説明

接点出力装置

【課題】出力リレーの消費電力を低減するとともに信頼性と安全性を高める。
【解決手段】出力リレー2のコイルRYに定格電流を供給して接点RY1,RY2が動作状態になったことを確認してからコイルRYに供給する電流を定格電流より小さくして、出力リレー2の省電力を図るとともに出力リレー2が動作状態になったことを確実に検出して、出力リレー2の誤動作を防止して安全性と信頼性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道信号システムなどの各種電気機器に用いられる接点出力装置、特に省電力と安全性の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば鉄道信号システムなどの各種電気機器には制御入力で駆動する直流リレーが用いられている。この直流リレーを動作状態にするためには直流リレーのコイルに最小動作電流以上の定格電流を流して励磁し、動作後もコイルに定格電流を流して動作状態を維持している。この動作状態の直流リレーはコイルに流している電流が復旧電流値以下になると復旧状態になる。
【0003】
近年、地球環境保護の観点から省電力化が重要な課題となっており、直流リレーを通電駆動する際の消費電力を低減する直流リレー駆動回路が、特許文献1や特許文献2等に開示されている。この消費電力を低減する直流リレー駆動回路は、図4(a)に示すように、直流電源10と直流リレーのコイルRYとの間に並列に接続された常閉のスイッチ11と限流用の抵抗Rを設けている。そして直流リレーを動作状態にするため制御スイッチ12をオンにしたとき、直流電源10から常閉のスイッチ11を通してコイルRYに電流を流して励磁して直流リレーを動作状態にする。直流リレーが動作状態になるとタイマー制御等により常閉のスイッチ11をオフにして直流電源10から限流用の抵抗Rを通してコイルRYに動作開始時より小さい電流を流して直流リレーの動作状態を維持している。
【0004】
また、図4(b)に示すように、直流リレーのコイルRYと制御スイッチ12と並列に電解コンデンサCを設け、制御スイッチ12がオフの状態で電解コンデンサCを直流電源10からの電流で充電し、制御スイッチ12をオンにしたとき電解コンデンサCの放電電流でコイルRYを励磁し、電解コンデンサCの放電電圧が直流電源10の電圧より低くなると直流電源10から限流用の抵抗Rを通してコイルRYに電解コンデンサCの放電電流より小さい電流を流して直流リレーの動作状態を維持して消費電力を低減している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記直流リレー駆動回路はタイマー制御等により常閉のスイッチ11をオフにして直流リレーのコイルRYに流れる電流を少なくしたり、電解コンデンサCの放電特性を利用して直流リレーのコイルRYに流れる電流を少なくしているため、直流リレーのコイルRYが確実に励磁されているかを確認することはできず信頼性と安全性に問題があった。
【0006】
この発明は、このような短所を改善し、消費電力を低減するとともに信頼性と安全性が高い接点出力装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の接点出力装置は、出力リレーと制御部及びリレー駆動部を有し、前記出力リレーは、磁気保持特性を有しない有極形のリレーからなり、前記制御部は、入力する外部からの制御入力信号が前記出力リレーを動作させる条件であるとき所定の交番周波数の交番信号を生成して前記リレー駆動部に出力し、交番信号を出力しているとき、一定周期で前記出力リレーの接点が動作状態であるか復旧状態であるかを確認し、出力リレーの接点が動作状態になると出力している交番信号の交番周波数を低い周波数に切り換え、前記リレー駆動部は、コンデンサを使用したチャージ・ポンプ回路からなり、前記制御部から入力する交番信号の交番周波数に応じてコンデンサの放電電流を可変して前記出力リレーのコイルを励磁させることを特徴とする。
【0008】
前記リレー駆動部は、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子と第1のコンデンサと第2のコンデンサを有し、前記制御部から入力する交番信号がLレベルのとき、前記第2のスイッチング素子をオフにし、前記第1のスイッチング素子をオンにして前記第1のコンデンサを充電し、入力する交番信号がHレベルのとき、前記第1のスイッチング素子をオフにし、前記第2のスイッチング素子をオンにして前記第1のコンデンサに充電されている電荷により前記第2のコンデンサを充電し、前記第2のコンデンサの放電電流によって前記出力リレーのコイルを励磁することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、出力リレーに定格電流を供給して接点が動作状態になったことを確認してから出力リレーに供給する電流を定格電流より小さくするから省電力を図ることができるとともに出力リレーが動作状態になったことを確実に検出することができ、出力リレーの誤動作を防止して安全性と信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の接点出力装置の構成を示すブロック図である。
【図2】リレー駆動部の構成を示す回路図である。
【図3】接点出力装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】従来の直流リレー駆動回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、この発明の接点出力装置の構成を示すブロック図である。図に示すように、接点出力装置1は、出力リレー2と制御部3及びリレー駆動部4を有する。
【0012】
出力リレー2は有極形の直流リレーからなり、コイルRYが正極性方向に励磁されて動作したときに閉じるN接点と、コイルRYが逆極性方向に励磁されて動作したときに閉じるR接点を有する照査用接点RY1及び出力接点RY2を有する。コイルRYのマイナス側は入力端子iに接続され、プラス側は入力端子jに接続されている。照査用接点RY1のコンモン接点であるC接点は照査入力端子kに接続され、R接点は照査出力端子lに接続され、N接点は照査出力端子mに接続されている。出力接点RY2のC接点は接点出力端子nに接続され、R接点は接点出力端子oに接続され、N接点は接点出力端子pに接続されている。
【0013】
制御部3は交番信号生成部5と動作状態照査部6を有する。交番信号生成部5は入力端子aに入力する外部からの制御入力信号が出力リレー2を動作させる条件であるとき交番周波数の交番信号を生成して出力端子bからリレー駆動部4に出力し、制御入力が出力リレー2を復旧させる条件のとき出力を停止する。動作状態照査部6は交番信号生成部5で交番信号を生成して出力しているとき、一定周期で接点照査信号を出力端子cから出力リレー2の照査用入力端子kに出力し、出力リレー2の照査出力端子lから出力する復旧状態信号を入力端子dから入力し、出力リレー2の照査出力端子mから出力する動作状態信号を入力端子eから入力して出力リレー2が動作状態であるか復旧状態であるかを判断して交番信号生成部5に出力する。
【0014】
リレー駆動部4はチャージ・ポンプ回路を有し、交番信号生成部5で生成した交番信号を入力端子fから入力して負電圧を出力端子gから出力リレー2の入力端子iに出力し、GND電圧を出力端子hから出力リレー2の入力端子jに出力してコイルRYを励磁させて動作させる。
【0015】
このリレー駆動部4の構成を図2の回路図に示す。リレー駆動部4は、第1のスイッチング素子であるPNP形トランジスタT1と、第2のスイッチング素子であるNPN形トランジスタT2と2個のコンデンサC1,C2とダイオードD1,D2を有する。トランジスタT1のエミッタは抵抗R1を介して直流電源に接続され一定電圧例えばDC24Vが印加され、トランジスタT1のベースは交番信号を入力する入力端子fに接続されているとともに抵抗R1を介して直流電源に接続されてDC24Vが印加され、トランジスタT1のコレクタはコンデンサC1の陽極とトランジスタT2のコレクタに接続されている。トランジスタT2のエミッタはGNDに接続され、トランジスタT2のベースは入力端子fに接続されている。コンデンサC1の陰極はダイオードD1のアノードとダイオードD2のカソードに接続され、ダイオードD1のカソードはGNDに接続されている。ダイオードD2のアノードはコンデンサC2の陰極と出力端子gに接続され、コンデンサC2の陽極はGNDに接続されている。出力端子hはGNDに接続されている。
【0016】
このように構成されたリレー駆動部4の入力端子fに交番周波数Fの交番信号が入力されているとき、交番信号がHレベルのときは、トランジスタT1はオフとなりトランジスタT2がオンとなってコンデンサに残留している電荷はGNDに放電される。入力端子fに入力している交番信号がLレベルのときは、トランジスタT1がオンとなり、トランジスタT2がオフとなって、コンデンサC1はDC24Vにより、抵抗R2とトランジスタT1とコンデンサC1とダイオードD1で形成される経路で充電される。次のサイクルで交番信号がHレベルになると、トランジスタT1がオフ、トランジスタT2がオンとなって、コンデンサC1とトランジスタT2とコンデンサC2とダイオードD2及びコンデンサC1で形成される経路によりコンデンサC1に充電されている電荷によりコンデンサC2が充電される。このコンデンサC2の放電電流によって出力リレー2のコイルRYが正極性方向に励磁されて出力リレー2が動作し接点RY1,RY2のR接点を開放しN接点を閉じる。
【0017】
このリレー駆動部4の入力端子fに制御部3から入力する交番信号の交番周波数を可変するとコンデンサC2から出力リレー2のコイルRYに供給する放電電流を可変することができる。ここで、時間をT(秒)、交番信号の交番周波数をF(Hz)、コンデンサC2に蓄積される静電エネルギをW、放電電力をP、放電電流をI(A)、出力リレー2のコイル抵抗をR(オーム)とすると、放電電力PはP=W/T=WF=IRとなり、コンデンサC2の放電電流Iは交番周波数Fの(1/2)乗に比例する。
【0018】
一般に直流リレーを無励磁状態から動作状態にするためにはコイルを最小動作電流値以上の定格電流値の電流で励磁することが一般的であり、一旦動作した後、動作状態を維持するためには復旧状態にする復旧電流値以上の電流で励磁することが必要である。この復旧電流値は最小動作電流値以下であり、一般的に定格電流値を「1」とすると復旧電流値は「0.3」、最小動作電流値は「0.7」程度である。
【0019】
したがってリレー駆動部4に入力する交番信号の交番周波数Fを1/2にすると、コンデンサC2の放電電流Iは約0.7倍となり、交番周波数Fを1/4にすると、コンデンサC2の放電電流Iは0.5倍になる。
【0020】
そこで制御部3の交番信号生成部5は外部からの制御入力信号が出力リレー2を動作させる条件であるとき動作状態照査部6から入力する出力リレー2の状態に応じてリレー駆動部4に出力する交番信号の交番周波数を切り換える。
【0021】
この接点出力装置1の動作について図3のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
制御部3に外部から入力する制御入力信号が出力リレー2を動作させる条件になったとき(ステップS1)、交番信号生成部5は出力リレー2の定格電流値に対応した交番周波数F1の交番信号をリレー駆動部4に出力する(ステップS2)。リレー駆動部4は入力した交番信号の交番周波数F1に応じた放電電流を出力リレー2に出力し、コイルRYに定格電流を供給して励磁させる。一方、交番信号生成部5は交番信号をリレー駆動部4に出力しているとき、動作状態照査部6から出力リレー2の照査用接点RY1のコンモン接点に一定周期で接点照査信号を出力させる。動作状態照査部6は接点照査信号を出力しているとき、出力リレー2の照査用接点RY1のR接点の復旧状態を示す復旧状態信号とN接点の動作状態を示す動作状態信号を確認する(ステップS3)。この確認の結果、照査用接点RY1のR接点が開放し、N接点が閉じたことを確認すると、出力リレー2が動作状態になったことを示す信号を交番信号生成部5に出力する。交番信号生成部5は出力リレー2が動作状態になったことを示す信号を入力すると、出力している交番周波数F1の例えば1/2の交番周波数F2の交番信号に切り換えてリレー駆動部4に出力する(ステップS4)。リレー駆動部4は入力した交番信号の交番周波数F2に応じた放電電流を出力リレー2に出力し、コイルRYに定格電流の約70%の電流を供給してコイルRYの励磁を保持させて出力リレー2の動作状態を維持する。この状態で制御部3に入力する制御入力信号が出力リレー2を復旧させる条件になると(ステップS5)、交番信号生成部3はリレー駆動部4に対する交番信号の出力を停止する(ステップS6)。リレー駆動部4は交番信号の入力が停止すると出力リレー2に対する放電電流の出力を停止して出力リレー2を復旧状態にする。
【0023】
このようにして出力リレー2に定格電流を供給して動作状態になったことを確認してから出力リレー2に供給する電流を例えば定格電流の約70%にするから省電力を図ることができるとともに出力リレー2が動作状態になったことを確実に検出することができ、出力リレー2の誤動作を防止して安全性を高めることができる。
【0024】
また、接点出力装置1のリレー駆動部4は入力している交番信号がLレベルになってトランジスタT1がオンになっているとき、トランジスタT2に短絡故障が生じた場合、コンデンサC1は充電されないため、出力リレー2のコイルRYは励磁されることはなく安全性を確保することができる。また、入力している交番信号がHレベルになってトランジスタT2がオンになったとき、トランジスタT1に短絡故障が生じた場合もコンデンサC1は充電されず、出力リレー2のコイルRYは励磁されることはなく、安全性を確保することができる。さらに、コンデンサC1とコンデンサC2のいずれかに短絡故障が生じても出力リレー2のコイルRYは励磁されることはなく、安全性を確保することができる。
【符号の説明】
【0025】
1;接点出力装置、2;出力リレー、3;制御部、4;リレー駆動部、
5;交番信号生成部、6;動作状態照査部、RY;コイル,RY1,RY2;接点。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開平5−242781号公報
【特許文献2】特開2003−16898号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力リレーと制御部及びリレー駆動部を有し、
前記出力リレーは、磁気保持特性を有しない有極形のリレーからなり、
前記制御部は、入力する外部からの制御入力信号が前記出力リレーを動作させる条件であるとき所定の交番周波数の交番信号を生成して前記リレー駆動部に出力し、交番信号を出力しているとき、一定周期で前記出力リレーの接点が動作状態であるか復旧状態であるかを確認し、出力リレーの接点が動作状態になると出力している交番信号の交番周波数を低い周波数に切り換え、
前記リレー駆動部は、コンデンサを使用したチャージ・ポンプ回路からなり、前記制御部から入力する交番信号の交番周波数に応じてコンデンサの放電電流を可変して前記出力リレーのコイルを励磁させることを特徴とする接点出力装置。
【請求項2】
前記リレー駆動部は、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子と第1のコンデンサと第2のコンデンサを有し、
前記制御部から入力する交番信号がLレベルのとき、前記第2のスイッチング素子をオフにし、前記第1のスイッチング素子をオンにして前記第1のコンデンサを充電し、入力する交番信号がHレベルのとき、前記第1のスイッチング素子をオフにし、前記第2のスイッチング素子をオンにして前記第1のコンデンサに充電されている電荷により前記第2のコンデンサを充電し、前記第2のコンデンサの放電電流によって前記出力リレーのコイルを励磁することを特徴とする請求項1記載の接点出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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