説明

排水用貯留タンクを備えた船舶

【課題】燃料油タンクの二重外板構造の空所を一般生活排水用又は汚水の処理水の少なくとも一方を含む排水の貯留タンクとして活用し、船舶の効率的な配置を行うことができる船舶を提供する。
【解決手段】衝突緩衝用として設けた二重外板構造を燃料油タンク3の外側に有する船舶1において、前記二重外板構造で形成される前記燃料油タンク3の外側の空間部6に貯留タンク8を設け、該貯留タンク8に一般生活排水又は汚水の処理水の少なくとも一方を含む排水を導く配管9aを接続すると共に、貯留タンク8内の前記排水を舷側から船外に排出するための配管9bを、船外排出弁10を備えて配設し、該貯留タンク8を前記排水を貯留するための排水用の貯留タンクとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の居住区等から排出される一般生活排水又は汚水の処理水の少なくとも一方を含む排水を貯留するための排水用貯留タンクを配置した船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の船舶においては、汚水(ブラックウォーター)の処理は海洋汚染防止条約により規制の対象にされ、それに対応した汚水処理装置を含む排水設備が設けられ、適切な水処理がなされた後放流されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この汚水の処理では、居住区の各トイレット又は小便器からの汚水・汚物(洗浄水を含む)を、配管を通して機関室内に設けられた汚水処理装置まで導き、汚水処理した後、舷側から外部に放出している。この汚水処理装置は、汚水処理後の排水を海洋投棄するに当って国際的な基準を満足した装置であることが必要である。
【0004】
この汚水処理装置としては、種々の方式があるが、その一つに受け入れ室、暖気室、沈殿室、滅菌室等を有する活性汚泥処理装置がある。この暖気室には汚水・汚物を分解処理するために暖気用ブロワーが装備され、更に滅菌室には排出用の吐出ポンプが装備されている。また、配管の外部排出部には船級協会等の認定機関に認められた船外排出弁を装備している。この汚水処理装置等で汚水・汚物等を処理した後、船外に排出している。
【0005】
一方、汚水を除く、洗濯排水、浴室排水、洗面所排水、厨房排水等の一般生活排水(グレーウォーター)は一部地域を除いて、海洋汚染防止条約による規制を受けておらず、従来の多くの船舶においては、特別な水処理は行われてきていない。そのため、図4に示すように、居住区の洗面器11やシンク12等の一般生活排水は、その系統毎の配管9で機関室2内に導かれた後、そのまま左右の舷側から直接船外に排出されていた。
【0006】
しかしながら、特定の港湾等では一般生活排水に関しても、また、汚水処理装置で汚水処理された処理水に関しても排出規制が設けられ、沿岸地域や極地等では、そのままの船外へ排出することが禁止されてきており、これらの排出規制に対応するために、一般生活排水用の排水処理装置を船体内に設けることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
また、船舶が規制区域内にいる間は一般生活排水を貯留して、船舶が規制区域外に出てから排出することも行われている。この一時的な貯留のために、一般生活排水用の貯留タンクを備えるようになってきているが、この一般生活排水用の貯留タンクは、従来の船舶においては、機関室内に独立の貯留タンクを配置したり、機関室内の船体の一部を貯留タンクの一部に利用したりして、機関室内に配置している。つまり、居住区の洗面器・シンク等の配管は系統毎に機関室内に導かれ、左右何方かの舷側に配置された、専用の独立した貯留タンクに一旦集めて貯留した上で、船舶が規制区域外に出た時に排出するようにしている。この場合は、汚水の処理の場合のような水処理装置を設けてはいない。
【0008】
しかしながら、一般生活排水やこの一般生活排水に汚水処理水を含めた排水の量は汚水・汚物の量に比べて多いため、これらの排水用の貯留タンクは、汚水用タンクに比較してタンク容量が大きくなり、船体における各機器類などの有効な配置を損ねるという問題や、機関区域内にその場所を確保が難しいという問題がある。
【0009】
つまり、排水規制の進展に伴い、一般生活排水や一般生活排水に汚水処理水を含めた排水の貯蔵タンクが最近必要になってきており、従来船では機関区域内に配置していたが、機関区域内に設けると、タンク容積が大きいので、その分機関区域内のスペースが減少し、機関区域内のレイアウトが難しくなるという問題が生じている。
【0010】
一方、国際海事機関(IMO)の新規則では、燃料油タンクのより強固な保護策が要求されており、燃料油タンクの外板側を衝突緩衝のために二重構造にして、燃料油タンクと外板の間に空間部(空所)を設けることが要求されてきている。
【特許文献1】特開平07−117787号公報
【特許文献2】特開平2006−255513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、衝突緩衝用として設けた二重外板構造を燃料油タンクの外側に有する船舶において、燃料油タンクの外側の二重外板構造の空間部を一般生活排水用又は汚水の処理水の少なくとも一方を含む排水の貯留タンクの配置場所として活用し、機関区域内における船舶の各機器類を効率的に配置することができる排水用貯留タンクを備えた船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の排水用貯留タンクを備えた船舶は、衝突緩衝用として設けた二重外板構造を燃料油タンクの外側に有する船舶において、前記二重外板構造で形成される前記燃料油タンクの外側の空間部に貯留タンクを設け、該貯留タンクに一般生活排水又は汚水の処理水の少なくとも一方を含む排水を導く配管を接続すると共に、貯留タンク内の前記排水を舷側から船外に排出するための配管を、船外排出弁を備えて配設し、該貯留タンクを前記排水を貯留するための排水用貯留タンクとして構成される。この構成によると、燃料油タンクの二重外板構造の空間部を有効利用できると共に、機関室内の配置スペースも排水用貯留タンクの配置を考える必要がなくなるので有効利用できる。
【0013】
また、上記の排水用貯留タンクを備えた船舶において、前記貯留タンクを満載喫水線よりも上に配設すると、重力排水が可能となるので、排出用ポンプを不要とすることができる。あるいは、上記の排水用貯留タンクを備えた船舶において、前記貯留タンクを満載喫水線よりも下に配設すると、排出用ポンプが必要となるが、貯留タンクへの排水の供給が容易となる。
【0014】
更に、上記の排水用貯留タンクを備えた船舶において、汚水処理前の汚水を貯留する汚水用貯留タンクを前記二重外板構造で形成される前記燃料油タンクの外側の空間部に設けると、この汚水貯留タンク分の機関室内の配置スペースもより有効利用できるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の排水用貯留タンクを備えた船舶によれば、燃料油タンクの二重外板構造の空間部を有効利用できると共に、機関室内の配置スペースも排水用貯留タンクの配置を考える必要がなくなり、より有効利用できる。また、この配置によると、排水用貯留タンクが生活区域(居住区)と船側外板の両方に近い状態で配置されることになるので、配管も短くて済む。更に、排水用貯留タンクの構造を工夫することによって、衝突時の衝撃緩和の役割も担わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明に係る排水用貯留タンクを備えた船舶の実施の形態について説明する。図1及び図2に示すように、この船舶1では、船尾に機関区域2があり、この両側に燃料油タンク3が設けられ、更に、その外側が二重外板構造となっている。この二重外板構造の外壁となる外板4の内側に二重外板構造の内壁5が燃料油タンク3の仕切りとして設けられ、この間に空間部(空所:斜線部)6、7が形成される。
【0017】
本発明においては、この空間部6、7の一部で、第3甲板(3rd Deck)26上に相当する部位に、一般生活排水(Gray Water)又は汚水(black Water )の処理水の少なくとも一方を含む排水のための排水用貯留タンク8を設ける。この排水用貯留タンク8は、独立した貯留タンクを空間部6、7に配置するようにしてもよいが、通常は、空間部6、7の一部を壁で仕切って区画8を設けて、この区画8を貯留タンクとして利用する。この方が、排水用貯留タンク8の壁面を外板4や仕切り壁5と兼用できるので、鋼材重量を減少することができる。
【0018】
この排水用貯留タンク8は、独立貯留タンクを配置する場合には、その用途を考慮し、腐食しないように材料を選定した上で、その選定材料に見合った十分な塗装を行う。また、二重外板構造の外板7や内壁5を排水用貯留タンク8の一部として使用する場合には、その部分に対しては十分な塗装を行う。また、必要に応じて、排水用貯留タンク8内の水位を検出するために液面計を設ける。
【0019】
図3に示すように、この排水用貯留タンク8に、居住区の洗面器11、シンク12、ユニットラバトリー内の床面排水13、エアコンのユニット14、冷水飲器15、洗濯機16等や汚水処理水装置(図示しない)からの一般生活排水や汚水処理水を導く配管9aを設け、更に、排水用貯留タンク8内の排水を舷側から船外に排出する配管9bを設ける。この船外排出用の配管9bには船級協会等の認定機関に認められた船外排出弁10を設ける。また、通常、この船外排出用の配管系統に排出用ポンプ(図示しない)を設けるが、排水用貯留タンク8を満載喫水線(L.W.L.)よりも十分上方に配設する場合には重力排水も可能となるので、この場合は排出用ポンプを省くことができる。
【0020】
また、必要に応じて、汚水処理前の汚水貯留タンク(図示しない)を二重外板構造で形成される燃料油タンク3の外側の空間部6、7に設けると、この汚水貯留タンク分の機関室2内の配置スペースもより有効利用できるようになる。
【0021】
この船尾に機関区域2がある場合は、通常は、一般生活排水を排出する洗面器11やシンク12等が配置されている居住区や船橋も船尾にあるので、排水用貯留タンク8を機関区域2の舷側側に配置すると、一般生活排水用の配管9aが短くて済むことになる。また、汚水処理装置も機関区域2に配置される場合が多いので汚水処理水用や汚水用の配管も短くて済むことになる。
【0022】
なお、図3の図番の21は船橋甲板を、22はD甲板を、23はC甲板を、24はA甲板を、25は上甲板を、26は第3甲板をそれぞれ示す。また、CLは船体中心線を、BALL.W.L.はバラスト喫水をそれぞれ示す。
【0023】
上記の構成の船舶1によれば、燃料油タンク3の二重外板構造4、5の空所6を有効利用すると共に、機関区域2内の配置スペース的にも有効利用できる。また、一般生活排水用や汚水処理水用の配管9aも短くて済み、排水用貯留タンク8の構造によって、衝突時の衝撃緩和の役割も担わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の船舶の排水用貯留タンクを配置する空所を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態の船舶の排水用貯留タンクを配置する空所を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態の船舶の排水用貯留タンクと配管を示す配管系統図である。
【図4】排水用貯留タンクを設けない場合の配管を示す配管系統図である。
【符号の説明】
【0025】
1 船舶
2 機関区域
3 燃料油タンク
4 外板(二重外板構造の外壁)
5 二重外板構造の内壁
6 空間部(第1空間部)
7 空間部(第2空間部)
8 排水用貯留タンク
9a、9b 配管
10 船外排出弁
11 洗面器
12 シンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突緩衝用として設けた二重外板構造を燃料油タンクの外側に有する船舶において、前記二重外板構造で形成される前記燃料油タンクの外側の空間部に貯留タンクを設け、該貯留タンクに一般生活排水又は汚水の処理水の少なくとも一方を含む排水を導く配管を接続すると共に、貯留タンク内の前記排水を舷側から船外に排出するための配管を、船外排出弁を備えて配設し、該貯留タンクを前記排水を貯留するための排水用貯留タンクとしたことを特徴とする排水用貯留タンクを備えた船舶。
【請求項2】
前記貯留タンクを満載喫水線よりも上に配設したことを特徴とする請求項1記載の排水用貯留タンクを備えた船舶。
【請求項3】
前記貯留タンクを満載喫水線よりも下に配設したことを特徴とする請求項1記載の排水用貯留タンクを備えた船舶。
【請求項4】
汚水処理前の汚水を貯留する汚水用貯留タンクを前記二重外板構造で形成される前記燃料油タンクの外側の空間部に設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の排水用貯留タンクを備えた船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−174154(P2008−174154A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10721(P2007−10721)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)