説明

掛 軸

【課題】 床の間や壁に掛けて飾る観賞用の掛軸が、必要に応じて遺影と同様な働きができるようにし、故人の遺影を見つめる機会を増やすことで心の癒しとし、明日への活力とする。
【解決手段】 縦長又は横長の本体1に観賞用の作品2aが描かれた本紙2を表示し、本体1の上端部に床の間や壁に支持するための支持具4を備え、下端部に軸棒6を平行方向に挿入した掛軸Aにおいて、前記本紙2に故人の遺影8を飾るようにした。遺影は本紙の周囲に飾るようにしてもよい。また、本紙又は本紙の周囲に支持枠を着脱自在に装着し、該支持枠に遺影を差替え自在に収容して飾るようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、床の間や壁に掛けて飾る観賞用の掛軸に関する。
【0002】
【従来の技術】掛軸は我が国の古来からの家庭内工芸品として存在し、床の間や壁等に掛けられ、本紙に描かれる観賞用の作品は、一般的に芸術性の高い山水画,水墨画,花鳥画又は観音像といったものが主であり、季節によってふさわしい作品が描かれた掛軸に付替え、室内の快適化を図り、気分を落ち着かせることができるものであり、室内の比較的目につき易い場所に掛けられる。
【0003】一方、近親者が故人となると、故人を敬い、心の中で生き続けてもらい、人間らしく生きるための心の拠り所の1つとするために仏壇を置き、故人の写真等の遺影を額縁に入れて仏壇の近くに飾るのが一般的であるが、家庭によっては遺影は正面から向かい合うことができない場所に飾られていたり、遺影を飾るスペースを確保することができないため、普段、遺影を見つめる機会に恵まれず、故人に対する親近感が次第に薄れていくという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、床の間や壁に掛けて飾る観賞用の掛軸が、必要に応じて遺影と同様な働きができるようにし、故人の遺影を見つめる機会を増やすことで心の癒しとし、明日への活力とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は請求項1では、縦長又は横長の本体に観賞用の作品が描かれた本紙を表示し、本体の上端部に床の間や壁に支持するための支持具を備え、下端部に軸棒を平行方向に挿入した掛軸において、前記本紙に故人の遺影を飾るようにしたものである。
【0006】請求項2では、縦長又は横長の本体に観賞用の作品が描かれた本紙を表示し、本体の上端部に床の間や壁に支持するための支持具を備え、下端部に軸棒を平行方向に挿入した掛軸において、前記本紙の周囲に故人の遺影を飾るようにしたものである。
【0007】請求項3では、前記本紙又は本紙の周囲に支持枠を着脱自在に装着し、該支持枠に遺影を差替え自在に収容して飾るようにしたものである。
【0008】請求項4では、前記遺影は写真又は肖像画としたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。この発明の掛軸Aは図1に示すように、柔軟な布又は厚手の和紙からなる縦長の本体1は中央に、山水画,水墨画,花鳥画又は観音像といった観賞用の作品2aが描かれた本紙2が縦長に表示されており、この本紙2の枠内には作品2aの上部に、後述する支持枠7を着脱自在に装着可能である。また、本体1の上端部には中央から左右対称の位置に、吊り下げ金具3,3がそれぞれ設けられており、該両吊り下げ金具3に通された支持具4によって、掛軸Aを床の間や壁面等の比較的高い位置に垂直方向に掛けて吊り下げることができる。
【0010】前記本体1の下端部には、水平方向に筒状の軸先5を形成し、該軸先5の内部に金属製,樹脂製又は木製で、円柱状の軸棒6を左右いずれかの一方から挿入する。該軸棒6は本体1を巻き付け、巻物とする際の芯の役割と、掛軸Aを高い位置に吊り下げた場合の重りの役割を果たし、作品2aが描かれた本紙2の全体にしわが発生しないようにするものである。
【0011】前記支持枠7は金属製,樹脂製又は木製からなる3本のフレーム7a,7b,7cにより構成し、垂直方向に配置する第1フレーム7aの上下両端から平行方向に第2フレーム7b及び第3フレーム7cをそれぞれ取付け、一方を垂直方向に開口することで、この開口部7dから故人の写真,肖像画等の遺影8を差替え自在に挿入して飾ることができ、各フレーム7a,7b,7cで囲まれた窓孔7eから遺影8を鑑賞できるようにしている。
【0012】なお本実施例では、支持枠の開口部を一方の側面に形成しているが、左右両側面及び下面にフレームを組付け、上面に開口部を形成して、支持枠の上部から遺影を差替え自在に挿入できるようにしてもよい。また、支持枠の本紙への装着構造は、例えば磁石によるもの、ビスによるもの、その他特に限定されず、任意の装着手段が可能である。
【0013】このように支持枠は本紙に着脱自在であり、しかも遺影は支持枠に対し開口部から差替え自在に挿入できるものであり、掛軸は支持枠を装着しないで本紙のみを表示し、通常に作品を鑑賞することも、故人の縁故者が集まる法要の日のみ、本紙に支持枠を装着して、作品だけでなく遺影を飾ることも可能で、互換性があり多様に楽しむことができる。また、掛軸は巻物のため手軽に持ち運びでき、しかも何代にも渡って使用できるので、例えば故人の葬儀の後に、故人の縁故者等への香典返し、又は法事での引き出物として本発明の掛軸を配布し、掛軸を床の間や壁面等の高い位置に掛けた後に、故人の遺影を挿入した支持枠を本紙の枠内に装着することができる。そして、縁故者等は山水画,水墨画,花鳥画又は観音像といった観賞用の作品が描かれた本紙だけでなく、遺影を見つめることで故人を忍び、心を癒すことができ、明日への活力を与えてもらえるものである。
【0014】図2は本発明の別の実施例である。この実施例の掛軸Bでは、本体1aを横長に形成し、該本体1aの中央に表示する本紙2bも横長であり、該本紙2bの略中央に、遺影8が収容されている支持枠7を着脱自在に装着し、該支持枠7の左右両側に観賞用の作品2c,2dがそれぞれ描かれている。なお、掛軸のその他の構成は前記実施例と同一であるので、同一部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0015】図3は本発明のさらに別の実施例である。この実施例の掛軸Cでは、本体1bには中央よりやや上方に、山水画,水墨画,花鳥画又は観音像といった観賞用の作品2fが描かれた本紙2eが表示されており、該本紙2eの下方に前述の遺影8が収容されている支持枠7を着脱自在に装着している。この場合、支持枠は本紙の上方に装着してもよい。
【0016】このように掛軸の本体に観賞用の作品が描かれた本紙と遺影を左右又は上下に並べることで、本紙の作品が遺影で隠れることはなく、芸術性の高い作品の鑑賞と遺影を見つめ故人を忍ぶことの両立化を図り、心を癒すことができ、明日への活力とすることができる。
【0017】
【発明の効果】本発明では請求項1では、縦長又は横長の本体に観賞用の作品が描かれた本紙を表示し、本体の上端部に床の間や壁に支持するための支持具を備え、下端部に軸棒を平行方向に挿入した掛軸において、前記本紙に故人の遺影を飾るようにしたので、掛軸を床の間や壁に飾り、山水画,水墨画,花鳥画又は観音像といった観賞用の作品を描いた本紙だけでなく、遺影を見つめることで故人を敬い、心を癒すことで、明日への活力とすることができる。
【0018】請求項2では、縦長又は横長の本体に観賞用の作品が描かれた本紙を表示し、本体の上端部に床の間や壁に支持するための支持具を備え、下端部に軸棒を平行方向に挿入した掛軸において、前記本紙の周囲に故人の遺影を飾るようにしたので、掛軸の本体に観賞用の本紙と遺影を上下に並べることで、本紙の作品が遺影で隠れることはなく、芸術性の高い作品の鑑賞と遺影を見つめ故人を忍ぶことの両立化を図り、心を癒すことができ、明日への活力とすることができる。
【0019】請求項3及び4では、前記本紙又は本紙の周囲に支持枠を着脱自在に装着し、該支持枠に写真又は肖像画等の遺影を差替え自在に収容して飾るようにしたので、掛軸は支持枠を装着しないで観賞用の作品が描かれた本紙のみを表示し、通常に作品を鑑賞することも、例えば故人の縁故者が集まる法要の日のみ、本紙に支持枠を装着して作品だけでなく遺影を飾ることも可能で、互換性があり多様に楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の掛軸の正面図である。
【図2】本発明の別の実施例による掛軸の正面図である。
【図3】本発明のさらに別の実施例による掛軸の正面図である。
【符号の説明】
1,1a,1b 本体
2,2b,2e 本紙
2a,2c,2d,2f 作品
4 支持具
6 軸棒
7 支持枠
8 遺影
A,B,C 掛軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】 縦長又は横長の本体に観賞用の作品が描かれた本紙を表示し、本体の上端部に床の間や壁に支持するための支持具を備え、下端部に軸棒を平行方向に挿入した掛軸において、前記本紙に故人の遺影を飾るようにしたことを特徴とする掛軸。
【請求項2】 縦長又は横長の本体に観賞用の作品が描かれた本紙を表示し、本体の上端部に床の間や壁に支持するための支持具を備え、下端部に軸棒を平行方向に挿入した掛軸において、前記本紙の周囲に故人の遺影を飾るようにしたことを特徴とする掛軸。
【請求項3】 前記本紙又は本紙の周囲に支持枠を着脱自在に装着し、該支持枠に遺影を差替え自在に収容して飾るようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の掛軸。
【請求項4】 前記遺影は写真又は肖像画としたことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の掛軸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2002−325665(P2002−325665A)
【公開日】平成14年11月12日(2002.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−135709(P2001−135709)
【出願日】平成13年5月7日(2001.5.7)
【出願人】(301025678)岐阜掛軸株式会社 (1)
【Fターム(参考)】