説明

描画装置

【課題】パターンの描画時間を短縮することが可能な描画装置を提供することである。
【解決手段】記憶部21は、描画すべきパターンに対応する描画データを記憶する。第1および第2のデータ処理部22,24は、記憶部21に記憶される描画データに基づいて各帯状領域に対応するオンオフデータをそれぞれ作成し、作成したオンオフデータに基づいてオンオフ切替部6を制御する。動作制御部30は、ステージ駆動部2、ヘッド部4を制御する。また、動作制御部30は、オンオフ制御部20の第1のデータ処理部22にデータ作成信号SA1およびオンオフ制御信号SB1を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの製造のために、マスクブランクスにパターンを描画する描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フォトマスクの製造には、レーザ光によりマスクブランクスにパターンの描画を行う描画装置が用いられる(例えば特許文献1参照)。描画装置は、一方向(以下、Y方向と呼ぶ)に移動可能なステージを有する。ステージの上方には、レーザ光を出射するためのヘッド部がY方向に垂直な一方向(以下、X方向と呼ぶ)に移動可能に設けられる。
【0003】
ステージ上にマスクブランクスが固定される。その状態で、ヘッド部がX方向に移動しつつ所定のタイミングでマスクブランクスに向けてレーザ光を出射する。これにより、マスクブランクス上のX方向に沿った一定幅の領域においてパターンの描画が行われる。
【0004】
次いで、ステージがY方向に沿って移動することにより、マスクブランクスの位置がY方向にずらされる。その状態で、上記同様にヘッド部がX方向に移動しつつ所定のタイミングでマスクブランクスに向けてレーザ光を出射する。これにより、上記の一定幅の領域と隣接する他の一定幅の領域において、パターンの描画が行われる。
【0005】
このように、X方向に沿った一定幅の領域において描画を行う毎に、マスクブランクスの位置をY方向にずらすことにより、マスクブランクスの全面において描画を行うことができる。
【特許文献1】特開2002−244272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、マスクブランクスへのパターンの描画時には、一定幅の領域毎にデータ処理が行われる。具体的には、例えば描画すべきパターンの全体がビットマップ形式の描画データとして表される。その描画データに基づいて、レーザ光の出射のオンオフを表す論理値“1”および論理値“0”からなるデータ(以下、オンオフデータと呼ぶ)が一定幅の領域毎に作成される。なお、描画データは、レーザ光のビーム径、ビーム強度、描画領域の幅等、描画に関する種々のパラメータの値を含む場合もある。
【0007】
従来技術では、1つの一定幅の領域に描画が行われた後、次に描画を行うべき一定幅の領域に対応するオンオフデータが作成される。この場合、オンオフデータを作成する期間には描画を進めることができない。そのため、例えばレーザ光の出射を停止した状態で、ヘッド部の位置合わせを意図的に低速で行ったり、ヘッド部を一定の経路内で繰り返し移動させたりする。そして、オンオフデータの作成が完了すると、次の一定幅の領域への描画が開始される。
【0008】
このように、1つの一定幅の領域への描画毎に、描画を停止して次のストライプ状の領域に対応するオンオフデータを作成する必要がある。そのため、連続的に描画を進めることが困難となり、描画時間が増加する。
【0009】
本発明の目的は、パターンの描画時間を短縮することが可能な描画装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る描画装置は、レーザ光によりマスクブランクスにパターンの描画を行う描画装置であって、レーザ光を出射するためのレーザ光出射部と、レーザ光出射部を第1の方向およびその逆方向に往復移動させる第1の移動機構と、レーザ光出射部とマスクブランクスとを第1の方向と交差する第2の方向に相対的に移動させる第2の移動機構と、パターンに対応する描画データに基づいてレーザ光の出射および非出射を切り替えるためのオンオフデータを作成する複数のデータ処理部と、複数のデータ処理部のいずれかにより作成されたオンオフデータに基づいてレーザ光出射部によるレーザ光の出射および非出射を切り替える切替部と、第1および第2の移動機構ならびに複数のデータ処理部を制御する制御手段とを備え、レーザ光出射部の往路および復路の移動時間のうち少なくとも一方が描画期間に設定され、制御手段は、各描画期間において、複数のデータ処理部のうち一のデータ処理部により既に作成されたオンオフデータが切替部に出力されるとともに、複数のデータ処理部のうち他のデータ処理部により次の描画期間のオンオフデータが作成されるように複数のデータ処理部を制御するものである。
【0011】
この描画装置においては、第1の移動機構によりレーザ光出射部が第1の方向およびその逆方向に往復移動し、第2の移動機構によりレーザ光出射部とマスクブランクスとが第1の方向と交差する第2の方向に相対的に移動する。
【0012】
複数のデータの処理部によりパターンに対応する描画データに基づいてレーザ光の出射および非出射を切り替えるためのオンオフデータが作成される。複数のデータ処理部のいずれかにより作成されたオンオフデータに基づいて、切替部によりレーザ光出射部によるレーザ光の出射および非出射が切り替えられる。
【0013】
各描画期間において、複数のデータ処理部のうち一のデータ処理部により既に作成されたオンオフデータが切替部に出力される。そのオンオフデータに基づいて切替部によりレーザ光の出射および非出射が切り替えられ、マスクブランクスへのパターンの描画が行われる。
【0014】
また、各描画期間において、複数のデータ処理部のうち他のデータ処理部により次の描画期間のオンオフデータが作成される。そのため、各描画期間の終了後に次の描画期間のオンオフデータを作成する必要がない。それにより、各描画期間の終了後、次の描画期間に迅速に移行することができる。したがって、各描画期間の終了毎に次の描画期間のオンオフデータを作成する場合に比べて、パターンの描画時間を大幅に短縮することができる。
【0015】
(2)複数のデータ処理部は、第1および第2のデータ処理部を含み、制御手段は、第1のデータ処理部によるオンオフデータの作成および第2のデータ処理部によるオンオフデータの出力と、第2のデータ処理部によるオンオフデータの作成および第1のデータ処理部によるオンオフデータの出力とが、描画期間ごとに交互に行われるように、第1および第2のデータ処理部を制御してもよい。
【0016】
この場合、第1および第2のデータ処理部の一方により既に作成されたオンオフデータが切替部に出力される期間に、第1および第2のデータ処理部の他方により次の描画期間のオンオフデータが作成される。それにより、各描画期間の終了後、次の描画期間に迅速に移行することができる。したがって、簡単な構成で、パターンの描画時間を短縮することができる。
【0017】
(3)レーザ光出射部の往路および復路の移動時間のうち一方が描画期間に設定され、レーザ光出射部の往路および復路の移動時間のうち他方が非描画期間に設定され、制御手段は、レーザ光出射部の往復移動ごとにレーザ光照射部とマスクブランクスとが相対的に第2の方向に移動し、各描画期間において、複数のデータ処理部のうち一のデータ処理部により既に作成されたオンオフデータが切替部に出力されるとともに、複数のデータ処理部のうち他のデータ処理部により次の描画期間のオンオフデータが作成され、各非描画期間において、レーザ光出射部によりレーザ光が出射されないように、第1および第2の移動機構ならびに複数のデータ処理部を制御してもよい。
【0018】
この場合、レーザ光出射部の往路および復路の移動時間のうち一方においては、マスクブランクスへのパターンの描画が行われ、レーザ光出射部の往路および復路の移動時間のうち他方においては、マスクブランクスへのパターンの描画が行われない。
【0019】
各描画期間においては、複数のデータ処理部のうち一のデータ処理部により既に作成されたオンオフデータが切替部に出力されるとともに、複数のデータ処理部のうち他のデータ処理部により次の描画期間のオンオフデータが作成される。そのため、各描画期間の終了後に次の描画期間のオンオフデータを作成する必要がない。したがって、各非描画期間においてレーザ光出射部を迅速に移動させることにより、次の描画期間に迅速に移行することができる。
【0020】
(4)レーザ光出射部の往路および復路の移動時間がそれぞれ描画期間に設定され、制御手段は、レーザ光出射部の往路の移動および復路の移動ごとにレーザ光出射部とマスクブランクスとが相対的に第2の方向に移動し、各描画期間において、複数のデータ処理部のうち一のデータ処理部により既に作成されたオンオフデータが切替部に出力されるとともに、複数のデータ処理部のうち他のデータ処理部により次の描画期間のオンオフデータが作成されるように、第1および第2の移動機構ならびに複数のデータ処理部を制御してもよい。
【0021】
この場合、レーザ光出射部の往路および復路の移動時間の両方において、マスクブランクスへのパターンの描画行われる。
【0022】
各描画期間においては、複数のデータ処理部のうち一のデータ処理部により既に作成されたオンオフデータが切替部に出力されるとともに、複数のデータ処理部のうち他のデータ処理部により次の描画期間のオンオフデータが作成される。そのため、各描画期間の終了後に次の描画期間のオンオフデータを作成する必要がない。したがって、レーザ光出射部の往路および復路の移動時間の両方でパターンの描画を行うことにより、描画効率を十分に向上することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、各描画期間の終了後、次の描画期間に迅速に移行することができる。したがって、各描画期間の終了毎に次の描画期間のオンオフデータを作成する場合に比べて、パターンの描画時間を大幅に短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態に係る描画装置について図面を参照しながら説明する。
【0025】
(1)構成
図1は、本実施の形態に係る描画装置の構成を示す模式図である。図1において、水平面内で互いに直交する2方向をX方向およびY方向と定義する。
【0026】
図1に示すように、描画装置100は、ステージ1、ステージ駆動部2、キャリッジ3、ヘッド部4、レーザ光発生部5、オンオフ切替部6および制御部7を備える。
【0027】
ステージ1上にマスクブランクス10が固定される。マスクブランクス10は、例えばガラス基板上にクロム(Cr)等からなる遮光性薄膜および感光性膜が順に形成された構成を有する。ステージ1は、ステージ駆動部2によりY方向に沿って移動する。
【0028】
キャリッジ3は、ステージ1の上方でX方向に延びるヘッド移動部31を保持する。キャリッジ3のヘッド移動部31には、ヘッド部4が取り付けられる。ヘッド部4は、キャリッジ3のヘッド移動部31に沿ってX方向に移動可能に構成される。
【0029】
なお、本実施の形態では、ヘッド移動部31の一端部から他端部へのヘッド部4の移動経路がヘッド部4(レーザ光出射部)の往路に相当し、ヘッド移動部31の他端部から一端部へのヘッド部4の移動経路がヘッド部4(レーザ光出射部)の復路に相当する。
【0030】
レーザ光発生部5は、例えばクリプトンイオンレーザを有し、レーザ光を発生する。そのレーザ光は、図示しない光学系および反射鏡によりオンオフ切替部6を通してヘッド部4に導かれ、ヘッド部4からステージ1上のマスクブランクス10に向けて出射される。なお、ヘッド部4に導かれるレーザ光がビームスプリッタにより分離され、複数本のレーザ光がヘッド部4から出射されてもよい。
【0031】
ヘッド部4からのレーザ光の出射のオンオフは、オンオフ切替部6により切り替えられる。
【0032】
制御部7は、描画すべきパターンに対応する描画データに基づいてオンオフ切替部6を制御する。また、制御部7は、ヘッド部4の動作およびステージ駆動部2の動作をそれぞれ制御する。制御部7の詳細については後述する。
【0033】
(2)動作
次に、図1に示した描画装置100の動作の概要について説明する。図2〜図4は、描画装置100の動作について説明するための模式的平面図である。
【0034】
まず、図2(a)に示すように、ヘッド部4の下方にマスクブランクス10の端部が位置するように、ステージ1の位置が調整される。次に、図2(b)に示すように、ヘッド部4がヘッド移動部31の一端部から他端部に移動しつつ所定のタイミングでマスクブランクス10に向けてレーザ光を出射する。これにより、X方向に沿ったマスクブランクス10上の一定幅の領域(以下、帯状領域と呼ぶ)P1において、パターンの描画が行われる。
【0035】
続いて、図3(c)に示すように、ヘッド部4がレーザ光の出射を停止した状態でヘッド移動部31の一端部に戻る。また、ステージ1が帯状領域P1の幅分だけY方向に移動する。
【0036】
そして、図3(d)に示すように、ヘッド部4が再びヘッド移動部31の一端部から他端部に移動しつつ所定のタイミングでマスクブランクス10に向けてレーザ光を出射する。これにより、帯状領域P1に隣接する帯状領域P2において、パターンの描画が行われる。
【0037】
このようにして、帯状領域毎にパターンの描画が行われる。最終的に、図4(e)に示すように、マスクブランクス10の全面(帯状領域P1〜Pz)においてパターンの描画が行われる。ここで、Zは2以上の整数である。
【0038】
なお、本例では、ヘッド部4がヘッド移動部31の一端部から他端部に移動する期間が描画期間に相当し、ヘッド部4がヘッド移動部31の他端部から一端部に移動する期間が非描画期間に相当する。
【0039】
本実施の形態では、各帯状領域へのパターンの描画時に、その帯状領域に隣接する次に描画を行うべき帯状領域へのパターンの描画のためのデータ(オンオフデータ)を作成する。それにより、マスクブランクス10へのパターンの描画を迅速に行うことが可能となる。以下、その詳細について説明する。
【0040】
(3)制御系
(3−1)構成
図5は、描画装置100の制御系について説明するためのブロック図である。図5に示すように、制御部7は、オンオフ制御部20および動作制御部30を含む。
【0041】
オンオフ制御部20は、記憶部21、第1のデータ処理部22、第1のバッファ23、第2のデータ処理部24および第2のバッファ25を含む。
【0042】
記憶部21は、描画すべきパターンに対応する描画データを記憶する。描画データは、例えばビットマップ形式で表される。第1および第2のデータ処理部22,24は、記憶部21に記憶される描画データに基づいて各帯状領域に対応するオンオフデータをそれぞれ作成し、作成したオンオフデータに基づいてオンオフ切替部6を制御する。オンオフデータは、例えばレーザ光の出射のオンオフを表す論理値“1”および論理値“0”からなる。なお、描画データは、レーザ光のビーム径、ビーム強度、描画領域の幅等、描画に関する種々のパラメータの値を含む場合もある。オンオフデータは、ヘッド部4の移動速度およびレーザ光のビーム径等を考慮して作成される。
【0043】
第1のデータ処理部22により作成されたオンオフデータは、第1のバッファ23に一時的に記憶され、第2のデータ処理部24により作成されたオンオフデータは、第2のバッファ25に一時的に記憶される。
【0044】
動作制御部30は、ステージ駆動部2に動作信号SD1を与えることによりステージ駆動部2の動作を制御し、ヘッド部4に動作信号SD2を与えることによりヘッド部4の動作を制御する。
【0045】
また、動作制御部30は、オンオフ制御部20の第1のデータ処理部22にデータ作成信号SA1およびオンオフ制御信号SB1を与える。第1のデータ処理部22は、データ作成信号SA1に応答してオンオフデータの作成を開始し、オンオフ制御信号SB1に応答してオンオフ切替部6の制御を開始する。また、第1のデータ処理部22は、オンオフデータの作成が終了したことを示す終了信号SC1を動作制御部30に与える。
【0046】
同様に、動作制御部30は、オンオフ制御部20の第2のデータ処理部24にデータ作成信号SA2およびオンオフ制御信号SB2を与える。第2のデータ処理部24は、データ作成信号SA2に応答してオンオフデータの作成を開始し、オンオフ制御信号SB2に応答してオンオフ切替部6の制御を開始する。また、第2のデータ処理部24は、オンオフデータの作成が終了したことを示す終了信号SC2を動作制御部30に与える。
【0047】
本実施の形態において、第1および第2のデータ処理部22,24は、動作制御部30からデータ作成信号SA1,SA2が与えられる毎に、帯状領域P1〜Pzに対応するオンオフデータを順に作成する。
【0048】
(3−2)動作
次に、パターンの描画時における動作制御部30の制御動作について説明する。図6および図7は、動作制御部30の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【0049】
まず、動作制御部30は、第1のデータ処理部22にデータ作成信号SA1を与える(ステップS1)。この場合、第1のデータ処理部22が、帯状領域P1に対応するオンオフデータの作成を開始する。作成されたオンオフデータは、第1のバッファ23に記憶される。
【0050】
次に、動作制御部30は、第1のデータ処理部22からの終了信号SC1に基づいて、第1のデータ処理部22においてオンオフデータの作成が終了したか否かを判定する(ステップS2)。第1のデータ処理部22においてオンオフデータの作成が終了していない場合、動作制御部30は、オンオフデータの作成が終了するまで待機する。
【0051】
第1のデータ処理部22においてオンオフデータの作成が終了すると、動作制御部30は、帯状領域P1〜Pzに対応する全てのオンオフデータの作成が終了したか否かを判定する(ステップS3)。
【0052】
全てのオンオフデータの作成が終了していない場合、動作制御部30は、第2のデータ処理部24にデータ作成信号SA2を与える(ステップS4)。この場合、第2のデータ処理部24が、帯状領域P2に対応するオンオフデータの作成を開始する。
【0053】
次に、動作制御部30は、第1のデータ処理部22にオンオフ制御信号SB1を与えるとともに(ステップS5)、動作信号SD2によりヘッド部4をヘッド移動部31の一端部から他端部に移動させる(ステップS6)。この場合、第1のデータ処理部22は、第1のバッファ23に記憶されたオンオフデータ、すなわち帯状領域P1に対応するオンオフデータに基づいてオンオフ切替部6を制御する。
【0054】
これにより、ヘッド部4がヘッド移動部31の一端部から他端部に移動しつつ帯状領域P1に向けて所定のタイミングでレーザ光を出射する(図2(b)参照)。その結果、帯状領域P1へのパターンの描画が行われる。
【0055】
帯状領域P1へのパターンの描画中に、第2のデータ処理部24により帯状領域P2に対応するオンオフデータの作成が継続して行われる。作成されたオンオフデータは、第2のバッファ25に記憶される。
【0056】
次に、動作制御部30は、動作信号SD2によりヘッド部4をヘッド移動部31の他端部から一端部に移動させるとともに、動作信号SD1によりステージ駆動部2を制御し、ステージ1をY方向に帯状領域の幅分だけ移動させる(図3(a)参照)。
【0057】
次に、図7に示すように、動作制御部30は、第2のデータ処理部24からの終了信号SC2に基づいて、第2のデータ処理部24においてオンオフデータの作成が終了したか否かを判定する(ステップS11)。オンオフデータの作成が終了していない場合、動作制御部30はオンオフデータの作成が終了するまで待機する。
【0058】
第2のデータ処理部24においてオンオフデータの作成が終了すると、動作制御部30は、帯状領域P1〜Pzに対応する全てのオンオフデータの作成が終了したか否かを判定する(ステップS12)。
【0059】
全てのオンオフデータが作成が終了していない場合、動作制御部30は、第1のデータ処理部22にデータ作成信号SA1を与える(ステップS13)。この場合、第1のデータ処理部22が、帯状領域P3に対応するオンオフデータの作成を開始する。
【0060】
次に、動作制御部30は、第2のデータ処理部24にオンオフ制御信号SB2を与えるとともに(ステップS14)、動作信号SD2によりヘッド部4をヘッド移動部31の一端部から他端部に移動させる(ステップS15)。この場合、第2のデータ処理部24は、第2のバッファ25に記憶されたオンオフデータ、すなわち帯状領域P2に対応するオンオフデータに基づいてオンオフ切替部6を制御する。
【0061】
これにより、ヘッド部4がヘッド移動部31の一端部から他端部に移動しつつ帯状領域P2に向けて所定のタイミングでレーザ光を出射する。その結果、帯状領域P2へのパターンの描画が行われる。
【0062】
帯状領域P2へのパターンの描画中に、第1のデータ処理部24により帯状領域P3に対応するオンオフデータの作成が継続して行われる。作成されたオンオフデータは、第1のバッファ23に記憶される。この場合、以前に第1のバッファ23に記憶されたオンオフデータ(帯状領域P1に対応するオンオフデータ)に新たに作成されたオンオフデータ(帯状領域P3に対応するオンオフデータ)が上書きされる。
【0063】
次に、動作制御部30は、動作信号SD2によりヘッド部4をヘッド移動部31の他端部から一端部に移動させるとともに、動作信号SD2によりステージ駆動部2を制御し、ステージ1をY方向に帯状領域の幅分だけ移動させる。そして、制御部30は、ステップS2の処理に戻る。
【0064】
その後、動作制御部30は、ステップS2〜S6,S11〜S15の処理を繰り返す。それにより、第1のデータ処理部22が、帯状領域P3,P5,・・・,P(2n−1),・・・に対応するオンオフデータを順に作成するとともに、そのオンオフデータに基づいてオンオフ切替部6の制御を行う。また、第2のデータ処理部24が、帯状領域P4,P6,・・・,P(2n),・・・に対応するオンオフデータを順に作成するとともに、そのオンオフデータに基づいてオンオフ切替部6の制御を行う。ここで、nは1以上の整数である。
【0065】
そして、図6のステップS3において、全てのオンオフデータのオンオフデータの作成が終了すると、動作制御部30は、第1のデータ処理部22にオンオフ制御信号SB1を与えるとともに(ステップS7)、動作信号SD2によりヘッド部4をヘッド移動部31の一端部から他端部に移動させる(ステップS8)。
【0066】
この場合、直前のステップS2において、第1のデータ処理部22により帯状領域Pzに対応するオンオフデータの作成が終了する。第1のデータ処理部22は、そのオンオフデータに基づいてオンオフ切替部6を制御する。そして、帯状領域Pzへのパターンの描画が行われる(図4(e)参照)。これにより、動作制御部30の制御動作が終了する。
【0067】
また、図7のステップS12において、全てのオンオフデータのオンオフデータの作成が終了すると、動作制御部30は、第2のデータ処理部24にオンオフ制御信号SB2を与えるとともに(ステップS16)、動作信号SD2によりヘッド部4をヘッド移動部31の一端部から他端部に移動させる(ステップS17)。
【0068】
この場合、直前のステップS11において、第2のデータ処理部24により帯状領域Pzに対応するオンオフデータの作成が終了する。第2のデータ処理部24は、そのオンオフデータに基づいてオンオフ切替部6を制御する。そして、帯状領域Pzへのパターンの描画が行われる(図4(e)参照)。これにより、動作制御部30の制御動作が終了する。
【0069】
(4)効果
本実施の形態では、オンオフデータの作成およびオンオフ切替部6の制御が、帯状領域への描画毎に第1および第2のデータ処理部22,24により交互に行われる。この場合、第1および第2のデータ処理部22,24の一方によってオンオフ切替部6が制御される期間に、第1および第2のデータ処理部22,24の他方によって次に描画を行うべき帯状領域に対応するオンオフデータが作成される。
【0070】
これにより、各帯状領域への描画後において、オンオフデータの作成のための待機時間を大幅に低減することができる。したがって、複数の帯状領域への描画を連続的に進めることができる。具体的には、ヘッド部4をヘッド移動部31の一端部から他端部に移動させて1つの帯状領域への描画を行った直後に、ヘッド部4をヘッド移動部31の他端部から一端部に迅速に移動させ、隣接する帯状領域への描画を開始することができる。その結果、パターンの描画時間を大幅に短縮することができる。
【0071】
(5)他の動作例
上記実施の形態では、ヘッド部4がX方向に沿った一方向に移動するときにヘッド部4からレーザ光が出射され、ヘッド部4がその逆方向に移動するときにはヘッド部4からのレーザ光の出射が停止されるが、本発明はこれに限定されない。
【0072】
図8および図9は、描画装置100の他の動作例について説明するための模式的平面図である。
【0073】
まず、図8(a)に示すように、上記実施の形態と同様に、ヘッド部4がヘッド移動部31の一端部から他端部に移動しつつ所定のタイミングでマスクブランクス10に向けてレーザ光を出射する。これにより、マスクブランクス10上の帯状領域P1にパターンの描画が行われる。
【0074】
この場合、第1のデータ処理部22(図5)によりオンオフ切替部6が制御される。また、帯状領域P1へのパターンの描画中に、第2のデータ処理部24(図5)により、次に描画を行うべき帯状領域P2に対応するオンオフデータが作成される。
【0075】
続いて、図8(b)に示すように、ヘッド部4がヘッド移動部31の他端部に位置する状態で、ステージ1が帯状領域P1の幅分だけY方向に移動する。
【0076】
そして、図9(c)に示すように、ヘッド部4がヘッド移動部31の他端部から一端部に移動しつつ所定のタイミングでマスクブランクス10に向けてレーザ光を出射する。これにより、マスクブランクス10上の帯状領域P2にパターンの描画が行われる。
【0077】
この場合、第2のデータ処理部24によりオンオフ切替部6が制御される。また、帯状領域P2へのパターンの描画中に、第1のデータ処理部22により、次に描画を行うべき帯状領域P3に対応するオンオフデータが作成される。
【0078】
その後、図9(d)に示すように、ヘッド部4がヘッド移動部31の一端部から他端部に移動しつつ所定のタイミングでレーザ光を出射することにより、帯状領域P3へのパターンの描画が行われる。
【0079】
上記のようにして、ヘッド部4がヘッド移動部31の他端部から一端部に移動しつつ所定のタイミングでレーザ光を出射することにより、帯状領域P4,P6,・・・,P2nへの描画が行われる。この場合、第2のデータ処理部24によりオンオフ切替部6が制御され、第1のデータ処理部22により、次に描画を行うべき帯状領域に対応するオンオフデータが作成される。
【0080】
また、ヘッド部4がヘッド移動部31の一端部から他端部に移動しつつ所定のタイミングでレーザ光を出射することにより、帯状領域P5,p7,・・・,P(2n−1)への描画が行われる。この場合、第1のデータ処理部22によりオンオフ切替部6が制御され、第2のデータ処理部24により、次に描画を行うべき帯状領域に対応するオンオフデータが作成される。
【0081】
このように、本例においては、ヘッド部4がX方向に沿った一方向に移動するときおよび逆方向に移動するときの両方において、ヘッド部4からレーザ光が出射され、パターンの描画が行われる。なお、本例では、ヘッド部4がヘッド移動部31の一端部から他端部に移動する期間およびヘッド部4がヘッド移動部31の他端部から一端部に移動する期間の両方が描画期間に相当する。
【0082】
本例においても、第1および第2のデータ処理部22,24の一方によってオンオフ切替部6が制御される期間に、第1および第2のデータ処理部22,24の他方によって次に描画を行うべき帯状領域に対応するオンオフデータが作成される。それにより、各帯状領域への描画後において、オンオフデータの作成のための待機時間を大幅に低減することができる。
【0083】
したがって、ヘッド部4をヘッド移動部31の一端部から他端部に移動させて1つの帯状領域への描画を行った直後に、ヘッド部4をヘッド移動部31の他端部から一端部に移動させて次の帯状領域への描画を行うことができる。それにより、帯状領域への描画毎にヘッド部4をヘッド移動部31の一端部に戻す場合に比べて、描画効率をさらに向上することができる。
【0084】
(6)他の実施の形態
上記実施の形態では、第1のデータ処理部22により作成されたオンオフデータが第1のバッファ23に記憶され、第2のデータ処理部24により作成されたオンオフデータが第2のバッファ25に記憶されるが、第1のデータ処理部22により作成されたオンオフデータおよび第2のデータ処理部24により作成されたオンオフデータが共通のバッファに記憶されてもよい。この場合、共通のバッファとして例えばFIFO(first in, first out)メモリを用いてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態では、第1のデータ処理部22および第2のデータ処理部24によりオンオフデータの作成およびオンオフ切替部6の制御が交互に行われるが、3つ以上の複数のデータ処理部を設けて、その3つ以上の複数のデータ処理部により順にオンオフデータの作成およびオンオフ切替部6の制御を行ってもよい。
【0086】
この場合、1つの帯状領域に対応するオンオフデータの作成時間が1つの帯状領域への描画時間より長くても、複数の帯状領域への描画を連続的に行うことができる。
【0087】
(7) 請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0088】
X方向が第1の方向の例であり、Y方向が第2の方向の例であり、ヘッド部4がレーザ光出射部の例であり、キャリッジ3およびヘッド部4が第1の移動機構の例であり、ステージ駆動部2が第2の移動機構の例であり、第1および第2のデータ処理部22,24がデータ処理部の例であり、オンオフ切替部6が切替部の例であり、動作制御部30が制御手段の例である。
【0089】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、種々のマスクブランクスへのパターンの描画に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本実施の形態に係る描画装置の構成を示す模式図である。
【図2】描画装置の動作について説明するための模式的平面図である。
【図3】描画装置の動作について説明するための模式的平面図である。
【図4】描画装置の動作について説明するための模式的平面図である。
【図5】描画装置の制御系について説明するためのブロック図である。
【図6】動作制御部の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】動作制御部の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】描画装置の他の動作例について説明するための模式的平面図である。
【図9】描画装置の他の動作例について説明するための模式的平面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 ステージ
2 ステージ駆動部
3 キャリッジ
4 ヘッド部
5 レーザ光発生部
6 オンオフ切替部
7 制御部
10 マスクブランクス
20 オンオフ制御部
21 記憶部
22 第1のデータ処理部
23 第1のバッファ
24 第2のデータ処理部
25 第2のバッファ
30 動作制御部
31 ヘッド移動部
100 描画装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光によりマスクブランクスにパターンの描画を行う描画装置であって、
レーザ光を出射するためのレーザ光出射部と、
前記レーザ光出射部を第1の方向およびその逆方向に往復移動させる第1の移動機構と、
前記レーザ光出射部と前記マスクブランクスとを前記第1の方向と交差する第2の方向に相対的に移動させる第2の移動機構と、
前記パターンに対応する描画データに基づいてレーザ光の出射および非出射を切り替えるためのオンオフデータを作成する複数のデータ処理部と、
前記複数のデータ処理部のいずれかにより作成されたオンオフデータに基づいて前記レーザ光出射部によるレーザ光の出射および非出射を切り替える切替部と、
前記第1および第2の移動機構ならびに前記複数のデータ処理部を制御する制御手段とを備え、
前記レーザ光出射部の往路および復路の移動時間のうち少なくとも一方が描画期間に設定され、
前記制御手段は、各描画期間において、前記複数のデータ処理部のうち一のデータ処理部により既に作成されたオンオフデータが前記切替部に出力されるとともに、前記複数のデータ処理部のうち他のデータ処理部により次の描画期間のオンオフデータが作成されるように前記複数のデータ処理部を制御することを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記複数のデータ処理部は、第1および第2のデータ処理部を含み、
前記制御手段は、前記第1のデータ処理部によるオンオフデータの作成および前記第2のデータ処理部によるオンオフデータの出力と、前記第2のデータ処理部によるオンオフデータの作成および前記第1のデータ処理部によるオンオフデータの出力とが、描画期間ごとに交互に行われるように、前記複数のデータ処理部を制御することを特徴とする請求項1記載の描画装置。
【請求項3】
前記レーザ光出射部の往路および復路の移動時間のうち一方が描画期間に設定され、前記レーザ光出射部の往路および復路の移動時間のうち他方が非描画期間に設定され、
前記制御手段は、前記レーザ光出射部の往復移動ごとに前記レーザ光出射部と前記マスクブランクスとが相対的に前記第2の方向に移動し、各描画期間において、前記複数のデータ処理部のうち一のデータ処理部により既に作成されたオンオフデータが前記切替部に出力されるとともに、前記複数のデータ処理部のうち他のデータ処理部により次の描画期間のオンオフデータが作成され、各非描画期間において、前記レーザ光出射部によりレーザ光が出射されないように、前記第1および第2の移動機構ならびに前記複数のデータ処理部を制御することを特徴とする請求項1または2記載の描画装置。
【請求項4】
前記レーザ光出射部の往路および復路の移動時間がそれぞれ描画期間に設定され、
前記制御手段は、前記レーザ光出射部の往路の移動および復路の移動ごとに前記レーザ光出射部と前記マスクブランクスとが相対的に前記第2の方向に移動し、各描画期間において、前記複数のデータ処理部のうち一のデータ処理部により既に作成されたオンオフデータが前記切替部に出力されるとともに、前記複数のデータ処理部のうち他のデータ処理部により次の描画期間のオンオフデータが作成されるように、前記第1および第2の移動機構ならびに前記複数のデータ処理部を制御することを特徴とする請求項1または2記載の描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−45241(P2010−45241A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208958(P2008−208958)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(302003244)株式会社エスケーエレクトロニクス (31)
【Fターム(参考)】