説明

捺染可能なアラミド混紡織物

本発明は、経糸系および緯糸系を備えた織物に関する。経糸系はアラミド繊維を含む少なくとも1種類の難燃糸を含み、また緯糸系は少なくとも1種類の二重構造糸を含む。経糸系の難燃糸は、少なくとも70%の緯糸系によって覆われる。
本発明による織物は、インク受容表面および熱防護表面を有し、かつその緯糸および経糸系の構造と使用される材料とのせいで、特にすぐれた機械的性質、難燃性、および捺染性を有し、戦闘服の調製に特に有用である。さらに、本発明によるこの織物はまた、ことのほか耐摩耗性であり、織物上の捺染画像の退色を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡織繊維の応用分野、具体的には難燃性紡織繊維の応用分野に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、軍において使用され、戦闘戦域の潜在的な脅威、例えば銃弾の脅威、化学的脅威、または熱的脅威から着用者を防護する多くの機能性衣服が入手可能である。しかしながら軍事用途でのこれらの衣服の使用は、それらが提供する専ら特定の目的のための防護に加えて更なる要求事項を付与する。例えば軍用戦闘服の彩色および迷彩模様は、現地においてその着用者を識別するため、およびカムフラージュするための両方で施され、戦闘服の不可欠の特徴である。
【0003】
戦闘服の織物は、一般には綿、ポリエステル、および/またはナイロン繊維のステープルブレンドから作られた糸から製織される。この繊維の選択は何よりもまず酸とバット染料の組合せを使用する浸染および捺染を助けて、可視および近赤外の両方に対するカムフラージュ防護を与える迷彩模様を付与する。この綿および/またはポリエステル繊維の混紡繊維糸は、軽量で薄い織物構造と相まって20年超の間ずっと、軍に勤務する人に常に防護性、快適性、耐久性、および耐UV性を与えてきた。伝統的に軍用戦闘服、特に歩兵戦闘服は、焼夷性脅威および/または熱的脅威に対する防護を施す必要がなかった。しかしながら、最近では平和維持軍は、発火装置、火炎瓶、および/または急造爆破装置(IED)などの火力に頼る脅威の量の増加に直面しなければならなくなった。
【0004】
着用するのに軽量かつ快適であると同時に、火の脅威に対してすぐれた防護を与えるアラミド繊維などの難燃繊維から衣服を製造することが今日では可能である。このような防護用衣服の例は、とりわけ米国特許第A7402538号明細書、米国特許出願公開第A2006/0035553号明細書、または欧州特許第A1796492号明細書の中に見出すことができる。しかしながら、アラミド繊維に伴う周知の問題は、それらがインクまたは顔料を満足のいくようには受け入れないことである。インクまたは顔料は繊維の外面に残留し、その後の着用、洗濯サイクル、および/または摩擦の間に磨滅する可能性がある。次いでインクまたは顔料の摩耗は、派手な白色である中身のアラミド繊維を露呈する。カチオン染料などの幾つかの染料は、良好な耐摩耗性を与えるが、きわめて低い日光堅牢度に苦しむ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの問題は前述の火炎に対する防護効果に影響を与えないが、この摩耗および/または退色は、それに白っぽい色合いを与えることによってカムフラージュの有効性を著しく低下させる。その白っぽい色合いによって着用者の目につきやすさが増加する結果となり、それによってその人が見つかり、交戦となる確率が増す。したがって難燃性であるが、同時にまた容易に捺染可能であり、かつ効果的カムフラージュを保証するなどの厳しい条件においてさえ、一様な完全性の視覚的側面を維持する衣服を提供したいという強い願望がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、経糸系と緯糸系を含む織物に関する。経糸系は、メタ−アラミド繊維、パラ−アラミド繊維、および/またはこれらの組合せを意味するアラミド繊維を含む少なくとも1種類の難燃糸を含み、緯糸系は、少なくとも1種類の二重構造糸(core spun yarn)を含む。経糸系の難燃糸は、緯糸系の二重構造糸を意味する緯糸系の少なくとも70%によって覆われる。
【0007】
本発明による織物は、インク受容表面および熱防護表面を有し、かつその緯糸および経糸系の構造と使用される材料とのせいで、特にすぐれた機械的性質、難燃性、および捺染性を有し、戦闘服の調製に特に有用である。さらに、本発明によるこの織物はまた、ことのほか耐摩耗性であり、織物上のプリント画像の退色を防ぐ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明による織物は、経糸系と緯糸系を含む織物である。この織物は、その緯糸および経糸系の構造とその中で使用される材料とのせいで、特にすぐれた機械的性質、難燃性、および捺染性を与え、機能性衣服の調製において使用される織り組織(weave)にとって有用である。
【0009】
本発明の緯糸系は、芯および鞘を有する少なくとも1種類の二重構造糸を含み、その芯は少なくとも1種類の機械的耐久性のある繊維材料から作られ、またその鞘は少なくとも1種類の非熱可塑性繊維材料を含む。「機械的耐久性のある繊維材料」とは、23cN/テックスを超えるテナシティを有する繊維を意味する。本発明による織物の特定の織り組織によれば、着用者から見て外方に向き、かつその織物を含有する衣服の外面を形成する織物の面は、織物に良好な捺染性、熱防護性、耐摩耗性、および機械的耐久性を付与する二重構造糸を備える。
【0010】
緯糸系は、少なくとも1種類の二重構造糸を含み、その芯は、ポリ(フェニレンスルフィドスルホン)、アラミド、アクリル、エラスタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、および/またはそれらの組合せから作られた繊維を含む。より好ましくはその芯は、ポリエステル繊維および/またはエラスタン繊維を含む。
【0011】
芯は、モノフィラメント、マルチフィラメント(multiple filament)、紡績糸、および/またはその複合糸の形態であることができる。好ましくは芯は合成ポリマーから作られ、マルチフィラメントの形態である。
【0012】
緯糸系は、二重構造糸を含み、その鞘は、少なくとも1種類の非熱可塑性繊維材料を含む。好ましい非熱可塑性繊維材料には、天然材料と、それから誘導され、融解せずかつ容易に深い色合いに染色可能な材料とが挙げられる。
【0013】
二重構造糸の鞘は、少なくとも1種類の熱可塑性繊維材料をさらに含むことができる。二重構造糸の鞘がこのような追加の熱可塑性繊維材料を含有する場合、二重構造糸中の追加の熱可塑性繊維材料の量は、非熱可塑性繊維材料の量が二重構造糸の熱可塑性繊維材料の量よりも少なくとも1.5倍多い、好ましくは1.5〜10倍多いような範囲であることができる。
【0014】
非熱可塑性繊維材料は、セルロース、ビスコース、変性セルロース、モドアクリル、アクリル、および/またはこれらの組合せの中から選択することができる。好ましくは非熱可塑性繊維材料は、ビスコースおよび/または変性セルロースである。
【0015】
熱可塑性繊維材料は、ポリアミド、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、および/またはこれらの組合せの中から選択することができる。好ましくは熱可塑性繊維材料は、ポリエステルおよび/またはポリアミドである。
【0016】
二重構造糸の鞘は、さらに難燃剤、静電防止剤、抗菌剤、消臭剤、蚊忌避剤、および/またはこれらの組合せなどの添加剤を当業界で知られている量で含むことができる。
【0017】
難燃剤は、臭素化難燃剤、赤燐、石綿、三酸化アンチモン、ホウ酸塩、金属水和物、金属水酸化物、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩、フルオロカーボン、および/またはこれらの組合せの中から選択することができる。静電防止剤は、炭素繊維および/または金属繊維の中から選択することができる。抗菌剤は、抗生物質、銀、銅、亜鉛、および/またはこれらの組合せの中から選択することができる。消臭剤および蚊忌避剤は、当業界で知られている。
【0018】
二重構造糸は、当業界で一般に知られている適切な方法、例えばこれらに限定されないがサイロコア紡績(siro−core spinning)、DREF紡績、またはその芯糸の全体を鞘の個々の繊維で実質上覆う任意の方法によって得ることができる。サイロコア紡績は、例えば国際公開第A2005028722号パンフレットに記載されている。DREF紡績は、例えば米国特許第4,107,909号、第4,249,368号、および第4,327,545号各明細書に記載されている。
【0019】
本発明による経糸系は、アラミド繊維を含む少なくとも1種類の難燃繊維を含む。本発明による織物の特定の織り組織によれば、着用者に面する織物の面が、織物にすぐれた熱防護性および機械的耐久性を付与する難燃繊維を含む。
【0020】
難燃糸のアラミド繊維は、メタ−アラミド繊維、パラ−アラミド繊維、および/またはこれらの組合せであることができる。
【0021】
好ましくは経糸系は、経糸系の総重量を基準にして、少なくとも30重量%、好ましくは60〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%のメタ−アラミド繊維を含む。
【0022】
この経糸系の難燃糸をさらに、難燃性セルロース系材料、例えば難燃性の綿、レーヨン、またはアセテートから作られる繊維、および/または難燃性羊毛、難燃性のポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリ硫黄、ポリクラール、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリオレフィン、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、炭素、モドアクリル、メラミン、または当業界で知られている他の適切な難燃材料から作られる繊維、および/またはそれらの混紡繊維と混ぜることもできる。
【0023】
さらに経糸系の糸は、炭素繊維、銀繊維、銀で被覆した繊維、銀を添加した繊維、および/またはポリアミド6.6繊維などの他の繊維を含むこともできる。
【0024】
このような更なる混紡繊維およびそのような他の繊維の量は、経糸系の総重量を基準にして0〜70重量%、好ましくは0.1〜50重量%の範囲であることができる。
【0025】
この経糸系の糸は、当業界で知られている方法により染色して緯糸系に背景色を与えることができる。
【0026】
本発明による織物は、経糸系の難燃糸に対する高い被覆率を有することができる。それは、経糸系の難燃糸が少なくとも70%の緯糸系によって、好ましくは75〜95%の緯糸系によって、より好ましくは75〜85%の緯糸系によって覆われることを意味する。
【0027】
例えば、本発明による織物における80%の被覆度はまた、例えば用語4/1織り組織によって記述することもできる。分子4は、その織り組織中で緯糸によって覆われる経糸の数を示し、また分母1は、その織り組織中で緯糸が下を進む経糸の数を示す。少なくとも70%の被覆率は、例えば4/1織り組織に対応することができ、また少なくとも70%の被覆率が達成される限り、例えば5/1織り組織、6/1織り組織、8/2織り組織、および他の番号が付けられた織り組織に対応することができる。この割合は、100倍した分子を分母と分子の和で割ることにより計算される。例えば5/1織り組織の場合、被覆率は、5×100/(1+5)=83.33%である。
【0028】
熱的事象の場合、本発明による織物は驚くべき熱防護特性を示す。これらの傑出した熱防護特性は、本発明による織物中の材料の特殊な組合せによってもたらされる。火炎が本発明による織物の緯糸系を襲う場合、織物中の二重構造糸の少なくとも1種類の非熱可塑性繊維材料とこの更なる繊維材料との組合せが、繊維材料の融解の発生を防止することを可能にする。さらに、二重構造糸におけるこの少なくとも1種類の非熱可塑性繊維材料の熱可塑性繊維材料との組合せの場合、その緯糸系は引火がより少ない傾向にあるはずであり、また溶融した繊維材料が経糸系中に染み込み、着用者の皮膚と接触して火傷を引き起こす恐れもないはずである。
【0029】
本発明による織物は、機能性衣服の調製に使用される織り組織にとって特に有用である。
【0030】
本発明による織物の織り組織は、斜文織りおよび/または朱子織りである。最も好ましくは織り組織は朱子織りである。本発明による織物の織り組織は、経糸系の大部分をその織物の片方の面に有するがゆえに、緯糸系の大部分は織物の他方の面に現れることになる。これは、インク受容表面、すなわちインクを受容することができる片面を有する一方で、他方の側または表面が本発明による熱防護を与える本発明による織物を製造することを可能にする。したがってインク受容表面は緯糸系によって与えられ、一方、熱防護表面は、主として緯糸系によって与えられる。
【0031】
本発明による織物の織り組織は、好ましくはリップストップ補強によって強化される。これは、経糸および緯糸におけるリップストップ織り組織の図柄によるか、または、例えばポリアミド、パラ−アラミド、ポリエステル、ポリプロピレン、および/またはこれらの組合せから作ることができる補強スレッドにより達成することができる。リップストップは、織り組織の順序をドブリング(dobbling)するか、または織り組織の型を、例えば10本の糸に対する3/1から次の2本の糸に対する2/2に変えることによって作ることができる。これは、織物の引裂強さを劇的に向上させる。
【0032】
リップストップ織り組織の図柄を使用する場合、その経糸のスレッドが織物の表面に現れる可能性がある。しかしながら本発明による織物の経糸のスレッドは、化学組成、したがって色堅牢度が緯糸のスレッドと異なるので、リップストップ織り組織の図柄のせいで現れる可能性のある経糸のスレッドを緯糸のスレッドと取り換えることが好ましい。リップストップ織り組織の図柄を使用する場合、経糸の全スレッドの10%までを緯糸のスレッドと同じ材料で作られた経糸のスレッドによって置き換えることができる。
【0033】
本発明の織物は、織布のインク受容表面が衣服の外面に位置付けられて使用される場合、衣服の直接捺染との併用で、とりわけ軍事用途にとっては特に有用である可能性がある。実際には戦闘服の迷彩模様は、所与の戦域で最高のカムフラージュを保証するために、例えばUAV(無人機)によって撮影された写真に基づいて特別なやり方で計算される可能性がある。次いでこの計算された迷彩模様を、本発明の織物上に直接に捺染して、最高のカムフラージュを与える、戦域にカスタマイズされた難燃戦闘服を製造することができる。
【0034】
本発明による織物は、当業界で知られている方法で着色し、染色し、捺染することができる。方法には、これらに限定されないがスクリーン捺染、インクジェット捺染、ローラー捺染またはデジタルテキスタイルプリンティング、衣服の直接捺染、および/またはこれらの組合せが挙げられる。
【0035】
本発明を下記の実施例においてさらに述べる。これらの実施例は例示の目的でのみ与えられることを理解されたい。
【実施例】
【0036】
実施例1
二重構造糸の調製
61dtexの線密度を有する高テナシティのかさ高加工ポリエステルコア糸を、エラスタンコア紡績に一般に使用される一組の送込み設定のロールを備えたリング精紡機で調製した。Lenzing FRの名称で市販されている2.2dtexの線密度および50mmの繊維長を有するViscose FRを79%と、3.3dtexの線密度および50mm(繊維長)を有するポリアミド6.6を20%と、SmartfiberAGからSmartcel生体活性繊維の名称で市販されている5%の銀を添加したセルロース繊維を1%とを含有する混紡繊維を調製した。次いでこの調製した混紡繊維を、5000dtex(Nm2.0)の線密度を有する2本のスライバーに仕上げた。このサイロコア紡績糸を、糸駆動制御システムを用いて16m/分の速度で強制送りした。糸駆動制御システムは、ゴムで被覆した金属製ロールを支持し、前記速度で駆動される一組のロールからなる。最終的には、芯としてのかさ高加工ポリエステルの高テナシティフィラメントと、この調製した混紡繊維とを有する、結果として得られる複合二重構造糸は、400dtex(Nm25/1)の最終番手を有した。
【0037】
実施例2
本発明による織物の調製
次に、このこうして得られた複合サイロコア紡績糸を緯糸に使用し、2.2dtexの線密度を有するメタ−アラミド繊維93%と、1.7dtexの線密度を有するパラ−アラミド繊維5%と、InvistaによってP−140の名称で市販されている3.3dtexの線密度を有する静電防止炭素繊維2%とからなるE.I.du Pont de Nemours & CompanyからN324の名称で市販されている200dtex(Nm100/2)の最終番手を有するNomex(登録商標)紡績糸から作られた経糸と組み合わせた。
【0038】
この織物構造は、経糸が1cm当たり41本のNomex(登録商標)紡績糸を有し、緯糸が1cm当たり35本の複合サイロスパン糸を有する朱子5/1であった。織機段階の織物は、243g/m2の表面密度および約83%の被覆率を有した。
【0039】
次いで染色用混合物を用いてこの織物を回転捺染機上で捺染した。混合物は、6重量%のアクリル系結合剤を伴う93.4重量%のVAT染料および0.6重量%の顔料からなった。次いで織物上のプリント模様をスチームチャンバ内で150℃で熱により固定した。次いでこの捺染した織物をアルカリ還元のステップでさらに処理し、その後105℃で動作する垂直スチーマ中でVAT染料を顕色させ、続いて酸性過酸化物による酸化のステップで処理して還元反応を反転させた。最後に、この捺染した織物を洗浄し、乾燥し、サンフォライズ加工した。
【0040】
実施例3
試験および結果
次いでこの捺染した織物を、ISO 13934−1:1999に準拠して破壊強度および破壊伸度について、ISO 13937−2:2000に準拠して引裂強さについて、EN 367:1993に準拠して火炎への暴露時の熱伝達について、ISO 15025:2000に準拠して火炎伝播について、ISO 6942:2002(方法B)に準拠して輻射熱への暴露時の熱伝達について、NFPA 1971(2007版)の条項8.10に準拠して火炎と輻射熱の両方への暴露時の熱伝達について、EN ISO 12945−2 2000に準拠してマーチンデールピリングについて、EN ISO 12947−2 1998に準拠してマーチンデール摩耗について、ISO 150E04に準拠して汗堅牢度について、ISO 150C03 60℃ IIIに準拠して洗濯堅牢度について、ISO 105B02*に準拠して日光堅牢度について、またISO 9237に準拠して通気度について試験した。
【0041】
結果を表1〜9に示す。表1は、本発明による捺染織物の最大の力における伸びを示す。最大の力における伸びは、経糸方向で30.3%であり、緯糸方向で22.1%であった。
【0042】
【表1】

【0043】
表2は、本発明による捺染織物の破壊強度および引裂強さを示す。破壊強度は、経糸方向で1250N、緯糸方向で1280Nであった。引裂強さは、経糸方向で28.5N、緯糸方向で32.5Nであった。
【0044】
【表2】

【0045】
表3は、本発明による捺染織物の火炎への暴露時の熱伝達を示す。温度は、12℃上昇するのに3.7秒、全部で24℃上昇するのに5.7秒を要した。
【0046】
【表3】

【0047】
表4は、本発明による捺染織物の限定火炎伝播を示す。本発明による捺染織物は燃焼せず、少しの孔も示さず、デブリの形成もなかった。残炎および残光が0秒間続いた。
【0048】
【表4】

【0049】
表5は、本発明による捺染織物の輻射熱への暴露時の熱伝達を示す。温度は、12℃上昇するのに7.2秒、全部で24℃上昇するのに13.3秒を要した。
【0050】
【表5】

【0051】
表6は、本発明による捺染織物の耐摩耗性を示す。実験は100000サイクル後に停止したが少しの摩耗も目に見えなかった。
【0052】
【表6】

【0053】
表7は、本発明による捺染織物の火炎と輻射熱の両方への暴露時の熱伝達を示す。痛みを告げる時間は5秒であり、第2級火傷までの時間は6秒である。熱束は、11.9カロリー/cm2である。
【0054】
【表7】

【0055】
表8は、本発明による捺染織物の日光堅牢度を0〜8の等級で示す。8が最高得点であり、0が最悪得点である。本発明による織物は、6〜7の日光堅牢度を有する。
【0056】
【表8】

【0057】
表9は、本発明による捺染織物の単位リットル/m2/秒で示した通気度を示す。本発明による捺染織物の通気度は34.6である。
【0058】
【表9】

【0059】
上記結果が示すように本発明による織物は、EN 531またはISO 11612の熱および火炎のレベルA、B1、C1の要求基準を満たす。レベルAは、ISO 15025:2000の手順Aに準拠した限定火炎伝播試験の合格を表す。レベルB1は、EN 367に準拠した火炎への暴露時の熱伝達試験の合格を表す。レベルC1は、ISO 6942:2002の方法Bに準拠した輻射熱への暴露時の熱伝達試験の合格を表す。
【0060】
さらに表8に示す結果は、この織物が迷彩捺染される軍服用としてすぐれていることを裏付ける等級6〜7としての日光堅牢度が、最高得点8に近いことを示している。そのすぐれた機械的性能および耐摩耗性は戦闘服の要求基準を満たしており、また本発明による織物が、他の布地と比べてすぐれた耐摩耗性を与えることを示している。最後に、すぐれた通気性および柔らかな手触りは、着用者に良好な着心地を与える。
【0061】
上記実験は、本発明による織物が、すぐれた摩耗特性を示すと同時に熱および火炎に対する効果的な防護を与えることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物であって、
a.メタ−アラミド繊維、パラ−アラミド繊維、および/またはこれらの組合せを含む少なくとも1種類の難燃糸を含む複数本の糸を含む経糸系と、
b.少なくとも1種類の二重構造糸を含む複数本の糸を含む緯糸系と
を含み、
前記織物が、朱子織りまたは斜文織り組織を有し、かつ前記経糸系の前記難燃糸が前記緯糸系の前記複数本の糸によって少なくとも70%覆われている、
織物。
【請求項2】
前記緯糸系がインク受容表面を提供する、請求項1に記載の織物。
【請求項3】
前記経糸系が、前記経糸系の総重量を基準にして少なくとも30重量%のメタ−アラミド繊維を含む、請求項1または2に記載の織物。
【請求項4】
前記二重構造糸が芯および鞘を有し、前記芯がポリ(フェニレンスルフィドスルホン)、アラミド、アクリル、エラスタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、および/またはこれらの組合せであり、また前記鞘が少なくとも1種類の非熱可塑性繊維材料を含む、請求項1〜3に記載の織物。
【請求項5】
前記芯が、ポリエステル繊維、エラスタン繊維、および/またはこれらの組合せを含む、請求項4に記載の織物。
【請求項6】
前記少なくとも1種類の非熱可塑性繊維材料が、セルロース、ビスコース、変性セルロース、モドアクリル、アクリル、および/またはこれらの組合せの中から選択される、請求項4または5に記載の織物。
【請求項7】
リップストップ補強をさらに備えた請求項1〜6に記載の織物。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の織布を含む防護用衣服。
【請求項9】
前記織布の前記インク受容表面が前記衣服の外面である、請求項8に記載の防護用衣服。
【請求項10】
迷彩捺染を施された請求項9に記載の防護用衣服。

【公表番号】特表2013−510250(P2013−510250A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538029(P2012−538029)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055622
【国際公開番号】WO2011/057073
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】