説明

排気バイパスバルブ

【課題】エンジンが高過給となっても、排気バイパスバルブを作動させるアクチュエータの荷重を上げなくとも済む排気バイパスバルブを提供する。
【解決手段】過給器21のタービン28をバイパスする排気バイパス通路23と、排気バイパス通路23を開閉する弁体41とを備えた排気バイパスバルブ40において、排気バイパス通路23よりも小径に形成され、弁体41の上流と下流とを連通する通気通路46と、通気通路46に配設され、弁体41の上流側圧力(Pe)と下流側圧力(Pp)との差圧(Pe−Pp)が所定圧力を下回っている間は通気通路46を開放し、弁体41の上流側圧力(Pe)と下流側圧力(Pp)との差圧(Pe−Pp)が所定圧力を超えると通気通路46を閉塞する開閉バルブ47とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給器のタービンをバイパスする排気バイパス通路に配設される排気バイパスバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
排気バイパスバルブが用いられる二段過給エンジンは、一般的に図5に示すような回路となっている。
【0003】
この二段過給エンジン10では、図5に示すように、エンジン本体11の吸排気通路12、13に直列に高圧段ターボチャージャ(High-pressure turbocharger)21及び低圧段ターボチャージャ(Low-pressure turbocharger)22が配設され、高圧段ターボチャージャ21の高圧段タービン28をバイパスする高圧段側排気バイパス通路23に、排気バイパスバルブ40Xが配設されている。二段過給エンジン10では、低負荷から中負荷時は、排気バイパスバルブ40Xを閉じ、高圧段ターボチャージャ21を作動させ、中負荷から高負荷時は、排気バイパスバルブ40Xを開き、高圧段ターボチャージャ21を作動させないようにする。
【0004】
また、排気バイパスバルブは、一般的に図6に示すような構造となっている。
【0005】
この排気バイパスバルブ40Xは、図6に示すように、所謂フラップバルブであり、弁体41と、弁体41を保持するアーム42と、弁体41を着座させるための弁座(バルブシート)44とを有する。排気バイパスバルブ40Xは、図示しないアクチュエータにより駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−203835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エンジンのダウンサイジング(小型化)が進み過給圧が上がってくると、排気圧(排気マニホールド内のガス圧)Peも高圧になる。そのため、排気バイパスバルブを閉じる荷重が高くなり、非常に大きなアクチュエータが必要となる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、エンジンが高過給となっても、排気バイパスバルブを作動させるアクチュエータの荷重を上げなくとも済む排気バイパスバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明は、過給器のタービンをバイパスする排気バイパス通路と、前記排気バイパス通路を開閉する弁体とを備えた排気バイパスバルブにおいて、前記排気バイパス通路よりも小径に形成され、前記弁体の上流と下流とを連通する通気通路と、前記通気通路に配設され、前記弁体の上流側圧力と下流側圧力との差圧が所定圧力を下回っている間は前記通気通路を開放し、前記弁体の上流側圧力と下流側圧力との差圧が前記所定圧力を超えると前記通気通路を閉塞する開閉バルブとを備えたものである。
【0010】
前記開閉バルブは、板状に形成され前記通気通路を開閉する板状弁体と、板状弁体の最大開度を規定するストッパと、前記ストッパにおける前記板状弁体が当接する部分に設けられた貫通穴とを有するリード弁であっても良い。
【0011】
また、前記開閉バルブは、球状に形成され前記通気通路を開閉する球状弁体と、球状弁体の最大開度を規定するストッパと、前記ストッパにおける前記球状弁体が当接する部分に設けられた貫通穴と、前記ストッパに前記球状弁体が当接した状態で排気の通過を許容すべく、前記貫通穴の周囲に設けられた切り欠きとを有するボール弁であっても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジンが高過給となっても、排気バイパスバルブを作動させるアクチュエータの荷重を上げなくとも済む排気バイパスバルブを提供することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気バイパスバルブの側断面図である。
【図2】(a)はリード弁の側断面図であり、(b)はリード弁の平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る排気バイパスバルブの側断面図である。
【図4】(a)はボール弁の側断面図であり、(b)はボール弁の平面図である。
【図5】二段過給エンジンの概略図である。
【図6】従来例に係る排気バイパスバルブの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0015】
図5に本実施形態に係る排気バイパスバルブが用いられる二段過給エンジンを示す。
【0016】
図5に示すように、二段過給エンジン10は、エンジン本体11と、エンジン本体11に吸気を供給する吸気通路(吸気管)12と、エンジン本体11からの排気を排出する排気通路(排気管)13と、排気通路13の排気の一部を吸気通路12に戻すEGR装置14と、エンジン本体11に供給する吸気を昇圧するための二段過給システム15とを備える。
【0017】
二段過給エンジン10は、エンジン本体11に複数のシリンダ(燃焼室)16が形成された多気筒エンジン(本実施形態では、四気筒のディーゼルエンジン)であり、シリンダ16が、吸気通路12の下流端をなす吸気マニホールド17と、排気通路13の上流端をなす排気マニホールド18とに接続される。
【0018】
EGR装置14は、排気通路13と吸気通路12とを接続するEGR通路(EGR管)19と、EGR通路19に設けられたEGRバルブ20とを備える。
【0019】
二段過給システム15は、エンジン本体11の吸排気通路12、13に直列に設けられた高圧段ターボチャージャ21及び低圧段ターボチャージャ22と、高圧段ターボチャージャ21の後述する高圧段タービン28をバイパスする高圧段側排気バイパス通路(高圧段側排気バイパス管)23と、高圧段側排気バイパス通路23を開閉して低圧段ターボチャージャ22のみによる一段過給と高圧段ターボチャージャ21及び低圧段ターボチャージャ22による二段過給とを切り換えるための排気バイパスバルブ40と、高圧段ターボチャージャ21の後述する高圧段コンプレッサ29をバイパスする吸気バイパス通路(吸気バイパス管)24と、吸気バイパス通路24を開閉する吸気バイパスバルブ25と、低圧段ターボチャージャ22の後述する低圧段タービン30をバイパスする低圧段側排気バイパス通路(低圧段側排気バイパス管)26と、低圧段側排気バイパス通路26を開閉するウェイストゲートバルブ27とを有する。
【0020】
なお、高圧段ターボチャージャ21、高圧段タービン28及び高圧段側排気バイパス通路23がそれぞれ、本発明の「過給器」、「タービン」及び「排気バイパス通路」を構成する。
【0021】
高圧段ターボチャージャ21は、排気通路13に配設された高圧段タービン28と、吸気通路12に配設された高圧段コンプレッサ29とを有する。また、高圧段ターボチャージャ21は、低圧段ターボチャージャ22よりも小さな容量を有する。
【0022】
低圧段ターボチャージャ22は、高圧段タービン28よりも下流側の排気通路13に配設された低圧段タービン30と、高圧段コンプレッサ29よりも上流側の吸気通路12に配設された低圧段コンプレッサ31とを有する。また、低圧段ターボチャージャ22は、高圧段ターボチャージャ21よりも大きな容量を有する。
【0023】
高圧段コンプレッサ29の下流の吸気通路12には、高圧段コンプレッサ29(又は低圧段コンプレッサ31)で過給された吸気を冷却するためのインタークーラ32が設けられる。
【0024】
高圧段側排気バイパス通路23は、高圧段タービン28の上流と下流とを連通する。本実施形態では、高圧段側排気バイパス通路23の上流端が排気マニホールド18に接続され、下流端が高圧段タービン28と低圧段タービン30との間の排気通路13に接続される。
【0025】
吸気バイパス通路24は、高圧段コンプレッサ29の上流と下流とを連通する。本実施形態では、吸気バイパス通路24の上流端が低圧段コンプレッサ31と高圧段コンプレッサ29との間の吸気通路12に接続され、下流端が高圧段コンプレッサ29とインタークーラ32との間の吸気通路12に接続される。
【0026】
低圧段側排気バイパス通路26は、低圧段タービン30の上流と下流とを連通する。本実施形態では、低圧段側排気バイパス通路26の上流端が高圧段タービン28と低圧段タービン30との間の排気通路13に接続され、下流端が低圧段タービン30の下流側の排気通路13に接続される。
【0027】
係る二段過給エンジン10では、低負荷から中負荷時は、排気バイパスバルブ40を閉じ、高圧段ターボチャージャ21を作動させ、中負荷から高負荷時は、排気バイパスバルブ40を開き、高圧段ターボチャージャ21を作動させないようにする。
【0028】
図1に本実施形態に係る排気バイパスバルブを示す。
【0029】
図1に示すように、排気バイパスバルブ40は、所謂フラップバルブ(flap valve)であり、弁体41と、弁体41を保持するアーム42と、アーム42が固定された回動可能な回動軸43とを有し、アーム42が回動軸43を支点に回動して弁体41が高圧段側排気バイパス通路23を開閉するように構成される。また、高圧段側排気バイパス通路23には、弁体41を着座させるための弁座(バルブシート)44が配設される。さらに、高圧段側排気バイパス通路(高圧段側排気バイパス管)23と排気マニホールド18との間には、ガスケット45が介設される。
【0030】
より詳細には、排気バイパスバルブ40においては、弁体41が弁座44に着座した状態(高圧段側排気バイパス通路23が閉塞された状態)から、アーム42が図1において反時計回りに回動すると、弁体41が弁座44から離間し、高圧段側排気バイパス通路23が開放される。一方、弁体41が弁座44から離間した状態(高圧段側排気バイパス通路23が開放された状態)から、アーム42が図1において時計回りに回動すると、弁体41が弁座44に着座し、高圧段側排気バイパス通路23が閉塞される。
【0031】
本実施形態に係る排気バイパスバルブ40では、高圧段側排気バイパス通路23よりも小径に形成され、弁体41の上流と下流とを連通する通気通路46を設けると共に、通気通路46に別途小径の開閉バルブ47Aを配設している。
【0032】
通気通路46は、弁座44、ガスケット45及び高圧段側排気バイパス通路(高圧段側排気バイパス管)23にそれぞれ設けられ、互いに連なる通気穴(オリフィス)48、49、50からなる。
【0033】
開閉バルブ47Aは、図2に示すようなリード弁であり、板状に形成され、通気通路46を開閉する板状弁体(リード)51と、板状に形成され、板状弁体51の最大開度を規定するストッパ52と、ストッパ52における板状弁体51が当接する部分に設けられた貫通穴53とを有する。
【0034】
板状弁体51は、例えばステンレスにて形成された可撓性を有する長方形状の薄板からなる。また、板状弁体51は、板状弁体51自体の弾性力によって開き側(排気上流側)に付勢される。一方、ストッパ52は、例えばアルミニウムにて形成された長方形状の薄板からなる。板状弁体51及びストッパ52は、互いに重ねられた状態でリベットやボルト54等によって弁座44に固定される。
【0035】
より詳細には、開閉バルブ47Aにおいては、排気マニホールド18内のガス圧(以下、排気圧という)Peと高圧段側排気バイパス通路23内のガス圧(以下、ポート圧という)Ppとの差圧(Pe−Pp)が所定圧力を下回っている間は、板状弁体51がストッパ52に当接し、通気通路46が開放される。一方、排気圧Peとポート圧Ppとの差圧(Pe−Pp)が所定圧力を超えると、板状弁体51が弁座44に着座し、通気通路46が閉塞される。
【0036】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0037】
図6に示す従来例に係る排気バイパスバルブ40Xの場合、排気バイパスバルブ40Xが開いているとき(つまり、弁体41が弁座44から離間した状態)は、ポート圧Ppと排気圧Peとが等しい状態(Pp=Pe)であるので、弁体41は低い荷重で閉じ側(排気上流側)へ閉じていく。弁体41が徐々に閉じてきて、弁体41と弁座44との隙間が狭くなってくると、ポート圧Ppが排気圧Peよりも低い状態(Pp<Pe)となる。このとき、排気圧Peが高いと、排気圧Peとポート圧Ppとの差圧(Pe−Pp)が大きくなり、従来より高い荷重で作動させないと、弁体41が閉じなくなる。
【0038】
一方、図1に示す本実施形態に係る排気バイパスバルブ40の場合も、排気バイパスバルブ40が開いているとき(つまり、弁体41が弁座44から離間した状態)は、ポート圧Ppと排気圧Peとが等しい状態(Pp=Pe)であるので、弁体41は低い荷重で閉じ側(排気上流側)へ閉じていく。弁体41が徐々に閉じてきて、弁体41と弁座44との隙間が狭くなってきても、開閉バルブ47Aが開いている(つまり、通気通路46が開放されている)ためポート圧Ppと排気圧Peとが等しい状態(Pp=Pe)のままで、図6に示す従来例に係る排気バイパスバルブ40Xよりも低い荷重で弁体41は閉じる。この弁体41による高圧段側排気バイパス通路23の閉塞により、高圧段側排気バイパス通路23を介する排気の流通が遮断されることとなる。
【0039】
そして、弁体41が閉じる(つまり、弁体41が弁座44に着座する)と、通気通路46に配設した開閉バルブ47Aの前後(排気上下流)に差圧が生じるため、開閉バルブ47Aが閉じる(つまり、板状弁体51が弁座44に着座する)。この開閉バルブ47Aによる通気通路46の閉塞により、排気バイパスバルブ40(高圧段側排気バイパス通路23及び通気通路46)を介する排気の流通が完全に遮断されることとなる。
【0040】
以上要するに本実施形態に係る排気バイパスバルブ40によれば、エンジンが高過給となっても、排気バイパスバルブ40を作動させるアクチュエータの荷重を上げなくとも済む。そのため、アクチュエータのサイズアップ、質量アップを防ぐことができる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0042】
例えば、図1及び図2に示すようなリード弁からなる開閉バルブ47Aの代わりに、図3及び図4に示すようなボール弁からなる開閉バルブ47Bを用いても良い。この開閉バルブ47Bは、図4に示すように、球状に形成され、通気通路46を開閉する球状弁体55と、有底筒状に形成され、球状弁体55の最大開度を規定するストッパ56と、ストッパ56における球状弁体55が当接する部分に設けられた貫通穴57と、ストッパ56に球状弁体55が当接した状態で排気の通過を許容すべく、貫通穴57の周囲に設けられた複数の切り欠き58とを有する。球状弁体55は、スプリング(図例では、コイルスプリング)59によって開き側(排気上流側)に付勢される。ストッパ56は、ストッパ56の基部に設けたフランジ部60にてリベットやボルト61等により弁座に固定される。なお、図3において、図1に示す排気バイパスバルブと実質的に同一の構成要素には同一符号を付している。
【符号の説明】
【0043】
21 高圧段ターボチャージャ(過給器)
23 高圧段側排気バイパス通路(排気バイパス通路)
28 高圧段タービン(タービン)
40 排気バイパスバルブ
41 弁体
46 通気通路
47 開閉バルブ
51 板状弁体
52 ストッパ
53 貫通穴
55 球状弁体
56 ストッパ
57 貫通穴
58 切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給器のタービンをバイパスする排気バイパス通路と、前記排気バイパス通路を開閉する弁体とを備えた排気バイパスバルブにおいて、前記排気バイパス通路よりも小径に形成され、前記弁体の上流と下流とを連通する通気通路と、前記通気通路に配設され、前記弁体の上流側圧力と下流側圧力との差圧が所定圧力を下回っている間は前記通気通路を開放し、前記弁体の上流側圧力と下流側圧力との差圧が前記所定圧力を超えると前記通気通路を閉塞する開閉バルブとを備えたことを特徴とする排気バイパスバルブ。
【請求項2】
前記開閉バルブは、板状に形成され前記通気通路を開閉する板状弁体と、板状弁体の最大開度を規定するストッパと、前記ストッパにおける前記板状弁体が当接する部分に設けられた貫通穴とを有するリード弁である請求項1に記載の排気バイパスバルブ。
【請求項3】
前記開閉バルブは、球状に形成され前記通気通路を開閉する球状弁体と、球状弁体の最大開度を規定するストッパと、前記ストッパにおける前記球状弁体が当接する部分に設けられた貫通穴と、前記ストッパに前記球状弁体が当接した状態で排気の通過を許容すべく、前記貫通穴の周囲に設けられた切り欠きとを有するボール弁である請求項1に記載の排気バイパスバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−68201(P2013−68201A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209038(P2011−209038)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】