されている例を説明したが、撮像ユニット1にレンズ駆動機構が搭載されていない固定焦点タイプの光学ユニットに本発明を適用してもよい。
【0081】
上記実施の形態では、揺動支点180のピボット181が固定体200の側に構成されていたが、可動体3の側に揺動支点180のピボット181が形成されている構成を採用してもよい。
【0082】
さらに、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100は、携帯電話機やデジタルカメラ等の他、冷蔵庫等、一定間隔で振動を有する装置内に固定し、遠隔操作可能にしておくことで、外出先、たとえば買い物の際に、冷蔵庫内部の情報を得ることができるサービスに用いることもできる。かかるサービスでは、姿勢安定化装置付きのカメラシステムであるため、冷蔵庫の振動があっても安定な画像を送信可能である。また、本装置を児童、学生のカバン、ランドセルあるいは帽子等の、通学時に装着するデバイスに固定してもよい。この場合、一定間隔で、周囲の様子を撮影し、あらかじめ定めたサーバへ画像を転送すると、この画像を保護者等が、遠隔地において観察することで、子供の安全を確保することができる。かかる用途では、カメラを意識することなく移動時の振動があっても鮮明な画像を撮影することができる。また、カメラモジュールのほかにGPSを搭載すれば、対象者の位置を同時に取得することも可能となり、万が一の事故の発生時には、場所と状況の確認が瞬時に行える。さらに、本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニット100を自動車において前方が撮影可能な位置に搭載すれば、ドライブレコーダーとして用いることができる。また、本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニット100を自動車において前方が撮影可能な位置に搭載して、一定間隔で自動的に周辺の画像を撮影し、決められたサーバに自動転送してもよい。また、カーナビゲーションのVICS(Vehicle Information and Communication System/道路交通情報通信システム)等の渋滞情報と連動させて、この画像を配信することで、渋滞の状況をより詳細に提供することができる。かかるサービスによれば、自動車搭載のドライブレコーダーと同様に事故発生時等の状況を、意図せずに通りがかった第三者が記録し状況の検分に役立てることもできる。また、自動車の振動に影響されることなく鮮明な画像を取得できる。かかる用途の場合、電源をオンにすると、制御部に指令信号が出力され、かかる指令信号に基づいて、振れ制御が開始される。
【0083】
また、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100は、レーザポインタ、携帯用や車載用の投射表示装置や直視型表示装置等、光を出射する光学機器の振れ補正に適用してもよい。また、天体望遠鏡システムあるいは双眼鏡システム等、高倍率での観察において三脚等の補助固定装置を用いることなく観察するのに用いてもよい。また、狙撃用のライフル、あるいは戦車等の砲筒とすることで、トリガ時の振動に対して姿勢の安定化が図れるので、命中精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 撮像ユニット
3 可動体
14 ケース
100 振れ補正機能付きの光学ユニット
180 揺動支点
200 固定体
250 上カバー(固定体)
420 フレキシブル配線基板
421 フレキシブル配線基板の可動体からの引き出し部分
422 フレキシブル配線基板の折り曲げ部分
424 フレキシブル配線基板の固定部
426 フレキシブル配線基板の可動体との接続部
500 振れ補正用駆動機構
520 永久磁石
550 シート状コイル体
600 バネ部材
700 下カバー(固定体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持する可動体と、
該可動体を覆う固定体と、
前記可動体から前記固定体の外部まで延在するフレキシブル配線基板と、
前記可動体における光軸方向後端部分と前記固定体との間に設けられた揺動支点と、
当該揺動支点を中心に前記可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構と、
を有し、
前記フレキシブル配線基板には、前記可動体からの引き出し部分で当該可動体の光軸方向後端部分に沿って折り曲げられた折り曲げ部と、前記固定体から外部への引き出し部分で前記固定体に固定された固定部と、が設けられ、
光軸方向において、前記折り曲げ部で前記可動体の光軸方向後端部分に対向する面と、前記固定部で光軸方向後側に向く面との間に前記揺動支点が位置することを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項2】
前記フレキシブル配線基板は、前記折り曲げ部と前記固定部との間に前記揺動支点の両側を通るように分割された分岐部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項3】
前記分岐部は、前記揺動支点が位置する側からみて前記固定部の手前に終端部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項4】
前記フレキシブル配線基板は、前記可動体との接続部と前記固定部との間で前記折り曲げ部のみで折り曲げられ、
前記折り曲げ部と前記固定部との間の部分は、光軸方向に対して斜めに交差するように延在していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項5】
前記フレキシブル配線基板は、前記可動体との接続部と前記固定部との間で前記折り曲げ部のみで折り曲げられ、
前記折り曲げ部と前記固定部との間の部分は、光軸方向に対して直交するように延在していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項6】
前記可動体は、前記光軸方向後端部分に剛性板を備え、
当該剛性板が前記揺動支点を介して前記固定体に支持されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項7】
前記剛性板の光軸方向前側に撮像素子が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項8】
前記折り曲げ部は、前記剛性板の光軸方向後側の面に接着剤により固定されていることを特徴とする請求項6または7に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項9】
前記剛性板の前記フレキシブル配線基板が接着された領域は、当該領域を周囲よりも突出させる段差部によって区画されているとともに、当該領域には溝状凹部が設けられていることを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項10】
前記折り曲げ部の幅方向の両側部分は、角が斜めあるいはR状に切り欠かれた形状を備え、
前記剛性板の前記折り曲げ部とは反対側端部の幅方向の両側部分は、角が斜めあるいはR状に切り欠かれた形状を備えていることを特徴とする請求項6乃至9の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−25117(P2013−25117A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160350(P2011−160350)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】