揺動型歯車装置の歯車創成加工装置、及び該装置を用いた創成加工方法
【課題】揺動型歯車装置における回転体3の揺動運動を模してワークWを揺動運動させながら、その被加工面w1に歯形形成手段によって歯形を形成する場合に、歯形の修正加工を簡単かつ低コストで行えるようにする。
【解決手段】駆動軸22の傾斜部22aに回転盤25を回転自在に支承し、該駆動軸22の回転によって揺動運動させて、ワーク保持部26に保持したワークWを揺動型歯車装置における回転体3のように揺動運動させながら、該ワークWの被加工面w1をカッタホイール30によって切削して凹状歯5を順次、形成する。この際、傾斜部22aの傾斜角度θ’を、揺動型歯車装置の入力軸1の傾斜部1aの傾斜角度θよりも小さくすることで、凹状歯5の歯形にクラウニングのような修正加工を施すことができる。
【解決手段】駆動軸22の傾斜部22aに回転盤25を回転自在に支承し、該駆動軸22の回転によって揺動運動させて、ワーク保持部26に保持したワークWを揺動型歯車装置における回転体3のように揺動運動させながら、該ワークWの被加工面w1をカッタホイール30によって切削して凹状歯5を順次、形成する。この際、傾斜部22aの傾斜角度θ’を、揺動型歯車装置の入力軸1の傾斜部1aの傾斜角度θよりも小さくすることで、凹状歯5の歯形にクラウニングのような修正加工を施すことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車に相当する回転体を入力軸の傾斜部に取り付けて、これを揺動させつつ回転させるようにした揺動型歯車装置に関し、特に、歯車の創成加工の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の揺動型歯車装置は傾斜歯車減速機とも呼ばれ、その原理は知られていたが、互いに噛み合う歯車対の歯形を、高精度かつ低コストでの生産が困難な球面インボリュート歯形とする必要があり、実用化には至っていない。この点について特許文献1には、生産の困難な球面インボリュート歯形に替えて、歯車対の一方の歯形をローラ状のコロによって構成した凸状歯とし、他方の歯形はコロに噛み合う凹状歯としたものが提案されている。
【0003】
この提案に係わる揺動型歯車装置の概略構成および基本的な動作について図10を参照して説明する。図の例では四つの円錐傘歯車A1〜A4が設けられ、ハウジング6に固定された第1歯車A1と、出力軸2に取り付けられた第4歯車A4とが、互いに対向して入力軸1と同心状に配置されている。それらの中間において入力軸1には回転体3が支承され、この回転体3の軸方向両端にそれぞれ、前記第1歯車A1に噛み合う第2歯車A2と、前記第4歯車A4に噛み合う第3歯車A3と、が設けられている。
【0004】
前記回転体3は、入力軸1の軸芯Gに対し所定角度θだけ傾斜した軸芯Hを有する傾斜部1aに、回転自在に支承されており(尚、傾斜角度θは、以下に述べる各歯車間の歯数差、即ち基準ピッチ円直径の差に対応した偏心量になるように設定される)、入力軸1の回転により傾斜部1aが首振り運動をすると、この周りを揺動しながら回転して(以下、この回転体3の動きを揺動運動という)第2歯車A2を第1歯車A1に、また、第3歯車A3を第4歯車A4にそれぞれ噛み合わせていく。
【0005】
このとき回転体3の回転は第1および第2歯車A1,A2の噛み合いによって規定され、例えば第1、第2歯車A1,A2の歯数差が1とすると、揺動運動の1周期(入力軸1の1回転)につき両歯車A1,A2間で噛み合う歯が1つずれることになり、この分だけ回転体3が第1歯車A1に対し回転することで、減速がなされる。同様に第3歯車A3と第4歯車A4との間でも歯数差に応じた減速を行うことが可能であり、こうすれば二段階の減速がなされる。
【0006】
そうして二対の歯車対にそれぞれ歯数差を与えて、二段階の減速を行うようにすると、これによるトータルの減速比R、即ち入力軸1が1回転するときの出力軸2の回転数は、第1ないし第4歯車A1〜A4のそれぞれの歯数をn1〜n4として、 R=1−(n1×n3)/(n2×n4) と表される。
【0007】
より具体的に、n1=99、n2=100、n3=101、n4=100とすると、減速比R=1/10000となるし、n1=9、n2=10、n3=11、n4=10とすれば、減速比R=1/100となる。このように四つの歯車の歯数をそれぞれ任意に設定することによって高減速から低減速までの幅広い減速比が得られるものである。
【0008】
また、前記提案に係わる揺動型歯車装置では、上述したように各歯車A1〜A4の噛み合い部にコロ4aを介在させており、このコロ4aの転動によって噛み合い摩擦を吸収することができる。図11に模式的に示すように、コロ4aは、第1歯車A1(第4歯車A4)に形成された断面半円状の凹溝4bに転動自在に配設されていて、この凹溝4bから突出する部分が概略半円柱状の凸状歯4を形成している。一方、第2歯車A2(第3歯車A3)には、断面半円形状の凹溝からなる凹状歯5が形成されている。
【0009】
そして、前記のように揺動運動を行う回転体3が図に矢印Bで示すように回転すると、第2歯車A2(第3歯車A3)は矢印Cで示す方向に移動し、各凹状歯5と凸状歯4とを順に噛み合わせていく。このとき各凹状歯5と凸状歯4との間に生ずる摺動摩擦は、コロ4aの転動によって吸収されるようになり、コロ4aによる噛み合いに一定の与圧を与えてバックラッシュをゼロにすれば、噛み合い部の摩擦抵抗を低減し伝達効率と位置決め精度を高めることができる。
【0010】
前記のようにコロ4aと凹溝4bとにより凸状歯4を構成すれば、球面インボリュート歯形に比べて遥かに容易かつ低コストでの歯形の形成が可能になるが、それでも尚、断面半円状の凹溝4bや凹状歯5を正確なピッチおよび角度でかつ精密に形成するには、精密な治具等を用いて手作業により加工位置の割り出しを行う必要があり、作業者の熟練を要する等、大量生産には幾つかの課題が残されていた。
【0011】
この点について特許文献2には、ワークの加工位置の割り出しを正確にかつ連続的に行うことが可能な装置が開示されている。この装置は、揺動型歯車装置における入力軸を模擬する駆動軸を備え、該駆動軸の傾斜部に回転自在に支承した回転盤にワークを保持して、それを揺動型歯車装置における回転体と同じように揺動運動させながら、このワークの描く軌跡上に設けたカッタホイールによって切削することで、所要の歯形およびピッチの歯車を大量にかつ低コストで生産できるものである。
【特許文献1】特公平7−56324号公報
【特許文献2】特開平10−235519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで一般的に歯車においては、大トルクを受けて歯先が撓んだりしても干渉を生じないように、歯先を窄めたり歯面の中央部をふくらませるクラウニング等の修正加工が必要な場合があるが、前記後者の従来例(特許文献2)のような加工装置を用いて創成加工した後にさらに修正加工を施すとすれば、二度手間になってしまいコストの増大が懸念される。
【0013】
本発明は斯かる点に着目してなされたもので、その目的は、揺動型歯車装置のための歯車を創成加工することを前提として、その歯形の修正加工を簡単かつ低コストで行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成すべく本発明では、前記後者の従来例(特許文献2)のような加工装置を用いて歯車を創成加工する際に、揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を模して行われるワークの揺動運動の軌跡を少しだけ変更することによって、少し多めに切削して歯形を形成する(以下、オーバー創成ともいう)ようにしている。
【0015】
すなわち、本願の請求項1に係わる発明は、前記した従来例(特許文献1、2)と同様に、入力軸と、該入力軸に設けられた傾斜部に回転自在に支承された回転体とを備え、該回転体には固定側の第1歯車と噛み合う第2歯車と、出力側の第4歯車と噛み合う第3歯車とを形成して、前記入力軸の回転により回転体が揺動運動しながら各歯車間の噛み合い位置を変えるように構成した揺動型歯車装置に係わり、具体的には、その揺動型歯車装置の歯車を創成加工するための装置が対象である。
【0016】
その加工装置は、基本的に前記した後者の従来例(特許文献2)のものと同じく、動力源によって回転駆動される駆動軸と、該駆動軸に形成された傾斜部に回転自在に支承されるとともに、前記第2または第3歯車のいずれかに相当する被規定歯車が設けられた回転盤と、前記第1または第4歯車のいずれかに相当し、前記被規定歯車と噛み合うように設けられていて、前記駆動軸の回転による回転盤の揺動運動を、揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を再現するように規定する規定歯車と、を備えている。そして、前記回転盤には、前記回転体に相当するワークを、それが前記揺動型歯車装置に組み込まれたときの揺動中心点が回転盤の揺動中心点に一致するように保持する、ワーク保持部が設けられている。また、前記第1または第4歯車の歯形断面と略同一の断面形状を有し、前記回転盤の揺動運動と同期して前記ワークの歯すじ方向に移動する歯形形成手段を備えている。
【0017】
斯かる構成の前記歯車創成加工装置において本発明では、駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度を、揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0018】
前記構成の歯車創成加工装置では、まず、駆動軸の回転によりその傾斜部が首振り運動すると、これに支持された回転盤が揺動運動しながら、該回転盤の被規定歯車と規定歯車との噛み合い位置が変化するようになる。すなわち、傾斜部の1回転につき回転盤は一周期の揺動運動を行い、被規定歯車と規定歯車との歯数差相当分、回転する。ここで、回転盤に保持されているワークの揺動中心点(回転盤の揺動中心点)は、それが回転体として揺動型歯車装置に組み込まれたときの揺動中心点に一致しているから、当該ワークの揺動運動は、揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を再現するものとなる。
【0019】
そうして揺動運動するワークの被加工面は、揺動型歯車装置における第2若しくは第3歯車と同じ軌跡を描いて移動することになり、駆動軸の1回転、即ちワーク(回転盤)の揺動運動の1周期毎に、所定の角度位置に割り出しが行われる。よって、そのワーク(回転盤)の揺動運動と同期して、被加工面に沿って歯すじ方向に歯形形成手段を移動させれば、そこには第1若しくは第4歯車と噛み合うような、言い換えると前記第2若しくは第3歯車として望ましい歯形が創成される。
【0020】
こうしてワークの被加工面に歯形が一つずつ形成されてゆくときには、該ワークの揺動運動の1周期毎に被加工面と歯形形成手段とが、あたかも揺動型歯車装置における凹状歯と凸状歯との噛み合いを再現するように、接離を繰り返すことになる。そこで、便宜上、被加工面を固定してこれに対する歯形形成手段の相対運動を考えると、後述する実施形態に係わる図9を参照して示すように、歯形形成手段(図の例ではカッタホイール30)はワークWの被加工面において凹状歯5の1ピッチずつ移動する波形の軌跡を描くようになる。
【0021】
ここで、本発明の特徴として、創成加工装置の駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度は、揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度よりも小さく設定されているので、その傾斜部に支持されているワークの揺動運動の軌跡が変化し、該ワークの被加工面に対する前記のような歯形形成手段の相対移動軌跡は、図に破線で示すものから実線で示すように変化する。つまり、歯形形成手段がワークの被加工面に少し早めに接触し、少し遅れて離れるようになり、このことによって被加工面が少し多めに切削され、歯形のオーバー創成がなされる。
【0022】
斯くして本発明によれば、歯車の創成加工装置として従来例(特許文献2)と同様のものを使用しながら、そこにおいて駆動軸の傾斜部の傾斜角度を本来の角度、即ち揺動型歯車装置における入力軸の傾斜部の傾斜角度、よりも小さく設定するという非常に簡単な方法でもって、歯車の創成加工と同時にクラウニングに相当する修正加工も施すことができる。この修正加工のためにコストが上昇する心配はない。
【0023】
但し、傾斜部の傾斜角度を小さくするほど、形成される歯形において歯面のふくらみが大きくなり、歯車同士の接触面積が小さくなって面圧が高くなるから、摩擦損失や発熱量の増大を招くことになり、騒音の増大も懸念される。この点を考慮すれば、傾斜角度は、本来の角度(揺動型歯車装置の入力軸における傾斜部の傾斜角度)の70〜80%の範囲に設定することが好ましい(請求項2の発明)。
【0024】
見方を変えれば、上述した歯車創成加工装置の構造は従来例(特許文献2)のものと略同じであり、この観点から本発明は、そのような公知の歯車創成加工装置における駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度を、前記揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度よりも小さく設定することを特徴とし、その創成加工装置における回転盤のワーク保持部にワークを取り付けて、これを駆動軸の回転により揺動運動させながら、この揺動運動と同期して歯形形成手段をワークの被加工面に沿って移動させることによって、歯形を形成する創成加工方法である(請求項3の発明)。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明したように本発明によると、従来例(特許文献2)と同じく揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を模してワークを揺動運動させながら、その被加工面に沿って歯形形成手段を移動させ、これにより歯形を連続的に形成する場合に、当該ワークの揺動運動の軌跡を少しだけ変えることによって歯形をオーバー創成することができる。つまり、非常に簡単な方法で歯形の創成加工と同時に所望の修正加工を施すことができ、コストの上昇を招くこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を図面に基いて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
(揺動型歯車装置の構成)
まず、本発明に係わる揺動型歯車装置の構成を一例を挙げて具体的に説明する。尚、図10、11を参照して上述した従来例(特許文献1)と同一ないし相当部分については同一の符号を付す。
【0028】
図1に示す揺動型歯車装置は、前記従来例のものと同様に、減速比に対応した歯数に設定された第1ないし第4の四つの円錐傘歯車A1〜A4を備えており、そのうちの第1歯車A1および第2歯車A2と、第3歯車A3および第4歯車A4と、の二対の歯車対によって減速作用を行うものである。第1、第4歯車A1,A4は円柱コロ4aからなる凸状歯4を有し、それらと噛み合う第2、第3歯車A2,A3は断面円弧状の凹状歯5を有している。
【0029】
図の例では入力軸1と出力軸2とが同軸上に配置され、この出力軸2の内端(図の左端)には円盤状の拡径部が形成されるとともに、その端面の中央部に開口する中空部にベアリング10を介して、入力軸1の内端(図の右端)が回転自在に支持されている。この入力軸1には長手方向の略中央部にベアリング11を介して前記第1歯車A1が回転自在に取り付けられ、この第1歯車A1を介して入力軸1がハウジング6に支持されている。一方、出力軸2は、ベアリング12によってハウジング6に支持されており、前記拡径部の外周寄りの部位には第1歯車A1と対向するように、第4歯車A4が形成されている。
【0030】
そうして互いに同心状に配置され、かつ軸方向に対向する第1および第4歯車A1,A4の中間には、図2にも示すように回転体3が配置されていて、その軸方向両端に各々設けられている第2および第3歯車A2,A3が、前記第1および第4歯車A1,A4に噛み合っている。この回転体3は、一例としてベアリング13の外輪と一体に設けられて、入力軸1に形成された傾斜部1aに回転自在に支承されている。また、その傾斜部1aの軸芯Hの入力軸芯Gに対する傾斜角度θは、以下に述べる第1および第2歯車A1,A2間の歯数差に対応して、噛み合い位置の偏心量が所定量となるように設定されている。
【0031】
図1に示すように、第1、第2歯車A1,A2の各ピッチ円を通る共通球面の中心点と、第3、第4歯車A3,A4の各ピッチ円を通る共通球面の中心点とが一致する点を原点Oとし、同図における左右方向をX軸、上下方向をY軸とするXY座標(直交座標)のX軸上に入力軸の軸芯Gを配置する一方、原点Oから角度θ傾斜する軸上に前記傾斜部1aの軸芯Hを配置すると、図示の角度位置においては第1および第2歯車A1,A2の噛み合い位置が座標平面の第2象限に位置し、これに対し概ね180度の位相差を有する第3、第4歯車A3,A4の噛み合い位置は、第4象限に位置することになる。
【0032】
そして、入力軸1が回転すると、その軸芯Gの周りに傾斜部1aが首を振るような運動をし、これに支承されている回転体3は揺動しながら傾斜部1aの周りを図2に矢印Bで示すように回転して、第2歯車A2を第1歯車A1に、また、第3歯車A3を第4歯車A4にそれぞれ噛み合わせていく(図11も参照)。この回転体3の回転は第1および第2歯車A1,A2の噛み合いによって規定され、その1周期の揺動運動(入力軸1の1回転)につき第2歯車A2は、第1歯車A1との歯数差に相当する分だけ第1歯車A1に対して回転する。
【0033】
例えば、第1歯車A1と第2歯車A2との歯数差が1の場合には、入力軸1が1回転して揺動運動が1周期進むと、第1歯車A1と第2歯車A2との間で噛み合う歯が1つずれることになり、歯数差が2の場合は歯が2つずれることになる。同様にして歯数差がnの場合には、噛み合う歯がn個ずれることになり、そうして噛み合い位置のずれる分、回転体3は第1歯車A1、即ちハウジング6に対し回転し、これにより一段階の減速がなされる。同様に第3歯車A3と第4歯車A4との間でも歯数差に応じた減速を行うことは可能であり、こうすれば二段階の減速がなされる。
【0034】
図の例では、第3歯車A3と第4歯車A4との間には歯数差がなく、第1および第2歯車A1,A2の間にのみ歯数差を与えて、いわゆる一段減速によって所要の減速比を得るようにしたものである。より具体的には例えば第1ないし第4歯車A1〜A4のそれぞれの歯数n1〜n4を、n1=99,n2=100,n3=100,n4=100とすれば、最終減速比Rは、R=1/100となる。
【0035】
そうして一段減速としたことで、減速比を低くする場合でも入力軸1の傾斜部1aの傾斜角度θを小さめに設定して、回転体3の揺動運動の振幅を小さくすることができ、振動の低減に有利になる。これは、一段減速にすれば、二段減速に比べて基準ピッチ円直径は大きくなるものの、基準ピッチ円直径の差は小さくすることができ、同一減速比を小さい傾斜角で実現できるからである。
【0036】
また、第1および第2歯車A1,A2の間での一段減速とした場合、第3および第4歯車A3,A4の歯数については同一であればよく、減速比に影響を与えることなく任意に設定することができるので、前記のように第3、第4歯車A3,A4の歯数を第2歯車A2の歯数と同じにすれば、四つの歯車のうちの3つの歯数が同じになって、生産効率の向上に貢献する。すなわち、この例では第2および第3歯車A2,A3を、以下に詳細に説明するような創成加工によって回転体3の軸端に形成するようにしている。
【0037】
尚、そうして一段減速とする場合に歯数差を与えるのは第1、第2歯車A1,A2であっても、第3、第4歯車A3,A4であってもよいが、前記のように第1、第2歯車A1,A2間で減速することは歯車各部の潤滑性を維持する上でも好ましい。これは、第3、第4歯車A3,A4で減速を行うようにした場合、第1および第2歯車A1,A2の相互の噛み合い位置が変化せず、回転体3は揺動はするものの回転しないようになるので、その内部の潤滑剤が特定位置に偏り、各歯車A1〜A4の噛み合い部への供給が滞る虞れがあるからである。
【0038】
−第1歯車の凸状歯−
以下、前記のように一段の減速を行う第1および第2歯車A1,A2の噛み合いについて詳細に説明する。まず、第1歯車A1の凸状歯4は、図3に示すように円柱コロ4aを凹溝4bに位置決めして保持し、その歯すじ方向に歯厚、歯たけの等しい等高歯として構成している。同図(a)に軸芯Gに沿って見て示すように、コロ4aは第1歯車A1の歯数分だけ備えられ、その歯すじ方向の両端部においてリテーナ7,8により位置決めされている。また、コロ4aを保持する凹溝4bは、ピッチ円錐面上において、歯すじ方向全域において断面略一様のいわゆる等高凹歯として形成され、コロ4aを摺動可能に保持している。
【0039】
前記各リテーナ7,8はいずれもリング状であり、外側のリテーナ7においては内周側に、また、内側のリテーナ8においては外周側に、それぞれ突出する係止爪が全周に亘って形成され、この各係止爪が第1歯車A1の係止溝に係止されている。リテーナ7,8はポリアミド系あるいはポリイミド系の樹脂にて形成され、自身が所定の外力の作用により変形することで、コロ4aの変位を弾性的に許容するものである。
【0040】
そうして構成される凸状歯4(コロ4a)の歯すじ長さは、後述の如く回転体3の揺動運動に伴い凹状歯5との噛み合い位置が歯すじ方向にずれることを考慮して(図4を参照)、有効噛み合い長さが凹状歯5の歯すじよりも長く設定されている。また、コロ4aは、前記のように歯すじ方向両端をリテーナ7,8によって係止されているので、凸状歯4の長さはコロ4aの係止分の寸法も考慮して、さらに長く設定されている。
【0041】
つまり、凸状歯4の歯すじ長さは、凹状歯5の歯すじ長さに対して有効歯すじ長さの差分とリテーナ7,8による係止分の長さが加算された寸法として設定されている。また、コロ4aの外径は、歯すじ方向全域において同一径である。
【0042】
一方でコロ4aを保持する凹溝4bは、前記の如く歯すじ方向全域において断面略一様、つまり同一幅、同一深さの半円弧状とされているが、その断面形状は多重円弧にて形成するのが好ましい。すなわち、コロ4aよりも大径の2つの円弧でもって、その円弧中心をコロ4a中心に対してオフセットさせて凹溝4bの断面を形成し、この凹溝4bの開口寄りの部位にコロ4aが接触するようにする(図6を参照)。こうして凹溝4bとコロ4aとを歯すじ方向の線接触状態とすれば、その支持剛性を安定的に確保する上で有利になる。
【0043】
−第2歯車の凹状歯−
前記のような構成の凸状歯4と噛みう第2歯車A2の凹状歯5は、基本的には凸状歯4(コロ4a)に対応する断面円弧状のものであり、この例では、上述した凹溝4bと同じく多重円弧によって形成されている(図6を参照)。但し、上述したように第2歯車A2は第1歯車A1との間に歯数差を有し、入力軸1の傾斜部1aにより所定の偏心量を持っているため、図4に模式的に示すように、両者は噛み合い始めから噛み合い終わりまでの間、最大噛み合い位置を除いて歯すじ方向の母線が交差するようになり、仮に凹状歯5を歯すじ方向に単純な直線状とした場合は、その開口付近において干渉が生じる。
【0044】
そこで、第2歯車A2の歯形は、第1歯車A1の凸状歯4を創成転写した創成歯、或いは近似創成歯として形成される。この創成加工については後に詳しく説明するが、概略的には特許文献2に開示されているものと同じであり、揺動型歯車装置における回転体3の揺動運動を模して円筒状のワークを揺動運動させながら、その端面(被加工面)にカッタホイール等によって歯形を形成するものである。こうすれば、凸状歯4との干渉部も除去して適切な形状の歯形を形成することができる。
【0045】
より詳しくは、まず、図4には、第1および第2歯車A1,A2の噛み合いにあたって、第1歯車A1の凸状歯4としての等高歯に対し、第2歯車A2の凹状歯5を仮に同一深さ、同一幅の等高凹歯(干渉状況を説明する上での仮想形状)として、この第2歯車A2が矢印Bの方向に移動する際の凸状歯4(コロ4a)と凹状歯5との位置関係が、2次元的に示されている。図の例では、第2歯車A2の歯数が第1歯車A1よりも1つ多く、その分、基準ピッチ円直径が大きく設定されている。また、第1歯車A1の中心は入力軸1の軸芯Gであり、一方、第2歯車A2の自転の中心は入力軸1の傾斜部1aの軸芯Hであり、この中心点Hが中心点Gの周りを偏心回転するようになる。
【0046】
したがって、第2歯車A2が回転体3と共に矢印Bの方向に揺動運動、つまり偏心回転すると、等高歯としての凹状歯5とコロ4aとは所定の角度範囲Wにおいて噛み合うようになる。この場合、コロ4aと凹状歯5とは母線M1、M2に対して歯すじ方向に同一幅(同一径)に形成されているので、母線同士の重なる最大噛み合い位置W1においては適正な噛み合いとなるが、その前後の噛み合い角度位置では母線が互いに交差し、凹状歯5の開口付近とコロ4aとが互いに捻れの位置関係で干渉するようになる。
【0047】
その母線の交差角は、噛み合い始め位置W2および噛み合い終わり位置W3で最大になり、しかも交差方向が最大噛み合い位置W1を挟んで前後で逆の傾きとなるので、干渉部(図には斜線を付して示す)は、噛み合い始め位置W2から最大噛み合い位置W1までは、基準ピッチ円直径(PCD)の外側で凹状歯5の回転方向後側(図の右側)に現れる一方、基準ピッチ円直径の内側では回転方向前側(図の左側)に現れる。
【0048】
また、最大噛み合い位置W1から噛み合い終わり位置W3までの角度範囲においては、干渉部は、基準ピッチ円直径の外側と内側にてそれぞれ凹状歯5の回転方向につき前記とは逆の側に現れる。よって、凹状歯5の開口部には、噛み合い始め位置W2から噛み合い終わり位置W3までの噛み合い範囲Wにおいて、基準ピッチ円直径を基点に歯すじ方向内外にそれぞれ拡大する鼓形状の干渉部が生じることになる。
【0049】
そうした干渉部を前記のような創成加工によって除去した凹状歯5の歯形の一例を、図5に示す。この図には、前記した噛み合い範囲Wにおいて最大噛み合い位置W1を含む前後5つの噛み合い位置での干渉部の除去状態が模式的に示されている。すなわち、図中、歯底から開口端にかけて描かれている三角形状のエリアE1〜E4は、前記それぞれの角度位置ごとに発生する干渉部が除去された干渉除去部であって、第1エリアE1は、噛み合い始め位置における干渉除去部に相当し、基準ピッチ円PCDを挟んで回転方向前側および後側にそれぞれ位置する。
【0050】
また、第2エリアE2は、噛み合い始め位置W2と最大噛み合い位置W1間の中間角度位置での干渉除去部に相当するエリアを示し、第3および第4エリアE3、E4は、それぞれ最大噛み合い位置W3から噛み合い終わりに向かっての前記と同様の干渉除去エリアを示す。さらに、エリアE5は干渉の発生しない非干渉除去部であり、ここには最大噛み合い位置W1においてコロ4aの外周面が接触する。尚、前記のエリアE1〜E5は本来、連続した曲面となり、エリアを画成する線は存在しないが、説明の都合上、前記の角度位置ごとの除去エリアを示したものである。
【0051】
−凸状歯と凹状歯の噛み合いの軌跡−
ところで、上述したように第1および第2歯車A1,A2の間には歯数差が1つあり、これらの凸状歯4および凹状歯5の噛み合い位置は、回転体3の揺動運動に伴いその1周期毎に1つずつ、ずれてゆく。そこで、この凸状歯4(コロ4a)および凹状歯5の相対的な運動を便宜上、凹状歯5に対する凸状歯4の相対運動として見ると、図6(a)に模式的に示すようにコロ4aは、隣り合う凹状歯5の下方を1ピッチずつ、図では右側に移動しながら上下に往復する波形状の移動軌跡Tを描くようになる。
【0052】
その移動軌跡Tはコロ4aの歯すじ方向中央付近のものであり、上述したようにコロ4aと凹状歯5とは噛み合い範囲Wにおいて捻れの位置関係になるから、同図(b)や前記図4にも示されるようにコロ4aは、凹状歯5に対し捻れた状態で進入し、最大噛み合い位置で真っ直ぐになった後に、再び捻れた状態で離脱するようになる。尚、図6(b)の破線T1はコロ4aの歯すじ方向外側部の軌跡を示し、破線T2は同中央付近の軌跡を、また、破線T3は同内側部の軌跡をそれぞれ示している。
【0053】
そうして捻れた状態で噛み合うコロ4aとの干渉部が上述したように除去されて、凹状歯5の開口側は鼓形状になっているが、加工精度や組み付け精度の影響もあり、第1、第2歯車A1,A2間に大きなトルクが加わったときには、図7に模式的に矢印で示すように、凸状歯4(コロ4a)に凹状歯5の歯すじ方向の端縁部(図では右側のエッジ部)が食い込んで、接触面圧が非常に高くなることがあり、信頼性への影響が懸念されていた。
【0054】
斯かる点に着目し、この実施形態に係わる揺動型歯車装置では、以下に説明するように従来同様の創成加工装置Mを用いて歯車の創成加工を行う際に、その一部の設定を変更することによって、クラウニングに相当する修正加工を施すことができるものである。
【0055】
(凹状歯の創成加工)
以下に、上述した第2歯車A2の凹状歯5を形成する場合について図8、9を参照して詳細に説明する。まず、歯車創生加工装置Mの構造は図8に断面で示すように、床上に設置される筐体20の天面が、上下方向の軸線Z周りに回動可能な旋回テーブル21とされていて、この旋回テーブル21の略中央部に開口する丸穴21aを貫通する駆動軸22が上方に向かって突出している。この駆動軸22は、その軸芯(軸線Z)の周りに回転自在となるようにベアリング23によって筐体20に支持されている。
【0056】
そうして旋回テーブル21から上方に突出する駆動軸22の上部には、軸線Zに対し所定角度θ’傾斜した軸芯Vを有する傾斜部22aが形成されていて、この傾斜部22aにはベアリング24を介して回転自在に回転盤25が支承されている。回転盤25の上部には、上述した揺動型歯車装置において回転体3となる円筒状のワークWを取り付けるための治具(ワーク保持部26)が取り付けられている。
【0057】
また、そのワーク保持部26の斜め上方に離間して、歯形形成手段としてのカッタホイール30が設けられている。このカッタホイール30は、NC制御される位置決め装置31によって支持されており、ワーク保持部26に取り付けられたワークWに対して近接遠退が自在となっている。この位置決め装置31によって、後述するようにカッタホイール30をワークWの上端の円錐面w1(被加工面)に沿って、その半径方向(図の概略左右方向)に往復動させることができる。
【0058】
前記旋回テーブル21は、図示は省略するが、例えばボールねじやウォームギヤ等を介して、電動モータ等のアクチュエータにより軸線Z周りに旋回されるようになっており、その旋回位置を検出する例えばレゾルバ方式のセンサーも設けられている。旋回テーブル21の旋回動作は、ワークWに形成する歯車の歯数や寸法等、使用を変更する際に必要になるもので、特定の仕様の歯車を加工する際には旋回テーブル21は所定の角度位置に固定される。
【0059】
また、旋回テーブル21の上面には、中央に丸穴27aの開口する円板部材27が重ね合わされていて、その上面外周寄りの部位には、揺動型歯車装置の第1歯車A1に相当する相似形状の円錐傘歯車からなる、規定歯車27bが一体に設けられている。この規定歯車27bは、後述する回転盤25の被規定歯車28aと噛み合うものであり、上述した揺動型歯車装置において第1および第2歯車A1,A2の噛み合いが回転体3の回転を規定するように、回転盤25の回転を規定する。
【0060】
駆動軸22は、上述した揺動型歯車装置の入力軸1に相当するもので、その下端部には図示は省略するが動力源として電動モータ等が接続されるとともに、その近傍には駆動軸22の回転角を検出する例えばレゾルバ方式の回転センサーが設けられている。そして、電動モータ等により駆動軸22が回転駆動されるとその上部の傾斜部22aは、揺動型歯車装置における入力軸1の傾斜部1aと同じように首振り運動をする。
【0061】
図の例では回転盤25は、前記駆動軸22の傾斜部22aに外挿されて回転自在に支承されている円筒状ボス部25aと、その上端から径方向外方に広がる円盤状の本体部25bとを有し、ボス部25aに下方から外嵌めされて一体に回転する円板部材28の上面が、本体部25bの下面に接している。この円板部材28の下面外周寄りの部位には、揺動型歯車装置の第2歯車A2に相当する相似形状の円錐傘歯車からなる、被規定歯車28aが一体に形成されて、下方に対向する規定歯車27bと噛み合っている。
【0062】
これら規定歯車27bおよび被規定歯車28aによって構成される歯車対は、上述した揺動型歯車装置における第1および第2歯車A1,A2からなる減速歯車対に相当し、駆動軸22の回転による回転盤25の揺動運動を、揺動型歯車装置における回転体3の揺動運動を再現するように規定する。すなわち、駆動軸22の1回転する毎に回転盤25は、規定歯車27bおよび被規定歯車28aの歯数差相当の角度だけ回転し、そのワーク保持具26に取り付けられているワークWを、駆動軸22の傾斜軸芯Vの周りに回転させて、その上端面w1において所要の角度で加工位置を割り出す。
【0063】
尚、規定歯車27bおよび被規定歯車28aは、揺動型歯車装置の第1、第2歯車A1,A2と同様に一方を凹溝およびコロからなる凸状歯とし、他方を凹状歯として構成することができ、こうすれば、ニードルローラとして機能するコロの介在によって噛み合い部の摩擦が軽減される。この場合、各噛み合い部に与圧を与えることにより、バックラッシュを実質的に解消することができる。
【0064】
一方、回転盤25の上部に配設されているワーク保持部26は、回転盤25のボス部25aの上端開口を上方から覆う円盤状のベース部26aと、該ベース部26aの上面中央から傾斜軸芯Vに沿って上方に延びる円柱状の固定部26bとを有し、さらにその固定部26bの上面中央から上方に突出するように円柱状の内嵌合部26cが一体に形成されている。この内嵌合部26cにワークWの筒孔を外嵌めして固定し、その上方からエンドキャップ(図示省略)を嵌め込んで、固定部26bとの間にワークWを挟持する。
【0065】
そうしてワーク保持部26に取り付けられたワークWは、回転盤25と一体に揺動運動を行うが、その揺動中心点Qは、当該ワークWの上端面w1に第2歯車A2を形成し、回転体3として揺動型歯車装置に組み込んだときに、この回転体3の揺動中心点(図1に示す点O)に一致するように位置づけられている。このため、ワークWの揺動運動は、揺動型歯車装置における回転体3の揺動運動を再現するものとなり、その上端面w1は第2歯車A2の形成された円錐面と同じ軌跡を描いて移動するようになる。
【0066】
そこで、そのように移動するワークWの上端面w1において、前記揺動運動の1周期毎に順次、割り出される加工位置にて、当該上端面w1に沿って半径方向(歯すじ方向)にカッタホイール30を所定ストロークで往復動させることにより、連続的に凹状歯5を形成することができる。尚、図示のようにカッタホイール30のストロークの方向は、水平面に対してθ’/2°傾斜している。
【0067】
また、図の例ではカッタホイール30は、円周端部の断面形状が凹状歯5の断面形状と略同じ多重円弧状をなす砥石車であり、これを回転させながら前記のように歯すじ方向へ移動させることで、凹状歯5を削り出すものであるが、歯形形成手段としてはカッタホイール30以外にもエンドミル(ボールエンドミル)や放電電極等を使用可能である。
【0068】
−創成加工装置の動作−
以下、上述の如く構成された歯車加工装置Mの動作について説明する。まず、作業者が上述したワーク保持部26の内嵌合部26cにワークWを外嵌めし、上方からエンドキャップ29を嵌め込んで、図8のように固定する。こうしてワーク保持部26に取り付けたワークWは回転盤25と一体に揺動運動をし、その揺動中心点Qは、当該ワークWを回転体3として揺動型歯車装置に組み込んだときの、当該回転体3の揺動中心点(図1に示す点O)に一致する。
【0069】
そして、歯車加工装置Mを始動して駆動軸22を回転させると、その傾斜部22aが首振り運動をし、ここに支承されている回転盤25が揺動運動をして、この回転盤25に設けられた被規定歯車28aと旋回テーブル20の規定歯車27bとの噛み合い位置が変化してゆく。このときにワークWの揺動運動は、揺動型歯車装置における回転体3の揺動運動を再現するものとなり、傾斜部22aの1回転につき回転盤25が一周期の揺動運動を行って、規定歯車27bと被規定歯車28aとの歯数差相当分、回転する。
【0070】
例えば規定歯車27bの歯数を100とし、被規定歯車28aの歯数を101とすると、駆動軸22が1回転するときには、被規定歯車27bに対して被規定歯車28aが1/100回転する。この回転盤25の回転変位はワーク保持部26に伝えられ、円錐面であるワークWの上端面w1において3.6°ずつ加工位置の割り出しが行われる。つまり、ワークWの上端面w1は、揺動型歯車装置における第2歯車A2の形成面と同様の軌跡を描いて移動し、ここにおいて凹状歯5のピッチ相当の角度で加工位置の割り出しが行われる。
【0071】
このようなワークWの揺動運動に同期し、その上端面w1に沿ってカッタホイール30が往復動すると、このカッタホイール30の描く軌跡が仮想的に、ワークWと対をなす第1歯車A1の凸状歯4(コロ4a)となり、この仮想のコロ4a、即ちカッタホイール30によって切削されるワークWの上端面w1には、揺動型歯車装置において第1歯車A1の凸状歯4と適切に噛み合うような、即ち上述した干渉除去部を有する凹状歯5の歯形が一つずつ形成されることになる。
【0072】
このとき、ワークWの揺動運動の1周期毎にその上端面w1と仮想のコロ4a(カッタホイール30)とは接離を繰り返すようになり、両者の相対的な運動は、図6を参照して上述した凹状歯5と凸状歯4(コロ4a)との相対運動と同じものになる。すなわち、説明の便宜上、ワークWの上端面w1を固定してこれに対する仮想のコロ4a(カッタホイール30)の軌跡を見れば、図9に模式的に示すように、カッタホイール30によって構成される仮想のコロ4aは、ワークWの上端面w1においてその円周方向に所定ピッチで移動する波形状の軌跡を描くようになる。
【0073】
同図には、図8におけるワークWとカッタホイール30との位置関係に合わせて、図6とは反対に凹状歯5(ワークW)を下側にし、仮想のコロ4a(カッタホイール30)を上側にして、その仮想のコロ4aの描く軌跡を示している。また、図に破線で示す軌跡Tは、駆動軸22の傾斜部22aの傾斜角度θ’が、揺動型歯車装置における入力軸1の傾斜部1aの傾斜角度θと同じ(θ’=θ)従来一般的な場合であり、一方、実線で示す軌跡T’は、この実施形態のようにθ’<θとした場合である。
【0074】
すなわち、仮にθ’=θとした場合は、ワークWの上端面w1に対する仮想のコロ4a(カッタホイール30)の軌跡Tは、揺動型歯車装置における凸状歯4(コロ4a)の凹状歯5に対する軌跡T(図6を参照)と同じになり、上述したようにコロ4aの形状に対応する基本的な歯形が創成されることになる。一方、θ’<θとするとともに、切削深さは同じになるようにカッタホイール30をワークWの上端面w1に近づければ、仮想のコロ4a(カッタホイール30)の移動軌跡は実線T’のようになり、それは少し早めに被加工面w1に接触し、少し遅れて離れるようになる。
【0075】
このような軌跡T’を描く仮想のコロ4a、即ちカッタホイール30によって、図9(a)には細かいハッチングを入れて示すが、歯形の側壁部分が多めに削られるようになる(オーバー創成される)ことから、同図(b)にも示すように凹状歯5は、実際のコロ4aの形状に対応する基本的な歯形(仮想線で示す)に比べてやや幅の広いものとなり、換言すれば、その基本的な歯形を創成した後にクラウニング等の修正加工が施されたかのような形状になる。
【0076】
そうして第2歯車A2の凹状歯5がオーバー創成されれば、揺動型歯車装置において第1、第2歯車A1,A2間に大きなトルクが作用するときでも、上述したように凸状歯4(コロ4a)に凹状歯5のエッジが食い込むことはなくなり、両者の接触面圧は、前記した図7に仮想線で示すように歯すじ方向の中央付近で高く、そこから両端側に向かって徐々に低下するようになる。つまり、図に実線で示す従来例のような凹状歯5のエッジ部における接触面圧の過度の上昇を解消することができる。
【0077】
以上よりこの実施形態では、基本的には公知の構造の創成加工装置Mを使用し、揺動型歯車装置における回転体3の揺動運動を模してワークWを揺動運動させながら、この揺動運動に同期してカッタホイール30を往復動作させることにより、当該ワークWの上端面w1における加工位置の割り出しおよび切削加工が連続的に行われて、高い生産性を実現できる。
【0078】
しかも、その創成加工装置Mにおける駆動軸22の傾斜部22aの傾斜角度θ’を本来の角度、即ち揺動型歯車装置における入力軸1の傾斜部1aの傾斜角度θよりも小さく設定するだけで、クラウニングのような歯形の修正加工も施すことができ、非常に簡単で、コストの上昇を招くことなく信頼性の向上に寄与する。
【0079】
また、そうして設定する傾斜角度θ’を小さくし過ぎると、凹状歯5の歯面のふくらみが大きくなり過ぎて、中央付近での接触面圧が高くなってしまうから、摩擦損失や発熱量の増大が懸念されるが、この点はθ’をθの70〜80%の範囲(例えばθ=4°に対してθ’=3°)に設定すれば問題は生じない。
【0080】
尚、本発明に係わる揺動型歯車装置や歯車創成加工装置の構成は、何ら前記の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば前記の実施形態においては、揺動型歯車装置の構成として一段減速のものを例示したが、これは二段減速であってもよいことは勿論である。
【0081】
また、前記の実施形態では第2歯車A2を創成加工する場合について説明したが、本発明に係る創成加工装置Mによれば第3歯車A3の創成加工も同様に行える。この場合は、ワーク保持部26を別の仕様のものに取り替えて揺動中心点Qの位置をずらすとともに、必要に応じて旋回テーブル21の動作によりピッチを調整する。すなわち、駆動軸22の1回転による加工位置の割り出しに同期させて旋回テーブル21を所定角度旋回させて、回転盤25の回転角度を変えるようにすればよい。
【0082】
このような回転角度の制御は、歯車の直径や歯数、歯のピッチ等に対応した回転角度の増減量を予め加工装置Mのコントローラに設定しておき、作業者が歯車の仕様を入力することによって自動的に電動モータが制御され、旋回テーブル21が回転するようにすればよい。
【0083】
さらに前記実施形態では歯車創成加工装置Mの駆動軸22を、その軸芯Zが上下を向くように配設しているが、これを水平に向けることも可能である。但し上下に向けた方が自重による曲げ荷重の影響を受け難く、ワークWの割り出し精度を維持する上で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係わる揺動型歯車装置の構成の一例を示す断面図。
【図2】図1の上方から見て第1および第2歯車の噛み合いを示す斜視図。
【図3】入力軸芯に沿って見て第1歯車の構成を示す正面図(a)と、その一部を拡大して示す図(b)。
【図4】第1および第2歯車の噛み合いにおける凸状歯(コロ)と凹状歯との関係を2次元的に示す模式図。
【図5】干渉部の除去された凹状歯の歯形の一例を示す拡大斜視図。
【図6】凹状歯に対する凸状歯(コロ)の相対運動を模式的に示す説明図。
【図7】凹状歯と凸状歯(コロ)との噛み合いの際の接触面圧の一例を示す説明図。
【図8】本発明に係わる歯車創成加工装置の要部構成を示す断面図。
【図9】ワークの被加工面に対するカッタホイールの相対運動を模式的に示す図。
【図10】従来の揺動型歯車装置の断面図(図1相当図)。
【図11】従来の揺動型歯車装置の噛み合い部の説明図。
【符号の説明】
【0085】
A1〜A4 揺動型歯車装置の第1ないし第4の円錐傘歯車
G 同入力軸の軸芯
H 同傾斜部の軸芯
1 同入力軸
1a 同傾斜部
3 同回転体
W ワーク
M 歯車創成加工装置
Z 同駆動軸の軸芯
V 同傾斜部の軸芯
22 同駆動軸
22a 同傾斜部
25 同回転盤
26 同ワーク保持部
27b 同規定歯車
28a 同被規定歯車
30 同カッタホイール(歯形形成手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車に相当する回転体を入力軸の傾斜部に取り付けて、これを揺動させつつ回転させるようにした揺動型歯車装置に関し、特に、歯車の創成加工の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の揺動型歯車装置は傾斜歯車減速機とも呼ばれ、その原理は知られていたが、互いに噛み合う歯車対の歯形を、高精度かつ低コストでの生産が困難な球面インボリュート歯形とする必要があり、実用化には至っていない。この点について特許文献1には、生産の困難な球面インボリュート歯形に替えて、歯車対の一方の歯形をローラ状のコロによって構成した凸状歯とし、他方の歯形はコロに噛み合う凹状歯としたものが提案されている。
【0003】
この提案に係わる揺動型歯車装置の概略構成および基本的な動作について図10を参照して説明する。図の例では四つの円錐傘歯車A1〜A4が設けられ、ハウジング6に固定された第1歯車A1と、出力軸2に取り付けられた第4歯車A4とが、互いに対向して入力軸1と同心状に配置されている。それらの中間において入力軸1には回転体3が支承され、この回転体3の軸方向両端にそれぞれ、前記第1歯車A1に噛み合う第2歯車A2と、前記第4歯車A4に噛み合う第3歯車A3と、が設けられている。
【0004】
前記回転体3は、入力軸1の軸芯Gに対し所定角度θだけ傾斜した軸芯Hを有する傾斜部1aに、回転自在に支承されており(尚、傾斜角度θは、以下に述べる各歯車間の歯数差、即ち基準ピッチ円直径の差に対応した偏心量になるように設定される)、入力軸1の回転により傾斜部1aが首振り運動をすると、この周りを揺動しながら回転して(以下、この回転体3の動きを揺動運動という)第2歯車A2を第1歯車A1に、また、第3歯車A3を第4歯車A4にそれぞれ噛み合わせていく。
【0005】
このとき回転体3の回転は第1および第2歯車A1,A2の噛み合いによって規定され、例えば第1、第2歯車A1,A2の歯数差が1とすると、揺動運動の1周期(入力軸1の1回転)につき両歯車A1,A2間で噛み合う歯が1つずれることになり、この分だけ回転体3が第1歯車A1に対し回転することで、減速がなされる。同様に第3歯車A3と第4歯車A4との間でも歯数差に応じた減速を行うことが可能であり、こうすれば二段階の減速がなされる。
【0006】
そうして二対の歯車対にそれぞれ歯数差を与えて、二段階の減速を行うようにすると、これによるトータルの減速比R、即ち入力軸1が1回転するときの出力軸2の回転数は、第1ないし第4歯車A1〜A4のそれぞれの歯数をn1〜n4として、 R=1−(n1×n3)/(n2×n4) と表される。
【0007】
より具体的に、n1=99、n2=100、n3=101、n4=100とすると、減速比R=1/10000となるし、n1=9、n2=10、n3=11、n4=10とすれば、減速比R=1/100となる。このように四つの歯車の歯数をそれぞれ任意に設定することによって高減速から低減速までの幅広い減速比が得られるものである。
【0008】
また、前記提案に係わる揺動型歯車装置では、上述したように各歯車A1〜A4の噛み合い部にコロ4aを介在させており、このコロ4aの転動によって噛み合い摩擦を吸収することができる。図11に模式的に示すように、コロ4aは、第1歯車A1(第4歯車A4)に形成された断面半円状の凹溝4bに転動自在に配設されていて、この凹溝4bから突出する部分が概略半円柱状の凸状歯4を形成している。一方、第2歯車A2(第3歯車A3)には、断面半円形状の凹溝からなる凹状歯5が形成されている。
【0009】
そして、前記のように揺動運動を行う回転体3が図に矢印Bで示すように回転すると、第2歯車A2(第3歯車A3)は矢印Cで示す方向に移動し、各凹状歯5と凸状歯4とを順に噛み合わせていく。このとき各凹状歯5と凸状歯4との間に生ずる摺動摩擦は、コロ4aの転動によって吸収されるようになり、コロ4aによる噛み合いに一定の与圧を与えてバックラッシュをゼロにすれば、噛み合い部の摩擦抵抗を低減し伝達効率と位置決め精度を高めることができる。
【0010】
前記のようにコロ4aと凹溝4bとにより凸状歯4を構成すれば、球面インボリュート歯形に比べて遥かに容易かつ低コストでの歯形の形成が可能になるが、それでも尚、断面半円状の凹溝4bや凹状歯5を正確なピッチおよび角度でかつ精密に形成するには、精密な治具等を用いて手作業により加工位置の割り出しを行う必要があり、作業者の熟練を要する等、大量生産には幾つかの課題が残されていた。
【0011】
この点について特許文献2には、ワークの加工位置の割り出しを正確にかつ連続的に行うことが可能な装置が開示されている。この装置は、揺動型歯車装置における入力軸を模擬する駆動軸を備え、該駆動軸の傾斜部に回転自在に支承した回転盤にワークを保持して、それを揺動型歯車装置における回転体と同じように揺動運動させながら、このワークの描く軌跡上に設けたカッタホイールによって切削することで、所要の歯形およびピッチの歯車を大量にかつ低コストで生産できるものである。
【特許文献1】特公平7−56324号公報
【特許文献2】特開平10−235519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで一般的に歯車においては、大トルクを受けて歯先が撓んだりしても干渉を生じないように、歯先を窄めたり歯面の中央部をふくらませるクラウニング等の修正加工が必要な場合があるが、前記後者の従来例(特許文献2)のような加工装置を用いて創成加工した後にさらに修正加工を施すとすれば、二度手間になってしまいコストの増大が懸念される。
【0013】
本発明は斯かる点に着目してなされたもので、その目的は、揺動型歯車装置のための歯車を創成加工することを前提として、その歯形の修正加工を簡単かつ低コストで行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成すべく本発明では、前記後者の従来例(特許文献2)のような加工装置を用いて歯車を創成加工する際に、揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を模して行われるワークの揺動運動の軌跡を少しだけ変更することによって、少し多めに切削して歯形を形成する(以下、オーバー創成ともいう)ようにしている。
【0015】
すなわち、本願の請求項1に係わる発明は、前記した従来例(特許文献1、2)と同様に、入力軸と、該入力軸に設けられた傾斜部に回転自在に支承された回転体とを備え、該回転体には固定側の第1歯車と噛み合う第2歯車と、出力側の第4歯車と噛み合う第3歯車とを形成して、前記入力軸の回転により回転体が揺動運動しながら各歯車間の噛み合い位置を変えるように構成した揺動型歯車装置に係わり、具体的には、その揺動型歯車装置の歯車を創成加工するための装置が対象である。
【0016】
その加工装置は、基本的に前記した後者の従来例(特許文献2)のものと同じく、動力源によって回転駆動される駆動軸と、該駆動軸に形成された傾斜部に回転自在に支承されるとともに、前記第2または第3歯車のいずれかに相当する被規定歯車が設けられた回転盤と、前記第1または第4歯車のいずれかに相当し、前記被規定歯車と噛み合うように設けられていて、前記駆動軸の回転による回転盤の揺動運動を、揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を再現するように規定する規定歯車と、を備えている。そして、前記回転盤には、前記回転体に相当するワークを、それが前記揺動型歯車装置に組み込まれたときの揺動中心点が回転盤の揺動中心点に一致するように保持する、ワーク保持部が設けられている。また、前記第1または第4歯車の歯形断面と略同一の断面形状を有し、前記回転盤の揺動運動と同期して前記ワークの歯すじ方向に移動する歯形形成手段を備えている。
【0017】
斯かる構成の前記歯車創成加工装置において本発明では、駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度を、揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0018】
前記構成の歯車創成加工装置では、まず、駆動軸の回転によりその傾斜部が首振り運動すると、これに支持された回転盤が揺動運動しながら、該回転盤の被規定歯車と規定歯車との噛み合い位置が変化するようになる。すなわち、傾斜部の1回転につき回転盤は一周期の揺動運動を行い、被規定歯車と規定歯車との歯数差相当分、回転する。ここで、回転盤に保持されているワークの揺動中心点(回転盤の揺動中心点)は、それが回転体として揺動型歯車装置に組み込まれたときの揺動中心点に一致しているから、当該ワークの揺動運動は、揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を再現するものとなる。
【0019】
そうして揺動運動するワークの被加工面は、揺動型歯車装置における第2若しくは第3歯車と同じ軌跡を描いて移動することになり、駆動軸の1回転、即ちワーク(回転盤)の揺動運動の1周期毎に、所定の角度位置に割り出しが行われる。よって、そのワーク(回転盤)の揺動運動と同期して、被加工面に沿って歯すじ方向に歯形形成手段を移動させれば、そこには第1若しくは第4歯車と噛み合うような、言い換えると前記第2若しくは第3歯車として望ましい歯形が創成される。
【0020】
こうしてワークの被加工面に歯形が一つずつ形成されてゆくときには、該ワークの揺動運動の1周期毎に被加工面と歯形形成手段とが、あたかも揺動型歯車装置における凹状歯と凸状歯との噛み合いを再現するように、接離を繰り返すことになる。そこで、便宜上、被加工面を固定してこれに対する歯形形成手段の相対運動を考えると、後述する実施形態に係わる図9を参照して示すように、歯形形成手段(図の例ではカッタホイール30)はワークWの被加工面において凹状歯5の1ピッチずつ移動する波形の軌跡を描くようになる。
【0021】
ここで、本発明の特徴として、創成加工装置の駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度は、揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度よりも小さく設定されているので、その傾斜部に支持されているワークの揺動運動の軌跡が変化し、該ワークの被加工面に対する前記のような歯形形成手段の相対移動軌跡は、図に破線で示すものから実線で示すように変化する。つまり、歯形形成手段がワークの被加工面に少し早めに接触し、少し遅れて離れるようになり、このことによって被加工面が少し多めに切削され、歯形のオーバー創成がなされる。
【0022】
斯くして本発明によれば、歯車の創成加工装置として従来例(特許文献2)と同様のものを使用しながら、そこにおいて駆動軸の傾斜部の傾斜角度を本来の角度、即ち揺動型歯車装置における入力軸の傾斜部の傾斜角度、よりも小さく設定するという非常に簡単な方法でもって、歯車の創成加工と同時にクラウニングに相当する修正加工も施すことができる。この修正加工のためにコストが上昇する心配はない。
【0023】
但し、傾斜部の傾斜角度を小さくするほど、形成される歯形において歯面のふくらみが大きくなり、歯車同士の接触面積が小さくなって面圧が高くなるから、摩擦損失や発熱量の増大を招くことになり、騒音の増大も懸念される。この点を考慮すれば、傾斜角度は、本来の角度(揺動型歯車装置の入力軸における傾斜部の傾斜角度)の70〜80%の範囲に設定することが好ましい(請求項2の発明)。
【0024】
見方を変えれば、上述した歯車創成加工装置の構造は従来例(特許文献2)のものと略同じであり、この観点から本発明は、そのような公知の歯車創成加工装置における駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度を、前記揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度よりも小さく設定することを特徴とし、その創成加工装置における回転盤のワーク保持部にワークを取り付けて、これを駆動軸の回転により揺動運動させながら、この揺動運動と同期して歯形形成手段をワークの被加工面に沿って移動させることによって、歯形を形成する創成加工方法である(請求項3の発明)。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明したように本発明によると、従来例(特許文献2)と同じく揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を模してワークを揺動運動させながら、その被加工面に沿って歯形形成手段を移動させ、これにより歯形を連続的に形成する場合に、当該ワークの揺動運動の軌跡を少しだけ変えることによって歯形をオーバー創成することができる。つまり、非常に簡単な方法で歯形の創成加工と同時に所望の修正加工を施すことができ、コストの上昇を招くこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を図面に基いて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
(揺動型歯車装置の構成)
まず、本発明に係わる揺動型歯車装置の構成を一例を挙げて具体的に説明する。尚、図10、11を参照して上述した従来例(特許文献1)と同一ないし相当部分については同一の符号を付す。
【0028】
図1に示す揺動型歯車装置は、前記従来例のものと同様に、減速比に対応した歯数に設定された第1ないし第4の四つの円錐傘歯車A1〜A4を備えており、そのうちの第1歯車A1および第2歯車A2と、第3歯車A3および第4歯車A4と、の二対の歯車対によって減速作用を行うものである。第1、第4歯車A1,A4は円柱コロ4aからなる凸状歯4を有し、それらと噛み合う第2、第3歯車A2,A3は断面円弧状の凹状歯5を有している。
【0029】
図の例では入力軸1と出力軸2とが同軸上に配置され、この出力軸2の内端(図の左端)には円盤状の拡径部が形成されるとともに、その端面の中央部に開口する中空部にベアリング10を介して、入力軸1の内端(図の右端)が回転自在に支持されている。この入力軸1には長手方向の略中央部にベアリング11を介して前記第1歯車A1が回転自在に取り付けられ、この第1歯車A1を介して入力軸1がハウジング6に支持されている。一方、出力軸2は、ベアリング12によってハウジング6に支持されており、前記拡径部の外周寄りの部位には第1歯車A1と対向するように、第4歯車A4が形成されている。
【0030】
そうして互いに同心状に配置され、かつ軸方向に対向する第1および第4歯車A1,A4の中間には、図2にも示すように回転体3が配置されていて、その軸方向両端に各々設けられている第2および第3歯車A2,A3が、前記第1および第4歯車A1,A4に噛み合っている。この回転体3は、一例としてベアリング13の外輪と一体に設けられて、入力軸1に形成された傾斜部1aに回転自在に支承されている。また、その傾斜部1aの軸芯Hの入力軸芯Gに対する傾斜角度θは、以下に述べる第1および第2歯車A1,A2間の歯数差に対応して、噛み合い位置の偏心量が所定量となるように設定されている。
【0031】
図1に示すように、第1、第2歯車A1,A2の各ピッチ円を通る共通球面の中心点と、第3、第4歯車A3,A4の各ピッチ円を通る共通球面の中心点とが一致する点を原点Oとし、同図における左右方向をX軸、上下方向をY軸とするXY座標(直交座標)のX軸上に入力軸の軸芯Gを配置する一方、原点Oから角度θ傾斜する軸上に前記傾斜部1aの軸芯Hを配置すると、図示の角度位置においては第1および第2歯車A1,A2の噛み合い位置が座標平面の第2象限に位置し、これに対し概ね180度の位相差を有する第3、第4歯車A3,A4の噛み合い位置は、第4象限に位置することになる。
【0032】
そして、入力軸1が回転すると、その軸芯Gの周りに傾斜部1aが首を振るような運動をし、これに支承されている回転体3は揺動しながら傾斜部1aの周りを図2に矢印Bで示すように回転して、第2歯車A2を第1歯車A1に、また、第3歯車A3を第4歯車A4にそれぞれ噛み合わせていく(図11も参照)。この回転体3の回転は第1および第2歯車A1,A2の噛み合いによって規定され、その1周期の揺動運動(入力軸1の1回転)につき第2歯車A2は、第1歯車A1との歯数差に相当する分だけ第1歯車A1に対して回転する。
【0033】
例えば、第1歯車A1と第2歯車A2との歯数差が1の場合には、入力軸1が1回転して揺動運動が1周期進むと、第1歯車A1と第2歯車A2との間で噛み合う歯が1つずれることになり、歯数差が2の場合は歯が2つずれることになる。同様にして歯数差がnの場合には、噛み合う歯がn個ずれることになり、そうして噛み合い位置のずれる分、回転体3は第1歯車A1、即ちハウジング6に対し回転し、これにより一段階の減速がなされる。同様に第3歯車A3と第4歯車A4との間でも歯数差に応じた減速を行うことは可能であり、こうすれば二段階の減速がなされる。
【0034】
図の例では、第3歯車A3と第4歯車A4との間には歯数差がなく、第1および第2歯車A1,A2の間にのみ歯数差を与えて、いわゆる一段減速によって所要の減速比を得るようにしたものである。より具体的には例えば第1ないし第4歯車A1〜A4のそれぞれの歯数n1〜n4を、n1=99,n2=100,n3=100,n4=100とすれば、最終減速比Rは、R=1/100となる。
【0035】
そうして一段減速としたことで、減速比を低くする場合でも入力軸1の傾斜部1aの傾斜角度θを小さめに設定して、回転体3の揺動運動の振幅を小さくすることができ、振動の低減に有利になる。これは、一段減速にすれば、二段減速に比べて基準ピッチ円直径は大きくなるものの、基準ピッチ円直径の差は小さくすることができ、同一減速比を小さい傾斜角で実現できるからである。
【0036】
また、第1および第2歯車A1,A2の間での一段減速とした場合、第3および第4歯車A3,A4の歯数については同一であればよく、減速比に影響を与えることなく任意に設定することができるので、前記のように第3、第4歯車A3,A4の歯数を第2歯車A2の歯数と同じにすれば、四つの歯車のうちの3つの歯数が同じになって、生産効率の向上に貢献する。すなわち、この例では第2および第3歯車A2,A3を、以下に詳細に説明するような創成加工によって回転体3の軸端に形成するようにしている。
【0037】
尚、そうして一段減速とする場合に歯数差を与えるのは第1、第2歯車A1,A2であっても、第3、第4歯車A3,A4であってもよいが、前記のように第1、第2歯車A1,A2間で減速することは歯車各部の潤滑性を維持する上でも好ましい。これは、第3、第4歯車A3,A4で減速を行うようにした場合、第1および第2歯車A1,A2の相互の噛み合い位置が変化せず、回転体3は揺動はするものの回転しないようになるので、その内部の潤滑剤が特定位置に偏り、各歯車A1〜A4の噛み合い部への供給が滞る虞れがあるからである。
【0038】
−第1歯車の凸状歯−
以下、前記のように一段の減速を行う第1および第2歯車A1,A2の噛み合いについて詳細に説明する。まず、第1歯車A1の凸状歯4は、図3に示すように円柱コロ4aを凹溝4bに位置決めして保持し、その歯すじ方向に歯厚、歯たけの等しい等高歯として構成している。同図(a)に軸芯Gに沿って見て示すように、コロ4aは第1歯車A1の歯数分だけ備えられ、その歯すじ方向の両端部においてリテーナ7,8により位置決めされている。また、コロ4aを保持する凹溝4bは、ピッチ円錐面上において、歯すじ方向全域において断面略一様のいわゆる等高凹歯として形成され、コロ4aを摺動可能に保持している。
【0039】
前記各リテーナ7,8はいずれもリング状であり、外側のリテーナ7においては内周側に、また、内側のリテーナ8においては外周側に、それぞれ突出する係止爪が全周に亘って形成され、この各係止爪が第1歯車A1の係止溝に係止されている。リテーナ7,8はポリアミド系あるいはポリイミド系の樹脂にて形成され、自身が所定の外力の作用により変形することで、コロ4aの変位を弾性的に許容するものである。
【0040】
そうして構成される凸状歯4(コロ4a)の歯すじ長さは、後述の如く回転体3の揺動運動に伴い凹状歯5との噛み合い位置が歯すじ方向にずれることを考慮して(図4を参照)、有効噛み合い長さが凹状歯5の歯すじよりも長く設定されている。また、コロ4aは、前記のように歯すじ方向両端をリテーナ7,8によって係止されているので、凸状歯4の長さはコロ4aの係止分の寸法も考慮して、さらに長く設定されている。
【0041】
つまり、凸状歯4の歯すじ長さは、凹状歯5の歯すじ長さに対して有効歯すじ長さの差分とリテーナ7,8による係止分の長さが加算された寸法として設定されている。また、コロ4aの外径は、歯すじ方向全域において同一径である。
【0042】
一方でコロ4aを保持する凹溝4bは、前記の如く歯すじ方向全域において断面略一様、つまり同一幅、同一深さの半円弧状とされているが、その断面形状は多重円弧にて形成するのが好ましい。すなわち、コロ4aよりも大径の2つの円弧でもって、その円弧中心をコロ4a中心に対してオフセットさせて凹溝4bの断面を形成し、この凹溝4bの開口寄りの部位にコロ4aが接触するようにする(図6を参照)。こうして凹溝4bとコロ4aとを歯すじ方向の線接触状態とすれば、その支持剛性を安定的に確保する上で有利になる。
【0043】
−第2歯車の凹状歯−
前記のような構成の凸状歯4と噛みう第2歯車A2の凹状歯5は、基本的には凸状歯4(コロ4a)に対応する断面円弧状のものであり、この例では、上述した凹溝4bと同じく多重円弧によって形成されている(図6を参照)。但し、上述したように第2歯車A2は第1歯車A1との間に歯数差を有し、入力軸1の傾斜部1aにより所定の偏心量を持っているため、図4に模式的に示すように、両者は噛み合い始めから噛み合い終わりまでの間、最大噛み合い位置を除いて歯すじ方向の母線が交差するようになり、仮に凹状歯5を歯すじ方向に単純な直線状とした場合は、その開口付近において干渉が生じる。
【0044】
そこで、第2歯車A2の歯形は、第1歯車A1の凸状歯4を創成転写した創成歯、或いは近似創成歯として形成される。この創成加工については後に詳しく説明するが、概略的には特許文献2に開示されているものと同じであり、揺動型歯車装置における回転体3の揺動運動を模して円筒状のワークを揺動運動させながら、その端面(被加工面)にカッタホイール等によって歯形を形成するものである。こうすれば、凸状歯4との干渉部も除去して適切な形状の歯形を形成することができる。
【0045】
より詳しくは、まず、図4には、第1および第2歯車A1,A2の噛み合いにあたって、第1歯車A1の凸状歯4としての等高歯に対し、第2歯車A2の凹状歯5を仮に同一深さ、同一幅の等高凹歯(干渉状況を説明する上での仮想形状)として、この第2歯車A2が矢印Bの方向に移動する際の凸状歯4(コロ4a)と凹状歯5との位置関係が、2次元的に示されている。図の例では、第2歯車A2の歯数が第1歯車A1よりも1つ多く、その分、基準ピッチ円直径が大きく設定されている。また、第1歯車A1の中心は入力軸1の軸芯Gであり、一方、第2歯車A2の自転の中心は入力軸1の傾斜部1aの軸芯Hであり、この中心点Hが中心点Gの周りを偏心回転するようになる。
【0046】
したがって、第2歯車A2が回転体3と共に矢印Bの方向に揺動運動、つまり偏心回転すると、等高歯としての凹状歯5とコロ4aとは所定の角度範囲Wにおいて噛み合うようになる。この場合、コロ4aと凹状歯5とは母線M1、M2に対して歯すじ方向に同一幅(同一径)に形成されているので、母線同士の重なる最大噛み合い位置W1においては適正な噛み合いとなるが、その前後の噛み合い角度位置では母線が互いに交差し、凹状歯5の開口付近とコロ4aとが互いに捻れの位置関係で干渉するようになる。
【0047】
その母線の交差角は、噛み合い始め位置W2および噛み合い終わり位置W3で最大になり、しかも交差方向が最大噛み合い位置W1を挟んで前後で逆の傾きとなるので、干渉部(図には斜線を付して示す)は、噛み合い始め位置W2から最大噛み合い位置W1までは、基準ピッチ円直径(PCD)の外側で凹状歯5の回転方向後側(図の右側)に現れる一方、基準ピッチ円直径の内側では回転方向前側(図の左側)に現れる。
【0048】
また、最大噛み合い位置W1から噛み合い終わり位置W3までの角度範囲においては、干渉部は、基準ピッチ円直径の外側と内側にてそれぞれ凹状歯5の回転方向につき前記とは逆の側に現れる。よって、凹状歯5の開口部には、噛み合い始め位置W2から噛み合い終わり位置W3までの噛み合い範囲Wにおいて、基準ピッチ円直径を基点に歯すじ方向内外にそれぞれ拡大する鼓形状の干渉部が生じることになる。
【0049】
そうした干渉部を前記のような創成加工によって除去した凹状歯5の歯形の一例を、図5に示す。この図には、前記した噛み合い範囲Wにおいて最大噛み合い位置W1を含む前後5つの噛み合い位置での干渉部の除去状態が模式的に示されている。すなわち、図中、歯底から開口端にかけて描かれている三角形状のエリアE1〜E4は、前記それぞれの角度位置ごとに発生する干渉部が除去された干渉除去部であって、第1エリアE1は、噛み合い始め位置における干渉除去部に相当し、基準ピッチ円PCDを挟んで回転方向前側および後側にそれぞれ位置する。
【0050】
また、第2エリアE2は、噛み合い始め位置W2と最大噛み合い位置W1間の中間角度位置での干渉除去部に相当するエリアを示し、第3および第4エリアE3、E4は、それぞれ最大噛み合い位置W3から噛み合い終わりに向かっての前記と同様の干渉除去エリアを示す。さらに、エリアE5は干渉の発生しない非干渉除去部であり、ここには最大噛み合い位置W1においてコロ4aの外周面が接触する。尚、前記のエリアE1〜E5は本来、連続した曲面となり、エリアを画成する線は存在しないが、説明の都合上、前記の角度位置ごとの除去エリアを示したものである。
【0051】
−凸状歯と凹状歯の噛み合いの軌跡−
ところで、上述したように第1および第2歯車A1,A2の間には歯数差が1つあり、これらの凸状歯4および凹状歯5の噛み合い位置は、回転体3の揺動運動に伴いその1周期毎に1つずつ、ずれてゆく。そこで、この凸状歯4(コロ4a)および凹状歯5の相対的な運動を便宜上、凹状歯5に対する凸状歯4の相対運動として見ると、図6(a)に模式的に示すようにコロ4aは、隣り合う凹状歯5の下方を1ピッチずつ、図では右側に移動しながら上下に往復する波形状の移動軌跡Tを描くようになる。
【0052】
その移動軌跡Tはコロ4aの歯すじ方向中央付近のものであり、上述したようにコロ4aと凹状歯5とは噛み合い範囲Wにおいて捻れの位置関係になるから、同図(b)や前記図4にも示されるようにコロ4aは、凹状歯5に対し捻れた状態で進入し、最大噛み合い位置で真っ直ぐになった後に、再び捻れた状態で離脱するようになる。尚、図6(b)の破線T1はコロ4aの歯すじ方向外側部の軌跡を示し、破線T2は同中央付近の軌跡を、また、破線T3は同内側部の軌跡をそれぞれ示している。
【0053】
そうして捻れた状態で噛み合うコロ4aとの干渉部が上述したように除去されて、凹状歯5の開口側は鼓形状になっているが、加工精度や組み付け精度の影響もあり、第1、第2歯車A1,A2間に大きなトルクが加わったときには、図7に模式的に矢印で示すように、凸状歯4(コロ4a)に凹状歯5の歯すじ方向の端縁部(図では右側のエッジ部)が食い込んで、接触面圧が非常に高くなることがあり、信頼性への影響が懸念されていた。
【0054】
斯かる点に着目し、この実施形態に係わる揺動型歯車装置では、以下に説明するように従来同様の創成加工装置Mを用いて歯車の創成加工を行う際に、その一部の設定を変更することによって、クラウニングに相当する修正加工を施すことができるものである。
【0055】
(凹状歯の創成加工)
以下に、上述した第2歯車A2の凹状歯5を形成する場合について図8、9を参照して詳細に説明する。まず、歯車創生加工装置Mの構造は図8に断面で示すように、床上に設置される筐体20の天面が、上下方向の軸線Z周りに回動可能な旋回テーブル21とされていて、この旋回テーブル21の略中央部に開口する丸穴21aを貫通する駆動軸22が上方に向かって突出している。この駆動軸22は、その軸芯(軸線Z)の周りに回転自在となるようにベアリング23によって筐体20に支持されている。
【0056】
そうして旋回テーブル21から上方に突出する駆動軸22の上部には、軸線Zに対し所定角度θ’傾斜した軸芯Vを有する傾斜部22aが形成されていて、この傾斜部22aにはベアリング24を介して回転自在に回転盤25が支承されている。回転盤25の上部には、上述した揺動型歯車装置において回転体3となる円筒状のワークWを取り付けるための治具(ワーク保持部26)が取り付けられている。
【0057】
また、そのワーク保持部26の斜め上方に離間して、歯形形成手段としてのカッタホイール30が設けられている。このカッタホイール30は、NC制御される位置決め装置31によって支持されており、ワーク保持部26に取り付けられたワークWに対して近接遠退が自在となっている。この位置決め装置31によって、後述するようにカッタホイール30をワークWの上端の円錐面w1(被加工面)に沿って、その半径方向(図の概略左右方向)に往復動させることができる。
【0058】
前記旋回テーブル21は、図示は省略するが、例えばボールねじやウォームギヤ等を介して、電動モータ等のアクチュエータにより軸線Z周りに旋回されるようになっており、その旋回位置を検出する例えばレゾルバ方式のセンサーも設けられている。旋回テーブル21の旋回動作は、ワークWに形成する歯車の歯数や寸法等、使用を変更する際に必要になるもので、特定の仕様の歯車を加工する際には旋回テーブル21は所定の角度位置に固定される。
【0059】
また、旋回テーブル21の上面には、中央に丸穴27aの開口する円板部材27が重ね合わされていて、その上面外周寄りの部位には、揺動型歯車装置の第1歯車A1に相当する相似形状の円錐傘歯車からなる、規定歯車27bが一体に設けられている。この規定歯車27bは、後述する回転盤25の被規定歯車28aと噛み合うものであり、上述した揺動型歯車装置において第1および第2歯車A1,A2の噛み合いが回転体3の回転を規定するように、回転盤25の回転を規定する。
【0060】
駆動軸22は、上述した揺動型歯車装置の入力軸1に相当するもので、その下端部には図示は省略するが動力源として電動モータ等が接続されるとともに、その近傍には駆動軸22の回転角を検出する例えばレゾルバ方式の回転センサーが設けられている。そして、電動モータ等により駆動軸22が回転駆動されるとその上部の傾斜部22aは、揺動型歯車装置における入力軸1の傾斜部1aと同じように首振り運動をする。
【0061】
図の例では回転盤25は、前記駆動軸22の傾斜部22aに外挿されて回転自在に支承されている円筒状ボス部25aと、その上端から径方向外方に広がる円盤状の本体部25bとを有し、ボス部25aに下方から外嵌めされて一体に回転する円板部材28の上面が、本体部25bの下面に接している。この円板部材28の下面外周寄りの部位には、揺動型歯車装置の第2歯車A2に相当する相似形状の円錐傘歯車からなる、被規定歯車28aが一体に形成されて、下方に対向する規定歯車27bと噛み合っている。
【0062】
これら規定歯車27bおよび被規定歯車28aによって構成される歯車対は、上述した揺動型歯車装置における第1および第2歯車A1,A2からなる減速歯車対に相当し、駆動軸22の回転による回転盤25の揺動運動を、揺動型歯車装置における回転体3の揺動運動を再現するように規定する。すなわち、駆動軸22の1回転する毎に回転盤25は、規定歯車27bおよび被規定歯車28aの歯数差相当の角度だけ回転し、そのワーク保持具26に取り付けられているワークWを、駆動軸22の傾斜軸芯Vの周りに回転させて、その上端面w1において所要の角度で加工位置を割り出す。
【0063】
尚、規定歯車27bおよび被規定歯車28aは、揺動型歯車装置の第1、第2歯車A1,A2と同様に一方を凹溝およびコロからなる凸状歯とし、他方を凹状歯として構成することができ、こうすれば、ニードルローラとして機能するコロの介在によって噛み合い部の摩擦が軽減される。この場合、各噛み合い部に与圧を与えることにより、バックラッシュを実質的に解消することができる。
【0064】
一方、回転盤25の上部に配設されているワーク保持部26は、回転盤25のボス部25aの上端開口を上方から覆う円盤状のベース部26aと、該ベース部26aの上面中央から傾斜軸芯Vに沿って上方に延びる円柱状の固定部26bとを有し、さらにその固定部26bの上面中央から上方に突出するように円柱状の内嵌合部26cが一体に形成されている。この内嵌合部26cにワークWの筒孔を外嵌めして固定し、その上方からエンドキャップ(図示省略)を嵌め込んで、固定部26bとの間にワークWを挟持する。
【0065】
そうしてワーク保持部26に取り付けられたワークWは、回転盤25と一体に揺動運動を行うが、その揺動中心点Qは、当該ワークWの上端面w1に第2歯車A2を形成し、回転体3として揺動型歯車装置に組み込んだときに、この回転体3の揺動中心点(図1に示す点O)に一致するように位置づけられている。このため、ワークWの揺動運動は、揺動型歯車装置における回転体3の揺動運動を再現するものとなり、その上端面w1は第2歯車A2の形成された円錐面と同じ軌跡を描いて移動するようになる。
【0066】
そこで、そのように移動するワークWの上端面w1において、前記揺動運動の1周期毎に順次、割り出される加工位置にて、当該上端面w1に沿って半径方向(歯すじ方向)にカッタホイール30を所定ストロークで往復動させることにより、連続的に凹状歯5を形成することができる。尚、図示のようにカッタホイール30のストロークの方向は、水平面に対してθ’/2°傾斜している。
【0067】
また、図の例ではカッタホイール30は、円周端部の断面形状が凹状歯5の断面形状と略同じ多重円弧状をなす砥石車であり、これを回転させながら前記のように歯すじ方向へ移動させることで、凹状歯5を削り出すものであるが、歯形形成手段としてはカッタホイール30以外にもエンドミル(ボールエンドミル)や放電電極等を使用可能である。
【0068】
−創成加工装置の動作−
以下、上述の如く構成された歯車加工装置Mの動作について説明する。まず、作業者が上述したワーク保持部26の内嵌合部26cにワークWを外嵌めし、上方からエンドキャップ29を嵌め込んで、図8のように固定する。こうしてワーク保持部26に取り付けたワークWは回転盤25と一体に揺動運動をし、その揺動中心点Qは、当該ワークWを回転体3として揺動型歯車装置に組み込んだときの、当該回転体3の揺動中心点(図1に示す点O)に一致する。
【0069】
そして、歯車加工装置Mを始動して駆動軸22を回転させると、その傾斜部22aが首振り運動をし、ここに支承されている回転盤25が揺動運動をして、この回転盤25に設けられた被規定歯車28aと旋回テーブル20の規定歯車27bとの噛み合い位置が変化してゆく。このときにワークWの揺動運動は、揺動型歯車装置における回転体3の揺動運動を再現するものとなり、傾斜部22aの1回転につき回転盤25が一周期の揺動運動を行って、規定歯車27bと被規定歯車28aとの歯数差相当分、回転する。
【0070】
例えば規定歯車27bの歯数を100とし、被規定歯車28aの歯数を101とすると、駆動軸22が1回転するときには、被規定歯車27bに対して被規定歯車28aが1/100回転する。この回転盤25の回転変位はワーク保持部26に伝えられ、円錐面であるワークWの上端面w1において3.6°ずつ加工位置の割り出しが行われる。つまり、ワークWの上端面w1は、揺動型歯車装置における第2歯車A2の形成面と同様の軌跡を描いて移動し、ここにおいて凹状歯5のピッチ相当の角度で加工位置の割り出しが行われる。
【0071】
このようなワークWの揺動運動に同期し、その上端面w1に沿ってカッタホイール30が往復動すると、このカッタホイール30の描く軌跡が仮想的に、ワークWと対をなす第1歯車A1の凸状歯4(コロ4a)となり、この仮想のコロ4a、即ちカッタホイール30によって切削されるワークWの上端面w1には、揺動型歯車装置において第1歯車A1の凸状歯4と適切に噛み合うような、即ち上述した干渉除去部を有する凹状歯5の歯形が一つずつ形成されることになる。
【0072】
このとき、ワークWの揺動運動の1周期毎にその上端面w1と仮想のコロ4a(カッタホイール30)とは接離を繰り返すようになり、両者の相対的な運動は、図6を参照して上述した凹状歯5と凸状歯4(コロ4a)との相対運動と同じものになる。すなわち、説明の便宜上、ワークWの上端面w1を固定してこれに対する仮想のコロ4a(カッタホイール30)の軌跡を見れば、図9に模式的に示すように、カッタホイール30によって構成される仮想のコロ4aは、ワークWの上端面w1においてその円周方向に所定ピッチで移動する波形状の軌跡を描くようになる。
【0073】
同図には、図8におけるワークWとカッタホイール30との位置関係に合わせて、図6とは反対に凹状歯5(ワークW)を下側にし、仮想のコロ4a(カッタホイール30)を上側にして、その仮想のコロ4aの描く軌跡を示している。また、図に破線で示す軌跡Tは、駆動軸22の傾斜部22aの傾斜角度θ’が、揺動型歯車装置における入力軸1の傾斜部1aの傾斜角度θと同じ(θ’=θ)従来一般的な場合であり、一方、実線で示す軌跡T’は、この実施形態のようにθ’<θとした場合である。
【0074】
すなわち、仮にθ’=θとした場合は、ワークWの上端面w1に対する仮想のコロ4a(カッタホイール30)の軌跡Tは、揺動型歯車装置における凸状歯4(コロ4a)の凹状歯5に対する軌跡T(図6を参照)と同じになり、上述したようにコロ4aの形状に対応する基本的な歯形が創成されることになる。一方、θ’<θとするとともに、切削深さは同じになるようにカッタホイール30をワークWの上端面w1に近づければ、仮想のコロ4a(カッタホイール30)の移動軌跡は実線T’のようになり、それは少し早めに被加工面w1に接触し、少し遅れて離れるようになる。
【0075】
このような軌跡T’を描く仮想のコロ4a、即ちカッタホイール30によって、図9(a)には細かいハッチングを入れて示すが、歯形の側壁部分が多めに削られるようになる(オーバー創成される)ことから、同図(b)にも示すように凹状歯5は、実際のコロ4aの形状に対応する基本的な歯形(仮想線で示す)に比べてやや幅の広いものとなり、換言すれば、その基本的な歯形を創成した後にクラウニング等の修正加工が施されたかのような形状になる。
【0076】
そうして第2歯車A2の凹状歯5がオーバー創成されれば、揺動型歯車装置において第1、第2歯車A1,A2間に大きなトルクが作用するときでも、上述したように凸状歯4(コロ4a)に凹状歯5のエッジが食い込むことはなくなり、両者の接触面圧は、前記した図7に仮想線で示すように歯すじ方向の中央付近で高く、そこから両端側に向かって徐々に低下するようになる。つまり、図に実線で示す従来例のような凹状歯5のエッジ部における接触面圧の過度の上昇を解消することができる。
【0077】
以上よりこの実施形態では、基本的には公知の構造の創成加工装置Mを使用し、揺動型歯車装置における回転体3の揺動運動を模してワークWを揺動運動させながら、この揺動運動に同期してカッタホイール30を往復動作させることにより、当該ワークWの上端面w1における加工位置の割り出しおよび切削加工が連続的に行われて、高い生産性を実現できる。
【0078】
しかも、その創成加工装置Mにおける駆動軸22の傾斜部22aの傾斜角度θ’を本来の角度、即ち揺動型歯車装置における入力軸1の傾斜部1aの傾斜角度θよりも小さく設定するだけで、クラウニングのような歯形の修正加工も施すことができ、非常に簡単で、コストの上昇を招くことなく信頼性の向上に寄与する。
【0079】
また、そうして設定する傾斜角度θ’を小さくし過ぎると、凹状歯5の歯面のふくらみが大きくなり過ぎて、中央付近での接触面圧が高くなってしまうから、摩擦損失や発熱量の増大が懸念されるが、この点はθ’をθの70〜80%の範囲(例えばθ=4°に対してθ’=3°)に設定すれば問題は生じない。
【0080】
尚、本発明に係わる揺動型歯車装置や歯車創成加工装置の構成は、何ら前記の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば前記の実施形態においては、揺動型歯車装置の構成として一段減速のものを例示したが、これは二段減速であってもよいことは勿論である。
【0081】
また、前記の実施形態では第2歯車A2を創成加工する場合について説明したが、本発明に係る創成加工装置Mによれば第3歯車A3の創成加工も同様に行える。この場合は、ワーク保持部26を別の仕様のものに取り替えて揺動中心点Qの位置をずらすとともに、必要に応じて旋回テーブル21の動作によりピッチを調整する。すなわち、駆動軸22の1回転による加工位置の割り出しに同期させて旋回テーブル21を所定角度旋回させて、回転盤25の回転角度を変えるようにすればよい。
【0082】
このような回転角度の制御は、歯車の直径や歯数、歯のピッチ等に対応した回転角度の増減量を予め加工装置Mのコントローラに設定しておき、作業者が歯車の仕様を入力することによって自動的に電動モータが制御され、旋回テーブル21が回転するようにすればよい。
【0083】
さらに前記実施形態では歯車創成加工装置Mの駆動軸22を、その軸芯Zが上下を向くように配設しているが、これを水平に向けることも可能である。但し上下に向けた方が自重による曲げ荷重の影響を受け難く、ワークWの割り出し精度を維持する上で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係わる揺動型歯車装置の構成の一例を示す断面図。
【図2】図1の上方から見て第1および第2歯車の噛み合いを示す斜視図。
【図3】入力軸芯に沿って見て第1歯車の構成を示す正面図(a)と、その一部を拡大して示す図(b)。
【図4】第1および第2歯車の噛み合いにおける凸状歯(コロ)と凹状歯との関係を2次元的に示す模式図。
【図5】干渉部の除去された凹状歯の歯形の一例を示す拡大斜視図。
【図6】凹状歯に対する凸状歯(コロ)の相対運動を模式的に示す説明図。
【図7】凹状歯と凸状歯(コロ)との噛み合いの際の接触面圧の一例を示す説明図。
【図8】本発明に係わる歯車創成加工装置の要部構成を示す断面図。
【図9】ワークの被加工面に対するカッタホイールの相対運動を模式的に示す図。
【図10】従来の揺動型歯車装置の断面図(図1相当図)。
【図11】従来の揺動型歯車装置の噛み合い部の説明図。
【符号の説明】
【0085】
A1〜A4 揺動型歯車装置の第1ないし第4の円錐傘歯車
G 同入力軸の軸芯
H 同傾斜部の軸芯
1 同入力軸
1a 同傾斜部
3 同回転体
W ワーク
M 歯車創成加工装置
Z 同駆動軸の軸芯
V 同傾斜部の軸芯
22 同駆動軸
22a 同傾斜部
25 同回転盤
26 同ワーク保持部
27b 同規定歯車
28a 同被規定歯車
30 同カッタホイール(歯形形成手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と、該入力軸に設けられた傾斜部に回転自在に支承された回転体とを備え、該回転体には固定側の第1歯車と噛み合う第2歯車と、出力側の第4歯車と噛み合う第3歯車とを形成して、前記入力軸の回転により回転体が揺動運動しながら各歯車間の噛み合い位置を変えるように構成した揺動型歯車装置のための、歯車の創成加工装置であって、
動力源によって回転駆動される駆動軸と、
該駆動軸に形成された傾斜部に回転自在に支承されるとともに、前記第2または第3歯車のいずれかに相当する被規定歯車が設けられた回転盤と、
前記第1または第4歯車のいずれかに相当し、前記被規定歯車と噛み合うように設けられて、前記駆動軸の回転による回転盤の揺動運動を、前記揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を再現するように規定する規定歯車と、を備え、
前記回転盤には、前記回転体に相当するワークを、それが前記揺動型歯車装置に組み込まれたときの揺動中心点が、回転盤の揺動中心点に一致するように保持するワーク保持部が設けられ、
さらに、前記第1または第4歯車の歯形断面と略同一の断面形状を有し、前記回転盤の揺動運動と同期して前記ワークの歯すじ方向に移動する歯形形成手段を備えており、
前記駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度が、前記揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度よりも小さく設定されている、ことを特徴とする揺動型歯車装置の歯車創成加工装置。
【請求項2】
前記駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度が、前記揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度の70〜80%の範囲に設定されている、請求項1に記載の揺動型歯車装置の歯車創成加工装置。
【請求項3】
入力軸と、該入力軸に設けられた傾斜部に回転自在に支承された回転体とを備え、該回転体には固定側の第1歯車と噛み合う第2歯車と、出力側の第4歯車と噛み合う第3歯車とを形成して、前記入力軸の回転により回転体が揺動運動しながら各歯車間の噛み合い位置を変えるように構成した揺動型歯車装置のための、歯車の創成加工方法であって、
加工装置として、
動力源によって回転駆動される駆動軸と、
該駆動軸に形成された傾斜部に回転自在に支承されるとともに、前記第2または第3歯車のいずれかに相当する被規定歯車が設けられた回転盤と、
前記第1または第4歯車のいずれかに相当し、前記被規定歯車と噛み合うように設けられて、前記駆動軸の回転による回転盤の揺動運動を、前記揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を再現するように規定する規定歯車と、を備え、
前記回転盤には、前記回転体に相当するワークを、それが前記揺動型歯車装置に組み込まれたときの揺動中心点が、回転盤の揺動中心点に一致するように保持するワーク保持部が設けられ、
さらに、前記第1または第4歯車の歯形断面と略同一の断面形状を有し、前記回転盤の揺動運動と同期して前記ワークの歯すじ方向に移動可能な歯形形成手段を備えた、創成加工装置を準備し、
前記創成加工装置における駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度を、前記揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度よりも小さく設定して、
前記回転盤のワーク保持部にワークを取り付けて、前記駆動軸の回転により回転盤を揺動運動させながら、この揺動運動と同期して前記歯形形成手段をワークの被加工面に沿って移動させることにより歯形を形成する、ことを特徴とする揺動型歯車装置の歯車創成加工方法。
【請求項1】
入力軸と、該入力軸に設けられた傾斜部に回転自在に支承された回転体とを備え、該回転体には固定側の第1歯車と噛み合う第2歯車と、出力側の第4歯車と噛み合う第3歯車とを形成して、前記入力軸の回転により回転体が揺動運動しながら各歯車間の噛み合い位置を変えるように構成した揺動型歯車装置のための、歯車の創成加工装置であって、
動力源によって回転駆動される駆動軸と、
該駆動軸に形成された傾斜部に回転自在に支承されるとともに、前記第2または第3歯車のいずれかに相当する被規定歯車が設けられた回転盤と、
前記第1または第4歯車のいずれかに相当し、前記被規定歯車と噛み合うように設けられて、前記駆動軸の回転による回転盤の揺動運動を、前記揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を再現するように規定する規定歯車と、を備え、
前記回転盤には、前記回転体に相当するワークを、それが前記揺動型歯車装置に組み込まれたときの揺動中心点が、回転盤の揺動中心点に一致するように保持するワーク保持部が設けられ、
さらに、前記第1または第4歯車の歯形断面と略同一の断面形状を有し、前記回転盤の揺動運動と同期して前記ワークの歯すじ方向に移動する歯形形成手段を備えており、
前記駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度が、前記揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度よりも小さく設定されている、ことを特徴とする揺動型歯車装置の歯車創成加工装置。
【請求項2】
前記駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度が、前記揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度の70〜80%の範囲に設定されている、請求項1に記載の揺動型歯車装置の歯車創成加工装置。
【請求項3】
入力軸と、該入力軸に設けられた傾斜部に回転自在に支承された回転体とを備え、該回転体には固定側の第1歯車と噛み合う第2歯車と、出力側の第4歯車と噛み合う第3歯車とを形成して、前記入力軸の回転により回転体が揺動運動しながら各歯車間の噛み合い位置を変えるように構成した揺動型歯車装置のための、歯車の創成加工方法であって、
加工装置として、
動力源によって回転駆動される駆動軸と、
該駆動軸に形成された傾斜部に回転自在に支承されるとともに、前記第2または第3歯車のいずれかに相当する被規定歯車が設けられた回転盤と、
前記第1または第4歯車のいずれかに相当し、前記被規定歯車と噛み合うように設けられて、前記駆動軸の回転による回転盤の揺動運動を、前記揺動型歯車装置における回転体の揺動運動を再現するように規定する規定歯車と、を備え、
前記回転盤には、前記回転体に相当するワークを、それが前記揺動型歯車装置に組み込まれたときの揺動中心点が、回転盤の揺動中心点に一致するように保持するワーク保持部が設けられ、
さらに、前記第1または第4歯車の歯形断面と略同一の断面形状を有し、前記回転盤の揺動運動と同期して前記ワークの歯すじ方向に移動可能な歯形形成手段を備えた、創成加工装置を準備し、
前記創成加工装置における駆動軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度を、前記揺動型歯車装置の入力軸の軸芯に対する傾斜部の傾斜角度よりも小さく設定して、
前記回転盤のワーク保持部にワークを取り付けて、前記駆動軸の回転により回転盤を揺動運動させながら、この揺動運動と同期して前記歯形形成手段をワークの被加工面に沿って移動させることにより歯形を形成する、ことを特徴とする揺動型歯車装置の歯車創成加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−188478(P2010−188478A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35880(P2009−35880)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(504294684)荻野工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(504294684)荻野工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
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