説明

排水用通気弁

【課題】閉弁時に於ける臭気の外部漏出を適切に防止することのできる排水用通気弁を提供する。
【解決手段】排水用通気管Aに接続され、該排水用通気管A内が負圧になると自動的に開弁して前記排水用通気管A内に空気を導入する排水用通気弁1であって、前記排水用通気管Aに接続される接続口15と、空気を導入する通気口16と、該通気口16の周囲に設けられる弁座17とを有する本体4と、前記通気口16に開閉自在に設けられる弁体30とを備えている。前記弁体30は、弁本体34と、該弁本体34の周縁部の表裏両面を覆うように設けられ、前記弁座17上に接離自在なパッキン35とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水用通気管に接続され、管内が負圧になったときに自動的に開弁して空気を導入する排水用通気弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の排気用通気弁としては、例えば次のようなものが存在する。この従来のものは、排水用通気管に接続される開口部と、空気を導入する吸気口とが底面に夫々形成された本体と、吸気口の周縁に沿って形成された弁座と、吸気口に開閉自在に設けられた弁体と、弁体の下方位置に空間部を介して設けられた弾性変形可能なパッキンとを備えている。弁体の下面中央には取付筒部が設けられており、これをパッキンの上面中央に形成した離間筒部に挿入して両者が取付けられている。
【0003】
通常、弁体及びパッキンの自重によりパッキンは、その中央部側が下方に撓んだ状態で弁座に当接しており、吸気口は弁体により閉塞されている。このため、排水用通気管内の臭気がパッキンと弁座間から外部に漏出することはない。一方、排水用通気管内が負圧状態になると、弁体及びパッキンの自重に抗して弁体と共にパッキンが上昇する。これにより、開放された吸気口から本体に空気が導入され、排水用通気管内の負圧状態が解消される。これによれば、弁体とパッキン間に形成される空間部により、パッキンが十分に弾性変形するために、閉弁時に於けるパッキンと弁座との良好な密着性を確保することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3041301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の排気用通気弁は、弁体により吸気口が閉塞される閉弁時に於いて、パッキンの中央部側が下方に撓むために、その離間筒部の内周面と弁体の取付筒部の外周面との密着性が損なわれて、両者間に隙間が形成される虞があった。このため、かかる隙間から臭気が外部に漏出してしまうという大なる問題点を有していたのである。
【0006】
それ故に、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、閉弁時に於ける臭気の外部漏出を適切に防止することのできる排水用通気弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る排水用通気弁は、排水用通気管に接続され、該排水用通気管内が負圧になると自動的に開弁して前記排水用通気管内に空気を導入する排水用通気弁であって、前記排水用通気管に接続される接続口と、空気を導入する通気口と、該通気口の周囲に設けられる弁座とを有する本体と、前記通気口に開閉自在に設けられる弁体とを備え、前記弁体は、弁本体と、該弁本体の周縁部の表裏両面を覆うように設けられ、前記弁座上に接離自在なパッキンとを有している。
【0008】
このような排水用通気弁にあっては、閉弁時はパッキンが弁座に当接することになるが、弁体の自重によりパッキンは弾性変形するために、パッキンと弁座とが圧接状態で密着する。そのため、排水用通気管内の臭気がパッキンと弁座間から外部へ漏出することはない。また、パッキンは弁本体の周縁部の表裏両面を覆うように設けられているために、閉弁時に於いてパッキンと弁本体との取付部分から臭気が外部に漏出するようなこともない。このようにして、閉弁時に於ける臭気の外部漏出を適切に防止することができる。
【0009】
また、前記弁本体とパッキンとは一体成形してもよい。
【0010】
これによると、弁本体の周縁部とパッキンとが確実且つ強固に一体化されることになる。このため、弁本体とパッキンとの取付部分からの臭気の漏出を適切に防止することができる。尚、一体成形としては、例えばインサート成形や二色成形等を挙げることができる。
【0011】
更に、前記弁本体は、閉塞部を有する筒状部と、該筒状部の外周面に形成され、外周縁に前記パッキンが設けられる鍔部とを備え、前記筒状部には、前記本体に設けられたガイド軸をスライド自在に挿入させるようにしてもよい。
【0012】
これによると、弁体が筒状部に挿入されたガイド軸に沿って移動し、通気口が開閉される。このため、弁体の開閉動作を正確に且つスムーズに行うことができる。また、筒状部には閉塞部が設けられているために、臭気が筒状部を介して外部へ漏出することはない。
【0013】
また、前記閉塞部を介して前記筒状部に二室が区画形成され、前記ガイド軸が所定間隔を有して同軸上に配置される一対のガイド軸からなり、該ガイド軸が前記筒状部の各室に夫々スライド自在に挿入されるようにしてもよい。
【0014】
これによると、弁体は一対のガイド軸により案内されるために、弁体の開閉動作がより一層正確に且つスムーズに行えるようになる。
【0015】
更に、前記閉塞部は筒状部の一端部に設けても構わない。
【0016】
この場合、弁体は筒状部の他端部側に配されるガイド軸により案内される。これによると、全体の構成を簡略することができる。
【0017】
また、前記弁体が、外周縁部に前記パッキンが設けられた弁本体と、該弁本体の中央に設けられ、前記本体に形成された通孔にスライド自在に挿入されるガイド軸とを備えるようにしてもよい。
【0018】
これによると、弁体は通孔をスライド移動するガイド軸により案内されることになる。パッキンが弁座上に着座して、臭気の外部漏出を適切に防止することができる。
【0019】
更に、前記弁体を通気口側に付勢する付勢手段を備えさせるようにしてもよい。
【0020】
これによると、弁体の自重だけではなく、付勢手段による付勢力が作用するために、弁体による通気口の閉塞性が更に向上すると共に、閉弁動作を迅速に且つ的確に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、閉弁時に於ける臭気の外部漏出を適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る排水用通気弁を示し、(a)は正面図で、(b)は底面図である。
【図2】(a)は排水用通気弁の断面図で、(b)はガイド軸の横断面図で、(c)は弁体の断面図である。
【図3】他の実施形態に係る排水用通気弁を示し、(a)は断面図で、(b)底面図である。
【図4】(a)〜(c)はその他の実施形態に係る排水用通気弁の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に従って説明する。図1に示すように、本実施形態に係る排水用通気弁1は、基体2と、基体2に着脱自在に取付けられる下部開口状のカバー体3とを備えている。かかる基体2とカバー体3とから本体4が構成されている。図2(a)に示すように、カバー体3の下部内周面に周設された凹溝10に、基体2の上部外周面に周設された凸部11を嵌合させて、両者は着脱自在に取付けられている。
【0024】
カバー体3の下部外周面にはフランジ12が設けられており、その下面にはゴム製のシールリング13がインサート成形又は二色成形により一体成形されている。カバー体3を基体2に取付けた際には、シールリング13が基体2に設けたフランジ14の上面に圧接されるために、基体2とカバー体3間から臭気が外部に漏出することはない。尚、シールリング13は、必ずしもインサート成形や二色成形によりカバー体3のフランジ12に設ける必要はなく、例えば接着や凹凸嵌合等により設けるようにしてもよい。また、シールリング13は、カバー体3のフランジ12ではなくて、基体2のフランジ14に設けても構わない。更に、各フランジ12、14は省略することも可能である。
【0025】
基体2には、図1(b)及び図2(a)に示すように、排水用通気管Aに接続される接続口15と、空気を導入するための通気口16とが並んで形成されている。通気口16の周囲には、環状の弁座17が上向きに設けられている。通気口16の下方位置には、中央部側程下方に傾斜する4片からなる平面略十字状の支持部材18が設けられている。支持部材18の上面中央部には、図2(b)に示すように、横断面略十字状の下ガイド軸19が略鉛直に突設されている。カバー体3の上部内面には、前記下ガイド軸19の上端部と所定間隔を有して同軸上に配置される横断面略十字状の上ガイド軸20が突設されている。尚、前記通気口16の個数は適宜変更が可能であり、複数設けても構わない。また、各ガイド軸19、20の形状は必ずしも横断面略十字状に限定されるものではなく、例えば丸棒状等に形成してもよい。
【0026】
通気口16には、弁体30が開閉自在に設けられている。この弁体30は、図2(c)に示すように、内部が閉塞部31により仕切られて、上下に二室32a、32bが形成された筒状部32と、筒状部32の下部側外周面に略水平に周設された鍔部33とからなる弁本体34と、鍔部33の外周縁部に表裏両面を覆うように設けられたゴム製のパッキン35とを備えている。尚、鍔部33は、必ずしも筒状部32に略水平に設ける必要はなく、先端部側程上向きに又は下向きに傾斜するように設けてもよい。下向きに傾斜させると、弁体30の表面に付着した結露等を良好に流下させることができる。
【0027】
パッキン35は、鍔部33にインサート成形又は二色成形により一体成形されており、弾性変形が可能である。このパッキン35が基体2の弁座17上に着座することにより、基体2の通気口16が閉塞される。鍔部33の上面には、パッキン35との一体性を高めるために、凹溝36が周設されている。この凹溝36は、鍔部33の下面又は上下両面に設けてもよい他、省略することも可能である。また、鍔部33はインサート成形又は二色成形をし易くするために、ABS樹脂で構成されている。但し、鍔部33の具体的な材質は筒状部32を含めて、決してこれに限定されるものではない。筒状部32の各室32a、32bには、前記カバー体3の上ガイド軸20と支持部材18の下ガイド軸19とが夫々スライド自在に挿入されている。この場合、上下ガイド軸19、20の各横断面は略十字状に形成されているために、空気の流通路が確保されることになる。これにより、弁体30はガイド軸19、20に沿ってスムーズにスライドする。
【0028】
本実施形態に係る排水用通気弁1は、以上のように構成されている。排水用通気弁1が接続される排水用通気管Aは、例えば戸建てや集合住宅等の壁内空間に配されるものであり、排水用主管、排水用枝管及びトラップを介して、各階の便器、風呂場、洗面場等の排水設備に接続される。
【0029】
排水用通気弁1の通気口16は、通常、閉弁状態にある。即ち、弁体30はその自重により下降しており、パッキン35が弁座17上に着座して通気口16は閉塞されている。この場合、パッキン35は弾性変形が可能であるために、このパッキン35と弁座17とは圧接状態で密着することになる。また、パッキン35は鍔部33の外周縁部に一体形成されると共に、弁体30の筒状部32は閉塞部31により閉塞されている。従って、排水用排気管内の臭気が、通気口16から外部に漏出することを確実に防止できる。
【0030】
一方、前記排水設備の排水時に於いて、排水用通気管Aに弁体30の自重以上の負圧が発生すると、弁体30は各ガイド軸19、20に案内されながら上昇する。これにより、パッキン35と弁座17との圧接状態が解除されて、通気口16が開放される。そして、通気口16から排水に必要な空気が導入されるために、排水設備のトラップ封水が保護されると共に、円滑に排水が行われることになる。
【0031】
排水が終了すると、排水用通気管A内の負圧状態が解消されるために、弁体30は再度自重により下降する。その際、弁体30は各ガイド軸19、20に沿って移動するために、弁体30の閉弁動作を正確に且つスムーズに行うことができる。これにより、パッキン35が弁座17に圧接するために、通気口16が弁体30により確実に且つ強固に閉塞される。このような一連の排水過程に於いても、排水用通気管A内の臭気が外部へ漏出するようなことはない。
【0032】
また、本実施形態に係る排水用通気弁1は、全体が非常に簡易な構成からなるために、その製作も容易に且つ安価に行うことができるという実用的な利点もある。
【0033】
尚、上記実施形態に於いては、弁体30の筒状部32に閉塞部31を設けて内部に二室32a、32bが形成されるように構成したが、例えば図3に示すように、閉塞部31は筒状部32の上端部に設けるようにしてもよい。この場合、閉塞部31は筒状部32の下端部に設けても構わない。本実施形態では、基体2の通気口16には、水平状の4片からなる平面略十字状の支持部材40が設けられると共に、その上面中央部には、横断面略十字状のガイド軸41が略鉛直に突設されている。このガイド軸41は、弁体30の筒状部32にスライド自在に挿入される。その他の構成は上記実施形態と同様であるが、この場合も上記実施形態と同じように、閉弁時に於ける通気口16からの臭気の漏出を適切に防止できる。また、上記実施形態と比較して、構成の簡略化が図ることができる。
【0034】
また、弁体30は、次のように構成することも可能である。図4に示すように、弁体30は、外周縁部にパッキン35がインサート成形又は二色成形により設けられた円板状の弁本体50と、弁本体50の中央に設けられたガイド軸51とを備えている。ガイド軸51は、例えば同図(a)及び(b)に示すように、基体2に設けた筒状部52の通孔53にスライド自在に挿入される。また、同図(c)の如く、基体2に、中央部側程上方に傾斜する複数の支持片54を設け、各支持片54の上端部間に形成される通孔53にガイド軸51をスライド自在に挿入させてもよい。この場合も、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。尚、各通孔53は通気口16の中央に配置される。
【0035】
更に、上記実施形態では、弁体30の自重を利用して通気口16を閉塞するようにしているが、弁体30を通気口16側に付勢する付勢手段を設けるようにしてもよい。例えば、図2(a)に於いて二点鎖線で示すように、付勢手段としてのコイルバネ60を上ガイド軸20に挿着し、筒状部32の上面を介して弁体30を通気口16側に付勢する。このようにすると、弁体30による通気口16の閉塞性が更に向上すると共に、閉弁動作を迅速に且つ確実に行うことができる。尚、この場合は、排水用通気管A内に発生する負圧の大きさを十分に考慮しつつ、適正な弾性力を備えたコイルバネ60を選択することが望ましい。但し、付勢手段はコイルバネ60に限定されるものではない。
【0036】
また、上記実施形態に於いては、弁本体34の鍔部33の外周縁部にパッキン35を設けたが、例えば弁本体34をリング状に形成すると共に、その内周縁部にパッキン35を設けるようにすることも可能である。
【0037】
更に、弁本体34とパッキン35とは、必ずしも上記実施形態のようにインサート成形又は二色成形により一体成形する必要はない。例えば、接着接合や凹凸嵌合により両者を取付けてもよい。要は、弁本体34の周縁部の表裏両面を覆うようにパッキン35が設けられればよく、その具体的な取付手段は問うものではない。
【0038】
その他、排水用通気弁1を構成する各部に形状等の具体的な構成も本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0039】
1 排水用通気弁
4 本体
15 接続口
16 通気口
17 弁座
19、20 ガイド軸
30 弁体
31 閉塞部
32 筒状部
32a、32b 室
33 鍔部
34、50 弁本体
35 パッキン
53 通孔
60 付勢手段(コイルバネ)
A 排水用通気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水用通気管に接続され、該排水用通気管内が負圧になると自動的に開弁して前記排水用通気管内に空気を導入する排水用通気弁であって、
前記排水用通気管に接続される接続口と、空気を導入する通気口と、該通気口の周囲に設けられる弁座とを有する本体と、
前記通気口に開閉自在に設けられる弁体とを備え、
前記弁体は、弁本体と、該弁本体の周縁部の表裏両面を覆うように設けられ、前記弁座上に接離自在なパッキンとを有している排水用通気弁。
【請求項2】
前記弁本体とパッキンとが一体成形されている請求項1記載の排水用通気弁。
【請求項3】
前記弁本体は、閉塞部を有する筒状部と、該筒状部の外周面に形成され、外周縁に前記パッキンが設けられる鍔部とを備え、前記筒状部には、前記本体に設けられたガイド軸がスライド自在に挿入される請求項1又は2記載の排水用通気弁。
【請求項4】
前記閉塞部を介して前記筒状部に二室が区画形成され、前記ガイド軸が所定間隔を有して同軸上に配置される一対のガイド軸からなり、該ガイド軸は前記筒状部の各室に夫々スライド自在に挿入される請求項3記載の排水用通気弁。
【請求項5】
前記閉塞部が筒状部の一端部に設けられている請求項3記載の排水用通気弁。
【請求項6】
前記弁体が、外周縁部に前記パッキンが設けられた弁本体と、該弁本体の中央に設けられ、前記本体に形成された通孔にスライド自在に挿入されるガイド軸とを備えた請求項1又は2記載の排水用通気弁。
【請求項7】
前記弁体を通気口側に付勢する付勢手段を備えている請求項1〜6の何れか一つに記載の排水用通気弁。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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