説明

携帯用切断機

【課題】ディスクカッタに噴射される水の使用量を抑制する。
【解決手段】この携帯用切断機10は、エンジン等の駆動源によりディスクカッタ28を駆動して被削材の切断作業を行うために使用される。ディスクカッタ28にはノズル37から水が噴射され、ディスクカッタ28が冷却されるとともに粉塵の発生が抑制される。ディスクカッタ28が被削材に接触すると、歪みゲージ53a,53bからの信号により接触状態が判定されてノズル37から水が噴射され、接触しなくなるとノズル37に対する水の供給が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスクカッタを回転駆動してディスクカッタにより被削材を切断する携帯用切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクカッタにより石材やコンクリートを被削材としてこれに筋付けや切断作業を行うために携帯用切断機が使用される。携帯用切断機にはエンジンや電動モータ等の駆動源が搭載され、ディスクカッタは駆動源により回転駆動される。携帯用切断機により切断作業を行う際には、切断作業中のディスクカッタを冷却するとともに被削材からの粉塵発生を抑制するために、ディスクカッタに水を供給するようにしている。水を供給する注水装置は、ディスクカッタに水を噴射させるノズルと、水道や水タンクなどの給水源に接続される継手とを有し、ノズルは継手に給水ホースにより接続されている。
【0003】
給水源からの水をノズルに連通させる状態と連通を遮断する状態とに切り換えるために、流路を開閉する開閉弁が切断機に設けられており、切断作業を行う際には手動式の開閉弁が操作されてノズルから水がディスクカッタに噴射される。作業者が切換弁を操作してノズルから水を噴射させるようにしてから、携帯用切断機を操作して被削材の切断作業を行うようにすると、切断作業が行われるまでの間も水がノズルから噴射されることになる。手動操作により開閉弁を操作するようにした携帯用切断機においては、開閉弁を操作しないとエンジンが停止しているときにも水がノズルから噴射し続けることになる。そこで、エンジンが回転駆動されているときにエンジンの作動信号により手動式の開閉弁に水流を供給し、エンジンが停止される水流供給を停止するようにした切断機が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−198765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジンが駆動されているときにのみ切断機に水流を供給するようにすると、手動式の切換弁を操作しなくとも、エンジンが停止されると水流の供給が停止されるので、エンジン停止時に無駄な水を消費することが防止できることになる。しかしながら、切断作業が行われていないときにもエンジンを駆動し続けることが多く、実際に切断作業が行われていない状態のもとでもディスクカッタに水が供給され続けることになり、無駄な水を消費することになる。
【0006】
本発明の目的は、ディスクカッタに噴射される水の使用量を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の携帯用切断機は、切断機本体に組み込まれた駆動源によりディスクカッタを駆動する携帯用切断機であって、前記ディスクカッタに水を噴射するノズルと、前記ディスクカッタが被削材に接触したことを検出する接触検出手段と、前記接触検出手段からの信号に基づいて前記ノズルに対する水の供給を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の携帯用切断機は、前記接触検出手段はアームに加わる応力を検出することを特徴とする。本発明の携帯用切断機は、前記ディスクカッタが回転自在支持されるアームに、前記ディスクカッタと被削材との接触により前記アームに加わる応力を検出する歪みゲージを設け、当該歪みゲージからの信号に基づいて前記ノズルに対する水の供給を制御することを特徴とする。
【0009】
本発明の携帯用切断機は、前記接触検出手段は回転体に加わる負荷を検出することを特徴とする。本発明の携帯用切断機は、前記駆動源の回転トルクを前記ディスクカッタに伝達する動力伝達系における回転体に、前記ディスクカッタと被削材との接触により前記回転体に加わる負荷を検出するトルクゲージを設け、当該トルクゲージからの信号に基づいて前記ノズルに対する水の供給を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の携帯用切断機は、前記アームの幅方向一方側に第1の歪みゲージを設け、幅方向他方側に第2の歪みゲージを設け、被削材の水平面に前記ディスクカッタが接触して前記アームの両側部に加わる応力方向が引張応力と圧縮応力とに逆転したことをそれぞれの前記歪みゲージが検出したとき、および被削材の垂直面に前記ディスクカッタが接触してそれぞれの前記歪みゲージが共に圧縮応力を検出したときに、前記ノズルに水を供給することを特徴とする。本発明の携帯用切断機は、給水源から供給される水を前記ノズルに供給する供給ホースに当該供給ホースの流路を開閉する開閉弁を設け、前記ディスクカッタが前記被削材に接触しているときに前記開閉弁を開放し、接触していないときには前記開閉弁を閉じることを特徴とする。本発明の携帯用切断機は、前記ノズルに水を供給するポンプを有し、前記ディスクカッタが前記被削材に接触したときに前記ポンプを駆動し、接触していないときには前記ポンプの駆動を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、携帯用切断機のディスクカッタを被削材に接触させて切断作業を行う状態となると、ディスクカッタには水がノズルから噴射され、ディスクカッタを被削材から離すと注水が停止される。これにより、ディスクカッタが回転駆動されていても、切断作業が停止されているときには注水が停止され、水の使用量を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態である携帯用切断機を示す正面図である。
【図2】図1におけるA−A線拡大断面図である。
【図3】図1におけるB−B線拡大断面図である。
【図4】図1の平面図である。
【図5】図1に示された開閉弁の平面図である。
【図6】図5におけるC−C線断面図である。
【図7】流路開放状態における開閉弁を示す断面図である。
【図8】(A)は被削材の水平面を切断作業している状態における携帯用切断機を示す正面図であり、(B)は被削材の垂直面を切断作業している状態における携帯用切断機を示す正面図である。
【図9】図1におけるD−D線拡大断面図である。
【図10】注水制御回路を示すブロック図である。
【図11】切断作業時にアームに加わる応力状態を示す応力状態表である。
【図12】他の実施の形態である携帯用切断機を示す正面図である。
【図13】図12におけるE−E線拡大断面図である。
【図14】(A)は図13におけるF−F線断面図であり、(B)は図13におけるG−G線断面図である。
【図15】(A)は変形例の開閉弁を示す平面図であり、(B)は(A)のH−H線断面図であり、(C)流路開放状態における開閉弁を示す平面図であり、(D)は(C)のI−I線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。携帯用切断機10は切断機本体としての本体ケース11を有し、本体ケース11内には駆動源としてのエンジン12が組み込まれている。エンジン12は、図2に示されるように、クランク軸13が回転自在に装着されるクランクケース14a,14bと、ピストン15が往復動自在に組み込まれるシリンダ16とを有している。ピストン15はコネクティングロッド17によりクランク軸13に連結され、ピストン15の往復動によりクランク軸13が回転駆動される。シリンダ16内の燃焼室18には図示しない吸気ポートから混合気が供給され、燃焼排ガスは図示しない排気ポートから外部に排出される。エンジン12を始動させるために、クランクケース14aにはリコイルスタータ19が設けられており、リコイルスタータ19はクランク軸13の一方の突出端に連結されている。シリンダ16には燃焼室18内に供給された混合気を点火するための点火プラグ20が設けられている。
【0014】
クランク軸13の他方の突出端には遠心クラッチ21が装着されている。遠心クラッチ21はクランク軸13に固定されるロータ22と、このロータ22が収容されるクラッチドラム23とを有し、クラッチドラム23内にはロータ22に揺動自在に装着される複数のクラッチシュー24が組み込まれている。クランク軸13の回転数が作業用の回転数にまで高まると、クラッチシュー24がばね力に抗して遠心力によりクラッチドラム23の内周面に密着し、クランク軸13の回転がクラッチドラム23に伝達される。
【0015】
クランクケース14bにはアーム25が取り付けられている。アーム25の先端部には、図1に示されるように、従動側のプーリ26が固定された従動側の回転軸27が回転自在に装着され、この回転軸27にはディスクカッタ28が取り付けられている。図2に示されるように、クランク軸13に軸受を介して装着される駆動側のプーリ29がクラッチドラム23に取り付けられている。この駆動側のプーリ29と従動側のプーリ26との間にはベルト30が掛け渡されており、クランク軸13の回転がクラッチドラム23に伝達されると、プーリ26,29およびベルト30を介してディスクカッタ28にクランク軸13の回転トルクが伝達される。クランク軸13から回転軸27がエンジン動力をディスクカッタ28に伝達するための動力伝達系を構成している。
【0016】
図1および図4に示されるように本体ケース11の後部にはリアハンドル31が後方に突出して取り付けられ、本体ケース11の前部にはフロントハンドル32が本体ケース11を横切って跨ぐように取り付けられている。作業者が携帯用切断機10により被削材の切断作業を行うときには、一方の手でリアハンドル31を把持し、他方の手でフロントハンドル32を把持して携帯用切断機10を持ち上げることになる。携帯用切断機10が使用されないときには、本体ケース11の前後に設けられた脚部33,34の部分で基盤面Sの上に携帯用切断機10が配置される。この状態のもとでは、ディスクカッタ28は基盤面Sには接触しないようになっている。リアハンドル31にはエンジン12の回転数を調整するためのスロットルレバー35が設けられている。
【0017】
アーム25には図1および図4に示されるようにブレードカバー36が取り付けられており、このブレードカバー36によりディスクカッタ28の後部側が覆われている。このブレードカバー36には、図3に示されるようにディスクカッタ28を介して相互に対向して2つのノズル37が取り付けられている。それぞれのノズル37の先端には噴射口38が設けられており、それぞれの噴射口38からはディスクカッタ28の表面に水が噴射される。これにより、切断中のディスクカッタ28が冷却されるとともに切断時に発生する粉塵の飛散が抑制される。両方のノズル37は相互に接続ホース39により接続されており、それぞれのノズル37に水を供給するために、図1に示されるように供給ホース41がノズル37に接続されている。
【0018】
供給ホース41は、図1に示されるように、本体ケース11に取り付けられた開閉弁42に接続されている。開閉弁42は図5〜図7に示されるように、流入ポート43と流出ポート44が形成されたバルブハウジング45を有し、流出ポート44には継手46により供給ホース41が取り付けられている。一方、流入ポート43に取り付けられた継手47には、水道や水タンクなどの給水源に接続される図示しない給水ホースが接続されるようになっている。
【0019】
バルブハウジング45には流入ポート43と流出ポート44とを連通させる連通路48を開閉するための弁体49が開閉自在に組み込まれている。バルブハウジング45には弁体49が連通路48を閉じる方向にばね力を付勢するためのコイルばね51が組み込まれており、ばね力に抗して弁体49を駆動して連通路48を開放させるためのソレノイド52がバルブハウジング45に設けられている。このように、開閉弁42はソレノイド52に印加される駆動信号により開閉動作が行われる電磁弁となっている。図6は弁体49が連通路48を閉じた状態を示し、図7はソレノイド52に駆動信号が印加されて弁体49が連通路48を開放した状態を示す。
【0020】
携帯用切断機10による被削材Wに対する筋付け作業を含めた切断作業は、ディスクカッタ28を、図8(A)に示されるように水平面に接触させる場合と、図8(B)に示されるように垂直面に接触させる場合と、さらに傾斜面に接触させる場合がある。いずれの作業形態においても、切断作業が行われると、ディスクカッタ28に加わる負荷によりアーム25には応力が加えられ、クランク軸13の動力をディスクカッタ28に伝達するための動力伝達系には負荷トルクが加えられることになる。
【0021】
図9にはアーム25の横断面が示されており、アーム25はアーム基部25aとこれに取り付けられるアームカバー部25bとを有している。アーム25の幅方向上側つまり一方側には第1の歪みゲージ53aが取り付けられ、アーム25の幅方向下側つまり他方側には第2の歪みゲージ53bが取り付けられている。それぞれの歪みゲージ53a,53bにはアーム25に加わる応力に応じて伸縮歪みが発生し、歪みゲージ53a,53bの電気抵抗が変化する。その抵抗値の変化により、図8に示すようにディスクカッタ28を被削材Wに接触させて切断作業を行う状態であるか、あるいは図1に示すようにディスクカッタ28が被削材Wに接触していない無作業状態であるかを検出することができる。ディスクカッタ28が被削材Wに接触した作業状態であることが検出されたときには、開閉弁42が連通路48を開放して水がノズル37から噴出される。一方、無作業状態であることが検出されたときには、開閉弁42が連通路48を閉じて水の噴出が停止される。
【0022】
したがって、ディスクカッタ28により被削材Wに対して切削作業を行うときにのみ水がディスクカッタ28に噴射されることになり、エンジン12が駆動されてディスクカッタ28が回転しているときでも、切削作業が行われていないときには水がノズル37から噴射されることがない。これにより、水の使用量を大幅に低減することができる。さらに、手動操作で注水と注水停止とを操作することがないので、作業者の注水停止忘れによる無駄な水の噴出を防止することができる。
【0023】
ディスクカッタ28を被削材Wに接触させると、アーム25の側部に設けられた歪みゲージ53a,53bには引張応力ないし圧縮応力が加わるので、応力に応じて歪み変形する歪みゲージ53a,53bからの信号により接触状態を検出することができる。図示する場合には、2つの歪みゲージ53a,53bが設けられているが、一方の歪みケージのみを設けた単一ゲージ形態としても、アーム25に加わる応力の変化に応じて接触状態を検出することができる。その場合には、ディスクカッタ28が被削材Wに接触していない状態つまり無作業時における歪みゲージの抵抗値を基準値とする零点調整を行い、歪みゲージの抵抗値が基準値に対して所定の接触判定値よりも大きく変化したときにディスクカッタ28が接触状態であると判定することができる。これに対し、図示するように、2つの歪みゲージ53a,53bを設けた複数ゲージ形態とすると、接触状態の検出精度をより高めることができる。図9において実線で示すように、それぞれの歪みゲージ53a,53bはアーム25のアーム基部25aに取り付けられている。
【0024】
上述したように、ディスクカッタ28が被削材Wに接触したことをアーム25に加わる応力変化を歪みゲージにより検出するようにしているが、アーム25が弾性変形するので、アーム25の変形を変位計により測定してディスクカッタ28の接触を検出するようにしても良い。
【0025】
図10は携帯用切断機10の注水を制御する注水制御回路を示すブロック図であり、それぞれの歪みゲージ53a,53bからはコントローラ54に検出信号が送られる。開閉弁42のソレノイド52にはコントローラ54から駆動信号が送られるようになっている。コントローラ54は、歪みゲージ53a,53bからの信号に基づいて、その変化により開閉弁42に対して駆動信号を送るか否かを演算処理する演算部を有している。
【0026】
図11はそれぞれの歪みゲージ53a,53bに加わる応力の変化を無作業時と作業時とについて示す応力状態表である。無作業時には第1の歪みゲージ53aにはアーム25の自重により引張応力が加わっており、第2の歪みゲージ53bには圧縮応力が加わっている。図8(A)に示されるようにディスクカッタ28を被削材Wの水平面に接触させると、第1の歪みゲージ53aには圧縮応力が加わることになり、第2の歪みゲージ53bには引張応力が加わることになる。このように、ディスクカッタ28を水平面に接触させると、第1の歪みゲージ53aは無作業時の引張応力が作用した状態から圧縮応力が作用した状態に逆転し、第2の歪みゲージ53bは無作業時の圧縮応力が作用した状態から引張応力が作用する状態に逆転する。
【0027】
一方、図8(B)に示されるようにディスクカッタ28を被削材Wの垂直面に接触させると、それぞれの歪みゲージ53a,53bには圧縮応力が加わることになる。このときには、第1の歪みゲージ53aは無作業時の引張応力が作用した状態から圧縮応力が作用した状態に逆転し、第2の歪みゲージ53bは無作業時の圧縮応力がより大きくなる。このように、ディスクカッタ28を垂直面に接触させると、両方の歪みゲージ53a,53bが共にアーム25に圧縮応力が加わった状態となる。
【0028】
図示するように複数ゲージ形態とすると、複数の歪みゲージ53a,53bにより検出される応力逆転状態ないし反転状態の信号に基づいて、単一ゲージ形態に比してより高い精度で接触状態を検出することができる。
【0029】
図12は本発明の他の実施の形態である携帯用切断機10を示す正面図である。図13は図12におけるE−E線拡大断面図であり、図14(A)は図13におけるF−F線断面図であり、図14(B)は図13におけるG−G線断面図である。
【0030】
上述のように、切断作業が行われるときには、クランク軸13の動力をディスクカッタ28に伝達するための動力伝達系には負荷トルクが加わることになるので、動力伝達系に加わる負荷が判定値つまり閾値を超えたか否かによってディスクカッタ28が被削材Wに接触したか否かを検出することができる。そこで、図12〜図14に示される携帯用切断機10においては動力伝達系に加わる負荷トルクに応じて開閉弁42の開閉を制御する。
【0031】
図13に示されるように、回転体としての従動側の回転軸27はアーム基部25aに設けられた円筒部56に軸受57を介して回転自在に支持されており、回転軸27の一端部にはディスクカッタ28が取り付けられている。ディスクカッタ28の径方向中央部には両側からホイルワッシャ58,59が押圧され、外側のホイルワッシャ59に当接するワッシャ61がボルト62により固定されている。回転軸27の他端部には従動側のプーリ26がボルト63により固定されている。
【0032】
回転軸27の外周面にはトルクゲージ64が貼り付けられている。トルクゲージ64は動力伝達系に加わる負荷トルクに応じて回転軸27に応力が加わると、それに応じて弾性変形し、歪みゲージ53a,53bと同様に電気抵抗が変化する。トルクゲージ64からの検出信号をコントローラ54に送るために、トルクゲージ64の軸方向両側にはトルクゲージ64の出力端子65,66が円周方向に連なって環状に設けられており、それぞれの出力端子65,66は回転軸27の外周面に絶縁されている。円筒部56にはそれぞれの出力端子65,66に接触する接続端子67,68が取り付けられており、出力端子65,66は信号線67a,68aによりコントローラ54に接続されている。
【0033】
コントローラ54は、ディスクカッタ28が被削材Wに接触して回転軸27に加わる負荷トルクが閾値を超えたか否かを演算することにより、開閉弁42を作動させてディスクカッタ28に対する注水を制御する。図12〜図14に示す携帯用切断機10においては、回転軸27の負荷トルクに応じて注水を制御するようにしているが、クランク軸13やクラッチドラム23等のように、動力伝達系を構成する回転体であれば、回転軸27以外の部材に加わる負荷トルクをトルクゲージ64により検出するようにしても良い。
【0034】
このように、アーム25に加わる応力を検出する形態に代えて動力伝達系における負荷トルクを検出する形態とすることにより、ディスクカッタ28が被削材Wに接触した状態となっているか否かを検出することができる。ただし、図12に示すように、アーム25には図1に示した携帯用切断機10と同様に歪みゲージ53a,53bを設けるようにし、歪みゲージ53a,53bとトルクゲージ64からの検出信号がそれぞれコントローラ54に送るようにした形態としても良い。このように、アーム25に加わる応力と動力伝達系に加わる負荷トルクとにより注水を制御する形態においては、歪みゲージ53a,53bとトルクゲージ64の一方からの信号によりディスクカッタ28の接触を検出したときに注水する形態と、両方の信号により接触が検出されたときに注水する形態とのいずれかに設定することができる。
【0035】
上述した実施の形態においては、開閉弁42の開閉により注水制御を行うようにしており、継手47には給水源からの水が常時供給されている。これに対し、図12に示すように、給水源としての給水ポンプ69の吐出口に接続されたホース70を継手47に接続すると、給水ポンプ69をオンオフすることによりノズル37に対する水の供給を制御することになる。この形態においては、電磁弁からなる開閉弁42は不要となり、給水ポンプ69の吸入口には図示しない給水タンク等が接続される。ただし、開閉弁を電磁弁とすることなく、手動操作式の開閉弁を本体ケース11に取り付けるようにしても良い。
【0036】
図15は手動操作式の開閉弁42aを示す。この開閉弁42aのバルブハウジング45には連通孔48aが形成された球形状の弁体49aが回転自在に設けられており、弁体49aには操作レバー71が取り付けられている。開閉弁42aの開閉操作は作業者が操作レバー71を手動操作することにより行われる。このように球形状の弁体49aを有する開閉弁42aの操作レバー71を図示しないアクチュエータにより駆動するようにすると、ソレノイド52により弁体49を直線往復動させるようにした電磁式の開閉弁42に代えて球形状の弁体49aを回転させるアクチュエータ式の開閉弁42aとして、駆動信号により自動的に開閉弁42aを開閉作動させることができる。
【0037】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図示する携帯用切断機はエンジン12を駆動源としているが、電動モータを駆動源とする携帯用切断機にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10…携帯用切断機、11…本体ケース、12…エンジン、13…クランク軸、14…クランクケース、15…ピストン、16…シリンダ、17…コネクティングロッド、18…燃焼室、19…リコイルスタータ、21…遠心クラッチ、22…ロータ、23…クラッチドラム、24…クラッチシュー、25…アーム、26…プーリ、27…回転軸、28…ディスクカッタ、29…プーリ、30…ベルト、31…リアハンドル、32…フロントハンドル、33,34…脚部、35…スロットルレバー、36…ブレードカバー、37…ノズル、38…噴射口、39…接続ホース、41…供給ホース、42…開閉弁、43…流入ポート、44…流出ポート、45…バルブハウジング、46,47…継手、48…連通路、49…弁体、51…コイルばね、52…ソレノイド、53a…第1の歪みゲージ、53b…第2の歪みゲージ、54…コントローラ、56…円筒部、57…軸受、58,59…ホイルワッシャ、62,63…ボルト、64…トルクゲージ、65,66…出力端子、67,68…接続端子、69…給水ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断機本体に組み込まれた駆動源によりディスクカッタを駆動する携帯用切断機であって、
前記ディスクカッタに水を噴射するノズルと、
前記ディスクカッタが被削材に接触したことを検出する接触検出手段と、
前記接触検出手段からの信号に基づいて前記ノズルに対する水の供給を制御する制御手段とを有することを特徴とする携帯用切断機。
【請求項2】
前記接触検出手段はアームに加わる応力を検出することを特徴とする請求項1記載の携帯用切断機。
【請求項3】
前記ディスクカッタが回転自在支持されるアームに、前記ディスクカッタと被削材との接触により前記アームに加わる応力を検出する歪みゲージを設け、当該歪みゲージからの信号に基づいて前記ノズルに対する水の供給を制御することを特徴とする請求項2記載の携帯用切断機。
【請求項4】
前記接触検出手段は回転体に加わる負荷を検出することを特徴とする請求項1記載の携帯用切断機。
【請求項5】
前記駆動源の回転トルクを前記ディスクカッタに伝達する動力伝達系における回転体に、前記ディスクカッタと被削材との接触により前記回転体に加わる負荷を検出するトルクゲージを設け、当該トルクゲージからの信号に基づいて前記ノズルに対する水の供給を制御することを特徴とする請求項4記載の携帯用切断機。
【請求項6】
前記アームの幅方向一方側に第1の歪みゲージを設け、幅方向他方側に第2の歪みゲージを設け、被削材の水平面に前記ディスクカッタが接触して前記アームの両側部に加わる応力方向が引張応力と圧縮応力とに逆転したことをそれぞれの前記歪みゲージが検出したとき、および被削材の垂直面に前記ディスクカッタが接触してそれぞれの前記歪みゲージが共に圧縮応力を検出したときに、前記ノズルに水を供給することを特徴とする請求項3記載の携帯用切断機。
【請求項7】
給水源から供給される水を前記ノズルに供給する供給ホースに当該供給ホースの流路を開閉する開閉弁を設け、前記ディスクカッタが前記被削材に接触しているときに前記開閉弁を開放し、接触していないときには前記開閉弁を閉じることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の携帯用切断機。
【請求項8】
前記ノズルに水を供給するポンプを有し、前記ディスクカッタが前記被削材に接触したときに前記ポンプを駆動し、接触していないときには前記ポンプの駆動を停止することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の携帯用切断機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−111701(P2013−111701A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260165(P2011−260165)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】