説明

排水トラップ

【課題】旋回流形成方式の排水トラップ内の清掃を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】浴槽3内の浴槽水が排水トラップ10の流入口28及び環状水路29を経て受入室20内に流入し、旋回流を形成する。受入室20内の水位は次第に上昇し、ヘアキャッチャー17あるいはさらに排水枡6が旋回流に浸水した状態となる。これにより、排水枡6の内面やヘアキャッチャーに付着しているゴミや毛髪がこすり落とされて、ヘアキャッチャー17の中央部に集められる。受入室20のアウターハウジング21内の下部に、スロート部35付きのインナーハウジング30を着脱自在に設置し、環状水路29を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の洗い場に設けられる排水トラップに係り、特に浴槽排水を受け入れてトラップ内に旋回流を形成させるよう構成された排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
洗い場排水を受け入れる洗い場排水受入口が上部に設けられていると共に、浴槽排水を側周面から受入室内に受け入れて該受入室内に旋回流を形成させるようにした排水トラップが特許第3886055号に記載されている。このトラップの洗い場排水受入口には、上方が開放したカゴ(篭)状のヘアキャッチャーが着脱自在に装着されている。このヘアキャッチャーは、トラップ内の軸心部付近に垂下している。浴槽排水がトラップ内に流入し、トラップ内の水位が上昇して旋回流が形成されると、このヘアキャッチャーが旋回流に浸漬され、ヘアキャッチャー内の毛髪などのゴミがヘアキャッチャーの中心に集められる。これにより、ゴミを摘んで捨てることができるようになる。また、ヘアキャッチャーの内外面が旋回流に浸漬されて浄化され、ヌメリ等が除去される。
【0003】
この特許第3886055号の排水トラップにあっては、浴槽排水は、流入口から受入室へ直接に流入するよう構成されている。
【特許文献1】特許第3886055号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、旋回流形成方式の排水トラップにおいて、受入室の下部内周に沿って環状水路を設けることにより、受入室内の旋回流の旋回流速を大きくし、これによりゴミがヘアキャッチャーの中心に効率よく集められると共に、ヘアキャッチャーの浄化作用も強くなるようにした排水トラップを提供することを目的とする。さらに、本発明は、この環状水路内等の清掃も十分に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の排水トラップは、洗い場排水の受入口を上部に有すると共に、浴槽排水を浴槽排水流入口から略接線方向に受け入れてトラップ内で旋回流を形成させる略円筒形の受入室を有する排水トラップにおいて、該受入室の周壁を構成する円筒形のアウターハウジングと、該アウターハウジングの下部の内周に沿って設けられ、該アウターハウジングとの間に該受入室の周方向に延在する環状水路を形成しているインナーハウジングとを備えており、前記浴槽排水流入口は該環状水路に浴槽排水を流入させるように設けられており、該インナーハウジングに、該環状水路内の水を受入室内に流出させる開口が設けられており、該インナーハウジングは、前記受入口を通って該アウターハウジングに対し着脱可能とされていることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2の排水トラップは、請求項1において、該受入室の底部の中心部に、該受入室内の水を下方に流出させるための、該受入室の内径よりも小さい口径の筒状の流出口部材を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項3の排水トラップは、請求項2において、前記受入室の下側に、水を排水口に導くための導水室が設けられ、該流出口部材の下部は、前記導水室に突出しており、該排水口の下縁のレベルは、前記受入室の底部よりも上位であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4の排水トラップは、請求項2又は3において、前記流出口部材は、前記インナーと一体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明(請求項1)の排水トラップは、洗い場排水と浴槽排水とを受け入れる旋回流形成方式の排水トラップにおいて、受入室の下部内周に環状水路を設け、浴槽排水を該環状水路に導入して旋回させ、次いで、この環状水路から受入室に流出させるようにしたものである。このように、浴槽排水をまず環状水路に導入して旋回させることにより、受入室内に強力な旋回流を形成することができる。
【0010】
また、この環状水路を構成するためのインナーハウジングを着脱自在としているため、インナーハウジングを取り外して環状水路内やインナーハウジングを入念に清掃することも可能である。
【0011】
請求項2の排水トラップは、この受入室の底部の中心部に、受入室内径よりも小口径の流出口を設け、この流出口から水を流出させるように構成したものである。
【0012】
この排水トラップの受入室内では、水は、旋回により渦状となる。請求項2では、この渦流は、受入室底部中央の小口径の流出口に導かれる。この流出口の口径が受入室の内径よりも小さいので、流出口付近での旋回流速が大きくなる。この結果、受入室への排水流入量が少ない場合でも、受入室内の旋回流速が十分に大きなものとなる。
【0013】
請求項3の排水トラップにあっては、浴槽排水が流入しない場合、導水室を含めて排水口下縁のレベルまで水が溜まり、封水が形成される。この封水に対して流出口部材が水没した構成となるので、封水不足によるトラップ切れが確実に防止される。
【0014】
請求項4の排水トラップによると、この流出口部材もインナーハウジングと共に取り外すことができ、流出口部材や導水室内を入念に清掃することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
第1図は排水トラップの正面図、第2図は排水トラップの平面図、第3図は排水トラップの左側面図、第4図は第2図のIV−IV線断面図、第5図は排水トラップの分解断面図、第6図は第1図のVI−VI線断面図、第7図は第4図のVII−VII線断面図、第8図は、実施の形態に係る排水トラップを備えた浴室の概略斜視図である。
【0017】
第8図の通り、洗い場パン2の浴槽3側に排水枡6が一体形成されている。この排水枡6に対し下側から排水トラップ10が連結されている。
【0018】
排水トラップ10の側面の流入口28(第1図、第2図、第4図〜第6図)と浴槽3の底面の排水口3aとが配管4を介して接続されている。
【0019】
また、排水トラップ10の上面部には、洗い場2側からの排水が排水枡6を通り流入する洗い場排水受入口A(第4図)が設けられている。排水トラップ10の流入口28とほぼ反対側の側面の排水口60には排水管7が接続されている。
【0020】
第4図に示すように、排水枡6は洗い場パン2と一体状に凹み状に形成されている。その上面には排水目皿8(第8図)が覆設されている。
【0021】
排水枡6の底側にはフランジ部材15がパッキン(図示略)を介して取り付けられ、このフランジ部材15にネジ込み方式により、排水トラップ10の上端が取り付けられている。フランジ部材15を通して排水トラップ10内に上方から着脱可能にヘアキャッチャー17が差し込まれている。このヘアキャッチャー17は、上面が開いたカゴ(篭)状である。
【0022】
この実施の形態では、ヘアキャッチャー17は下方側へ向かって縮径する略逆円錐台形状を有する。ヘアキャッチャー17は、その下端が排水トラップ10内の封水面Wよりも若干(例えば10mm以下程度)上方に位置するようにフランジ部材15に支持されている。なお、ヘアキャッチャー17は、排水トラップ10内に形成される旋回流によって上方に押されても浮き上がらないようにフランジ部材15に係止部15aによって係止されている。
【0023】
排水トラップ10の構成について次に詳細に説明する。
【0024】
この排水トラップ10は、受入室20と、該受入室20の下部を周回する環状水路29と、受入室20の下側の導水室40と、該導水室40から立ち上がる立上室50と、該立上室50の側面に開口する排水口60とから主として構成されている。
【0025】
受入室20の上部は、筒軸方向を鉛直方向とした円筒形のアウターハウジング21にて構成されている。アウターハウジング21の下部は、外周側へ膨出した形状の大径部22となっている。この大径部22に内周側から被さるように環状のインナーハウジング30が設けられている。アウターハウジング21及びインナーハウジング30の内側が受入室20となっている。大径部22とインナーハウジング30との間が環状水路29となっている。
【0026】
第5図の通り、大径部22の下端からは縮径方向に底面部24が張り出している。この底面部24は水平な円環板状であり、その板央部に透口25が設けられている。透口25に後述のスロート部(流出口部材)35が挿通されている。
【0027】
第4,5図に明示される通り、インナーハウジング30の最上端は、短い円筒状部31であり、大径部22の直上のアウターハウジング21の内周面に当接している。なお、円筒状部31はアウターハウジング21の内周面に摺動自在に接しているだけであり、両者は連結されていない。
【0028】
この円筒状部31に引き続いている、大径部22に対面した部分は、下方ほど縮径するテーパ状部33となっている。このテーパ状部33には、環状水路29内を受入室20内に連通する開口32が複数個(この実施の形態では2個)、周方向に配置位置を異ならせて設けられている。これらの開口32は、周方向に延在した長孔よりなる。
【0029】
インナーハウジング30の下部からは、縮径方向へ、略水平な略円環板状の底面部34が張り出している。この底面部34の内周縁部から、流出口部材としての円筒状のスロート部35が下方へ突設されている。この実施の形態では、インナーハウジング30とスロート部35とは一体成形されている。
【0030】
このスロート部35の口径は、受入室20の最大の内径(この実施の形態では、アウターハウジング21の大径部22よりも上側の内径)の20〜80%特に30〜60%であることが好ましい。
【0031】
前記導水室40は、上開容器形のボトムハウジング41と、該ボトムハウジング41に被さるリッドプレート42とによって囲まれている。ボトムハウジング41及びリッドプレート42は、スロート部35から遠ざかる方向に延在している。リッドプレート42の長手方向の一端側と他端側にそれぞれ開口42a、42bが設けられている。
【0032】
開口42aの上縁部にアウターハウジング21の底面部24が重なり、その上にインナーハウジング22の底面部34が重なり、スロート部35が上方から透口25及び開口42aを通って導水室40内に差し込まれている。底面部34は底面部24に対し上方から重なっているだけであり、両者は連結されていない。底面部24の透口25の周縁部とリッドプレート42の開口42aの周縁部とは超音波溶着や接着などにより水密的に連結されている。
【0033】
なお、この実施の形態では、インナーハウジング30がスロート部35とを一体化したものとなっており、これらは一体となってアウターハウジング21の上部から出し入れ自在となっている。従って、洗い場パン2にこの排水トラップ10を取り付けた後であっても、目皿8及びヘアキャッチャー17を取り外し、スロート部35付きインナーハウジング30を排水トラップ10外に取り外したり、再装着することができる。
【0034】
開口42bからは出口ハウジング51が立設され、この出口ハウジング51内が前記立上室50となっている。この立上室50は、開口42bを介して導水室40内と連通している。出口ハウジング51の上部の側面に排水口60が開口している。この排水口60の下縁が封水面Wとなっている。
【0035】
このように構成された排水トラップの作動について次に説明する。
【0036】
水を張った浴槽3の排水口3aの排水栓を抜くと、浴槽3内の水が流入口28から排水トラップ10の環状水路29内に流入し、旋回方向に流れながら開口32から受入室20内に流入し、この受入室20内に渦状の旋回流を形成する。このように浴槽排水をまず環状水路29に流入して旋回させながら開口32を経て受入室20内に流入さるので、受入室20内に強力な旋回流が形成される。
【0037】
受入室20内の水位は次第に上昇し、ヘアキャッチャー17あるいはさらに排水枡6が旋回流に浸水した状態となる。これにより、排水枡6の内面やヘアキャッチャー17に付着しているゴミや毛髪がこすり落とされて、ゴミや髪の毛は渦の中心に集められ、渦の中心から下方へ落下し、ヘアキャッチャー17の下端の底面中央部に良好に集められる。
【0038】
受入室20内で旋回している水の一部は、渦の中心付近からスロート部35を通って導水室40へ流出する。その後、水は、立上室50を経て排水口60から流出する。
【0039】
上記のように、受入室20内の渦状の旋回流が小口径のスロート部35を経て下方の導水室40へ流出する。このスロート部35付近では、旋回半径が受入室20内における旋回半径よりも小さいため、旋回流速が大きい。この結果、受入室20内の旋回流も、このスロート部35付近の高旋回流速に付随して高速となる。この結果、浴槽3の水位が低く流入口31からの流入水量が少ない場合でも、受入室20内に強力な旋回流が形成され、ヘアキャッチャー17や排水枡6が十分に洗浄される。また、ゴミがヘアキャッチャー17の中心部に効率よく集められる。
【0040】
特に、この実施の形態では、インナーハウジング30のテーパ状部33内周面が下方に向って徐々に縮径するため、受入室20内の下部の旋回流がスロート部35に向って連続的に増速しながら流れるようになり、旋回流速が効率よく増速される。
【0041】
浴槽からすべての水が流出すると、旋回流は停止し、排水トラップ10内には封水面Wのレベルの封水が残る。
【0042】
これにより、排水管7側と洗い場及び浴槽3側とはいずれも封水によって隔絶されることになり、排水管7の臭気が洗い場や浴槽3へ逆流することが防止される。
【0043】
なお、この実施の形態では、スロート部35が下方に延設されているので、スロート部35及びインナーハウジング30の封水への浸漬長さが大きく、封水が減少してもトラップ切れしにくい。
【0044】
この排水トラップ10は、目皿8及びヘアキャッチャー17を外してスロート部(流出口部材)35付きのインナーハウジング30を上方に取り外し、環状水路30内や導水室40内を入念に清掃することができる。もちろん、インナーハウジング30及びスロート部35も入念に清掃することができる。
【0045】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の態様をもとりうる。例えば、開口32は1個又は3個以上とされてもよい。また、スロート部35はインナーハウジング30と別体とされてもよく、アウターハウジング21又はリッドプレート42と一体とされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】排水トラップの正面図である。
【図2】排水トラップの平面図である。
【図3】排水トラップの左側面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】排水トラップの分解断面図である。
【図6】図1のVI−VI線断面図である。
【図7】図4のVII−VII線断面図である。
【図8】実施の形態に係る排水トラップを備えた浴室の斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
3 浴槽
6 排水枡
10 排水トラップ
17 ヘアキャッチャー
20 受入室
21 アウターハウジング
22 大径部
28 流入口
29 環状水路
30 インナーハウジング
32 開口
35 スロート部
40 導水室
41 ボトムハウジング
42 リッドプレート
50 立上室
60 排水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い場排水の受入口を上部に有すると共に、浴槽排水を浴槽排水流入口から略接線方向に受け入れてトラップ内で旋回流を形成させる略円筒形の受入室を有する排水トラップにおいて、
該受入室の周壁を構成する円筒形のアウターハウジングと、該アウターハウジングの下部の内周に沿って設けられ、該アウターハウジングとの間に該受入室の周方向に延在する環状水路を形成しているインナーハウジングとを備えており、
前記浴槽排水流入口は該環状水路に浴槽排水を流入させるように設けられており、
該インナーハウジングに、該環状水路内の水を受入室内に流出させる開口が設けられており、
該インナーハウジングは、前記受入口を通って該アウターハウジングに対し着脱可能とされていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
請求項1において、該受入室の底部の中心部に、該受入室内の水を下方に流出させるための、該受入室の内径よりも小さい口径の筒状の流出口部材を設けたことを特徴とする排水トラップ。
【請求項3】
請求項2において、前記受入室の下側に、水を排水口に導くための導水室が設けられ、
該流出口部材の下部は、前記導水室に突出しており、
該排水口の下縁のレベルは、前記受入室の底部よりも上位であることを特徴とする排水トラップ。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記流出口部材は、前記インナーハウジングと一体であることを特徴とする排水トラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−121183(P2009−121183A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298223(P2007−298223)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】