説明

揮発性物質除去装置の運転系統構造

【課題】 高粘度流体の製造のために溶剤を分離させる揮発性物質除去装置についての熱エネルギー利用の効率化を図ることを目的とする。
【解決手段】 減圧容器11の上部に装着された加熱器12に重畳させて予熱器13を配設し、高粘度流体を予熱器13と加熱器12を順次通過させて減圧容器11に供給する。予熱器13には、減圧容器11において気化した溶剤の蒸気により凝縮器15を通して加熱した圧縮炭酸ガスを供給する。予熱器13から排出された炭酸ガスを圧縮機21、22で加圧し、蒸発器23に供給して過熱蒸気を発生させる。排出された炭酸ガスを膨張機25に供給して膨張させ、凝縮器15で前記溶剤の蒸気を凝縮させる。排出された炭酸ガスを前記予熱器13に供給する。膨張機25では炭酸ガスの膨張による仕事で圧縮機21の駆動力を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スチレン系ポリマー及びノルボルネン系ポリマー等の高粘度物質を製造する際に、製造過程において使われる溶剤、モノマー等を揮発除去して、高粘度物質の濃度を上昇させる溶剤等の揮発性物質を除去する揮発性物質除去装置の運転系統構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系ポリマー及びノルボルネン系ポリマーは、包装材や容器などの包装用やその光学性能を利用した樹脂製品等など用途が拡大しつつある。このスチレン系ポリマー及びノルボルネン系ポリマーの溶液等の高粘度物質の製造過程においては、未反応モノマーや溶剤等の揮発性物質が含有されており、この揮発性物質を除去する必要があり、この除去のために除去装置が用いられている。
【0003】
ポリマー溶液から揮発性物質を除去する装置としては、この種の高粘度流体を外部加熱された円筒内壁に掻取羽根により押し広げながら攪拌を行うことで加熱して揮発分を除去する薄膜式蒸発器があるが、構造上の制約から、一基当たりの伝熱面積に限界があるため不利であると共に、掻取羽根の駆動装置を必要とするため、ランニングコストやメンテナンスの点から不経済である。一方、本願出願人は、減圧容器と熱交換器とを組み合わせた揮発性物質除去装置を、既に提案している(特許文献1参照)。
【0004】
図3はこの種の従来の揮発性物質除去装置に関する概略のフロー図であり、除去される揮発性物質を含有した高粘度流体は原料供給管1を通って熱交換器2に供給される。この熱交換器2には熱媒体供給管2aを通して熱媒体が供給され、前記高粘度流体を加熱した熱媒体が熱媒体回収管2bから回収され、図示しない加熱器を通って加熱された後、再び熱交換器2に供給されるように循環させてある。
【0005】
前記熱交換器2は減圧容器3の上部に配設されており、熱交換器2で加熱された高粘度流体はこの減圧容器3に供給される。減圧容器3は真空ポンプ4によって内部が吸引されて負圧とされており、吸引された減圧容器3内の溶剤の蒸気は途中で凝縮器5を通過して気体と液体とに分離され、気体は真空ポンプ4から排気系に回収され、液体は図示しない貯槽に貯留されて回収される。
【0006】
ところで、従来の揮発性物質除去装置では、ランニングコストの割合が高いことから、これを低減できる経済性の有利な発泡ポリスチレン再生装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
この特許文献2に開示された発泡ポリスチレン再生装置は、発泡ポリスチレンを溶剤により溶解して得たポリスチレン溶解物から異物を除去する濾過器と、異物を除去された後のポリスチレン溶解物を溶剤の蒸発温度まで加熱してポリスチレン溶解物から溶剤ガスを分離する蒸発分離器と、溶剤ガスの分離除去に際してポリスチレン溶解物を予熱する加熱器と、分離された溶剤ガスを冷却して回収する凝縮器とを備えた発泡ポリスチレン再生装置において、前記加熱器の上流側に予熱器を設け、前記溶剤ガスを前記凝縮器へ供給する前に前記予熱器へ加熱源として供給するガス配管を設けた構造からなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平1−30845号公報
【特許文献2】特開2003−246878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図3に示した揮発性物質除去装置では、真空ポンプ4により減圧容器3の内部から吸引された溶剤の蒸気を凝縮器5で冷却しているため、高温ガスが保有する大きな熱量が冷媒との間で交換されて廃棄されている。冷媒に伝達された熱は、冷水塔や空冷式熱交換器等で排出されており、環境雰囲気の温暖化と温室効果を促進することになる。
【0010】
また、特許文献2に記載された発明では、ポリスチレン溶解物の供給路の途中の加熱器の上流側に予熱器を配置させ、これに蒸発分離器で分離された溶剤ガスを供給した後に凝縮器に給送させて溶剤を回収している。
【0011】
ところで、減圧容器の内部から吸引された溶剤の蒸気については、ランニングコストを向上させるべく、極力有効に活用するよう模索されており、引用文献2に記載された発明もその一つである。
【0012】
この発明は、前記減圧容器で発生する高温の蒸気の有効な活用を図って揮発性物質除去装置のランニングコストの向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造は、減圧容器の上部に加熱器が装着され、高粘度流体を該加熱器を通過させて加熱した後に前記減圧容器供給し、該減圧容器内で揮発性の溶剤を蒸発させて高粘度流体から溶剤を分離させる揮発性物質除去装置の運転系統構造において、前記加熱器の高粘度流体の流路の上流側に配設した予熱器と、熱媒体により蒸気を発生させる蒸発器とからなり、前記熱媒体を前記予熱器に流通させて高粘度流体を加熱し、 前記減圧容器内で発生した溶剤の蒸気で前記熱媒体を加熱するようにして、該熱媒体を前記蒸発器と予熱器との間で循環させることを特徴としている。
【0014】
すなわち、減圧容器内でフラッシュされて発生する溶剤の蒸気により熱媒体を加熱し、この熱媒体を前記予熱器に供給して高粘度流体の予熱に利用する。その後、前記蒸発器に供給して過熱蒸気を発生させ、この過熱蒸気を、例えば、高粘度流体の原料と溶剤との重合物を生成する工程に利用する等、所望の工程における処理に利用する。
【0015】
また、請求項2の発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造は、減圧容器の上部に加熱器が装着され、高粘度流体を該加熱器を通過させて加熱した後に前記減圧容器供給し、該減圧容器内で揮発性の溶剤を蒸発させて高粘度流体から溶剤を分離させる揮発性物質除去装置の運転系統構造において、前記加熱器の高粘度流体の流路の上流側に配設した予熱器と、 前記減圧容器内で発生した溶剤の蒸気を流通させて加熱した熱媒体を前記予熱器に供給する凝縮器と、前記予熱器から排出される熱媒体が供給される第1圧縮機と、前記第1圧縮機で加圧された熱媒体が供給される第2圧縮機と、前記第2圧縮機で加圧された熱媒体が供給され蒸発器と、前記蒸発器から排出される熱媒体が供給させる膨張機とからなり、前記第1圧縮機の駆動力を前記膨張機の出力から得ることを特徴としている。
【0016】
前記溶剤の蒸気を前記凝縮器で凝縮させた熱媒体を、前記予熱器を流通させて高粘度流体の予熱に供させる。予熱器から排出された熱媒体は前記第1圧縮機により加圧された後、前記第2圧縮機に供給されて、さらに加熱されて前記蒸発器に供給される。蒸発器では熱媒体により水が加熱されて過熱蒸気が発生する。この過熱蒸気は所望の工程による所望の処理に供することができる。
【0017】
蒸発器から排出された熱媒体は前記膨張機に供給させて、例えばタービンを駆動してその回転を前記第1圧縮機の動力に利用する。なお、前記第2圧縮機の動力は、商用電力等の外部電力によるモータ等の出力回転を利用する。膨張機から排出された熱媒体は前記凝縮器を流通させて溶媒の蒸気を凝縮させることで加熱され、前記予熱器に供給される。
【0018】
また、請求項3の発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造は、前記膨張機の出力で発電機を駆動し、発生した電力を前記第1圧縮機と第2圧縮機の駆動力に使用することを特徴としている。
【0019】
前記膨張機により、例えばタービンを駆動し、その回転力で発電機を動作させて発電する。この電力を、前記第1圧縮機と第2圧縮機の駆動用モータの駆動に利用するようにしたものである。
【0020】
また、請求項4の発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造は、前記発電機により発電された電力による前記第1圧縮機と第2圧縮機の駆動力に不足が生じる場合には買電によることを特徴としている。
【0021】
前記発電機によって発生させた電力で第1圧縮機と第2圧縮機を駆動するのに充足すれば好ましいが、不足する場合には前記蒸発器において十分な量の過熱蒸気を発生させられないおそれが生じる。そこで、第1圧縮機と第2圧縮機を駆動するのに不足分の電力を買電するようにしたものである。なお、発電機により発生した電力で蓄電池を充電し、商用電源と等しく周波数変換して第1圧縮機と第2圧縮機を駆動用モータに給電する。
【0022】
また、請求項5の発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造は、前記熱媒体に圧縮炭酸ガスを利用したことを特徴としている。
【0023】
熱媒体として不活性ガスである圧縮炭酸ガスを利用するものである。
【発明の効果】
【0024】
この発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造によれば、減圧容器で脱揮させて発生する溶剤の蒸気により熱媒体に所望の熱量を付与して高粘度流体の予熱と過熱蒸気の発生とを行わせるから、揮発性物質除去装置のランニングコストの抑制を促進することができる。
【0025】
また、請求項2の発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造によれば、熱媒体の凝縮と膨張等を利用して過熱蒸気を効率的に行わせることができる。また、2台の圧縮機のうちの1台は熱媒体の膨張作用から駆動力を得るため、外部からのエネルギーは他の圧縮機のみであり、極力ランニングコストを抑制できる。
【0026】
また、請求項3の発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造によれば、2台の圧縮機のいずれをも熱媒体の膨張により得られる仕事により行わせることができ、ランニングコストをさらに抑制できる。
【0027】
また、請求項4の発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造によれば、2台の圧縮機を動作させるための駆動力が、熱媒体の仕事では不足する場合には買電することにより、所望の仕様を有する過熱蒸気を得ることができ、この過熱蒸気を使用する工程の運転を安定させることができる。
【0028】
また、請求項5の発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造によれば、不活性な炭酸ガスを熱媒体に利用するため安全性の高い設備とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造の第1の実施形態を示す概略のフロー図である。
【図2】この発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造の第2の実施形態を示す概略のフロー図である。
【図3】従来の揮発性物質除去装置に関する概略のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造を具体的に説明する。
【0031】
図1にはこの発明の第1実施形態に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造を示してある。揮発性物質除去装置10は減圧装置11の上部に加熱器12が装着され、この加熱器12の上側に予熱器13を重畳させて装着してある。例えば、この揮発性物質除去装置10では、高粘度流体であるポリマー溶液から溶剤や未反応モノマー等の揮発性物質を分離してポリマーを採取する場合、ポリマー溶液は図示しないタンクから原料供給路10aを通って予熱器13に供給される。予熱器13から排出されるポリマー溶液は該予熱器13を重畳させた加熱器12に導入され、該加熱器12から前記減圧容器11内に供給される。
【0032】
前記加熱器12はいわゆるプレートフィン型の熱交換器からなり、熱媒体供給路12aを通して熱媒体が供給され、前記ポリマー溶液を加熱した後に熱媒体回収路12bから回収され、図示しない加熱装置を通して加熱された後、再び加熱器12に供給されるように循環させてある。前記予熱器11はいわゆるプレートフィン型の熱交換器からなり、熱媒体は供給路13aを通して供給され、前記ポリマー溶液を加温した後に回収路13bから回収される。
【0033】
前記減圧容器11の内部は主たる第1凝縮器15と従たる第2凝縮器16とを介して真空ポンプ17に接続されており、減圧容器11の内部は該真空ポンプ17に吸引されて負圧とされている。
【0034】
また、前記減圧容器11の下部には排出ポンプ18が装着されて、減圧容器11の下部に滞留したポリマーが排出され、給送路18aを通って次工程へ給送される。
【0035】
前記予熱器13に供給される熱媒体は、前記第1凝縮器15から排出されるもので、該第1凝縮器15を通過することによって減圧容器11内で分離された溶剤の蒸気によって加熱されている。このため、予熱器13においては前記原料供給路10aから供給される高粘度流体が加熱器12で加熱されるのに先立って加温される。この予熱器13を通過した熱媒体は、回収路13bを通って第1圧縮機21に供給されて加圧された後に2圧縮機22に供給される。この第2圧縮機22で加圧されて昇温した熱媒体は蒸発器23に供給されて、水を加熱して過熱蒸気を発生させる。発生した過熱蒸気は、所望の工程に供給され、特にこの揮発性物質除去装置10に供給させる原料と溶剤との重合物を生成する工程に供給することが望ましい。なお、蒸発器23で発生した過熱蒸気は供給ポンプ24で吸引されて所望の工程へ供給される。
【0036】
前記蒸発器23で媒体を加熱した熱媒体は、膨張機25に供給されて減圧される。この膨張により、例えばタービンを回転させて出力軸25aから回転動力を得るようにしてあり、この出力軸25aの回転を前記第1圧縮機21の駆動力とされている。なお、前記第2圧縮機22の駆動力はモータ22aの出力から得ている。
【0037】
そして、膨張機25により膨張して降温した熱媒体は、前記第1凝縮器15に供給されて、溶剤の蒸気により加熱されると共に、該溶剤の蒸気を凝縮することになる。
【0038】
すなわち、熱媒体は減圧装置11内で分離された溶剤の蒸気により加熱されて予熱器13において高粘度流体を加温した後、第1圧縮機21と第2圧縮機22とで加圧されて蒸発器23に供給されて、媒体の過熱蒸気を発生させる。その後、膨張機25によって膨張させられ、その際に前記第1圧縮機21を駆動させる仕事を行うことになるものである。なお、溶剤の蒸気は第1凝縮器15で熱媒体を加熱した後、前記第2凝縮器16で溶剤が液化されて回収される。
【0039】
図2には第2実施形態に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造を示してあり、図1に示す第1実施形態と同一の部位については同一の符号を付してある。
【0040】
この第2実施形態では膨張機25により熱媒体が膨張する際の仕事を、発電機31を駆動させて発電させるようにしたものである。すなわち、熱媒体の膨張によって、タービンを作動させ出力軸25aの回転により発電機31の入力軸を回転させて発電する。発電された電力は蓄電池32を充電する。この蓄電池32から出力される電力を、前記第1圧縮機21と第2圧縮機22の駆動用のモータ21a、22aの動力に使用するようにしてある。なお、蓄電池32の電力を周波数変換機33によって商用電源の周波数と等しくなるように変換し、制御装置34を介して前記モータ21a、22aに供給するようにしてある。そして、この制御装置34には商用電源36から給電されており、モータ21a、22aの駆動用の電力が不足する場合には商用電源36で不足分を補うようにしてある。
【0041】
この第2実施形態に係る揮発性物質除去装置の運転系統構造では、蒸発器23から回収された熱媒体を膨張機25に供給して膨張させ、その際に発電機31の駆動力を得る。発電機31で発電された電力を利用して前記第1圧縮機21と第2圧縮機22とを駆動するようにしたものである。すなわち、運転系統構造としては、熱媒体と動力とのいずれも閉鎖系において処理されているものである。なお、動力については不足分は商用電源で補われるようにしてある。
【0042】
次に、前記第1実施形態にかかる揮発性物質除去装置の運転系統構造の作用を説明する。
【0043】
前記原料供給路10aを通して溶剤としてEthyl benzene( エチルベンゼン、8,000kg/hr)にPolymer(ポリマー、2,000kg/hr)を溶解させたポリマー溶液を温度約60℃、圧力約3kg/cm2Gで前記予熱器13に供給する。予熱器13には、前記第1凝縮器15によって加熱された熱媒体が供給されている。このとき、熱媒体としては圧縮炭酸ガスを用いており、その循環量は10,000kg/hrで、前記予熱器13には温度が約266.4℃の熱媒体が供給される。
【0044】
前記予熱器13に供給された熱媒体は前記回収路13bから回収され、その際の温度が約70℃となる。この回収路13bで回収された熱媒体を前記第1圧縮機21と第2圧縮機22に順次流通させて、温度187.6℃、圧力3kg/cm2Gまで加圧されて前記蒸発器23に供給されて過熱蒸気を発生させる。
【0045】
蒸発器23から排出された熱媒体は前記膨張機25で膨張した後、温度が約−36.5℃、圧力が約0.3kg/cm2Gとなって前記第1凝縮器15に供給させることになる。
【0046】
また、予熱器13において加温された高粘度流体は加熱器12を流通して加熱されて減圧容器11に供給され、約280℃、約0.014kg/cm2Gの負圧下に置かれてポリマーから溶剤分が気化して分離され、該溶剤は蒸気となって前記第1凝縮器15に供給させることになる。一方、純度が高められたポリマーは減圧容器11に滞留し、前記排出ポンプ18によって排出されて、前記給送路18aを通って次工程へ給送される。
【0047】
また、前記第1凝縮器15へは、前述の通り、約280℃、約0.014kg/cm2Gの溶剤の蒸気が供給され、該第1凝縮器15で凝縮された溶剤は、約110℃となって第2凝縮器16に供給される。なお、このときは、溶剤であるCyclohexaneは8,000kg/hrが回収される。
【0048】
以上の仕様によりエネルギー削減について検討する。ポリマー溶液として、シクロヘキサン8,000kg/hrとポリマー2,000kg/hrを重合させたほぼ60℃の高粘度流体を加熱器12に供給する。
現状における加熱器12に供給される熱媒入熱は2,227kwであり、冷却廃熱は2,111kwであり、合計で4,338kwのエネルギー消費量となっている。
【0049】
これに対して、前記予熱器13を設置した場合の揮発性物質除去装置の運転系統構造では、炭酸ガスの流量を10,000kg/hr、第1圧縮機21の吸入圧力を0.3kg/cm2Gとし、第2圧縮機22の吐出圧力を3.00.3kg/cm2Gとした場合、加熱器12に供給される熱媒入熱は、1,694kwとなり、冷却廃熱は1,336kw、第1圧縮機21と第2圧縮機22の駆動による電力消費量は212kw、膨張機25による回収駆動力は発電効率を25%とすると、−216×0.25=−54kwとなり、合計で3,188kwとなる。
【0050】
すなわち、予熱器13を設置し、炭酸ガスを熱媒体としてこの予熱器13に流通させ、減圧容器11で発生した溶剤の蒸気で熱媒体を加熱するとした揮発性物質除去装置の運転系統構造を採用すると、1,150kwのエネルギーを削減することができた。
【0051】
なお、この第1実施形態では、膨張機25による出力軸25の回転を第1圧縮機21の駆動力として説明したが、出力軸25の回転によって発電機を駆動して発電させ、その電力で第1圧縮機21の駆動モータを作動させるようにしても構わない。この場合、第2圧縮機22の駆動は外部電力によるモータの出力を用いることで、これら第1圧縮機21と第2圧縮機22の動作を安定させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明に係る揮発性物質除去装置によれば、ポリマー溶液から分離された溶剤の蒸気が保有する熱量を熱媒体の加熱に利用し、該熱媒体によって過熱蒸気を発生させるようにしたので、揮発性物質除去装置のエネルギー効率を向上させると共に、発生した過熱蒸気を原料と溶剤との重合工程等で利用することにより、さらに廃熱の有効利用に寄与する。
【符号の説明】
【0053】
10 揮発性物質除去装置
10a 原料供給路
11 減圧容器
12 加熱器
13 予熱器
15 第1凝縮器(凝縮器)
16 第2凝縮器
17 真空ポンプ
21 第1圧縮機
22 第2圧縮機
23 蒸発器
25 膨張機
31 発電機
32 蓄電池
33 周波数変換機
34 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧容器の上部に加熱器が装着され、高粘度流体を該加熱器を通過させて加熱した後に前記減圧容器供給し、該減圧容器内で揮発性の溶剤を蒸発させて高粘度流体から溶剤を分離させる揮発性物質除去装置の運転系統構造において、
前記加熱器の高粘度流体の流路の上流側に配設した予熱器と、
熱媒体により蒸気を発生させる蒸発器とからなり、
前記熱媒体を前記予熱器に流通させて高粘度流体を加熱し、
前記減圧容器内で発生した溶剤の蒸気で前記熱媒体を加熱するようにして、
該熱媒体を前記蒸発器と予熱器との間で循環させることを特徴とする揮発性物質除去装置の運転系統構造。
【請求項2】
減圧容器の上部に加熱器が装着され、高粘度流体を該加熱器を通過させて加熱した後に前記減圧容器供給し、該減圧容器内で揮発性の溶剤を蒸発させて高粘度流体から溶剤を分離させる揮発性物質除去装置の運転系統構造において、
前記加熱器の高粘度流体の流路の上流側に配設した予熱器と、
前記減圧容器内で発生した溶剤の蒸気を流通させて加熱した熱媒体を前記予熱器に供給する凝縮器と、
前記予熱器から排出される熱媒体が供給される第1圧縮機と、
前記第1圧縮機で加圧された熱媒体が供給される第2圧縮機と、
前記第2圧縮機で加圧された熱媒体が供給され蒸発器と、
前記蒸発器から排出される熱媒体が供給させる膨張機とからなり、
前記第1圧縮機の駆動力を前記膨張機の出力から得ることを特徴とする揮発性物質除去装置の運転系統構造。
【請求項3】
前記膨張機の出力で発電機を駆動し、発生した電力を前記第1圧縮機と第2圧縮機の駆動力に使用することを特徴とする請求項2に記載の揮発性物質除去装置の運転系統構造。
【請求項4】
前記発電機により発電された電力による前記第1圧縮機と第2圧縮機の駆動力に不足が生じる場合には買電によることを特徴とする請求項3に記載の揮発性物質除去装置の運転系統構造。
【請求項5】
前記熱媒体に圧縮炭酸ガスを利用したことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の揮発性物質除去装置の運転系統構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−107044(P2013−107044A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254586(P2011−254586)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】