説明

搬送台車

【課題】搬送台車における昇降装置の信頼性を向上する。
【解決手段】搭載された荷物を搬送可能な搬送台車100であって、駆動輪11及び自在輪12によって支持される車体フレーム1と、車体フレーム1に対して昇降可能に設けられて荷物が載置される荷台3と、電動で伸縮駆動されて荷台3を昇降させる電動昇降シリンダ2aと、電動昇降シリンダ2aに電流を供給するコントローラ30とを備え、コントローラ30は、電動昇降シリンダ2aの連続駆動時間が所定の時間以上となった場合には、電動昇降シリンダ2aへの電流の供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載された荷物を搬送可能な搬送台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場などでは、重量のある荷物を搬送するために、荷物が搭載された状態で移動可能な搬送台車が用いられている。
【0003】
特許文献1には、昇降体に載せられた物品を所定高さまで昇降させることが可能な移動型の昇降装置が開示されている。この昇降装置では、モータ駆動によって昇降体を昇降させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−35239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の昇降装置では、最大積載重量を超える重さの荷物が載せられた状態で昇降体を上昇させようとしたときに、モータが駆動しているにもかかわらず昇降体が上昇しない状態が続く場合がある。そのため、モータが過負荷状態となり、昇降装置の信頼性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、搬送台車における昇降装置の信頼性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、搭載された荷物を搬送可能な搬送台車であって、車輪によって支持される車体フレームと、前記車体フレームに対して昇降可能に設けられて荷物が載置される荷台と、電動で伸縮駆動されて前記荷台を昇降させる電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータに電流を供給するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記電動アクチュエータの連続駆動時間が所定の時間以上となった場合には、前記電動アクチュエータへの電流の供給を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、電動アクチュエータの連続駆動時間が所定の時間以上となった場合には、電動アクチュエータへの電流の供給が停止される。よって、最大積載重量を超える重さの荷物が載せられて、電動アクチュエータの駆動によって荷台が上昇しないような場合に、そのまま電動アクチュエータに電流が供給され続けることが防止される。したがって、搬送台車における昇降装置の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る搬送台車の斜視図である。
【図2】図1における側面図である。
【図3】図1における正面図である。
【図4】搬送台車の制御ブロック図である。
【図5】搬送台車におけるフェールセーフ動作を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
まず、図1から図4を参照して、本発明の実施の形態に係る搬送台車100について説明する。
【0012】
搬送台車100は、例えば工場などにて、搭載された荷物を搬送するのに使用される。搬送台車100は、作業者によって付与される駆動力に、後述する電動モータ15の回転によるアシスト力が付与されて走行するものである。搬送台車100は、ここでは電動アシスト機能を有する電動アシスト台車であるが、電動アシスト機能を有さない通常の台車であってもよい。
【0013】
搬送台車100は、車体フレーム1と、車体フレーム1に対して昇降可能に設けられて荷物が載置される荷台3と、車体フレーム1の左右二箇所から駆動力を入力可能な操作部としての操作ハンドル5と、車体フレーム1の左右に間隔をあけて設けられる一対の駆動輪11と、車体フレーム1に装着され駆動輪11の後方に設けられる一対の自在輪12とを備える。駆動輪11は、搬送台車100の前輪であり、自在輪12は、搬送台車100の後輪である。これらの駆動輪11と自在輪12とが、車輪に該当する。
【0014】
車体フレーム1は、角形のパイプ材が組み合わされたフレームである。車体フレーム1は、駆動輪11と自在輪12とによって支持される。車体フレーム1は、荷台3を介して荷物が載置される平面部1aと、平面部1aの下部に突設される下部突設部1bと、平面部1aの後端上部に立設される立設部1cとを有する。
【0015】
荷台3は、車体フレーム1における平面部1aの上方を覆うようにして設けられる縁付きの平板である。荷台3上には、荷物が直接載置される。荷台3は、縁なしの平板であってもよい。また、荷台3に代えて、車体フレーム1上にローラコンベアを設置し、ローラコンベアを介して荷物を載置してもよい。
【0016】
車体フレーム1と荷台3の間には、図2に示すように、昇降装置2が設けられる。この昇降装置2は、電動で伸縮駆動されて荷台3を昇降させる電動アクチュエータとしての電動昇降シリンダ2a(図4参照)を備える。昇降装置2は、この電動昇降シリンダ2aの伸縮によって荷台3を車体フレーム1に対して昇降させる。例えば、荷台3に重量物が載置され、後述する懸架装置20によって駆動輪11及び自在輪12に対して車体フレーム1が沈み込んだ場合には、昇降装置2が荷台3を上昇させ、路面に対する荷台3の高さを一定に調節することが可能である。
【0017】
電動昇降シリンダ2aは、後述するコントローラ30と電気的に接続され、コントローラ30からの指令信号に基づいて供給される電流によって伸縮する。電動昇降シリンダ2aに供給される電流の大きさは、コントローラ30によって検出可能である。
【0018】
電動昇降シリンダ2aは、モータによって駆動される油圧ポンプを備え、油圧ポンプから吐出される作動油の圧力によって伸縮する電動油圧式リニアアクチュエータである。電動昇降シリンダ2aに代えて、ボールねじ式やリニアモータ式など他の電動アクチュエータを用いてもよい。
【0019】
操作ハンドル5は、図1に示すように、作業者によって押圧操作される逆U字型のハンドルである。操作ハンドル5は、その左右の両端が、車体フレーム1における立設部1cに連結される。これにより、作業者が操作ハンドル5を操作することによって入力される駆動力が、車体フレーム1に伝達される。
【0020】
駆動輪11は、車体フレーム1の前後方向に向かって転舵不能に設けられる小型の車輪である。駆動輪11は、車体フレーム1の前端部近傍に一対設けられる。駆動輪11は、車体フレーム1の下部突設部1bに対して上下運動可能に固定される。
【0021】
自在輪12は、走行時に常に進行方向を向く小型の車輪である。自在輪12は、路面との間の摩擦抵抗によって旋回し、進行方向を向くように操舵される。自在輪12は、車体フレーム1の下部突設部1bに対して上下運動可能に固定される。
【0022】
搬送台車100は、車体フレーム1に対して上下運動可能な四個のサブフレーム4と、サブフレーム4を介して駆動輪11と自在輪12とを懸架する懸架装置20とを備える。
【0023】
サブフレーム4は、一対の駆動輪11と一対の自在輪12との各々の車輪に対応して四個設けられる。サブフレーム4は、車体フレーム1の左右に二個ずつ配設される。各々のサブフレーム4の下面には、駆動輪11又は自在輪12が回転可能に固定される。
【0024】
懸架装置20は、車体フレーム1に左右のサブフレーム4を上下運動可能に支持する四本のサスペンションアーム22と、車体フレーム1と左右のサブフレーム4の間に設けられるスプリングダンパ23とを備える。
【0025】
サスペンションアーム22は、一個のサブフレーム4に対して四本ずつ設けられる。サスペンションアーム22は、それぞれの両端部が車体フレーム1と左右のサブフレーム4とに水平軸まわりに回動可能に連結され、車体フレーム1に対してサブフレーム4を平行移動可能に支持する平行リンク機構を構成する。
【0026】
これにより、車体フレーム1に対してサブフレーム4が昇降しても、サブフレーム4の姿勢が変化せず、駆動輪11と自在輪12との位置関係(アライメント)が一定に保たれる。よって、サブフレーム4が昇降しても、駆動輪11と自在輪12との一方が路面から浮くことが抑制される。
【0027】
スプリングダンパ23は、路面不整などによる駆動輪11及び自在輪12の上下振動を吸収して緩和し、路面からの振動が車体フレーム1に伝達されることを抑制するものである。スプリングダンパ23は、コイルスプリング23aとダンパ23bとを備え、サブフレーム4が昇降するのに伴って伸縮する。
【0028】
コイルスプリング23aは、そのバネ力によってサブフレーム4が受ける荷重を支持し、サブフレーム4が昇降するのに伴って伸縮する。
【0029】
ダンパ23bは、伸縮作動するのに伴ってこれに充填された作動油が減衰弁(図示省略)を通過し、サブフレーム4の振動を抑制する減衰力を発生する。
【0030】
なお、懸架装置20は、上述の構成に限らず、車体フレーム1に対するサブフレーム4の姿勢が保たれるならば、他の構成であってもよい。
【0031】
搬送台車100は、操作ハンドル5が押圧操作されることによって車体フレーム1の左右二箇所の各々に作用する駆動トルクを検出する一対のトルク検出部としてのトルクセンサ6と、トルクセンサ6によって検出された駆動トルクに応じて各々の駆動輪11に付与するアシスト力を演算するコントローラ30と、コントローラ30によって演算されたアシスト力を各々の駆動輪11に付与する一対の電動モータ15と、各々の駆動輪11の回転を制動する一対のブレーキ16と、作業者によって操作可能な各種スイッチが設けられる操作盤29とを備える。
【0032】
トルクセンサ6は、コントローラ30に電気的に接続され、検出した駆動トルクに応じた電気信号をコントローラ30に出力する。トルクセンサ6は、操作ハンドル5と車体フレーム1とを連結して操作部から入力される駆動力によって捩れるとともに駆動力を車体フレーム1に伝達するトーションバー(図示省略)と、トーションバーの捩れに応じた電気信号を出力するポテンショメータ(図示省略)とを備え、トーションバーの捩れに基づいて駆動トルクを検出する。トルクセンサ6に設けられるトーションバーを変更することで、その他の部材を変更することなく、台車の積載荷重などに応じて作業者による操作感覚を変更することも可能である。
【0033】
電動モータ15は、コントローラ30に電気的に接続され、コントローラ30から入力される電気信号に応じて回転する。電動モータ15は、図3に示すように、駆動輪11の内側に配設され、駆動輪11にアシスト力を付与する。左右の電動モータ15は、互いに同軸に設けられ、一対の駆動輪11の間に直列に配設される。電動モータ15は、回転を減速して駆動輪11に伝達する変速機(図示省略)を備える。
【0034】
ブレーキ16は、電動モータ15の出力軸と駆動輪11との間に配設される。ブレーキ16は、制動状態と非制動状態とを切り換え可能なブレーキソレノイド16a(図4参照)を有する。ブレーキ16は、制動状態に切り換えられたときに駆動輪11を回転不能に固定する。
【0035】
ブレーキソレノイド16aは、コントローラ30に電気的に接続され、コントローラ30から供給される電流に応じて切り換えられる。ブレーキソレノイド16aに電流が流れていない状態では、ブレーキ16は駆動輪11を制動状態に維持する。一方、ブレーキソレノイド16aに電流が流れた場合には、ブレーキ16は駆動輪11を非制動状態に切り換える。
【0036】
コントローラ30は、電源装置(図示省略)や他の電子機器(図示省略)とともに車体フレーム1に搭載される。コントローラ30は、搬送台車100の制御を行うものであり、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどをROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって搬送台車100の制御が実現される。
【0037】
コントローラ30は、電源装置から供給される電源によって動作する。コントローラ30は、電源装置の電圧が急激に低下した場合には、全ての制御を停止してCPUをスリープ状態とする。電源装置が24Vのバッテリである場合には、例えば、電圧が18V程度まで低下したときにCPUをスリープ状態とする。これにより、電源装置の電圧の急激な低下から、コントローラ30を保護することができる。
【0038】
コントローラ30は、左右のトルクセンサ6によって検出された駆動トルクに応じたアシスト力を左右の電動モータ15にそれぞれ発生させる制御を行い、搬送台車100を前進または後退させるとともに、直進、旋回、曲折させるアシスト力を付与する。
【0039】
コントローラ30は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御によって電動モータ15及び電動昇降シリンダ2aを駆動する。コントローラ30は、左右の電動モータ15に実際に流れた電流値を検出する一対の電流検出部15aを有する。これにより、電動モータ15のフィードバック制御が可能となる。
【0040】
コントローラ30は、図4に示すように、電動昇降シリンダ2aに流れた電流の大きさとその電流が連続して流れた連続時間とを判定する電流判定部31と、電流判定部31の判定に基づいて電動昇降シリンダ2aへの電流の供給を停止可能な電流制御部32とを備える。
【0041】
操作盤29は、図1に示すように、車体フレーム1における立設部1cの背面に配設され、コントローラ30に電気的に接続される。操作盤29は、作業者によって操作可能かつ視認可能な位置に設けられればよいため、この位置に限られるものではない。操作盤29は、ブレーキソレノイド16aを切り換えるためのブレーキ解除スイッチ24と、電動昇降シリンダ2aを操作するための荷台昇降スイッチ25と、各種フェールモードを表示可能なインジケータ27とを備える。
【0042】
ブレーキ解除スイッチ24は、作業者の操作によってブレーキソレノイド16aを切り換え可能なスイッチである。作業者がブレーキ解除スイッチ24を操作すると、ブレーキソレノイド16aに電流が流れ、駆動輪11が非制動状態に切り換えられる。これにより、搬送台車100は走行可能となる。
【0043】
荷台昇降スイッチ25は、作業者の操作によって電動昇降シリンダ2aを動作させるスイッチである。作業者が荷台昇降スイッチ25を操作すると、コントローラ30が電動昇降シリンダ2aに駆動用の電流を供給するように指令し、電動昇降シリンダ2aが伸縮する。これにより、荷台3が車体フレーム1に対して昇降する。
【0044】
インジケータ27は、搬送台車100においてフェールセーフのために一部機能が停止した状態を、作業者が視認可能なように示すものである。インジケータ27は、第一インジケータ27aと、第二インジケータ27bと、第三インジケータ27cとを備える。
【0045】
第一インジケータ27aは、最も軽いフェールモードを示すものである。第一インジケータ27aは、電動モータ15に供給される電流の最大値が制限された場合に点灯する。この第一インジケータ27aが点灯した状態が、第一フェールモードである。
【0046】
第二インジケータ27bは、第一インジケータ27aの次に軽いフェールモードを示すものである。第二インジケータ27bは、電動モータ15への電流の供給が停止された場合、又は電動昇降シリンダ2aへの電流の供給が停止された場合に点灯する。この第二インジケータ27bが点灯した状態が、第二フェールモードである。
【0047】
第三インジケータ27cは、最も重いフェールモードを示すものである。第三インジケータ27cは、搬送台車100における全ての機能が停止した場合に点灯する。即ち、第三インジケータ27cが点灯している状態では、搬送台車100では、電動モータ15及び電動昇降シリンダ2aへの電流の供給が停止しているとともに、ブレーキソレノイド16aへの電流の供給が停止されることでブレーキ16が制動状態に切り換えられている。この第三インジケータ27cが点灯した状態が、第三フェールモードである。
【0048】
第一から第三の各フェールモードは、いずれかのフェールモードに入っておらず、かつ、電源装置の容量が搬送台車100における全ての機能を制御可能な程度残っている場合にのみ設定される。また、各フェールモードは、搬送台車100の電源を一度切り、再起動することで解除される。
【0049】
次に、搬送台車100における運転動作について説明する。
【0050】
作業者が操作ハンドル5を両手で平行に押した場合には、搬送台車100は、真っ直ぐ前進することとなる。この場合、操作ハンドル5が押されることによって車体フレーム1に入力される駆動力は操作ハンドル5の左右両端で略同一である。よって、左右のトルクセンサ6によって検出される駆動トルクは、略同一となる。
【0051】
左右のトルクセンサ6が同一の駆動トルクを検出すると、コントローラ30は、左右の電動モータ15から左右の駆動輪11に同一のアシスト力を付与するように指令する。これにより、左右の駆動輪11には、同一のアシスト力が付与される。
【0052】
したがって、搬送台車100は、作業者によって付与される駆動力に、電動モータ15のアシスト力が付与されて真っ直ぐ前進することとなる。
【0053】
なお、搬送台車100を真っ直ぐ後退させる場合には、操作ハンドル5が押される方向が逆になり、電動モータ15の回転方向が逆になるだけで、その他の作用は真っ直ぐ前進する場合と同様である。
【0054】
一方、作業者が操作ハンドル5を押す左右の力を相違させた場合には、搬送台車100は、左又は右に旋回走行することとなる。このとき、左右の駆動輪11に付与されるアシスト力は、左右の電動モータ15で相違する。
【0055】
具体的には、例えば搬送台車100を左方向に旋回させる場合、作業者が右手で操作ハンドル5を押す力は、左手で操作ハンドル5を押す力と比較して大きくなる。よって、右側のトルクセンサ6が検出する駆動トルクは、左側のトルクセンサ6が検出する駆動トルクと比較して大きくなる。
【0056】
これにより、コントローラ30は、右側の電動モータ15から駆動輪11に付与するアシスト力が、左側の電動モータ15から駆動輪11に付与するアシスト力と比較して大きくなるように指令する。これにより、右側の駆動輪11に付与されるアシスト力は、左側の駆動輪11に付与されるアシスト力と比較して大きくなる。
【0057】
なお、左右のトルクセンサ6は、駆動トルクを無段階に検出可能であるため、作業者が操作ハンドル5を押圧操作する力に応じてアシスト力の大きさをコントロールすることができる。
【0058】
次に、図5を参照して、搬送台車100におけるフェールセーフ動作について説明する。
【0059】
ステップS101では、コントローラ30が、電動昇降シリンダ2aに供給された電流の大きさを読み込む。
【0060】
ステップS102からステップS104は、例えばショートなどによって、電動昇降シリンダ2aに通常使用時に供給される範囲よりも大きな過電流が流れた場合に、搬送台車100の一部機能を停止するものである。
【0061】
ステップS102では、電流判定部31は、電動昇降シリンダ2aに第一設定値以上の大きさの電流が供給されたか否かを判定する。このときの第一設定値は、通常使用時に供給される電流の最大値と比較して大きく設定される。つまり、第一設定値は、通常使用時には流れない過電流が流れた場合の電流値に設定される。例えば、第一設定値は、通常使用時に電動昇降シリンダ2aに供給される電流が0〜21[A]である場合、30[A]に設定される。
【0062】
ステップS102にて、電動昇降シリンダ2aに供給された電流値が第一設定値以上であると判定された場合には、ステップS103に移行する。一方、ステップS102にて、電動昇降シリンダ2aに供給された電流値が第一設定値より小さいと判定された場合には、ステップS105に移行する。
【0063】
ステップS103では、電流判定部31は、ステップS102にて判定した第一設定値以上の電流が第一設定時間だけ連続して流れたか否かを判定する。このときの第一設定時間は、始動の際に瞬間的に流れる大電流である突入電流を誤って検出しない程度の長さに設定される。また、第一設定時間は、通常使用時に流れない大きさの過電流が流れる時間であるため、電動昇降シリンダ2aやコントローラ30を保護するために、ごく短い時間に設定される。例えば、第一設定時間は、50[ms]に設定される。
【0064】
ステップS103にて、第一設定値以上の電流が連続して流れた連続時間が第一設定時間以上であると判定された場合には、ステップS104に移行して、第二フェールモードとなる。
【0065】
ステップS104では、電流制御部32は、電動昇降シリンダ2aへの電流の供給を停止する。よって、電動昇降シリンダ2aの伸縮動作が停止し、荷台3の昇降が停止する。
【0066】
これにより、通常使用時に流れない大きさの過電流が流れた場合に、電動昇降シリンダ2aやコントローラ30を保護することができる。また、第二インジケータ27bを点灯することによって、第二フェールモードに入っていることを、作業者に知らせることができる。したがって、搬送台車100における昇降装置2の信頼性を向上することができる。
【0067】
一方、ステップS103にて、第一設定値以上の電流が連続して流れた連続時間が第一設定時間より短いと判定された場合には、ステップS105に移行する。
【0068】
ステップS105では、荷台昇降スイッチ25が作業者によって操作されているか否かを判定する。即ち、上述したステップS102及びステップS103による判定は、荷台昇降スイッチ25が操作されているか否かにかかわらず常に実行されるものである。
【0069】
ステップS105にて、荷台昇降スイッチ25が操作されていると判定された場合には、ステップS106に移行する。一方、ステップS105にて、荷台昇降スイッチ25が操作されていないと判定された場合には、リターンする。
【0070】
ステップS106及びステップS107は、電動昇降シリンダ2aの連続駆動時間が所定の時間以上となった場合に、搬送台車100の一部機能を停止するものである。
【0071】
ステップS106では、電流判定部31は、電動昇降シリンダ2aに通常使用時に供給される範囲の電流が所定の時間以上連続して流れたか否かを判定する。このときの所定の時間は、電動昇降シリンダ2aが荷台3を下降限から上昇限まで上昇させるのにかかる時間と比較して長く設定される。
【0072】
ステップS106にて、通常使用時に供給される範囲の電流が流れた連続時間が所定の時間以上であると判定された場合には、ステップS107に移行する。
【0073】
ステップS107では、電流制御部32は、電動昇降シリンダ2aへの電流の供給を停止する。よって、電動昇降シリンダ2aの伸縮動作が停止し、荷台3の昇降が停止する。
【0074】
ここで、従来の搬送台車では、最大積載重量を超える重さの荷物が載せられた状態で荷台を上昇させようとしたときに、電動昇降シリンダが駆動しているにもかかわらず荷台が上昇しない状態が続く場合がある。そのため、電動昇降シリンダが過負荷状態となり、搬送台車における昇降装置の信頼性が低下するおそれがある。
【0075】
これに対して搬送台車100では、電動昇降シリンダ2aの連続駆動時間が所定の時間以上となった場合には、電動昇降シリンダ2aへの電流の供給が停止される。よって、最大積載重量を超える重さの荷物が載せられて、電動昇降シリンダ2aの駆動によって荷台3が上昇しないような場合に、そのまま電動昇降シリンダ2aに電流が供給され続けることが防止される。したがって、搬送台車100における昇降装置2の信頼性を向上することができる。
【0076】
なお、ステップS107にて電動昇降シリンダ2aへの電流の供給が停止した場合は、第二フェールモードに入った場合とは異なり、作業者が荷台昇降スイッチ25を再び操作することによって、電動昇降シリンダ2aが伸縮動作可能となる。
【0077】
一方、ステップS106にて、通常使用時に供給される電流の最大値の電流が流れた連続時間が所定の時間より短いと判定された場合には、ステップS108に移行する。
【0078】
ステップS108からステップS110は、荷台昇降スイッチ25が操作されている状態にて、例えば断線などによってコントローラ30からの指令どおりに電動昇降シリンダ2aに電流が供給されていない場合に、搬送台車100の一部機能を停止するものである。
【0079】
ステップS108では、電流判定部31は、電動昇降シリンダ2aに第二設定値以下の大きさの電流が供給されたか否かを判定する。このときの第二設定値は、通常使用時にて荷台昇降スイッチ25が操作されている場合に供給される電流の最小値と比較して小さく設定される。例えば、第二設定値は、3[A]に設定される。
【0080】
ステップS108にて、電動昇降シリンダ2aに供給された電流値が第二設定値以下であると判定された場合には、ステップS110に移行する。一方、ステップS108にて、電動昇降シリンダ2aに供給された電流値が第二設定値より大きいと判定された場合には、リターンする。
【0081】
ステップS109では、電流判定部31は、ステップS108にて判定した第二設定値以下の電流が第二設定時間だけ連続して流れたか否かを判定する。このときの第二設定時間は、第一設定時間と比較して長い時間に設定される。例えば、第二設定時間は、1[s]に設定される。
【0082】
ステップS109にて、第二設定値以下の電流が連続して流れた連続時間が第二設定時間以上であると判定された場合には、ステップS110に移行して、第二フェールモードとなる。
【0083】
ステップS110では、ステップS104の場合と同様に、電流制御部32は、電動昇降シリンダ2aへの電流の供給を停止する。よって、電動昇降シリンダ2aの伸縮動作が停止し、荷台3の昇降が停止する。
【0084】
これにより、荷台昇降スイッチ25が操作されている状態にて、例えば断線などによってコントローラ30からの指令どおりに電動昇降シリンダ2aに電流が供給されていない場合には、電動昇降シリンダ2aへの電流の供給が停止される。また、第二インジケータ27bを点灯することによって、第二フェールモードに入っていることを、作業者に知らせることができる。したがって、搬送台車100における昇降装置2の信頼性を向上することができる。
【0085】
一方、ステップS109にて、第二設定値以下の電流が連続して流れた連続時間が第二設定時間より短いと判定された場合には、リターンする。
【0086】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0087】
電動昇降シリンダ2aの連続駆動時間が所定の時間を超えた場合には、電動昇降シリンダ2aへの電流の供給が停止される。よって、最大積載重量を超える重さの荷物が載せられて、電動昇降シリンダ2aの駆動によって荷台3が上昇しないような場合に、そのまま電動昇降シリンダ2aに電流が供給され続けることが防止される。したがって、搬送台車100における昇降装置2の信頼性を向上することができる。
【0088】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0089】
例えば、図5のフローチャート図では、三つの異なるフェール状態を検出して、対応するフェールモードと判定する制御を単一のフローで実行している。これに代えて、一つ一つのフェール状態を検出する制御を独立したフローで実行し、それぞれの検出結果の中にひとつでもフェール状態であるとの検出結果があった場合にフェールモードであると判定するフローを更に設けてもよい。
【符号の説明】
【0090】
100 搬送台車
1 車体フレーム
3 荷台
5 操作ハンドル
6 トルクセンサ
11 駆動輪
12 自在輪
15 電動モータ
15a 電流検出部
16 ブレーキ
16a ブレーキソレノイド
24 ブレーキ解除スイッチ
25 荷台昇降スイッチ
27 インジケータ
30 コントローラ
31 電流判定部
32 電流制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載された荷物を搬送可能な搬送台車であって、
車輪によって支持される車体フレームと、
前記車体フレームに対して昇降可能に設けられて荷物が載置される荷台と、
電動で伸縮駆動されて前記荷台を昇降させる電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータに電流を供給するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記電動アクチュエータの連続駆動時間が所定の時間以上となった場合には、前記電動アクチュエータへの電流の供給を停止することを特徴とする搬送台車。
【請求項2】
前記所定の時間は、前記電動アクチュエータが前記荷台を下降限から上昇限まで上昇させるのにかかる時間と比較して長く設定されることを特徴とする請求項1に記載の搬送台車。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記電動アクチュエータに、通常使用時に供給される範囲の電流が前記所定の時間以上連続して流れたことを判定する電流判定部と、
前記電流判定部の判定に基づいて、前記電動アクチュエータへの電流の供給を停止する電流制御部と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送台車。
【請求項4】
前記電流制御部は、前記電動アクチュエータに通常使用時に供給される電流の最大値と比較して大きな第一設定値以上の電流が第一設定時間だけ連続して流れた場合に、前記電動アクチュエータへの電流の供給を停止することを特徴とする請求項3に記載の搬送台車。
【請求項5】
作業者によって操作されると前記コントローラが前記電動アクチュエータに駆動用の電流を供給するように指令する荷台昇降スイッチをさらに備え、
前記電流制御部は、前記荷台昇降スイッチが操作された状態で、前記電動アクチュエータに通常使用時に供給される電流の最小値と比較して小さな第二設定値以下の電流が第二設定時間だけ連続して流れた場合に、前記電動アクチュエータへの電流の供給を停止することを特長とする請求項3又は4に記載の搬送台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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