説明

排水トラップ

【課題】高さを比較的小さくすることができ、且つ受入室の第1流出口からの流出水を十分な流量にて封水室に流入させることが可能な排水トラップを提供する。
【解決手段】封水室23の底面に、浴槽排水流路30を形成するためのトンネル状の流路形成部材50が設置されている。流路形成部材50の途中部は、周壁部21の内径よりも幅が小さい狭幅部50cとなっている。蓋部材23の底面のうち狭幅部50cの両側部分は、それぞれ、該狭幅部50cの天井部52よりも低くなった低所26となっている。各低所26は、排水トラップ10を平面視した状態において、狭幅部50cに隣接した領域が周壁部21の内周面よりも内側に存在し、該狭幅部50cから離隔した領域が周壁部21の外周面よりも外側に存在したものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽及び洗い場用の排水トラップに係り、特に洗い場排水を受け入れる受入室と、浴槽排水が流入する浴槽排水流路とを有し、該受入室及び浴槽排水流路から水が共通の流出口を通って排水される排水トラップに関する。特に、本発明は、浴槽排水の一部を受入室内に導入する導水部材を備え、この導水部材から水を受入室の略接線方向に流出させて該受入室内で旋回流を形成するように構成された排水トラップに好適な排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
i) 洗い場排水を受け入れる受入室と、浴槽排水が流入する浴槽排水流路とを有し、該受入室及び浴槽排水流路から水が共通の流出口を通って排水される排水トラップが特開2007−197943号公報に記載されている。
【0003】
以下に、第16,17図を参照して同号公報の排水トラップについて説明する。第16図は同号公報の排水トラップの縦断面図、第17図はこの排水トラップの斜視図である。
【0004】
第16図の通り、浴室の床は浴槽パン101と洗い場パン102とによって構成され、該浴槽パン101上に浴槽103が設置されている。符号104は、該浴槽パン101と洗い場パン102とを区画する堤防部を示し、符号105は、該堤防部104に沿って浴槽103の側面を覆うように設置されたエプロン部を示している。
【0005】
該浴槽パン101の底部及び浴槽103の底部には、それぞれ排水口101a,103aが設けられている。第16図の通り、該浴槽パン101の排水口101aは浴槽103の排水口103aよりも大径となっており、且つ浴槽103の排水口103aは浴槽パン101の排水口101aの内側に露呈するように配置されている。
【0006】
洗い場パン102の浴槽103側には排水枡106が設けられている。第16図の通り、排水枡106は洗い場パン102と一体に凹み状に形成されている。この排水枡106の上面には排水目皿107が装着されている。
【0007】
これらの浴槽パン101及び浴槽103の各排水口101a,103a並びに洗い場パン102の排水枡106に対し、下側から排水トラップ110が連結されている。
【0008】
第17図に示すように、排水トラップ110の上面部には、洗い場パン102からの排水が排水枡106を通り流入する洗い場排水受入口110Aと、浴槽103からの排水が排水口103aを通り流入する浴槽排水流入口110Bと、浴槽パン101からの排水が排水口101aを通り流入する浴槽パン排水流入口110Cとが設けられている。
【0009】
また、この排水トラップ110の該浴槽排水流入口110B及び浴槽パン排水流入口110Cと反対側の側面部には、これらの洗い場排水受入口110A、浴槽排水流入口110B及び浴槽パン排水流入口110Cから該排水トラップ110内に流入した水が流出する合流流出口110Dが設けられている。この合流流出口110Dに排水管108が接続されている。
【0010】
この排水トラップ110の構成について次に詳細に説明する。
【0011】
この排水トラップ110は、略円筒状の周壁部121で囲まれており、上部に前記洗い場排水受入口110Aを有し、該周壁部121の下部に第1流出口122を有した洗い場排水の受入室120と、該第1流出口121が連なる前記合流流出口110Dと、受入室120の下側を通って延在し、一端側(上流側)に前記浴槽排水流入口110Bを有し、他端側(下流側)に該合流流出口110Dに連なる第2流出口131を有した浴槽排水流路130と、受入室120の底部中央から立設された、該受入室120の下側の浴槽排水流路130の水の一部を該受入室120内に導入するための導水筒140等を備えている。
【0012】
第16,17図の通り、浴槽排水流路130を取り囲むケーシング132の該浴槽排水流路130上流側の上面から円筒状の浴槽連結部133が立設されている。この浴槽連結部133内は浴槽排水流路130に連通している。この浴槽連結部133の上部が浴槽排水流入口110Bとなっている。また、この浴槽連結部133を取り囲むように、該浴槽連結部133よりも大径の円筒状の浴槽パン連結部134が立設されており、この浴槽パン連結部134と浴槽連結部133との間が浴槽パン排水流入口110Cとなっている。
【0013】
なお、ケーシング132内には、該浴槽排水流路130とは別に、浴槽パン排水流路(図示略)が設けられている。この浴槽パン排水流路は、一端側(上流側)が該浴槽パン排水流入口110Cに連なり、他端側(下流側)が前記合流流出口110Dに連なっている。
【0014】
浴槽パン101の排水口101a及び浴槽103の排水口103aには、それぞれ環状のフランジ部材109a,109bが取り付けられている。浴槽パン101の下側から浴槽パン排水口101aの周縁部に浴槽パン連結部134が当接され、該浴槽パン連結部134にこのフランジ部材109aが螺じ込まれることにより、該浴槽パン連結部134が浴槽パン排水口101aの周縁部に連結されている。また、浴槽103の下側から浴槽排水口103aの周縁部に浴槽連結部133が当接され、該浴槽連結部133にフランジ部材109bが螺じ込まれることにより、該浴槽連結部133が浴槽排水口103aの周縁部に連結されている。
【0015】
第16図に示すように、ケーシング132の浴槽排水流路130下流側は、上方へ立ち上がる立上部135となっている。この立上部135の上部の側面に前記第2流出口131が設けられている。第16図に示すように、この第2流出口131の下縁のレベルW2は、ケーシング132の上面よりも上位となっている。
【0016】
ケーシング132の浴槽排水流路130下流側の上面には、受入室ハウジング136が設けられている。この受入室ハウジング136の上面開口136aから該受入室ハウジング136内に前記周壁部121がその筒軸心方向を上下方向として挿入されている。この周壁部121の上端部は該開口136aの周縁部に係止されている。この周壁部121の下端は、受入室ハウジング136の底面から所定距離離隔している。
【0017】
この周壁部121は、上下両端が開放しており、その上端側の開放口が洗い場排水受入口110Aとなっており、下端側の開放口が第1流出口122となっている。
【0018】
この周壁部121の内側が洗い場排水の受入室120であり、この周壁部121と受入室ハウジング136との間の室は、封水が溜められる封水室123となっている。この受入室120は、第1流出口122と、周壁部121の下端と受入室ハウジング136の底面との間の隙間とを通って封水室123に連通している。
【0019】
洗い場パン102の排水枡106の底部には環状のフランジ部材109cが取り付けられており、このフランジ部材109cが開口136aの周囲の周壁部136bに螺じ込まれることにより、受入室ハウジング136の上部が排水枡106に連結されている。
【0020】
受入室ハウジング136のうち立上部135の上側の部分は、該立上部135の上面に沿って上方へ立ち上がる立上部137となっている。この立上部137の上部の側面に、洗い場排水流出口124が設けられている。第16図に示すように、この洗い場排水流出口124の下縁のレベルW1は、周壁部121の下端よりも上位となっている。
【0021】
ケーシング132の浴槽排水流路130下流側の側面からは、円筒状の前記合流流出口110Dが突設されている。前記洗い場排水流出口124及び第2流出口131は、それぞれこの合流流出口110D内に連通している。
【0022】
導水筒140は、受入室ハウジング136の底面から周壁部121と同軸的に立設され、その上部は受入室120内に配置されている。この導水筒140の下端側は、受入室ハウジング136の底面を貫通して浴槽排水流路130内に露呈している。この導水筒140は、上下両端が開放しており、その下端側の開放口が、浴槽排水流路130の水をこの導水筒140内に導入する導入口141となっている。
【0023】
この導水筒140の下端から下方へ向って突片142が突設されている。この突片142は、導入口141の浴槽排水流路130下流側の縁部に沿って形成されている。この突片142の下端は、浴槽排水流路130の底面に当接している。
【0024】
導水筒140の上部には、該導水筒140の上部から水を周壁部121内に放射状に流出させるためのガイド部材143が設けられている。このガイド部材143は、上方から導水筒140に被さる蓋部と、この蓋部の下面の中央から放射状に延在した複数のガイド片とを有している。該蓋部は導水筒140の上端面から所定距離上方へ離隔しており、この蓋部と導水筒140の上端面との間の隙間が、導水筒140からの水の流出口144となっている。この流出口144は、周壁部121の下端よりも上位に位置している。
【0025】
次に、この排水トラップ110の作動について説明する。
【0026】
洗い場パン102からの排水は、排水枡106及び洗い場排水流入口110Aを通って受入室120に流入し、この受入室120から第1流出口122を通って封水室123に流入する。この際、該第1流出口122からの流出水は、周壁部121の下端とその下方の浴槽排水流路130の天井部との間の隙間を通って封水室123に流入する。その後、この水は、該封水室123、洗い場排水流出口124及び合流流出口110Dを通って排水管108に流出する。この洗い場排水の流出が停止すると、封水室123内には、洗い場排水流出口124の下縁のレベルW1まで封水が残る。この封水に周壁部121の下端が没するので、排水管108の臭気が洗い場排水受入口110Aから浴室内に逆流することが防止される。
【0027】
浴槽103からの排水は、排水口103a及び浴室排水流入口110Bを通って浴槽排水流路130に流入し、この浴槽排水流路130、第2流出口131及び合流流出口110Dを通って排水管108に流出する。また、浴槽パン101からの排水は、排水口101a及び浴槽パン排水流入口110Cを通って浴槽パン排水流路に流入し、この浴槽パン排水流路及び合流流出口110Dを通って排水管108に流出する。この際、該浴槽排水流路130を流れる水の一部は、該浴槽排水流路130の途中で突片142により堰き止められて導入口141から導水筒140内に流入し、該導水筒140内を通って該導水筒140の上部の流出口144から受入室120内に流出する。この際、流出口144から水が各ガイド片に沿って放射状に流出する。
【0028】
浴槽排水の流出が停止すると、浴槽排水流路130内及び浴槽パン排水流路内には第2流出口131の下縁のレベルW2まで封水が残り、この封水によって浴槽排水流路130及び浴槽パン排水流路が封鎖されるため、排水管108の臭気が浴槽排水流入口110B及び浴槽パン排水流入口110Cから浴室内に逆流することが防止される。
【0029】
この排水トラップ110にあっては、封水室123の洗い場排水流出口124と浴槽排水流路130の第2流出口131とが共通の合流流出口110Dに連なっているので、浴槽排水が浴槽排水流路130、第2流出口131及び合流流出口110Dを通って排水管108に流出する場合、この水流により洗い場排水流出口124に負圧が生じて封水室123内の封水が合流流出口110Dに吸い出されることがあるが、浴槽排水流路130を流れる浴槽排水の一部が導水筒140を通って受入室120に流入することにより、封水室123内に封水が補給されるため、該封水室123内で封水切れすることが防止される。
【0030】
ii) 洗い場排水を受け入れる洗い場排水受入口が上部に設けられていると共に、浴槽排水を側周面から受入室内に受け入れて該受入室内に旋回流を形成するようにした排水トラップが特許第3886055号公報に記載されている。このトラップの洗い場排水受入口には、上方が開放したカゴ(篭)状のヘアキャッチャーが着脱自在に装着されている。このヘアキャッチャーは、トラップ内の軸心部付近に垂下している。
【0031】
浴槽排水がトラップ内に流入し、トラップ内の水位が上昇して旋回流が形成されると、このヘアキャッチャーが旋回流に浸漬され、ヘアキャッチャー内の毛髪などのゴミがヘアキャッチャーの中心に集められる。これにより、ゴミを摘んで捨てることができるようになる。また、ヘアキャッチャーの内外面が旋回流に浸漬されて浄化され、ヌメリ等が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2007−197943号公報
【特許文献2】特許第3886055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
近年、マンション等においては、室内の天井高さを高くするために、床下スペースを小さくして床面レベルを低くすることが行われている。そのため、この床下スペースに設置される排水トラップとしては、比較的高さが小さいものが望まれる。
【0034】
しかしながら、上記特開2007−197943号公報の排水トラップ110にあっては、封水室123の下側に浴槽排水流路130が配設されている。また、受入室120の第1流出口122からの流出水を速やかに封水室123に流入させるために、周壁部121の下端と封水室123との間に十分な隙間を確保する必要がある。そのため、この排水トラップ110は、全体の高さが比較的大きなものとなっている。
【0035】
本発明は、高さを比較的小さくすることができ、且つ受入室の第1流出口からの流出水を十分な流量にて封水室に流入させることが可能な排水トラップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明(請求項1)の排水トラップは、筒軸心線方向を略上下方向とした略円筒状の周壁部によって囲まれており、上部に洗い場排水の受入口を有し、下部に第1流出口を有した受入室と、内部に該周壁部を受け入れており、該第1流出口からの流出水が流入する封水室と、該封水室に連なる、該封水室からの溢出水を流出させるための第2流出口と、該第2流出口が連なる合流流出口と、該受入室の下側を通って延在し、一端側に浴槽排水の流入口を有し、他端側に該合流流出口に連なる第3流出口を有している浴槽排水流路とを備えており、該第1流出口からの流出水は、該周壁部の下端と封水室の底面との間の隙間を通って該封水室に流入する浴槽及び洗い場用の排水トラップにおいて、該封水室の底面に、該浴槽排水流路の天井部よりも低くなった低所が設けられており、該排水トラップを平面視した状態において、該低所は、一部が該周壁部の内周面よりも内側に存在し、他部が該周壁部の外周面よりも外側に存在していることを特徴とするものである。
【0037】
請求項2の排水トラップは、請求項1において、前記浴槽排水流路は、少なくとも一部が、前記周壁部の内周面の直径よりも幅が狭くなった狭幅部となっており、前記封水室の底面うち該狭幅部の両側部分が前記低所となっており、該排水トラップを平面視した状態において、該低所は、それぞれ、該狭幅部に隣接した領域が前記周壁部の内周面よりも内側に存在し、該狭幅部から離隔した領域が該周壁部の外周面よりも外側に存在していることを特徴とするものである。
【0038】
請求項3の排水トラップは、請求項1又は2において、前記受入室の下方の前記浴槽排水流路の天井部に、該浴槽排水流路内に連通する開口が設けられていることを特徴とするものである。
【0039】
請求項4の排水トラップは、請求項3において、前記開口は、着脱可能な蓋によって閉鎖されていることを特徴とするものである。
【0040】
請求項5の排水トラップは、請求項3において、前記浴槽排水流路内の水の一部を前記受入室内に導入するための導水部材が前記開口の周縁部に連なっており、該導水部材は、下部が該開口を介して該浴槽排水流路内に開放しており、上部に、該受入室内に開放した吐水口を有していることを特徴とするものである。
【0041】
請求項6の排水トラップは、請求項5において、前記導水部材は、前記開口の周縁部に着脱可能に連結されていることを特徴とするものである。
【0042】
請求項7の排水トラップは、請求項5又は6において、前記導水部材は、前記吐水口から水を前記受入室の略接線方向に流出させて該受入室内で旋回流を形成するための旋回流形成手段を備えていることを特徴とするものである。
【0043】
請求項8の排水トラップは、請求項5ないし7のいずれか1項において、前記受入室の下方の前記浴槽排水流路の天井部に複数個の前記開口が設けられており、各開口にそれぞれ前記導水部材が配設されていることを特徴とするものである。
【0044】
請求項9の排水トラップは、請求項5ないし8のいずれか1項において、前記導水部材は、複数個の前記吐水口を有しており、共通の前記開口から該導水部材内に導入された水が各吐水口から前記受入室内に流出することを特徴とする排水トラップ。
【0045】
請求項10の排水トラップは、請求項5ないし9のいずれか1項において、前記導水部材は、前記浴槽排水流路の上方に配設されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0046】
本発明(請求項1)の排水トラップにあっては、封水室の底面に、浴槽排水流路の天井部よりも低くなった低所が設けられており、該排水トラップを平面視した状態においては、この低所は、一部が受入室の周壁部の内周面よりも内側に存在し、他部が該周壁部の外周面よりも外側に存在している。従って、水が受入室から第1流出口を通って封水室に流入する際には、周壁部の下端とその下方の浴槽排水流路の天井部との間の隙間だけでなく、この低所を通って封水室に流入する。この低所の底面と周壁部の下端との間には、周壁部の下端と浴槽排水流路の天井部との間よりも大きな隙間が存在するため、この低所を介して第1流出口から水を大流量にて封水室に流入させることができる。
【0047】
本発明の排水トラップによれば、このように第1流出口から水が低所を通って十分な流量にて封水室に流入することができるので、周壁部の下端と浴槽排水流路の天井部との間の隙間を小さくすることができる。これにより、比較的高さの小さい排水トラップを構成することが可能である。
【0048】
請求項2の態様にあっては、浴槽排水流路の少なくとも一部が、周壁部の内周面の直径よりも幅が狭くなった狭幅部となっており、封水室の底面のうち該狭幅部の両側部分がそれぞれ低所となっている。これらの低所は、それぞれ、該狭幅部に隣接した領域が周壁部の内周面よりも内側に存在し、該狭幅部から離隔した領域が周壁部の外周面よりも外側に存在している。そのため、これらの低所を介して第1流出口から水を大流量にて封水室に流入させることができる。
【0049】
請求項3の態様にあっては、受入室の下方の浴槽排水流路の天井部に、該浴槽排水流路内に連通する開口が設けられているので、洗い場排水の受入口を介して該開口から浴槽排水流路内に掃除用具や工具を差し入れて容易に該浴槽排水流路内の掃除やメンテナンス等を行うことができる。
【0050】
請求項4の通り、この開口は、着脱可能な蓋によって閉鎖されていることが好ましい。これにより、清掃時やメンテナンス時以外には、この開口を蓋で閉鎖しておくことができる。
【0051】
請求項5の態様にあっては、この開口の周縁部に、浴槽排水流路内の水の一部を受入室内に導入するための導水部材が連なっており、浴槽排水時には、浴槽排水流路内の水の一部が開口を介してこの導水部材内に導入され、この導水部材の上部の吐水口から受入室内に流出する。これにより、浴槽排水が合流流出口を通って流出するのに伴い、封水室内に負圧が生じて該封水室内の封水が合流流出口に吸い出された場合でも、導水部材から受入室内に浴槽排水流路の水の一部が流入することによって封水室内に封水が補給されるため、該封水室内で封水切れすることが防止される。
【0052】
請求項6の通り、この導水部材を開口の周縁部に着脱可能に連結することにより、清掃時やメンテナンス時等には、この導水部材を開口から取り外すことにより、この導水部材、浴槽排水流路内及び受入室内の清掃やメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0053】
請求項7の態様にあっては、導水部材の吐水口から水が受入室の略接線方向に流出することにより、受入室内で旋回流を生じるため、この受入室内に設置されたヘアキャッチャーが旋回流に浸漬され、ヘアキャッチャー内の毛髪などのゴミがヘアキャッチャーの中心に集められる。これにより、ゴミを摘んで捨てることができるようになる。また、ヘアキャッチャーの内外面が旋回流に浸漬されて浄化され、ヌメリ等が除去される。
【0054】
請求項8の態様にあっては、受入室の下方の浴槽排水流路の天井部に複数個の開口が設けられ、各開口にそれぞれ導水部材が設けられている。これにより、各導水部材の吐水口から多量の水が受入室内に導入されるようになる。そのため、浴槽排水時における封水室内の破封防止効果が高いものとなる。また、請求項7のように、各導水部材の吐水口から水が受入室の略接線方向に流出するように構成した場合には、各導水部材の吐水口からの水の水勢が重畳されて受入室内に強力な旋回流が形成されるようになる。また、各導水部材の吐水口を、より効果的に旋回流を形成することができる位置に配置することが可能である。
【0055】
請求項9の態様にあっては、導水部材は、複数個の吐水口を有しており、共通の開口から該導水部材内に導入された水が各吐水口から受入室内に流出するように構成されている。そのため、吐水口の配置の自由度が高いものとなる。これにより、請求項7のように、各導水部材の吐水口から水が受入室の略接線方向に流出するように構成した場合には、各吐水口を、より効果的に旋回流を形成することができる位置に配置することができるため、受入室内に効果的に旋回流を形成することが可能となる。
【0056】
請求項10の通り、導水部材を浴槽排水流路の上方に配設することにより、この導水部材は、各低所の上方に全く又は殆ど存在しないものとすることができる。これにより、受入室内の水がスムーズに各低所に流れ落ち、各低所を通って速やかに封水室に流出するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の実施の形態に係る排水トラップを備えた浴室の模式的な斜視図である。
【図2】図1の排水トラップの斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面斜視図である。
【図4】図2と同様部分の断面斜視図である。
【図5】図1の排水トラップの上方から受入室内を見た斜視図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面斜視図である。
【図7】図1の排水トラップの受入室付近の断面斜視図である。
【図8】浴槽排水導入部材のトップケース及び周壁部を取り外した状態を示す図7と同様部分の断面斜視図である。
【図9】図8からさらに浴槽排水導入部材のボトムケース及びサイドケースを取り外した状態を示す断面斜視図である。
【図10】図6のX−X線に沿う断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る排水トラップの洗い場排水受入口から受入室内を見た斜視図である。
【図12】図11の排水トラップの底部付近の断面図である。
【図13】浴槽排水導入部材のトップケース及び周壁部を取り外した状態を示す、図11と同様部分の斜視図である。
【図14】第3の実施の形態に係る排水トラップの合流流出口付近の断面図である。
【図15】図15の排水トラップの合流流出口付近の断面斜視図である。
【図16】従来例に係る排水トラップの縦断面図である。
【図17】図16の排水トラップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0059】
[第1の実施の形態]
第1図は第1の実施の形態に係る排水トラップを備えた浴室の模式的な斜視図である。第2図はこの排水トラップの斜視図、第3図は第2図のIII−III線に沿う断面斜視図、第4図は第2図と同様部分を第3図(排水管接続部側)と反対側(排水ソケット側)から見た断面斜視図、第5図はこの排水トラップの上方から受入室内を見た斜視図、第6図は第5図のVI−VI線に沿う断面斜視図、第7図はこの排水トラップの受入室付近の断面斜視図、第8図は浴槽排水導入部材のトップケース及び周壁部を取り外した状態を示す第7図と同様部分の断面斜視図、第9図は第8図からさらに浴槽排水導入部材のボトムケース及びサイドケースを取り外した状態を示す断面斜視図、第10図は第6図のX−X線に沿う断面図である。
【0060】
第1図の通り、浴室の床は浴槽パン1と洗い場パン2とによって構成され、この浴槽パン1上に浴槽3が設置されている。浴槽パン1及び浴槽3の底面にはそれぞれ浴槽パン排水口及び浴槽排水口(いずれも図示略)が設けられている。該浴槽パン排水口は浴槽排水口よりも大径となっており、且つ浴槽排水口は浴槽パン排水口の内側に露呈するように配置されている。洗い場パン2の浴槽3側には排水枡(図示略)が形成されている。この排水枡は洗い場パン2と一体に凹み状に形成されており、その底面に洗い場排水口(図示略)が設けられている。排水枡の上面には排水目皿4が覆設されている。
【0061】
これらの浴槽パン排水口、浴槽排水口並びに洗い場排水口に対し、下側から排水トラップ10が連結されている。
【0062】
排水トラップ10は、洗い場パン2からの排水が排水枡の洗い場排水口を通り流入する洗い場排水受入口11と、浴槽3からの排水が浴槽排水口を通り流入する浴槽排水流入口12と、浴槽パン1からの排水が浴槽パン排水口を通り流入する浴槽パン排水流入口13とを備えている。また、この排水トラップ10の該浴槽排水流入口12及び浴槽パン排水流入口13と反対側の側面部には、これらの洗い場排水受入口11、浴槽排水流入口12及び浴槽パン排水流入口13から該排水トラップ10内に流入した水が流出する合流流出口14が設けられている。この合流流出口14に排水管5が接続されている。
【0063】
排水トラップ10は、該浴槽パン排水口への接続用の排水ソケット15(第2〜4図)を備えている。この排水ソケット15は、円形の底面部15aと、該底面部15aの周縁から立設された環状の周壁部15bとを有した皿形のものである。該周壁部15bの上端外周には外向き鍔状のフランジ部15cが周設されている。周壁部15bの内周面には雌ねじ15dが周設されている。浴槽パン排水口を介して排水ソケット15の周壁部15bに環状の結合フランジ4(第1図)が上方から螺着されている。排水ソケット15のフランジ部15cと該結合フランジ6とによって浴槽パン排水口の縁部が挟持され、これにより排水ソケット15が浴槽パン排水口に接続されている。
【0064】
第2,4図の通り、排水ソケット15の底面部15aから円筒形の浴槽排水口接続部15eが立設されており、この浴槽排水口接続部15eの上面開口が前記浴槽排水流入口12となっている。浴槽排水口は、この浴槽排水口接続部15eに差込管(図示略)を介して接続されている。この差込管は、上下方向に延在しており、上端は浴槽排水口に水密的に取り付けられ、下部が浴槽排水流入口12に差し込まれている。この差込管により、浴槽3の排水は直接的に該浴槽排水流入口12に注ぎ込まれるようにして流出する。この浴槽排水口接続部15eと周壁部15bとの間が浴槽パン排水流入口13となっている。
【0065】
第3,4図に示すように、底面部15aの下面側には配管接続用ハウジング15fが排水ソケット15と一体的に形成されており、浴槽排水流入口12は浴槽排水口接続部15e内を介してこの配管接続用ハウジング15f内に連通している。この配管接続用ハウジング15fに、浴槽排水流路30を構成する配管16の一端側(上流側)が接続されている。この配管16の他端側(下流側)は、後述のハウジング25の浴槽排水流入口25fに接続されている。このハウジング25の上面部に、洗い場排水受入口11を構成する開口25aが設けられている。排水枡の洗い場排水口を介してこの開口25aに環状の結合フランジ7(第1図)が上方から螺着されることにより、ハウジング25が排水枡の底部に連結されている。なお、このハウジング25の詳細な構成については後述する。
【0066】
この結合フランジ7を通してハウジング25内に上方から着脱可能にヘアキャッチャー17が差し込まれている。このヘアキャッチャー17は、上面が開いたカゴ(篭)状である。
【0067】
次に、第2〜10図を参照してこの排水トラップ10の構成について詳細に説明する。
【0068】
排水トラップ10は、略円筒状の周壁部21によって囲まれており、上部に前記洗い場排水受入口11を有し、下部に第1流出口22を有した洗い場排水の受入室20と、内部に周壁部21を受け入れており、該第1流出口22からの流出水が流入する封水室23と、該封水室23と前記合流流出口14とに連なっており、該封水室23からの溢出水を該合流流出口14に流出させるための第2流出口24と、受入室20の下側を通って延在しており、上流側に前記浴槽排水流入口12を有し、下流側に該合流流出口14に連なる第3流出口31を有した浴槽排水流路30と、受入室20の下側の浴槽排水流路30の水の一部を該受入室20内に導入するための導水部材40等を備えている。
【0069】
封水室23はハウジング25によって取り囲まれている。第3,4図の通り、このハウジング25の下面が実質的に排水トラップ10の最下部となっている。このハウジング25の上面の開口25aから該ハウジング25内に周壁部21がその筒軸心方向を上下方向として挿入されている。周壁部21の上端部には外向き鍔状のフランジ部21aが周設されている。このフランジ部21aの外径は、開口25aの内径よりも小さなものとなっている。開口25aの内周縁に筒状部25bが連なっている。この筒状部25bの内周面には雌ねじ25cが周設されている。この実施の形態では、前記結合フランジ7がこの雌ねじ25cを介して筒状部25bに螺合している。この結合フランジ7とハウジング25の上面とによって洗い場排水口の縁部が挟持され、これによりハウジング25が排水枡の底部に連結されている。なお、周壁部21のフランジ部21aの外径は、この結合フランジ7の内径よりも小さなものとなっている。
【0070】
筒状部25cの下端部には、内向き鍔状のフランジ部25dが周設されている。このフランジ部25dの内径は、周壁部21の外径よりも若干大きなものとなっている。このフランジ部25dの内周側に周壁部21が挿抜可能に挿入され、該フランジ部25dに周壁部21のフランジ部21aが重なっている。このハウジング25の内面と周壁部21の外周面との間が封水室23となっている。
【0071】
この実施の形態では、該ハウジング25の底面(即ち封水室23の底面)に、前記浴槽排水流路30を形成するためのトンネル状の流路形成部材50が設置されている。この実施の形態では、該流路形成部材50は、ハウジング25の底面の浴槽3側(上流側)からこれと反対側(下流側)まで延設されている。該流路形成部材50は、この実施の形態では、ハウジング25の底面から起立した1対の側壁部51,51と、該側壁部51,51の上端同士に連なる天井部52とを有している。ハウジング25内においては、この流路形成部材50の側壁部51,51及び天井部52とハウジング25の底面とによって囲まれた領域が浴槽排水流路30となっている。浴槽排水流路30は、浴槽3から合流流出口14まで最短距離にて延在するように形成されているため、浴槽排水がこの浴槽排水流路30を通ってスムーズに合流流出口14まで流れる。第3,4図の通り、周壁部21がハウジング25内にセットされた状態において、該周壁部21の下端は、その下方に存在する流路形成部材50の天井部52の上面から離隔している。この周壁部21の下端と流路形成部材50の天井部52との間の隙間は0〜20mm特に5〜15mm程度であることが好ましい。
【0072】
第3,4図の通り、ハウジング25の上流側の側面25eの下部に浴槽排水流入口25fが設けられており、この浴槽排水流入口25fに流路形成部材50の上流側が連なっている。この浴槽排水流入口25fには、ハウジング25の外部側から前記配管16の下流側が接続されている。
【0073】
第3,4図の通り、ハウジング25の底面のうち周壁部21の下方よりも下流側の領域は、該周壁部21から離隔するほど上位となる立上部25gとなっている。流路形成部材50の下流側も、この立上部25gに沿って、該下流側ほど上位となるように延在している。この立上部25gの上端のレベルは、流路形成部材50のうち該立上部25gよりも上流側に配設された部分の天井部52よりも上位となっている。立上部25gの上端には、さらに下流側に向って略水平に延在した棚状部25hが連なっている。流路形成部材50の下流側は、この棚状部25h上まで延在している。この棚状部25h上における流路形成部材50(後述の拡幅部50b)の天井部52の上面のレベルは、周壁部21の下端よりも上位となっている。この流路形成部材50の下流側の端面に前記第3流出口31が形成されている。
【0074】
この実施の形態では、前記排水ソケット15の浴槽排水口接続部15e及び配管接続用ハウジング15f、配管16並びに流路形成部材50によって浴槽排水流路30が構成されている。
【0075】
第3,4図の通り、ハウジング25の下流側の側面25iに開口25jが設けられており、この開口25jに略円筒状の前記合流流出口14が連なっている。この開口25jの下縁のレベルは、棚状部25hの上面(立上部25gの上端)と略同レベルとなっている。また、この開口25jの上縁のレベルは、棚状部25h上における流路形成部材50の天井部52の上面よりも上位となっている。この開口25jの下部に前記第3流出口31が臨んでいる。また、この開口25jのうち該第3流出口31よりも上側部分が前記第2流出口24となっている。即ち、棚状部25h上における流路形成部材50の天井部52の上面が、この第2流出口24の下縁となっている。
【0076】
第10図の通り、この実施の形態では、流路形成部材50の上流側及び下流側は、ハウジング25の底面の幅方向(側壁部51,51同士の接離方向)の両端側まで拡幅した拡幅部50a,50bとなっており、該拡幅部50a,50b同士の間の部分は、これらよりも幅(側壁部51,51同士の間隔)が小さい狭幅部50cとなっている。これにより、ハウジング25の底面のうち該狭幅部50cの両側部分は、それぞれ、該狭幅部50cの天井部52よりも低くなった低所26となっている。
【0077】
この狭幅部50cの少なくとも一部が受入室20の下方に配設されている。この実施の形態では、該狭幅部50cは、受入室20の下方を通って上流側の拡幅部50aの幅方向中間付近と下流側の拡幅部50bの幅方向中間付近とを繋ぐように延在している。この狭幅部50cの幅は、周壁部21の内径よりも小さなものとなっている。そのため、第10図の通り、この狭幅部50cのうち受入室20の下方に配設された部分の側壁部51,51は、排水トラップ10を平面視した状態において、周壁部21の内周面よりも内側に位置している。これにより、この狭幅部50cの両側の低所26は、それぞれ、排水トラップ10を平面視した状態において、該狭幅部50cに隣接した領域が周壁部21の内周面よりも内側に存在し、該狭幅部50cから離隔した領域が周壁部21の外周面よりも外側に存在したものとなっている。
【0078】
なお、本発明においては、狭幅部50cは、排水トラップ10を平面視した状態において、一方の側壁部51のみが周壁部21の内周面よりも内側に位置し、他方の側壁部51は周壁部21の外周面よりも外側に位置するように配設されてもよい。この場合、狭幅部50cの幅は、周壁部21の内径よりも大きくてもよい。また、この場合、排水トラップ10を平面視した状態において周壁部21の内周面よりも内側に位置した側壁部51にのみ隣接して低所26が形成されてもよい。即ち、この実施の形態では狭幅部50cの両側にそれぞれ低所26が形成されているが、狭幅部50cの片側にのみ低所26が形成されてもよい。この実施の形態では、低所26は、第10図の通り、狭幅部50cの側壁部51の外面(浴槽排水流路30と反対側の面)からこれと対向する封水室23の側壁面まで延在しているが、低所26は、この封水室23の側面から離隔していてもよい。
【0079】
この実施の形態では、狭幅部50cのうち受入室20の下方に配設された部分に、他の部分より幅が広がった拡幅部50dが形成されている。第10図の通り、この拡幅部50dは、略円形の平面視形状を有しており、周壁部21と略同心状に配置されている。この拡幅部50dの幅(外径)も、周壁部21の内径より小さいものとなっている。
【0080】
なお、この実施の形態では、狭幅部50cは、その幅方向の中央部が周壁部21の筒軸心線の真下付近を通るように配設されている。この場合、浴槽排水流路30は、浴槽3から合流流出口14まで最短距離にて延在するように形成されているため、浴槽排水がこの浴槽排水流路30を通ってスムーズに合流流出口14まで流れる。ただし、狭幅部50cの配置はこれに限定されない。また、流路形成部材50の形状は図示の形状に限定されない。
【0081】
狭幅部50cにおける側壁部51,51同士の間隔(狭幅部50cにおける浴槽排水流路30の幅)は10〜50mm特に15〜40mmであることが好ましい。ハウジング25の底面と流路形成部材50の天井部52の下面との間隔(ハウジング25内における浴槽排水流路30の高さ)は5〜20mm特に10〜15mmであることが好ましい。低所26の深さ即ちハウジング25の底面から狭幅部50cの天井部52の上面までの高さは8〜23mm特に13〜18mmであることが好ましい。排水トラップ10を平面視した状態において、各低所26のうち周壁部21の内周面よりも内側に存在した部分の総面積は、周壁部21の開口面積の10〜70%特に30〜50%であることが好ましい。
【0082】
この実施の形態では、受入室20の下方の拡幅部50dの天井部52に、浴槽排水流路30内に連通する開口53が設けられている。この実施の形態では、該開口53は、略円形であり、周壁部21と略同心状に配置されている。なお、開口53の形状及び配置はこれに限定されない。
【0083】
この実施の形態では、該開口53に、浴槽排水流路30内を流れる水の一部を受入室20内に導入するための前記導水部材40が連結されている。この実施の形態では、該導水部材40は、開口53に上方から連結されるボトムケース41と、該ボトムケース41から受入室20内に向って立設されたサイドケース42と、該サイドケース42の上端側に取り付けられたトップケース43等を備えている。
【0084】
第3,4,7,8図の通り、該ボトムケース41は、該開口53を取り囲む略円筒形の周壁部41a(第7,8図)と、該周壁部の上方を閉鎖した天井部41b(第7,8図)とを有し、底面が開放した逆カップ形状となっている。このボトムケース41の底面の開放口が浴槽排水の導入口となっている。該周壁部41aの外径は、周壁部21の内径よりも小さなものとなっている。該周壁部41aの下端側からは、開口53の内周縁に係合する係合部41cが突設されている。この係合部41cを介してボトムケース41が開口53の周縁部に着脱可能に連結されている。
【0085】
第3,4,8図の通り、サイドケース42は、内部に浴槽排水導入路(符号略)を有した管状のものであり、その基端側がボトムケース41の周壁部41aの外周面に連なっている。このサイドケース42内の浴槽排水導入路の上流側は、該周壁部41aに形成された開口(符号略)を介してボトムケース41の内部空間と連通している。このサイドケース42は、その基端側から途中部までが周壁部21の内周面に接近するように斜め上方に向って延在しており、該途中部から上端側が該周壁部21の内周面に沿って略鉛直上方に向って延在している。サイドケース42の上端部から、トップケース43に係合する係合凸部42a(第8図)が突設されている。サイドケース42内の浴槽排水導入路の下流側は、この係合凸部42aの上端面に開放している。この実施の形態では、2個のサイドケース42がボトムケース41を挟んで互いに反対方向へ延出するように設けられている。各サイドケース42は、ボトムケース41と一体的に形成されている。なお、導水部材40に設けられるサイドケース42の個数及び配置はこれに限定されるものではなく、サイドケース42は、1個だけ設けられてもよく、周壁部41aの周方向に間隔をおいて3個以上設けられてもよい。サイドケース42は、基端側がボトムケース41の天井部41bに連なっていてもよい。該天井部41bから略鉛直上方に立設されていてもよい。
【0086】
この実施の形態では、ボトムケース41は、第6〜8図に示すように、各サイドケース42がそれぞれ該ボトムケース41から流路形成部材50の上流側及び下流側に向って延出した姿勢にて開口53に連結されている。これにより、各サイドケース42は、流路形成部材50の上方に配置され、各低所26の上方には全く又は殆ど存在しないものとなるため、受入室20内の水がスムーズに各低所26に流れ落ちるようになる。開口53の周囲の天井部52の上面からは、ボトムケース41をこのような姿勢にて開口53に連結したときに、該ボトムケース41の周壁部41aの外周面と各サイドケース42の側面との交差部付近に当接して該ボトムケース41の回転を阻止するストッパ片54が突設されている。
【0087】
各サイドケース42の上端部にそれぞれ前記トップケース43が取り付けられている。この実施の形態では、各トップケース43は、各サイドケース42と別体に形成されており、各サイドケース42の上端側の係合凸部42aが、それぞれ、各トップケース43の下面に形成された係合孔(符号略。第3,4図参照。)に着脱可能に係合している。この実施の形態では、各トップケース43は、周壁部21と一体的に形成されている。即ち、各トップケース43は、周壁部21をハウジング25の上面開口25aに挿抜するのに伴い、各サイドケース42に対し着脱可能となっている。各トップケース43は、周壁部21の内周面に沿って該周壁部21の周方向に延在している。この実施の形態では、周壁部21の周方向に略等間隔にて2個のトップケース43が配設されている。
【0088】
各トップケース43の内部には、上流側が各トップケース43の下面の前記係合孔に連通した浴槽排水導入路が設けられている。この浴槽排水流路の下流側は、各トップケース43の周方向の一端側の端面に形成された吐水口43aに連なっている。この吐水口43aから周壁部21の内周面の接線方向に浴槽排水が吐出される。即ち、この実施の形態では、各トップケース43により旋回流形成手段が構成されている。この実施の形態では、該吐水口43aは、各トップケース43のうち、受入室20を上方から見たときの反時計方向の端面に設けられている。これにより、該吐水口43aから浴槽排水が吐出された場合には、この吐出水の水勢によって受入室20内に該反時計方向の旋回流が形成されるようになる。なお、各トップケース43のうち、受入室20を上方から見たときの時計方向の端面に吐水口43aを設けてもよい。この場合、受入室20内には、該吐水口43aからの吐出水の水勢により、該時計回り方向の旋回流が形成されるようになる。
【0089】
この実施の形態では、各トップケース43の吐水口43aの下縁から舌片状のガイド片43b(第5図)が突設されている。このガイド片43bは、基端側から先端側まで略水平に延在していてもよく、先端側が上方へ反り返るように湾曲したジャンプ台の如き形状となっていてもよい。
【0090】
第7図の通り、各トップケース43は、吐水口43aの上縁のレベルが周壁部21の上縁よりも高位となるように配設されている。この吐水口43aの下縁(ガイド片43bの上面)のレベルは、周壁部21の上縁と同レベルであってもよく、高位となっていてもよく、低位となっていてもよい。
【0091】
この実施の形態では、各トップケース43は、浴槽排水流入口12から受入室20内に差し込まれたヘアキャッチャー17を所定高さに支持する支持部材としても機能するように構成されている。即ち、この実施の形態では、ヘアキャッチャー17の下面は、中央側ほど下位となり、且つ下方へ向って凸に湾曲した略々球状面となっており、各トップケース43の上面は、このヘアキャッチャー17の下面に沿う凹曲面となっている。
【0092】
ヘアキャッチャー17の上端部には、放射方向に張り出すフランジ部17aが周設されている。このフランジ部17aの外径は、前記結合フランジ7の内径と同等かそれよりも若干小さいものとなっている。第3,4図の通り、ヘアキャッチャー17を、該フランジ部17aの上面が結合フランジ7の上面と略面一となるまで受入室20内に差し込むと、各トップケース43の上面にヘアキャッチャー17の下面に当接し、ヘアキャッチャー17が各トップケース43によって支持されるようになる。このヘアキャッチャー17は、その下端が受入室20内の封水面(この実施の形態では、流路形成部材50の下流側の棚状部25h上における天井部52の上面、即ち第2流出口24の下縁のレベル)よりも若干上方に位置するように各トップケース43によって支持される。このとき、ヘアキャッチャー17のフランジ部17aが、結合フランジ7の内周面に設けられた係止部7a(第5図)に係合する。これにより、ヘアキャッチャー17は、受入室20内に形成された旋回流によって上方に押されても浮き上がらないように、該結合フランジ7に係止される。
【0093】
このように構成された排水トラップ10の作動について次に説明する。
【0094】
洗い場パン2からの排水は、排水枡及び洗い場排水流入口11を通って受入室20に流入し、この受入室20から第1流出口22を通って封水室23に流入する。この際、該第1流出口22からの流出水は、周壁部21の下端とその下方の流路形成部材50の天井部52の上面との間の隙間、並びに該流路形成部材50の両側の各低所26を通って封水室23に流入する。この封水室23内の水は、第2流出口24及び合流流出口14を通って排水管5に流出する。この洗い場排水の流出が停止すると、封水室23内には、第2流出口24の下縁のレベルまで封水が残る。この封水に周壁部21の下端が没するので、排水管5の臭気が洗い場排水受入口11から浴室内に逆流することが防止される。
【0095】
浴槽3からの排水は、浴槽排水口及び浴室排水流入口12を通って浴槽排水流路30に流入し、この排水流路30、第3流出口31及び合流流出口14を通って排水管5に流出する。この際、該浴槽排水流路30を流れる水の一部は、該浴槽排水流路30の途中で開口53から導水部材40のボトムケース41内に流入し、次いで、このボトムケース41内から各サイドケース42の浴槽排水導入路にそれぞれ流入し、各サイドケース42内及びその上端側に取り付けられた各トップケース43内の浴槽排水導入路を通って各トップケース43の吐水口43aから受入室20内に流出する。
【0096】
この際、各吐水口43aから水が受入室20内へ周壁部21の内周面の接線方向に流出するため、その水勢により受入室20内に旋回流が形成されるようになる。そして、この水の流入により受入室20内の水位が上昇し、ヘアキャッチャー17あるいはさらに排水枡が旋回流に浸水した状態となる。これにより、排水枡の内面やヘアキャッチャー17に付着しているゴミがこすり落とされて、髪の毛等のゴミは渦の中心に集められ、ヘアキャッチャー17の底面中央部に集められる。これにより、排水枡の内面やヘアキャッチャー17の内外面が浄化され、ヌメリ等が除去される。また、ヘアキャッチャー17内のゴミを摘んで捨てることができるようになる。
【0097】
受入室20内で旋回している水の一部は、該受入室20の下部の第1流出口22を通って封水室23に流入する。この際、前述の通り、該第1流出口22からの流出水は、周壁部21の下端とその下方の流路形成部材50の天井部52の上面との間の隙間、並びに該流路形成部材50の両側の各低所26を通って封水室23に流入する。その後、この封水室23内の水は、第2流出口24及び合流流出口14を通って排水管5に流出する。浴槽排水の流出が停止すると、浴槽排水流路30内には棚状部25hの上面のレベルまで封水が残り、この封水によって浴槽排水流路30が封鎖されるため、排水管5の臭気が浴槽排水流入口12から浴室内に逆流することが防止される。
【0098】
なお、浴槽排水が合流流出口14を通って排水管5に流出するのに伴い、封水室23内に負圧が生じて該封水室23内の封水が合流流出口14に吸い出されることがあるが、導水部材40から受入室20内に浴槽排水流路30の水の一部が流入することにより封水室23内に封水が補給されるため、該封水室23内で封水切れすることが防止される。
【0099】
次に、この排水トラップ10の掃除やメンテナンスを行う際の手順について第7〜9図を参照して説明する。
【0100】
排水トラップ10を清掃する場合、まず、排水目皿4を外し、洗い場排水受入口11から周壁部21を引き抜く。この際、該周壁部21と一体的に導水部材40の各トップケース43が各サイドケース42から取り外される。第8図は、このようにして周壁部21及び各トップケース43を取り外した後の状態を示している。次に、洗い場排水受入口11からハウジング25内に手や工具を挿入し、ボトムケース41やサイドケース42を掴んで該ボトムケース41を開口53から引き抜き、洗い場排水受入口11からハウジング25外に取り出す。第9図は、このようにしてボトムケース41及びサイドケース42を取り外した後の状態を示している。
【0101】
その後、洗い場排水受入口11からハウジング25内に掃除用具や工具を挿入して該ハウジング25内の掃除やメンテナンスを行ったり、さらには開口53から浴槽排水流路30内に掃除用具や工具を挿入して該浴槽排水流路30内の掃除やメンテナンスを行う。また、取り外した周壁部21及び各トップケース43、ボトムケース41及びサイドケース42の掃除やメンテナンスを行う。
【0102】
このように周壁部21や導水部材40をハウジング25内から取り外して掃除やメンテナンスを行うことにより、該周壁部21及び導水部材40、並びにハウジング25内及び浴槽排水流路30内を容易に且つ入念に掃除やメンテナンスすることができる。
【0103】
この排水トラップ10の作用効果は以下の通りである。
【0104】
この排水トラップ10にあっては、水が受入室20から第1流出口22を通って封水室23に流入する際には、この水は、周壁部21の下端とその下方の流路形成部材50の天井部52の上面との間の隙間だけでなく、該流路形成部材50の両側の各低所26を通って封水室23に流入する。各低所26の底面と周壁部21の下端との間には、周壁部21の下端と流路形成部材50の天井部52の上面との間よりも大きな隙間が存在するため、各低所26を介して第1流出口22から水を大流量にて封水室23に流入させることができる。これにより、洗い場排水及び浴槽排水を速やかに排水管5に排出させることができる。
【0105】
この排水トラップ10によれば、上記の通り、第1流出口22から水が各低所26を通って十分な流量にて封水室23に流入することができるので、周壁部21の下端と流路形成部材50の天井部52の上面との間の隙間を小さくすることができる。これにより、比較的高さの小さい排水トラップを構成することが可能である。
【0106】
この実施の形態では、前述の通り、浴槽排水時には、浴槽排水流路30内の水の一部が開口53及び導水部材40を介して受入室20内に導入され、この水が封水室23に補給されるため、浴槽排水時に封水室23内に負圧が生じても、該封水室23内で封水切れすることが防止される。
【0107】
その際、導水部材40の各吐水口43aから受入室20内へ周壁部21の内周面の接線方向に浴槽排水が吐出され、その水勢により受入室20内に旋回流が形成されるため、この受入室20内に設置されたヘアキャッチャー17が旋回流に浸漬され、ヘアキャッチャー17内の毛髪などのゴミがヘアキャッチャー17の中心に集められる。これにより、ゴミを摘んで捨てることができるようになる。また、ヘアキャッチャー17の内外面が旋回流に浸漬されて浄化され、ヌメリ等が除去される。
【0108】
この実施の形態では、開口53に連結された1個のボトムケース41から2個のサイドケース42が分岐しており、各サイドケース42の上端部にそれぞれ吐水口43aを有するトップケース43が取り付けられている。各トップケース43は、周壁部21の周方向に間隔をおいて配設されており、これらの吐水口43aからそれぞれ受入室20内に水が吐出されるため、受入室20内に強力な旋回流を形成することができる。また、各トップケース43は、受入室20の中心から離隔した周壁部21の内周面に沿って配設されているため、各トップケース43の吐水口43aからの吐出水により、効率よく受入室20内に旋回流を形成することができる。このように、1個の開口53から導水部材40内に導入された水が複数個の吐水口43aから受入室20内に吐出されるように導水部材40を構成することにより、各吐水口43aの配置の自由度が高く、より効果的に且つ強力な旋回流を形成し得るように各吐水口43aを配置することができる。
【0109】
この実施の形態では、導水部材40の各サイドケース42は、浴槽排水流路50の上方に配設されており、各低所26の上方には全く又は殆ど存在しないものとなっているので、受入室20内の水は、各サイドケース42に邪魔されることなく、スムーズに各低所26に流れ落ちる。これにより、受入室20内の水が各低所26を通って速やかに封水室23に流出するようになる。
【0110】
なお、この実施の形態では、開口53は、受入室20内への浴槽排水導入用の開口と、浴槽排水流路30内の清掃又はメンテナンス用の開口とを兼ねたものとなっているが、この開口53とは別に、浴槽排水流路30内を清掃又はメンテナンスするための専用の開口が設けられてもよい。あるいは、この開口53を浴槽排水流路30内の清掃又はメンテナンス用の開口とし、この開口53とは別に、受入室20内への浴槽排水導入用の開口が設けられてもよい。
【0111】
[第2の実施の形態]
第11図は第2の実施の形態に係る排水トラップの洗い場排水受入口から受入室内を見た斜視図、第12図はこの排水トラップの底部付近の断面図、第13図は、周壁部及び導水部材のトップケースを取り外した状態を示す、第11図と同様部分の斜視図である。なお、第12図は前述の第5図と同様部分の断面を示している。
【0112】
この実施の形態の排水トラップ10Aにおいては、受入室20の下方の流路形成部材50の天井部52に、該受入室20の中央に位置する開口53とは別に、受入室20内への浴槽排水導入用の開口55が複数個設けられている。即ち、この実施の形態では、該開口53は、浴槽排水流路30内を清掃又はメンテナンスするための専用の開口となっている。浴槽排水流路30内を清掃又はメンテナンスする時以外には、該開口53は、着脱可能な蓋60によって閉鎖されている。
【0113】
第12図の通り、この実施の形態では、流路形成部材50の上流側の拡幅部50aが周壁部21の中央付近の下方まで延在しており、それよりも下流側が狭幅部50cとなっている。この排水トラップ10Aにあっても、該狭幅部50cの両側の低所26は、第12図の通り、排水トラップ10Aを平面視した状態において、狭幅部50cに隣接した領域が周壁部21の内周面よりも内側に存在し、該狭幅部50cから離隔した領域が周壁部21の外周面よりも外側に存在したものとなっている。
【0114】
この実施の形態では、拡幅部50aの天井部52に、ハウジング25の幅方向に間隔をあけて2個の開口55が設けられている。各開口55は、排水トラップ10Aを平面視した状態において、周壁部21の内周面よりも内側に配設されている。各開口55の周縁部からそれぞれ受入室20内に向って管状の導水部44が突設されている。各導水部44の上端側にそれぞれトップケース43が取り付けられている。この実施の形態では、これらの導水部44及びトップケース43により2個の導水部材40Aが構成されている。
【0115】
この実施の形態でも、各トップケース43は、各導水部44と別体に構成されており、各導水部44の上端側の係合凸部44aが各トップケース43の下面の係合孔(図示略)に着脱可能に係合している。各トップケース43は、周壁部21と一体的に形成されている。各導水部44内の浴槽排水導入路(符号略)は、上流側が各開口55に連なり、下流側が該係合凸部44aの上端面に開放しており、該係合孔を介して各トップケース43内の浴槽排水導入路(符号略)に連通している。なお、各導水部44は、各開口55の周縁部に対し着脱可能に連結されていてもよい。
【0116】
この排水トラップ10Aのその他の構成は、前述の第1の実施の形態における排水トラップ10と同様であり、第11〜13図において第1〜10図と同一符号は同一部分を示している。
【0117】
この排水トラップ10Aにあっても、浴槽3からの排水は、該浴槽排水口及び浴室排水流入口12を通って浴槽排水流路30に流入し、この排水流路30、第3流出口31及び合流流出口14を通って排水管5に流出する。この際、該浴槽排水流路30を流れる水の一部は、該浴槽排水流路30の途中で各開口55から各導水部材40Aの導水部44内に流入し、次いで、各導水部44内及びその上端側に取り付けられた各トップケース43内の浴槽排水導入路を通って各トップケース43の吐水口43aから受入室20内に流出する。この水の補給により、浴槽排水時における封水室23内の封水切れが防止される。
【0118】
この際、各吐水口43aから水が受入室20内へ周壁部21の内周面の接線方向に流出するため、その水勢により受入室20内に旋回流が形成されるようになる。そして、この水の流入により受入室20内の水位が上昇し、ヘアキャッチャー17あるいはさらに排水枡が旋回流に浸水した状態となる。これにより、排水枡の内面やヘアキャッチャー17に付着しているゴミがこすり落とされて、髪の毛等のゴミは渦の中心に集められ、ヘアキャッチャー17の底面中央部に集められる。これにより、排水枡の内面やヘアキャッチャー17の内外面が浄化され、ヌメリ等が除去される。また、ヘアキャッチャー17内のゴミを摘んで捨てることができるようになる。
【0119】
受入室20内で旋回している水の一部は、該受入室20の下部の第1流出口22を通って封水室23に流入する。この際、該第1流出口22からの流出水は、周壁部21の下端とその下方の流路形成部材50の天井部52の上面との間の隙間、並びに該流路形成部材50の両側の各低所26を通って封水室23に流入する。その後、この封水室23内の水は、第2流出口24及び合流流出口14を通って排水管5に流出する。浴槽排水の流出が停止すると、浴槽排水流路30内には棚状部25hの上面のレベルまで封水が残り、この封水によって浴槽排水流路30が封鎖されるため、排水管5の臭気が浴槽排水流入口12から浴室内に逆流することが防止される。
【0120】
この排水トラップ10Aのその他の作動は、第1の実施の形態の排水トラップ10と同様である。
【0121】
この排水トラップ10Aを清掃又はメンテナンスする場合、第1の実施の形態と同様に、まず、排水目皿4を外し、洗い場排水受入口11から周壁部21を引き抜く。この際、該周壁部21と一体的に各導水部材40Aのトップケース43が導水部44から取り外される。また、洗い場排水受入口11からハウジング25内に手や工具を挿入して蓋60を外し、開口53を開放させる。第13図は、このようにして周壁部21及び各トップケース43、並びに蓋60を取り外した後の状態を示している。次に、洗い場排水受入口11からハウジング25内に掃除用具や工具を挿入して該ハウジング25内及び導水部44の掃除又はメンテナンスを行ったり、さらには開口53から浴槽排水流路30内に掃除用具や工具を挿入して該浴槽排水流路30内を掃除又はメンテナンスする。また、取り外した周壁部21及び各トップケース43、並びに蓋60も掃除又はメンテナンスする。
【0122】
この排水トラップ10Aにあっても、周壁部21及び各導水部材40Aのトップケース43、並びに蓋60を取り外して掃除やメンテナンスを行うことにより、該周壁部及び各トップケース43、並びにハウジング25内及び浴槽排水流路30内を容易に且つ入念に掃除やメンテナンスすることができる。
【0123】
この実施の形態では、受入室20の底面に、受入室20内へ浴槽排水を導入するための専用の開口55を設けてこの開口55に導水部材40Aを配設しているので、各導水部材40Aの配置の自由度が高い。これにより、受入室20内に、より効果的に且つ強力な旋回流を形成し得るように各導水部材40Aを配設することができる。
【0124】
この実施の形態では、受入室20の底面に2個の開口55を設けてそれぞれ導水部材40Aを配設しており、これらの導水部材40Aの吐水口43aからそれぞれ受入室20内に浴槽排水が吐出されるので、受入室20内に強力な旋回流を形成することができる。
【0125】
この排水トラップ10Aのその他の作用効果は、前述の第1の実施の形態の排水トラップ10と同様である。
【0126】
なお、この実施の形態では、流路形成部材50の天井面に、受入室20内への浴槽排水導入用の開口55が2個設けられているが、1個又は3個以上設けられてもよい。また、この実施の形態では、各開口55にそれぞれ1個の吐水口43aを有する導水部材40Aが配設されているが、それぞれ2個以上の吐水口43aを有した導水部材が配設されてもよい。各開口55に同一形状の導水部材が配設されてもよく、異なる形状の導水部材が配設されてもよい。
【0127】
この実施の形態では、掃除又はメンテナンス用の開口53が1個だけ設けられているが、2個以上設けられてもよい。
【0128】
[第3の実施の形態]
第14図は第3の実施の形態に係る排水トラップの合流流出口付近の断面図、第15図はこの排水トラップの合流流出口付近の断面斜視図である。
【0129】
上記の各実施の形態の排水トラップ10,10Aにおいては、それぞれ、第3,4,10図及び第12図の通り、流路形成部材50の下流側の端部がハウジング25の下流側の側面25iに連なっており、この流路形成部材50の天井部52が、該側面25iに設けられた合流流出口14の基端側の開口25jを横切っている。これにより、該開口25jが天井部52によって上下に分画され、該開口25jのうち天井部52よりも下側部分が、流路形成部材50の内側の浴槽排水流路30に連通した第3流出口31となっており、該天井部52よりも上側部分が、封水室23内に連通した第2流出口24となっている。即ち、上記の各実施の形態では、封水室23からの溢出水は、該開口25jのうち天井部52よりも上側部分のみを通って合流流出口14に流出し、浴槽排水流路30からの浴槽排水は、該開口25jのうち天井部52よりも下側部分のみを通って合流流出口14に流出する。
【0130】
これに対し、この実施の形態の排水トラップ10Bにおいては、第14図の通り、流路形成部材50の下流側の端部は、ハウジング25の棚状部25h上において、該ハウジング25の下流側の側面25iから上流側に離隔している。そのため、この実施の形態では、開口25jは、流路形成部材50の天井部52によって上下に分画されていない。この実施の形態では、第3流出口31は、ハウジング25の棚状部25h及び幅方向両端側の側面、並びに天井部52によって囲まれたものとなっており、第2流出口24は、ハウジング25の幅方向両端側の側面及び上面、並びに天井部52によって囲まれたものとなっている。この流路形成部材50の下流側の端部とハウジング25の下流側の側面25iとの間は、該ハウジング25の棚状部25h、幅方向両端側の側面並びに上面によって囲まれた合流流路25kとなっている。該第2流出口24及び第3流出口31はそれぞれこの合流流路25kに連通しており、この合流流路25kが開口25jに連通している。この流路形成部材50の下流側の端部とハウジング25の下流側の側面25iとの間隔L(第14図)は5〜100mm特に10〜50mmであることが好ましい。
【0131】
この排水トラップ10Bのその他の構成は、前述の第1の実施の形態の排水トラップ10と同様であり、第14,15図において第1〜10図と同一符号は同一部分を示している。
【0132】
この排水トラップ10Bにあっては、封水室23からの溢出水は、第2流出口24から合流流路25kに流入し、この合流流路25kから開口25jを通って合流流出口14に流出する。また、浴槽排水流路30を流れてきた浴槽排水も、第3流出口31から合流流路25kに流入し、この合流流路25kから開口25jを通って合流流出口14に流出する。前述の通り、この排水トラップ10Bでは、流路形成部材50の下流側の端部がハウジング25の下流側の側面25iから離隔しており、開口25jは、この流路形成部材50の天井部52によって上下に分画されていない。そのため、合流流路25kに流入した封水室23からの溢出水及び浴槽排水流路30からの浴槽排水は、それぞれ、この開口25jの全体を通って合流流出口14に流出することができる。これにより、封水室23からの溢出水及び浴槽排水流路30からの浴槽排水の排水効率が高いものとなる。
【0133】
この排水トラップ10Bのその他の作動及び作用効果は、第1の実施の形態の排水トラップ10と同様である。
【0134】
なお、この排水トラップ10Bの構成は、前述の第2の実施の形態の排水トラップ10Aにも適用可能である。
【0135】
上記の各実施の形態は、いずれも本発明の一例を示すものであり、本発明は図示の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0136】
10,10A 排水トラップ
11 洗い場排水受入口
12 浴槽排水受入口
13 浴槽パン排水受入口
14 合流流出口
17 ヘアキャッチャー
20 受入室
21 周壁部
22 第1流出口
23 封水室
24 第2流出口
25 ハウジング
30 浴槽排水流路
31 第3流出口
40,40A 導水部材
41 ボトムケース
42 サイドケース
43 トップケース
43a 吐水口
50 流路形成部材
50c 狭幅部
51 側壁部
52 天井部
53,55 開口
54 ストッパ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒軸心線方向を略上下方向とした略円筒状の周壁部によって囲まれており、上部に洗い場排水の受入口を有し、下部に第1流出口を有した受入室と、
内部に該周壁部を受け入れており、該第1流出口からの流出水が流入する封水室と、
該封水室に連なる、該封水室からの溢出水を流出させるための第2流出口と、
該第2流出口が連なる合流流出口と、
該受入室の下側を通って延在し、一端側に浴槽排水の流入口を有し、他端側に該合流流出口に連なる第3流出口を有している浴槽排水流路と
を備えており、
該第1流出口からの流出水は、該周壁部の下端と封水室の底面との間の隙間を通って該封水室に流入する浴槽及び洗い場用の排水トラップにおいて、
該封水室の底面に、該浴槽排水流路の天井部よりも低くなった低所が設けられており、
該排水トラップを平面視した状態において、該低所は、一部が該周壁部の内周面よりも内側に存在し、他部が該周壁部の外周面よりも外側に存在していることを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
請求項1において、前記浴槽排水流路は、少なくとも一部が、前記周壁部の内周面の直径よりも幅が狭くなった狭幅部となっており、
前記封水室の底面うち該狭幅部の両側部分が前記低所となっており、
該排水トラップを平面視した状態において、該低所は、それぞれ、該狭幅部に隣接した領域が前記周壁部の内周面よりも内側に存在し、該狭幅部から離隔した領域が該周壁部の外周面よりも外側に存在していることを特徴とする排水トラップ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記受入室の下方の前記浴槽排水流路の天井部に、該浴槽排水流路内に連通する開口が設けられていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項4】
請求項3において、前記開口は、着脱可能な蓋によって閉鎖されていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項5】
請求項3において、前記浴槽排水流路内の水の一部を前記受入室内に導入するための導水部材が前記開口の周縁部に連なっており、
該導水部材は、下部が該開口を介して該浴槽排水流路内に開放しており、上部に、該受入室内に開放した吐水口を有していることを特徴とする排水トラップ。
【請求項6】
請求項5において、前記導水部材は、前記開口の周縁部に着脱可能に連結されていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項7】
請求項5又は6において、前記導水部材は、前記吐水口から水を前記受入室の略接線方向に流出させて該受入室内で旋回流を形成するための旋回流形成手段を備えていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項において、前記受入室の下方の前記浴槽排水流路の天井部に複数個の前記開口が設けられており、各開口にそれぞれ前記導水部材が配設されていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれか1項において、前記導水部材は、複数個の前記吐水口を有しており、共通の前記開口から該導水部材内に導入された水が各吐水口から前記受入室内に流出することを特徴とする排水トラップ。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれか1項において、前記導水部材は、前記浴槽排水流路の上方に配設されていることを特徴とする排水トラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−69113(P2011−69113A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220976(P2009−220976)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】