説明

接続構造体

【課題】種類の異なる金属で構成された電線と圧着端子とを接続し、電食が生じることなく、確実な導電機能を有する接続構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】アルミ導体202を絶縁被覆201で被覆する被覆電線200において先端側の絶縁被覆201を剥がして露出した導体露出部202aと、ワイヤーバレル部12及びインシュレーションバレル部14を備え、導体露出部202aを構成するアルミニウム合金よりも貴な金属である銅合金で構成するオープンバレル型の圧着端子10とを接続する接続構造体1であって、アルミ導体202の全体及び絶縁被覆201における前方の一部とを一体的に覆う箔状中間金属30を備え、箔状中間金属30における導体露出部202aを覆う電線部分302をワイヤーバレル部12で圧着するとともに、箔状中間金属30における絶縁被覆201の一部を覆う被覆部分301をインシュレーションバレル部14で圧着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、自動車用ワイヤーハーネスの接続を担うコネクタ等に装着される圧着端子を用いた接続構造体に関し、さらに詳しくは、アルミニウム電線やアルミニウム合金電線からなるワイヤーハーネスと圧着端子とを接続する接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガソリン自動車には、銅に錫めっきを施した端子と銅電線とを圧着接続させるワイヤーハーネス(あるいはバッテリーケーブル)等が用いられている。また、自動車からの二酸化炭素排出量の低減が求められている現在において、ガソリン自動車に比べてワイヤーハーネスが多用される電気自動車やハイブリット自動車が用いられてきている。
【0003】
このような状況の中、ガソリン自動車を含め、すべての自動車において、車両の軽量化は燃費向上に大きな影響を与えるため、ワイヤーハーネスやバッテリーケーブル等に、銅製(あるいは銅合金製)だけでなくアルミニウム製(あるいはアルミニウム合金製)の電線を適用し軽量化を図っている。
【0004】
しかしながら、アルミニウムやアルミ合金で構成するアルミ電線を銅や銅合金で構成する圧着端子に圧着接続した場合、両者の接触部分に結露や海水等の水分が介在すると電気化学的反応を生じ、端子材料の錫めっき、金めっき、銅合金等の貴な金属との接触により、卑なアルミニウムやアルミニウム合金が腐食される現象、すなわち異種金属腐食(以下において電食という)が生じるという問題がある。
この電食により、端子の圧着部で圧着したアルミ電線が腐食、溶解、消失し、やがては電気抵抗が上昇し、十分な導電機能を果たせなくなるおそれがある。
【0005】
ところで、車載用途のワイヤーハーネスの圧着端子における電線の付け根部分では、絶えず振動を受けるため、疲労劣化を起こすおそれがある。そのため、圧着端子にはインシュレーションバレル部を設け、ワイヤーバレル部によるアルミ電線の電気的・機械的な接続を補助することが好ましい。もちろん、アルミ電線と圧着端子とを接続する接続構造体においても、インシュレーションバレル部を備えた圧着端子を用いることが好ましいが、絶縁被覆とインシュレーションバレル部との界面に沿って水分が浸透し、アルミ電線が腐食するおそれがあった。
【0006】
このようなアルミニウム又はアルミニウム合金で構成したアルミ電線と、銅や銅合金等で構成した圧着端子とを接続する接続構造体におけるアルミ電線の電食を防止するために、絶縁層を剥ぎ取ったアルミ電線の電線露出部を、端子と同種の銅合金製の中間キャップで被覆し、この中間キャップを包囲するようにカシメ片をカシメ付けることにより圧着固定する接続構造が開示されている(特許文献1参照)。
【0007】
なお、アルミ電線と圧着端子との電気的な接続を長期に亘って維持するため、例えばワイヤーバレル部のバレル片をアルミ電線に食い込ませるように、アルミ電線を強く圧着する必要がある。このような強い圧着によって、確実な導電機能を確保することができる。しかし、このような強い圧着により、軟らかいアルミ電線は大きく変形することとなる。
【0008】
このように強く圧着する状況において、上記特許文献1における中間キャップでアルミ電線の端末部を被覆した上で圧着する接続方式の場合、ワイヤーバレル部より受ける強い圧着力により中間キャップが破壊され、中間キャップに被覆されたアルミ電線が露出するおそれがある。
【0009】
上述したように、アルミ電線が露出し、貴な金属で構成する圧着端子との間に水分が付着すると電食が生じ、アルミ電線が腐食消失して、アルミ電線の導体としての機能を維持できなくなる。
【0010】
このような問題に対して、中間キャップを破壊しないように低い圧着力で圧着すると、中間キャップからのアルミ電線の露出を防止できるため、アルミ電線に電食が生じることはない。しかし、圧着力が低いため、中間キャップを介してアルミ電線と圧着端子とを電気的に接続する接続構造体としての導電機能が損なわれることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−207172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、種類の異なる金属で構成された電線と圧着端子とを接続し、電食が生じることなく、確実な導電機能を有する接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、アルミ電線を絶縁被覆で被覆する被覆電線において先端側の前記絶縁被覆を剥がして露出した導体露出部と、ワイヤーバレル部及びインシュレーションバレル部を備え、前記アルミ電線を構成する金属よりも貴な金属で構成するオープンバレル型の圧着端子とを接続する接続構造体であって、前記導体露出部の全体及び前記絶縁被覆における前記導体露出部側の一部とを一体的に覆う中間金属を備え、該中間金属における前記導体露出部を覆う電線部分を、前記ワイヤーバレル部でかしめて圧着するとともに、前記中間金属における前記絶縁被覆の一部を覆う被覆部分を、前記インシュレーションバレル部でかしめて圧着することを特徴とする。
【0014】
上記アルミ電線は、アルミニウム製素線あるいはアルミニウム合金製素線を撚った電線とすることができる。
また、上述の圧着端子を構成する貴な金属は、例えば、アルミ電線に対して銅や錫等のイオン化傾向の小さい貴な金属で構成する金属や、貴な金属でめっきした金属で構成することができる。
【0015】
また、上述の前記絶縁被覆における前記導体露出部側の一部は、導体露出部を形成するために、絶縁被覆の先端側の一部を剥がし、残存する絶縁被覆の先端付近の一部とすることができる。
【0016】
この発明により、アルミ電線と、前記アルミ電線を構成する金属よりも貴な金属で構成された圧着端子とを接続し、電食が生じることなく、確実な導電機能を有する接続構造体を構成することができる。
【0017】
詳しくは、中間金属が、前記導体露出部の全体及び前記絶縁被覆における前記導体露出部側の一部とを一体的に覆うため、中間金属の端部と絶縁被覆の間からの水分の浸透を防止することができる。つまり、中間金属により電線露出部を外界から遮断して密封できるので、アルミ電線の電線露出部に電食が生じることを防止することができる。
【0018】
また、中間金属における前記導体露出部を覆う電線部分を、前記ワイヤーバレル部でかしめて圧着するため、確実な導電機能を確保することができる。
さらにまた、中間金属における前記絶縁被覆の一部を覆う被覆部分を、前記インシュレーションバレル部でかしめて圧着するため、高い耐久性の機械的接続を実現することができる。
【0019】
さらに詳述すると、例えば、この接続構造体を車載する場合、圧着端子に接続したアルミ電線の付け根部分では、絶えず振動を受けるため、疲労劣化を起こすおそれがある。しかし、圧着端子にインシュレーションバレル部を設けるとともに、中間金属における前記絶縁被覆の一部を覆う被覆部分を、前記インシュレーションバレル部でかしめて圧着するため、中間金属を介したワイヤーバレル部と導体露出部との圧着接続を補助するとともに、確実な機械的接続を実現することができる。
【0020】
さらには、中間金属における被覆部分を、前記インシュレーションバレル部でかしめて圧着するため、絶縁被覆とインシュレーションバレル部との界面に沿って水分が浸透することを防止できる。よって、電線露出部の電食を防止することができる。
【0021】
この発明の態様として、前記インシュレーションバレル部の内面に、圧着状態において、前記中間金属の前記被覆部分を、押圧して前記絶縁被覆に密着させる押圧手段を備えることができる。
前記押圧手段は、例えば、いわゆるセレーションといわれるような、前記インシュレーションバレル部の内面から突出する凸状の押圧手段、或いは凹状の押圧手段とすることができる。また、押圧手段は、圧着端子の長手方向に交差する方向の押圧手段や、複数点在する押圧手段等で構成することができる。
【0022】
この発明により、中間金属による導体露出部の密封効果を向上し、さらに効果的にアルミ電線の電食を防止することができる。また、押圧手段により、インシュレーションバレル部による絶縁被覆の圧着状態における拘束力を向上することができる。
【0023】
したがって、例えば、この接続構造体を車載する場合であっても、アルミ電線の付け根部分が絶えず受ける振動の影響が、中間金属を介したワイヤーバレル部と導体露出部との圧着状態に及ぶことを防止できる。
【0024】
また、この発明の態様として、前記中間金属を、銅、または銅合金で構成するとともに、前記中間金属における内面に、錫めっきまたは錫合金めっきによる被膜を形成することができる。
【0025】
この発明により、中間金属が破壊するほど大きい圧着力で圧着せずとも、十分な電気的接続を実現することができる。
詳しくは、中間金属を導電性の高い銅、または銅合金で構成するとともに、中間金属における内面に錫めっきまたは錫合金めっきによる被膜を形成することによって、圧着状態のワイヤーバレル部と導体露出部との間に中間金属が介在することによる導電機能の低下を防止し、高い導電性を確保することができる。
【0026】
また、錫めっきまたは錫合金めっきを介することにより、銅または銅合金の中間金属を直接アルミ電線に圧着する場合に比べて、低い荷重でも電気的な接続が可能になる。
【0027】
また、中間金属が破壊するほど大きい圧着力で圧着せずとも、十分な電気的接続を実現できるため、中間金属が破壊せず、中間金属の破壊によって導体露出部が中間金属から露出することを防止できる。また、例えば、中間金属が破壊されないように圧着端子のワイヤーバレル部よりも強い金属で中間金属を構成したり、中間金属の厚みを厚くしたりすることによって、中間金属と導体露出部とに作用するワイヤーバレル部による圧着力が小さくなった場合であっても、中間金属と導体露出部との電気的な接続を十分に維持することができる。
【0028】
また、この発明の態様として、前記導体露出部の先端部分が前記ワイヤーバレル部の内側となる位置に配置することができる。
この発明より、例えば、中間金属を介したワイヤーバレル部による圧着力によって、導体露出部が延びるように変形した場合であっても、ワイヤーバレル部におけるインシュレーションバレル部と反対側から導体露出部が露出することを防止できる。したがって、導体露出部に電食が生じることをより確実に防止することができる。
【0029】
また、この発明の態様として、前記中間金属を、箔状の金属箔や筒状の金属管で構成することができる。
上記筒状の金属管は、内部が貫通する管状の金属管、あるいは、内部が中空、且つ有底の金属管とすることができる。
【0030】
この発明により、汎用の金属箔や金属管を中間金属として用いることができるため、より簡便に、導体露出部の電食を防止して、導体露出部、中間金属及び圧着端子間の導電機能を維持することができる。
【0031】
なお、上記金属箔は導体露出部に巻き付けて、導体露出部より前方の部分を折り曲げても良い。また、金属箔を導電性の接着剤で導体露出部に接着固定してもよい。この接着剤による金属箔の接着固定により、金属箔の重なり部分からの水分の浸透をより確実に防止できるため、より好ましい。
また、上記金属管は導体露出部に被せて先端を折り曲げても構成してもよい。なお、金属管はキャップ状の底付き管であるとより好ましい。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、種類の異なる金属で構成された電線と圧着端子とを接続し、電食が生じることなく、確実な導電機能を有する接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】圧着端子及び接続構造体についての説明図。
【図2】箔状中間金属の被覆方法についての説明図。
【図3】接続構造体の縦断面図による説明図。
【図4】他のパターンの中間金属の被覆方法についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
なお、図1は圧着端子10及び接続構造体1についての説明図を示し、図2は箔状中間金属30の被覆方法についての説明図を示し、図3は接続構造体1の縦断面図による説明図を示し、図4は他のパターンである中間金属の被覆方法についての説明図を示している。
【0035】
なお、図1(a)は幅方向中央で分断した圧着端子10の斜視図を示し、図1(b)は圧着前の圧着端子10及び被覆電線200の斜視図を示し、図1(c)は圧着端子1と被覆電線200とを圧着接続した接続構造体1の斜視図を示している。
【0036】
まずは、圧着端子10について説明する。圧着端子10は、メス型端子であり、長手方向Xの前方から後方に向かって、図示省略するオス型端子のオスタブの挿入を許容するボックス部11と、ボックス部11の後方で、所定の長さの第1トランジション16を介して配置されたワイヤーバレル部12と、ワイヤーバレル部12の後方で所定の長さの第2トランジション17を介して配置されたインシュレーションバレル部14とを一体に構成している。
【0037】
圧着端子10は、表面が錫めっきされた黄銅等の銅合金条に、形状加工及び折り曲げ加工を施して立体構成したオープンバレル型端子である。ボックス部11は、倒位の中空四角柱体で構成され、内部に、長手方向Xの後方に向かって折り曲げられ、挿入されるオス型端子のオスタブに接触する接触凸部11bを有する接触片11aを備えている。
【0038】
圧着前のワイヤーバレル部12は、図1(b)に示すように、バレル底部の幅方向Yの両側から斜め外側上方に延出するワイヤーバレル片13を備え、後方視略U型に形成している。なお、ワイヤーバレル片13は、側面視略長方形に形成している。
【0039】
また、圧着前のインシュレーションバレル部14も、バレル底部の幅方向Yの両側から斜め外側上方に延出するインシュレーションバレル片15を備え、後方視略U型に形成している。
【0040】
さらには、図1のa部拡大図に示すように、インシュレーションバレル部14における内面において、バレル底部からインシュレーションバレル片15に沿う幅方向Yに長い凸状のセレーション40を2本備えている。
【0041】
被覆電線200は、近年の小型化、軽量化に伴い、従来の撚り線と比べて細い極細のアルミ素線を撚ってアルミ導体202を構成し、該アルミ導体202を絶縁樹脂で構成する絶縁被覆201で被覆している。さらに、アルミ導体202のうち、先端側の絶縁被覆201を剥がして導体露出部202aを形成している。
【0042】
また、被覆電線200において、絶縁被覆201の絶縁被覆先端部201aを跨ぐ態様で、導体露出部202aの全体と、絶縁被覆201の前方側の一部とを一体的に箔状中間金属30で被覆している。
箔状中間金属30は、銅合金で構成した金属箔であり、内面、すなわち導体露出部202aに対向する面に錫合金めっきによる被膜30aを形成している。
【0043】
箔状中間金属30は、以下で説明する方法で、導体露出部202aの全体と、絶縁被覆201の前方側の一部とを一体的に被覆している。まず、図2(a)に示すように、平面視長方形状の箔状中間金属30を、被覆電線200の長手方向Xと合わせ、被膜30aを形成した面を被覆電線200に対向させて配置する。
【0044】
そして、箔状中間金属30を、絶縁被覆先端部201aを跨ぐ態様で、導体露出部202a及び絶縁被覆201の前方側の一部に下方から、導体露出部202a及び絶縁被覆201の外面に沿って密着させる。
【0045】
さらに、長手方向Xの前方側の箔状中間金属30を、点線で示す折れ線Lに沿って矢印aに示すように折り返して上方から被せて、箔状中間金属30で導体露出部202a及び絶縁被覆201を挟み込むように密着させる。(図2(b))。
【0046】
さらには、折り返した箔状中間金属30において、被覆電線200より広がった余白部分30bを、導体露出部202a及び絶縁被覆201の外周側に巻き付けて箔状中間金属30による被覆を完了する。
【0047】
なお、箔状中間金属30の被膜30aが形成された被覆電線200に対向する面に、予め導電性の接着剤を塗布しておき、導体露出部202a及び絶縁被覆201と箔状中間金属30とを接着固定してもよい。
【0048】
このようにして、絶縁被覆先端部201aを跨ぐ態様で導体露出部202aの全体と、絶縁被覆201の前方側の一部とを一体的に箔状中間金属30で被覆した被覆電線200を、圧着端子10に圧着接続して接続構造体1を構成する。
【0049】
詳しくは、図1(b),(c)に示すように、箔状中間金属30を介して、圧着端子10のワイヤーバレル部12に導体露出部202aを圧着固定するとともに、インシュレーションバレル部14に絶縁被覆201を圧着固定する。
【0050】
このとき、インシュレーションバレル部14のインシュレーションバレル片15は、箔状中間金属30における絶縁被覆201を覆う被覆部分301をかしめて圧着し、ワイヤーバレル部12のワイヤーバレル片13は、箔状中間金属30における導体露出部202aを覆う電線部分302をかしめて圧着している。
【0051】
また、導体露出部202aの先端202bがワイヤーバレル部12における長手方向Xの中間位置となるように、被覆電線200を配置している。
なお、このとき、箔状中間金属30を介して、インシュレーションバレル部14で絶縁被覆201を圧着しながら、導体露出部202aの先端202bがワイヤーバレル部12の長手方向Xの中間位置となるように配置するためには、絶縁被覆201を剥いで導体露出部202aを形成する長さを調整する必要がある。
【0052】
このように、箔状中間金属30を介し、導体露出部202aをワイヤーバレル部12で圧着し、絶縁被覆201をインシュレーションバレル部14で圧着して、圧着端子10と被覆電線200とを圧着接続した接続構造体1は、アルミ合金で構成した導体露出部202aと、アルミ合金より貴な銅合金で構成された圧着端子10とを接続しても、導体露出部202aが電食することなく、確実な導電機能を有することができる。
【0053】
詳しくは、箔状中間金属30が、図3に示すように、絶縁被覆先端部201aを跨ぐ態様で導体露出部202aの全体と、絶縁被覆201の前方側の一部とを一体的に覆うため、箔状中間金属30の端部と絶縁被覆201の外周面との間から水分が浸透することを防止でき、つまり、箔状中間金属30により導体露出部202aを外界から遮断するように密封できるので、導体露出部202aが電食することを防止できる。
【0054】
また、箔状中間金属30において導体露出部202aを覆う電線部分302を、ワイヤーバレル部12でかしめて圧着するため、確実な導電機能を確保することができる。さらにまた、箔状中間金属30における絶縁被覆201の前方の一部を覆う被覆部分301を、インシュレーションバレル部14でかしめて圧着するため、高い耐久性の機械的接続を実現することができる。
【0055】
したがって、例えば、この接続構造体1を車載し、圧着端子10に接続した被覆電線200の付け根部分、すなわち圧着端子10の後方に絶えず、走行等による振動が付加されたとしても、箔状中間金属30における被覆部分301をインシュレーションバレル部14でかしめて圧着するため、箔状中間金属30を介したワイヤーバレル部12と導体露出部202aとの電気的な接続をサポートするとともに、確実な機械的接続を実現することができる。
【0056】
さらには、箔状中間金属30における被覆部分301を、インシュレーションバレル部14でかしめて圧着しているため、絶縁被覆201とインシュレーションバレル部14との界面に沿って水分が浸透して導体露出部202aが電食することを防止できる。
【0057】
また、インシュレーションバレル部14の内面にセレーション40を備えているため、図3に示すように、箔状中間金属30を介してセレーション40が絶縁被覆201に食い込み、箔状中間金属30による導体露出部202aの密封効果を向上することができる。
【0058】
また、セレーション40が箔状中間金属30を介して絶縁被覆201に食い込むため、インシュレーションバレル部14による絶縁被覆201の圧着状態における拘束力を向上することができる。
【0059】
したがって、例えば、接続構造体1を車載し、走行等による振動等の負荷が被覆電線200に作用した場合であっても、ワイヤーバレル部12と導体露出部202aとの電気的な接続に、被覆電線200に付加された振動による影響が及ぶことを防止できる。
【0060】
また、導電性の高い銅合金箔で箔状中間金属30を構成するとともに、箔状中間金属30における被覆電線200との対向面に錫合金めっきによる被膜30aを形成しているため、箔状中間金属30を介在したことによる導電性の低下を防止し、箔状中間金属30が破れるほど大きい圧着力でワイヤーバレル部12と導体露出部202aとを圧着せずとも、十分な電気的接続を実現することができる。
【0061】
また、箔状中間金属30における被覆電線200との対向面に錫合金めっきによる被膜30aを形成することにより、銅または銅合金の箔状中間金属を直接導体露出部202aに圧着する場合に比べて、低い圧着力でも電気的な接続が可能になる。
【0062】
また、このように、箔状中間金属30が破れるほど大きい圧着力でワイヤーバレル部12と導体露出部202aとを圧着せずとも十分な電気的接続を確保できるため、箔状中間金属30が破れて導体露出部202aが露出することを防止できる。よって、導体露出部202aの電食を確実に防止することができる。
【0063】
また、箔状中間金属30を介したワイヤーバレル部12と導体露出部202aとの圧着において、導体露出部202aの先端202bがワイヤーバレル部12における長手方向Xの中間位置程度となるように配置している。このため、例えば、図3に示すように、箔状中間金属30を介したワイヤーバレル部12による圧着力によって、導体露出部202aが延びるように変形した場合であっても、ワイヤーバレル部12の前方の第1トランジション16から導体露出部202aが露出することを防止できる。したがって、導体露出部202aに電食が生じることをより確実に防止することができる。
【0064】
なお、上述の説明では、平面視長方形状の箔状中間金属30を、絶縁被覆先端部201aを跨ぐ態様で導体露出部202a全体と絶縁被覆201の前方の一部とを一体的に覆ったが、例えば、図4(a),(b)に示すように、導体露出部202aにテープ状のテープ状中間金属31を螺旋状に巻き付けて、絶縁被覆先端部201aを跨ぐ態様でアルミ導体202の全体と絶縁被覆201の前方一部とを一体的に覆う構成であってもよい。
【0065】
また、図4(c),(d)に示すように、有底であり、横向きの長い凸形状のキャップ状中間金属32を導体露出部202aに挿着して、絶縁被覆先端部201aを跨ぐ態様でアルミ導体202の全体と絶縁被覆201の前方一部とを一体的に覆う構成であってもよい。このように、テープ状中間金属31やキャップ状中間金属32を用いても、箔状中間金属30を用いた場合と同様の効果を有することができる。
【0066】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明のアルミ電線は、アルミ導体202に対応し、
以下同様に、
アルミ電線を構成する金属よりも貴な金属は、銅合金や、端子表面の錫めっきに対応し、
中間金属は、箔状中間金属30,テープ状中間金属31及びキャップ状中間金属32に対応し、
押圧手段は、セレーション40に対応し、
先端部分は、先端202bに対応し、
金属箔は、箔状中間金属30及びテープ状中間金属31に対応し、
金属管は、キャップ状中間金属32に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0067】
例えば、セレーション40をインシュレーションバレル部14の内面から突出する凸状に形成したが、逆に、溝形状で形成し、溝形状の角部で箔状中間金属30を絶縁被覆201に押圧し、絶縁被覆201と箔状中間金属30との密着性を向上させる構成であってもよい。また、圧着端子10をメス型端子で構成したが、箔状中間金属30で覆われた被覆電線200をオス型端子に接続して接続構造体1を構成しても、上述の効果を得ることができる。また、圧着端子10に接続する被覆電線200として、電食が生じやすいアルミ導体202を用いたが、その他の金属製の導体で構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…接続構造体
10…圧着端子
12…ワイヤーバレル部
14…インシュレーションバレル部
30…箔状中間金属
30a…被膜
31…テープ状中間金属
32…キャップ状中間金属
40…セレーション
200…被覆電線
201…絶縁被覆
202…アルミ導体
202a…導体露出部
202b…先端
301…被覆部分
302…電線部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ電線を絶縁被覆で被覆する被覆電線において先端側の前記絶縁被覆を剥がして露出した導体露出部と、
ワイヤーバレル部及びインシュレーションバレル部を備え、前記アルミ電線を構成する金属よりも貴な金属で構成するオープンバレル型の圧着端子とを接続する接続構造体であって、
前記導体露出部の全体及び前記絶縁被覆における前記導体露出部側の一部とを一体的に覆う中間金属を備え、
該中間金属における前記導体露出部を覆う電線部分を、前記ワイヤーバレル部でかしめて圧着するとともに、
前記中間金属における前記絶縁被覆の一部を覆う被覆部分を、前記インシュレーションバレル部でかしめて圧着する
接続構造体。
【請求項2】
前記インシュレーションバレル部の内面に、
圧着状態において、前記中間金属の前記被覆部分を、押圧して前記絶縁被覆に密着させる押圧手段を備えた
請求項1に記載の接続構造体。
【請求項3】
前記中間金属を、銅、または銅合金で構成するとともに、
前記中間金属における内面に、錫めっきまたは錫合金めっきによる被膜を形成した
請求項1又は2に記載の接続構造体。
【請求項4】
前記導体露出部の先端部分が前記ワイヤーバレル部の内側となる位置に配置した
請求項1乃至3のうちいずれかに記載の接続構造体。
【請求項5】
前記中間金属を、箔状の金属箔で構成した
請求項1乃至4のうちいずれかに記載の接続構造体。
【請求項6】
前記中間金属を、筒状の金属管で構成した
請求項1乃至4のうちいずれかに記載の接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−165406(P2011−165406A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24610(P2010−24610)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】