説明

排水トラップ

【課題】旋回流形成方式の排水トラップにおいて、受入室内の旋回流の旋回流速を大きくする効果が高められた排水トラップを提供する。
【解決手段】受入室11の底面の中央に流出口16が設けられている。流出口16の口径は、受入室11の内径よりも小さいものとなっている。流出口16bの内周面は、略全体が下端側ほど口径が大きくなる形状となっている。流出口16の内周面の水平方向に対する平均傾斜角(仰角)θは、15〜60°特に30〜45°であることが好ましい。受入室11内の渦状の旋回流は、小口径の流出口16を経て流出室17へ流出するため、旋回流速が大きくなる。また、流出口16内を通る渦流は、その遠心力により該流出口16の内周面に沿って広がりながら、該流出口16から流れ落ちる。これにより、流出口16から水の流出が増進されるため、これに付随して受入室11内の旋回流速が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の洗い場に設けられる排水トラップに係り、特に浴槽排水を受け入れてトラップ内に旋回流を形成させるよう構成された排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
洗い場排水を受け入れる洗い場排水受入口が上部に設けられていると共に、浴槽排水を側周面から受入室内に受け入れて該受入室内に旋回流を形成させるようにした排水トラップが特許第3886055号に記載されている。このトラップの洗い場排水受入口には、上方が開放したカゴ(篭)状のヘアキャッチャーが着脱自在に装着されている。このヘアキャッチャーは、トラップ内の軸心部付近に垂下している。浴槽排水がトラップ内に流入し、トラップ内の水位が上昇して旋回流が形成されると、このヘアキャッチャーが旋回流に浸漬され、ヘアキャッチャー内の毛髪などのゴミがヘアキャッチャーの中心に集められる。これにより、ゴミを摘んで捨てることができるようになる。また、ヘアキャッチャーの内外面が旋回流に浸漬されて浄化され、ヌメリ等が除去される。
【0003】
この特許第3886055号の排水トラップにあっては、受入室は略円筒形である。受入室内で旋回流を形成している水は、受入室の周壁の下部から側方へ流出するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3886055号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記旋回流形成方式の排水トラップにおいて、浴槽の水位が低い場合、浴槽排水の排水トラップへの流入流速が小さくなり、受入室内における旋回流速が小さくなり、ヘアキャッチャーの洗浄等が不十分になるおそれがある。
【0006】
そこで、受入室の底部の中心部に、該受入室の内径よりも小さい口径の流出口を設けることが考えられる。このように構成した場合、受入室内で形成された旋回水流は、受入室底部中央の小口径の流出口に導かれる。この流出口の口径が受入室の内径よりも小さいので、流出口付近での旋回流速が大きくなる。この結果、受入室への排水流入量が少ない場合でも、受入室内の旋回流速が大きくなる。
【0007】
本発明は、旋回流形成方式の排水トラップにおいて、受入室内の旋回流の旋回流速を大きくする効果が高められた排水トラップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の排水トラップは、洗い場排水の受入口を上部に有すると共に、浴槽排水を浴槽排水流入口から略接線方向に受け入れてトラップ内で旋回流を形成させる略円筒形の受入室を有する排水トラップにおいて、該受入室の底部の中心部に、該受入室内の水を流出させるための、該受入室の内径よりも小さい口径の流出口が設けられており、該流出口の略全体が下方ほど口径が大きくなっていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の排水トラップは、洗い場排水の受入口を上部に有すると共に、浴槽排水を浴槽排水流入口から略接線方向に受け入れてトラップ内で旋回流を形成させる略円筒形の受入室を有する排水トラップにおいて、該受入室の底部が略水平となっており、該受入室の底部の中心部に、該受入室内の水を流出させるための、該受入室の内径よりも小さい口径の流出口が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の排水トラップは、請求項2において、該流出口の略全体が下方ほど口径が大きくなっていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の排水トラップは、請求項1又は3において、前記流出口の内周面の水平方向に対する平均の傾斜角(仰角)は、15〜60°であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の排水トラップは、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記流出口のうち最も狭まった部分における口径は、受入室の内径の60〜90%であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の排水トラップは、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記流出口の下側に、水を排水口に導くための流出室が設けられ、水は該流出室から立上室を経て該排水口に導かれるよう構成されており、該排水口は、該立上室の側面に設けられており、該排水口の下縁のレベルは、前記流出口よりも上位であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7の排水トラップは、請求項6において、前記流出口は、筒軸心方向を略鉛直方向とした筒形の流出口部材よりなり、該流出口部材の下部は、前記流出室に突出していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
第1発明(請求項1)及び第2発明(請求項2)の排水トラップは、いずれも洗い場排水と浴槽排水とを受け入れる旋回流形成方式の排水トラップにおいて、受入室の底部の中心部に、受入室内径よりも小口径の流出口を設け、この流出口から水を流出させるように構成している。この排水トラップの受入室内では、水は、旋回により渦状となり、この渦流は、受入室底部中央の小口径の流出口に導かれる。この流出口の口径が受入室の内径よりも小さいので、流出口付近での旋回流速(角速度)が大きくなる。この流出口での高速旋回流に引きずられるようにして、受入室内の旋回流速が増大する。
【0016】
第1発明では、この流出口の略全体が下方ほど口径が大きくなっている。そのため、流出口内を通る渦流は、その遠心力により該流出口の内周面に沿って広がりながら、該流出口から流れ出る。これにより、該流出口から水の流出が促進されるため、これに付随して受入室内の旋回流速が増大する。この結果、受入室への排水流入量が少ない場合でも、受入室内の旋回流速が十分に大きなものとなる。
【0017】
第2発明では、受入室の底面が略水平となっているので、受入室内の旋回流と流出口内の高速旋回流とが近接したものとなり、流出口内の高旋回流速が効率よく受入室内の旋回流に伝播し、受入室内の旋回流速が増大する。この結果、受入室への排水流入量が少ない場合でも、受入室内の旋回流速が十分に大きなものとなる。
【0018】
第2発明でも、請求項3の通り流出口の略全体が下方ほど口径が大きくなるよう構成した場合には、第1発明と同様の作用効果が重畳して奏される。
【0019】
請求項4の通り、流出口の内周面の水平方向に対する平均の傾斜角(仰角)を15〜60°とすることにより、流出口から水の流出が効果的に増進される。なお、第2発明では、流出口は上下方向の略全体が略同一口径であってもよい。
【0020】
請求項5の通り、流出口のうち最も狭まった部分における口径を、受入室の内径の60〜90%程度とすることにより、受入室内の旋回流速が十分に増大すると共に、流出口からの流出流量も多くなる。
【0021】
請求項6の排水トラップにあっては、浴槽排水が流入しない場合、流出室を含めて排水口下縁のレベルまで水が溜まり、封水が形成される。
【0022】
請求項7の排水トラップによると、流出口部材の下部が封水に十分に深く水没した構成となるので、封水不足によるトラップ切れが確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係る浴室排水装置の排水トラップの模式的な縦断面図である。
【図2】図1の排水トラップにおける受入室の流出口付近の模式的な拡大図である。
【図3】図1の排水トラップの斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図斜視図である。
【図5】流出口の内周面の形状変更例を示す断面図である。
【図6】比較例に係る流出口の形状を示す断面図である。
【図7】別の実施の形態に係る浴室排水装置の排水トラップの模式的な縦断面図である。
【図8】実験例に用いた排水トラップの模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
[第1及び第2発明の実施の形態]
第1図は第1及び第2発明の実施の形態に係る排水トラップの模式的な断面図であり、第2図は第1図の受入室流出口付近の拡大図である。第3図はこの排水トラップの具体的な斜視図、第4図は第3図のIV−IV線に沿う断面図である。
【0026】
浴室1の洗い場パン2の浴槽3側に排水枡4が一体形成されている。この排水枡4に対し下側から排水トラップ10が連結されている。排水トラップ10は、軸心線方向を鉛直方向とした略円筒形の受入室11を有している。
【0027】
この受入室11の側面の流入口12と浴槽3の底面の排水口3aとが接続部5を介して接続されている。この流入口12は受入室11に対し接線方向に水を流入させるように設けられている。
【0028】
この受入室11の内径は、100〜150mm特に110〜130mmが好ましい。
【0029】
受入室11の上面部には、洗い場パン2側からの排水が排水枡4を通り流入する洗い場排水受入口13が設けられている。
【0030】
排水枡4は洗い場パン2と一体状に凹み状に形成されている。その上面には排水目皿(図示略)が覆設されている。
【0031】
排水枡4の底部の開口には円筒形のフランジ部材14がパッキン(図示略)を介して内嵌状に取り付けられ、このフランジ部材14にネジ込み方式により、排水トラップ10の上端が取り付けられている。フランジ部材14を通して、受入口13内に上方から着脱可能にヘアキャッチャー15が差し込まれている。フランジ部材14の上端の外周側は鍔状となっており、この鍔状部が排水枡4の底面開口の縁部に上側から重なっている。
【0032】
このヘアキャッチャー15は、上面が開いたカゴ(篭)状である。この実施の形態では、ヘアキャッチャー15は下方側へ向かって縮径する略逆円錐台形状を有する。ヘアキャッチャー15は、その下端が排水トラップ10内の封水面Wよりも若干上方に位置するようにフランジ部材14に支持されている。なお、ヘアキャッチャー15は、排水トラップ10内に形成される旋回流によって上方に押されても浮き上がらないようにフランジ部材14の係止部(図示略)に係止されている。
【0033】
第1,2図に明示の通り、受入室11の略水平な底面11fの中央に、受入室11と同軸状に流出口16が設けられている。底面11fは実質的に水平であることが好ましいが、流出口16に向って若干の下り勾配を有していてもよい。この下り勾配は30°以下特に10°以下であることが好ましい。
【0034】
受入室11の下側に流出室17が設けられており、流出口16は、この流出室17に連通している。流出室17は、受入室11の側面に沿って立ち上がる立上室18に連なっている。流出室17の周壁17aのうち、立上室18と反対側は流出口16の近傍に位置している。
【0035】
第2,4図に示すように、流出口16は、略円筒形の流出口部材19の内孔により構成されている。流出口部材19は、その筒軸心方向を略鉛直方向として受入室11の底面開口に差し込まれている。この流出口部材19の上端から放射方向に鍔部19aが突設されており、この鍔部19aが受入室11の底面開口の周縁部に係合している。この流出口部材19の上面は、受入室11の底面と略面一状となっている。
【0036】
第2,4図に示すように、この流出口部材19の上下の長さは受入室11の底部の厚さよりも大きなものとなっており、その下端側は流出室17内に突出している。流出室17の天井面からの流出口部材19の突出長さP(第2図)は、4〜15mm特に6〜10mmであることが好ましい。また、この流出口部材19の下端と流出室17の底面との間隔Qは、5〜25mm特に10〜20mmであることが好ましい。
【0037】
この実施の形態では、流出口16の内周面の上端近傍部分は、口径が略一定の等径部16aとなっており、それよりも下側の部分は、下端側ほど口径が大きくなるテーパ部16bとなっている。テーパ部16bは、好ましくは流出口16の上下方向の幅D(第2図)の30〜70%特に好ましくは40〜60%である。該テーパ部16bは、等径部16aとの境界付近から流出口16の下端まで傾斜角が略一定となっている。このテーパ部16bの水平方向に対する平均傾斜角(仰角)θ(第2図)は、15〜60°特に30〜45°であることが好ましい。なお、この実施の形態のように、流出口16の内周面が等径部16aとテーパ部16bとで構成されている場合には、このテーパ部16bの平均傾斜角θを流出口16の平均傾斜角というものとする。
【0038】
流出口16のうち最も狭まっている部分(この実施の形態では等径部16a)の口径φ(第2図)は、受入室11の内径の60〜90%特に75〜85%であることが好ましい。
【0039】
この実施の形態では、立上室18は流入口12と反対側に設けられているが、これに限定されない。立上室18は、受入室11の外側面に沿って封水面Wよりも上方にまで立ち上がっている。この立上室18の上部側面に、排水流路としての排水管接続部20が連なっている。この排水管接続部20に排水管21が接続される。この排水管接続部20の底面のレベルが封水面Wとなっている。
【0040】
立上室18内と浴室1内とを連通するように通気管22,23が設けられている。この通気管23はヘアキャッチャー15と一体に上下方向に設けられている。通気管23は、その下端が通気管22の上端に着脱自在に嵌合している。通気管22は、受入室11内から、その側周壁を貫いて立上室18内に入り、立上室18内の下部まで延在している。この通気管22の下端部は、大径筒状となっており、その底面に複数の小孔22aが設けられている。立上室18内に水が流れると、通気管22の下端部に負圧が生じ、通気管23,22を通って流水に気泡が混入する。
【0041】
なお、通気管22,23が嵌合することにより、受入室11内の旋回流がヘアキャッチャー15に作用しても、ヘアキャッチャー15は旋回しない。
【0042】
このように構成された排水トラップ10の作動について次に説明する。
【0043】
水を張った浴槽3の排水口3aの排水栓を抜くと、浴槽3内の水が流入口12から排水トラップ10の受入室11内に流入し、この受入室11内に渦状の旋回流を形成する。受入室11内の水位は次第に上昇し、ヘアキャッチャー15あるいはさらに排水枡4が旋回流に浸水した状態となる。これにより、排水枡4の内面やヘアキャッチャー15に付着しているゴミがこすり落とされて、髪の毛等のゴミは渦の中心に集められ、ヘアキャッチャー15の底面中央部に集められる。
【0044】
受入室11内で旋回している水の一部は、渦の中心付近から受入室11の底部中央の流出口16、流出室17、立上室18及び排水管接続部20を経て排水管21へ流出する。
【0045】
この排水トラップ10にあっては、受入室11内の渦状の旋回流は、該受入室11の内径よりも小口径の流出口16を経て下方の流出室17へ流出する。この流出口16付近では、旋回半径が受入室11内の上部側における旋回半径よりも小さくなるため、旋回流速(角速度)が大きくなる。この結果、受入室11内の旋回流も、この流出口16付近の高速旋回流に付随して高速となる。なお、この実施の形態では、受入室11の底面11fを略水平としているが、種々の実験の結果、底面11fを水平とすることにより、底面をテーパ状斜面とした場合に比べて受入室11内の旋回流速が大きくなることが認められた。これは、流出口16の高速旋回流が受入室内の旋回流に対し、より直接的に作用するためであると推察される。
【0046】
また、この排水トラップ10にあっては、流出口16は、略全体が下方ほど口径が大きくなるテーパ形状となっている。そのため、流出口16内を通る旋回流は、その遠心力により該流出口16の内周面に沿って広がりながら、該流出口16から流出室内に流入する。これにより、該流出口16付近における旋回流速が大きいものとなり、これに付随して受入室11内の旋回流速が増大する。
【0047】
この結果、浴槽3の水位が低く流入口12からの流入水量が少ない場合でも、受入室11内に強力な旋回流が形成され、ヘアキャッチャー15や排水枡4が十分に洗浄される。また、ゴミがヘアキャッチャー15の中心部に効率よく集められる。
【0048】
流出室17及び立上室18内に水が流れると、通気管23,22及び小孔22aを介して流水に気泡が混入する。これにより、排水管21に生じる負圧が軽減される。この結果、排水トラップ10の流出室17及び立上室18内の水が殆どすべて排水管21へ吸い出されて排水トラップ10が破封することが防止される。
【0049】
なお、この実施の形態では、流出口16を構成する筒形の流出口部材19の下部が流出室17内に突出しており、封水に十分に深く水没したものとなるので、封水不足によるトラップ切れが確実に防止される。
【0050】
浴槽3からすべての水が流出すると、旋回流は停止し、排水トラップ10内には封水面Wのレベルの封水が残る。また、通気管22内にも小孔22aから水が流入し、通気管22内にも封水面Wまで封水が存在するようになる。
【0051】
これにより、排水管21側と洗い場及び浴槽3側とはいずれも封水によって隔絶されることになり、排水管21の臭気が洗い場や浴槽3へ逆流することが防止される。
【0052】
なお、ヘアキャッチャー15を掃除する場合、排水目皿を取り外し、通気管23を摘んでヘアキャッチャー15を取り出し、ゴミを捨てることができる。
【0053】
[流出口の他の構成例について]
上記の実施の形態は、第1発明の構成要件である「流出口の略全体が下方ほど口径が大きくなる」構成を備えたものであり、流出口16の内周面は、上端近傍部分を除く大部分が下端側ほど口径が大きくなるテーパ部16bとなっているが、第1発明の流出口の内周面の形状はこれに限定されない。
【0054】
第5図(a)〜(c)は、それぞれ、第1発明の実施の形態に係る排水トラップにおける流出口の別の形状の一例を示す断面図である。
【0055】
第5図(a)の流出口16Aは、内周面が階段状となっており、下端側に行くに従って段階的に口径が大きくなっている。なお、第5図(a)では、流出口16Aは3段階に口径が大きくなっているが、2段階又は4段階以上に口径が大きくなるように構成してもよい。
【0056】
第5図(b)の流出口16Bは、内周面が該流出口16Bの中央側に凸に湾曲したものとなっており、第5図(c)の流出口16Cは、内周面が凹に湾曲したものとなっている。
【0057】
なお、第5図(a)においては、流出口16Aの内周面の平均の傾斜角(仰角)とは、流出口16Aの内周面の階段状部分の流出口16A中央側の凸角部同士を結ぶ線分の水平方向に対する平均傾斜角をいう。
【0058】
これらの流出口16A〜16Bにおいても、各々の内周面の水平方向に対する平均傾斜角θは、15〜60°特に30〜45°であることが好ましい。
【0059】
[第2発明の実施の形態]
第2発明は、「流出口の略全体が下方ほど口径が大きくなる」ことを必須とはしないものである。従って、第2発明では、流出口は直筒状であってもよい。第7図は、このように流出口16Fを直筒状(等径円筒状)とした排水トラップの断面図である。
【0060】
この流出口16Fの口径は、第1図〜第5図の実施の形態と同じく、受入室11の内径の60〜90%特に75〜85%であることが好ましい。流出口16Fの流出室17内への突出長さは、前記第2図の場合におけるPと同じく4〜15mm、特に6〜10mmが好ましい。また、この流出口16Fの下端と流出室17の底面との間隔も、第2図の場合におけるQと同じく、5〜25mm特に10〜20mmであることが好ましい。
【0061】
第7図では、流出室17の周壁17aが受入室11の周壁と面一状となっているが、受入室11の周壁よりも流出口16F側に位置していてもよい。
【0062】
排水トラップ10Fのその他の構成は第1図〜第4図の排水トラップ10と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0063】
この実施の形態においても、流出口16F付近における高速旋回流が受入室11内の旋回流に作用することにより、受入室11内の旋回流速が大きくなる。この結果、浴槽3の水位が低く流入口12からの流入水量が少ない場合でも、受入室11内に強力な旋回流が形成され、ヘアキャッチャー15や排水枡4が十分に洗浄される。また、ゴミがヘアキャッチャー15の中心部に効率よく集められる。
【0064】
また、その他の、第1図〜第4図と同一構成に起因して奏される種々の作用効果も、同様に奏される。なお、この第2発明は、流出口が直筒状であることに限定されるものではなく、流出口は下方ほど拡径する形状等であってもよいことは明らかである。
【0065】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。
【実施例】
【0066】
[実験例1〜3]
受入室11の底面11fが水平となっており、その中央部に流出口が設けられている排水トラップにおいて、流出口の内周面の略全体が下端側ほど口径が大きくなる形状となっている場合(実験例1)と、流出口の内周面の略全体が略等径となっている場合(実験例2)と、流出口の内周面の略全体が下端側ほど口径が小さくなる形状となっている場合(実験例3)とで受入室内に形成される旋回流の流速がどの程度異なるか検証する実験を行った。
【0067】
<実験例1:流出口の内周面の略全体が下端側ほど口径が大きくなる形状となっている場合>
第1〜4図の排水トラップ10において、受入室11の平均内径を約115mmとし、流出口16の等径部16aの口径φを約92mmとし、流出口16の上下方向の幅Dを約8mmとし、テーパ部16bの水平方向に対する平均傾斜角θを約34°とした。テーパ部16bの上下幅は、流出口16の上下方向の幅Dの約50%である。流出室17の周壁17aのうち、立上室18と反対側は流出口16の直近(距離は約○○mm)に位置している。
【0068】
<実験例2:流出口の内周面の略全体が略等径となっている場合>
上記の第1〜4図の排水トラップ10において、受入室11の底部に、第6図(a)のように内周面の全体が等径となっている流出口16Dを設け、それ以外は実験例1と同様の構成とした。流出口16Dの口径は約92mm、流出口16Dの上下方向の幅Dは約8mmとした。
【0069】
<実験例3:流出口の内周面の略全体が下端側ほど口径が小さくなる形状となっている場合>
受入室11の底部に、第6図(b)のように内周面の略全体が下端側ほど口径が小さくなっている流出口16Eを設け、それ以外は実験例1,2と同様の構成とした。
【0070】
なお、この流出口16のテーパ部16dは、流出口16Eの上下方向の幅の約50%である。該テーパ部16dは、等径部16cとの境界付近から流出口16Eの下端まで傾斜角θ’が34°で一定となっている。
【0071】
流出口16Eの最下端部の口径は92mmである。流出口16Eの上下方向の幅Dは流出口16と同じく約8mmとした。
【0072】
上記の実験例1,2,3の排水トラップを第1図の如く浴槽3に接続し、それぞれ浴槽3に約400L(リットル)の水を張った状態から排水を行い、受入室11内に形成された旋回流の最大回転数Rを計測した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から明らかな通り、実験例1によれば、流出口の内周面の略全体が略等径となっている実験例2、及び流出口の内周面の略全体が下端側ほど口径が小さくなる実験例3のいずれと比べても、受入室内に形成される旋回流の最大回転数Rが大きなものとなる。
【0075】
[実験例4〜8]
第2図に示す流出口16のテーパ部16bの水平方向に対する平均傾斜角θが旋回流の流速にどのように影響するか検証する実験を行った。
【0076】
即ち、実験例1においてテーパ部16bの水平方向に対する平均傾斜角θを約15°、30°、45°、60°、75°と変化させた他は実験例1と同一構成とした排水トラップを製作し、浴槽3に接続した。実験例1〜3と同じくこの浴槽3に約400Lの水を張った状態から排水を行い、受入室11内に形成された旋回流の最大回転数Rを計測した。結果を表2に示す。なお、表2には上記実験例1(θ=34°)のデータも併せて示す。
【0077】
【表2】

【0078】
表2の通り、テーパ部16bの水平方向に対する平均傾斜角θが15〜60°特に30〜45°のときに、受入室11内により高速な旋回流が形成されるようになる。
【0079】
<実験例9:第7図の場合>
実験例1〜8では、流出室17の周壁17aが流出口16に近接していたが、この周壁17aを第7図の通り受入室11の周壁と面一状とし、また直筒状の流出口16Fを備えた第7図に示す排水トラップ10Fを製作した。第8図(a)はこの排水トラップ10Fの概略的な断面図であり、寸法が記入されている。
この排水トラップ10Fのその他の構成及び寸法は実験例2(流出口が直筒状)と同一である。即ち、第8図(a)の通り、受入室11の直径は115mm、受入室底面11fは水平、流出口16Fの口径は92mm、流出口16Fの高さ(上下幅)は8mmである。流出室17の高さは18mmである。
この排水トラップ10Fを実験例1〜8と同様に浴槽3に接続し、浴槽3内に水深400mm又は200mmに水を張った状態から排水を行い、受入室11内に形成された旋回流の最大回転数Rを計測した。結果を表3に示す。
【0080】
<実験例10>
流出口の形状を第8図(b)の通り、下方ほど大径となるテーパ形状とした他は第8図(a)と同一の排水トラップ10Gを製作した。流出口16Gの上端部の口径は92mm、流出口16Gの傾斜角は20°、流出口16Gの高さは8mmである。
この排水トラップ10Gを浴槽3に接続し、浴槽3内に水深400mm又は200mmに水を張った状態から排水を行い、受入室11内に形成された旋回流の最大回転数Rを計測した。結果を表3に示す。
【0081】
<実験例11>
第8図(c)の通り、受入室11の底面11fを流出口16Hに向って下り勾配とし、流出口16Hを円形開口とした他は第8図(a)と同一の排水トラップ10Hを製作した。流出口16Hは筒状部を備えていない。流出口16Hの口径は92mmである。流出口16Hの流出室17の底面からの高さは10mmである。底面11fの下り勾配は20°である。
この排水トラップ10Hを浴槽3に接続し、浴槽3内に水深400mm又は200mmに水を張った状態から排水を行い、受入室11内に形成された旋回流の最大回転数Rを計測した。結果を表3に示す。
なお、実験例9〜11において、受入室11内の渦の最大水位(受入室11の底面からの高さ。第8図(c)の場合は、底面11fの外周縁からの高さ)を測定した。結果を表3に併せて示す。
【0082】
【表3】

【0083】
表3から明らかな通り、受入室底面11fを勾配面とした実験例11(第8図(c))に比べ、受入室底面11fを水平とした実験例9,10(第8図(a),(b))の方が受入室内の旋回流速が大きい。また、実験例9,10の対比から明らかな通り、流出口を直筒状とした実験例9(第8図(a))の場合よりも、下方ほど大径とした実験例10(第8図(b))の方が受入室内の旋回流速が大きいことが認められる。
【符号の説明】
【0084】
10,10A〜10H 排水トラップ
11 受入室
12 流入口
16,16A〜16H 流出口
18 流出室
19 流出口部材
20 排水管接続部
21 排水管
22,23 通気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い場排水の受入口を上部に有すると共に、浴槽排水を浴槽排水流入口から略接線方向に受け入れてトラップ内で旋回流を形成させる略円筒形の受入室を有する排水トラップにおいて、
該受入室の底部の中心部に、該受入室内の水を流出させるための、該受入室の内径よりも小さい口径の流出口が設けられており、
該流出口の略全体が下方ほど口径が大きくなっていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
洗い場排水の受入口を上部に有すると共に、浴槽排水を浴槽排水流入口から略接線方向に受け入れてトラップ内で旋回流を形成させる略円筒形の受入室を有する排水トラップにおいて、
該受入室の底部が略水平となっており、
該受入室の底部の中心部に、該受入室内の水を流出させるための、該受入室の内径よりも小さい口径の流出口が設けられていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項3】
請求項2において、該流出口の略全体が下方ほど口径が大きくなっていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項4】
請求項1又は3において、前記流出口の内周面の水平方向に対する平均の傾斜角(仰角)は、15〜60°であることを特徴とする排水トラップ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記流出口のうち最も狭まった部分における口径は、受入室の内径の60〜90%であることを特徴とする排水トラップ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記流出口の下側に、水を排水口に導くための流出室が設けられ、
水は該流出室から立上室を経て該排水口に導かれるよう構成されており、
該排水口は、該立上室の側面に設けられており、
該排水口の下縁のレベルは、前記流出口よりも上位であることを特徴とする排水トラップ。
【請求項7】
請求項6において、前記流出口は、筒軸心方向を略鉛直方向とした筒形の流出口部材よりなり、
該流出口部材の下部は、前記流出室に突出していることを特徴とする排水トラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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