説明

排気浄化装置

【課題】車両以外への適用が容易で且つ車両に適用するにあたっても従来より簡易に取り付けることが可能な汎用性の高い排気浄化装置を提供する。
【解決手段】パティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6とをケーシング7,8により抱持して夫々の入側端部同士が同じ方向を向くように並列に配置して両者をS字構造の連絡流路9で接続し、該連絡流路9の途中に尿素水を添加し得るように構成した排気浄化装置に関し、パティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6の並び方向に延びるベースプレート20を備え、該ベースプレート20に対しパティキュレートフィルタ5及び選択還元型触媒6のケーシング7,8の夫々を独立して姿勢保持し得るように連結し、ベースプレート20をアタッチメントとして設置対象物21へ取り付け得るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス中のパティキュレートとNOxの同時低減を図り得るようにした排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、排気管の途中に排気ガス中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを備えると共に、該パティキュレートフィルタの下流側に酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得る選択還元型触媒を備え、該選択還元型触媒と前記パティキュレートフィルタとの間に還元剤として尿素水を添加してパティキュレートとNOxの同時低減を図ることが提案されている。
【0003】
この場合、選択還元型触媒への尿素水の添加は、パティキュレートフィルタと選択還元型触媒との間で行われることになるため、排気ガス中に添加された尿素水がアンモニアと炭酸ガスに熱分解されるまでの十分な反応時間を確保しようとすれば、尿素水の添加位置から選択還元型触媒までの距離を長くする必要があるが、パティキュレートフィルタと選択還元型触媒とを十分な距離を隔てて離間配置させてしまうと、車両への搭載性が著しく損なわれてしまう。
【0004】
このため、本発明と同じ出願人により図4に示す如きコンパクトな排気浄化装置(下記の特許文献1を参照)が既に提案されており、ここに図示している排気浄化装置では、ディーゼルエンジン1から排気マニホールド2を介して排出される排気ガス3が流通する排気管4の途中に、排気ガス3中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタ5と、該パティキュレートフィルタ5の下流側に酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得る性質を備えた選択還元型触媒6とをケーシング7,8により夫々抱持して並列に配置すると共に、パティキュレートフィルタ5の出側端部と選択還元型触媒6の入側端部との間を接続し且つその上流側に尿素水添加手段10を備えたS字構造の連絡流路9を設け、この連絡流路9を通しパティキュレートフィルタ5の出側端部から排出された排気ガス3が逆向きに折り返されて隣の選択還元型触媒6の入側端部に導入されるようになっている。
【0005】
尚、パティキュレートフィルタ5が抱持されているケーシング7内の前段には、排気ガス3中の未燃燃料分を酸化処理する酸化触媒11が装備されており、また、選択還元型触媒6が抱持されているケーシング8内の後段には、余剰のアンモニアを酸化処理するアンモニア低減触媒12が装備されている。
【0006】
そして、このような構成を採用すれば、パティキュレートフィルタ5により排気ガス3中のパティキュレートが捕集されると共に、連絡流路9の上流側で尿素水添加手段10から尿素水が排気ガス3中に添加されてアンモニアと炭酸ガスに分解され、選択還元型触媒6上で排気ガス3中のNOxがアンモニアにより良好に還元浄化される結果、排気ガス3中のパティキュレートとNOxの同時低減が図られることになる。
【0007】
この際、パティキュレートフィルタ5の出側端部から排出された排気ガス3が連絡流路9により逆向きに折り返されてから隣の選択還元型触媒6の入側端部に導入されるようになっているので、尿素水添加手段10による尿素水の添加位置から選択還元型触媒6までの距離が長く確保され、尿素水からアンモニアが生成されるのに十分な反応時間が確保されることになる。
【0008】
しかも、パティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6とが並列に配置され、これらパティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6との間に沿うように連絡流路9が配置されているので、その全体構成がコンパクトなものとなって車両への搭載性が大幅に向上されることになる。
【0009】
また、このように重量物であるパティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6とを並列に配置してS字構造の連絡流路9で連結した構造では、パティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6の相互間に相対的なねじれが生じ易く、これらを接続している連絡流路9の連結箇所や屈曲箇所などに応力が集中する虞れがあるため、図5に示す如く、パティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6のケーシング7,8相互を軸心方向複数箇所の上下位置で連結部13,14を介し連結して相互間に相対的なねじれが生じないようにした上、車体側のフレーム15に取り付けた一対のブラケット16,17間に前記各ケーシング7,8を配置して片方ずつ連結部18,19を介して前記各ブラケット16,17の夫々に支持させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−196328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、パティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6のケーシング7,8相互を一体的に連結し、車体側の一対のブラケット16,17間に前記各ケーシング7,8を配置して片方ずつ前記各ブラケット16,17の夫々に支持させるようにした従来の支持構造にあっては、車両に合わせて異なるブラケット16,17や連結部18,19及び13,14を製作して各車両ごとに評価しなければならず、車両レイアウトによってもブラケット16,17や連結部18,19及び13,14を変更しなければならなかったため、車両以外の建設機械等への適用を考えた場合における汎用性に難があり、また、車両に適用するにあたっても従来より簡易に取り付けられる構造の提供が望まれていた。
【0012】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、車両以外への適用が容易で且つ車両に適用するにあたっても従来より簡易に取り付けることが可能な汎用性の高い排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、パティキュレートフィルタと、その下流側に備えられて酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応せしめる選択還元型触媒とをケーシングにより抱持して夫々の入側端部同士が同じ方向を向くように並列に配置し、パティキュレートフィルタの出側端部から排出された排気ガスを逆向きに折り返して隣の選択還元型触媒の入側端部に導入するS字構造の連絡流路を備え、該連絡流路の途中に尿素水を添加し得るように構成した排気浄化装置であって、パティキュレートフィルタと選択還元型触媒の並び方向に延びるベースプレートを備え、該ベースプレートに対しパティキュレートフィルタ及び選択還元型触媒のケーシングの夫々を独立して姿勢保持し得るように連結し、前記ベースプレートをアタッチメントとして設置対象物へ取り付け得るように構成したことを特徴とするものである。
【0014】
而して、このようにすれば、パティキュレートフィルタ及び選択還元型触媒のケーシングの夫々が共通のベースプレートに対し独立して姿勢保持されるので、パティキュレートフィルタ及び選択還元型触媒の各ケーシングをベースプレートに連結して組み付けた段階で相互間の相対的なねじれが防止され、ベースプレートを含む全体構成を単一のユニットとして取り扱うことが可能となり、ベースプレートをアタッチメントとして設置対象物へ簡易に取り付けることが可能となる。
【0015】
この結果、ショベルカーやクレーン車といった建設機械等への適用を考えた場合でも、その機体にベースプレートを取り付けることが可能な配置スペースを確保できれば、その取り付けを行うためのブラケットや連結部の新たな製作、変更、評価といった手間をかけずに排気浄化装置の取り付けを行うことが可能となり、また、パティキュレートフィルタ及び選択還元型触媒の相対的なねじれを心配しなくて済むことからパティキュレートフィルタ及び選択還元型触媒のケーシング相互を一体的に連結するための連結部も不要となる。
【0016】
また、本発明においては、パティキュレートフィルタ及び選択還元型触媒の各ケーシングと連絡流路の直線部とを、夫々の軸心が該各軸心と直交する面内で三角形状を成すようにして相互に近接配置することが好ましく、このようにすれば、排気浄化装置の全体構成を小さくまとめて配置スペースのコンパクト化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
上記した本発明の排気浄化装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0018】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、ベースプレートを含む全体構成を単一のユニットとして取り扱うことができ、設置対象物が車両であるか車両以外の建設機械等であるかにかかわらず、ベースプレートをアタッチメントとして設置対象物への簡易な取り付けを行うことができるので、例えば、ショベルカーやクレーン車といった建設機械等を設置対象物として想定した場合であっても、該設置対象物の空きスペースにベースプレートを取り付けることができれば、その取り付けを行うためのブラケットや連結部の新たな製作、変更、評価といった手間をかけることなく排気浄化装置の取り付けを行うことができ、パティキュレートフィルタ及び選択還元型触媒のケーシング相互を一体的に連結するための連結部を省くこともできるので、車両以外への適用が容易で且つ車両に適用するにあたっても従来より簡易に取り付けることが可能な汎用性の高い排気浄化装置とすることができる。
【0019】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、排気浄化装置の全体構成を小さくまとめて配置スペースのコンパクト化を図ることができるので、設置対象物にベースプレートを取り付けるための空きスペースを確保し易くなり、排気浄化装置の汎用性の更なる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す正面図である。
【図2】図1のII−II方向の矢視図である。
【図3】図1の排気浄化装置の斜視図である。
【図4】従来例を示す概略図である。
【図5】図4の排気浄化装置の支持構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図4及び図5と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0023】
図1〜図3に示している例では、先の図4及び図5で従来例として説明した排気浄化装置の場合と同様に、パティキュレートフィルタ5と、その下流側に備えられて酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応せしめる選択還元型触媒6とをケーシング7,8により抱持して夫々の入側端部同士が同じ方向を向くように並列に配置し、パティキュレートフィルタ5の出側端部から排出された排気ガス3を逆向きに折り返して隣の選択還元型触媒6の入側端部に導入するS字構造の連絡流路9を備え、該連絡流路9の途中に尿素水添加手段10により尿素水を添加し得るように構成した排気浄化装置となっているが、パティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6の並び方向(図1中における左右方向)に延びるベースプレート20を備え、該ベースプレート20に対しパティキュレートフィルタ5及び選択還元型触媒6のケーシング7,8の夫々を独立して姿勢保持し得るように連結し、前記ベースプレート20をアタッチメントとして設置対象物21(車両の車体や建設機械の機体等)へ取り付け得るように構成した点を特徴としている。
【0024】
即ち、パティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6の並び方向に延びる一対のベースプレート20が所要の間隔を隔てて配置されており、該各ベースプレート20上にパティキュレートフィルタ5及び選択還元型触媒6のケーシング7,8の夫々が連結部22,23を介して取り付けられており、この取り付けによりパティキュレートフィルタ5及び選択還元型触媒6のケーシング7,8の夫々が共通のベースプレート20に対し独立して姿勢保持され、前記各ケーシング7,8相互の相対的なねじれが生じないようにしてある。
【0025】
この際、パティキュレートフィルタ5及び選択還元型触媒6の各ケーシング7,8と連絡流路9の直線部とは、夫々の軸心x,y,z(図1参照)が該各軸心x,y,zと直交する面(図1の図示面に相当)内で三角形状を成すようにして相互に近接配置されるようになっている。
【0026】
而して、このようにすれば、パティキュレートフィルタ5及び選択還元型触媒6のケーシング7,8の夫々が共通のベースプレート20に対し独立して姿勢保持されるので、パティキュレートフィルタ5及び選択還元型触媒6の各ケーシング7,8をベースプレート20に連結して組み付けた段階で相互間の相対的なねじれが防止され、ベースプレート20を含む全体構成を単一のユニットとして取り扱うことが可能となり、ベースプレート20をアタッチメントとして設置対象物21へ簡易に取り付けることが可能となる。
【0027】
この結果、ショベルカーやクレーン車といった建設機械等への適用を考えた場合でも、その機体にベースプレート20を取り付けることが可能な配置スペースを確保できれば、その取り付けを行うためのブラケットや連結部の新たな製作、変更、評価といった手間をかけずに排気浄化装置の取り付けを行うことが可能となり、また、パティキュレートフィルタ5及び選択還元型触媒6の相対的なねじれを心配しなくて済むことからパティキュレートフィルタ5及び選択還元型触媒6のケーシング7,8相互を一体的に連結するための連結部も不要となる。
【0028】
従って、上記形態例によれば、ベースプレート20を含む全体構成を単一のユニットとして取り扱うことができ、設置対象物21が車両であるか車両以外の建設機械等であるかにかかわらず、ベースプレート20をアタッチメントとして設置対象物21への簡易な取り付けを行うことができるので、例えば、ショベルカーやクレーン車といった建設機械等を設置対象物21として想定した場合であっても、該設置対象物21の空きスペースにベースプレート20を取り付けることができれば、その取り付けを行うためのブラケットや連結部の新たな製作、変更、評価といった手間をかけることなく排気浄化装置の取り付けを行うことができ、パティキュレートフィルタ5及び選択還元型触媒6のケーシング7,8相互を一体的に連結するための連結部を省くこともできるので、車両以外への適用が容易で且つ車両に適用するにあたっても従来より簡易に取り付けることが可能な汎用性の高い排気浄化装置とすることができる。
【0029】
また、パティキュレートフィルタ5及び選択還元型触媒6の各ケーシング7,8と連絡流路9の直線部とを、夫々の軸心x,y,zが該各軸心x,y,zと直交する面内で三角形状を成すようにして相互に近接配置した構成を採用しているので、排気浄化装置の全体構成を小さくまとめて配置スペースのコンパクト化を図ることができて、設置対象物21にベースプレート20を取り付けるための空きスペースを確保し易くなり、排気浄化装置の汎用性の更なる向上を図ることができる。
【0030】
尚、本発明の排気浄化装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
3 排気ガス
5 パティキュレートフィルタ
6 選択還元型触媒
7 ケーシング
8 ケーシング
9 連絡流路
20 ベースプレート
21 設置対象物
22 連結部
23 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パティキュレートフィルタと、その下流側に備えられて酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応せしめる選択還元型触媒とをケーシングにより抱持して夫々の入側端部同士が同じ方向を向くように並列に配置し、パティキュレートフィルタの出側端部から排出された排気ガスを逆向きに折り返して隣の選択還元型触媒の入側端部に導入するS字構造の連絡流路を備え、該連絡流路の途中に尿素水を添加し得るように構成した排気浄化装置であって、パティキュレートフィルタと選択還元型触媒の並び方向に延びるベースプレートを備え、該ベースプレートに対しパティキュレートフィルタ及び選択還元型触媒のケーシングの夫々を独立して姿勢保持し得るように連結し、前記ベースプレートをアタッチメントとして設置対象物へ取り付け得るように構成したことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
パティキュレートフィルタ及び選択還元型触媒の各ケーシングと連絡流路の直線部とを、夫々の軸心が該各軸心と直交する面内で三角形状を成すようにして相互に近接配置したことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104394(P2013−104394A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250290(P2011−250290)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】