説明

搬送装置

【課題】 簡単かつ低コストでコンパクトな構成でありながら、ワーク等の被搬送物のサイズ変更等に対応して搬送部の幅を高い自由度で変更することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】 本発明の搬送装置は、被搬送物の搬送方向に延在されて回転駆動される複数条の環状連続体10と、搬送方向横方向に延在され前記環状連続体10に取り付けられる板状部材20と、を含んで構成され、板状部材20により形成される搬送面に被搬送物を載置して搬送する搬送装置1であって、一の環状連続体10に取り付けられた板状部材20と、隣接する他の環状連続体10に取り付けられた板状部材20と、が搬送面に直交する方向から見たときに重畳しないように互い違いに配置されていると共に、隣接する環状連続体10の搬送方向横方向における間隔が伸縮可能に構成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク等の被搬送物を搬送する搬送装置(コンベア装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークの搬送装置として、種々のものが提案されている。
その一つとして、例えば、駆動回転体と被駆動回転体の周りに巻き掛けられたエンドレスベルト(無端ベルト)の上にワーク等の被搬送物を載置して搬送するようにしたベルトコンベアがある。
【0003】
また、例えば、図9に示すようなコンベア(搬送装置)も知られている。
このものは、いわゆるスラットコンベア(Slat Conveyer)と称されるもので、図9に示したように、電動モータ等により回転駆動される駆動側スプロケット等の駆動側回転体と被駆動側スプロケット等の被駆動側回転体に巻き掛けられたエンドレスチェーン(無端チェーン)の外周に、比較的幅の狭いスラット(金属、樹脂、木などからなる板状部材)をその長手方向がエンドレスチェーン(無端チェーン)の進行方向に対して略直交するように複数取り付けて構成され、このスラット上にワーク等の被搬送物を載置して搬送するようにしたものである。
【0004】
このような搬送装置において、ワークの変更等に伴って、搬送すべき物(ワーク等の被搬送物)の大きさが変更される場合に、それに応じてコンベア幅を変更させたい場合がある。
【0005】
このような場合には、複数条のコンベアを用いて、それぞれの幅方向位置を変更することで、被搬送物のサイズに適合させるようなことが行われている。
【0006】
この種の装置の一例としては、特許文献1に記載されているようなコンベアがある。
特許文献1に記載されているコンベアは、図10に示すように、並設される二条のベルト9の間隔を変更することができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭60−36918号公報
【特許文献2】実開昭55−101809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特許文献1に記載されているような種類のコンベアにおいては、複数条のベルト(或いはスラット)の幅の総和がコンベアの最小幅となり、これよりコンベアの幅を広げようとした場合、一条のベルト(或いはスラット)と、隣接する他の一条のベルト(或いはスラット)と、の間に、コンベアの長手方向(搬送方向)に沿って延在する平行隙間(平行溝)が生じてしまうことになる。
【0009】
このため、例えば、一の被搬送物の全部或いは一部分が上記平行隙間に落下してしまうなどして、搬送状態が不安定な状態となって円滑な搬送が行えなくなるといったおそれがある。
【0010】
そこで、上述したような長手方向に延在する平行隙間への被搬送物の落下のおそれを回避するために、特許文献2に記載されるコンベアでは、図11に示すように、二条のベルトコンベア1、2の間に、移動カバー4、5、及び固定カバー6と、を設けて構成し、ベルトコンベア1、2の間隔を広げる際に、ベルトコンベア1と一体の移動カバー4と、ベルトコンベア2と一体の移動カバー5と、固定カバー6の上を移動させることで、ベルトコンベア間の前記平行隙間を覆うようにしている。
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載されたコンベアでは、二条のベルトコンベア1、2の間の幅を狭めたいときに、移動カバー4と移動カバー5との干渉などが生じて、十分にコンベア間を狭めることができないため、小さな被搬送物などを良好に搬送することができなくなるといった実情がある。
【0012】
また、搬送方向に所定速度で移動する二条のベルトコンベア1、2の搬送面と、搬送方向に対して固定されている移動カバー4や移動カバー5の表面と、の間には、相対的な速度差があるため、ベルトコンベア1、2の搬送面に支持されている被搬送物の一部が、移動カバー4や移動カバー5の表面に接触するような場合には、被搬送物が不安定となり、円滑な搬送が行えなくなるといった実情もある。
【0013】
本発明は、上述したような実情に鑑みなされたもので、簡単かつ低コストでコンパクトな構成でありながら、ワーク等の被搬送物のサイズ変更等に対応して、搬送部の幅を高い自由度で変更することができ、以って被搬送物のサイズが変更されても被搬送物を安定して確実に搬送することができる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、本発明に係る搬送装置は、
被搬送物の搬送方向に延在されて回転駆動される複数条の環状連続体と、搬送方向横方向に延在され前記環状連続体に取り付けられる板状部材と、を含んで構成され、板状部材により形成される搬送面に被搬送物を載置して搬送する搬送装置であって、
一の環状連続体に取り付けられた板状部材と、隣接する他の環状連続体に取り付けられた板状部材と、が搬送面に直交する方向から見たときに重畳しないように、互い違いに配置されていると共に、
隣接する環状連続体の搬送方向横方向における間隔が伸縮可能に構成されたことを特徴とする。
【0015】
本発明において、対応する環状連続体が巻き掛けられる回転体が、その回転中心軸方向に沿って移動されることで、隣接する環状連続体の搬送方向横方向における間隔が伸縮可能とされることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明において、前記回転体は、搬送方向横方向に延在されるシャフトの外周ネジに係合されるボールスクリュウ機構を介して、その回転中心軸方向に沿って移動されることを特徴とすることができる。
【0017】
本発明にいて、前記外周ネジは、一のシャフトの外周に右ネジが切られた右ネジ部分と、左ネジが切られた左ネジ部分と、を含んで構成されると共に、
それぞれの部分にボールスクリュウ機構が係合され、
前記一のシャフトを一方向に回転させることで2つのボールスクリュウ機構が接近し、逆方向に回転させることで2つのボールスクリュウ機構が離間するように移動されることを特徴とすることができる。
【0018】
本発明において、前記一のシャフトが複数備えられ、複数のシャフトが共通の駆動軸により回転駆動されることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単かつ低コストでコンパクトな構成でありながら、ワーク等の被搬送物のサイズ変更等に対応して、搬送部の幅を高い自由度で変更することができ、以って被搬送物のサイズが変更されても被搬送物を安定して確実に搬送することができる搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る一実施の形態に係る搬送装置の全体構成を概略的に示す正面図である。
【図2】同上実施の形態の搬送装置を上方から見た上面図である。
【図3】同上実施の形態の搬送装置を搬送方向から見た側面図である。
【図4】(A)は、同上実施の形態の搬送装置の被駆動スプロケット部を拡大して示した図であり、(B)は(A)の側面図であり、(C)は同上実施の形態の搬送装置の搬送面(最小幅状態)を上方から見た上面図であり、(D)は同上実施の形態の搬送装置の搬送面(最大幅状態)を上方から見た上面図である。
【図5】同上実施の形態の搬送装置の最小幅状態におけるエンドレスチェーン及びスラット等の搬送部を拡大して示す拡大図である。
【図6】同上実施の形態の搬送装置の最大幅状態におけるエンドレスチェーン及びスラット等の搬送部を拡大して示す拡大図である。
【図7】同上実施の形態の搬送装置の搬送方向横方向幅変更機構の構造を説明するための図である。
【図8】同上実施の形態の搬送装置のスラットの形状の一例を示す上面図である。
【図9】従来の一条のスラットコンベアの構成例を示す図である。
【図10】従来(特許文献1)の二条のスラットコンベアの構成例及び平行隙間(平行溝)を説明するための図である。
【図11】従来(特許文献2)の平行隙間を考慮したスラットコンベアの構成例を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一例を示す実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0022】
本実施の形態に係る搬送装置は、ワーク等の物品である被搬送物を搬送する搬送装置であって、例えば、プレス機械(プレスマシン)のワーク搬送装置として利用可能である。
【0023】
なお、プレス機械(プレスマシン)のワーク搬送装置として利用される場合、本実施の形態に係る搬送装置に対するワークの受け渡しは、例えば、プレスマシン間に設けられた柱等に設置されたアームを揺動させてワークを搬送する揺動アーム方式のワーク搬送装置や、プレスマシン間に取り付けられたレール等に支持されたフィードバーを水平方向に往復移動させてワークを搬送するフィードバー方式のワーク搬送装置により行うことができ、アームやフィードバーにはワークを真空吸着(或いは磁気吸着)等により着脱可能に保持するバキュームカップ等が備えられ、本実施の形態に係る搬送装置の搬送部の所定位置でワークを解放したり吸着することで受け渡しを行うことができる。
【0024】
図1から図3では、フィードバー301を水平方向に往復移動させてワーク(被搬送物)を搬送するフィードバー方式のワーク搬送装置300が利用されている。
【0025】
図1、図2に示したように、本実施の形態に係る搬送装置1は、環状連続体としてのエンドレスチェーン(無端チェーン)10が、被駆動スプロケット120、130に巻き掛けられていると共に、駆動モータ100によりタイミングベルト等を介して回転駆動される駆動スプロケット110と、テンショナー或いはアイドラー140、150と、に巻き掛けられ、前記駆動スプロケット110により回転駆動されるように構成されている。
【0026】
エンドレスチェーン10は、図2、図3、図5、図6に示すように、九条のエンドレスチェーン(10A〜10I)が並行に配設されて構成されている。エンドレスチェーン10(10A〜10I)は、図4に示すように、ピン部材12を介して鎖状に連接されているリンク体11(内側リンク体11A及び外側リンク体11B)を含んで構成されている。
【0027】
ここで、本実施の形態では、図4(D)、図6等に示されるように、鎖状に複数連接されているリンク体11に対して、一つおきに、その外周部分に、アタッチメント13を介してスラット(板状部材)20(20A,20B)が取り付けられている。
【0028】
すなわち、一のエンドレスチェーンについて、リンク体11(内側リンク体11A及び外側リンク体11B)のうち、例えば、内側リンク体11A及或いは外側リンク体11Bの一方についてのみ、スラット(板状部材)20(20A,20B)が取り付けられている。
【0029】
このエンドレスチェーン10に取り付けられるスラット20(20A,20B)の上面(搬送面)にワーク等の被搬送物が載置され、当該ワーク等の被搬送物は、図1、図2、図4等において搬送方向下流側に搬送されるようになっている。
【0030】
図4(A)、図4(B)に示したように、スラット20(20A或いは20B)の一部の上面には、搬送面側に突出する突起部材20Cが、搬送方向において所定間隔で設けられており、載置されるワーク等の被搬送物と係合し、滑り(スラット20に対する被搬送物の相対変位)などを規制して、良好に、ワーク等の被搬送物を搬送方向下流側に搬送することができるように構成されている。
【0031】
なお、両端のエンドレスチェーン10A、10Iについては、エンドレスチェーン10B〜10H側(内側)に長く延在されるスラット20Bが取り付けられている(図4(D)参照)。
【0032】
また、エンドレスチェーン10B〜10Hについては、それぞれのエンドレスチェーン中心から搬送方向横方向両側にほぼ均等に延在されるスラット20Aが取り付けられている(図4(D)参照)。
【0033】
そして、各エンドレスチェーン10(10A〜10I)に取り付けられたスラット20はその上面の高さが同じとなるように取り付けられて搬送面(被搬送物が載置される面)を形成するようになっているが、隣接するエンドレスチェーンに取り付けられたスラット20(20A、20B)同士が、搬送方向において相互に干渉等しないように、図4(D)や図6等から明確に理解されるように、互い違いにチドリ状に配設されている。
【0034】
本実施の形態では、隣接するエンドレスチェーン10A〜10Iに取り付けられたスラット20(20A、20B)同士がエンドレスチェーン10A〜10I間において相互に干渉等しないように、一のエンドレスチェーン内において鎖状に複数連接されているリンク体11に対して一つおきに(すなわち、内側リンク体11A或いは外側リンク体11Bの何れか一方に)、スラット20を取り付ける構成としたので、一のエンドレスチェーン内において、スラット20が取り付けられるリンク体と、スラット20が取り付けられないリンク体と、が交互に存在することになるため、一のエンドレスチェーンにおいてスラット20は櫛歯のような構成となる(図4(D)、図6参照)。
【0035】
このため、隣接するエンドレスチェーン(10A〜10I)同士の櫛歯がかみ合うように配設することで、スラット20同士が干渉し合うことなく、搬送方向に略直交する方向において、スラット20の長さ以下に、隣接するエンドレスチェーン(10A〜10I)同士を接近させることができる(図4(C)、図5参照)。
【0036】
また、エンドレスチェーン(10A〜10I)の長手方向(搬送方向)に沿って延在する平行隙間(平行溝)が形成されることを回避しながら、図4(C)の状態から、隣接するエンドレスチェーン(10A〜10I)同士を離間させることができる(図4(D)、図6参照)。
【0037】
このことを利用して、本実施の形態では、図4(C)、図5に示したように、一のエンドレスチェーンに取り付けられているスラット20の先端が、他のエンドレスチェーンのスラット20の先端等に干渉しない範囲(最小幅に相当)で、両者を搬送方向に略直交する方向に関して接近させることができる構成とした。
【0038】
一方で、本実施の形態では、図4(D)、図6に示したように、一のエンドレスチェーンと他のエンドレスチェーンとの間にエンドレスチェーン(10A〜10I)の長手方向(搬送方向)に沿って延在する所定以上に(すなわち、被搬送物の搬送に悪影響を及ぼすような)幅広の平行隙間が形成されない範囲(最大幅に相当)で両者を搬送方向に略直交する方向(搬送方向横方向)において離間させることができる構成とした。
【0039】
従って、本実施の形態によれば、搬送方向に沿って延在する所定以上に幅広の平行隙間を生じさせることを回避することができ、安定した搬送を可能にしながら、搬送方向横方向幅を前記最小幅から前記最大幅まで適宜に変更することができることになる。
【0040】
すなわち、本実施の形態によれば、簡単かつ低コストでコンパクトな構成でありながら、ワーク等の被搬送物のサイズ変更に対応して、搬送方向横方向幅(搬送部の幅)を高い自由度で変更することができ、以って被搬送物のサイズが変更されても被搬送物を安定して確実に搬送することができる搬送装置を提供することができる。
【0041】
ところで、このような搬送方向横方向幅の変更(伸縮)は、複数条のエンドレスチェーンを並列して設けて多列化することで、よりその伸縮幅を拡張することができる。
【0042】
そして、このような搬送方向横方向幅の変更は、図7に示すように、搬送方向横方向幅変更機構200を利用することで達成することができる。
【0043】
本実施の形態の搬送方向横方向幅変更機構200は、一つの駆動モータ210により駆動シャフト201を回転駆動し、この回転を、傘歯車などを含んで構成される歯車伝達機構202A〜202Dを介して、伸縮用回転スクリュウシャフト203A〜203Dへ伝達するようになっている。
【0044】
伸縮用回転スクリュウシャフト203Aには、中央のエンドレスチェーン10Eの両側に隣接するエンドレスチェーン10D、10Fのリンク体11に噛合する幅調整用スプロケット204D,204F(本発明の回転体に相当する)がボールスクリュウ機構205D,205Fを介して取り付けられている。
【0045】
ここで、伸縮用回転スクリュウシャフト203Aの外周には、長手方向の中央付近を挟んで両側に向きの異なるネジ(右ネジ、左ネジ)が切られていて、そのネジにボールスクリュウ機構205D,205Fに内装されるボールが係合されている。
【0046】
このため、伸縮用回転スクリュウシャフト203Aが所定方向に回転されると、それに従って、ボールスクリュウ機構205Dは、図7の最小幅の状態から最大幅方向に向かって、伸縮用回転スクリュウシャフト203A上を図7左方向に移動されることになると共に、ボールスクリュウ機構205Fは、図7の最小幅の状態から最大幅方向に向かって、伸縮用回転スクリュウシャフト203A上を図7右方向に移動されることになる。
【0047】
この一方、伸縮用回転スクリュウシャフト203Aを先ほどとは逆方向に回転させると、それに従って、ボールスクリュウ機構205Dは、図7の最小幅方向に向かって、伸縮用回転スクリュウシャフト203A上を図7中右方向に移動されることになると共に、ボールスクリュウ機構205Fは、図7の最小幅方向に向かって、伸縮用回転スクリュウシャフト203A上を図7中左方向に移動されることになる。
【0048】
そして、これに伴い、ボールスクリュウ機構205D、205Fに対して回転自在に取り付けられている幅調整用スプロケット204D、204Fが、ボールスクリュウ機構205D、205Fと共に搬送方向横方向に移動されるため、当該幅調整用スプロケット204D、204Fに噛合されているエンドレスチェーン10D、10Fの下側(図1参照)が、ボールスクリュウ機構205D、205Fの移動に連動して搬送方向横方向に移動されることになる。
【0049】
なお、エンドレスチェーン10D、10Fに、それぞれ対応して噛合している被駆動スプロケット120(120D,120F)、130(130D,130F)、アイドラー140(140D,140F)などは、これらをそれぞれ支持している支持軸に対して軸方向(搬送方向横方向)に関して移動自在に取り付けられているため、ボールスクリュウ機構205D、205Fの移動に連動したエンドレスチェーン10D、10Fの搬送方向横方向への移動に伴い移動される。
【0050】
また、エンドレスチェーン10D、10Fに対応する駆動スプロケット110(110D、110F)は、駆動モータ100により回転駆動される回転駆動軸の外周に回転方向への駆動を伝達するためにボールスプライン係合により係合されていて、回転駆動軸に対して回転方向への相対移動は規制されているが、軸方向(搬送方向横方向)への移動は自在となっているため、他のスプロケットなどと同様に、エンドレスチェーン10D、10Fの搬送方向横方向への移動に伴い移動される。
【0051】
このような機構が、それぞれのエンドレスチェーンについて設けられていて、図7に示したように、伸縮用回転スクリュウシャフト203Bについてはボールスクリュウ機構205C、205Gを介してエンドレスチェーン10C、10Gが搬送方向横方向に移動可能(伸縮自在)に連結され、伸縮用回転スクリュウシャフト203Cについてはボールスクリュウ機構205B、205Hを介してエンドレスチェーン10B、10Hが搬送方向横方向に移動可能(伸縮自在)に連結され、伸縮用回転スクリュウシャフト203Dについてはボールスクリュウ機構205A、205Iを介してエンドレスチェーン10A、10Iが搬送方向横方向に移動可能(伸縮自在)に連結されている。
【0052】
なお、搬送方向横方向(幅方向)の中央(センター)に配置されるエンドレスチェーン10E及び各スプロケット120E、130E、140E、150E、幅調整用スプロケット204Eなどは、搬送方向横方向(幅方向)に対して固定的に取り付けられている。
【0053】
ところで、搬送方向中心(センター)から離れた位置にあるエンドレスチェーンほど、共通の駆動シャフト201の一回転によって、搬送方向横方向に移動される距離を大きくすることが必要であるため、本実施の形態では、伸縮用回転スクリュウシャフト203Aのネジピッチが一番小さく、伸縮用回転スクリュウシャフト203B、203C、203Dの順番で徐々にピッチが大きくなるように構成されている。
【0054】
これにより、共通の駆動シャフト201の一回転によって、それぞれのエンドレスチェーン10A〜10I(中央の10Eは固定であるため除く)が搬送方向横方向に必要な移動量に応じて移動されることとなり、エンドレスチェーン10A〜10Iの搬送方向横方向における相互の間隔、延いては、図4(c)、図5の最小幅を示す状態から、図4(D)、図6の最大幅を示す状態まで、搬送部の搬送方向横方向幅を自在に変更することができることになる。
【0055】
従って、本実施の形態に係る搬送装置1によれば、図4(c)、図5の最小幅を示す状態から、図4(D)、図6の最大幅を示す状態までの間において、エンドレスチェーン10A〜10Iの長手方向(搬送方向)に沿って連続して延在する幅広の平行隙間が形成されることを回避することができるので、被搬送物の搬送に悪影響を及ぼすようなことがなく、被搬送物のサイズに応じて搬送面の幅を変更可能にしながら、安定して被搬送物を搬送することができる。
【0056】
本実施の形態においては、エンドレスチェーン10A〜10Iが下側に弛まないように、図4(B)に示すように、エンドレスチェーン10A〜10Iの上側部分(搬送面側)を下方から摺動自在に支持するガイド部材401(401A〜401I)が設けられている。
【0057】
このため、このガイド部材401(401A〜401I)についても、エンドレスチェーン10A〜10Iの搬送方向横方向(幅方向)への伸縮に連動させて移動させる必要がある。
【0058】
また、本実施の形態においては、エンドレスチェーン10A〜10Iの下側部分(搬送面側ではなく戻り側)についても、下側に弛まないように、図4(B)に示すように、エンドレスチェーン10A〜10Iの下側部分を下方から摺動自在に支持するガイド部材402(402A〜402I)が設けられている。
【0059】
ここにおいて、本実施の形態では、エンドレスチェーン10A〜10Iのスラット20の上面に突起部材20Cを設けているため、図4(B)に示すように、エンドレスチェーン10A〜10Iの下側部分の下方には、突起部材20Cが突出することになる。
【0060】
このため、エンドレスチェーン10A〜10Iの搬送方向横方向(幅方向)への伸縮に連動して突起部材20Cが移動することになるため、干渉を避けるためには、このガイド部材402(402A〜402I)についても、エンドレスチェーン10A〜10Iの搬送方向横方向(幅方向)への伸縮に連動させて移動させる必要がある。
【0061】
このようなことから、本実施の形態では、ガイド部材401(401A〜401I)、ガイド部材402(402A〜402I)を搬送方向横方向(幅方向)に移動させるための搬送方向横方向幅変更機構400が設けられている。
【0062】
搬送方向横方向幅変更機構400は、搬送方向横方向幅変更機構200と同様の構成を採用することができ、図7に示した各幅調整用スプロケット204A〜204Iの代わりに、ガイド部材401(401A〜401I)、ガイド部材402(402A〜402I)を幅方向に移動自在な各ボールスクリュウ機構(405A〜405I)に支持する構成とすることができる。
【0063】
なお、搬送方向横方向幅変更機構400の駆動源としては、搬送方向横方向幅変更機構200とは別個独立に設けることも可能であるが、構成の簡略化、同期制御の簡便さなどの観点から、搬送方向横方向幅変更機構200と共通の駆動モータ210を駆動源として利用することも可能である。
【0064】
ところで、本実施の形態に係る搬送装置1に対してワーク等の被搬送物を受け渡す装置として、図1〜図3に示すように、フィードバー方式のワーク搬送装置300を採用した場合、プレスマシン等に対してワーク(被搬送物)を搬入或いは搬出するためのフィードバー301を搬送方向に往復移動させてワークを搬送するが、フィードバー301に取り付けられているバキュームカップ等によりワーク等の被搬送物を着脱可能に保持して所定位置でワークを解放したり吸着することで受け渡しを行うようになっている。
【0065】
そして、ワークのサイズを変更する場合には、ワーク搬送装置300のフィードバー301を、ワークのサイズの変更に合わせて、図3中左右方向に移動させる構成であるため、これに応じて、一対のフィードバー301間に配設される搬送装置1の搬送方向横方向幅を変更することが必要となる。
【0066】
すなわち、プレス加工のように、複数の工程において種々の装置と協働してワークに対して受け渡しや搬送などを含む種々の処理が行われるような場合には、ワークのサイズ変更に応じて、他の装置との関係などから搬送装置1の搬送部の搬送幅を変更することが要求される場合が想定されるが、本実施の形態に係る搬送装置1によれば、このような要求に応えることができる。
【0067】
以上で説明したように、本実施の形態によれば、ワーク等の被搬送物のサイズ変更等に対応して搬送方向横方向幅(搬送部の幅)を高い自由度で変更することを可能にしながら、搬送方向に沿って延在する所定以上に幅広の平行隙間を生じさせることがなく、以って安定した搬送を実現しながら、搬送方向横方向幅を前記最小幅から前記最大幅まで適宜に変更することができる。
【0068】
すなわち、本実施の形態によれば、簡単かつ低コストでコンパクトな構成でありながら、ワーク等の被搬送物のサイズ変更に対応して、搬送方向横方向幅(搬送部の幅)を高い自由度で変更することができ、以って被搬送物のサイズが変更されても被搬送物を安定して確実に搬送することができる搬送装置を提供することができる。
【0069】
ところで、スラット20の形状は、図4〜図6に例示したような長方形に限定されるものではなく、図8に示すような菱形形状とすることができると共に、その他の適宜の形状とすることができる。
【0070】
また、本実施の形態では、鎖状に複数連接されているリンク体11に対して、一つおきに、スラット(板状部材)20を取り付けることとしたが、これに限定されるものではなく、リンク体11(内側リンク体11A及び外側リンク体11B)に対して、複数個連続してスラット20を取り付ける一方で、同数だけスラット20を連続して取り付けないような取り付け態様を採用することもできる。
【0071】
また、本実施の形態では、エンドレスチェーンを九条並設した場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、エンドレスチェーンを二条以上に並設した場合に適用可能である。
【0072】
また、本実施の形態では、搬送部を構成する部材(環状連続体)としてエンドレスチェーンを一例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、環状連続体としてエンドレスベルトを採用し、これに千鳥状にスラットを取り付けたような構成を採用した場合にも適用可能である。
【0073】
また、本実施の形態では、隣接するエンドレスチェーンの間隔を変更する際に、駆動モータ210の動力を利用した場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、人力その他の動力を利用することも可能である。
【0074】
また、本実施の形態において、隣接するエンドレスチェーンの間隔は、一のエンドレスチェーンを搬送方向に移動(回動)させたときに、他のエンドレスチェーンと干渉することなく相互に独立して移動(回動)自在となるように、相互に離間させることができる程度まで広げることができるように構成することができる。
かかる構成により、メンテナンス作業の際などにおいて、複数条のエンドレスチェーンの一条一条を独立して移動(回動)させたり、取り外したり、交換したりする作業を容易に行うことが可能になるため、作業性を大幅に向上させることができる。
【0075】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 搬送装置
10 エンドレスチェーン(環状連続体の一例)
10A〜10I エンドレスチェーン
11 リンク体
11A 内側リンク体
11B 外側リンク体
20 スラット(板状部材)
20A,20B スラット
100 駆動モータ
120、130 被駆動スプロケット
200 搬送方向横方向幅変更機構
201 駆動シャフト
202 歯車伝達機構
203 伸縮用回転スクリュウシャフト(本発明に係るシャフトに相当)
204 幅調整用スプロケット(本発明に係る回転体に相当)
205 ボールスクリュウ機構
210 駆動モータ
301 フィードバー
300 フィードバー方式のワーク搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物の搬送方向に延在されて回転駆動される複数条の環状連続体と、搬送方向横方向に延在され前記環状連続体に取り付けられる板状部材と、を含んで構成され、板状部材により形成される搬送面に被搬送物を載置して搬送する搬送装置であって、
一の環状連続体に取り付けられた板状部材と、隣接する他の環状連続体に取り付けられた板状部材と、が搬送面に直交する方向から見たときに重畳しないように、互い違いに配置されていると共に、
隣接する環状連続体の搬送方向横方向における間隔が伸縮可能に構成されたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
対応する環状連続体が巻き掛けられる回転体が、その回転中心軸方向に沿って移動されることで、隣接する環状連続体の搬送方向横方向における間隔が伸縮可能とされることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記回転体は、搬送方向横方向に延在されるシャフトの外周ネジに係合されるボールスクリュウ機構を介して、その回転中心軸方向に沿って移動されることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記外周ネジは、一のシャフトの外周に右ネジが切られた右ネジ部分と、左ネジが切られた左ネジ部分と、を含んで構成されると共に、
それぞれの部分にボールスクリュウ機構が係合され、
前記一のシャフトを一方向に回転させることで2つのボールスクリュウ機構が接近し、逆方向に回転させることで2つのボールスクリュウ機構が離間するように移動されることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記一のシャフトが複数備えられ、複数のシャフトが共通の駆動軸により回転駆動されることを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−103839(P2013−103839A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251267(P2011−251267)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)