説明

換気システム

【課題】メンテナンス性に優れ、かつ無垢材を用いたフローリングを使用することによる不具合を解消することのできる換気システムを提供する。
【解決手段】無垢材より構成される床材2と、床材2を固定する床下地材3と、幅木5と、床下に配設される通路部材6aと、通路部材6aの上面を閉塞する蓋部材8とを備える。蓋部材8は、幅木5と床下地材3との間に挿入して取り付けられる。また、蓋部材8は、内壁4に対して間隙Kを有した状態で部屋の床面の一部となるように取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気システムに関するものであり、特に、一般住宅やマンションなどにおいて好適に用いられる換気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝統的な日本家屋に比べ、現代の一般住宅やマンション等の建物は、壁や戸の間にほとんど隙間が形成されず、高気密化が進んでいる。そのため、自然換気が行われにくく、そのままでは室内の空気が澱みやすい傾向があった。
【0003】
また、現代の一般住宅やマンション等の床材としては、複数の短冊状の木片が一定の規則性の基に配列された、所謂フローリングが広く普及している。ここで、床材としては、木材を貼りあわせた合板や集成材、またはパーティクルボードなどが適用可能であるが、これらの木材に使用される接着剤には人体に有害な物質が含まれている場合があり、時には「シックハウス症候群」と呼ばれる人体に有害な症状が引き起こされることが知られている。
【0004】
そこで、高気密化が進んだ建築物の室内換気を目的として、換気扇などの換気手段を利用し、室外から外気を強制的に導入して換気を行う換気システムが多く提案されている(例えば、特許文献1)。これによると、外気の取入れ口と排出口とを、住宅の設置条件や時間帯に応じて制御し、外気の流路を切り替えて換気するものが示されている。
【0005】
また、本出願人は、室内に導入された外気を床下に流通させることで室内の暖房及び冷却効果を高め、優れた居住快適性を実現させる換気システムを提案している(特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−013219号公報
【特許文献2】特開2004−245470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1または特許文献2における換気システムにおいては、換気される空気の通路は、屋根裏空間や壁内など、居住者が容易にはアクセスできない場所に埋設されている。このため、室内の塵芥が給気口より該通路内に入り込んでも、簡単には掃除して取り除くことができなかった。しかし、通路内に噴き溜まった埃は、アレルギーの原因物質となる場合があった。そこで、迅速に取り除きたいという要望が生じていた。さらに、点検業者が通路内を点検する場合には、狭い点検口より通路内を覗くしか方法が無く、とても不便であった。
【0008】
一方、床材として、接着剤を使わないで構成される無垢材を用いると、前述した「シックハウス症候群」の原因となる物質が減少するため、より快適で安全性の高い室内空間の提供に資する。しかし、無垢材は天然の一枚板を使用するため、室内の湿気などを吸い込んで伸縮・膨張を繰り返す傾向があった。これにより、床面に撓みや反りなどが生じ、きしみ音や床面歪みが生じるという不具合があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、メンテナンス性に優れ、かつ無垢材を用いたフローリングを使用することによる不具合を解消することのできる換気システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る換気システムは、「複数の無垢材より構成された床材と、部屋の内壁に沿った壁際に配置された床下地材と、前記内壁の下端に帯状に設けられ、前記床下地材の上側に配置された幅木と、該幅木の下側に沿って配置され、上面が開放された略凹状の部材であり、空気の流通可能な通路を有する通路部材と、前記通路内の空気を前記部屋の外部へと排気する排気手段と、前記通路の上方を着脱自在に閉塞し、前記部屋の空気を前記通路へ導入可能な導入孔が備えられており、前記幅木、前記部屋の内壁、及び前記床下地材で構成される略コの字型の空間に一端部を挿入し、前記内壁に対して間隙を有した状態で前記部屋の床面の一部となる蓋部材とを備えることを特徴とする」ものである。
【0011】
ここで、「無垢材より構成された床材」とは、複数の短冊状の木片が寄せ集められた模様を有する、所謂フローリングを示す。また、「床下地材」とは、フローリングを固定するものであり、さまざまな材質が選択され得る。例えば、構造用合板、パーティクルボード、集成材、無垢の角材、またはコンクリート等が挙げられる。さらに、「床下地材」の配置方法としては、土台の上面に根太と呼ばれる構造材を格子状に配置する方法や、根太の上にさらに捨張と呼ばれる合板を張る方法等が知られているが、いずれの配置方法であっても良いし、それ以外であっても当然構わない。但し、その一部が少なくとも壁際に沿って配設されているものである。
【0012】
また、「幅木」とは、内壁の下端に帯状に設けられ、主に洋室の内壁に取り付けられて床材と内壁との接合部を被覆し、高級感のある意匠性を演出したり、家具が衝突して内壁の損傷を防止する機能を有するものである。一般的には、床材に対して垂直に当接する部位(つまり、内壁の下端部)に取り付けられるが、本発明では、内壁の下端部であって、且つ後述する蓋部材の上側に取り付けられる。
【0013】
また、「通路部材」の「上面が開放された略凹状」の形状とは、空気の通路が確保されている形状であれば良く、断面略コの字型、V字型、U字型、その他どのような形状であっても構わない。但し、断面形状が略コの字型若しくはU字型とすると、内部に溜まった埃などが簡単に取り除きやすい為、好適である。さらに、通路部材を構成する材質としては、木材や石材、合成樹脂など特に限定されるものではないが、「通路部材は、ステンレスで構成されている」とすれば、錆や、経年劣化による変形等の問題が起き難い為、一層効果的である。なお、「幅木の下側に沿って配置され」とは、「幅木」と「通路部材」とが同じ長手方向に沿って配置されている状態を示す。ここで、「床下地材」と「幅木」とは、共に内壁に沿って配置されているから、「床下地材」、「幅木」及び「通路部材」は同じ長手方向に(内壁に沿って)配置されている。
【0014】
一方、「蓋部材」としては、部屋の床面の一部となるように取り付けられるものであれば良く、その形状や色は特に限定されるものではない。ただし、床材と同じ色及び形状が表面上に形成されたものとすれば、床材との一体感が増してより自然な印象を与え得るため、より好適である。さらに、「蓋部材」は、一部屋に配置される通路を一枚で閉塞しても良いが、複数枚に小さく分割された状態で一部屋分の通路を塞ぐように構成すると、一層効果的である。一つの蓋部材のサイズが大きくなると、着脱動作がやりにくくなることに加え、運搬にも手間がかかるからである。また、寸法精度を向上させる上でも、一つ辺りのサイズが適度に小さいほうが良いから、複数枚に分割された構成とする方が好適である。
【0015】
また、「床面の一部となる蓋部材」とは、蓋部材を取り付けると、床材と蓋部材とが一連の床面を構成するような状態となることを示す。例えば、蓋部材と床面との表面高さが略一致し、あたかも一連のフローリングであるかのような状態に取り付けられる状態が例示できる。
【0016】
ところで、「排気手段」は、「通路」内の適宜の場所に取り付けられても良いし、「通路」とは別の場所に設置しても構わない。通路内の適宜の場所に取り付けられる構成としては、排気手段を、建物の外壁を貫通する場所に設け、当該排気手段に対して通路部材を接続させる構成が例示できる。一方、通路とは別の場所に設置する構成としては、床下に配置された通路部材を、トイレや風呂のような比較的狭くて気密性の高い個室に接続させ、これらの個室に備えられた排気手段を通じて通路内の空気を部屋の外へ排出させる構成などが挙げられる。
【0017】
従って、本発明の換気システムによれば、蓋部材は、部屋の床面の一部となるように取り付けられるから、床部材との連続性を損なわず、無垢材のフローリングの持つ高級感を損なわないという優れた効果を有する。また、本発明によれば、蓋部材は導入孔を有しているから、蓋としての機能に加え、給気口としての機能も有するものである。
【0018】
さらに、本発明によれば、蓋部材は、凹状の通路部材の上面を閉塞する構成だから、取り外した後は、通路部材の内壁をほぼ露出した状態にできる。従って、通路内に溜まったゴミや埃を除去しやすく、極めてメンテナンス性に優れる換気システムである。
【0019】
また、本発明によれば、蓋部材は、その一端部を幅木、部屋の内壁、及び床下地材で構成される略コの字型の空間に差し込むだけで、着脱自在に取り付けられるものである。換言すれば、内壁に取り付けられた幅木と、床下地部材との間に形成された隙間を蓋部材の固定に利用したものであるので、ボルトなどの固定金具を用いて蓋部材を固定するよりも簡単であると共に、既存の住宅設備をリフォームする場合などにも、特段の変更を加えずに本発明の換気システムを簡単に適用することができる。
【0020】
さらに、本発明によれば、蓋部材には導入孔が設けられているから、床材に対して蓋部材が連続的に取り付けられている状態でも、導入孔に指を入れることで簡単に取り外すことができる。つまり、導入孔は、空気を導入する機能に加え、さらに着脱用の操作部としての機能も有するものである。
【0021】
さらに、本発明によれば、蓋部材は、内壁に対して間隙を有した状態で取り付けられる。これにより、膨張した床材が内壁に押し付けられて歪むのを防ぐことができる。
【0022】
この点を具体的に説明すると、無垢材を用いた従来のフローリングの場合、水分等を吸収することによって無垢材である床材が膨張する場合がある。通常、床材と部屋の内壁とは当接した状態で隙間無く設置されるので、膨張による応力の逃げ場が無いことにより床材がゆがんだり、床材同士の接合部が押し合って盛り上がったりすることがあった。これにより、床面の平坦性が損なわれたり、接合部に歪みが生じてきしみ音の原因となっていた。これに対し、本発明では、無垢の床材が膨張・変形しても、蓋部材と内壁との間の間隙をクリアランスとして蓋部材が移動できるので、膨張による応力を逃がすことができ、無垢材を用いることによるきしみ音、床面歪み等の不具合を解消することができる。なお、蓋部材と内壁との間の前記クリアランス以上に蓋部材が膨張してしまった場合は、蓋部材の端面を適宜に削ってはめ込んでも良い。
【0023】
ところで、本発明の換気システムでは、取り付けられた蓋部材と部屋の内壁との間には間隙が設けられている。さらに、蓋部材は、ボルトや釘などの特段の固定金具を用いることなく通路の上方に取り付けられるので、何らかの力が加わって蓋部材が内壁側へと押しやられた場合には、そのまま内壁側へと移動する可能性があった。そうすると、当該間隙の分だけ床材と蓋部材との間に隙間が生じる場合があった。また、乾燥によって床材が収縮した場合には、前述の隙間がさらに広がる傾向があった。
【0024】
かかる床材と蓋部材との間の隙間は、部屋の内壁側、すなわち部屋の隅の方に生じるものであるため、比較的人目につき難く、床としての使用上も大きな問題を生じさせるものではないが、中には、無垢材の持つゴージャスな意匠性を僅かでも損ないたく無い、という要望もあった。そのため、係る隙間を可及的に小さく、若しくは無くしたいという課題が生じることがあった。また、当該隙間が設けられていることによって、蓋部材が内壁と床材との間を移動することがあり、がたつくのではないかとの懸念があった。
【0025】
上記の実情に鑑み、本発明の換気システムにおいて、「前記間隙を充填する充填手段をさらに有する」ものとしても良い。
【0026】
ここで、「充填手段」としては、蓋部材を着脱する際に塑性変形しない程度の適度な柔軟性と、蓋部材が内壁と床材との間で移動しないように仮固定できる程度の弾力性とを兼ね備える素材が好ましく、例えば発泡性ウレタン樹脂などが挙げられる。なお、「充填手段」の大きさとしては、当該間隙を隙間なく充填する程度の大きさを有していることが望ましく、且つ、蓋部材を床面へと取り付ける際に干渉しない程度に小さいことが必要である。
【0027】
また、「充填手段」は、蓋部材を通路の上面へと取り付けた状態で「間隙」内に位置するものであれば良く、蓋部材の端面に取り付けられても良いし、内壁側に取り付けられるものでも良いが、いずれか一方には固定されている方が、取り付け作業の簡便性という観点からは好ましい。「充填手段は、蓋部材の端面側に取り付けられている」構成であれば、取り付け作業において蓋部材の端面と幅木とが接触することがあった場合でも、該充填手段がクッションとなって幅木に傷を付けにくいという作用効果を奏する。一方、「充填手段は、前記間隙内に予め固定されている」構成とすれば、蓋部材の取り付け方向を間違った場合(裏表が逆だったり、左右方向が反転した状態で取り付ける等)でも、蓋部材の端面と内壁との間に確実に充填手段が配置されるという作用効果を奏する。
【0028】
従って、本発明によれば、間隙が充填手段によって充填されているので、部屋の内壁と床材との間を蓋部材が移動しにくい。これにより、床材と蓋部材との間に隙間が生じにくい。一方、充填手段は柔軟性を有する(例えば、発泡性ウレタン樹脂等)部材であるから、蓋部材の端面を前記コの字型の隙間へと押し込んだ際には適宜に伸縮し、着脱の容易性を損なうことも無い。これにより、着脱の容易性を担保しつつも、且つ無垢材の持つ高級感溢れる意匠性を損なうことの無い換気システムが実現できる。
【0029】
また、本発明の換気システムにおいて、「前記通路には配線の一部を収納可能であり、前記導入孔は、前記配線を前記部屋に取り出すための取り出し口として機能する」ものとしても良い。
【0030】
ここで、「配線の一部を収納可能」とは、通路内に電化製品やアンテナ線等の配線類を這わせ、床面上に現れないように配置できる状態を示す。
【0031】
従って、本発明によれば、通路が配線を収納可能であるので、換気システムとしてだけではなく床下配線収納スペースとしての機能も有するものである。特に、本発明によれば、蓋部材を取り外すと、上面が開放された通路の内壁をほぼ露出した状態にできるので、配線を入れやすくて、その配置が見やすい。さらに、蓋部材の導入孔が、配線を取り出すための取り出し口として機能するから、配線を収納するだけではなく、床上へと取り出すことが可能となり、余分な配線類が床面上に現れなくなりすっきりする。
【0032】
なお、導入孔の大きさ、及び個数としては特に限定されるものではないが、本発明においては配線を取り出すための取り出し口として機能するものであるから、汎用のプラグより大きめであることが望まれる。例えば、一つの導入孔の大きさとしては、直径30mm程度が例示できる。また、個数としては、部屋の大きさや配線の都合、及び換気したい空気量に応じて適宜選択され得るが、例えば複数個の導入孔を配置すると、配線を取り出せる位置に自由度が増すと共に、空気の取り入れ口を多数確保できるので換気効率が落ちにくいという作用効果も奏する。
【発明の効果】
【0033】
このように、本発明の換気システムによれば、蓋部材は、部屋の内壁に対して間隙を有した状態で配置されるから、無垢のフローリングを使用することによるきしみ音や歪みの不具合を解消することができる。これにより、安全で且つ高級感溢れる室内空間の提供に資する換気システムを提供できる。また、幅木、部屋の内壁、及び床材で構成される略コの字型の空間を利用して蓋部材を取り付ける構成だから、着脱が容易で、メンテナンス性に優れる。さらに、蓋部材を取り外すと、通路部材の内壁が露出される構成なので、通路内の埃などを簡単に取り除けることにより、一層メンテナンス性に優れる換気システムを提供できる。
【0034】
さらに、通路内に配線を収納し、導入孔を配線取り出し口として機能させた場合には、換気システムとしての機能に加え、さらに配線収納としての機能も会得することができ、より快適な室内空間を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態である換気システムについて、図1乃至図5に基づき説明する。図1は、本発明の換気システムの全体像を模式的に現したものであり、図2は、本発明の換気システムを適用した部屋の一部を斜視図で示したものであり、図3は、蓋部材の取り付け部を示す断面図であり、図4は、蓋部材を床面へと取り付ける様子を説明した説明図であり、図5は、蓋部材について説明した説明図である。
【0036】
本例の換気システム1は、図1乃至図3に主に示すように、複数の床材2と、床下地材3と、部屋の内壁4の下端に帯状に設けられた幅木5と、床下に通路6を構成する通路部材6aと、通路6内の空気を部屋の外へと排出する換気扇7と、通路6の上方を閉鎖し、取り付けられると床面の一部となる蓋部材8とを有して構成されている。
【0037】
本例の換気システム1では、図1に示すような、二つの個室空間(リビングL及びトイレT)の床下が通路6によって連通されている換気システム1を例示している。より具体的には、トイレTを構成する壁9内に隙間Sが設けられており、二つの個室空間を床下で連通する通路6が、隙間Sに接続されている。従って、換気扇7によってトイレT内の空気が室外へ排出されると、実線矢印で示すように、トイレT内の空気に加えて、通路6内の空気も室外へと導出される。すると、通路6内が負圧になるので、蓋部材8に設けられた導入孔10を通じてリビングL内の空気が通路6内へと導入される。また、リビングLに設けられた給気口11を通じて外気がリビングL内へと導入されるので、リビングL内、通路6内、隙間S内を外気Gが通過して換気されるものである。
【0038】
なお、蓋部材8の詳細な構成(導入孔10等)については、詳細は後述する。また、トイレTの壁9内に設けられた隙間S、及び通路6の配置された床下空間は、説明を簡略にするために若干誇張したものを示している。
【0039】
床材2(図2及び図3参照)は、床面を主に構成するものであり、複数の短冊状の木材を寄せ集めた模様を有する、所謂フローリングである。複数の床材2同士は、ほぞや蟻継ぎ等の公知の接合方法を用いて互いに連結され、釘やボルト等の適宜の固定手段12を用いて床下地材3に固定されている。
【0040】
「無垢材」とは、一般に、天然の木材を用いた一枚板を示す。これに対して、「合板材」と呼ばれる材質も一般的に使用されているが、これは、さまざまな木片同士を接着剤で結合することで床材2を作成したものである。「無垢材」は、「合板材」に比べて重厚で高級感溢れる質感を有し、天然の木の温もりが使用者に伝わりやすいという優れた特長を有している。また、接着剤などを使用せずに形成できることから、ホルムアルデヒドなどの人体に有害な揮発性物質を発生させず、快適で健康的な室内空間の提供に資するという特長も有している。
【0041】
「無垢材」の原材料としては、チーク、杉、ヒノキ、ウォールナット、桐、ケヤキ、トチ、サクラ、マホガニー、クスノキ、ミズナラ、バーチ、メイプル、モミ、ラワン等、フローリングの材料として使用される天然木であれば、特に限定されるものではない。これは、後述する蓋部材8においても同様である。
【0042】
床下地材3(図3参照)は、床材2の下に渡され、床を支える構造材である。本例においては、“根太”と呼ばれる下地材を図示している。床下地材3としては、この他にも、コンクリートなどの平滑な下地面(接着剤を使って直接床材2を貼る)で形成する方法や、捨張りと呼ばれる構造用合板やパーティクルボードなどを床組の上に張って形成する方法などが知られているが、本例のように、根太を利用することで、接着剤の使用量を少なくできるし、後述する通路部材6aを埋設するための溝を掘る必要も無いので、後の施工が簡便になる。
【0043】
幅木5(図2及び図3参照)は、部屋の内壁4の下端に帯状に設けられている。床掃除などで傷んだり汚れたりしやすい壁下部を保護する機能や、壁と床の仕上げ部分のおさまりを美しく仕上げる機能を有している。幅木5が壁より出る出幅木、壁と面一にそろえる面幅木、壁面より引っ込ませる入幅木の3タイプが一般的に知られているが、本発明では「出幅木」タイプが好適に使用される。なお、本例においては、幅木5の下端部を曲線状に仕上げている(図3:R参照)。
【0044】
通路6は、床下地材3の下側に形成されるもので、空気が流通可能な凹状の通路部材6aを配置することによって形成されている。より詳細には、図3に示すように、部屋の内壁4に沿って延設された壁際の床下地材3の下側に通路部材6aが設置されており、空気の通り道である通路6を有している。通路部材6aは、錆に強いステンレスで構成されており、壁際に配置された床下地材3と、それに隣接する床下地材3との間に配置されている。なお、通路部材6aは、図1に示すように、その終端部でトイレTの壁9内に設けられた隙間Sに接続されている。
【0045】
トイレTの外壁には、吸引ファンの回転によって隙間S及び通路6内の空気をトイレTの外へと排出する換気扇7が設置されている。ここで、換気扇7が本発明における排気手段に相当する。
【0046】
蓋部材8は、床材2と一体的に取り付けられることで、通路6の上方を閉塞する部材である。より詳細には、図2及び図3に示すように、床材2と略等しい外形をしており、部屋の内部と通路6内とを連通させる導入孔10が穿設されている。蓋部材8の幅Wは、床面の一部となるように取り付けられた状態で、内壁4との間に間隙Kが形成されるようなサイズに設計されている。
【0047】
導入孔10は、蓋部材8を上下方向に貫通するもので、本例においては、直径30mmの円形のものが採用されている。これにより、汎用の家電製品に使用されているプラグ類がスムーズに出し入れ可能となると共に、蓋部材8を取り外すときに、大人の指が入る十分な大きさが確保されているので、取り外しが簡便である。また、一つの蓋部材8に対して複数個の導入孔10が設けられているから、配線類を取り出す位置が細かく調整でき、より便利である。
【0048】
また、蓋部材8の端部には、間隙K内(図3参照。以下同じ)を充填する緩衝材14が取り付けられている。緩衝材14は、蓋部材8の内壁4側への移動を制限する機能を有している。材質としては、蓋部材8を着脱する際に塑性変形しない程度の適度な柔軟性と、蓋部材8の左右方向(図5における矢印Y1、Y2方向)への移動を制限する程度の弾力性とを兼ね備える素材が好ましく、例えば発泡性ウレタン樹脂などが挙げられる。なお、「緩衝材14」が、本発明の「充填手段」に相当する。
【0049】
続いて、本例の換気システム1の蓋部材8について、図4及び図5を用いて説明する。蓋部材8は、図4に示すように、緩衝材14が取り付けられている方の端面を、幅木5の下端部、部屋の内壁4、及び床下地材3の表面で構成される略コの字型の空間15に差し入れ、床下地材3上に載置する。すると、図2及び図3に示すように、床材2と一体的な状態で通路6の上面を閉塞することが可能となる。蓋部材8の幅W(図3参照)は、取り付けられた状態において、その一端部が幅木5の下端部に当接するようなサイズに設計されているから、幅木5と床下地材3とに挟まれることによって上下方向の移動が制限される。
【0050】
一方、蓋部材8は、内壁4に対して間隙Kを有した状態で取り付けられるから、蓋部材8が左右方向に隙間Kの分だけ移動する(間隙K→間隙K1)かに思われる。しかし、本例によれば、蓋部材8の端面には緩衝材14が取り付けられているから、図5(a)に示すように、蓋部材8が、内壁4から矢印Y1の方向に向かって付勢され、床材2に対して隙間なく(若しくは少なく)当接する。
【0051】
他方、床材2が水分を吸収して膨張した場合は、図5(b)に示すように、蓋部材8が床材2との接合部から内壁4に向かって矢印Y2の方向に付勢される。しかし、本例の蓋部材8によれば、間隙Kが設けられているし、また、緩衝材14が伸縮可能である(間隙K→間隙K2)から、床材2による応力を逃がすことができる。これにより、無垢材である床材2の歪みや接合部の変形を低減することができる。
【0052】
また、本例の換気システム1によれば、図4及び図5に示すように、通路6内に配線16を収納し、導入孔10よりプラグ17を取り出すことができる。これより、換気システム1を用いて床下配線を実現することができ、便利で快適な住空間の提供に資する。
【0053】
以上のように、本例の換気システム1によれば、蓋部材8を取り外すことで通路部材6aの内壁を露出させることができ、埃などが取り除きやすいので便利である。それと同時に、蓋部材8を床面の一部となるように取り付けることができるので、蓋部材8をあたかもフローリングの一部であるかのように演出することができ、無垢材の持つ高級で温かみのある意匠性を損なわない優れた換気システム1を提供できる。
【0054】
また、蓋部材8は、その一端部を幅木5、部屋の内壁4、及び床下地材3で構成される略コの字型の空間15に差し入れるだけで取り付けることができるから、着脱が容易であり、より高いメンテナンス性を実現するものである。さらに、従来のフローリングをリフォームして換気システム1を追加する際において、蓋部材8を着脱するための別途の固定手段を備える必要がないから、施工が容易であり経済的である。
【0055】
さらに、本例の換気システム1によれば、蓋部材8の幅Wは、内壁4に対して当接しないようなサイズに設定されている。すなわち、内壁4に対して間隙Kを有して構成されているから、床材2の変形に起因する応力を逃がすことができ、きしみ音や歪みなどの不具合を解消することのできる換気システム1を提供できる。
【0056】
また、本例の換気システム1によれば、間隙Kが設けられていることによって、蓋部材8や床材2が膨張した場合でも、間隙Kがクリアランスのバッファになって容易にはめ込むことが可能となる。つまり、施工精度や設計精度に幅を持たせることができるから、水分吸収等によるサイズ変化の大きい無垢材での施工により適している。
【0057】
さらに、本例の換気システム1によれば、間隙K内が緩衝材14によって充填されているから、蓋部材8の矢印Y1への移動が制限され、床材2と蓋部材8との間の隙間を生じにくい。これにより、高い意匠性のフローリングを実現する換気システム1を提供できる。
【0058】
また、本例の換気システム1によれば、蓋部材8には、空気の取り入れ口であると同時にプラグ17を床面へと取り出す機能を有する導入孔10が備えられているから、通路6内を床下配線スペースとして機能させることができ、快適な住空間の提供に資する。特に、本例において、導入孔10は、蓋部材8に複数個備えられている構成だから、配線の取り出し位置を自由に選べる。これにより、家具のレイアウトの自由度も格段に向上し、より快適な室内空間を提供できる。さらに、複数の導入孔10が備えられていることから、多数の配線を導入孔10から取り出して幾つかの導入孔10が閉塞されたような場合であっても、他の導入孔10から空気を導入することで必要な流入量を確保することができ、換気システム1としての機能を損なわせることが無いから好適である。
【0059】
また、本例の換気システム1によれば、導入孔10の大きさは、30mm程度となるように設定されている。これにより、汎用の家電製品の電気プラグ(プラグ17等)を容易に通過させることができると共に、大人の指を引っ掛けて蓋部材8を着脱するのに十分な大きさが確保されているから、より便利でメンテナンス性に優れる換気システム1を提供できる。
【0060】
さらに、本例の換気システム1によれば、図3に示すように、幅木5の下端部を曲線状に仕上げている(R参照)から、略コの字型の空間15に蓋部材8をスムーズに差し込めるという作用効果を有している。
【0061】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0062】
上記実施形態においては、部屋の一端部に通路部材6aが配設された場合を例示したが、この形態に限定されるものではない。例えば、図6に示すように、大部屋18の対抗する二辺の端部に通路19a(及び蓋部材8)を設けても構わない。このように構成すれば、例えば家族が増えて部屋を分割したい(一点鎖線部参照)場合であっても、双方の部屋に換気システム1を配置させることができるので、後の施工の手間が省けて便利である。さらに、残りの二辺の端部に通路19bを設けても構わない。このように構成すれば、部屋の換気量を増大させることができるし、仮に二点鎖線部のように部屋をさらに分割することがあっても、全ての部屋に換気システム1が配置され、好適である。
【0063】
また、上記の実施形態では、部屋の内壁4に沿って通路6が配設される構成を例示したが、この構成に限定されなくとも良い。例えば、図6に示すように、部屋の中央部の床下等に通路20をさらに配置しても良い。但し、この場合には、幅木5によって蓋部材8を固定することができないから、ボルト等の適宜の固定手段を用いる必要が生じるが、通路6を配線収納スペースとして機能させる場合に家具配置の自由度が一層高くなるから、必要に応じて設置すると良い。
【0064】
さらに、上記の実施形態では、トイレTの壁9内に隙間Sを設け、この隙間Sと通路6とを接続する構成を例示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、トイレTの床や壁に給気口を設けて、当該給気口に直接通路6aを接続する構成でも構わない。また、通路6を他の換気システムとは独立させて設けても良く、要するに、床材2、床下地材3、幅木5、通路6、排気手段7、及び蓋部材8を備えるものであれば良い。なお、通路6は、通路部材6aを配設することによって設置されているが、床下空間を利用するものであれば良く、例えば基礎と床材との間の空間をそのまま利用するものであっても良い。但し、本例のように構成することで、より効率的に部屋内の空気を外へと導出することができて効果的である。
【0065】
また、上記の実施形態では、所謂「出幅木」タイプの幅木5を例示したが、その他「面幅木(つらはばき)」タイプや、「入幅木」タイプの幅木であっても良い。但し、本例のように構成すると、内壁4の形状に加工を加えることなく、幅木5、部屋の内壁4、及び床下地材3で構成される略コの字型の空間15を利用するだけで蓋部材8を装着可能だから、より簡便且つ経済的である。
【0066】
また、上記の実施形態では、床材2、幅木5、及び通路6を床材2の長手方向に沿って配置する構成を例示したが、例えば図6の通路19bに示すように、床材2の短辺方向に沿って配置しても良い。この場合に、蓋部材8の表面に加工を施し、床材2の配置模様と一体的になるような模様を形成させればより自然な風合いを演出できるし、一方、特段の加工を施さない場合は、加工の手間の分だけ経済的な換気システム1を提供できる。なお、前記の場合、床材2と蓋部材8との接合部がはっきりとしてしまう虞があるが、通路6は部屋の壁際に配置されるから人目につきにくく、大きな問題とはならない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の換気システムの全体像を模式的に現したものである。
【図2】換気システムを適用した部屋の一部を斜視図で示したものである。
【図3】蓋部材の取り付け部を示す断面図である。
【図4】蓋部材を床面へと取り付ける様子を説明した説明図である。
【図5】蓋部材について説明した説明図である。
【図6】他の実施形態について説明した説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1 換気システム
2 床材
3 床下地材
4 部屋の内壁
5 幅木
6 通路
6a 通路部材
7 換気扇(排気手段)
8 蓋部材
10導入孔
14 緩衝材(充填手段)
15 略コの字型の空間
16 配線
K 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無垢材より構成された床材と、
部屋の内壁に沿った壁際に配置された床下地材と、
前記内壁の下端に帯状に設けられ、前記床下地材の上側に配置された幅木と、
該幅木の下側に沿って配置され、上面が開放された略凹状の部材であり、空気の流通可能な通路を有する通路部材と、
前記通路内の空気を前記部屋の外部へと排気する排気手段と、
前記通路の上方を着脱自在に閉塞し、前記部屋の空気を前記通路へ導入可能な導入孔が備えられており、前記幅木、前記部屋の内壁、及び前記床下地材で構成される略コの字型の空間に一端部を挿入し、前記内壁に対して間隙を有した状態で前記部屋の床面の一部となる蓋部材と
を備えることを特徴とする換気システム。
【請求項2】
前記間隙を充填する充填手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記通路には配線の一部を収納可能であり、
前記導入孔は、前記配線を前記部屋に取り出すための取り出し口として機能する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の換気システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−70039(P2008−70039A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248914(P2006−248914)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(301000136)早川産業株式会社 (1)