振動型カルマン渦流量計
【課題】低いレイノルズ数においても、圧力波や流量計本体の振動、偏流、旋回流等の外乱に影響されることなく信頼性のある計測が可能な振動型カルマン渦流量計を提供する。
【解決手段】被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを備えるものであって、
該渦発生体の表面に振動子を備えてなる。
【解決手段】被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを備えるものであって、
該渦発生体の表面に振動子を備えてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動型カルマン渦流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
カルマン渦流量計は、被計測流体が流れる管体内に柱状の渦発生体を配置させ、この渦発生体によって発生するカルマン渦の発生周波数を検出する検出器を備えて構成されている。カルマン渦の発生する周波数は、被計測流体の流れる速さ(流速)に比例し、これに基づき該管体内に流れる被計測流体の流量を算出することができるからである。
【0003】
そして、渦発生体は、流れの剥離点を安定化させるため、その形状等において種々のものが知られるに至っている。たとえば該渦発生体は、被計測流体の流れと直交する平面を有し、その長手方向に直交する平面で切断した断面形状が該平面に含まれる底辺を有する三角形、あるいは台形とするようなものが代表的なものとして挙げることができる。前記平面の両側から被計測流体の流れにほぼ沿った渦発生体の側面が、該被計測流体の流れの距離に応じて該流れから離間するようにして形成された斜面として構成されているため、剥離した流れが渦発生体の側面に再付着し難く、側面において交番渦の成長を阻害しない空間を有し、かつ、渦発生体に渦が交互に接することで渦発生体周りに周期的な強い循環を生み出すことができるからである。
【0004】
また、カルマン渦の発生周波数は、渦発生体の剥離点の下流側に管体に取り付けられる検出器によって検出されるようになっている。該検出器は渦の有無を間接的に検出できるセンサならば適用でき、圧力変化を検知できるたとえば圧電素子、あるいは流量変化を検知できる超音波素子等が通常用いられる。
【0005】
なお、このようなカルマン渦流量計についての詳細はたとえば下記特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開2001−82987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したカルマン渦流量計は、管体内に流れる被計測流体の速度が小さい場合に、具体的にはレイノルズ数ReDを次式(1)とした場合、
ReD=V・D/ν …… (1)
ここで、Vは管路内の平均流速、Dは測定管内径、νは流体の動粘度である。
【0007】
このレイノルズ数ReDが約2×104以下の場合に、カルマン渦の強度が小さく、これが原因となって各渦の規則性(周期性)が十分に保持されないという不都合が指摘されるに至った。
【0008】
図11は渦流量計のストローハル数とレイノルズ数の関係の一例である。レイノルズ数ReDは上式(1)に示されるが、ストローハル数Stは次式(2)で示される。
【0009】
St=d・f/V …… (2)
ここで、dは渦発生体の幅、fは渦発生周波数、Vは管路内の平均流速である。
【0010】
渦流量計として使用できるレイノルズ数範囲は、ReD=2×104以上で最大はReD=1×108の実績がある。レイノルズ数がReD=2×104以上の領域では図13に示すように渦発生体2の周りに強い変動循環が生じ、その後流には強いカルマン渦KVが生じ、相互干渉し、いわゆる渦励振の状態となって、ストローハル数もほぼ一定なので、流量計として適用することができる。一方、レイノルズ数が(遷移レイノルズ数:仮称)ReD=2×104以下になると図12に示すように、運動エネルギが小さいので、渦発生体2から離れた下流位置で後流の不安定性を発端としたカルマン渦列の様相となっている。渦発生体の回りの変動循環は小さく、剥離せん断層が圧力波や、流量計本体の振動、偏流、旋回流により乱され、渦発生が不規則になったり、もとより、剥離せん断層の立ち上がりが小さく、後流幅も小さいので周波数が高くなり(ストローハル数の増加)、器差がプラスに転じていた。よって、流量計としてはこの流量域は使用することはできなかった。カルマン渦流量計において計測流量範囲の拡大のため、遷移レイノルズ数のより小流量への拡大が望まれていた。
【0011】
そこで、本出願人は、渦発生体から生じる剥離せん断層に着目し、剥離位置を周期的に移動させたり、剥離せん断層に周期的な圧力波を作用させることで、波立たせ、もとより速度差があり渦が生じやすい剥離せん断層に微細な渦列を連続的に発生させる。渦は運動エネルギを最もよく保存することができるので、圧力波や流量計本体の振動、偏流、旋回流などの外乱による影響を受け難く、より低いレイノルズ数ReDでの安定したカルマン渦の生成を助けることにより、測定流量範囲を拡大できないかを検討した。
【0012】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、低いレイノルズ数ReDにおいても、圧力波や流量計本体の振動、偏流、旋回流等の外乱に影響されることなく信頼性のある計測が可能な振動型カルマン渦流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した目的を達成するため、次に説明する概念に基づくものとなっている。
【0014】
図14は図12と同じ状態でありReD=2×104以下の流れで渦発生体が静止している場合、または振動子がない場合の流れの様子を流線で示したものである。運動エネルギが小さく、渦発生体2から離れた下流位置で後流の不安定性を発端としてカルマン渦列が開始している。渦発生体2の回りの変動循環は小さく、剥離せん断層が圧力波や、流量計本体の振動、偏流、旋回流により乱され渦発生が不規則になったり、もとより剥離せん断層の立ち上がりが小さく、後流幅も小さいので周波数が高くなり(ストローハル数の増加)、器差がプラスに転じていた。よって、流量計としてはこの流量域は使用することはできなかった。
【0015】
図15は図14と同じレイノルズ数において渦発生体2を流れ方向に振動させた場合である(一例であり、振動子を用いてもよい)。もとより剥離せん断層では速度差があるので渦が発生するが、この場合、剥離点が振動するので、剥離せん断層を周期的に波立たせることができ、剥離せん断層に運動量を渦列として保存できるので、遠く下流で生じる渦に渦度(運動量)を安定して供給することができる。片側の剥離点から発生した微細な渦列は、カルマン渦KVの同方向の大規模な渦に引き込まれ安定した渦励起を助ける。下流で生じる渦が大きくなると渦発生体2と干渉することになり、渦発生体2の回りの循環と連動することで、渦発生体から直接生じる大規模なカルマン渦へ遷移し、図16に示す安定な状態となる。よってReD=2×104以下でも図13に示すReD=2×104以上の流れのようないわゆる渦励振の状態となる。
【0016】
図17は渦発生体2を流れ方向に振動させた例であり、剥離せん断層に生じる渦列は、剥離点に近い部分で流れ方向に向かって左右対称の状態となっている。図18は渦発生体2を流れ方向に対し垂直、かつ長手方向に対しても垂直方向に振動させた例であり、剥離せん断層に生じる渦列は、剥離点に近い部分で流れ方向に向かって左右交互に発生するようになる。いずれも振動周波数が、カルマン渦の周波数に対し十分高ければ、その差異は影響しない。
【0017】
図19は渦発生体2の平面2C上に振動子9を装着し、振動子9を駆動した状態である。ここで、前記平面2Cとは渦発生体2の流れに直交する平面と接続される側面で該平面に近い側の面をいう。剥離せん断層に周期的な圧力波を作用させることで、剥離せん断層を波立たせ、もとより速度差があり渦が生じ易い剥離せん断層に微細な渦列を連続的に発生させた状態である。渦は運動エネルギを最も効率よく保存することができるので、圧力波や流量計本体の振動、偏流や旋回流などの外乱による影響を受け難くなる。よってより低いレイノルズ数での安定したカルマン渦の生成を助けることができる。
【0018】
図20は上記振動子を設けることなく渦発生体2自体を流れ方向に振動させた場合である。渦発生体の平面2Bの動きが剥離せん断層に圧力波として作用するだけでなく、剥離位置も周期的に移動するので、剥離せん断層を波立たせ、運動エネルギを効率よく保存する微細な渦列を連続的により確実に発生させることができる。ここで、前記平面2Bは渦発生体2の流れに直交する平面に接続される各側面で後流の方向に行くに従い狭まってくる面をいう。
【0019】
振動子または渦発生体の振動周波数は、Lock-in現象を避けるため、計測する最大流量でのカルマン渦の周波数に対し10倍以上の周波数とする。ただし、計測流体が液体の場合は、キャビテーションが生じない周波数、ガス体の場合は圧縮性の影響が生じない周波数の範囲とする必要がある。
【0020】
このようなことから、カルマン渦流量計における渦発生体が振動することにより、その下流に発生するカルマン渦は、その強度が大きいものとなり、たとえ、該流体の流速が小さい場合であっても、該渦の検出出力を大きなものとして得ることができるようになる。このため、カルマン渦の渦強度の増大を図って、低いレイノルズ数ReDにおいても、圧力差や流量計本体の振動、偏流、旋回流等の外乱に影響されることなく信頼性のある計測を可能とすることができる。
【0021】
したがって、本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0022】
(1)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを備えるものであって、
該渦発生体の表面に振動子を備えてなることを特徴とする。
【0023】
(2)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、(1)の構成を前提とし、前記渦発生体は柱状をなし、少なくとも、前記被計測流体の流れと直交する平面と、該平面の両側においてそれぞれ該被計測流体の当初の流れ方向に対しその流れの距離に応じて離間して配置される斜面とを有し、前記振動子は前記平面と斜面の間に形成された側面に形成されていることを特徴とする。
【0024】
(3)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、(1)の構成を前提とし、前記渦発生体は柱状をなし、少なくとも、前記被計測流体の流れと直交する平面と、該平面の両側においてそれぞれ該被計測流体の当初の流れ方向に対してその流れの距離に応じて離間して配置される斜面とを有し、前記振動子は前記斜面に形成されていることを特徴とする。
【0025】
(4)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、(1)、(2)、(3)のいずれかの構成を前提とし、前記振動子はピエゾ素子等の圧電素子であることを特徴とする。
【0026】
(5)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
該渦発生体を振動させる駆動機構が備えられていることを特徴とする。
【0027】
(6)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、(5)の構成を前提とし、前記渦発生体の振動は、被計測流体の流れに直交する平面内であって、該渦発生体の長手方向と直交する方向の振動であることを特徴とする。
【0028】
(7)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、(5)の構成を前提とし、前記渦発生体の振動は、被計測流体の流れの方向の振動であることを特徴とする。
【0029】
(8)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、被計測流体が流れる管体内に軸体状からなる渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
該渦発生体をその軸の回りに振動させる駆動機構が備えられていることを特徴とする。
【0030】
(9)本発明による振動型カルマン渦流量計は、被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は被計測流体の流れに直交する面内に配置されるリング形状をなし、該リング形状の中心を通る一の径方向とこの一の径方向に直交する他の径方向に、それぞれ中心に向かう力と中心から離れる力が加わり、これらの力は交互に変化して該渦発生体に振動がなされることを特徴とする。
【0031】
(10)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は振動子を間に介在させて配置させた一対の板材を有し、前記振動子の駆動によって、少なくとも一方の板材は他方の板材に対して振動することを特徴とする。
【0032】
(11)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体による発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は前記管体に固定され振動子を間に介在させて配置された一対の板材を有し、前記振動子はその駆動によって前記一対の板材に当接する面と異なる面がその垂直方向に振動することを特徴とする。
【0033】
なお、本発明は以上の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明による振動型カルマン渦流量計の実施例を図面を用いて説明する。
【0035】
まず、図2は本発明による振動型カルマン渦流量計の全体を示す概略構成図で、(a)は側面図、(b)は正面図(被計測流体の下流側から見た図)を示している。
【0036】
被計測流体が流れる管体1があり、この管体1内には該管体1の中心軸に直交するようにして柱状の渦発生体2が配置されている。渦発生体2は被計測流体においてカルマン渦を下流側に発生させる機能を有し、該カルマン渦の発生周波数を後述の検知器5によって検出することにより、該周波数に比例する該被計測流体の流量を算出するようになっている。
【0037】
渦発生体2は管体1の一部を貫通して配置されるステム3に支持され、このステム3の前記渦発生体2側と反対側の端部には前記検知器5を内蔵するケース4が備えられている。
【0038】
前記検知器5としてはたとえば圧電素子が用いられ、この圧電素子によって前記渦発生体2の下流側の位置における圧力変化を検知するようになっている。すなわち、渦発生体2の後部側面においてバイパス通路2aが形成され、このバイパス通路2aは渦発生体2、ステム3、ケース4のそれぞれのほぼ中心に形成された通路6を経て前記圧電素子に接続されている。この圧電素子が感知される圧力変化の周期は該通路6を介して渦発生体2の後部側面に形成されたバイパス通路2aにおける圧力変化の周期に対応するようになっている。
【0039】
そして、前記ケース4には変換器7が備えられ、この変換器7によって、前記検知器5からの渦発生の周期に対応する値から管体1内に流れる被計測流体の流量を算出するようになっている。そして、該変換器7によって算出された被計測流体の流量値はたとえば該変換器7に取り付けられた表示器(図示せず)等に表示されるようになっている。
【0040】
ここで、このように構成されるカルマン渦流量計は、前記渦発生体2が以下に示す構成となっていることから、極めて渦が発生しやすく構成され、従って、検知器5によって得られる出力は低いレイノルズ数ReDにおいても圧力波や流量計本体の振動、偏流、旋回流等の外乱があっても安定した信頼性のあるものとすることができるようになっている。
【0041】
すなわち、図1(a)は、図2(b)のIa−Ia線における断面図を示した図である。柱状からなる渦発生体2のその軸に直交する断面は、この実施例の場合、たとえば、被計測流体の上流側において長辺を下流側において短辺を有するほぼ台形状となっている。
【0042】
したがって、該渦発生体2は、上流側から流れてくる被計測流体からみれば、まず、該被計測流体の流れと直交する主表面2Aを有し、該主表面2Aの両側においてそれぞれ該被計測流体の当初の流れ方向に対しその流れの距離に応じて離間して配置される斜面2Bを有するように構成されている。
【0043】
該主表面2Aの端部から剥離する渦の発生を助長させるために、一対からなるそれぞれの前記斜面2Bの上流側においてたとえばピエゾ素子等の圧電素子からなる振動子9を配置させた構成となっている。
【0044】
少なくとも被計測流体の流量計測時において、該振動子9を振動させることにより、該渦発生体2によって左右に分岐される被計測流体の剥離せん断層は圧力波を受け、剥離せん断層を波立たせ、微細な渦列が連続的に発生する。渦は運動エネルギを最もよく保存することができるので、カルマン渦の交番渦に渦度を安定して供給することができる。よってより低いレイノルズ数ReDにおいても、より強い渦となって該渦発生体2の後部に発生されるようになる。
【0045】
なお、渦発生体2の後部側面(斜面2B)における渦発生周波数に対応する圧力変化数は、該後部側面に形成されたバイパス通路2aに接続される通路6を経て、前記検知器5によって検知されることは上述したとおりである。
【0046】
また、渦発生体2における振動子9の取り付けは、その取り付けおよびその後の管理を容易にするため、該渦発生体2の平面2Aと直交して形成される側面2Cを前記斜面2Bとの間に形成し、この側面2C内に形成するようにしている。また、振動子9は、その振動面である表面が前記側面2cの面と面一になるよう該側面2Cに埋設させて取り付けている。振動を起こさせる面で、被計測流体の流れに対して抵抗となる障害物を形成させないためである。
【0047】
また、振動子9の各電極に接続される配線は、渦発生体2、ステム3の各内部に引き出され、ケース4内に導かれて、このケース4内の操作で駆動されるようになっている。
【0048】
なお、図1(b)では、渦発生体2に取り付けられる振動子9は、バイパス通路2aとほぼ同じ高さとするとともに、渦発生体2の長手方向に対し比較的短い長さとしたものである。振動子9がその構造上短くせざるを得ない場合、最も安定し効率よく剥離せん断層に圧力波を与えるためには渦発生体2の長手方向の中央に設けるのがよいという趣旨からである。したがって、該振動子9は渦発生体2の長手方向に沿って比較的長く形成されたものであってもよいことはいうまでもない。
【0049】
さらに、前記振動子9は、図1(a)に対応する図3に示すように、渦発生体2の被計測流体の流れと直交する平面2Aにおいて、前記側面2Cに近接する部分にも設けるようにしてもよいことはいうまでもない。すなわち、渦発生体2の主表面2Aと側面2Cとの交差部を含んだ部分に屈曲して振動子9が形成され、該振動子9は、被計測流体が渦発生体2によって再度管体1の軸方向へ方向変換される部分において、該方向変換される手前の部分にも及んで形成されることになる。このため、剥離せん断層に圧力波として作用するだけでなく、剥離位置も周期的に移動するので、剥離せん断層を波立たせ運動エネルギを効率よく保存する微細な渦列を連続的により確実に発生させることができる。よって、その後の流れにおいてカルマン渦KVを極めて安定して発生しやすい構成とすることができる。
【0050】
また、上述した実施例では、カルマン渦の渦発生周波数の検知個所、すなわち、検知器5にその入力を導くための情報入力個所は渦発生体2においてバイパス通路2aとして設けたものである。しかし、このような渦発生周波数の検知個所は渦発生体2とは別個に構成し、該渦発生体2の下流側に設けるようにしても同様の効果が得られることはいうまでもない。管体1の内部において渦発生体2の下流側に圧電素子を直接配置させるような場合にも適用できるからである。そして、この場合において、圧電素子を検知器として用いることにも限定されることはなく、たとえば、超音波送信器と受信器とを管体1の内壁面に互いに対向させるようにして配置させ、超音波受信器による超音波送信器からの超音波の検出によって渦発生周波数を検知するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0051】
そして、検知器5を渦発生体2と分離して構成する場合において、該渦発生体2の構成に制限が付されることはないことから、前記振動子9は、図1(a)に対応する図4に示すように、該渦発生体2の斜面2Bに取り付けることができ、従って、このように構成するようにしてもよいことはもちろんである。この斜面2Bの個所に設けた前記振動子9が発生する圧力波によって剥離せん断層を波立たせ、運動エネルギを効率よく保存する微細な渦列を連続的に発生させ、これにより、カルマン渦KVは極めて安定して発生しやすくなるという効果を奏するからである。
【0052】
上述した実施例では、そのいずれにおいても、管体1に対して固定された渦発生体2に振動子9を配置させ、該渦発生体2の近傍を流れる被計測流体の剥離せん断層に圧力波を供給する構成としたものである。しかし、このような構成に限定されることはなく、渦発生体2それ自体に振動を起こさせるように構成し、上記と同様の効果を奏するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0053】
図5(a)、(b)は、本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す構成図であり、それぞれ、図2(a)、(b)に対応した図となっている。
【0054】
図2(a)、(b)の場合と比較して異なる部分は、管体1内に配置させた渦発生体2はそれ自体その長手方向の軸を中心に微少に回転振動されるように構成されている。この回転振動は、剥離せん断層に圧力波として作用するだけでなく、剥離位置も周期的に移動するので剥離せん断層を波立たせ運動エネルギを効率よく保存する微細な渦列を連続的により確実に発生させることができる。よって、該渦発生体2の下流側にカルマン渦を安定して発生し易くしている。
【0055】
渦発生体2は、管体1の中心軸に指向して該管体1を貫通して設けられるステム3内に挿入されて支持されている。渦発生体2はステム3に対しその軸方向回りに微少な回転範囲内での移動ができるように取り付けられ、該渦発生体2の管体1側の端部と反対側の端部は前記ステム3の端部を超えて延在され、この延在部は前記ステム3の端部に形成されたケース4内に配置された駆動機構10に接続されている。
【0056】
この駆動機構10はその駆動によって前記渦発生体2をその軸方向回りに回転振動させるように構成されている。具体的には該駆動機構10は、たとえば、前記渦発生体2の延在部の一部において形成される磁性体を中心軸上に配置させる電磁コイルから構成され、この電磁コイルに高周波の交流電流を印加することによって形成される。
【0057】
このように構成されたカルマン渦流量計は、図2に示したものと同様に、渦発生体2に振動子9を取り付けた場合と同様の機能を有するようになり、該渦発生体2の下流側にカルマン渦KVを安定して発生させ易く構成することができる。この場合、カルマン渦KVの発生周波数の検知は図2に示したと同様の構成を採用することができる。しかし、本実施例の場合、渦発生体2は振動体からなる可動部として構成されるため、該渦発生体2と物理的に分離された形態で構成することが望ましい。たとえば、渦発生体2の下流側の管体1に圧電素子、超音波送信器および超音波受信器、あるいは他の検出器を支持させて構成するがごとくである。
【0058】
上述した実施例では、渦発生体2はその長手方向の軸回りに微少な回転振動する構成として示したものであるがこれに限定されないことはいうまでもない。たとえば、図5(b)のVI−VI線における断面図である図6に示すように、被計測流体の流れに直交する平面内の振動であって、該渦発生体2の長手方向と直交する方向Dの振動であってもよい。渦発生体2にこのような微少振動を与える構成は、概略図5に示す構成からなり、駆動機構10によって該渦発生体2を上述した方向Dへ微少振動させるように構成すればよいことになる。
【0059】
また、図6に対応する図7に示すように、被計測流体の流れに沿う平面内の振動であって、該渦発生体2の長手方向と直交する方向Dの振動であってもよい。渦発生体2にこのような微少振動を与える構成は、概略図5に示す構成からなり、駆動機構10によって該渦発生体2を上述した方向Dへ微少振動させるように構成すればよいことになる。
【0060】
図8(a)は、さらに本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す構成図で、特に、渦発生体2の構成を示した図である。図8(a)は図7に対応した図であり、図8(b)は被計測流体の流れる方向から見た図である。
【0061】
図8(a)、(b)において、被計測流体の流れに直交して配置される板材2mが、また、この板材2mに対して下流側に僅かな距離だけ離間されて該板材2mと平行に配置される板材2nが配置されている。これら板材2m、2nはいずれもその端部が管体1に固定されて配置されている。そして、前記板材2mと板材2nとの間には圧電素子2sが配置され、この圧電素子2sは、その駆動によって、該板材2m、2nとの当接面を除いた側面であって少なくとも該渦発生体2の長手方向と平行な側面がその主表面と直交する方向(図中矢印で示す)に変位するように振動するようになっている。このように構成したカルマン渦流量計は、その渦発生体2によって発生する渦に対する、圧電素子2sの振動による圧力波の影響が、図1(a)、図3及び図4の場合とほぼ同じとなり、カルマン渦KVを極めて安定して発生し易くできるとともに、その渦強度を増大させることができる。
【0062】
図9は、図8に示した振動型カルマン渦流量計の他の変形例を示す実施例の構成である。図9(a)は図8(a)に対応し、図9(b)は図8(b)に対応した図となっている。図8の場合と比較して異なる構成は、板材2m’、2n’のうちいずれか一方の板材と、これら板材2m’、2n’の間に介在された圧電素子2s’にある。すなわち、たとえば板材2m’はその両端が管体1に固定され、板材2n’は前記圧電素子2s’を介して該板材2m’に固定され、両端は管体1には固定されていないものとなっている。この場合、板材2n’がその両端において管体1に固定され、板材2m’が前記圧電素子2s’を介して該板材2n’に固定され、両端は管体1には固定されていない構成としてもよい。そして、圧電素子2s’は、その駆動によって、厚さ方向に振動がなされるようになっているとともに、その幅は、その長手方向と平行な側面が板材2m’、2n’の対応する側面よりも凸状とならないように、該板材2m’、2n’の幅に対し同等かもしくは小さく構成されている。
【0063】
このような構成において、圧電素子2s’を駆動させると、板材2m’、2n’が音叉に似た振動をするようになり、該板材2m’、2n’の間に発生する圧力波がそれら板材2m’、2n’の長手方向に直交する方向に伝搬されるようになる。このことは、圧力波の発生、伝搬において図8の場合と同様となり、また、板材2n’がその両端において管体1に固定された場合においては板材2m’が流れ方向に振動するので流れの剥離点が振動することとなり、剥離せん断層を波立たせることができるようになる。したがって、図8の場合と同様の効果が得られるようになる。
【0064】
図10(a)、(b)は、本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す構成図で、図10(a)は図9(a)に対応する図で、図10(b)は被計測流体の流れの方向から見た図である。図10(a)、(b)において、渦発生体2は管体1と同軸配置されたリング状部材から構成され、その外側面には等間隔に配置された4個のプランジャ11が放射状に固定されている。これら各プランジャ11の延在部は管体1を貫通して該管体1の外周部にまで至って形成されている。なお、管体1の前記各プランジャ11を貫通させる孔の部分には管体1内の被計測流体が管体1の外方に漏洩されないように図示しないシール手段が備えられている。また、前記管1の外周には4個のたとえば円筒状のコイルを備える電磁石12が配置されており、該管体1の外方にまで延在される前記各プランジャ11はそれぞれの電磁石12の中心軸上に配置されるようになっている。
【0065】
4個からなる電磁石12のうち一つおきに配置される2個の第1電磁石12Aには位相を同じくして交流電流が流れるように構成され、他の2個の第2電磁石12Bには該第1電磁石12Aに流れる電流よりも180°位相がずれた電流が流れるように構成されている。このため、第1電磁石12Aおよび第2電磁石12Bを駆動させることにより、第1電磁石12Aの中心軸上に配置されるプランジャ11はたとえば渦発生体2の中心軸から離れる方向に力を受け、第2電磁石12Bの中心軸上に配置されるプランジャ11は渦発生体2の中心軸に向かう方向に力を受けることになる。このため、渦発生体2は、図10(c)に示すように、変形された渦発生体2’および渦発生体2”の各形状で順次繰り返され、これにより渦発生体2が振動するようになる。すなわち、リング状部材からなる渦発生体2は、該リング状部材の中心を通る一の径方向とこの一の径方向に直交する他の径方向に、それぞれ中心に向かう力と中心から離れる力が加わり、これらの力は交互に変化して該渦発生体2に振動がなされるようになる。渦発生体2の下流側にはカルマン渦が発生することになるが、該カルマン渦は、該渦発生体2に上述した振動が発生することにより、剥離せん断層に圧力波として作用するだけでなく、剥離位置も周期的に移動するので剥離せん断層を波立たせ運動エネルギを効率よく保存する微細な渦列を連続的により確実に発生させることができる。よって下流のカルマン渦の渦強度も増大するようになる。
【0066】
以上説明したことから明らかなように、上述した各実施例における振動型カルマン渦流量計は、その渦発生体を振動させることにより、該渦発生体から発生する渦を安定して発生し易く構成できるようになる。このため、たとえ、管体内を流れる被計測流体の流れが小さく、レイノルズ数が低い場合でも強いカルマン渦を発生させることができ、測定流量範囲を拡大させたカルマン渦流量計を得ることができる。
【0067】
上述した各実施例はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施例での効果を単独であるいは相乗して奏することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明による振動型カルマン渦流量計の一実施例を示す要部構成図である。
【図2】本発明による振動型カルマン渦流量計の一実施例を示す全体構成図である。
【図3】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図4】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図5】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す全体構成図である。
【図6】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図7】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図8】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図9】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図10】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図11】渦流量計のストローハル数とレイノルズ数の関係を示す図である。
【図12】レイノルズ数が2×104以下の場合におけるカルマン渦の発生の状態を示す図である。
【図13】レイノルズ数が2×104以上の場合におけるカルマン渦の発生の状態を示す図である。
【図14】レイノルズ数が2×104以下であって渦発生体が静止してる場合におけるカルマン渦の発生の状態を示す図である。
【図15】レイノルズ数が2×104以下であって渦発生体を振動させた場合におけるカルマン渦の発生の状態を示す図である。
【図16】レイノルズ数が2×104以下であって渦発生体を振動させた場合におけるカルマン渦の発生の状態を示す図である。
【図17】渦発生体を流れ方向に振動させた場合のカルマン渦列の状態を示した図である。
【図18】渦発生体を流れ方向と直交する方向に振動させた場合のカルマン渦列の状態を示した図である。
【図19】渦発生体に振動子を備え、該振動子を駆動させた場合のカルマン渦の発生の状態を示した図である。
【図20】渦発生体に振動子を備える代わりに流れ方向に振動させた場合のカルマン渦の発生の状態を示した図である。
【符号の説明】
【0069】
1……管体、2……渦発生体、2a……バイパス通路、2A……主表面、2B……斜面、2C……側面、3……ステム、4……ケース、5……検知器、6……通路、7……変換器、9……振動子、10……駆動機構、11……プランジャ、12……電磁石、12A……第1電磁石、12B……第2電磁石、2m、2m’2n、2n’……板材、2s、2s’……圧電素子、OJ……物体、VR……渦、KV……カルマン渦。
【技術分野】
【0001】
本発明は振動型カルマン渦流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
カルマン渦流量計は、被計測流体が流れる管体内に柱状の渦発生体を配置させ、この渦発生体によって発生するカルマン渦の発生周波数を検出する検出器を備えて構成されている。カルマン渦の発生する周波数は、被計測流体の流れる速さ(流速)に比例し、これに基づき該管体内に流れる被計測流体の流量を算出することができるからである。
【0003】
そして、渦発生体は、流れの剥離点を安定化させるため、その形状等において種々のものが知られるに至っている。たとえば該渦発生体は、被計測流体の流れと直交する平面を有し、その長手方向に直交する平面で切断した断面形状が該平面に含まれる底辺を有する三角形、あるいは台形とするようなものが代表的なものとして挙げることができる。前記平面の両側から被計測流体の流れにほぼ沿った渦発生体の側面が、該被計測流体の流れの距離に応じて該流れから離間するようにして形成された斜面として構成されているため、剥離した流れが渦発生体の側面に再付着し難く、側面において交番渦の成長を阻害しない空間を有し、かつ、渦発生体に渦が交互に接することで渦発生体周りに周期的な強い循環を生み出すことができるからである。
【0004】
また、カルマン渦の発生周波数は、渦発生体の剥離点の下流側に管体に取り付けられる検出器によって検出されるようになっている。該検出器は渦の有無を間接的に検出できるセンサならば適用でき、圧力変化を検知できるたとえば圧電素子、あるいは流量変化を検知できる超音波素子等が通常用いられる。
【0005】
なお、このようなカルマン渦流量計についての詳細はたとえば下記特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開2001−82987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したカルマン渦流量計は、管体内に流れる被計測流体の速度が小さい場合に、具体的にはレイノルズ数ReDを次式(1)とした場合、
ReD=V・D/ν …… (1)
ここで、Vは管路内の平均流速、Dは測定管内径、νは流体の動粘度である。
【0007】
このレイノルズ数ReDが約2×104以下の場合に、カルマン渦の強度が小さく、これが原因となって各渦の規則性(周期性)が十分に保持されないという不都合が指摘されるに至った。
【0008】
図11は渦流量計のストローハル数とレイノルズ数の関係の一例である。レイノルズ数ReDは上式(1)に示されるが、ストローハル数Stは次式(2)で示される。
【0009】
St=d・f/V …… (2)
ここで、dは渦発生体の幅、fは渦発生周波数、Vは管路内の平均流速である。
【0010】
渦流量計として使用できるレイノルズ数範囲は、ReD=2×104以上で最大はReD=1×108の実績がある。レイノルズ数がReD=2×104以上の領域では図13に示すように渦発生体2の周りに強い変動循環が生じ、その後流には強いカルマン渦KVが生じ、相互干渉し、いわゆる渦励振の状態となって、ストローハル数もほぼ一定なので、流量計として適用することができる。一方、レイノルズ数が(遷移レイノルズ数:仮称)ReD=2×104以下になると図12に示すように、運動エネルギが小さいので、渦発生体2から離れた下流位置で後流の不安定性を発端としたカルマン渦列の様相となっている。渦発生体の回りの変動循環は小さく、剥離せん断層が圧力波や、流量計本体の振動、偏流、旋回流により乱され、渦発生が不規則になったり、もとより、剥離せん断層の立ち上がりが小さく、後流幅も小さいので周波数が高くなり(ストローハル数の増加)、器差がプラスに転じていた。よって、流量計としてはこの流量域は使用することはできなかった。カルマン渦流量計において計測流量範囲の拡大のため、遷移レイノルズ数のより小流量への拡大が望まれていた。
【0011】
そこで、本出願人は、渦発生体から生じる剥離せん断層に着目し、剥離位置を周期的に移動させたり、剥離せん断層に周期的な圧力波を作用させることで、波立たせ、もとより速度差があり渦が生じやすい剥離せん断層に微細な渦列を連続的に発生させる。渦は運動エネルギを最もよく保存することができるので、圧力波や流量計本体の振動、偏流、旋回流などの外乱による影響を受け難く、より低いレイノルズ数ReDでの安定したカルマン渦の生成を助けることにより、測定流量範囲を拡大できないかを検討した。
【0012】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、低いレイノルズ数ReDにおいても、圧力波や流量計本体の振動、偏流、旋回流等の外乱に影響されることなく信頼性のある計測が可能な振動型カルマン渦流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した目的を達成するため、次に説明する概念に基づくものとなっている。
【0014】
図14は図12と同じ状態でありReD=2×104以下の流れで渦発生体が静止している場合、または振動子がない場合の流れの様子を流線で示したものである。運動エネルギが小さく、渦発生体2から離れた下流位置で後流の不安定性を発端としてカルマン渦列が開始している。渦発生体2の回りの変動循環は小さく、剥離せん断層が圧力波や、流量計本体の振動、偏流、旋回流により乱され渦発生が不規則になったり、もとより剥離せん断層の立ち上がりが小さく、後流幅も小さいので周波数が高くなり(ストローハル数の増加)、器差がプラスに転じていた。よって、流量計としてはこの流量域は使用することはできなかった。
【0015】
図15は図14と同じレイノルズ数において渦発生体2を流れ方向に振動させた場合である(一例であり、振動子を用いてもよい)。もとより剥離せん断層では速度差があるので渦が発生するが、この場合、剥離点が振動するので、剥離せん断層を周期的に波立たせることができ、剥離せん断層に運動量を渦列として保存できるので、遠く下流で生じる渦に渦度(運動量)を安定して供給することができる。片側の剥離点から発生した微細な渦列は、カルマン渦KVの同方向の大規模な渦に引き込まれ安定した渦励起を助ける。下流で生じる渦が大きくなると渦発生体2と干渉することになり、渦発生体2の回りの循環と連動することで、渦発生体から直接生じる大規模なカルマン渦へ遷移し、図16に示す安定な状態となる。よってReD=2×104以下でも図13に示すReD=2×104以上の流れのようないわゆる渦励振の状態となる。
【0016】
図17は渦発生体2を流れ方向に振動させた例であり、剥離せん断層に生じる渦列は、剥離点に近い部分で流れ方向に向かって左右対称の状態となっている。図18は渦発生体2を流れ方向に対し垂直、かつ長手方向に対しても垂直方向に振動させた例であり、剥離せん断層に生じる渦列は、剥離点に近い部分で流れ方向に向かって左右交互に発生するようになる。いずれも振動周波数が、カルマン渦の周波数に対し十分高ければ、その差異は影響しない。
【0017】
図19は渦発生体2の平面2C上に振動子9を装着し、振動子9を駆動した状態である。ここで、前記平面2Cとは渦発生体2の流れに直交する平面と接続される側面で該平面に近い側の面をいう。剥離せん断層に周期的な圧力波を作用させることで、剥離せん断層を波立たせ、もとより速度差があり渦が生じ易い剥離せん断層に微細な渦列を連続的に発生させた状態である。渦は運動エネルギを最も効率よく保存することができるので、圧力波や流量計本体の振動、偏流や旋回流などの外乱による影響を受け難くなる。よってより低いレイノルズ数での安定したカルマン渦の生成を助けることができる。
【0018】
図20は上記振動子を設けることなく渦発生体2自体を流れ方向に振動させた場合である。渦発生体の平面2Bの動きが剥離せん断層に圧力波として作用するだけでなく、剥離位置も周期的に移動するので、剥離せん断層を波立たせ、運動エネルギを効率よく保存する微細な渦列を連続的により確実に発生させることができる。ここで、前記平面2Bは渦発生体2の流れに直交する平面に接続される各側面で後流の方向に行くに従い狭まってくる面をいう。
【0019】
振動子または渦発生体の振動周波数は、Lock-in現象を避けるため、計測する最大流量でのカルマン渦の周波数に対し10倍以上の周波数とする。ただし、計測流体が液体の場合は、キャビテーションが生じない周波数、ガス体の場合は圧縮性の影響が生じない周波数の範囲とする必要がある。
【0020】
このようなことから、カルマン渦流量計における渦発生体が振動することにより、その下流に発生するカルマン渦は、その強度が大きいものとなり、たとえ、該流体の流速が小さい場合であっても、該渦の検出出力を大きなものとして得ることができるようになる。このため、カルマン渦の渦強度の増大を図って、低いレイノルズ数ReDにおいても、圧力差や流量計本体の振動、偏流、旋回流等の外乱に影響されることなく信頼性のある計測を可能とすることができる。
【0021】
したがって、本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0022】
(1)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを備えるものであって、
該渦発生体の表面に振動子を備えてなることを特徴とする。
【0023】
(2)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、(1)の構成を前提とし、前記渦発生体は柱状をなし、少なくとも、前記被計測流体の流れと直交する平面と、該平面の両側においてそれぞれ該被計測流体の当初の流れ方向に対しその流れの距離に応じて離間して配置される斜面とを有し、前記振動子は前記平面と斜面の間に形成された側面に形成されていることを特徴とする。
【0024】
(3)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、(1)の構成を前提とし、前記渦発生体は柱状をなし、少なくとも、前記被計測流体の流れと直交する平面と、該平面の両側においてそれぞれ該被計測流体の当初の流れ方向に対してその流れの距離に応じて離間して配置される斜面とを有し、前記振動子は前記斜面に形成されていることを特徴とする。
【0025】
(4)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、(1)、(2)、(3)のいずれかの構成を前提とし、前記振動子はピエゾ素子等の圧電素子であることを特徴とする。
【0026】
(5)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
該渦発生体を振動させる駆動機構が備えられていることを特徴とする。
【0027】
(6)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、(5)の構成を前提とし、前記渦発生体の振動は、被計測流体の流れに直交する平面内であって、該渦発生体の長手方向と直交する方向の振動であることを特徴とする。
【0028】
(7)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、(5)の構成を前提とし、前記渦発生体の振動は、被計測流体の流れの方向の振動であることを特徴とする。
【0029】
(8)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、被計測流体が流れる管体内に軸体状からなる渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
該渦発生体をその軸の回りに振動させる駆動機構が備えられていることを特徴とする。
【0030】
(9)本発明による振動型カルマン渦流量計は、被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は被計測流体の流れに直交する面内に配置されるリング形状をなし、該リング形状の中心を通る一の径方向とこの一の径方向に直交する他の径方向に、それぞれ中心に向かう力と中心から離れる力が加わり、これらの力は交互に変化して該渦発生体に振動がなされることを特徴とする。
【0031】
(10)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は振動子を間に介在させて配置させた一対の板材を有し、前記振動子の駆動によって、少なくとも一方の板材は他方の板材に対して振動することを特徴とする。
【0032】
(11)本発明による振動型カルマン渦流量計は、たとえば、被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体による発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は前記管体に固定され振動子を間に介在させて配置された一対の板材を有し、前記振動子はその駆動によって前記一対の板材に当接する面と異なる面がその垂直方向に振動することを特徴とする。
【0033】
なお、本発明は以上の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明による振動型カルマン渦流量計の実施例を図面を用いて説明する。
【0035】
まず、図2は本発明による振動型カルマン渦流量計の全体を示す概略構成図で、(a)は側面図、(b)は正面図(被計測流体の下流側から見た図)を示している。
【0036】
被計測流体が流れる管体1があり、この管体1内には該管体1の中心軸に直交するようにして柱状の渦発生体2が配置されている。渦発生体2は被計測流体においてカルマン渦を下流側に発生させる機能を有し、該カルマン渦の発生周波数を後述の検知器5によって検出することにより、該周波数に比例する該被計測流体の流量を算出するようになっている。
【0037】
渦発生体2は管体1の一部を貫通して配置されるステム3に支持され、このステム3の前記渦発生体2側と反対側の端部には前記検知器5を内蔵するケース4が備えられている。
【0038】
前記検知器5としてはたとえば圧電素子が用いられ、この圧電素子によって前記渦発生体2の下流側の位置における圧力変化を検知するようになっている。すなわち、渦発生体2の後部側面においてバイパス通路2aが形成され、このバイパス通路2aは渦発生体2、ステム3、ケース4のそれぞれのほぼ中心に形成された通路6を経て前記圧電素子に接続されている。この圧電素子が感知される圧力変化の周期は該通路6を介して渦発生体2の後部側面に形成されたバイパス通路2aにおける圧力変化の周期に対応するようになっている。
【0039】
そして、前記ケース4には変換器7が備えられ、この変換器7によって、前記検知器5からの渦発生の周期に対応する値から管体1内に流れる被計測流体の流量を算出するようになっている。そして、該変換器7によって算出された被計測流体の流量値はたとえば該変換器7に取り付けられた表示器(図示せず)等に表示されるようになっている。
【0040】
ここで、このように構成されるカルマン渦流量計は、前記渦発生体2が以下に示す構成となっていることから、極めて渦が発生しやすく構成され、従って、検知器5によって得られる出力は低いレイノルズ数ReDにおいても圧力波や流量計本体の振動、偏流、旋回流等の外乱があっても安定した信頼性のあるものとすることができるようになっている。
【0041】
すなわち、図1(a)は、図2(b)のIa−Ia線における断面図を示した図である。柱状からなる渦発生体2のその軸に直交する断面は、この実施例の場合、たとえば、被計測流体の上流側において長辺を下流側において短辺を有するほぼ台形状となっている。
【0042】
したがって、該渦発生体2は、上流側から流れてくる被計測流体からみれば、まず、該被計測流体の流れと直交する主表面2Aを有し、該主表面2Aの両側においてそれぞれ該被計測流体の当初の流れ方向に対しその流れの距離に応じて離間して配置される斜面2Bを有するように構成されている。
【0043】
該主表面2Aの端部から剥離する渦の発生を助長させるために、一対からなるそれぞれの前記斜面2Bの上流側においてたとえばピエゾ素子等の圧電素子からなる振動子9を配置させた構成となっている。
【0044】
少なくとも被計測流体の流量計測時において、該振動子9を振動させることにより、該渦発生体2によって左右に分岐される被計測流体の剥離せん断層は圧力波を受け、剥離せん断層を波立たせ、微細な渦列が連続的に発生する。渦は運動エネルギを最もよく保存することができるので、カルマン渦の交番渦に渦度を安定して供給することができる。よってより低いレイノルズ数ReDにおいても、より強い渦となって該渦発生体2の後部に発生されるようになる。
【0045】
なお、渦発生体2の後部側面(斜面2B)における渦発生周波数に対応する圧力変化数は、該後部側面に形成されたバイパス通路2aに接続される通路6を経て、前記検知器5によって検知されることは上述したとおりである。
【0046】
また、渦発生体2における振動子9の取り付けは、その取り付けおよびその後の管理を容易にするため、該渦発生体2の平面2Aと直交して形成される側面2Cを前記斜面2Bとの間に形成し、この側面2C内に形成するようにしている。また、振動子9は、その振動面である表面が前記側面2cの面と面一になるよう該側面2Cに埋設させて取り付けている。振動を起こさせる面で、被計測流体の流れに対して抵抗となる障害物を形成させないためである。
【0047】
また、振動子9の各電極に接続される配線は、渦発生体2、ステム3の各内部に引き出され、ケース4内に導かれて、このケース4内の操作で駆動されるようになっている。
【0048】
なお、図1(b)では、渦発生体2に取り付けられる振動子9は、バイパス通路2aとほぼ同じ高さとするとともに、渦発生体2の長手方向に対し比較的短い長さとしたものである。振動子9がその構造上短くせざるを得ない場合、最も安定し効率よく剥離せん断層に圧力波を与えるためには渦発生体2の長手方向の中央に設けるのがよいという趣旨からである。したがって、該振動子9は渦発生体2の長手方向に沿って比較的長く形成されたものであってもよいことはいうまでもない。
【0049】
さらに、前記振動子9は、図1(a)に対応する図3に示すように、渦発生体2の被計測流体の流れと直交する平面2Aにおいて、前記側面2Cに近接する部分にも設けるようにしてもよいことはいうまでもない。すなわち、渦発生体2の主表面2Aと側面2Cとの交差部を含んだ部分に屈曲して振動子9が形成され、該振動子9は、被計測流体が渦発生体2によって再度管体1の軸方向へ方向変換される部分において、該方向変換される手前の部分にも及んで形成されることになる。このため、剥離せん断層に圧力波として作用するだけでなく、剥離位置も周期的に移動するので、剥離せん断層を波立たせ運動エネルギを効率よく保存する微細な渦列を連続的により確実に発生させることができる。よって、その後の流れにおいてカルマン渦KVを極めて安定して発生しやすい構成とすることができる。
【0050】
また、上述した実施例では、カルマン渦の渦発生周波数の検知個所、すなわち、検知器5にその入力を導くための情報入力個所は渦発生体2においてバイパス通路2aとして設けたものである。しかし、このような渦発生周波数の検知個所は渦発生体2とは別個に構成し、該渦発生体2の下流側に設けるようにしても同様の効果が得られることはいうまでもない。管体1の内部において渦発生体2の下流側に圧電素子を直接配置させるような場合にも適用できるからである。そして、この場合において、圧電素子を検知器として用いることにも限定されることはなく、たとえば、超音波送信器と受信器とを管体1の内壁面に互いに対向させるようにして配置させ、超音波受信器による超音波送信器からの超音波の検出によって渦発生周波数を検知するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0051】
そして、検知器5を渦発生体2と分離して構成する場合において、該渦発生体2の構成に制限が付されることはないことから、前記振動子9は、図1(a)に対応する図4に示すように、該渦発生体2の斜面2Bに取り付けることができ、従って、このように構成するようにしてもよいことはもちろんである。この斜面2Bの個所に設けた前記振動子9が発生する圧力波によって剥離せん断層を波立たせ、運動エネルギを効率よく保存する微細な渦列を連続的に発生させ、これにより、カルマン渦KVは極めて安定して発生しやすくなるという効果を奏するからである。
【0052】
上述した実施例では、そのいずれにおいても、管体1に対して固定された渦発生体2に振動子9を配置させ、該渦発生体2の近傍を流れる被計測流体の剥離せん断層に圧力波を供給する構成としたものである。しかし、このような構成に限定されることはなく、渦発生体2それ自体に振動を起こさせるように構成し、上記と同様の効果を奏するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0053】
図5(a)、(b)は、本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す構成図であり、それぞれ、図2(a)、(b)に対応した図となっている。
【0054】
図2(a)、(b)の場合と比較して異なる部分は、管体1内に配置させた渦発生体2はそれ自体その長手方向の軸を中心に微少に回転振動されるように構成されている。この回転振動は、剥離せん断層に圧力波として作用するだけでなく、剥離位置も周期的に移動するので剥離せん断層を波立たせ運動エネルギを効率よく保存する微細な渦列を連続的により確実に発生させることができる。よって、該渦発生体2の下流側にカルマン渦を安定して発生し易くしている。
【0055】
渦発生体2は、管体1の中心軸に指向して該管体1を貫通して設けられるステム3内に挿入されて支持されている。渦発生体2はステム3に対しその軸方向回りに微少な回転範囲内での移動ができるように取り付けられ、該渦発生体2の管体1側の端部と反対側の端部は前記ステム3の端部を超えて延在され、この延在部は前記ステム3の端部に形成されたケース4内に配置された駆動機構10に接続されている。
【0056】
この駆動機構10はその駆動によって前記渦発生体2をその軸方向回りに回転振動させるように構成されている。具体的には該駆動機構10は、たとえば、前記渦発生体2の延在部の一部において形成される磁性体を中心軸上に配置させる電磁コイルから構成され、この電磁コイルに高周波の交流電流を印加することによって形成される。
【0057】
このように構成されたカルマン渦流量計は、図2に示したものと同様に、渦発生体2に振動子9を取り付けた場合と同様の機能を有するようになり、該渦発生体2の下流側にカルマン渦KVを安定して発生させ易く構成することができる。この場合、カルマン渦KVの発生周波数の検知は図2に示したと同様の構成を採用することができる。しかし、本実施例の場合、渦発生体2は振動体からなる可動部として構成されるため、該渦発生体2と物理的に分離された形態で構成することが望ましい。たとえば、渦発生体2の下流側の管体1に圧電素子、超音波送信器および超音波受信器、あるいは他の検出器を支持させて構成するがごとくである。
【0058】
上述した実施例では、渦発生体2はその長手方向の軸回りに微少な回転振動する構成として示したものであるがこれに限定されないことはいうまでもない。たとえば、図5(b)のVI−VI線における断面図である図6に示すように、被計測流体の流れに直交する平面内の振動であって、該渦発生体2の長手方向と直交する方向Dの振動であってもよい。渦発生体2にこのような微少振動を与える構成は、概略図5に示す構成からなり、駆動機構10によって該渦発生体2を上述した方向Dへ微少振動させるように構成すればよいことになる。
【0059】
また、図6に対応する図7に示すように、被計測流体の流れに沿う平面内の振動であって、該渦発生体2の長手方向と直交する方向Dの振動であってもよい。渦発生体2にこのような微少振動を与える構成は、概略図5に示す構成からなり、駆動機構10によって該渦発生体2を上述した方向Dへ微少振動させるように構成すればよいことになる。
【0060】
図8(a)は、さらに本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す構成図で、特に、渦発生体2の構成を示した図である。図8(a)は図7に対応した図であり、図8(b)は被計測流体の流れる方向から見た図である。
【0061】
図8(a)、(b)において、被計測流体の流れに直交して配置される板材2mが、また、この板材2mに対して下流側に僅かな距離だけ離間されて該板材2mと平行に配置される板材2nが配置されている。これら板材2m、2nはいずれもその端部が管体1に固定されて配置されている。そして、前記板材2mと板材2nとの間には圧電素子2sが配置され、この圧電素子2sは、その駆動によって、該板材2m、2nとの当接面を除いた側面であって少なくとも該渦発生体2の長手方向と平行な側面がその主表面と直交する方向(図中矢印で示す)に変位するように振動するようになっている。このように構成したカルマン渦流量計は、その渦発生体2によって発生する渦に対する、圧電素子2sの振動による圧力波の影響が、図1(a)、図3及び図4の場合とほぼ同じとなり、カルマン渦KVを極めて安定して発生し易くできるとともに、その渦強度を増大させることができる。
【0062】
図9は、図8に示した振動型カルマン渦流量計の他の変形例を示す実施例の構成である。図9(a)は図8(a)に対応し、図9(b)は図8(b)に対応した図となっている。図8の場合と比較して異なる構成は、板材2m’、2n’のうちいずれか一方の板材と、これら板材2m’、2n’の間に介在された圧電素子2s’にある。すなわち、たとえば板材2m’はその両端が管体1に固定され、板材2n’は前記圧電素子2s’を介して該板材2m’に固定され、両端は管体1には固定されていないものとなっている。この場合、板材2n’がその両端において管体1に固定され、板材2m’が前記圧電素子2s’を介して該板材2n’に固定され、両端は管体1には固定されていない構成としてもよい。そして、圧電素子2s’は、その駆動によって、厚さ方向に振動がなされるようになっているとともに、その幅は、その長手方向と平行な側面が板材2m’、2n’の対応する側面よりも凸状とならないように、該板材2m’、2n’の幅に対し同等かもしくは小さく構成されている。
【0063】
このような構成において、圧電素子2s’を駆動させると、板材2m’、2n’が音叉に似た振動をするようになり、該板材2m’、2n’の間に発生する圧力波がそれら板材2m’、2n’の長手方向に直交する方向に伝搬されるようになる。このことは、圧力波の発生、伝搬において図8の場合と同様となり、また、板材2n’がその両端において管体1に固定された場合においては板材2m’が流れ方向に振動するので流れの剥離点が振動することとなり、剥離せん断層を波立たせることができるようになる。したがって、図8の場合と同様の効果が得られるようになる。
【0064】
図10(a)、(b)は、本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す構成図で、図10(a)は図9(a)に対応する図で、図10(b)は被計測流体の流れの方向から見た図である。図10(a)、(b)において、渦発生体2は管体1と同軸配置されたリング状部材から構成され、その外側面には等間隔に配置された4個のプランジャ11が放射状に固定されている。これら各プランジャ11の延在部は管体1を貫通して該管体1の外周部にまで至って形成されている。なお、管体1の前記各プランジャ11を貫通させる孔の部分には管体1内の被計測流体が管体1の外方に漏洩されないように図示しないシール手段が備えられている。また、前記管1の外周には4個のたとえば円筒状のコイルを備える電磁石12が配置されており、該管体1の外方にまで延在される前記各プランジャ11はそれぞれの電磁石12の中心軸上に配置されるようになっている。
【0065】
4個からなる電磁石12のうち一つおきに配置される2個の第1電磁石12Aには位相を同じくして交流電流が流れるように構成され、他の2個の第2電磁石12Bには該第1電磁石12Aに流れる電流よりも180°位相がずれた電流が流れるように構成されている。このため、第1電磁石12Aおよび第2電磁石12Bを駆動させることにより、第1電磁石12Aの中心軸上に配置されるプランジャ11はたとえば渦発生体2の中心軸から離れる方向に力を受け、第2電磁石12Bの中心軸上に配置されるプランジャ11は渦発生体2の中心軸に向かう方向に力を受けることになる。このため、渦発生体2は、図10(c)に示すように、変形された渦発生体2’および渦発生体2”の各形状で順次繰り返され、これにより渦発生体2が振動するようになる。すなわち、リング状部材からなる渦発生体2は、該リング状部材の中心を通る一の径方向とこの一の径方向に直交する他の径方向に、それぞれ中心に向かう力と中心から離れる力が加わり、これらの力は交互に変化して該渦発生体2に振動がなされるようになる。渦発生体2の下流側にはカルマン渦が発生することになるが、該カルマン渦は、該渦発生体2に上述した振動が発生することにより、剥離せん断層に圧力波として作用するだけでなく、剥離位置も周期的に移動するので剥離せん断層を波立たせ運動エネルギを効率よく保存する微細な渦列を連続的により確実に発生させることができる。よって下流のカルマン渦の渦強度も増大するようになる。
【0066】
以上説明したことから明らかなように、上述した各実施例における振動型カルマン渦流量計は、その渦発生体を振動させることにより、該渦発生体から発生する渦を安定して発生し易く構成できるようになる。このため、たとえ、管体内を流れる被計測流体の流れが小さく、レイノルズ数が低い場合でも強いカルマン渦を発生させることができ、測定流量範囲を拡大させたカルマン渦流量計を得ることができる。
【0067】
上述した各実施例はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施例での効果を単独であるいは相乗して奏することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明による振動型カルマン渦流量計の一実施例を示す要部構成図である。
【図2】本発明による振動型カルマン渦流量計の一実施例を示す全体構成図である。
【図3】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図4】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図5】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す全体構成図である。
【図6】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図7】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図8】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図9】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図10】本発明による振動型カルマン渦流量計の他の実施例を示す要部構成図である。
【図11】渦流量計のストローハル数とレイノルズ数の関係を示す図である。
【図12】レイノルズ数が2×104以下の場合におけるカルマン渦の発生の状態を示す図である。
【図13】レイノルズ数が2×104以上の場合におけるカルマン渦の発生の状態を示す図である。
【図14】レイノルズ数が2×104以下であって渦発生体が静止してる場合におけるカルマン渦の発生の状態を示す図である。
【図15】レイノルズ数が2×104以下であって渦発生体を振動させた場合におけるカルマン渦の発生の状態を示す図である。
【図16】レイノルズ数が2×104以下であって渦発生体を振動させた場合におけるカルマン渦の発生の状態を示す図である。
【図17】渦発生体を流れ方向に振動させた場合のカルマン渦列の状態を示した図である。
【図18】渦発生体を流れ方向と直交する方向に振動させた場合のカルマン渦列の状態を示した図である。
【図19】渦発生体に振動子を備え、該振動子を駆動させた場合のカルマン渦の発生の状態を示した図である。
【図20】渦発生体に振動子を備える代わりに流れ方向に振動させた場合のカルマン渦の発生の状態を示した図である。
【符号の説明】
【0069】
1……管体、2……渦発生体、2a……バイパス通路、2A……主表面、2B……斜面、2C……側面、3……ステム、4……ケース、5……検知器、6……通路、7……変換器、9……振動子、10……駆動機構、11……プランジャ、12……電磁石、12A……第1電磁石、12B……第2電磁石、2m、2m’2n、2n’……板材、2s、2s’……圧電素子、OJ……物体、VR……渦、KV……カルマン渦。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを備えるものであって、
該渦発生体の表面に振動子を備えてなることを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【請求項2】
前記渦発生体は柱状をなし、少なくとも、前記被計測流体の流れと直交する平面と、該平面の両側においてそれぞれ該被計測流体の当初の流れ方向に対しその流れの距離に応じて離間して配置される斜面とを有し、前記振動子は前記平面と斜面の間に形成された側面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型カルマン渦流量計。
【請求項3】
前記渦発生体は柱状をなし、少なくとも、前記被計測流体の流れと直交する平面と、該平面の両側においてそれぞれ該被計測流体の当初の流れ方向に対してその流れの距離に応じて離間して配置される斜面とを有し、前記振動子は前記斜面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型カルマン渦流量計。
【請求項4】
前記振動子はピエゾ素子等の圧電素子であることを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の振動型カルマン渦流量計。
【請求項5】
被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
該渦発生体を振動させる駆動機構が備えられていることを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【請求項6】
前記渦発生体の振動は、被計測流体の流れに直交する平面内であって、該渦発生体の長手方向と直交する方向の振動であることを特徴とする請求項5に記載の振動型カルマン渦流量計。
【請求項7】
前記渦発生体の振動は、被計測流体の流れ方向の振動であることを特徴とする請求項5に記載の振動型カルマン渦流量計。
【請求項8】
被計測流体が流れる管体内に軸体状からなる渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器と有するものであって、
該渦発生体をその軸の回りに振動させる駆動機構が備えられていることを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【請求項9】
被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は被計測流体の流れに直交する面内に配置されるリング形状をなし、該リング形状の中心を通る一の径方向とこの一の径方向に直交する他の径方向に、それぞれ中心に向かう力と中心から離れる力が加わり、これらの力は交互に変化して該渦発生体に振動がなされることを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【請求項10】
被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は振動子を間に介在させて配置させた一対の板材を有し、前記振動子の駆動によって、少なくとも一方の板材は他方の板材に対して振動することを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【請求項11】
被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体による発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は前記管体に固定され振動子を間に介在させて配置された一対の板材を有し、前記振動子はその駆動によって前記一対の板材に当接する面と異なる面がその垂直方向に振動することを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【請求項1】
被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを備えるものであって、
該渦発生体の表面に振動子を備えてなることを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【請求項2】
前記渦発生体は柱状をなし、少なくとも、前記被計測流体の流れと直交する平面と、該平面の両側においてそれぞれ該被計測流体の当初の流れ方向に対しその流れの距離に応じて離間して配置される斜面とを有し、前記振動子は前記平面と斜面の間に形成された側面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型カルマン渦流量計。
【請求項3】
前記渦発生体は柱状をなし、少なくとも、前記被計測流体の流れと直交する平面と、該平面の両側においてそれぞれ該被計測流体の当初の流れ方向に対してその流れの距離に応じて離間して配置される斜面とを有し、前記振動子は前記斜面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型カルマン渦流量計。
【請求項4】
前記振動子はピエゾ素子等の圧電素子であることを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の振動型カルマン渦流量計。
【請求項5】
被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
該渦発生体を振動させる駆動機構が備えられていることを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【請求項6】
前記渦発生体の振動は、被計測流体の流れに直交する平面内であって、該渦発生体の長手方向と直交する方向の振動であることを特徴とする請求項5に記載の振動型カルマン渦流量計。
【請求項7】
前記渦発生体の振動は、被計測流体の流れ方向の振動であることを特徴とする請求項5に記載の振動型カルマン渦流量計。
【請求項8】
被計測流体が流れる管体内に軸体状からなる渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器と有するものであって、
該渦発生体をその軸の回りに振動させる駆動機構が備えられていることを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【請求項9】
被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は被計測流体の流れに直交する面内に配置されるリング形状をなし、該リング形状の中心を通る一の径方向とこの一の径方向に直交する他の径方向に、それぞれ中心に向かう力と中心から離れる力が加わり、これらの力は交互に変化して該渦発生体に振動がなされることを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【請求項10】
被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体により発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は振動子を間に介在させて配置させた一対の板材を有し、前記振動子の駆動によって、少なくとも一方の板材は他方の板材に対して振動することを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【請求項11】
被計測流体が流れる管体内に渦発生体とこの渦発生体による発生した渦の周波数を検出する検出器とを有するものであって、
前記渦発生体は前記管体に固定され振動子を間に介在させて配置された一対の板材を有し、前記振動子はその駆動によって前記一対の板材に当接する面と異なる面がその垂直方向に振動することを特徴とする振動型カルマン渦流量計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−101284(P2007−101284A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289607(P2005−289607)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
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