説明

振動装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は板ばねを電磁コイルで吸引して振動させる振動装置に関する。
【0002】
【従来の技術と解決しようとする課題】例えば、組合せ型の計量装置では、複数の計量部へそれぞれ物品を供給するために、図7に示すような物品搬送用の振動装置(電磁フィーダ)が用いられている。
【0003】設置面1に固定されるこの振動装置10の基台11の前後には、基台11に対して傾斜した2枚の板ばね12、13の下端部12a、13aが固定されている。
【0004】板ばね12、13の上端部12b、13bは、基台11と平行な連結板14で連結されており、この連結板14の上方には、その上面14aに突設された支持軸15によって支持された搬送板16が配置されている。
【0005】前方側の板ばね12の裏面12cには、鉄片17が固定され、この鉄片17に対向する位置には、基台11上に突出された支持部材18によって支持された電磁コイル19が配置されている。この電磁コイル19を励磁するための駆動電源20は、供給指令信号Aを受けると、電磁コイル19に所定周波数の脈流電流を所定時間供給する。
【0006】したがって、この駆動電源の半サイクル期間に電磁コイル19側に吸引された板ばね12は、次の半サイクルに、そのばね定数に応じた振幅で電磁コイル19と反対の方向へ振れるため、搬送板16上の物品Wは、矢印B方向に振動しながら搬送板16の先端16a側から落下排出され、所定時間分の物品が下方の計量部(図示せず)に連続的に供給されることになる。
【0007】駆動電源20の周波数は、少ない電力で大きな振動振幅を得るために、この振動装置10の機械系の固有振動数f0 に対して僅かに(数Hz)ずれた周波数が用いられている。
【0008】図8は、駆動電源の周波数に対する振動振幅の変化特性を示す図であり、固有周波数f0 から数Hz離れた周波数fd を中心にして電源周波数を可変すれば、電源電圧が一定であっても振動振幅を所定の範囲で可変することができる。また、電源電圧を可変しても振動振幅の可変ができるため、従来は、搬送する物品を所定時間内にほぼ所定量だけ搬送できる振動振幅となるように、この電源周波数および電源電圧を手動調整していた。
【0009】しかしながら、板ばね12、13のばね定数の経時変化により、この搬送状態を長期間一定に維持することは困難であり、一度決定した電源周波数や電源電圧の値も定期的に再調整しなければならないという煩わしさがあった。また、物品の搬送量をみることで間接的に振動振幅を調整しているため、搬送量の変動が、実際にこの振動搬送装置10の振動振幅の変化によるものなのか、他の原因(物品自身の影響あるいはその供給状況の影響等)によるものなのかを判別できず、誤った調整を行うこともあった。本発明はこの課題を解決した振動装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために本発明の振動装置は、周波数可変の駆動電源によって電磁コイルを励磁して板ばねを所定方向に振動させる振動装置であって、前記板ばねの振動を電気信号に変換する振動センサと、所定の信号を受ける毎に起動して前記電磁コイルに前記駆動電源を一定時間供給させる第1のタイマ回路と、前記第1のタイマ回路の動作が終了したときから一定時間作動する第2のタイマ回路と、前記第2のタイマ回路が作動している間に前記振動センサから出力される電気信号を計数するカウンタと、前記カウンタの計数結果から前記板ばねの固有振動数を算出する固有振動算出手段と、前記駆動電源の次回駆動時の電源周波数が、前記固有振動算出手段によって算出された固有振動数から所定周波数だけ離調した周波数と等しくなるように制御する電源周波数制御手段とを備えている。
【0011】
【作用】このように構成したため、本発明の振動装置では、第1のタイマ回路によって電磁コイルに駆動電源が一定時間供給された直後から第2のタイマ回路が作動し、第2のタイマ回路が作動している間の板ばねの振動数が計数され、その計数結果から固有振動数が算出され、駆動電源の次回駆動時の電源周波数が、算出された固有振動数から所定周波数だけ離調した周波数となるように制御される。
【0012】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の一実施例を説明する。図1は、一実施例の物品搬送用の振動装置30の構成を示す図であり、前述の振動装置10と同一のものには同一符号を付して説明を省略する。
【0013】この振動装置30の板ばね13の裏面13cには、その振動に影響を与えない小型棒状の永久磁石31の一端31aが固定されている。この永久磁石31にはは、基台11上に突設されたコイル支持部材32に支持されたコイル33が近接されている。
【0014】この永久磁石31とコイル33は振動センサを構成し、板ばね13の振動中は、その振動の大きさに比例した振幅でその振動周波数に等しい交流信号がコイル33に誘起される。
【0015】電磁コイル19は、商用電源35を整流し、後述する電源制御回路40から指定された電源周波数fd の脈流を出力するインバータ電源36に接続されている。
【0016】電源制御回路40は、このインバータ電源36による電磁コイル19への電源供給が停止した直後の板ばね13の振動(固有振動)に応じたコイル33からの信号に基づいて、インバータ電源36に設定する電源周波数を決定する。
【0017】この電源制御回路40には、外部からの供給指令信号Aで起動される第1のタイマ回路41が設けられている。この第1のタイマ回路41は、供給指令信号Aの立ち上がりから、振動時間設定回路42に設定された時間T1の間Hレベルのパルスを第2のタイマ回路43およびインバータ電源36に出力する。
【0018】第2のタイマ回路43は、第1のタイマ回路41からのパルス信号の立ち下がりから、T1 より短い所定時間T2 だけHレベルのパルスを、アンド回路44およびセットパルス発生回路45に出力する。このセットパルス発生回路45は、第2のタイマ回路43からのパルスの立ち下がりから僅かに遅延したセットパルスを出力する。
【0019】一方、コイル33に誘起される信号は、波形整形回路46でパルス信号に整形され、アンド回路44に入力される。
【0020】アンド回路44の出力はカウンタ47に入力されており、このカウンタ47は、T2 時間中に波形整形回路46から出力されるパルス信号を計数し、この計数結果を演算器48に出力する。
【0021】演算器48は、カウンタ47からの計数結果をT2 で除算した値と、離調周波数設定器49に予め設定されている所定の離調周波数Δfとを加算し、その加算結果を周波数データメモリ50に出力する。
【0022】この周波数データメモリ50は、セットパルスを受ける毎に演算器48の出力値を、インバータ電源36に対する電源周波数fd として記憶する。
【0023】したがって、例えば図2の(a)に示すように供給指令信号Aがt1 時に入力されると、第1のタイマ回路41の出力が同図の(b)に示すようにT1 時間Hレベルとなり、この間電磁コイル19には、周波数データメモリ50に記憶されている周波数fd1の脈流電源が供給され、板ばね12、13はこの周波数で強制的に振動する。
【0024】このため、コイル33には、同図の(c)に示すように周波数fd1の信号が誘起される。
【0025】t1 時からT1 時間経過したt2 時には、第1のタイマ回路41の出力がLレベルとなり、この時から第2のタイマ回路43の出力は、同図の(d)に示すように、T2 時間Hレベルとなる。
【0026】また、このt1 時から板ばね12、13は、強制振動からこの機械系の固有振動数f0 で減衰振動し、コイル33に誘起される信号も、同図の(c)に示すように周波数f0 で減衰振動する。
【0027】したがって、カウンタ47には、固有振動数と等しい周波数のパルスがt2 時からT2 時間経過したt3 時まで入力されることになる。
【0028】この計数結果は演算器48において、T2 で除算されて、固有振動数f0 が算出され、この振動数に離調周波数Δfが加算された値が次の強制振動時の電源周波数fd2として、周波数データメモリ50に出力される。
【0029】周波数データメモリ50は、演算器48からのデータを、同図の(e)に示すようにt3 時から僅かに遅延して入力されるセットパルスを受けたときに記憶する。
【0030】このため、t4 時に次の供給指令信号Aが入力されると、インバータ電源36からは、周波数fd2の脈流電源が電磁コイル19にT1 時間供給され、この電源供給が停止したt5 時直後の固有振動数f1 が検出され、その振動数に離調周波数が加算された値fd3が次の強制振動時の電源周波数としてt6 時の直後に周波数データメモリ50にセットされる。
【0031】以上の動作は、供給指令信号Aが入力される毎になされるため、例えば、図3に示すように、板ばね12、13のばね定数が変化して、機械系の固有振動数がf0 からf1 にずれたとしても、このずれ方向と同一方向に電源周波数もfd1からfd2に追従変化するため、振動振幅はほとんど変化せず、常に一定の振動振幅S1 で物品の搬送がなされることになる。
【0032】
【他の実施例】また、この機械系の構造によっては、図4R>4に示すように固有振動数の変化にともなってその共振特性が変化する場合もある。即ち、固有振動数f0 から離調周波数Δfだけ高い電源周波数fd1時の振動振幅S1 と、固有振動数f1 から離調周波数Δfだけ高い電源周波数fd2時の振動振幅S2 に無視できない差があり、前記実施例のような電源周波数の可変制御だけでは、振動振幅を完全に安定化できない場合もある。
【0033】図5は、電源周波数と電源電圧とを可変制御して振動振幅をより厳密に安定化する電源制御回路55の構成を示している。
【0034】この電源制御回路55は、前述の振動時間設定回路42、波形整形回路46およびコイル33に誘起される信号のピーク値を保持するピークホールド回路56からの信号を受けたマイクロコンピュータ構成の演算処理回路57により、インバータ電源36に対する周波数および電源電圧の指定を行う。
【0035】図6は、この演算処理回路57の処理手順を示すフローチャートであり、以下このフローチャートに基づいてこの電源制御回路55の動作を説明する。
【0036】始めにインバータ電源36に対する電源周波数f0 、電源電圧V0 が初期設定され、供給指令信号Aの入力待ち状態となる(ステップ1、2)。
【0037】供給指令信号Aが入力されると、ピークホールド回路56がリセットされ、インバータ電源36に対してT1 時間の供給信号が出力される(ステップ3、4)。この間電磁コイル19には周波数f0 、電圧V0 の脈流電源が供給され、板ばね12、13が強制振動する。
【0038】この強制振動が停止すると、波形整形回路46からの信号に基づいて固有振動数f0 が検出され、その検出値が前回の検出値に対して変化しているか否かが判定される(ステップ5、6)。ここで検出値が変化している場合は、この変化方向に対応した電源周波数の更新処理が前記実施例と同様になされる(ステップ7)。
【0039】また、固有振動数が変化していない場合は、ピークホールド回路56に保持されている値が、所定値に対して変化しているか否かが判定され、変化が認められなければ、ステップ2に戻る(ステップ8)。保持値の変化が認められる場合は、次の強制振動時にコイル33に誘起される電圧が所定値に近づく方向に所定量だけ電源電圧が更新される(ステップ9)。
【0040】この処理によれば、図4に示したように固有振動数の変動に伴ってその共振特性が変化する場合でも、電源周波数および電源電圧の可変制御により、振動振幅を安定化することができる。
【0041】なお、前記実施例では、強制振動時にコイル33に誘起される信号の大きさに基づいて電源電圧を可変制御していたが、電源供給が停止した直後の固有振動時の誘起電圧に基づいて電源電圧を可変するようにしてもよい。
【0042】また、前記実施例では、電磁コイル19で吸引される板ばね12に連結された板ばね13の振動を、永久磁石31とコイル33で構成される振動センサによって検出するようにしていたが、板ばね12側に振動センサを設けてもよく、コイル側を板ばねに固定し、永久磁石31を基台11に固定してもよい。また、電磁誘導型の振動センサでなく圧電型のセンサを用いてもよい。
【0043】また、前記実施例では、物品搬送用の振動装置について説明したが、他の電磁振動式の振動装置についても同様に適用できる。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の振動装置は、電磁コイルによって強制振動される板ばねの振動を振動センサで検出し、この電気信号に基づいて強制振動時の板ばねの振動振幅が一定となる方向に電磁コイルへ供給される電源周波数または電源電圧を可変制御するように構成されているため、板ばねの経時変化等による振動振幅の変動がなく、常に一定振幅の振動状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の振動装置の構成を示す図である。
【図2】一実施例の動作を説明するためのタイミング図である。
【図3】一実施例の動作を説明するための共振特性図である。
【図4】本発明の他の実施例の動作を説明するための共振特性図である。
【図5】本発明の他の実施例の構成を示す図である。
【図6】他の実施例の要部の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】従来装置の構成を示す図である。
【図8】従来装置の動作を説明するための共振特性図である。
【符号の説明】
11 基台
12、13 板ばね
14 連結板
16 搬送板
17 鉄片
19 電磁コイル
30 振動装置
31 永久磁石
33 コイル
35 商用電源
36 インバータ電源
40 電源制御回路
41 第1のタイマ回路
43 第2のタイマ回路
45 セットパルス発生回路
46 波形整形回路
47 カウンタ
48 演算器
49 離調周波数設定器
50 周波数データメモリ
55 電源制御回路
56 ピークホールド回路
57 演算処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】周波数可変の駆動電源によって電磁コイルを励磁して板ばねを所定方向に振動させる振動装置であって、前記板ばねの振動を電気信号に変換する振動センサと、所定の信号を受ける毎に起動して前記電磁コイルに前記駆動電源を一定時間供給させる第1のタイマ回路と、前記第1のタイマ回路の動作が終了したときから一定時間作動する第2のタイマ回路と、前記第2のタイマ回路が作動している間に前記振動センサから出力される電気信号を計数するカウンタと、前記カウンタの計数結果から前記板ばねの固有振動数を算出する固有振動算出手段と、前記駆動電源の次回駆動時の電源周波数が、前記固有振動算出手段によって算出された固有振動数から所定周波数だけ離調した周波数と等しくなるように制御する電源周波数制御手段とを備えたことを特徴とする振動装置。
【請求項2】前記駆動電源が前記電磁コイルに供給される毎に前記振動センサから出力される電気信号のピーク値を検出するピークホールド回路と、前記ピークホールド回路で検出されたピーク値が前回検出されたピーク値に対してして変化しているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によってピーク値の変化が検出されたとき、該ピーク値の変化に応じて前記駆動電源の次回駆動時の電圧を可変させる電源電圧制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の振動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図7】
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【図6】
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【特許番号】第2879267号
【登録日】平成11年(1999)1月29日
【発行日】平成11年(1999)4月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−53883
【出願日】平成3年(1991)2月26日
【公開番号】特開平4−271874
【公開日】平成4年(1992)9月28日
【審査請求日】平成8年(1996)11月25日
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【参考文献】
【文献】実開 昭48−105288(JP,U)
【文献】特公 昭49−45279(JP,B1)