説明

排気ガス処理装置

【課題】テールパイプとの位置合わせを比較的スムースに行うことのできる排気ガス処理装置を提供する。
【解決手段】排気ガス処理装置1は、気体を吸引可能な吸引装置と、吸引装置の吸引口に連通されるフレキシブルダクト3と、フレキシブルダクト3の先端部が固定される吸込み位置調整台車4とを備え、試験室Rにて性能試験に供される自動車Mから排出された排気ガスを吸引して試験室R外に排出可能に構成されている。吸込み位置調整台車4は、フレキシブルダクト3の先端部に接続される略筒状のフード11と、フード11を支持する本体部12とを備え、本体部12は、キャスター17が取付けられる一対のフレーム13と、一対のフレーム13間を連結するベース板14と、フレーム13から上方に延出するマスト15とを備えている。また、フード11は、マスト15に対して、上下にスライド変位可能に取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験室内で行われる車両試験に際して排出される排気ガスを試験室外に排出する排気ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、空調装置等を備えた試験室において、自動車等の車両の性能試験を行う場合には、車両から排出される排気ガスが試験室内に拡散・充満しないように、排気ガスを試験室外に排出する必要がある。そこで、従来、空気を吸引する吸引装置(送風機、圧縮機)に接続されたダクトの先端にフードを取付けて、当該フードを車両のマフラー(テールパイプ)に近接配置するといった技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4016892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、試験に際して、車両のテールパイプと前記フードとを位置合わせしなければならないが、テールパイプの排気口の位置は、車種毎に、水平方向だけでなく、高さ方向においても異なることが多い。このため、吸引装置とフードとの間がフレキシブルダクトで接続される場合であっても、フードを単に床面に設置するのでは、テールパイプから排出される排気ガスを好適に吸引することができないおそれがある。また、フードの高さを調節するために、フードの下側に支持板を設置することも考えられるが、微調整が難しい上、作業性の低下を招くおそれがある。加えて、フード等が比較的重い場合には、フードを移動させる作業自体が比較的困難なものとなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、テールパイプとの位置合わせを比較的スムースに行うことのできる排気ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0007】
手段1.気体を吸引可能な吸引装置と、前記吸引装置の吸引口に連通されるフレキシブルダクトと、前記フレキシブルダクトの先端部が固定される吸込み位置調整手段とを備え、試験室にて性能試験に供される車両から排出された排気ガスを吸引して試験室外に排出する排気ガス処理装置であって、
前記吸込み位置調整手段は、
前記フレキシブルダクトの先端部に接続される略筒状のフードと、
前記フードを支持する本体部とを備え、
前記本体部は、キャスターが取付けられるベースと、前記ベースから上方に延出するマストとを備え、
前記フードは、前記マストに対して、上下にスライド変位可能に取付けられていることを特徴とする排気ガス処理装置。
【0008】
手段1によれば、吸引装置に連通されたフレキシブルダクトの先端が、キャスター付きの吸込み位置調整手段のフードに固定されている。このため、吸引装置に連通するフードの位置、すなわち、排気ガス処理装置全体としてみた場合の吸い込み口の位置を比較的容易に移動させることができる。さらに、フードの高さ位置を調節可能であるため、テールパイプの排気口の位置とフードの位置とをより確実に合致させることができる。従って、車両から排出された排気ガスをより好適に排気ガス処理装置で吸い込んで試験室外へと排出することができる。
【0009】
手段2.前記キャスターは、少なくとも2個以上がストッパー付きであることを特徴とする手段1に記載の排気ガス処理装置。
【0010】
手段2によれば、試験室に運び込まれた自動車のテールパイプに適合させて前記吸込み位置調整手段を設置した後は、キャスターがストッパーにより固定されるので、例えば、自動車をシャシダイナモメータに載置させて、エンジンを高回転で運転し大排気量を発生させても、テールパイプと吸込み位置調整手段との位置関係が固定されて所定の希釈用試験室内空気量を吸い込め、かつ試験室内への排気ガス漏れを防止することが、移動可能な吸込み位置調整手段で実現できる。
【0011】
手段3.前記キャスターは、前記吸込み位置調整手段を平面視した場合において前記フードとは重ならない位置に設けられるとともに、前記キャスターの車輪の上端が、前記ベースの下端よりも上方に位置するように取付けられていることを特徴とする手段1又は2に記載の排気ガス処理装置。
【0012】
上記手段1のように、吸込み位置調整手段にキャスターを設ける場合、移動が楽になるものの、キャスターとフードとが上下に重なるような相対位置に設けられていると、フードを最大限下方に変位させたとしても、フードと床面との間にキャスターが介在するようになった分だけ、フードが床面から上方に離間してしまうことが懸念される。これに起因して、フードが車両後部のバンパー等につかえてしまう可能性が高まり、フードの導入口をテールパイプに近接させることができなくなってしまうおそれがある。この場合、排気ガスを好適に吸引できなくなる等の各種不具合を招くおそれがある。
【0013】
この点、本手段3によれば、キャスターとフードとが上下に重ならないように設けられている。このため、ベースのうちフードが直上方に位置する部位の上面を極力低くすることができ、ひいては、本手段2のように、フードを、その下端部が、キャスターの車輪の上端よりも下方に位置するまで変位可能に構成することができる。従って、キャスターを具備する構成であっても、フードの高さ位置を極力床面近くにまで下げることができ、キャスターを設けることに起因して、フードの導入口をテールパイプに近接させ難くなってしまうといった事態を回避することができる。結果として、比較的車体が低く、かつ、テールパイプの排気口の位置が車体の下側に位置するような車両に対しても、フードを好適に配置することができる。
【0014】
手段4.前記フードのうち車両のテールパイプに対向配置される導入口側の端部は、下端部が上端部よりも大きく張り出していることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の排気ガス処理装置。
【0015】
一般に、テールパイプは車両の下面側に張り付くようにして設けられている場合が多い。さらに、排気ガスを吸引して試験室外に排出する場合には、排気ガスとともにテールパイプ周りの試験室内空気を吸引して排気ガスを希釈することが、排気ガス処理装置の耐熱設計対象温度低温化や大気汚染防止の面で有利であり、この場合がほとんどである。このため、フードの導入口がほぼ鉛直に延びている場合には、フードの導入口をテールパイプに対向配置させようとしても、テールパイプ端部排気口とフードのラップが取れないことがあり、側面から見てフードとテールパイプとがラップしていない隙間により、排気ガス処理装置のブロア吸引力の排気ガスに及ぶ割合が少なくなり、排気ガス処理装置に吸引されることなく試験室内に逃げてしまう排気ガスの量が増えることが懸念される。
【0016】
この点、本手段4によれば、フードの導入口の下部を比較的大きく張り出させることで、テールパイプの排気口から下側に回り込んで試験室内に逃れようとする排気ガスを捕捉し易くなり、試験室内に漏れる排気ガスをより確実に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】試験室に設置される排気ガス処理装置等の概略構成を示す断面模式図である。
【図2】吸込み位置調整台車の平面図である。
【図3】吸込み位置調整台車の正面図である。
【図4】吸込み位置調整台車の側面図である。
【図5】別の実施形態における吸込み位置調整台車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、車両としての自動車Mの性能試験が行われる試験室Rには、自動車Mのマフラー(テールパイプP)から排出される排気ガスを吸引して試験室R外に排出する排気ガス処理装置1が設けられている。排気ガス処理装置1は、気体を吸引可能なブロア等を具備する吸引装置(図示略)と、吸引装置の吸引口に鋼板製ダクト3aを介して連結(連通)されるフレキシブルダクト3と、フレキシブルダクト3の先端部が固定される吸込み位置調整手段としての吸込み位置調整台車4とを備えている。尚、図示は省略するが、試験室Rには、様々な環境下や運転状況における自動車Mの性能を測定することができるように、例えば、空調装置や走行風発生装置、さらに自動車Mの擬似走行状態を作り出すための駆動輪を載置するシャシダイナモメータ等が設けられている場合がある。
【0019】
図2〜図4に示すように、吸込み位置調整台車4は、フレキシブルダクト3の先端部に接続される略円筒状のフード11と、フード11を支持する本体部12とを備えている。本体部12は、互いに並行するようにして水平に延在する一対のフレーム13と、一対のフレーム13間を連結するベース板14と、各フレーム13の長手方向略中央位置からそれぞれ上方に延出する一対のマスト15とを備えている。本実施形態では、フレーム13及びベース板14によってベースが構成される。
【0020】
ベース板14は、板金の左右の側辺部を上方に折り曲げることで断面略コ字状に形成されており、当該折り曲げられた部位の外面が各フレーム13の側面に固定されている。このため、本実施形態では、ベース板14の下面とフレーム13の下面とはほぼ同じ高さ位置であるのに対し、ベース板14の上面は、フレーム13の上面よりも下方に位置している。
【0021】
また、各フレーム13の長手方向両端部の上面には、それぞれ前記ベース板14が設けられた側とは反対側(外方)に張り出すようにして連結板16が固定されている。さらに、各連結板16のうちフレーム13から外方に張り出した部位の下面側には、キャスター17が取付けられている。このように、フレーム13の上面とキャスター17の上端とが連結板16を介して連結されることで、キャスター17の車輪17aの上端がベース板14の下面よりも上方に位置するように構成されている。特に、本実施形態では、キャスター17の車輪17aの回転軸がフレーム13の下面(ベース板14の下面)とほぼ同じ高さ位置となっている。加えて、本実施形態では、4つあるキャスター17のうち、フード11のフレキシブルダクト3との接続側に配置される2つのキャスター17が、連結板16に対して上下方向を軸心として回転可能に構成されるとともに、ストッパーを備えたもの(残り2つのキャスター17は、回転軸が連結板16に対し動かない固定式のもので、好適にはストッパーを備えていればなお良い。)となっている。
【0022】
一対のマスト15は、互いに対向する位置において互いに平行して延びるように設けられている。さらに、各マスト15の下端部は、一対のフレーム13の間の空間に位置されるとともに、当該一対のフレーム13の間に位置した部位の側面がベース板14の折り返し部分の内面に対して当接状態で固定されている。また、各マスト15には、それぞれ鉛直方向に延びる長孔18が形成されている。一対のマスト15の長孔18は、互いに対向する位置に形成され、その上縁部や下縁部の高さ位置が揃っている。加えて、一対のマスト15の上端部間を連結するようにして水平方向に延びる連結バー19が設けられている。当該連結バー19によって、マスト15の傾倒変位を防止することができる上、吸込み位置調整台車4を移動させる際に、当該連結バー19を取っ手として利用することができる。
【0023】
フード11は、フレーム13の長手方向に沿って略水平方向に延び、一対のマスト15の間に配置されている、また、図4に示すように、フード11のうち、フレキシブルダクト3と接続される接続口11aに関しては、水平方向に開口している(開口面が鉛直方向に延びている)が、テールパイプPに対向配置されて排気ガスを吸引することとなる導入口11bに関しては、斜め上方に開口している(開口面がフード11の先端部に向けて下方傾斜して延びている)。本実施形態では、フード11を側面視した場合に、フード11の導入口11b側の端面が、水平方向に対して45度傾斜して延びている。
【0024】
また、フード11には、フード11のほぼ重心位置に対応して、フード11の外周面から側方に延出する左右一対の係止プレート21が設けられている(図3参照)。さらに、図4に示すように、各係止プレート21の先端面には、本体部12のマスト15の長孔18に挿通される係止ピン22及びガイドピン23が突設されている。そして、一対のマスト15の長孔18にそれぞれ係止ピン22及びガイドピン23が挿通されることで、フード11がマスト15の長孔18に沿って鉛直方向にスライド可能に構成されている。特に、長孔18には、係止ピン22だけでなくガイドピン23についても挿通されているため、フード11の回動変位が防止されることとなり、フード11は同じ姿勢(同じ角度)を保ちつつ、上下に変位するように構成されている。
【0025】
尚、係止プレート21は、マスト15に面する先端面を、L字状に折返したり、コ字状に箱折り形成することで、長孔18よりも横幅が大きく、長孔18に挿入されることはない。従って、係止プレート21が長孔18の内側に入り込んでしまって、フード11が傾いてしまうといった事態を回避することができる。加えて、本実施形態では、ガイドピン23は係止ピン22を挟んで上下一対で設けられる。このため、係止ピン22が長孔18の周縁部に圧接してしまうことに起因して、係止ピン22が変形したり損傷したりするといった事態を防止することができる。
【0026】
また、ガイドピン23の突出長はマスト15の厚み程度であるのに対し、係止ピン22の突出長はガイドピン23の突出長よりも長く、マスト15を貫通してマスト15よりも側方にまで突出している。さらに、係止ピン22には雄ねじが形成されており、係止ピン22のうち、マスト15から側方に突出した部位には、雌ねじが形成されているハンドル24が螺着されている。そして、ハンドル24を締め付けると、ハンドル24とマスト15の外面とが圧接し、さらに、係止プレート21先端面とマスト15内面とが圧接し、これによって、フード11を所期の高さ位置にて保持することができるようになっている。
【0027】
本実施形態では、ベース板14の水平部分の横幅が、フード11の横幅よりも大きく構成され、吸込み位置調整台車4を正面視した場合に、フード11がベース板14の水平部分の上方位置に収まるように構成されている。また、フード11は、ガイドピン23と長孔18の下縁部とが当接するまで下方に変位可能に構成されており、本実施形態では、フード11を最も下方に変位させた場合に、フード11の下端部がフレーム13の上面よりも下方に位置するように構成されている。
【0028】
さらに、上記のように、キャスター17は、一対のフレーム13よりも外方に設けられている上、当該キャスター17の車輪17aの上端がベース板14の下面よりも上方に位置するように取付けられている。特に、本実施形態では、フード11を最も下方に変位させた状態とすることで、フード11の下端部が、キャスター17の車輪17aの上端部よりも下方に位置するように構成されている(図1参照)。
【0029】
また、フード11のうち接続口11a側の外面には、係合部26が一対で設けられている。これに対し、図1に示すように、フレキシブルダクト3の先端部には、円環状のジョイント7が接続されており、当該ジョイント7の外面には、係合部26と係合する略鉤状の被係合部27が設けられている。被係合部27をばねとリンクで引き寄せて係合する係合部26及び被係合部27は、所謂「パチン錠」の体裁をなしており、係合部26はフード11の外面から突出する突起と、当該突起のうちフード11の導入口11b側の部位に対して回動可能に設けられる略環状のフックとを備え、ジョイント7をフード11の接続口11aの外側に嵌めて、係合部26の突起を被係合部27に当接させた状態としてから、フックを被係合部27のフレキシブルダクト3側の面に引っ掛ける(さらにロックする)ことで、フレキシブルダクト3とフード11とが連結(連通)されることとなる。
【0030】
尚、フード11の上部には、温度センサを取付けるためのソケット29が設けられている。また、フレキシブルダクト3は、自動車Mの車種によって異なるテールパイプPの位置や数に対応できるように、試験室Rにおいて複数本(例えば2本)設けられている上、ジョイント7に代えて、先端が二股に分かれているY字管を接続可能に構成されている。
【0031】
以上詳述したように、本実施形態では、吸引装置に連通されたフレキシブルダクト3の先端が、吸込み位置調整台車4のフード11に固定されている。このため、吸引装置に連通するフード11の位置、すなわち、排気ガス処理装置1全体としてみた場合の吸い込み口の位置を比較的容易に移動させることができる。さらに、フード11の高さ位置を調節可能であるため、テールパイプPの排気口の位置とフード11の位置とをより確実に合致させることができる。従って、自動車Mから排出された排気ガスをより好適に排気ガス処理装置1で吸い込んで試験室R外へと排出することができる。
【0032】
さらに、吸込み位置調整台車4は、試験する自動車Mの車種を変更して試験室Rに設置し、そのテールパイプPとフード11との位置関係を調整したあとは、キャスター17の車輪17aをストッパーで固定することで、例えば、車両をシャシダイナモメータに載せてエンジンを高回転運転させる試験条件で多量の排気が発生しても、排圧でフード11が移動せず、フード11とテールパイプPの位置関係が固定できて、所定の試験室R内空気量で希釈することが実現できる。
【0033】
また、本実施形態では、吸込み位置調整台車4のキャスター17は、本体部12の左右一対のフレーム13よりも外方に設けられており、吸込み位置調整台車4を平面視した場合に、一対のフレーム13間に位置するフード11とは上下に重ならないように配置されている。このため、一対のフレーム13間を連結するベース板14の上面を、フレーム13の上面よりも下げることができ、ひいては、本実施形態のように、フード11を、その下端部が、キャスター17の車輪17aの上端よりも下方に位置するまで変位可能に構成することができる。従って、キャスター17を具備する構成であっても、フード11の高さ位置を極力床面近くにまで下げることができることから、フード11の導入口11bをテールパイプPに近接させようとした場合に、フード11が自動車Mのバンパー等につっかえてしまって近接させることができないといった事態を回避することができる。結果として、比較的車体が低く、かつ、テールパイプPの排気口の位置が車体の下側に位置するような自動車Mに対しても、フード11を好適に配置することができる。
【0034】
また、一般に、テールパイプPは自動車Mの下面側に張り付くようにして設けられている場合が多い。さらに、排気ガスを吸引して試験室R外に排出する場合には、排気ガスとともに周りの空気を吸引して排気ガスを希釈する(温度を下げる)場合がほとんどである。このため、フード11の導入口11bがほぼ鉛直に延びている場合、フード11の導入口11bをテールパイプPに対向配置させたとしても、フード11とテールパイプPとの間の隙間から排気ガス処理装置1に吸引されることなく試験室R内に逃げてしまう排気ガスの量が増えることが懸念される。この点、本実施形態によれば、フード11の導入口11bが斜め上方に開口し、フード11の導入口11bの下部が上部よりも大きく張り出している。このため、テールパイプPの排気口から下側に回り込んで試験室R内に逃れようとする排気ガスを捕捉し易くなり、試験室R内に漏れる排気ガスをより確実に低減させることができる。
【0035】
さらに、上記実施形態では、フード11とフレキシブルダクト3との接続は、フレキシブルダクト3の先端部に取付けられているジョイント7を、フード11の接続口11aに被せるとともに、「パチン錠」の体裁をなすフード11の係合部26、及び、ジョイント7の被係合部27を係合状態とすることによってなされる。従って、フレキシブルダクト3に対するフード11の着脱が比較的容易なものとなり、作業性の向上等を図ることができる。
【0036】
また、吸込み位置調整台車4は、フレキシブルダクト3に対する着脱が比較的容易であり、かつ、持ち運びも比較的容易であることから、例えば、複数の試験室Rが併設されている場合において、試験室R間の移動や対象とされる試験室Rのフレキシブルダクト3への装着作業を比較的スムースに行うことができる。従って、試験室R毎に吸込み位置調整台車4を用意しなくても済み、コストの削減等を図ることができる。
【0037】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0038】
(a)上記実施形態では、フード11の導入口11bの端面がフード11の先端側に向けて下方傾斜しているが、例えば、図5に示すように、基本的に鉛直方向に延びるように形成してもよい。さらに、導入口11bの下縁部においてフード11を延長させるようにして断面略円弧状の受部31を形成することとしてもよい。この場合においても、導入口11bの下部が上部よりも大きく張り出すことから、テールパイプPから排出されて下方に逃れようとする排気ガスを捉えて、より確実に吸引することができる。また、上記実施形態のように、フード11の先端部が傾斜しているものに対して、さらに受部31を形成することも可能である。加えて、受部31を、その突出長を変化させるようにしてスライド可能に構成してもよい。
【0039】
さらに、図5に示すように、フード11を接続口11a側から導入口11b側に向けて次第に拡径するように(フード11をテーパ状に)構成してもよい。尚、フード11の長さ(フード11の導入口11b側の先端部とマスト15との間の距離等)や断面形状等は特に限定されるものではなく、例えば、試験対象となり得る車種においてテールパイプP周りの形状が大きく異なるものがあれば、それに対応して、別のフード形状のものを用意してもよい。但し、テールパイプPから排出される排気ガスをより好適に吸引するといった観点からすると、テールパイプPは排出口形状が円形のものが多いことから、円筒状(断面円環状)に構成されることが望ましい。
【0040】
また、高回転でエンジン運転され、かつ試験室Rへの排ガス漏れが問題となる試験条件や、フード11で回収された排ガスの成分分析する定容量サンプリング装置(CVS)へ導入する試験条件などの場合は、空気希釈や排ガス温度から空気希釈量を求め、フード11の吸込み面積を算出することがある。この場合はフード11の導入口11bの開口面積は定められることとなる。
【0041】
(b)上記実施形態では、キャスター17は、本体部12の一対のフレーム13よりも外方に設けられているが、吸込み位置調整台車4を平面視した場合においてフード11とは重ならない位置に設けられていればよい。例えば、ベース板14(4隅近傍)に開口部を形成して、当該開口部の内周側において、車輪17aの上端が本体部12(ベース板14)の下端よりも上方に位置するようにキャスター17を取付けることとしてもよい。この場合にも、キャスター17の車輪17aの上端部をベース板14の下端部よりも上方に位置させることができ、ベース板14の高さ位置を極力低くする、ひいては、フード11を極力床面の近くにまで下降可能に構成することができる。但し、この場合、本体部12(ベース板14)の大型化を招くおそれがあるため、上記実施形態のように、一対のフレーム13よりも外方においてキャスター17を設けることが望ましい。
【0042】
(c)また、上記実施形態では、4つあるキャスター17のうち、フード11の基端部側の2つのキャスター17がストッパー付きで、かつ、鉛直方向を軸心として回転自在に設けられているが、4つ全てのキャスター17がストッパー付きのものであったり、鉛直方向を軸心として回転自在なものであったりしてもよい。
【0043】
さらに、上記実施形態では、キャスター17の車輪17aの回転軸が本体部12の下端部(フレーム13及びベース板14の下面)とほぼ同じ高さ位置となっているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、キャスター17として機能するために、車輪17aの下端部が本体部12の下端部よりも下方に位置していればよい。例えば、キャスター17を上記実施形態よりも上方位置に設け、フード11を最大限下方に変位させた状態において、フード11の下端部がキャスター17の回転軸よりも下方に位置するように構成することとしてもよい。
【0044】
(d)上記実施形態では、フード11側に係合部26が設けられ、フレキシブルダクト3側(ジョイント7)に被係合部27が設けられているが、逆に設けられていてもよい。また、フレキシブルダクト3とフード11とを接続する構成については特に限定されるものではなく、様々な方法を採用することが可能である。但し、着脱作業性の向上を図るべく、上記実施形態のようにパチン錠のような構成を採用したり、バックルやラッチ等のような構成を採用したりすることが望ましい。
【0045】
(e)上記実施形態では、自動車MのテールパイプPから排出される排気ガスを試験室R外に排出するために排気ガス処理装置1が用いられているが、例えば、エンジン自体をベンチに載せてエンジン性能の試験を行うエンジンベンチ試験において、エンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスを試験室R外に排出するために排気ガス処理装置1を用いることも可能である。また、排気ガス処理装置1において、排気ガスに含まれる成分を測定する装置を搭載することとしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…排気ガス処理装置、3…フレキシブルダクト、4…吸込み位置調整台車、11…フード、11a…接続口、11b…導入口、12…本体部、13…フレーム、14…ベース板、15…マスト、16…連結板、17…キャスター、17a…車輪、M…自動車、P…テールパイプ、R…試験室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吸引可能な吸引装置と、前記吸引装置の吸引口に連通されるフレキシブルダクトと、前記フレキシブルダクトの先端部が固定される吸込み位置調整手段とを備え、試験室にて性能試験に供される車両から排出された排気ガスを吸引して試験室外に排出する排気ガス処理装置であって、
前記吸込み位置調整手段は、
前記フレキシブルダクトの先端部に接続される略筒状のフードと、
前記フードを支持する本体部とを備え、
前記本体部は、キャスターが取付けられるベースと、前記ベースから上方に延出するマストとを備え、
前記フードは、前記マストに対して、上下にスライド変位可能に取付けられていることを特徴とする排気ガス処理装置。
【請求項2】
前記キャスターは、少なくとも2個以上がストッパー付きであることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス処理装置。
【請求項3】
前記キャスターは、前記吸込み位置調整手段を平面視した場合において前記フードとは重ならない位置に設けられるとともに、前記キャスターの車輪の上端が、前記ベースの下端よりも上方に位置するように取付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス処理装置。
【請求項4】
前記フードのうち車両のテールパイプに対向配置される導入口側の端部は、下端部が上端部よりも大きく張り出していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の排気ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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