説明

排水からのセレン除去方法

【課題】運転コストを低く抑えながら、排水からセレンを高率で除去する。
【解決手段】希土類化合物を含む吸着剤を、pH1.0以上4.5未満でセレンを含有する排水と接触させる排水からのセレン除去方法。希土類化合物は、イットリウム、ランタン、セリウム、又はイッテルビウムの酸化物、あるいは水酸化物の中から選ばれる1種類又は2種類以上の希土類化合物を含むことができる。希土類化合物を多孔質の無機材料又は有機材料に担持させたものを吸着剤として使用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレンを含む排水と、希土類化合物を含む吸着剤とを接触させることによって、排水からセレンを除去する方法に関する。
【0002】
従来、排水に含まれるセレンを除去するにあたって、例えば、還元剤として塩化第一鉄(FeCl2)を用いて凝集沈殿処理を行う方法が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、pH調整等の前処理を行うことなく、希土類化合物を含む吸着剤とセレンを含有する排水とを接触させ、排水中のセレンを簡易な工程で吸着除去する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−326077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、還元剤として塩化第一鉄を用いて凝集沈殿処理を行う方法では、排水中のセレン濃度を安全とされる基準まで除去するには、還元剤としての塩化第一鉄を大量に消費し、運転コストが高騰するという問題があった。
【0006】
一方、特許文献1に記載のセレン含有水の処理方法では、pH調整等の前処理が不要で簡易な工程で処理できるという利点があるものの、セレンの除去率の面で改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、運転コストを低く抑えながら、排水から4価及び6価のセレンを高率で除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、排水からのセレン除去方法であって、希土類化合物を含む吸着剤を、pH1.0以上4.5未満でセレンを含有する排水と接触させることを特徴とする。
【0009】
そして、本発明によれば、pHを1以上4.5未満に調整してセレンを希土類化合物を含む吸着剤に吸着させることで、4価のセレンも6価のセレンも共に除去することが可能で、40〜80%程度のセレン除去率を達成することができ、運転コストを低く抑えながら、排水からセレンを高率で除去することができる。また、pHは3以上4未満がさらに好ましく、70%以上のセレン除去率を達成することができる。尚、セレン除去率は吸着剤の添加量を増加させればさらに高めることができる。
【0010】
上記排水からのセレン除去方法において、前記希土類化合物は、イットリウム、ランタン、セリウム、又はイッテルビウムの酸化物、あるいは水酸化物の中から選ばれる1種類又は2種類以上の希土類化合物を含むことができる。
【0011】
また、上記排水からのセレン除去方法において、前記希土類化合物を多孔質の無機材料又は有機材料に担持させたものを前記吸着剤として使用することができ、セレンの吸着に供する表面積を増大させ、さらに効率よくセレンを吸着除去することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、 運転コストを低く抑えながら、排水から4価及び6価のセレンを高率で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】4価及び6価のセレンを含む排水に水酸化セリウムを吸着剤として投入した場合の排水のpHと処理水のセレン濃度との関係を示すグラフである。
【図2】4価及び6価のセレンを含む排水に水酸化セリウムを吸着剤として投入した場合の排水のpHとセレン除去率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る排水からのセレン除去方法は、希土類化合物を含む吸着剤を、pH1.0以上4.5未満でセレンを含有する排水と接触させることを特徴とする。希土類化合物、特にイットリウム、ランタン、セリウム、又はイッテルビウムの酸化物、あるいは水酸化物の中から選ばれる1種類又は2種類以上の希土類化合物等は、4価及び6価のセレンを効果的に吸着除去することができ、排水中に4価のセレンと6価のセレンが共存する場合でも、排水のpHを1以上4未満に調整するだけでセレン除去が可能となる。尚、吸着剤として使用する希土類化合物は、上記列挙したものが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0015】
上記希土類化合物は、粉末状の化合物を直接排水に投入してもよいが、多孔質の無機材料又は有機材料に担持させて使用することが好ましい。セレンの吸着に供する吸着剤の表面積を増大させることができるので、少ない希土類化合物の添加で、効率よくセレンを吸着除去することができる。
【実施例1】
【0016】
蒸留水にNa2SeO3を溶解させ、4価のセレンを5.1mg/l含有する水溶液を調製した。また、蒸留水にNa2SeO4を溶解させ、6価のセレンを5.7mg/l含有する水溶液を調製した。これらの水溶液を等量混合した水溶液を、蒸留水を用いて10倍希釈することによって、4価のセレンを0.26mg/l含有し、6価のセレンを0.29mg/l含有するpH=6.3の水溶液を調製し、これを供試液とした。
【0017】
供試液を900g採取し、HCl、NaOH水溶液を添加し、所定のpHに調整した。そこに水酸化セリウム試薬0.34gを担持した樹脂を添加し、30分間撹拌した。処理水に含まれるセレン濃度を測定したところ、図1に示す結果が得られた。pH=13.5〜4.5での処理水と、pH=2.5〜1.0での処理水は、いずれもpHを下げるほど処理水に含まれるセレン濃度は低下した。pH=2.5〜4.5での処理水に含まれるセレン濃度は、下に凸の曲線を描き、pH=3.0とpH=3.9における処理水セレン濃度は、各々0.134mg/l、0.085mg/lと低い数値であった。図2は、図1に示した処理水に含まれるセレン濃度からセレン除去率を算出したものであり、pH1.0〜4.5において高い除去率を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類化合物を含む吸着剤を、pH1.0以上4.5未満でセレンを含有する排水と接触させることを特徴とする排水からのセレン除去方法。
【請求項2】
前記希土類化合物は、イットリウム、ランタン、セリウム、又はイッテルビウムの酸化物、あるいは水酸化物の中から選ばれる1種類又は2種類以上の希土類化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の排水からのセレン除去方法。
【請求項3】
前記希土類化合物を多孔質の無機材料又は有機材料に担持させたものを前記吸着剤として使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の排水からのセレン除去方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−78711(P2013−78711A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219067(P2011−219067)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】