説明

接着性ポリエチレン組成物

【構成】エチレン−α−オレフィン共重合体99〜40重量%と線状低密度ポリエチレン 1〜60重量%とからなる組成物に不飽和カルボン酸類をグラフトさせた接着性ポリエチレン組成物であって、該エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw /Mn )が 2.5以下であり、かつ、メルトフロー比(MI10/MI2.16)が 5〜15の範囲にあることを特徴とする接着性ポリエチレン組成物(ただし、MI10は 190℃での荷重10Kgのメルトインデックス、MI2.16は 190℃での荷重2.16Kgのメルトインデックスを表す。)。
【効果】金属およびポリオレフィンなどとの接着性が優れ、特に低温での耐衝撃性が優れた接着性ポリエチレン組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属およびポリオレフィンなどとの接着性が優れ、特に低温での耐衝撃性が優れた接着性ポリエチレン組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】従来、金属の耐食性、外観、食品衛生上の改善のために金属管(例えば鋼管)の内外面、金属板、電線、ケーブル等にポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンに不飽和ジカルボン酸類をグラフトした変性ポリオレフィンで積層(接着)することが知られている。
【0003】例えば、特開平4-300933号公報には、α−オレフィンランダム共重合体の不飽和カルボン酸による変性物とポリプロピレン樹脂とを成分とする組成物、あるいは特開平5-50556 号公報、特開平5-50557 号公報には、特定の構造と物性を有するポリオレフィンランダム共重合体の不飽和カルボン酸による変性物を成分とする組成物が開示されている。しかしながら、従来の変性ポリオレフィンは、鋼、鉄、アルミニウム等の金属に対する接着強度が小さく、低温での耐衝撃性が不十分であるため、強い接着力はもちろん耐久性も要求される分野には使用できない欠点を有している。
【0004】
【本発明の目的】本発明は、金属との接着強度が大きく、低温耐衝撃性にも優れた接着ポリエチレン組成物を提供することにある。特に、防食を目的とした鋼管等の被覆に際し、極低温下(-60 ℃以下)での耐衝撃性に優れ、比較的高い温度(40℃以上)での接着性能の優れた新規の接着性ポリエチレン組成物を提供することにある。また、従来、エチレン−α−オレフィン共重合体で、分子量分布を狭くすると、衝撃性、引張り特性などの機械特性の向上が見られるものの、反面、成形加工性が悪くなりやすく、両特性を満足できるものは得られていない。しかし、本発明は優れた機械特性及び良好な成形加工性を有するエチレン−α−オレフィン共重合体と線状低密度ポリエチレンをベースにカルボン酸変性することで、両者を兼ねそなえた接着性ポリエチレン組成物を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、第一に、エチレン−α−オレフィン共重合体99〜40重量%と線状低密度ポリエチレン 1〜60重量%とからなる組成物に不飽和カルボン酸類をグラフトさせた接着性ポリエチレン組成物であって、(1)該エチレン−α−オレフィン共重合体がシングルサイト触媒の存在下にエチレンとα−オレフィンを共重合することによって得られたものであり、(2)該線状低密度ポリエチレンがチーグラー系触媒又はクロム系触媒の存在下にエチレンとα−オレフィンを共重合することによって得られたものであることを特徴とする接着性ポリエチレン組成物に関する。に関する。
【0006】第二に、エチレン−α−オレフィン共重合体99〜40重量%と線状低密度ポリエチレン 1〜60重量%とからなる組成物に不飽和カルボン酸類をグラフトさせた接着性ポリエチレン組成物であって、該エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw /Mn )が 2.5以下であり、かつ、メルトフロー比(MI10/MI2.16)が 5〜15の範囲にあり(ただし、MI10は 190℃での荷重10Kgのメルトインデックス、MI2.16は 190℃での荷重2.16Kgのメルトインデックスを表す。)であることを特徴とする接着性ポリエチレン組成物に関する。第三に、上記の第一又は第二の接着性ポリエチレン組成物 100重量部に対して、エチレン−プロピレン共重合体ゴムを50重量部以下配合したことを特徴とする接着性ポリエチレン組成物に関する。
【0007】本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw /Mn )が2.5 以下であり、好ましくは、1.9 〜2.3 である。
【0008】本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフロー比(MI10/MI2.16)は 5〜15の範囲、好ましくは 6.8〜11.5の範囲(ただし、MI10は 190℃での荷重10Kgのメルトインデックス、MI2.16は 190℃での荷重2.16Kgのメルトインデックスを表す。)である。
【0009】エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1などが挙げられるが、炭素数 4以上のα−オレフィンが好ましく、炭素数 5〜10のα−オレフィンがより好ましい。この場合、タイ分子結合数の増加が考えられ、機械強度の向上などが見込まれる。例えば、オクテン-1が好適に用いることができる。
【0010】エチレン−α−オレフィン共重合体中のα−オレフィンから誘導される繰り返し単位は、通常、30wt% 以下含まれている。α−オレフィンは、エチレン−α−オレフィン共重合体中に単独であっても、二種以上含まれていてもよい。
【0011】本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体としては、特に下記の物性を有するものが好ましい。190℃での荷重 2.16Kg のメルトインデックスが 10g/10分以下であり、より好ましくは 0.5〜5g/10分である。密度が 0.94g/cm3 以下であり、より好ましくは 0.86 〜 0.92g/cm3 である。分子量分布(Mw/Mn)が 2.5以下であり、より好ましくは、1.9 〜2.3 である。
【0012】本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体はシングルサイト系触媒によって製造できる。
【0013】本発明で用いられるシングルサイト系触媒としては、周期律表第IV又は V族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せが用いられる。
【0014】周期律表第IV又は V族遷移金属としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V )などが好ましい。
【0015】そのメタロセン化合物とは、少なくとも一個のシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基(例えば、メチル、ジメチル、ペンタメチルなどのアルキル置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基)を配位子とするもの、あるいはそれらのシクロペンタジエニル基がヒドロカルビル基(例えば、アルキレン基、置換アルキレン基)、ヒドロカルビル珪素(例えば、シラニレン基、置換シラニレン基、シラアルキレン基、置換シラアルキレン)などによって架橋されたもの、さらにシクロペンタジエニル基が酸素、窒素、燐原子に架橋されたもの(例えば、オキサシラニレン基、置換オキサシラニレン基、オキサシラアルキレン基、置換オキサシラアルキレン基、アミノシリル基、モノ置換アミノシリル基、ホスフィノシリル基、モノ置換ホスフィノシリル基)を配位子とする、いわゆる公知のメタロセン化合物をいずれも使用できる。
【0016】それらの具体例としては、特開昭58-19309号公報、同60-35006号公報、同61-130314 号公報、同61-264010 号公報、同61-296008 号公報、同63-222177 号公報、同63-251405 号公報、特開平1-66214 号公報、同1-74202 号公報、同1-275609号公報、同1-301704号公報、同1-319489号公報、同2-41303 号公報、同2-131488号公報、同3-12406 号公報、同3-139504号公報、同3-179006号公報、同3-185005号公報、同3-188092号公報、同3-197514号公報、同3-207703号公報、同5-209013号公報、特表平1-501950号公報、同1-502036号公報、及び同5-505593号公報に記載されたものを挙げることができる。
【0017】本発明においては、上記以外のシングルサイト系触媒として、特開昭61-130314 号公報、同61-264010 号公報、同63-142004 号公報、特開平1-129004号公報、同1-301704号公報、同2-75605 号公報、同3-12406 号公報、同3-12407 号公報、同4-227708号公報、同4-268308号公報、同4-300887号公報、同6-25343 号公報などに記載されているようなメタロセン化合物を挙げることができる。
【0018】これらのメタロセン化合物は、それ自体がC2対称要素を有する錯体を形成できる架橋型、及び/又は多置換配位子を有する。その具体例としては、ジメチルシリル(2,4- ジメチルシクロペンタジエニル)(3',5'-ジメチルシクロペンタジエニル) ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリル(2,4- ジメチルシクロペンタジエニル)(3',5'-ジメチルシクロペンタジエニル) ハフニウムジクロライドなどのケイ素架橋型メタロセン化合物、、エチレンビスインデニルジルコニウムジクロライド、エチレンビスインデニルハフニウムジクロライド、エチレンビス( メチルインデニル) ジルコニウムジクロライド、エチレンビス( メチルインデニル)ハフニウムジクロライドなどのインデニル系架橋型メタロセン化合物を挙げることができる。
【0019】本発明でメタロセン化合物との組合せで用いられる有機アルミニウム化合物としては、一般式、(-Al(R)O-)n で示される直鎖状、あるいは環状重合体(R は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/ 又はRO基で置換されたものも含む。n は重合度であり、 5以上、好ましくは10以上である)であり、具体例としてR がそれぞれメチル、エチル、イソブチル基である、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルエチルアルモキサンなどが挙げられる。
【0020】さらに、その他の有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキアルキルハロゲノアルミニウム、アルケニルアルミニウム、ジアルキルハイドロアルミニウム、セスキアルキルハイドロアルミニウムなどが挙げられる。
【0021】その具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキメチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライドなどのセスキアルキルハロゲノアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドを挙げることができる。これらの有機アルミニウム化合物は、前記の有機アルミニウムオキシ化合物と併用することができる。
【0022】イオン性化合物としては、一般式、C+ - で示され、C+ は有機化合物、有機金属化合物、あるいは無機化合物の酸化性のカチオン、又はルイス塩基とプロトンからなるブレンステッド酸であり、メタロセン配位子のアニオンと反応してメタロセンのカチオンを生成することができる。
【0023】A- は嵩高く、非配位性のアニオンであり、メタロセンに配位せずにメタロセンカチオンを安定化することができるものである。それらの具体例としては、特開平4-253711号公報、同4-305585号公報、特公表平5-507756号公報、同5-502906号公報に記載されたようなものを用いることができる。
【0024】特に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンとトリフェニルカルボニウムカチオンあるいはジアルキルアニリニウムカチオンとのイオン化合物が好ましい。これらのイオン化合物は、前記の有機アルミニウム化合物と併用することができる。
【0025】シングルサイト系触媒を用いて行うエチレンとα−オレフィンの共重合方法としては、良く知られた各種の方法を採用でき、不活性ガス中での流動床式気相重合あるいは攪拌式気相重合、不活性溶媒中でのスラリー重合、モノマーを溶媒とするバルク重合などが挙げられる。
【0026】重合温度は、通常、10〜150 ℃、好ましくは20〜90℃であり、重合時間は、通常0.1 〜10時間である。
【0027】本発明のシングルサイト系重合触媒として、メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物を用いる場合、有機アルミニウム化合物のアルミニウム(Al)原子とメタロセン化合物の遷移金属原子のモル比(Al/遷移金属原子モル比) として、通常、10〜100,000 、好ましくは10〜1,000 である。
【0028】本発明のシングルサイト系重合触媒として有機アルミニウム化合物に代えて、イオン性化合物を単独で又は有機アルミニウム化合物と混合して用いてもよい。イオン性化合物/遷移金属原子モル比は、通常、 0.1〜50、好ましくは 0.5〜5である。
【0029】線状低密度ポリエチレンとは、チーグラー系又はクロム系の触媒の存在下に、中低圧の圧力で、エチレンとα−オレフィンとを溶液重合、気相重合あるいはスラリー重合などの公知の方法で共重合させた、比較的分子量分布の広いエチレン−α−オレフィン共重合体である。
【0030】共重合のコモノマーとしては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1などの炭素数3以上のα−オレフィンが挙げられる。線状低密度ポリエチレンのα−オレフィンから誘導される繰り返し単位は、 0.1〜10mole% であることが好ましい。
【0031】線状低密度ポリエチレンとしては、特に下記の物性を有するものが好ましい。190℃でのメルトインデックスが 0.1〜 10g/10分以下であり、より好ましくは、 0.5〜5g/10分である。また、分子量分布(Mw /Mn )は、 3以上であり、より好ましくは 4〜30である。
【0032】本発明の接着性ポリエチレン組成物は、上記のエチレン−α−オレフィン共重合体99〜40重量%と線状低密度ポリエチレン 1〜60重量%とからなる組成物に不飽和ジカルボン酸類をグラフトしたものである。
【0033】また、上記の不飽和カルボン酸類としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸、及びこれらの酸の無水物が挙げられる。
【0034】線状低密度ポリエチレンにグラフトさせる不飽和カルボン酸類の量は、0.01〜5重量%が好ましく、0.04〜 1重量%がより好ましい。
【0035】エチレン−α−オレフィン共重合体と線状低密度ポリエチレンとの組成物に不飽和カルボン酸類をグラフトさせる方法としては、例えば、該組成物及び不飽和ジカルボン酸類を反応開始剤の存在下に溶融混練することにより製造できる。
【0036】反応開始剤としては、t-ブチル- ハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物系の反応開始剤が使用できる。また、2,3-ジメチル-2,3- ジフェニルブタンなどのクメンの二量体およびその誘導体が使用できる。
【0037】エチレン−α−オレフィン共重合体と線状低密度ポリエチレンとの組成物配合割合は、線状低密度ポリエチレン 1〜60重量%、好ましくは、 5〜50重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体99〜40重量%、好ましくは、95〜60重量%である。本発明の接着性ポリエチレン組成物は、上記の割合で各成分を含有することにより、接着性及び低温特性が一層向上する。
【0038】本発明の接着性ポリエチレン組成物は、さらに、エチレン−プロピレン共重合体ゴムを配合して用いてもよい。エチレン−プロピレン共重合体ゴムの配合量は、変性エチレン−α−オレフィン共重合体 100重量部に対して、通常、50重量部以下であり、より好ましくは、40重量部以下である。
【0039】エチレン−プロピレン共重合体ゴムを配合することにより、接着性ポリエチレン組成物の低温特性がより向上する。
【0040】本発明の接着性ポリエチレン組成物は、用途に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機・有機充填剤、顔料、帯電防止剤などを添加することができる。
【0041】本発明の接着性ポリエチレン組成物は、押出成形等、通常のポリエチレンと同様な方法により、フィルム又はシート状に成形することができる。単独であるいは金属板、箔又は管と積層されてラミネート金属板(箔)、被覆管として用いることができる。また、接着性ポリエチレン組成物を挟んで両側に金属板を積層したサンドイッチ構造の積層物、金属と積層した接着性ポリエチレン組成物にさらにポリオレフィン(例えばポリエチレン)を積層した構造の積層物としても用いることができる。
【0042】接着性ポリエチレン組成物と金属との積層物は、接着性ポリエチレン組成物のフィルム又はシート状を金属と熱圧着する方法、ダイ外部でラミネートする方法、ダイ内部でラミネートする方法、押出コーティングする方法、粉体塗装する方法などによって製造できる。
【0043】用いられる金属としては、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、錫、ステンレス等が挙げられる。特に、鋼板、TSF鋼板が好ましい。金属は接着性ポリエチレン組成物と積層する前に、公知の前処理、例えば溶剤脱脂、酸洗、ショットプラスト等の前処理が行われ、さらにプライマー処理としてエポキシ系樹脂のプライマーを介することにより、より大きな接着力が有する積層物が得られる。
【0044】
【発明の効果】本発明の接着性ポリエチレン組成物は、金属との接着強度が大きく、優れた低温耐衝撃性を示すため、極低温下で使用されるケーブル、金属板、金属管内外面の被覆に好適に使用できる。
【0045】
【実施例】
(A)低温衝撃試験(1)低温衝撃試験片の調製ショットブラストされた鋼板(SS-41:100mm×150mm ×9mm(t)) をアセトンに浸潰し、30分間、超音波洗浄して脱脂する。エアーで風乾後、 140℃のオープンに入れ、30分以上保持し、その後 180℃に加熱した熱板上に乗せ、二液硬化型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190 ) 100重量部とアミン系硬化剤50重量部とを混合)をはけ塗りして、バーコーダーで50μm の厚みに調製し、30秒間養生硬化させる。次に、Tダイ成形した接着性ポリエチレン組成物のシート( 100mm×150mm ×0.2mm(t))を張り合わせ、 1分間養生し、続いてメルトインデックス(MI)0.1g/10分の高圧法低密度ポリエチレンTダイ成形シート( 100mm×150mm ×2.5mm(t))、ポリエステルフィルム(マイラー)、 160℃に予熱された上記のショットブラスト鋼板の順に積層し、この鋼板の上に10.kg の重りを乗せ 3分間圧着したのち、水中に投入し、冷却して低温衝撃試験用の試験片とした。
【0046】(2)低温衝撃試験ドライアイス・エタノールにより、 -60℃に保持された低温槽に上記(1) の試験片を入れ、30分以上経過後、試験片の低密度ポリエチレン層を上に向け、水平に設置する。この時、試験片の上部より 10mm 以上エタノールがある様に、エタノール量を調整する。R=19mmφの付いた先端部を持つ鋼鉄製のポンチを試験片の上に置き、4kg の重りを所定の高さ(重りの底面からポンチの上部までの距離)から自由落下させ、ポンチ上部に衝突させる。試験片を取り出し、貫通、割れの有無を調べる(10回試験を行い、貫通、割れの有無を表記する)。
【0047】(B)接着強度試験(1)接着強度測定用試験片の調製Tダイ成形した接着性ポリエチレン組成物のシート( 100mm×150mm ×0.2mm(t))を積層するまで、A−(1) と同様に行い、次に、接着性ポリエチレン組成物シートと高圧法低密度ポリエチレンシート( 100mm×150mm ×2.5mm(t))の一部未接着の部分を形成するため、長て方向に、先端から50mmの部分までマイラーを積層し、その後、A−(1) と同様に高圧法低密度ポリエチレンシートを積層して、接着強度測定用試験片を調製する。
【0048】(2)接着強度の測定B−(1) で調製した試験片を10mm間隔で長て方向にカッターナイフにより亀裂を入れ、恒温槽を備えた引張強度試験機を用いて、未接着の部分のポリエチレン層をチャックに挟み、90度剥離用のジグに装着し、試験片が充分に40℃になった後、剥離速度50mmにて90度剥離試験を行い、接着強度を測定した。
【0049】実施例1シングルサイト系触媒を用いて製造したメルトインデックス(MI)1.0g/10分、密度0.902g/cm3 、分子量分布(Mw/Mn)2.1 、メルトフロー比(MI10/MI2.16) 7.6、オクテン-1含量12wt% であるエチレンとオクテン-1の共重合体70重量%と、チーグラー系触媒を用いて製造したメルトインデックス(MI)2.0g/10分、密度0.919g/cm3 、分子量分布(Mw/Mn)4.4 、ブテン-1含量 8wt% の線状低密度ポリエチレン 30 重量%との組成物に 0.1重量%の無水マレイン酸とラジカル発生剤として 0.04 重量%のt-ブチルハイドロパーオキサイドをヘンシェルミキサーにて混合して、二軸押出機にて、窒素気流下、 220℃で溶融混練を行い、0.09重量%の無水マレイン酸がグラフト重合した接着性ポリエチレン組成物を得た。
【0050】この接着性ポリエチレン組成物をTダイ成形機を用いて、幅 150mm、厚さ 0.2mmのシートを成形し、低温衝撃試験(A)、及び40℃での接着強度試験(B)の測定に供した。低温衝撃試験では、 5Kg・m のエネルギーで10回試験を行った。低密度ポリエチレン層は貫通し、割れは発生しなかった。40℃での90度剥離接着強度試験は20kg/cm であった。
【0051】実施例2実施例1の組成物 100重量部に 230℃でのメルトフローレート 0.7(g/10 分)、プロピレン含量27( wt% ) のエチレン−プロピレン共重合ゴム10重量部の組成物にした以外は、実施例1と同様に行った。低温衝撃試験では、 5Kg・m のエネルギーで10回試験を行った。低密度ポリエチレン層は貫通し、割れは発生しなかった。40℃での90度剥離接着強度試験は17kg/cm であった。
【0052】比較例1エチレン−α−オレフィン共重合体として、メルトフローレート(MI)1g/10分、密度0.920g/cm3 、分子量分布(Mw/Mn) 4、メルトフロー比(MI10/MI2.16) 7、ブテン-1含量 8wt% であるエチレン−ブテン-1共重合体を用いた以外は、実施例1と同様に行った。低温衝撃試験では、 5Kg・m のエネルギーで10回試験を行った。低密度ポリエチレン層は貫通し、低密度ポリエチレン層に割れが 5回生じた。40℃での90度剥離接着強度試験は、18kg/cm であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エチレン−α−オレフィン共重合体99〜40重量%と線状低密度ポリエチレン 1〜60重量%とからなる組成物に不飽和カルボン酸類をグラフトさせた接着性ポリエチレン組成物であって、(1)該エチレン−α−オレフィン共重合体がシングルサイト触媒の存在下にエチレンとα−オレフィンを共重合することによって得られたものであり、(2)該線状低密度ポリエチレンがチーグラー系触媒又はクロム系触媒の存在下にエチレンとα−オレフィンを共重合することによって得られたものであることを特徴とする接着性ポリエチレン組成物。
【請求項2】 エチレン−α−オレフィン共重合体99〜40重量%と線状低密度ポリエチレン 1〜60重量%とからなる組成物に不飽和カルボン酸類をグラフトさせた接着性ポリエチレン組成物であって、該エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw /Mn )が 2.5以下であり、かつ、メルトフロー比(MI10/MI2.16)が 5〜15の範囲にあり(ただし、MI10は 190℃での荷重10Kgのメルトインデックス、MI2.16は 190℃での荷重2.16Kgのメルトインデックスを表す。)であることを特徴とする接着性ポリエチレン組成物。
【請求項3】 請求項1又は請求項2の接着性ポリエチレン組成物 100重量部に対して、エチレン−プロピレン共重合体ゴムを50重量部以下配合したことを特徴とする接着性ポリエチレン組成物。