説明

接線方向の変形性を備えた本底

特に、スポーツシューズ(2)用の本底(1)は、接線方向において前方及び後方に大きな弾性変形性を備えた形成も可能であり、その結果、踏み込んだ足が傾斜しているときや、幾分滑動状態のときに、良好なクッション作用が働く。既に変形のあった領域において少なくとも限界変形を超えると、当該本底は、接線方向の変形について大略硬性となる。これによって、ランナーは、足の踏み込みポイント毎に、確りとした着地性を確保できる。ランナーはまた、道程ロスを伴わずに踏み込み地点から再び足を押し出すことができる。このようにして、ソールの浮き効果を防止する。本発明によると、接線方向における本底の変形性は、少なくとも一つの第1要素(3a)によって引き起こされ、既に変形のあった領域において少なくとも一つの限界変形並びに少なくとも一つの限界変形度合いを超えた接線方向の変形について、本底の硬性は、少なくとも一つの第2要素(3b)によって引き起こされる。当該第1要素及び第2要素(3a、3b)は、別々にデザイン、寸法決め及び作製できるため、構造上、構成上並びにバリエーション上、幅広い選択の余地がある。最後に、少なくとも一つの第1要素3aによって決定された区域と、少なくとも一つの第2要素3bによって決定された区域が、本底の踵領域及び/又は親指の付け根部分の長さ方向において交互に繰り返される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接線方向において前方及び後方も弾性変形可能で、かつ、すでに変形のあった領域において限界変形を超えた接線方向の変形については変形しない硬さを備えた、特にスポーツシューズの本底(outsole)に関するものである。
【0002】
ここに、接線方向の変形とは、本底又はその接地面(tread)の2次元の平面範囲に対する接線方向及び/又は平行方向におけるたとえば剪断変形により生じた変形とする。この変形は、たとえば、圧縮力により引き起こされた本底又はその接地面の2次元の平面範囲と交差する方向における変形とは区別する必要がある。水平基盤(substrate)において、接線方向は、水平方向と略一致し、交差方向は、垂直方向と略一致する。
【背景技術】
【0003】
弾性変形する本底は、異なる構成の多くのものが知られていて異なる硬さを備えた弾性材料が使われている。エア又はゲル材の詰め物を埋め込んだ本底もまた知られている。これらの本底は、ランニング中に生じる応力(stress)の緩衝を意図するものであって、ランナーの運動器官、特に関節を保護するとともに爽快な走り心地を付与するものである。
【0004】
現在市場で入手可能なスポーツ用を目的としたランニングシューズのほとんどは、バネ性を備えており、これにより、主として、ソールの圧縮力によって接地面と交差する方向に又は垂直方向に緩衝作用を引き起こすが、水平及び接線方向においては相対的に硬さを示し、足をある角度において斜めに踏み下ろすと、充分に緩衝作用がえられない。この理由は、水平方向におけるソールの大きな変形は、ある種の浮き効果(swimming effect)をもたらし、ランナーの安定性及び着地性に悪影響を及ぼすからである。ソールは、踏み込み地点から押し出される間、足を踏み下ろした方向とは反対の方向に幾分変形するため、ランナーはステップを踏み出すごとに、距離のロスを被ることになる。この浮き効果は、通常のスポーツシューズにおいてもある程度生じている。この効果を回避するために、通常、多くのスポーツシューズの足の押し出しが行われるソール前面領域は、相対的に硬く変形しない構成となっている。
【0005】
これに対して、接線方向の変形性が表明されているにも関わらず、先行技術であるWO03/102430にも冒頭に述べたタイプの本底は、浮き効果を回避していることが開示されている。ここでは、変形のあった領域において少なくとも限界変形を超えると、本底は接線方向の変形については硬さを示している。ランナーにとっては、限界変形に到達した後、ステップごと又は踏み込み地点ごとにしっかりしたスタンスを確保でき、これによって、距離のロスを被ることなく再度足を押し出すことができる。
【0006】
WO03/102430では、様々な実施例が記載されており、これら実施例から、少なくとも一つの限界変形を超えたソールの硬さと関連したソールの接線方向変形の解決原理が良く理解できる。たとえば、筒状のゴム製中空要素が記載されており、この要素は、垂直方向の、また特に接線方向の変形に基づき、前方及び後方に完全に圧縮されて、また、その上半分及び下半分の外殻間の摩擦によって、更に接線方向に変形することを防止している。
【0007】
EP1264556では、スポーツシューズの本底を開示しており、そのソールは外側の軟質層と内側の硬質層とを有している。内側の硬質層の突起は、外側の軟質層を突き通して、スパイクの形態において外側層から突出している。ソールの接線方向変形性は付与されておらず、このスパイクによって防止されている。
【0008】
FR2709929で開示されているソールは類似の構成を有しており、その内側層は鋭角な金属スパイクを備えている。
【0009】
UK2285569では、変形第1要素と硬性第2要素を備えたソールを有したトレーニングシューズが開示されている。第1要素は、後方すなわち踵方向に向かってある角度で傾斜しており、この方向において、第2の硬性要素の間で荷重を受けて潰れて、この第2要素が続けて荷重を支える。前方に対する第1要素の対応する変形は、第2要素に対する構成のため、不可能となっている。
【0010】
JP5309001は、全方向において接線方向に変形可能な空洞を備えた、内側区域に突起を有するソールが配設されたシューズが開示されている。この内側区域は、中空突起の一定の変形から荷重を引き受ける硬性の低リブを備えたエッジ区域で取り囲まれている。
【0011】
ドイツ実用新案G8126601は,後ろ向きの硬性剛毛を備えたブラシ状の部品が差し込まれたソールを有するシューズを開示している。これらの剛毛は、前方への素早い走り出しを可能にすることを意図するとともに、後方に指向することによって、前方への滑り出しを可能にしている。前方に対する剛毛の対応変形は付与されておらず、恐らく、不可能である。
【0012】
米国特許3,299,544は、踵領域前方に後方に向いた横架リブを備えたソールを有したシューズを開示している。このリブに比べて、後方のエッジ領域は幾分低面をなしている。通常のランニングコンディションにおいては、リブは、この低面が地面に接触する前に、地面に接触することを意図すると同時に、低面が地面に接触し、リブの更なる変形を制限するまで、後方に偏向することを意図するものである。
【0013】
DE29818243は、後方に傾斜する要素であって、足を踏み下ろした時点で、踵方向に折れ曲がって残りのソール部分に接触する要素を備えたソールを有するシューズ機構を開示している。
【0014】
WO03/102430では、既知の解決原理とその筒状の中空要素を実際に適用する範囲において、これらの要素及び手段は、少なくとも同文献に記載の実施の形態において、全ての実用要件を満たすものではないことが判明した。スポーツシューズの領域において、各スポーツの要件に適合するよう調整された特別に構成されたシューズがほぼあらゆるタイプのスポーツに提供されており、特に、ソールの構成が各スポーツの適格性に決定的とは言わないまでも重要な役割を果たしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、WO03/102430に開示されたタイプの本底を如何にして、経済的に、各種スポーツの要件を含めた実用要件により良く適合できるかを示すことにある。
【0016】
本発明によれば、上記の目的は本発明の特許請求の範囲に記載の構成要件により達成される。
【0017】
所望の効果に要求される二つの機能性、すなわち、接線方向の変形性と少なくとも限界変形を超えた接線方向の変形については硬さを備えることの二点について、本発明では、異なる要素に割り当てている。少なくとも一つの第1要素と少なくとも一つの第2要素は、互いに独立して発想され、寸法決めされ及び作製できるため、実用において、更に多くのデザイン上、構成上及びバリエーション上の可能性が生じ、上述の二つの機能を同時に満たす既知の筒状中空要素のような従前の要素と比べても、実用要件に対し所望の適応をより良く達成できる。
【0018】
複数の接線方向に変形可能な第1要素と複数の硬さを備える第2要素への分割は、上述のJP5309001においてもまた基本的には開示されている。しかしながら、ここでは、この第1要素及び第2要素は、互いに別々に配設されている。第1要素は第1内側区域にあって、第2要素はこの内側区域を取り囲む境界区域にある。その結果、更に詳細に後述するが、いわゆる内股あるいは外股ランナーは、境界区域に配設されている硬質要素上で専ら足を繰り出し、あるいは、足の繰り出しがソールの中央で行われる場合、負荷を受けるのは実質上第1要素のみであって、これにより、本発明が回避しようとしているまさにあの浮き効果が生じるのである。
【0019】
このため、本発明は、踵領域及び/又は親指の付け根領域において、一方において少なくとも一つの第1要素と、他方において少なくとも一つの第2要素によって決定される区域が、長手方向(踵領域から付け根領域に至る方向)において交互に繰り返される構成としている。これによって、踵領域及び/又は付け根領域上での足の繰り出しの間、二つの機能が、互いに時間においても空間においても緊密な関係が常に発揮されることが確実になる。このため本発明に係るソールの特徴は、WO03/102430の特徴と大方一致するものである。
【0020】
第1要素は複数設けることができる。少なくとも一つの第1要素により決定される区域は、一つだけでなく、複数の第1要素により形成することができる。同様に、複数の第2要素を設けることができ、少なくとも一つの第2要素により決定される区域は、一つだけでなく、複数の第2要素により形成することができる。
【0021】
WO03/102430に開示された本底と同様に、本発明の本底は、ランニング中の限界変形が最大負荷状態の区域においてのみ達成され、時間的には、負荷最大時にのみ達成されるような構成とすることができる。本発明に係る本底の接線方向の変形が停止される少なくとも一つの限界変形は、変形のタイプによっている。変形は、また、接線方向のみである必要はない。限界変形はまた、厳密に交差方向または垂直方向の変形の場合においても、達成可能である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の好ましい実施態様によれば、接線方向及び/又は垂直方向の変形経路が、ソールの変形可能な厚みの20%以上、所要の場合、その50%以上にならないと、限界変形に至らない。接線方向の変形が交差方向の変形とおおよそ一致することが好ましい。絶対条件としては、おおよそ1cmに相当する程度でよい。
【0023】
このように数値化されたバネ性及び緩衝経路により、本発明に係る本底はランニング中に生じる外力及び応力(stress)を緩衝する。特に、本発明に係るソールは、着地の間、最適に緩衝作用を発揮し、ここにおいて、この場合に支配的な水平方向の外力は、たとえば、剪断変形によって走行方向に穏やかに吸収される。従来の本底を有するランニングシューズは、前述の垂直方向の緩衝作用を有していても、実際には接線方向の変形がないため、高い応力ピークが本底に発生する。足を繰り出している間、本発明に係るソールは、垂直方向の変形を同じように良く緩和して、この支配的な垂直方向の外力を吸収する。これに加え、この段階において、本発明に係るソールはまた、通常、シューズ内部での足の滑りやソックスの擦れあるいは水ぶくれの形成を招く原因となる足と地面との間の動作方向のズレに対し異なった接線方向の変形により対応している。このシューズは、足の繰り出し運動の間、地面に対し足が行う動作に抵抗することはない。このシューズは、極めて疲労の少ないランニングを可能にしている。他方、足を押し出す段階で完全に荷重がかかる間、本発明に係るソールは完全にその緩衝作用を喪失する。この段階においては、緩衝作用はもはや必要ではなく、足の押し出しを効率的に行うためには、邪魔にさえなる。足の押し出し段階において、本発明に係るソールは、あたかも「硬いもの」であるかのように作用する。
【0024】
長い間使用された本底の磨耗パターンは、ランナーにより支配的な応力に関して、大きな差異を示した。これは、個々のランナーは異なるランニングスタイルを有するからである。この差異はまた、走行距離が異なることからも生じる。たとえば、短距離のランナーは、足の前側に、実際には親指の付け根領域にのみ支配的な応力を掛けて走る。これに対し、長距離のランナーは、踵に支配的に着地し、足全体で繰り出している。いわゆる外股ランナーと内股ランナーとでは異なっており、外股ランナーは踵の外側で着地し、足中程の外側領域で足を繰り出し、親指付け根の外側、すなわち、小指の領域から足を押し出している。この状況は、内股ランナーの場合には、逆である。また、混合様式もあって、外側で着地し、足中程で幅方向に繰り出して、親指領域から足を押し出すものもあり、この反対の場合もある。本発明に係るソールは、垂直方向及び接線方向の前方後方に変形可能であって、様々な応力により良く対応でき、足の自然な動きをサポートするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下の図面を参照して、実施例により、本発明を更に詳しく説明する。
まず、図1に基づき、好ましい態様とは言えないまでも、本発明に基づく教示内容をより良く表現できる実施形態を詳述する。
【0026】
図1には、本発明に係る本底1を備えたランニングシューズ2が図示されている。 本底1は、先行文献WO03/102430により知られた要素に類似した複数の中空第1要素3a及び複数の台状の第2要素3bにより形成されている。中空第1要素3aの高さは、たとえば、15ミリ、また、台状の第2要素3bの高さは、10ミリとすることができる。第1要素3aと第2要素3bは、ランニングシューズ2の幅全体に及んで形成されてもよい。しかしながら、また、これらの要素は、互いに隣接して列状に配置されてもよい。第2要素3bは、また、環状に、個々のまたは複数の中空第1要素3aを少なくとも一部囲んでいてもよい。これら第1要素3a及び第2要素3bは、たとえば、接着により、ランニングシューズ2の中間ソール(中底)4下面に付着される。
【0027】
中空第1要素3aは、ランニング中に受ける応力により弾性変形可能な材料からなる。第2要素3b及び中間ソール4もまた、一定の弾力性を備えることもできるが、中空第1要素3aに比べ、本質的には硬さを備えるものであって、特に、接線方向の変形に関して硬さを備える。台状第2要素3bと比べ、中空第1要素3aの高さは高く、第2要素より下方に突出している。
【0028】
中空第1要素3aは、上述した定義の意味合いにおいて、少なくとも「ひとつの第1要素を介して定まった区域」を形成する。複数の中空第1要素3aが隣接配置されている場合、このような区域として一体に分類することも可能である。この点は、台状第2要素3bについても同様であって、「少なくとも一つの第2要素を介して定まった区域」を形成している。結果として、ソールの長手方向において、親指の付け根領域と踵領域という異なった区域が交互に繰り返されている。これに加えて、台状第2要素3bが、環状に、個々のまたは複数の中空第1要素3aを少なくとも一部囲む場合、互いに混在した異なった区域がソール面に配置される。
【0029】
ランニングシューズ2が、たとえば、図1(b)に示すように作製される場合、ステップが踏まれると(足を踏み出すと)、矢印P1により示すようなある角度において前方に応力がかかり、最初に、突出した中空第1要素3aが地面5と接触し、応力の弾性クッション作用により垂直方向及び水平方向に変形する。この変形は、中空第1要素3aが同じ高さになり台状第2要素3bと整列すると、この隣接する台状第2要素3bによって制限されることになる。その後、台状第2要素3bは応力の大部分を引き継いで、すでに説明したその高硬性により、少なくとも、地面5に対するランニングシューズの大幅な接線方向の位置ずれを許容しなくなる。この段階において、ランニングシューズの着用者は、しっかりとかつ安定して地面に立てることになる。これに加えて、図1(c)に示すように、台状第2要素3bは、足の押し出しの間、矢印P2で示す新たな応力の方向において言及すべき程度まで水平方向に変形できないため、着用者は、次のステップを踏むために、距離のロスを被ることなく、同図の位置から再度の足の押し出しが可能となる。
【0030】
図2に示す概略詳細図において、図1の中空第1要素3aと台状第2要素3bの一例を示す。図2(a)においては、応力の掛かっていない状態を、また、図2(b)においては、接線方向の負荷状態を示す。図2(c)においては、垂直方向又は下方への変形を示し、この図からは、上述した距離のロスのない安定性と足の押し出しについての利点がまた、厳密に垂直方向の応力においても実現されることが明らかとなる。
【0031】
前述の本底に関して、中空第1要素3aは、所望の弾性変形を許容する一方において、台状第2要素3bは、中空第1要素3aの変形度合いを決定かつ制限するとともに限界変形を越えた接線変形に対しソールの所望の硬さを確保している。この二つの機能は、異なる要素間で分配されているため、これら要素については、構成上の自由度が大きくなる。たとえば、第1要素及び第2要素に、異なる材料を使用することができる。中空第1要素3aはまた、先行文献WO03/102430に示すように、負荷状態において摩擦による固着を可能とする必要はなく、全体として応力の大幅な軽減を図ることができる。とりわけ、中空第1要素は、動的重量全体を支持する必要があるわけではなく、これに掛かる応力は、未だ限界変形状態にはない時点で、第2要素3bにより解放される。地面と接触する第2要素3bの表面は、オプションとして特別な性状にすることにより地面に対する良好な把持力を備えると、大変有利である。
【0032】
中空第1要素3aは、「緩衝要素」として、また、台状第2要素3bは、「支持要素」として特徴付けることができる。
【0033】
上述した実施形態は、たとえば図1(a)の負荷のない状態と、図1(b)の状態との間では、台状第2要素3bに対する中空第1要素3aの垂直張出割合が20%以上、更には、50%以上に達する極めて大きな変形経路(deformation paths)に特徴がある。このため、ランナーは、「雲に乗ったような」浮遊感を感じるとともに、不安定な着地感を持つことはない。
【0034】
上述した実施形態において、第1要素及び/又は第2要素は、たとえば、接線方向の外力あるいは剪断力により、極めて大きな交互に生ずる負荷(loads)に晒されることになる。これらの要素が接着によって固着されている場合、同要素は、長期間使用されると、中間ソール4から脱着する場合もある。この場合、たとえば、中空第1要素3aの一つ及び台状第2要素3bの二つについて図3に示すように、中間ソール4内部に一部埋め込み、オプションとして、これに加えて、この内部に固着(anchor)すれば改善することができる。
【0035】
図4は、図示の中空第1要素3aのみ中間ソール4に埋め込まれて、二つの第2要素3bは、中間ソール4と直接一体成型されてなる実施形態を示している。中空第1要素3aは、更に、蟻継ぎ(dovetail connection)によって、中間ソール内部に良好に固着されている。
【0036】
図4の変形例を図5に示す。図5(a)においては応力の掛かっていない状態を、また、図5(b)においては、応力の掛かった状態を示す。この変形例において、中空第1要素3aは中間ソール4内部に深く埋め込まれており、前述の第2要素3bに類似の台状突出第2要素は、もはや不要で形成されていない。この構成において、中間ソール4の「通常」表面4.1が、前述の第2要素3bの役割を果たしている。このため、中空第1要素3aは、これが配設されている凹部4.2の内部において、中間ソール4の表面4.1と整列する(align)まで、ある角度で「ひっこむように」変形できるが、凹部4.2は、図5に図示のように、充分幅広に構成される必要がある。
【0037】
図6(a)及び図6(b)は、図5の更なる変形例を示し、第1要素3aは、中間ソール4の内部に深く埋め込まれ、中間ソール4の「通常」表面4.1は、上述の第2要素3bの役割を果たしている。図6に示す個々の変形例は、第1要素3aの構成のみ異なる。図6の左側は、各例について、応力の掛かっていない状態を示し、その右側は、限界変形の段階における応力状態を示す。
【0038】
図6(a)の構成において、たとえば、ある角度あるいは接線方向に変形可能な第1要素3aは、ピン形状にて構成されている。その周りには、凹部4.2が形成されている。図6(a)下方の2つの図にて詳細に図示するように、凹部の端部は全周に亘って、凹部中央に位置するピン3aから等しい距離にある。
【0039】
図6(b)の構成については、変形要素3aは、その軸が中間ソール4に対し垂直に配設された小チューブ形状に構成されてなる。その他の構成については、図6(a)と同様である。
【0040】
図7(a)は、応力の掛かっていない状態において第1要素6a及び第2要素6bが交互に形成された弾性変形材料からなる層6を示す。この層6は、一片からなりしかも大き目のサイズで構成される。第1要素が各々4つの第2要素によって、また、これとは逆の構成によって、取り囲まれるような構造をなすように、第1要素6aと第2要素6bの同じ順列が紙面に対し交差方向に繰り返される。前述のように、第1要素及び第2要素はまた互いに混在している。当該層の構成片は、適当にカットして、図8(a)に概略図示したように、たとえば、図1に図示のランニングシューズ2の下方又はその中間ソール4の下方に接着により固着することができる。
【0041】
第1要素6aは、円錐台形状を有し中空であり、第2要素6bよりも若干高さが高い。第2要素6bは、中実であり、同じく円錐台形状を有する。前述の第1要素3aと同様に、第1要素6aは,相対的に軟質で、接線方向において前方及び後方に、また、垂直方向に変形可能である。回転対称の形状であるため、第1要素6aは全ての方向において、同態様にて接線方向に変形可能であるが、このことは所望の足の繰り出し行動についてさらに好都合である。
【0042】
これと比べて、第2要素6bは、本質的に硬質であって、機能的には前述の第2要素3bに対応する。要素6a及び6bは、要素3a及び3bより小さくてもよい。たとえば、第1要素6aの高さを含む層6の全体の高さh1は、8ミリ〜12ミリ、より好ましくは10ミリであって、第2要素6bの高さh2は、4ミリ〜8ミリ、より好ましくは6ミリである。第1要素と第2要素との移行領域における層6の厚みは、たとえば、2ミリでもよい。しかしながら、第1要素6aの底部の厚みは、2mmよりも大きいことが好ましい。第1及び第2要素6a、6bの中心間の水平間隔は、たとえば、10mm〜20mmでもよいが、好ましくは、15mmである。
【0043】
図7(b)は、地面5にある角度で負荷を掛けられた層6を示す。第1要素6aは、負荷により、垂直方向に変形するが、とりわけ、接線方向あるいは水平方向に変形して、第2要素6bから突出することはない。第1要素6aの更なる変形は、第2要素6bによって阻止されている。第1要素と第2要素との間隔は、第1要素6aが図示のような変形を達成することができるように選択されることが好ましい。限界変形に至る前の接線方向の変形経路の度合いは、垂直方向の変形経路よりも大きいことが好ましく、上述した寸法からは、少なくとも5mm程度が必要である。
【0044】
図7(c)は、垂直方向の負荷を掛けられた層6を示す。
第1要素6aの弾性は、限界変形が、約1kg〜10kgの負荷において発生するように選択する必要がある。この値は、ソール表面上の要素数とその配置(局所密度)、所望の緩衝とランナーの体重による。ランナーは、その自らの体重(場合により、動的体重)で、少なくとも足を押し出す間、限界変形を引き起こす必要がある。この点は、本発明に係る本底の実施形態すべてに当てはまり、第1要素3aのようなタイプの要素がこれに当てはまる。第1要素3a/6aの可撓性の程度又はその数は、小さいシューズサイズ(体重の軽いランナー)と、大きいシューズサイズ(体重の重いランナー)では別々に選択される必要がある。要素3aタイプのような第1要素については、踵領域及び親指の付け根領域に分布した8個〜15個の要素数が通常充分と言える。要素6aタイプのような第1要素については、サイズが小さいことから、20個以上の要素数が通常必要とされる。
【0045】
図7に示す第1要素6aと第2要素6bの形状及び互いの配置については、かなりの自由度がある。たとえば、第2要素6bは、紙面に対し交差方向に、図8(b)及び(c)に図示するような延伸リブや規則的又は不規則的台状要素として構成することができる。第2要素6bはさらに、図8(d)に図示するように、第1要素6aを散在させて配置した密集表面を形成することもできる。
【0046】
図8に示す各種形状では、第1要素6aは、第2要素6bの間に規則的に埋め込まれて、後者と混在して配置されており、これによって、高摩耗性の過負荷に対し保護されていることが明らかとなる。どのような足の繰り出し経路に沿っても、第1及び第2要素は、空間的に密接に、時間的に続いて、応力を受けるため、ソールの機能性及び走行感は、常に、両要素によって決定される。第1要素と第2要素の混在分布は、親指の付け根領域及び踵領域全体に及んでいる。
【0047】
踵領域と親指の付け根領域との移行領域については、第1要素も第2要素も通常は必要ない。このため、層6は、親指の付け根領域及び踵領域にのみ、分離して配置されているのであれば、大方の適用例については、通常充分である。シューズの長手方向に対しては幅方向の分割に代えて又はこれに加えて、長手方向の分割もまた可能である。4つの層6による長手方向及び幅方向の分割を、図8(c)に示す。これにより、当該層を互いに近づけたり、遠ざけたりして容易に適当に配置できるので、標準的な要素による様々なシューズサイズへの適合が可能となる。最後に、様々な特性を備えた様々な層を、個々の領域に設けることもできる。
【0048】
上述した区域は、少なくとも一つの第1要素又は少なくとも一つの第2要素によって決定されたが、第1要素6a及び第2要素6bをそれぞれ備えた図8の実施形態についても当てはめることができる。図8(b)の実施例においては、幅方向に互いに隣接して配置された複数の第1要素6aを単一区域として数えることができる。これとは逆に、図8(d)の実施例における密集表面6bは、複数のゾーンから形成されるものと考えられる。第1要素6aとこれらの要素により形成された区域とが長手方向に交互に配置されていると見ることができるからである。
【0049】
層6の更なる変形例を、図9(a)〜(e)に基づき以下に説明する。
図9(a)に示す層6について、第1要素6aは、図7に示す第1要素に対応する。第2要素6bは、矩形の断面形状を備えている。
図9(b)に示す層6について、第1要素6aは、中実であって、狭まった首部上に厚い頭部を備えており、接線方向を始め全方向に良好に横に変形可能である。
図9(c)及び(d)に示す実施例について、第1要素6aは、弾性変形可能な膜状部材6abを介して第2要素6bと連結してなる形状安定なベール(burl)形状のもの6aaにより形成されており、垂直方向のみならず水平方向にも同程度に変形可能である。
図9(e)に示す実施例は、二つの弾性層が互いに連結されており、少なくとも外層は連続してなり、凹部を除き相対的に平坦である。この凹部は、ほぼ反対に位置する内層の類似した突起と共に、第1要素6aを形成する。また、凹部は、緩衝作用を有する形状であって、個々の第1要素6aが、様々の方向へ同時に接線変形可能としている。第2要素6bは、凹部と、一例として図9(a)に示すような台状要素又はリブとの間の外層によって形成されている。
【0050】
上述した詳細な説明は、幾つかの可能な範囲の実施形態を例示したものである。更なる変更の実施形態もまた可能であって、特に、上述の実施例の混合形態とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係る本底を備えたスポーツシューズの側面図である。図1(a)は、応力の掛かっていない状態を、図1(b)は、ある角度で前方に応力の掛かった状態を、また、図1(c)は、後方に足を押し出す状態を示す図である。
【図2】図1に示す本底の第1要素及び第2要素を示す概略詳細図である。図2(a)は、応力の掛かっていない状態を、図2(b)は、ある角度で前方に応力の掛かった状態を、また、図2(c)は、垂直方向に応力の掛かった状態を示す図である。
【図3】類似の概略図であって、第1要素及び第2要素を示している。両要素ともに、中間ソールに一部埋め込まれ、しっかりと固着されている状態を示す図である。
【図4】類似の概略図であって、第1要素のみが中間ソールに埋め込まれる一方で、第2要素はこの中間ソールと一体に形成される実施形態を示す図である。
【図5】図4に示す実施形態の変形例を示すものであって、図5(a)は、応力の掛かっていない状態を、図5(b)は、応力の掛かった状態を示す図(この場合、第1要素は中間ソール4に深く埋め込まれているため、付加的要素としての第2要素はもはや必要ない。)。
【図6】図6(a)及び6(b)は、図5の更なる変形例を示す概略図である。
【図7】第1要素及び第2要素が形成される連続層を示す概略詳細図であって、図7(a)は、応力の掛かっていない状態を、図7(b)は、ある角度で前方に応力の掛かった状態を、また、図7(c)は、垂直方向に負荷の掛かった状態を示す図である。
【図8】図8(a)〜(d)は、本発明に係る本底の走行面を示す図である。
【図9】図9(a)〜(e)は、応力の掛かっていない状態の図7に示す更なる層を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 本底
2 ランニングシューズ
3a 第1要素(中空要素)
3b 第2要素(台状要素)
4 中間ソール
4.1 中間ソール表面
4.2 中間ソールの凹部
5 地面
6 層
6a 層6の第1要素
6b 層6の第2要素
P1 足を踏み出すときの応力を示す矢印
P2 足を押し出すときの応力を示す矢印
h1 層6全体の高さ
h2 第2要素6bの高さ
【図1a)】

【図1b)】

【図1c)】

【図2a)】

【図2b)】

【図2c)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接線方向において前方及び後方に弾性変形可能な、かつ、既に変形のあった領域において限界変形を超えた接線方向の変形については実質的に変形しない硬さを備えたスポーツシューズ等の本底であって、前記接線方向における前記本底の弾性変形は、少なくとも一つの第1要素によって引き起こされ、前記変形のあった領域における少なくとも一つの前記限界変形と少なくとも一つの限界変形の程度を超える接線方向の変形に対抗する前記本底の実質的に変形しない硬さは、少なくとも一つの第2要素により引き起こされて、前記本底の踵領域及び/又は親指の付け根領域において、少なくとも一つの前記第1要素によって決定される区域と少なくとも一つの前記第2要素により決定される区域が、本底の長手方向に交互に繰り返すことを特徴とした本底。
【請求項2】
前記本底から見ると、前記少なくとも一つの第1要素は、前記少なくとも一つの限界変形に達するまでは、前記少なくとも一つの第2要素に対し突出していることを特徴とした請求項1記載の本底。
【請求項3】
前記少なくとも一つの限界変形を超えると、前記少なくとも一つの第1要素は、前記変形のあった領域において、前記少なくとも一つの第2要素と整列することを特徴とした請求項1又は2記載の本底。
【請求項4】
前記少なくとも一つの第2要素は、前記変形のあった領域において前記少なくとも一つの限界変形に達するまで、応力を受けないことを特徴とした請求項1〜3の何れかに記載の本底。
【請求項5】
前記少なくとも一つの第1要素及び/又は前記少なくとも一つの第2要素が、中間ソールの下方に固着されていることを特徴とした請求項1〜4の少なくとも何れかに記載の本底。
【請求項6】
前記少なくとも一つの第1要素及び/又は前記少なくとも一つの第2要素が、中間ソールの下方に一部埋め込まれていることを特徴とした請求項1〜5の何れかに記載の本底。
【請求項7】
前記少なくとも一つの第1要素及び/又は前記少なくとも一つの第2要素が、中間ソールの一部として構成されていることを特徴とした請求項1〜6の何れかに記載の本底。
【請求項8】
接線方向及び/又は垂直方向の変形経路が、前記本底厚みの20%以上、また、特に、その50%以上にならないと、前記限界変形に至らないことを特徴とした請求項1〜7の何れかに記載の本底。
【請求項9】
前記限界変形に達するまでの接線方向変形経路の範囲は、前記限界変形に達するまでの垂直方向変形経路とおおよそ一致することを特徴とした請求項1〜8の何れかに記載の本底。

【図3】
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【図4】
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【図5a)】
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【図5b)】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a)】
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【図7b)】
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【図7c】
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【図8a)】
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【図8b)】
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【図8c)】
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【図8d)】
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【図9a)】
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【図9b)】
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【図9c)】
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【図9d)】
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【図9e)】
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【公表番号】特表2008−531092(P2008−531092A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556477(P2007−556477)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000114
【国際公開番号】WO2006/089448
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507244389)グリンデン ロック ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】