説明

振動フィーダ用ホッパ

【課題】湿潤粉粒体、特に醤油麹盛込原料を定量供給する際、ホッパ内において滞留を防止できる振動フィーダ用ホッパを提供する。
【解決手段】ホッパ本体Aと、ホッパ本体Aの下方に設けられ傾斜したトラフBと、該トラフBに機械的に上下運動の加わった振動を与え、材料を前方に投出し、移送供給するための起振動装置Cとからなる振動フィーダに用いられるホッパにおいて、該ホッパは、前方側壁1の中央部2にホッパ内部に折れ込み突出する折れ込み部3をもち、該ホッパ前方側壁1と連結した側壁4、5同士の間隔が、前方側壁1から離れるに従い次第に狭くなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醤油麹盛込原料または種麹培養用原料などの湿潤粉粒体を定量供給する際、ホッパ内において滞留を防止できる振動フィーダ用ホッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5および図6に示したような、振動フィーダに用いるホッパのホッパ前方側壁1に、ホッパ内部に対して一定の角度をもって折れ込み突出するホッパ内部折れ込み部3を一以上形成したことを特徴とする振動フィーダが知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、この装置によれば、粉粒体のブリッジを防止することができることが開示されている。
しかし、これらの装置で、湿潤粉粒体を使用するときは、ホッパ内に該湿潤粉粒体が滞留するという欠点を有する。特に湿潤粉粒体である醤油麹盛込原料は、微生物の生育に好適な栄養源を豊富に含有するため、開放系で取扱う場合は、目的とする容器などに滞留することなく移送供給しなければ、空中落下菌などの雑菌により汚染されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平3−44737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、醤油麹盛込原料または種麹培養用原料などの湿潤粉粒体を定量供給する際、ホッパ内において滞留を防止できる振動フィーダ用ホッパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためのものであって、以下に示す振動フィーダ用ホッパである。
【0006】
(1)搬送方向に被搬送物を搬送する振動フィーダに該被搬送物を供給する振動フィーダ用ホッパであって、前記搬送方向に交差する前方側壁1と、該前方側壁1に連結した側壁4、5とを備え、前記前方側壁1には、ホッパ内部に折り込み突出した折れ込み部3が形成され、前記側壁4、5同士の間隔は、前記搬送方向と反対方向に向かうに従い狭くなっていることを特徴とする振動フィーダ用ホッパ。
(2)ホッパ本体の内周側壁の隅部6、7、8が円弧状を呈していることを特徴とする前記(1)に記載の振動フィーダ用ホッパ。
(3)振動フィーダが、ホッパ本体Aと、ホッパAの下方に設けられ傾斜したトラフBと、該トラフBに機械的に上下運動の加わった振動を与え、材料を前方に投出し、移送供給するための起振動装置Cとからなる前記(1)または(2)に記載の振動フィーダ用ホッパ。
(4)材料が、水分を35〜50%(w/w)含有する湿潤粉粒体である前記(3)に記載の振動フィーダ用ホッパ。
(5)湿潤粉粒体が、醤油麹盛込原料または種麹培養用原料である前記(4)に記載の振動フィーダ用ホッパ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、醤油麹盛込原料または種麹培養用原料などの湿潤粉粒体を定量供給する際、ホッパ内において滞留を防止できる振動フィーダ用ホッパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の振動フィーダ用ホッパを使用した定量供給装置の概略説明正面図である。
【図2】本発明の振動フィーダ用ホッパを使用した定量供給装置の概略説明斜視図である。
【図3】本発明の振動フィーダ用ホッパを示した概略説明斜視図である。
【図4】本発明の他の実施例を示した振動フィーダ用ホッパの横断面図である。
【図5】従来の振動フィーダ用ホッパを示した概略説明斜視図である。
【図6】従来の振動フィーダ用ホッパを示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の振動フィーダ用ホッパについて、醤油麹盛込原料の定量供給を例に挙げ、図に基づいて説明する。
【0010】
図1において、振動フィーダDは、ホッパ本体Aと、ホッパAの下方に設けられ傾斜したトラフBと、該トラフBに機械的に上下運動の加わった振動を与え、材料を前方に投出し、移動供給するための起振動装置Cとからなる振動フィーダである。
なお、9はベルトコンベアであって駆動装置(図面簡略のため図示せず)により回転駆動する。また10は扁平な容器(例えば、麹蓋など)である。
【0011】
本発明のホッパ本体Aは、図3および図4に示すような、前方側壁1と、該前方側壁に連結した側壁4、5とを備え、前方側壁1の中央部2には、ホッパ内部に折り込み突出した折れ込み部3が形成され、側壁4、5同士の間隔は、前方側壁1から離れるに従い次第に狭くなるように構成した形状である。
【0012】
図4のホッパは、ホッパ本体Aの内周側壁の隅部6、7、8が鋭角を呈しているが、これを図3に示すように、円弧状にすれば、洗浄が容易となるばかりでなく、原料を円滑に排出することができるので好ましい。なお、ホッパ内部折れ込み部3の先端部も必要に応じ円弧状にすることがより好ましい。
【0013】
ホッパ本体Aは、前方側壁1を搬送方向に向け、排出口の下端部が、ホッパ内の原料を定量的に排出することができるように、トラフBに対して、接触することなく所定の距離を隔てて位置する。
【0014】
トラフBは、俯角5〜15度、好ましくは8〜12度となるように傾斜させることが好ましい。
【0015】
本発明における湿潤粉粒体とは、大豆、小麦などの穀類に水分を含ませたものを言う。また、醤油麹盛込原料とは、大豆、麦、米などの穀類を蒸煮その他の方法で処理したもの、または、さらに種麹を接種したものを言い、種麹培養用原料とは、小麦ふすま、炒熬割砕した小麦などの原料を混和し、水分を調整したものを言う。
【0016】
以下実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
【実施例1】
【0017】
(1)醤油麹盛込原料の調製
脱脂加工大豆10kgに80℃の温水を130%(w/w)加え、飽和水蒸気を用いて圧力2kg/cm(ゲージ圧力)で20分間加圧加熱蒸煮した。一方、生小麦10kgを常法に従って炒熬割砕した。次にこれら二つの処理原料を混合して水分約40%(w/w)に調整した。
次いで、これに、アスペルギルス・オリーゼ(ATCC14895)のふすま種麹(有効胞子数:1×10個/g)を0.1%(w/w)接種して醤油麹盛込原料を調製した。
【0018】
(2)振動フィーダ用ホッパ
図4のように、横断面の形状が底辺12cm、高さ8cmの二等辺三角形で、当該二等辺三角形底辺の中央部2に、横断面の形状が底辺2cm、高さ2cmの二等辺三角形のホッパ内部折れ込み部3を設け、ホッパ上端部および下端部の断面(46cm)が同一形状で高さ40cmの筒状の本発明のホッパ本体Aを構成した。
【0019】
(3)振動フィーダ
図1に示すように、幅15cm、深さ7cm、長さ100cmのステンレス製のトラフBを俯角10度に傾斜して設置し、起振動装置Cとして、バイブレータ(神鋼精機社製、LF−25型)2台をトラフBの下部に直列に設置した。またホッパ本体Aは、前方側壁1を搬送方向に向け、排出口下端面をトラフBに対して2cmの距離を隔てて保持し、振動フィーダDを構成した。
【0020】
(4)振動フィーダの運転
次に、上記醤油麹盛込原料をホッパ本体Aの排出口下端面から25cmの高さ位置まで投入し、その後、赤の粉末染料で着色した醤油麹盛込原料を投入し、ホッパ内で色分けした醤油麹盛込原料層を形成した。
次いで、装置の運転を開始し、トラフBの微振動により醤油麹盛込原料を出口方向にゆっくりと移動させ、醤油麹盛込原料を定量供給した。
【0021】
(効果の確認)
上記実施例1において、無着色原料から赤着色原料への切り替わりを観察した。
その結果、運転開始から約30秒後に、ホッパ前方側壁1の下端部付近から無着色原料に混じって一部赤着色原料が出始め、その5秒後にはホッパ後方隅部7の先端部の下端部付近からも赤着色原料が出始め、全体が赤着色原料になって、無着色原料が全くなくなった。
すなわち、無着色原料から赤着色原料に切り替わりるのに要する時間は5秒間であり、醤油麹盛込原料の滞留がほとんどないことが判った。
【0022】
(比較例1)
比較のため、図1のホッパ本体Aに代えて、図6のホッパ(下記、従来のホッパ)を使用する以外は、全く同様にして、無着色原料から赤着色原料への切り替わりを観察した。
その結果、運転開始から約90秒後に、ホッパ前方側壁1の下端部付近から無着色原料に混じって一部赤着色原料がホッパから出始め、その60秒後にホッパ後方部11の下端部付近からも赤着色原料が出始め、全体が赤着色原料になって、無着色原料が全くなくなった。
すなわち、無着色原料から赤着色原料に切り替わりるのに要する時間は、従来のホッパでは、60秒間であり、本発明の5秒間と比べると12倍も大きな滞留があることが判る。
【0023】
(従来のホッパ)
図6のように、横断面の形状が長辺12cm、短辺8cmの長方形で、当該長方形の一方の長辺の中央部2に、底辺2cm、高さ2cmの二等辺三角形のホッパ内部折れ込み部3を設け、ホッパ上端部および下端部の断面(94cm)が同一形状で高さ40cmの筒状の従来のホッパを構成した。
【0024】
(本発明と比較例の効果の相違)
振動フィーダにおいて、ホッパ前方側壁1にホッパ内部に折れ込み突出するホッパ内部折れ込み部3を有していても、比較例のように、ホッパ後方が三つの側壁で形成される、全体として直方体のホッパでは、原料として醤油麹盛込原料のような湿潤粉粒体を使用した場合、ホッパ内に該原料が滞留するという欠点を有することが判る。
これに対し、ホッパ本体Aのホッパ前方側壁1の中央部2に、ホッパ内部に折れ込み突出するホッパ内部折れ込み部3を形成し、前方側壁1から離れるに従い狭くなっている側壁4、5で構成した、本発明の振動フィーダ用ホッパを使用するときは、ホッパ内において滞留を防止できることが判る。
【実施例2】
【0025】
実施例1の醤油麹盛込原料を種麹培養用原料に替える以外は同様にして、振動フィーダの運転を行った。
【0026】
(1)種麹培養用原料の調製
常法に従って炒熬割砕した小麦2kg、小麦ふすま5kg、水約5Lを充分に混合し、水分約43%(w/w)の種麹培養用原料を調整した。
【0027】
(2)振動フィーダの運転
次に、赤の粉末染料で着色した種麹培養用原料をホッパAの下端開口部から3cmの高さ位置まで投入し、その後通常の種麹培養用原料を投入して、ホッパ内で色分けした種麹培養用原料層を形成した。
次いで、装置の運転を開始し、トラフBの微振動により種麹培養用原料を出口方向にゆっくりと移動させ、種麹培養用原料を定量供給した。
【0028】
(効果の確認)
前記実施例2において、赤着色原料から無着色原料への切り替わりを観察した。その結果、運転開始から約12秒後に、ホッパ前方側壁1の下端部付近から赤着色原料に混じって一部無着色原料がホッパから出始め、その6秒後にはホッパ後方隅部7の先端部付近からも無着色原料が出始め、全体が無着色原料になって、赤着色原料が全くなくなった。
すなわち、赤着色原料から無着色原料に切り替わりるのに要する時間は6秒間であり、種麹培養用原料の滞留はほとんどないことが判った。
【0029】
(比較例2)
比較のため、図1のホッパAに代えて、図6のホッパ(前記、従来のホッパ)を使用する以外は、全く同様にして、赤着色原料から無着色原料への切り替わりを観察した。
その結果、運転開始から約12秒後に、ホッパ前方側壁1の下端部付近から赤着色原料に混じって一部無着色原料がホッパから出始め、その60秒後にホッパ後方部11の下端部付近からも無着色原料が出始め、全体が無着色原料になって、赤着色原料が全くなくなった。
すなわち、赤着色原料から無着色原料に切り替わりるのに要する時間は、従来のホッパでは、60秒間であり、本発明の6秒間と比べると10倍も大きな滞留があることが判る。

【符号の説明】
【0030】
A・・・ホッパ本体、B・・・トラフ、C・・・起振動装置、D・・・振動フィーダ、1・・・ホッパ前方側壁、2・・・中央部、3・・・ホッパ内部折れ込み部、4・・・側壁、5・・・側壁、6・・・隅部、7・・・隅部、8・・・隅部、9・・・ベルトコンベア、10・・・扁平な容器、11・・・後方部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に被搬送物を搬送する振動フィーダに該被搬送物を供給する振動フィーダ用ホッパであって、前記搬送方向に交差する前方側壁1と、該前方側壁1に連結した側壁4、5とを備え、前記前方側壁1には、ホッパ内部に折り込み突出した折れ込み部3が形成され、前記側壁4、5同士の間隔は、前記搬送方向と反対方向に向かうに従い狭くなっていることを特徴とする振動フィーダ用ホッパ。
【請求項2】
ホッパ本体の内周側壁の隅部6、7、8が円弧状を呈していることを特徴とする請求項1に記載の振動フィーダ用ホッパ。
【請求項3】
振動フィーダが、ホッパ本体Aと、ホッパ本体Aの下方に設けられ傾斜したトラフBと、該トラフBに機械的に上下運動の加わった振動を与え、被搬送物を前方に投出し、搬送供給するための起振動装置Cとからなる請求項1または2に記載の振動フィーダ用ホッパ。
【請求項4】
被搬送物が水分を35〜50%(w/w)含有する湿潤粉粒体である請求項3に記載の振動フィーダ用ホッパ。
【請求項5】
湿潤粉粒体が、醤油麹盛込原料または種麹培養用原料である請求項4に記載の振動フィーダ用ホッパ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−71832(P2013−71832A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213775(P2011−213775)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】