説明

掘削土砂のpH調整方法

【課題】掘削土砂のpH調整を短期間で行うことができるpH調整方法を提供する。
【解決手段】
掘削土砂のpH調整方法は、リバース掘削で発生した掘削土砂A1を土質改良機29に投入し、土質改良機29で掘削土砂A1にpH調整剤28を加えながら粉砕攪拌する粉砕攪拌工程S105、を備え、pH調整剤28は、乳酸と増量材とを含み、粉末状であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削で発生する掘削土砂のpH調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、リバース掘削で地盤を掘削する際には、アルカリ性の安定液が使用される場合がある。この場合、アルカリ性を示す掘削土砂が発生するが、当該掘削土砂を植生土壌等として再利用するには、掘削土砂のpHを低下させる処理が必要である。このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の土壌の中和方法が知られている。この方法は、アルカリ性の土壌に、小麦フスマ、末粉、米糠等の糟糠類を混合添加し、糟糠類を嫌気性発酵させて有機酸を生成させ、有機酸を土壌中のアルカリ成分と中和反応させて土壌のpH低下を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−60608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、糟糠類の嫌気性発酵が数日単位の期間をかけて進行するので、土壌のpH低下の効果が現れるまでに時間がかかるといった問題があった。この問題に鑑み、本発明は、掘削土砂のpH調整を短期間で行うことができるpH調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の掘削土砂のpH調整方法は、掘削で発生した掘削土砂を土質改良機に投入し、土質改良機で掘削土砂にpH調整剤を加えながら粉砕攪拌する粉砕攪拌工程、を備え、pH調整剤は、乳酸と増量材とを含み、粉末状であることを特徴とする。
【0006】
このpH調整方法によれば、粉砕攪拌工程においてpH調整剤中の乳酸が掘削土砂に混合されるので、混合直後から乳酸が掘削土砂中のアルカリ成分と中和反応することにより、短期間で掘削土砂のpH低下が図られる。また、pH調整剤は、乳酸と増量材とが混合され、粉末状のものであるので、乳酸が掘削土砂中に均等に攪拌混合されやすく、その結果、アルカリ成分と乳酸との反応が短時間で進行する。
【0007】
具体的には、粉砕攪拌工程では、掘削土砂1mに対してpH調整剤が20〜150kgの割合で添加されることとしてもよい。この割合で掘削土砂とpH調整剤とを混合することにより、土質改良機による混合攪拌が効率的に行われる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の掘削土砂のpH調整方法によれば、掘削土砂のpH調整を短期間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るpH調整方法の対象である掘削土砂が発生する掘削ヤードを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るpH調整方法が実行される改質ヤードを示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るpH調整方法を含む掘削土砂の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜図3を参照しつつ本発明に係る掘削土砂のpH調整方法の一実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、リバース掘削で発生する掘削土砂をpH調整の対象とする。
【0011】
(掘削工程)
図1に示すように、地中連続壁工事の掘削ヤード51においては、リバース掘削機11を用いたリバース掘削によって掘削溝13が形成される。このリバース掘削工程では、アルカリ性(pH10.5〜12.0程度)の安定液が使用されるので、リバース掘削機11からは、アルカリ性の安定液が混合された掘削土砂が排出される(図3のS101)。
【0012】
(水切り工程)
続いて、上記掘削土砂に含まれる水分を低減するために水切り工程が行われる(図3のS103)。具体的には、アルカリ性の安定液が混合された上記掘削土砂は、まず、サイクロンスクリーン15によって水分と土砂成分とに分離される。土砂成分は、バックホウ17によってダンプ19に積載され、ダンプ19で後述の改質ヤードに搬送される。サイクロンスクリーン15で発生した水分は、更にスクリューデカンタ21により固液分離され、分離された固体成分はバックホウ17によってダンプ19に積載され、ダンプ19で改質ヤード52(図2)に搬送される。スクリューデカンタ21で発生した水分は、リバース掘削機11で再利用される。上記のダンプ19で搬送される掘削土砂には安定液のアルカリ成分が残存しており、当該掘削土砂は高アルカリ性を示す。
【0013】
(粉砕攪拌工程)
図2に示すように、ダンプ19で搬送された掘削土砂は、改質ヤード52の高pH土砂置場23に貯留される。前述のとおり、高pH土砂置場23の掘削土砂A1は高アルカリ性(pH)を示すので、pH低下処理を行う必要がある。そこで、高pH土砂置場23の掘削土砂A1は、バックホウ27によって自走式の土質改良機29に投入される。また、土質改良機29にはpH調整剤28が別途導入される。詳細は後述するが、pH調整剤28は乳酸を含み、粉末状をなす。土質改良機29は連続的に上記掘削土砂A1を粉砕・攪拌し、粒度を揃える。このとき、土質改良機29は、粉砕・攪拌される掘削土砂A1に上記の粉末状のpH調整剤28を混合する。これにより、掘削土砂A1に対してpH調整剤28が均等に混合される(図3のS105)。pH調整剤28が混合された掘削土砂(以下「改質土砂A2」という)が、土質改良機29の排出口から排出され、改質土砂置場31に貯留される。
【0014】
なお、掘削土砂A1とpH調整剤28との混合割合を、土質改良機29に事前に設定すれば、所望の混合割合が、土質改良機29によって自動的に達成される。ここでは、土質改良機29の事前の設定により、掘削土砂A1の1mに対してpH調整剤28が事前定の割合(20〜150kgの範囲で定められる)で添加される。この割合で掘削土砂A1とpH調整剤28とを混合することにより、土質改良機29による混合攪拌が効率的に行われる。
【0015】
(品質管理工程)
次に、改質土砂置場31に貯留された改質土砂A2をサンプリングしpH測定を行う(図3のS107)。ここで、改質土砂A2のpH測定値が8.5以下の場合には、改質土砂A2をバックホウ33でダンプ35に積載し改質土集積場37に搬送する。また、改質土砂A2のpH測定値が8.5を超えている場合には、改質土砂A2を再び土質改良機29に投入するか、又は、改質土砂A2を高pH土砂置場23に返送する。なお、改質土砂A2のpH測定は、地盤工学会基準 JGS0211-200* の「土懸濁液のpH試験方法」に従って行う。
【0016】
(改質土砂貯留工程)
改質土集積場37に搬送された改質土砂A3は、例えば植生土壌として再利用されるまでの間、当該改質土集積場37で一定期間貯留される(図3のS109)。改質土砂A3は、pH8.5以下であるので、植生土壌として好適に再利用することができる。
【0017】
続いて、前述のpH調整剤28の配合について説明する。pH調整剤28の配合は下表1のとおりである。
【表1】

【0018】
中和剤の乳酸は、掘削土砂に含まれるアルカリ成分と中和反応することで、掘削土砂A1のpHを低減させる機能を有する。キャリアは、液体成分を吸着させてpH調整剤28を粉末化する機能を有する。また,キャリアは、中和剤による中和の効果を持続させる。キャリアとしては、例えば、アタパルジャイト(米国フロリデン社製)が用いられる。アタパルジャイトは、粘土系鉱物であり優れた粘着性をもち、化学肥料のバインダーや、セメントスラリーの増粘剤やダレ止めとしても用いられるものである。
【0019】
増量材は、中和剤の乳酸を希釈してpH調整剤28を増量する機能と、pH緩衝作用(pHの低下しすぎを抑制する作用)と、を有する。増量材としては、例えば、木節粘土が用いられる。木節粘土とは、亜炭層の下にある層状の粘土であり、陶芸品の原料としても用いられるものである。改質剤は、泥状の掘削土砂A1に対して塑性を付与する。掘削土砂A1は改質剤によって塑性を付与されることで、盛り土として利用可能になる。改質剤としては、例えば、RC−1(ノニオン系高分子改質剤粉末;株式会社テルナイト製)が用いられる。RC−1は、天然ポリマーを主成分とする軟弱土改質剤である。
【0020】
続いて、上述のpH調整方法の作用効果について説明する。
【0021】
上述のpH調整方法によれば、pH調整剤28中の乳酸が掘削土砂A1に混合されるので、混合直後から乳酸が掘削土砂中のアルカリ成分と中和反応することにより、短期間で掘削土砂A1のpH低下が図られる。また、pH調整剤28は、乳酸と増量材とが混合され、粉末状とされているのであるので、乳酸が掘削土砂A1中に均等に攪拌混合されやすく、その結果、アルカリ成分と乳酸との反応が短時間で進行する。
【0022】
また、短期間で掘削土砂A1のpH低下が図られることから、早い時期に前述の品質管理工程を行って改質土砂A2のpHを確認することができ、改質土集積場37に搬送すべき改質土砂A2と、再び土質改良機29に投入すべき改質土砂A2と、を早期に仕分けることができる。
【0023】
また、改質土集積場37の改質土砂A3は、pH8.5以下であるので、当該改質土砂A3に雨水等が混入したとしても、濃アルカリ性溶液が外部流出するといったことは発生し難い。また、中和剤として用いられる乳酸も人体に対する影響は少ないので、仮に雨水等によって乳酸が外部に流出したとしても、人体に対する危険は少ない。よって、改質土集積場37に改質土砂A3を長期間貯留することも可能である。
【0024】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
28…pH調整剤、29…土質改良機、A1…掘削土砂、A2,A3…改質土砂、S105…粉砕攪拌工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削で発生した掘削土砂を土質改良機に投入し、前記土質改良機で前記掘削土砂にpH調整剤を加えながら粉砕攪拌する粉砕攪拌工程、を備え、
前記pH調整剤は、
乳酸と増量材とを含み、粉末状であることを特徴とする掘削土砂のpH調整方法。
【請求項2】
前記粉砕攪拌工程では、
前記掘削土砂1mに対して前記pH調整剤が20〜150kgの割合で添加されることを特徴とする請求項2に記載の掘削土砂のpH調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−107064(P2013−107064A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256448(P2011−256448)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【出願人】(511285347)松下鉱産株式会社 (1)
【Fターム(参考)】