説明

接続端子の接続構造及び接続方法

【課題】この発明は、平角導体を貫通した貫通片を曲げることなく確実に接続できる接続端子の接続構造及び接続方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ピアス端子接続ユニット1は、フラットケーブル100を貫通するピアス刃21を複数備え、貫通する該ピアス刃21によって前記フラット配線導体101と電気的に接続されるピアス端子10と、フラットケーブル100を貫通した少なくとも2つのピアス刃21における対称位置で、抜出し方向に接触する固定治具50とを備えるとともに、ピアス刃21を、フラットケーブル100の長手方向X且つ抜出し方向Zに略平行な側面21aを有する薄板状で形成し、固定治具50がピアス刃21に接触する対称位置を、前記薄板状に形成されたピアス刃21における幅方向内側の側面21aとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、平角導体を貫通する貫通片を複数備えた接続端子の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フラットケーブル等の平角導体に電子部品を接続する接続構造が提案されている(特許文献1参照)。この接続構造は、接続子のクリンプ片を平角導体であるフレキシブル回線回路体に突き刺して貫通させ、上記クリンプ片の突き抜けた部分を曲成して加締めて固定する構造である。
しかし、小型化が望まれる電子部品に伴って小型化する接続子による接続構造はクリンプ片の曲成が困難となる可能性があった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−142796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、平角導体を貫通した貫通片を曲げることなく確実に接続できる接続端子の接続構造及び接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、平角導体を貫通する貫通片を複数備え、貫通する該貫通片によって前記平角導体と電気的に接続される接続端子と、前記平角導体を貫通した少なくとも2つの前記貫通片における対称位置で、抜出し方向に接触する接触体とを備えた接続端子の接続構造であることを特徴とする。
【0006】
この発明の態様として、前記貫通片を、前記平角導体の長手方向且つ前記抜出し方向に略平行な面を有する薄板状で形成するとともに、幅方向に配置し、前記接触体が接触する前記対称位置を、前記薄板状の幅方向外側面或いは幅方向内側面とすることができる。
【0007】
上記平角導体は、薄型導体、すなわちフラット絶縁体内にフラット配線導体が設けられたフレキシブルなフラットケーブル等のフラット配線導体であることを含む。
上記貫通片はピアス刃、又は貫通ピンであることを含み、上記接続端子はピアス刃を複数備えたピアス端子や貫通ピンを複数備えた接続端子等であることを含む。
【0008】
上記貫通片における対称位置は、幅方向に配置した貫通片の場合、幅方向中心を対称軸とした幅方向外側や幅方向内側であることを含み、さらに、円形配置された貫通片の場合においては、円中心を対称中心として円形配列された貫通片の係外側部分或いは係内側部分であることを含む。すなわち、複数の貫通片の配置に応じ、配置方向の中心を対称中心とした対称位置であることを含む。
【0009】
上記抜出し方向は、平角導体を貫通した貫通片が抜け出す方向であり、貫通片が平角導体を貫通する貫通方向と逆向きの方向であることを含み、すなわち平角導体における厚さ方向であることを含む。
【0010】
上記抜出し方向に接触するは、抜出し方向に沿う面での接触や、抜出し方向の線での接触であることを含む。
上記長手方向及び幅方向は、接続端子及び接続する平角導体の長手方向及び幅方向であることを含む。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、平角導体を貫通した貫通片を曲げることなく確実に接続できる接続端子の接続構造及び接続方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0013】
この発明の一実施形態であるピアス端子10をフラットケーブル100に接続するためのユニットであるピアス端子接続ユニット1について、図1乃至図3とともに説明する。
なお、図1はピアス端子接続ユニット1の上面側斜視図(図1(a))及び底面側斜視図(図1(b))による説明図を示し、図2はピアス端子接続ユニット1の上面側の分解斜視図(図2(a))及び底面側の分解斜視図(図2(b))による説明図を示し、図3はピアス端子接続ユニット1の組み付けについてピアス接続部20における幅方向断面図による説明図を示している。
【0014】
ピアス端子接続ユニット1は、フラットケーブル100を貫通するピアス刃21を複数備え、貫通するピアス刃21によってフラット配線導体101と電気的に接続されるピアス端子10と、フラットケーブル100を貫通した少なくとも2つのピアス刃21の突抜部分21bにおける対称位置で、抜出し方向Zの接触面で接触する固定治具50とを備えている。
【0015】
前記ピアス刃21は、前記フラットケーブル100の長手方向X且つ前記抜出し方向Zに略平行な側面21aを有する薄板状で形成している。
また、ピアス刃21は幅方向Yに2列で配置され、固定治具50がピアス刃21に接触する対称位置を、薄板状に形成されたピアス刃21における幅方向内側の側面21aとしている。
【0016】
上述するピアス端子接続ユニット1について詳述すると、ピアス端子接続ユニット1は、ピアス端子10をフラットケーブル100に接続するためのユニットであり、ピアス端子10と、フラットケーブル100に電気的に接続されたピアス端子10を固定する固定治具50とで構成している。
【0017】
ピアス端子10は、長手方向Xの前方(図1において右下)から、雌型コネクタBOX30と、ピアス刃21を複数備えたピアス接続部20とをこの順で配置して一体構成している。
【0018】
雌型コネクタBOX30は、図示省略する雄型コネクタ端子のコネクタ部分の挿入を許容する倒位の中空四角柱体で構成している。
ピアス接続部20は、背面視上に凸なアーチ型のアーチ部22と、アーチ部22の両端から下向きに突出する板状のピアス刃21をそれぞれ3枚ずつ、計6枚備えている。
【0019】
アーチ部22の片側のそれぞれに配置されたピアス刃21は、長手方向X且つ抜出し方向Zに平行な側面21aを有し、下向に凸状の側面視略U型の薄板状で形成されている。さらに、ピアス刃21は長手方向Xに所定間隔を隔てて配置されるとともに、左右のピアス刃21は長手方向Xにずらして、交互に配置されている。
【0020】
なお、上記長手方向Xは、ピアス端子10及び接続するフラットケーブル100の長手方向であり、上記抜出し方向Zはピアス刃21でフラットケーブル100を貫通する方向であり、すなわちフラットケーブル100の厚さ方向である。
【0021】
固定治具50は、長手方向Xに長く、幅方向Yの長さが、幅方向Yに2列状に配置されたピアス刃21の内側間距離y1よりわずかに大きく形成した倒位の四角柱体で構成し、その側面51が抜出し方向Zに沿う向きで配置されている。また固定治具50は適宜の弾性を有する樹脂材で構成されている。なお、上記幅方向Yは、ピアス端子10及び接続するフラットケーブル100の幅方向である。
【0022】
フラットケーブル100は、フラット絶縁体102内に2本の薄板状のフラット配線導体101が設けられたフレキシブルなフラット状のフレキシブルフラットケーブルであり、先端付近へのピアス端子10の取付けを許容している。
【0023】
なお、ピアス端子10が取り付けられる先端付近のフラット絶縁体102は、図1に示すように、フラット配線導体101を被覆する部分のみが残され、その他の部分はトリミングされている。
【0024】
このように構成したピアス端子10及び固定治具50を組み付けてフラットケーブル100に装着するピアス端子接続ユニット1の組み付け方法について図3とともに説明する。
【0025】
まず、組み付け前の断面図である図3(a)に示すように、フラットケーブル100の先端付近の上方に、ピアス刃21が下向きとなるピアス端子10を配置し、フラットケーブル100の底面側に固定治具50を配置する。なお、固定治具50はピアス刃21でフラットケーブル100を貫通したあとに配置してもよい。
【0026】
この状態で、ピアス刃21でフラットケーブル100を貫通した状態の図3(b)に示すように、ピアス刃21でフラット絶縁体102ごとフラット配線導体101を貫通し、ピアス端子接続ユニット1を組み付けた状態の図3(c)に示すように、フラットケーブル100の底面から下方に突き抜けたピアス刃21の突抜部分21bの内側に固定治具50を挿入する。
【0027】
このとき、ピアス刃21の突抜部分21bの内側間距離y1より幅方向Yの長さをわずかに大きく形成した固定治具50の側面51が突抜部分21bの内側の側面21aを擦りながら、固定治具50の上面がフラットケーブル100の底面に接触するまで、固定治具50を割り込ませて装着する。
【0028】
このように、ピアス刃21でフラット絶縁体102ごとフラットケーブル100を貫通させたことによってピアス端子10とフラット配線導体101とを電気的に接続することができる。
【0029】
また、フラットケーブル100の底面から下方に突き抜けたピアス刃21の突抜部分21bの対向する内側に固定治具50を装着したことによって、抜出し方向Zである突抜部分21bの内側の側面21aと、抜出し方向Zである固定治具50の側面51とが接触し、その間に摩擦が生じるため、その摩擦抵抗によって不用意に固定治具50が外れることを防止している。
【0030】
したがって、フラットケーブル100を貫通したピアス刃21がフラットケーブル100から抜け出ることを防止できる。よって、フラットケーブル100を貫通したピアス刃21を曲げることなく、ピアス端子10をフラットケーブル100に取り付けることができ、機械的接続性の高い接続を実現することができる。
【0031】
また、固定治具50の側面51は、幅方向Yに配置したピアス刃21における、幅方向中心CLを対称軸とする幅方向対称である幅方向内側の両側面21aと接触している。これにより、固定治具50の両側面51と幅方向内側の両側面21aとで構成する抜出し方向Zの接触面に摩擦力が均等に生じ、より固定治具50が不用意に外れることがなく、信頼性の高い接続を構成することができる。
【0032】
なお、固定治具50の側面51の上端を面取りしてもよく、この場合、ピアス刃21の内側間距離y1と略同一の幅に形成した固定治具50であっても、ピアス刃21の間に固定治具50を容易に割り込ませて装着することができ、取り扱い性を向上することができる。
【0033】
また、上述の説明では、ピアス刃21でフラットケーブル100を貫通後に、突抜部分21bの間に固定治具50を装着したが、ピアス刃21によるフラットケーブル100の貫通前に固定治具50を所定位置に配置しておき、ピアス刃21の貫通と同時に固定治具50が装着される構成であってもよい。
【実施例2】
【0034】
上述の実施例の説明において、抜出し方向Zである固定治具50の側面51と幅方向Yに配置したピアス刃21における抜出し方向Zに沿った内側の側面21aとが接し、ピアス刃21の抜出しを防止する構成であったが、図4乃至図6に示すように、幅方向Yに配置したピアス刃21における抜出し方向Zに沿った外側の側面21aと接してピアス刃21の抜出しを防止する第2固定治具60を用いてもよい。
【0035】
なお、図4はピアス端子接続ユニット1’の上面側斜視図(図4(a))及び底面側斜視図(図4(b))による説明図を示し、図5はピアス端子接続ユニット1’の上面側の分解斜視図(図5(a))及び底面側の分解斜視図(図5(b))による説明図を示し、図6はピアス端子接続ユニット1’の組み付けについてピアス接続部20における幅方向断面図による説明図を示している。
【0036】
第2の実施例のピアス端子接続ユニット1’は、実施例1と同様のピアス端子10を、ピアス刃21を貫通させてフラットケーブル100に接続し、フラットケーブル100を貫通した少なくとも2つのピアス刃21の突抜部分21bにおける対称位置である抜出し方向Zに沿った外側の側面21aに接してピアス刃21の抜出しを防止する第2固定治具60を備えている。なお、ピアス端子10及びフラットケーブル100の構成については、実施例1と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0037】
第2固定治具60は、長手方向Xに長い平面視長方形に形成され、平面視内側にひと回り小さな長方形開口61を備えた枠形状であり、該長方形開口61の幅方向Yの長さが、幅方向Yに2列状に配置されたピアス刃21の幅方向Yの外側距離y2よりわずかに小さく形成されており、該長方形開口の長手方向Xの長さが、所定間隔を隔てて配置されたピアス刃21の長さよりわずかに短く形成している。
【0038】
なお、長方形開口61における幅方向Yの内側面62が抜出し方向Zに沿うよう第2固定治具60は配置されている。また、第2固定治具60は適宜の弾性を有する樹脂材で構成されている。
【0039】
このように構成したピアス端子10、第2固定治具60を組み付けてフラットケーブル100に装着するピアス端子接続ユニット1’の組み付け方法について図6とともに説明する。
【0040】
まず、組み付け前の断面図である図6(a)に示すように、貫通するフラット配線導体101の先端付近の上方に、ピアス刃21が下向きとなるピアス端子10を配置し、フラットケーブル100の底面側に第2固定治具60を配置する。なお、第2固定治具60はピアス刃21でフラットケーブル100を貫通したあとに配置してもよい。
【0041】
この状態で、ピアス刃21でフラットケーブル100を貫通した状態の図6(b)に示すように、ピアス刃21でフラット絶縁体102ごとフラット配線導体101を貫通し、ピアス端子接続ユニット1を組み付けた状態の図6(c)に示すように、フラットケーブル100の底面から下方に突き抜けたピアス刃21の突抜部分21bの外側に第2固定治具60を装着する。
【0042】
このとき、ピアス刃21の突抜部分21bの外側距離y2より幅方向Yの長さをわずかに小さく形成した長方形開口61の内側面62が、突抜部分21bの外側の側面21aを擦りながら、第2固定治具60の上面がフラットケーブル100の底面に接触するまで、長方形開口61に突抜部分21bを割り込ませるようにして第2固定治具60を装着する。
【0043】
このように、ピアス刃21でフラット絶縁体102ごとフラットケーブル100を貫通させたことによってピアス端子10とフラット配線導体101とを電気的に接続することができる。
【0044】
また、フラットケーブル100の底面から下方に突き抜けたピアス刃21の突抜部分21bの外側に第2固定治具60を装着したことによって、抜出し方向Zである突抜部分21bの外側の側面21aと、抜出し方向Zである長方形開口61の内側面62とが接触し、その間に摩擦が生じるため、その摩擦抵抗によって不用意に第2固定治具60が外れることを防止している。
【0045】
したがって、フラットケーブル100を貫通したピアス刃21がフラットケーブル100から抜け出ることを防止できる。よって、フラットケーブル100を貫通したピアス刃21を曲げることなく、ピアス端子10をフラットケーブル100に取り付けることができ、機械的接続性の高い接続を実現することができる。
【0046】
また、長方形開口61の内側面62は、幅方向Yに配置したピアス刃21における、幅方向中心CLを対称軸とする幅方向対称である幅方向外側の側面21aと接触しているため、長方形開口61の両内側面62と側面21aとで構成する抜出し方向Zの接触面に摩擦力が均等に生じ、より第2固定治具60が不用意に外れることがなく、信頼性の高い接続を構成することができる。
【0047】
なお、長方形開口61の内側面62の上端を面取りしてもよく、この場合、ピアス刃21の外側距離y2と略同一の幅に形成した第2固定治具60であっても、ピアス刃21の外側に第2固定治具60を容易に装着することができ、取り扱い性を向上することができる。
【0048】
また、上述の説明では、ピアス刃21でフラットケーブル100を貫通後に、突抜部分21bの間に第2固定治具60装着したが、ピアス刃21によるフラットケーブル100の貫通前に第2固定治具60を所定位置に配置しておき、ピアス刃21の貫通と同時に第2固定治具60が装着される構成であってもよい。
【0049】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の平角導体は、フラット配線導体101に対応し、
以下同様に、
貫通片は、ピアス刃21に対応し、
接続端子は、ピアス端子10に対応し、
接触体は、固定治具50又は第2固定治具60に対応し、
接続構造は、ピアス端子接続ユニット1,1’に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ピアス端子接続ユニットの斜視図による説明図。
【図2】ピアス端子接続ユニットの分解斜視図による説明図。
【図3】ピアス端子接続ユニットの組み付けについての説明図。
【図4】第2の実施例のピアス端子接続ユニットの斜視図による説明図。
【図5】第2の実施例のピアス端子接続ユニットの分解斜視図による説明図。
【図6】第2の実施例のピアス端子接続ユニットの組み付けについての説明図。
【符号の説明】
【0051】
1,1’…ピアス端子接続ユニット
10…ピアス端子
21…ピアス刃
21a…側面
50…固定治具
60…第2固定治具
101…フラット配線導体
X…長手方向
Y…幅方向
Z…抜出し方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角導体を貫通する貫通片を複数備え、貫通する該貫通片によって前記平角導体と電気的に接続される接続端子と、
前記平角導体を貫通した少なくとも2つの前記貫通片における対称位置で、抜出し方向に接触する接触体とを備えた
接続端子の接続構造。
【請求項2】
前記貫通片を、
前記平角導体の長手方向且つ前記抜出し方向に略平行な面を有する薄板状で形成するとともに、幅方向に配置し、
前記接触体が接触する前記対称位置を、
前記薄板状の幅方向外側面或いは幅方向内側面とした
請求項1に記載の接続端子の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−238590(P2009−238590A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83336(P2008−83336)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】