説明

排気浄化装置

【課題】選択還元型触媒等の後処理装置に対し排気ガスを反転させて導入するにあたり、エンジンの運転状況に拘わらず良好な分散性を維持して排気ガスを後処理装置に導入し得るようにする。
【解決手段】選択還元型触媒4(後処理装置)の入側端面を被包し且つ該選択還元型触媒4の軸心方向と略直交する向きから排気導入口11を介して排気ガス1を導き入れるガス分散室7Cを備え、排気導入口11に排気ガス1を導くミキシングパイプ7B(排気管路)を選択還元型触媒4の軸心方向に延在せしめ且つ排気導入口11の直前位置で該排気導入口11から一旦離間する方向へ曲げてから鉤状に曲げ戻して排気導入口11に接続し、排気ガイド部分14と協働して排気ガス1の流れを選択還元型触媒4の軸心に向け円弧状に折り返し得るようガス分散室7Cに窪み部15(導風構造)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、排気管の途中に排気ガス中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを備えると共に、該パティキュレートフィルタの下流側に酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得る選択還元型触媒を備え、該選択還元型触媒と前記パティキュレートフィルタとの間に還元剤として尿素水を添加してパティキュレートとNOxの同時低減を図ることが提案されている。
【0003】
この場合、選択還元型触媒への尿素水の添加は、パティキュレートフィルタと選択還元型触媒との間で行われることになるため、排気ガス中に添加された尿素水がアンモニアと炭酸ガスに熱分解されるまでの十分な反応時間を確保しようとすれば、尿素水の添加位置から選択還元型触媒までの距離を長くする必要があるが、パティキュレートフィルタと選択還元型触媒とを十分な距離を隔てて離間配置させてしまうと、車両への搭載性が著しく損なわれてしまう。
【0004】
このため、本発明と同じ出願人により図2に示す如きコンパクトな排気浄化装置(下記の特許文献1を参照)が既に提案されており、ここに図示している排気浄化装置では、エンジンからの排気ガス1が流通する排気管2の途中に、排気ガス1中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタ3と、該パティキュレートフィルタ3の下流側に酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得る性質を備えた選択還元型触媒4とをケーシング5,6により夫々抱持して並列に配置し、パティキュレートフィルタ3の出側端部と選択還元型触媒4の入側端部との間をS字構造の連絡流路7により接続し、パティキュレートフィルタ3の出側端部から排出された排気ガス1が逆向きに折り返されて隣の選択還元型触媒4の入側端部に導入されるようになっている。
【0005】
ここで、前記連絡流路7は、パティキュレートフィルタ3の出側端部を包囲し且つ該出側端部から出た直後の排気ガス1を略直角な向きに方向転換させつつ集合せしめるガス集合室7Aと、該ガス集合室7Aで集められた排気ガス1をパティキュレートフィルタ3の排気流れと逆向きに抜き出すミキシングパイプ7Bと、該ミキシングパイプ7Bにより導かれた排気ガス1を略直角な向きに方向転換させつつ分散せしめ且つその分散された排気ガス1を選択還元型触媒4の入側端部に導入し得るよう該入側端部を包囲するガス分散室7CとによりS字構造を成すように構成されており、前記ミキシングパイプ7Bの入側端部の中心位置には、該ミキシングパイプ7B内に尿素水を添加するためのインジェクタ8が前記ミキシングパイプ7Bの出側端部側へ向けて装備されている。
【0006】
尚、ここに図示している例では、パティキュレートフィルタ3が抱持されているケーシング5内の前段に、排気ガス1中の未燃燃料分を酸化処理する酸化触媒9が装備されており、また、選択還元型触媒4が抱持されているケーシング6内の後段には、余剰のアンモニアを酸化処理するアンモニア低減触媒10が装備されている。
【0007】
そして、このような構成を採用すれば、パティキュレートフィルタ3により排気ガス1中のパティキュレートが捕集されると共に、その下流側のミキシングパイプ7Bの途中でインジェクタ8から尿素水が排気ガス1中に添加されてアンモニアと炭酸ガスに熱分解され、選択還元型触媒4上で排気ガス1中のNOxがアンモニアにより良好に還元浄化される結果、排気ガス1中のパティキュレートとNOxの同時低減が図られることになる。
【0008】
この際、パティキュレートフィルタ3の出側端部から排出された排気ガス1が連絡流路7により逆向きに折り返されてから隣の選択還元型触媒4の入側端部に導入されるようになっているので、尿素水の添加位置から選択還元型触媒4までの距離が長く確保され、尿素水からアンモニアが生成されるのに十分な反応時間が確保される。
【0009】
しかも、パティキュレートフィルタ3と選択還元型触媒4とが並列に配置され、これらパティキュレートフィルタ3と選択還元型触媒4との間に沿うように連絡流路7が配置されているので、その全体構成がコンパクトなものとなって車両への搭載性が大幅に向上されることになる。
【0010】
ただし、図2に示す如き構造を採用することで選択還元型触媒4に対し排気ガス1を反転させて導入する形式を採らざるを得なくなり、より具体的には、連絡流路7の下流部分を成すガス分散室7Cを、選択還元型触媒4の軸心方向と略直交する向きから排気導入口11を介して排気ガス1を導き入れるように形成すると共に、選択還元型触媒4の軸心方向に延びるミキシングパイプ7Bの出側端部を、略直角な向きに屈曲して前記排気導入口11に接続するように形成している。
【0011】
このように選択還元型触媒4に対し排気ガス1を反転させて導入する形式では、排気ガス1が反転する際に、その曲がり方向の外側に排気ガス1が偏って流れ易くなり、選択還元型触媒4に対し排気ガス1が不均一に導入されて、本来発揮されるべき触媒性能が十分に引き出されない懸念があるため、前記ガス分散室7Cには、選択還元型触媒4の入側端面に対し離間する方向へ反り且つ排気導入口11から排気ガス1の導入方向へ離れるに従い選択還元型触媒4の入側端面に近接するようにした窪み部12が形成されており、この窪み部12により排気ガス1の流れが抑え込まれ、曲がり方向の外側に相対的に多くの排気ガス1が偏って流れてしまう傾向が是正されるようにしてある。
【0012】
また、ミキシングパイプ7Bと排気導入口11とが成す屈曲部分の直前位置に曲がり方向内側の排気ガス1の流れを外側に導く窪み部13が形成されており、この窪み部13により屈曲部分の直前位置で曲がり方向内側の部分を一旦外側に振ることで前記屈曲部分の曲率を小さくして曲がり具合を緩やかなものとし、排気ガス1の流れを極力円滑に曲げて排気導入口11に導けるようにしてある。
【0013】
尚、この種の排気浄化装置に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−196328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、斯かる従来構造では、ミキシングパイプ7Bによりストレートに導いた排気ガス1の流れを略直角な向きに急激に曲げて排気導入口11に到らせるようにしていたため、この排気導入口11の直前位置におけるミキシングパイプ7Bの曲がりがきつくなり、しかも、排気導入口11の直前で窪み部13により流路断面形状が大きく変化するようにもなっていたため、特に高負荷域にて排気ガス1の流速や流量が高まった場合に排気ガスの流れが乱れ易くなり、窪み部12だけで排気ガス1の流れの偏りを是正することが難しくなって選択還元型触媒4への排気ガス1の分散性が悪化する虞れがあった。
【0016】
尚、選択還元型触媒4の入側端部から十分に離した位置で排気ガス1を反転させて選択還元型触媒4の軸心方向から導入させるようにすれば、前述の如き排気ガス1の流れの偏りを改善することが可能であるが、それでは搭載性の悪化を招くという本末転倒の結果を招きかねない。
【0017】
また、選択還元型触媒4の入側に分散板を配置して流れの均一化を促すという手段も考えられなくはないが、ここに例示しているような尿素水を還元剤とする選択還元型触媒4の場合、尿素水の添加後に分散板のような抵抗体が流れを遮ってしまうと、まだ完全にアンモニア化していないミスト状の尿素水が衝突して尿素の析出が誘導されてしまう虞れもあり、できるだけ分散板を介在させたくないという事情もある。
【0018】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、選択還元型触媒等の後処理装置に対し排気ガスを反転させて導入するにあたり、エンジンの運転状況に拘わらず良好な分散性を維持して排気ガスを後処理装置に導入し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、排気ガスを通過させて浄化する後処理装置を排気系に備え、この後処理装置に対し排気ガスを反転させて導入するレイアウトが採用された排気浄化装置において、後処理装置の入側端面を被包し且つ該後処理装置の軸心方向と略直交する向きから排気導入口を介して排気ガスを導き入れるガス分散室を備え、該ガス分散室の排気導入口に排気ガスを導く排気管路を前記後処理装置の軸心方向に延在せしめ且つ前記排気導入口の直前位置で該排気導入口から一旦離間する方向へ曲げてから鉤状に曲げ戻して前記排気導入口に接続し、前記排気管路の鉤状に曲げられた排気ガイド部分と協働して排気ガスの流れを前記後処理装置の軸心に向け円弧状に折り返し得るよう前記ガス分散室に導風構造を設けたことを特徴とするものである。
【0020】
而して、このように排気管路そのものを排気導入口の直前位置で該排気導入口から一旦離間する方向へ曲げてから鉤状に曲げ戻して前記排気導入口に接続するようにすれば、排気管路によりストレートに導いた排気ガスの流れを略直角な向きに急激に曲げるレイアウトを採用した場合よりも、排気導入口の直前位置における排気管路の排気ガイド部分が緩やかに曲がり、しかも、従来の如き窪み部の無い一様な流路断面形状が保たれながら曲がることになるため、排気ガスの流れを乱れの少ない整流状態で円滑に曲げて排気導入口に導くことが可能となり、ガス分散室の導風構造により無理なく後処理装置の軸心に向けて円弧状に折り返させることが可能となる。
【0021】
また、本発明においては、後処理装置の入側端面に対し離間する方向へ反り且つ排気導入口から排気ガスの導入方向へ離れるに従い後処理装置の入側端面に近接する窪み部により導風構造を形成することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
上記した本発明の排気浄化装置によれば、選択還元型触媒等の後処理装置に対し排気ガスを反転させて導入するにあたり、エンジンの運転状況に拘わらず良好な分散性を維持して排気ガスを後処理装置に導入することができるので、該後処理装置の全容積が効率良く利用されて本来発揮されるべき排気浄化性能を十分に引き出すことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す一部を切り欠いた概略図である。
【図2】従来例を示す一部を切り欠いた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例においては、前述した図2のものと略同様に構成した排気浄化装置に関し、連絡流路7の下流部分を成すガス分散室7Cが、選択還元型触媒4(後処理装置)の入側端面を被包し且つ該選択還元型触媒4の軸心方向と略直交する向きから排気導入口11を介して排気ガス1を導き入れるように構成されており、このガス分散室7Cの排気導入口11に排気ガス1を導くミキシングパイプ7B(排気管路)が、前記選択還元型触媒4の軸心方向に延在し且つ前記排気導入口11の直前位置で該排気導入口11から一旦離間する方向へ曲げられてから鉤状に曲げ戻されて前記排気導入口11に接続されるようになっている。
【0026】
ここで、前記ガス分散室7Cには、前記ミキシングパイプ7Bの鉤状に曲げられた排気ガイド部分14と協働して排気ガス1の流れを前記選択還元型触媒4の軸心に向け円弧状に折り返し得るよう前記ガス分散室7Cに窪み部15が導風構造として形成されており、より具体的には、前記選択還元型触媒4の入側端面に対し離間する方向へ反り且つ排気導入口11から排気ガス1の導入方向へ離れるに従い選択還元型触媒4の入側端面に近接するように窪み部15が形成されている。
【0027】
而して、このようにミキシングパイプ7Bそのものを排気導入口11の直前位置で該排気導入口11から一旦離間する方向へ曲げてから鉤状に曲げ戻して前記排気導入口11に接続するようにすれば、ミキシングパイプ7Bによりストレートに導いた排気ガス1の流れを略直角な向きに急激に曲げるレイアウトを採用した場合よりも、排気導入口11の直前位置におけるミキシングパイプ7Bの排気ガイド部分14が緩やかに曲がり、しかも、従来の如き窪み部13(図2参照)の無い一様な流路断面形状が保たれながら曲がることになるため、排気ガス1の流れを乱れの少ない整流状態で円滑に曲げて排気導入口11に導くことが可能となり、ガス分散室7Cの窪み部15により無理なく選択還元型触媒4の軸心に向けて円弧状に折り返させることが可能となる。
【0028】
従って、上記形態例によれば、選択還元型触媒4に対し排気ガス1を反転させて導入するにあたり、エンジンの運転状況に拘わらず良好な分散性を維持して排気ガス1を選択還元型触媒4に導入することができるので、該選択還元型触媒4の全容積が効率良く利用されて本来発揮されるべき排気浄化性能を十分に引き出すことができる。
【0029】
尚、本発明の排気浄化装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、図示ではパティキュレートフィルタと選択還元型触媒とを並列に配置した場合における選択還元型触媒の入側に適用した場合を例示しているが、選択還元型触媒以外の後処理装置にも同様に適用することが可能であり、また、後処理装置に対し排気ガスを反転させて導入するレイアウトが採用された様々な形式の排気浄化装置について適用することが可能であること、更に、導風構造は必ずしも窪み部により形成しなくても良く、排気ガスの流れを案内できる形状の部材をガス分散室内に付設して設けても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 排気ガス
4 選択還元型触媒(後処理装置)
7B ミキシングパイプ(排気管路)
7C ガス分散室
11 排気導入口
14 排気ガイド部分
15 窪み部(導風構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを通過させて浄化する後処理装置を排気系に備え、この後処理装置に対し排気ガスを反転させて導入するレイアウトが採用された排気浄化装置において、後処理装置の入側端面を被包し且つ該後処理装置の軸心方向と略直交する向きから排気導入口を介して排気ガスを導き入れるガス分散室を備え、該ガス分散室の排気導入口に排気ガスを導く排気管路を前記後処理装置の軸心方向に延在せしめ且つ前記排気導入口の直前位置で該排気導入口から一旦離間する方向へ曲げてから鉤状に曲げ戻して前記排気導入口に接続し、前記排気管路の鉤状に曲げられた排気ガイド部分と協働して排気ガスの流れを前記後処理装置の軸心に向け円弧状に折り返し得るよう前記ガス分散室に導風構造を設けたことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
後処理装置の入側端面に対し離間する方向へ反り且つ排気導入口から排気ガスの導入方向へ離れるに従い後処理装置の入側端面に近接する窪み部により導風構造を形成したことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−104393(P2013−104393A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250289(P2011−250289)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】