説明

掘削機及び掘削方法

【課題】機械の大型化を招くことなく、掘削径の変更量を大きくすることができる掘削機を提供する。
【解決手段】複数のドラムカッタ40を自転させると共に公転させることにより杭孔1を掘削する掘削機10であって、公転軸に沿って配されたメインシャフト12と、メインシャフト12に回転可能に支持された公転部20と、公転部20を回転させる公転用油圧モータ50と、公転部20に、公転軸と平行な回動軸の周りに回動可能に支持され、ドラムカッタ40を、自転軸が公転軸との直交面に対して傾斜するように先端側で支持し、回動することで公転軸の外径方向に進退させる複数のアーム35と、ドラムカッタ40を自転軸の周りに回転させる自転用油圧モータ60と、アーム35を回動軸の周りに回動させる径調整用油圧モータ33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を掘削する掘削機及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を掘削する掘削機として、メインシャフトの先端の周囲に配されたカッタを自転させると共に、メインシャフトの周りにカッタを公転させることにより、地盤を掘削する掘削機が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この特許文献1、2に記載の掘削機には、掘削径を変更する機構が備えられている。特許文献1に記載の掘削機では、鉛直であるカッタ軸が、そのカッタ軸を支持するギヤボックスと共に回動されることにより、掘削径が変更される。また、特許文献2に記載の掘削機では、孔壁に向かうに従い外径方向に広がるように傾斜したカッタ軸が、伸縮されることにより、掘削径が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭62−38512号公報
【特許文献2】特開2007−262820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の掘削機は、カッタの上にギヤボックスが存在することから、孔を掘削している途中で掘削径を拡大させる場合には、ギヤボックスが孔壁に干渉する。よって、節部や拡底部を有する基礎杭の構築に使用するには適していない。また、特許文献2に記載の掘削機は、節部や拡底部を有する基礎杭を構築するのに使用することはできるものの、カッタ軸のメインシャフトに対する傾斜角度が小さく、カッタ軸の伸縮長と比して掘削径の変更量が小さいことから、大径の節部や拡底部を有する基礎杭の構築に使用するためには、カッタ軸の伸縮長を大きくしなければならず、機械が大型化する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、機械の大型化を招くことなく、掘削径の変更量を大きくすることができる掘削機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る掘削機は、複数のドラムカッタを自転させると共に公転させることにより孔を掘削する掘削機であって、公転軸に沿って配されたシャフトと、前記シャフトに回転可能に支持された公転部と、前記公転部を回転させる公転駆動部と、前記公転部に、前記公転軸との直交面に対して交差する回動軸の周りに回動可能に支持され、前記ドラムカッタを、自転軸が前記直交面に対して傾斜するように先端側で支持し、回動することで前記公転軸の外径方向に進退させる複数のアームと、前記ドラムカッタを自転軸の周りに回転させる自転駆動部と、前記アームを前記回動軸の周りに回動させるアーム駆動部と、を備える。
【0007】
前記掘削機において、前記アームは、所定の回動位置において、前記ドラムカッタを、前記自転軸が前記公転軸の外径方向に向って下側に傾斜する状態で支持してもよい。
【0008】
前記掘削機は、前記複数のアームを連動させるリンク機構を備えてもよい。
【0009】
前記掘削機において、前記複数のドラムカッタは、前記公転軸の周りに所定角度の間隔で配されてもよく、前記公転駆動部は、前記公転部を、一方向及びその逆方向へ交互に前記所定角度ずつ回転させてもよい。
【0010】
また、本発明に係る掘削方法は、自転すると共に公転する複数のドラムカッタを備える掘削機を使用して孔を掘削する方法であって、前記掘削機は、公転軸に沿って配されたシャフトと、前記シャフトに回転可能に支持された公転部と、前記公転部を回転させる公転駆動部と、前記公転部に、前記公転軸との直交面に対して交差する回動軸の周りに回動可能に支持され、前記ドラムカッタを、自転軸が前記直交面に対して傾斜するように先端側で支持し、回動することで前記公転軸の外径方向に進退させる複数のアームと、前記ドラムカッタを自転軸の周りに回転させる自転駆動部と、前記アームを前記回動軸の周りに回動させるアーム駆動部と、を備え、前記アーム駆動部で前記アームを回動させて前記ドラムカッタを前記公転軸の外径方向に進退させることにより、孔の掘削径を調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機械の大型化を招くことなく、掘削径の変更量を大きくすることができる掘削機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る掘削機を備えるリバースサーキュレーション式の掘削システムを示す立面図である。
【図2】掘削機及びポンプを示す立断面図である。
【図3】図2の3−3断面の概略図である。
【図4】拡径状態の掘削機を示す立断面図である。
【図5】図4の5−5断面の概略図である。
【図6】ドラムカッタを示す正面図であり
【図7】ドラムカッタ40の周面の展開図である。
【図8】図6の8−8断面図である。
【図9】リンク機構の概略を示す平面図である。
【図10A】リンク機構の動作を示す平面図である。
【図10B】リンク機構の動作を示す平面図である。
【図10C】リンク機構の動作を示す平面図である。
【図10D】リンク機構の動作を示す平面図である。
【図11】比較例に係る掘削機及びポンプを示す立断面図である。
【図12】図11の12−12断面の概略図である。
【図13】他の実施形態に係る掘削機を示す平面図である。
【図14】(A)、(B)は、縦軸周りにカッタが回転する掘削機におけるカッタビットの軌跡を示す図である。
【図15】(A)は、比較例に係る掘削機のカッタビットの作用を示す図であり、(B)は、本実施形態に係る掘削機のカッタビットの作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る掘削機10を備えるリバースサーキュレーション式の掘削システム100を示す立面図である。この図に示すように、掘削システム100は、硬質の地盤を掘削するのに適した掘削機10と、地上に設置されるクレーン102と、掘削機10とクレーン102との間に配されるポンプ104、及びパイプ106等を備えている。掘削機10及びその上に取り付けられたポンプ104は、パイプ106を介してクレーン102に支持されており、パイプ106を順次継ぎ足すことにより、下方へ進められる。また、掘削機10は、掘削径を調整する径調整機構30を備えている。
【0014】
以上のような構成の掘削システム100では、掘削機10で地盤を掘削しながら、ポンプ104の作動により掘削土砂を泥水とともにパイプ106を通して地上で排出させることにより、杭孔1を構築する。そして、径調整機構30により掘削径を拡大させて、杭孔1の底部を拡径させた拡底部2を構築する。
【0015】
図2は、掘削機10及びポンプ104を示す立断面図であり、図3は、図2の3−3断面の概略図である。これらの図に示すように、掘削機10は、ポンプ104に接続された円筒であるメインシャフト12と、メインシャフト12の上部に固定されたホルダ部14と、メインシャフト12にその軸周りに回転可能に支持された公転部20と、公転部20に設けられた径調整機構30と、径調整機構30を介して公転部20に回転可能に支持された3個のドラムカッタ40と、公転部20を回転させる公転用油圧モータ50と、ドラムカッタ40を図3に示す矢印A方向に回転させる3個の自転用油圧モータ60とを備えている。
【0016】
ホルダ部14は、メインシャフト12が中心に挿通された平面視にて円状のフレームであり、ホルダ部14の内部に公転用油圧モータ50が取り付けられ、ホルダ部14の外周部に、掘削機10の垂直姿勢を保つためのガイド16が設けられている。公転用油圧モータ50は、回転軸がメインシャフト12と平行になるようにホルダ部14に取り付けられており、公転用油圧モータ50の出力軸には、ギア52が取り付けられている。
【0017】
公転部20は、メインシャフト12が挿通された円筒状の外軸21と、外軸21の下端に設けられた先端カッタ22と、外軸21から外径方向に張り出した上下一対のフランジ23、24と、外軸21の上部に取り付けられたギア25と、外軸21の軸方向中間部に配されたスイベルジョイント26とを備えている。外軸21は、メインシャフト12に軸受13を介して軸心周りに回転可能に支持されている。先端カッタ22は、下方に尖った円錐状のカッタであり、下向きにカッタビットが設けられている。また、先端カッタ22は、内周側のカッタ部22Aと外周側のカッタ部22Bとの間に段差が形成されており、カッタ部22Bの中央部からカッタ部22Aが下方に突出した形状になっている。
【0018】
フランジ23、24は、120°間隔で配され外軸21から外径方向へ延びる3個の板片23A、24Aで構成されており、板片23A、24Aが互いに上下に対向するように配されている。また、板片23Aは、外軸21の上下方向中央部に配され、板片24Aは、外軸21の下部に配されている。また、ギア25は、公転用油圧モータ50のギア52と噛み合っており、公転用油圧モータ50の出力がギア52、25を介して外軸21に伝達されて、公転部20が反時計回り方向(図3に示す矢印B方向)に公転する。
【0019】
スイベルジョイント26は、油圧配管の可動継手であり、自転用油圧モータ60及び後述の径調整用油圧モータ33に接続された油圧配管と、地上の油圧ポンプ(図示省略)に接続された油圧配管とを、メインシャフト12の周りに相対回転可能に連結している。
【0020】
径調整機構30は、各ドラムカッタ40に対応して夫々設けられた3個の径調整ユニット31と、3個の径調整ユニット31を連動させるためのリンク機構32とを備えている。 リンク機構32は、3個の径調整ユニット31を連動させるための機構であり、詳細は後述する。
【0021】
径調整ユニット31は、板片23Aの先端部の上に設置された径調整用油圧モータ33と、板片23A、24Aの先端部に両端を回動可能に支持されたシャフト34と、シャフト34の下部に固定されたアーム35とを備えている。シャフト34は、メインシャフト12と平行に配置されている。
【0022】
径調整用油圧モータ33は、鉛直な出力軸を有しており、この出力軸にシャフト34が接続されている。また、アーム35は、シャフト34からその外径方向へ延びる台形柱状のフレームであり、その先端にドラムカッタ40及び自転用油圧モータ60が取り付けられている。
【0023】
即ち、ドラムカッタ40及び自転用油圧モータ60は、アーム35及びシャフト34を介して、板片23A、24Aの先端部に、シャフト34の軸心周りに回動可能に支持されており、径調整用油圧モータ33によりシャフト34が回転されると、シャフト34の軸心周り(即ち、メインシャフト12と平行な軸の周り)に回動される。
【0024】
なお、本実施形態に係る掘削機10では、アーム35を、公転方向に回動させることでドラムカッタ40を拡径側に移動させているため、径調整用油圧モータ33が非作動の状態では、ドラムカッタ40及びアーム35は、孔壁から受ける力により縮径側に戻ろうとすることになる。また、シャフト34とフランジ23とには、アーム35が掘削径が最小となる位置から中心側(図中時計回り方向)へ回動することを防止することと、最大回動角度以上に回動させないための、不図示のストッパが設けられている。
【0025】
図3に示すように、掘削径が最小の状態(以下、縮径状態という)では、3個のアーム35が、シャフト34よりも杭孔1の中心側において、正三角形状の空間を形成するように配され、各ドラムカッタ40が各アーム35よりも杭孔1の外径側に配される。また、縮径状態では、ドラムカッタ40及び自転用油圧モータ60が、これらの回転軸41、61が平面視にてメインシャフト12の径方向と平行になるように配される。
【0026】
また、図2に示すように、ドラムカッタ40及び自転用油圧モータ60は、これらの回転軸41、61が、杭孔1の外径方向に向かって斜め下側に所定角度(約20°等の鋭角)傾斜するように配されている。即ち、ドラムカッタ40は、上側が杭孔1の外径側に倒れるように傾斜している。
【0027】
図4は、掘削径が最大の状態(以下、拡径状態という)の掘削機10を示す立断面図であり、図5は、図4の5−5断面の概略図である。図5に示すように、掘削機10の拡径状態では、アーム35がシャフト34よりも杭孔1の外径側に位置し、アーム35の先端側に支持されたドラムカッタ40及び自転用油圧モータ60が、シャフト34よりも杭孔1の外径側に位置する。また、アーム35と板片23Aとの角度が所定角度(約150°等の鈍角)になる。
【0028】
図6は、ドラムカッタ40を示す正面図であり、図7は、ドラムカッタ40の周面の展開図であり、図8は、図6の8−8断面図である。なお、図6の1〜10の指定位置と、図7の1〜10の指定位置とは一致する。これらの図に示すように、ドラムカッタ40の周面には、複数列(例えば、図示するように4列)のカッタビット42が配されている。各列のカッタビット42は周方向に離して配されている。また、複数列のカッタビット42は、周方向に向かって千鳥状に配されている。また、各カッタビット42は、ドラムの周面からその外径方向に突出するホルダ43に固定されている。このホルダ43は、回転軸41に対して垂直に配されている。また、カッタビット42の刃先は、鈍角二等辺三角形状に形成されている。
【0029】
また、最外列(アーム35から最も離れている列)のカッタビット42の間には、カッタビット44、45が配されている。ここで、カッタビット42、44、45は、その刃先が図6の反時計周り方向に向くように配されており、ドラムカッタ40が図6の反時計周り方向に回転した場合に、カッタビット42、44、45が地山を削る。
【0030】
カッタビット44は、ドラムの周面からその外径方向に突出するホルダ46に固定されている。このホルダ46は、ドラムの外径方向に向ってアーム35の反対側に傾斜するように配されている。また、カッタビット44の刃先は、鋭角不等辺三角形状に形成されており、鋭角の角部が、最外列のカッタビット42よりもアーム35の反対側(即ち、孔壁側)に位置するように構成されている。
【0031】
ここで、回転軸41との直交面に対するホルダ46の傾斜角度は、メインシャフト12との直交軸に対する回転軸41の傾斜角度と同一である。即ち、ドラムカッタ40がアーム35に取り付けられた状態において、ホルダ43は、鉛直線に対して傾斜するのに対して、ホルダ46は、鉛直線に対して平行になる。
【0032】
また、カッタビット45は、ドラムの周面からその外径方向に突出するホルダ47に固定されている。カッタビット45の刃先は波形状に形成されており、カッタビット45は、波形状の刃がドラム周面の接線方向を向くようにホルダ47に固定されている。
【0033】
図9は、リンク機構32の概略を示す平面図である。この図に示すように、リンク機構32は、メインシャフト12に回転可能に支持されたリンクボス36と、リンクボス36と各シャフト34とを連結する3組のリンクプレート37、38とを備えている。リンクボス36は、円板状の中心部36Aと、該中心部36Aから外径方向へ延びる3個の腕部36Bとを備えている。3個の腕部36Bは、等間隔(120°間隔)で配されている。
【0034】
各リンクプレート37は、腕部36Bの先端に鉛直軸(メインシャフト12と平行な軸)周りに回動可能に支持された細長い板材であり、各リンクプレート38は、各リンクプレート37の先端(支持側の反対側の端)に鉛直軸周りに回動可能に支持された、リンクプレート37よりも短尺の板材である。また、各リンクプレート38の先端(リンクプレート37による支持側の反対側の端)は、シャフト34に固定されている。
【0035】
図9及び図10A〜Dは、リンク機構32の動作を示す平面図である。図9に示すように、掘削機10の縮径状態では、リンクプレート37、38が、略直線状に延びた状態になる。そして、図10A〜図10Dに示すように、掘削機10が拡径状態に遷移する際、アーム35及びシャフト34が、シャフト34を中心に図中反時計周り方向に回動及び回転すると、シャフト34に固定されたリンクプレート38が、シャフト34を中心に図中反時計周り方向に回動することにより、リンクプレート37、38の屈曲度が増すと共に、リンクボス36が図中時計周り方向に回転する。
【0036】
ここで、リンクボス36が時計周り方向に回転すると、その他の2組のリンクプレート37、38は、リンクボス36の回転力を受けて屈曲度が増すように変位し、シャフト34及びアーム35を、シャフト34を中心に図中反時計回り方向に回転及び回動させる。これにより、径調整用油圧モータ33の駆動速度にバラつきがある場合でも、3個のアーム35が、同時に同速度で回動し、3個のドラムカッタ40のメインシャフト12に対する相対位置が一致する。
【0037】
以下、掘削機10を使用して拡底部2を有する杭孔1を施工する手順を説明する。まず、縮径状態の掘削機10を下方へ掘進させて径が均一の孔を掘削する(図2及び図3参照)。この際、3個の自転用油圧モータ60を駆動させて3個のドラムカッタ40を回転軸41の周り(図中矢印A方向)に回転させると共に、公転用油圧モータ50を駆動させて公転部20をメインシャフト12の周り(図中矢印B方向)に回転させる。即ち、ドラムカッタ40を自転させると共に公転させる。なお、自転回転数は公転回転数よりも大きく設定する。
【0038】
ここで、ドラムカッタ40の回転軸41が杭孔1の外径方向に向けて下側に傾斜しており、ドラムカッタ40は、下側に向けて杭孔1の中心側へ傾斜している。このため、ドラムカッタ40の上側では、外列のカッタビット42、44、45が、孔壁3に当接して孔壁3を掘削し、ドラムカッタ40の下側では、全列のカッタビット42、44、45が孔底4に当接して孔底4を掘削する。この際、ドラムカッタ40の下側は、孔壁3より中心側に位置し、孔壁3よりも中心側を掘削する。また、メインシャフト12の先端カッタ22が、孔底4の中央部、即ち、ドラムカッタ40の下側が掘削する範囲の内周側を掘削する。
【0039】
即ち、縮径状態の掘削機10は、ドラムカッタ40及び先端カッタ22で地山を、下側へ向かって縮径する半球形状に削りながら掘進する。この際、最外列のカッタビット44が、孔壁3側に傾斜して孔壁3に食い込むように構成されていることにより、孔壁3の掘削力が向上される。また、ドラムカッタ40が、その下側が杭孔1の中心側に寄るように傾斜していることにより、先端カッタ22で掘削した孔底4の中央周辺におけるドラムカッタ40で掘削できない範囲を狭めることができる。
【0040】
また、ドラムカッタ40が、上側へ向かって杭孔1の外径側に傾斜していることにより、ドラムカッタ40の上側の周面を平面視した形状は、杭孔1の外径側に膨らんだ円弧形状になる。即ち、ドラムカッタ40の外列のカッタビット42、44、45が、平面視にて杭孔1の外径側に膨らんだ円弧状の曲線に沿って配列されることから、ドラムカッタ40の自転により孔壁3を円弧状に掘削でき、以って、杭孔1を滑らかに掘削できる。
【0041】
これに対して、図11及び図12に示すように、ドラムカッタ40の回転軸41を水平に設定した場合には、ドラムカッタ40を平面視した形状が、矩形状になる。即ち、ドラムカッタ40の外列のカッタビット42、44、45が、平面視にて直線状に配列されることから、ドラムカッタ40の自転だけでは、孔壁3をドラムカッタ40の2点の角部のみで掘削することになり、本実施形態と比して杭孔1を粗く掘削することになる。
【0042】
以上のようにして、径が均一の孔を掘削すると、掘削機10を、拡底部2を形成する位置の上側まで引き上げた後、径調整機構30でドラムカッタ40を徐々に拡径側へ回動させながら、掘削機10を下方へ掘進させることによって、下方に向って次第に拡径する円錐台形状の拡底部2を掘削する(図4及び図5参照)。この際、ドラムカッタ40の上側にドラムカッタ40を駆動させるための機構等が存在しておらず、また、アーム35はドラムカッタ40より杭孔1の中心側に位置している。即ち、ドラムカッタ40を杭孔1の外径側に移動させる際に、孔壁3と干渉する障害物が存在しないことから、杭孔1を掘削している途中で掘削径を拡大することが可能であり、拡底部2を有する杭孔1を掘削することが可能である。
【0043】
また、横軸周りに回転するドラムカッタ40を先端側で支持するアーム35が、メインシャフト12の周囲にメインシャフト12と平行に配置されたシャフト34の周りに回動することにより、縮径状態と拡径状態での掘削径の差を、ドラムカッタ40の直径を超える程に大きくすることができる。従って、アーム35やフランジ23、24等の部材を大きくすることなく、掘削径の変更量を大きくすることができるため、掘削機10の大型化を招くことなく、掘削径の変更量を大きくし、膨らみが大きな拡底部2を有する拡底杭を構築することができる。
【0044】
ところで、上述の特許文献1、2に記載されているような、カッタが縦軸周りに回転する掘削機では、カッタのカッタビットが設けられた面全体が孔底に当接し、全てのカッタビットが常に孔底に当接する。それに対して、本実施形態に係る掘削機10では、周面にカッタビット42、44、45が設けられたドラムカッタ40で孔壁3及び孔底4を掘削するが、孔壁3及び孔底4に当接しているのはドラムカッタ40の全周ではなく、一点である。そのため、本実施形態に係る掘削機10では、カッタが縦軸周りに回転する掘削機と比して、カッタビットの1本1本に作用する力が大きくなり、各カッタビットの掘削力(圧壊力)が大きくなる。従って、カッタビットと地山との間で滑りが生じ難くなり、カッタビット42、44、45の磨耗が抑制され、以って、硬質地盤の掘削に対応可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係る掘削機10では、リンク機構32により3個のアーム35が連動、即ち、同速度及び同位相で回動される。従って、径調整用油圧モータ33の駆動力にバラつきが生じた場合でも、3個のドラムカッタ40を同速度及び同位相で杭孔1の外径方向に進退させることができ、拡径掘削する際にも孔の真円度を確保することができる。
【0046】
図13は、他の実施形態に係る掘削機を示す平面図である。なお、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略する。図13に示すように、本実施形態に係る掘削機では、公転用油圧モータ50(図2参照)が、公転部20を、ドラムカッタ40の設置間隔(約120°)ずつ交互に正方向及び逆方向(図中矢印C方向)に回転させる。
【0047】
ここで、図14(A)、(B)は、特許文献1、2に記載されているようなカッタ9が縦軸周りに回転する掘削機におけるカッタビットの軌跡を示す図である。図14(A)に示すように、当該掘削機において、カッタ9の公転方向と自転方向とを同方向にした場合には、カッタビットの軌跡は、エピトロコイド(外トロコイド)曲線に近似した曲線5を描くことになる。この場合、常時、カッタビットのすくい角で地山を削ることができる。一方で、図14(B)に示すように、カッタ9の公転方向と自転方向とを逆方向にした場合には、カッタビットの軌跡は、内トロコイド曲線に近似した曲線6を描くことになる。この場合、カッタビットが孔壁に向って移動する間は、カッタビットのすくい角で地山を削ることができるものの、カッタビットが孔の中心側に向って移動する間は、カッタビットの逃げ角で地山を削ろうとすることになり、掘削不能となる。
【0048】
このため、縦軸周りにカッタが回転する掘削機においてカッタを正逆方向に回転させながら孔を掘削しようとした場合には、図15(A)に示すように、自転方向の逆方向に公転させる間に、カッタビット7の逃げ角で地山を削ろうとすることになり、掘削不能となることがある。これは、当該掘削機では、カッタビット7が地山に常時当接していることによる。
【0049】
これに対して、図15(B)に示すように、本実施形態に係る掘削機では、ドラムカッタ40が横軸周りに回転していることから、公転方向に関わらず、カッタビット42、44がすくい角で地山を削ることになり、掘削可能となる。従って、本実施形態に係る掘削機では、公転部20を、ドラムカッタ40の設置間隔だけ正逆方向に回転させながら杭孔1を掘削していくことが可能である。
【0050】
ここで、上述の実施形態に係る掘削機10では、公転部20を一方向に回転させ続けるため、公転部20に設置された径調整用油圧モータ33と自転用油圧モータ60を公転部20と共に一方向へ連続的に回転可能にする必要がある。そのために、径調整用油圧モータ33及び自転用油圧モータ60と油圧ポンプとをスイベルジョイント26を介して接続している。これに対して、本実施形態に係る掘削機では、公転部20をドラムカッタ40の間隔だけ交互に正逆回転させるように構成したことにより、スイベルジョイント26を不要にできる。
【0051】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、リバースサーキュレーション式の掘削機10を例に挙げて本発明を説明したが、ボーリングマシーン等の他の掘削機にも本発明を適用できる。また、掘削機による掘削方向は下方には限られず、斜め下方や水平方向であってもよい。さらに、公転用駆動部、自転用駆動部、及び径調整用駆動部を油圧モータとしたが、必須ではなく電動モータとしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 杭孔、2 拡底部、3 孔壁、4 孔底、5、6 曲線、7 カッタビット、9 カッタ、10 掘削機、12 メインシャフト(シャフト)、13 軸受、14 ホルダ部、16 ガイド、20 公転部、21 外軸、22 先端カッタ、22A、22B カッタ部、23、24 フランジ、23A、24A 板片、25 ギア、26 スイベルジョイント、30 径調整機構、31 径調整ユニット、32 リンク機構、33 径調整用油圧モータ(アーム駆動部)、34 シャフト、35 アーム、36 リンクボス、36A 中心部、36B 腕部、37、38 リンクプレート、40 ドラムカッタ、41 回転軸、42 カッタビット、43 ホルダ、44、45 カッタビット、46、47 ホルダ、50 公転用油圧モータ(公転駆動部)、52 ギア、60 自転用油圧モータ(自転駆動部)、61 回転軸、100 掘削システム、102 クレーン、104 ポンプ、106 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のドラムカッタを自転させると共に公転させることにより孔を掘削する掘削機であって、
公転軸に沿って配されたシャフトと、
前記シャフトに回転可能に支持された公転部と、
前記公転部を回転させる公転駆動部と、
前記公転部に、前記公転軸と平行な回動軸の周りに回動可能に支持され、前記ドラムカッタを、自転軸が前記公転軸との直交面に対して傾斜するように先端側で支持し、回動することで前記公転軸の外径方向に進退させる複数のアームと、
前記ドラムカッタを自転軸の周りに回転させる自転駆動部と、
前記アームを前記回動軸の周りに回動させるアーム駆動部と、
を備える掘削機。
【請求項2】
前記アームは、所定の回動位置において、前記ドラムカッタを、前記自転軸が前記公転軸の外径方向に向って下側に傾斜する状態で支持する請求項1に記載の掘削機。
【請求項3】
前記複数のアームを連動させるリンク機構を備える請求項1又は請求項2に記載の掘削機。
【請求項4】
前記複数のドラムカッタは、前記公転軸の周りに所定角度の間隔で配されており、
前記公転駆動部は、前記公転部を、一方向及びその逆方向へ交互に前記所定角度ずつ回転させる請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の掘削機。
【請求項5】
自転すると共に公転する複数のドラムカッタを備える掘削機を使用して孔を掘削する方法であって、
前記掘削機は、
公転軸に沿って配されたシャフトと、
前記シャフトに回転可能に支持された公転部と、
前記公転部を回転させる公転駆動部と、
前記公転部に、前記公転軸と平行な回動軸の周りに回動可能に支持され、前記ドラムカッタを、自転軸が前記公転軸との直交面に対して傾斜するように先端側で支持し、回動することで前記公転軸の外径方向に進退させる複数のアームと、
前記ドラムカッタを自転軸の周りに回転させる自転駆動部と、
前記アームを前記回動軸の周りに回動させるアーム駆動部と、
を備え、
前記アーム駆動部で前記アームを回動させて前記ドラムカッタを前記公転軸の外径方向に進退させることにより、孔の掘削径を調整する掘削方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図10D】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−36178(P2013−36178A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171211(P2011−171211)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(599112113)株式会社東亜利根ボーリング (25)
【Fターム(参考)】