説明

撮像装置及び撮像方法

【課題】インターレース方式を用いて撮像素子から読み出された画像信号を用いてコントラストAFを行う場合であっても、精度の低下や演算量の大幅な増加なしに、高速かつ高精度のオートフォーカスが可能な撮像装置及び撮像方法を提供すること。
【解決手段】AF処理部117は、撮像素子106からインターレース方式で読み出された画像信号から、AF評価値を算出する。続いて、AF処理部117は、連続する複数フィールドのAF評価値が連続して増減を繰り返す分布であるか否かを判断する。AF評価値が連続して増減を繰り返す分布である場合に、AF処理部117は、隣接するフィールド間のAF評価値の中間値を算出し、第1の補間演算によって中間値の補間曲線を求めて合焦位置を算出する。また、AF評価値が連続して増減を繰り返す分布でない場合に、AF処理部117は、連続するフィールドのAF評価値の補間曲線を求めて合焦位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターレース方式で画像信号を読み出す撮像素子を有する撮像装置及びそのような撮像装置を用いた撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラは、その普及に目を見張るものがあり、性能も日々進歩している。また、近年のデジタルカメラは、様々な機能を有し、これによって、撮影者は、技量によらずに品質の高い写真を撮影できるようになってきている。オートフォーカス機能も、それら機能の1つである。シャッタチャンスを逃さないためには、オートフォーカス機能の利用時における合焦位置の検出に要する時間をなるべく短くする必要がある。
【0003】
オートフォーカスの方式は、大別するとアクティブ方式とパッシブ方式とに分類することができる。
アクティブ方式は、カメラから被写体に赤外線等の補助光を照射し、この補助光の被写体からの反射光を検出することによって、カメラから被写体までの距離を測定し、この距離に応じてフォーカスレンズを駆動する方式である。このアクティブ方式は、一部のデジタルビデオカメラ等に用いられている。
【0004】
パッシブ方式は、撮像レンズを通ってきた被写体からの光束に基づいて測距を行う方式であり、位相差方式とコントラスト方式とに分けられる。位相差方式は、撮像レンズの瞳を一対の領域に分割し、分割された瞳領域を通過する光束が形成する一対の像の相対的な位置変化を検出することによって、合焦位置を検出する方式で、デジタル一眼レフカメラに多く用いられている。コントラスト方式(以下、コントラストAFと言う)は、コンパクトデジタルカメラに多く用いられ、フォーカスレンズの位置を光軸方向に沿って移動させながら、撮像素子から画像信号を読み出し、フレーム毎に得られた画像信号からコントラストを評価するためのAF評価値を算出し、このAF評価の最大(ピーク)値を検出し、AF評価値のピーク値が得られるフォーカスレンズ位置を合焦位置とする方式である。
【0005】
ここで、コントラストAFにおける合焦位置の検出を高速に行うための1つの手法として、撮像素子からの画像信号の読み出しのフレームレートを上げることが考えられる。読み出しのフレームレートを上げるための1つの方式として、インターレース方式がある。インターレース方式とは、1つのフレームを複数(例えばOdd(奇数)フィールドとEven(偶数)フィールドの2つ)のフィールドに分け、それぞれのフィールドで撮像素子の異なる画素からの画像信号を読み出す方式である。このようなインターレース方式により、撮像素子からの読み出しのフレームレートを高くすることが可能である。
【0006】
撮像素子からの画像信号の読み出し方式としてインターレース方式を採用すると、読み出しのフレームレートを上げることはできるものの、AF精度が低下する。このAF精度の低下について図6を参照して説明する。図6は、2フィールド読み出しの例を示しており、C1及びC3が、Odd(奇数)フィールドのAF評価値を表している。また、C2及びC4が、Even(偶数)フィールドのAF評価値を表している。インターレース方式で画像信号を読み出す場合、OddフィールドとEvenフィールドとでは、AF評価値の算出エリアが、空間的に一致しないていない。このため、同じフォーカスレンズ位置であっても、撮影シーンによっては、Oddフィールドで算出されるAF評価値とEvenフィールドで算出されるAF評価値とで値が異なる可能性がある。
【0007】
前述したように、コントラストAFにおいては、AF評価値のピーク位置を検出する。ここで、フォーカスレンズの駆動速度が高速になると、AF評価値を取得する間隔も広くなり、真のピーク位置のAF評価値を取得できなくなる可能性が増大する。したがって、真のピーク位置を検出するために、補間演算が必要となる。例えば、図6では、C3がAF評価値の仮のピーク位置であると判定される。補間演算では、この仮のピーク位置C3を含む、3点のAF評価値C2,C3,C4を通る補間曲線を算出し、この補間曲線の極大値を求めることにより、ピーク位置が算出される。
【0008】
ここで、前述したように、OddフィールドとEvenフィールドとでは、AF評価値の変化の仕方が大きく異なる可能性があるため、補間演算により、真のピーク位置とは異なったピーク位置が算出されることがある。誤ったピーク位置が算出されると、真の合焦位置とはずれた位置を合焦位置としてフォーカスレンズが駆動されるので、AF精度が低下する。
【0009】
このようなインターレース方式を用いた場合のコントラストAFにおけるAF精度の低下に対し、特許文献1では、撮像素子から得られる画像信号の高域成分を1フィールド毎に第1のAF評価値として取得して、取得した第1のAF評価値を連続した2フィールド毎に加算した評価値を第2の評価値として演算し、この第2の評価値が最大(極大)になるようにフォーカスレンズの位置を調整するようにしている。
【0010】
また、特許文献1と類似する提案として、特許文献2では、それぞれのフォーカスレンズ位置において複数フィールドの画像信号を取得し、この複数フィールドの画像信号を合算し、この合算した画像信号からAF評価値を算出してコントラストAFを行うようにしている。特許文献2では、合算した画像信号を用いることにより、被写体が低輝度であっても合焦位置の検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平1−268366号公報
【特許文献2】特開2003−140032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、撮影シーンによっては、複数フィールドのAF評価値の加算値を使用しなくても精度の良いオートフォーカスが実現できる場合がある。特許文献1は、撮影シーンによらずに、第2の評価値を演算している。したがって、第2の評価値を演算するために第1のAF評価値を余分に必要とする場合には、第1のAF評価値のみを用いてオートフォーカスを行う場合よりもオートフォーカスに時間がかかる。
【0013】
また、特許文献2においても撮影シーンによらずに、フィールド間の各ピクセルを合成してからAF評価値を算出するので、演算量が多くなり易い。
【0014】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、インターレース方式を用いて撮像素子から読み出された画像信号を用いてコントラストAFを行う場合であっても、精度の低下や演算量の大幅な増加なしに、オートフォーカスが可能な撮像装置及び撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様の撮像装置は、フォーカスレンズを駆動するレンズ駆動部と、前記フォーカスレンズを介して被写体を撮像して画像信号を得る撮像素子と、前記撮像素子で得られた画像信号をインターレース方式で読み出し、該インターレース方式で読み出されたそれぞれのフィールドの画像信号からAF評価値を算出する評価値算出部と、連続する複数の前記AF評価値が増減を繰り返す分布であるか否かを判断する判断部と、前記複数のAF評価値が増減を繰り返す分布であると判断された場合には、前記複数の隣接するAF評価値の中間値から補間曲線を求めて合焦位置を算出する第1の補間演算を行い、前記AF評価値が増減を繰り返す分布であると判断された場合には、前記AF評価値の補間曲線を求めて合焦位置を算出する第2の補間演算を行う合焦位置算出部と、前記レンズ駆動部を制御し、前記合焦位置に前記フォーカスレンズを駆動させる制御部と、を具備することを特徴とする。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の第2の態様の撮像方法は、レンズ駆動部が、フォーカスレンズを駆動し、撮像素子が、前記フォーカスレンズを介して被写体を撮像して画像信号を得て、評価算出部が、前記撮像素子で得られた画像信号をインターレース方式で読み出し、該インターレースで読み出されたそれぞれのフィールドの画像信号からAF評価値を算出し、判断部が、連続する複数の前記AF評価値が、増減を繰り返す分布であるか否かを判断し、合焦位置算出部が、前記複数のAF評価値が増減を繰り返す分布であると判断された場合には、前記複数の隣接するAF評価値の中間値から補間曲線を求めて合焦位置を算出する第1の補間演算を行い、前記AF評価値が前記分布でないと判断された場合には、前記AF評価値の補間曲線を求めて合焦位置を算出する第2の補間演算を行い、制御部が、前記レンズ駆動部を制御し、前記合焦位置に前記フォーカスレンズを駆動させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インターレース方式を用いて撮像素子から読み出された画像信号を用いてコントラストAFを行う場合であっても、精度の低下や演算量の大幅な増加なしに、オートフォーカスが可能な撮像装置及び撮像方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る撮像装置の自動焦点調節(AF)の動作を抽出して示したフローチャートである。
【図3】方向判別について説明するための図である。
【図4】ピーク位置検出処理について示すフローチャートである。
【図5】ギザギザ形状の判断について説明するための図である。
【図6】従来のピーク位置検出について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。ここで、本実施形態における撮像装置は、コントラスト方式のオートフォーカス機能を有する各種の撮像装置が適用可能である。なお、本実施形態では撮像装置の例としてデジタルカメラを用いて説明する。
【0020】
図1に示す撮像装置(デジタルカメラ)は、フォーカスレンズ101と、レンズ駆動部102と、絞り103と、絞り駆動部104と、システムコントローラ105と、撮像素子106と、相関二重サンプリング(CDS)回路107と、増幅回路(AMP)108と、アナログ/デジタル(A/D)変換部109と、ユーザインターフェイス(UI)制御部110と、UI111と、バス112と、画像処理部113と、撮像素子駆動部114と、メモリ115と、AE処理部116と、AF処理部117と、を有している。また、図1には、示していないが、撮像装置は、画像を表示するための表示部や画像を記録するための記録部を有していても良い。
【0021】
フォーカスレンズ101は、図示しない被写体からの光束を撮像素子106に結像させる。このフォーカスレンズ101は、光軸方向に駆動自在に構成されている。フォーカスレンズ101を駆動することにより、フォーカスレンズ101の被写体に対する合焦状態が変化する。ここで、フォーカスレンズ101を、ズームレンズ等の他のレンズと組み合わせて用いるようにしても良い。
【0022】
レンズ駆動部102は、モータとモータドライバとを有している。このレンズ駆動部102は、システムコントローラ105からの指示を受けて、フォーカスレンズ101を、その光軸方向に駆動する。
【0023】
絞り103は、開閉自在に構成され、フォーカスレンズ101を介して撮像素子106に入射する光束を制限する。絞り103の径によって、撮像素子106の露出量を制御することが可能である。
【0024】
絞り駆動部104は、モータとモータドライバとを有している。絞り駆動部104は、システムコントローラ105からの指示を受けて、絞り103を駆動する。
【0025】
システムコントローラ105は、デジタルカメラの各部の動作を制御する。本実施形態におけるシステムコントローラ105は、制御部としての機能を有し、例えばレンズ駆動部102を制御することにより、フォーカスレンズ101の位置を制御する。この際、システムコントローラ105は、AF処理部117から出力されたレンズ位置データに従って、フォーカスレンズ101を合焦位置に駆動する。また、システムコントローラ105は、絞り駆動部104を制御して、絞り103の径を制御したり、撮像素子駆動部114を制御して、撮像素子106からの画像信号の読み出しタイミングを制御したりもする。
【0026】
撮像素子106は、多数の受光素子が画素としてマトリクス状に配置されてなる光電面を有している。また、撮像素子106の光電面には、例えばRGBの各色に対応した色フィルタがモザイク状に配置されている。このような構成の撮像素子106において、フォーカスレンズ101を通過した被写体からの光束は、光電面において電荷に変換される。各画素の露出時間は、撮像素子駆動部114から与えられる電子シャッタ駆動信号によって制御される。撮像素子106の各画素で得られた電荷は、画像信号として、撮像素子駆動部114から与えられる垂直転送クロック信号及び水平転送クロック信号に同期して読み出される。
【0027】
CDS回路107は、撮像素子106から出力された画像信号における暗電流ノイズを除去するためのCDS(相関二重サンプリング)を行う。AMP108は、CDS回路107から出力された画像信号のゲイン調整を行う。A/D変換部109は、AMP108から出力されたアナログの画像信号を、デジタルの画像データに変換する。
【0028】
UI制御部110は、利用者によるユーザインターフェイス(UI)111の入力に応じた入力情報を、システムコントローラ105に伝達する。UI111は、シャッターボタン、電源ボタン、ズームボタン、タッチパネル等の、利用者が操作可能に構成された各種のインターフェイスである。例えば、シャッターボタンが半押しされることにより、UI制御部110を介してシステムコントローラ105に撮影準備動作開始の指示がなされる。また、シャッターボタンが全押しされることにより、UI制御部110を介してシステムコントローラ105に撮影動作開始の指示がなされる。
【0029】
バス112は、デジタルカメラにおいて発生した各種のデータを転送するための転送路である。
画像処理部113は、メモリ115に書き込まれた画像データに対してカラー化等の画像処理を行う。前述したようなRGBの各色に対応した色フィルタ(原色系ベイヤ配列の色フィルタ)を有する撮像素子106の場合、各画素から出力される画像信号は、R,G,Bの何れかの情報しか有していない。このような画像信号に対応した画像を表示等するためには、カラー化の処理が必要となる。画像処理部113は、カラー化の処理として、補間処理によって、単板の画像データから3板の画像データを生成する。3板の画像データとは、各画素が、RGBの情報を有している画像データである。この他、画像処理部113は、カラー化した画像データから輝度信号及び色差信号を生成する処理、さらにはホワイトバランス補正処理、ガンマ補正処理、コントラスト補正処理、輪郭強調処理等も行う。
【0030】
撮像素子駆動部114は、システムコントローラ105の制御に従って、撮像素子106に、電子シャッタ駆動信号を与える。また、撮像素子駆動部114は、読み出し機能も有し、システムコントローラ105の制御に従って、撮像素子106に、垂直転送クロック信号及び水平転送クロック信号を与える。ここで、本実施形態における撮像素子106は、インターレース方式で画像信号を読み出す。例えば、撮像素子106からの画像信号の読み出しを2フィールド読み出しとした場合、Oddフィールドでは、撮像素子106の奇数行の画素からの画像信号が、水平転送クロック信号が与えられる毎に順次読み出される。また、Evenフィールドでは、撮像素子106の偶数行の画素からの画像信号が、水平転送クロック信号が与えられる毎に順次読み出される。なお、本実施形態では撮像素子駆動部114が画像信号の読み出しを行う例で説明をしたが、AF処理部117で行っても良い。
【0031】
メモリ115は、A/D変換部109で得られた画像データ、画像処理部113で処理された画像データ、AE処理部116及びAF処理部117で使用するデータ等を一時的に保存する作業用のメモリである。本実施形態におけるメモリ115は、AF処理部117で得られた複数フィールドのAF評価値も保存する。以後の説明においては、メモリ115が、少なくとも4フィールド分のAF評価値を保存するものとする。
【0032】
AE処理部116は、メモリ115に書き込まれた画像データから被写体輝度を算出する。AE処理部116は、算出した被写体輝度に従って、撮影パラメータを設定することも行う。撮影パラメータは、絞り103の径を設定するための値である絞り値及び撮像素子106の露出時間を設定するためのシャッタ速度等の露出条件、ホワイトバランス設定等の画像処理条件が含まれる。
【0033】
評価値算出部としてのAF処理部117は、UI制御部110によって設定されたエリア情報を用いて、画像データからAF評価値を算出する。AF評価値は、例えば、エリア情報によって示される画像データ中の所定エリア内の高周波成分を積算することによって得られる。また、AF処理部117は、判断部及び合焦位置算出部としての機能も有し、AF評価値の変化を評価することによって、AF評価値の真のピーク位置を求めるための補間曲線を算出し、この補間曲線のピーク位置に対応したフォーカスレンズ位置を示すデータ(フォーカス位置データ)を、合焦位置としてシステムコントローラ105に伝達することも行う。なお、AF処理部117の一部又は全部の機能をシステムコントローラ105等に持たせるようにしても良い。また、前述したとおり、撮像素子106からの画像信号の読み出しをAF処理部117で行っても良い。
【0034】
次に、本実施形態に係る撮像装置を用いた撮像方法について説明する。図2に示すフローチャートは、撮像装置の動作フローチャートの内の自動焦点調節(AF)の動作を抽出して示している。AFの動作以外は、従来の撮像装置の動作を適用することが可能である。
【0035】
電源ボタンが押し下げされる等してカメラが起動されると、図2のフローチャートの動作が開始される。システムコントローラ105は、利用者により、合焦を開始するトリガとして例えばシャッターボタンが半押しされたかを判定している(S201)。S201において、シャッターボタンが半押しされていないと判定した場合に、システムコントローラ105は、S201の判定を行いつつ、待機する。この場合、AF動作は待機状態にある。このAF動作の待機中に、スルー画像表示を行うようにしても良い。
【0036】
S201において、シャッターボタンが半押しされたと判定した場合に、システムコントローラ105は、AE処理部116により、AF動作に入るための露出条件の設定を行う(S202)。この際、システムコントローラ105は、撮像素子106を動作させて画像データをメモリ115に取り込む。AE処理部116は、メモリ115に書き込まれた画像データから、被写体輝度を算出する。そして、AE処理部116は、算出した被写体輝度から、画像データの露出を適正とするような撮像素子106の露光時間(シャッタ速度)及び絞り103の径(絞り値)等の露出条件を算出し、算出した露出条件を、システムコントローラ105に伝達する。また、本実施形態ではメモリ115に書き込まれた画像データから被写体輝度を算出しているがA/D変換後の画像データを直接AE処理部116に入力して算出するようにしてもよい。
【0037】
露出条件を設定した後、システムコントローラ105は、レンズ駆動部102を制御してフォーカスレンズ101の駆動を開始する(S203)。また、システムコントローラ105は、撮像素子駆動部114を制御して、S202で設定した露出条件で撮像素子106の駆動を開始する。ここで、本実施形態では、撮像素子106で得られた画像信号を、インターレース方式で読み出す。
【0038】
フォーカスレンズ101及び撮像素子106の駆動開始後、システムコントローラ105は、1フィールド毎に、AF処理部117によってAF評価値を算出させる(S204)。AF処理部117で算出されたAF評価値は、メモリ115に保存される。前述したように、本実施形態においては、現在フィールドを含めて少なくとも4フィールド分のAF評価値がメモリ115に保存される。本実施形態ではメモリ115に書き込まれた画像データからAF評価値を算出するように構成されているが、A/D変換後の画像データを直接AF処理部117に入力して算出するようにしてもよい。
【0039】
次に、システムコントローラ105は、AF処理部117により、方向判別が完了したか否かを判定する(S205)。方向判別は、フォーカスレンズの駆動方向が正しいか否か、つまりAF評価値が高くなる方向にフォーカスレンズ101を駆動しているか否かを判断するための処理である。
S205において、方向判別が完了していないと判定した場合に、システムコントローラ105は、AF処理部117に、方向判別処理を実行させる(S206)。
画像信号をインターレース方式で読み出す場合には、隣接する複数フィールドのAF評価値の加算値によって方向判別を行う。ここでは、2フィールド読み出しの場合を例に説明する。前述したように、2フィールド読み出しは、画像の1フレームをOddフィールドとEvenフィールドの2つのフィールドに分け、Oddフィールドでは、撮像素子106の奇数行の画素からの画像信号を読み出し、Evenフィールドでは、撮像素子106の偶数行の画素からの画像信号を読み出す読み出し方式である。まず、コントラストAF中においては、図3に示すように、画像データが時系列で取得される。ここで、方向判別を行うフィールド(現在フィールド)の画像データをFnとし、このFnフィールドの画像データから算出されるAF評価値をCnと定義する。2フィールド読み出しの場合は、現在フィールドを含む3フィールドのAF評価値を用いて方向判別を行う。具体的には、これら3フィールドのAF評価値のうち、隣接する2フィールド間のAF評価値の加算値を算出し、これらの加算値の大小関係を比較する。Fフィールドにおいて得られた加算値をS、Fn−1フィールドで得られた加算値をSn−1とすると、S、Sn−1は、それぞれ以下のように与えられる。
=C+Cn−1
n−1=Cn−1+Cn−2
これらの加算値S、Sn−1の大小関係を比較し、Sn−1<Sの場合には、AF評価値が増加している、即ちフォーカスレンズ101の駆動方向が現在の方向で正しいと判別する。一方、Sn−1>Sの場合には、AF評価値が減少している、即ちフォーカスレンズ101の駆動方向が現在の方向と逆方向であると判別する。この場合、次のフィールドにおいては、フォーカスレンズ101の駆動方向を逆転させる。一旦、駆動方向が正しいと判別された後は、それ以後は、方向判別を行わなくとも良い。勿論、フィールド毎に方向判別を行うようにしても良い。
【0040】
S205において、方向判別が完了していると判定した場合、システムコントローラ105は、AF処理部117に、ピーク位置検出処理を実行させる(S207)。ピーク検出処理では、S206において判別された駆動方向にフォーカスレンズ101を移動させながら、AF評価値のピーク位置を検出する。ピーク位置検出処理の詳細については後述する。ここで、ピーク位置とは、AF評価値のピーク値に対応したフォーカスレンズ101の位置である。このコントラストAFにおいて、ピーク位置を合焦位置と考えることができる。
【0041】
S206における方向判別処理又はS207におけるピーク検出処理の後、システムコントローラ105は、ピーク位置検出が正常に行われたか否かを判定する(S208)。S208では、ピーク検出処理によってAF評価値のピーク位置が検出されたか否か、及び検出されたピーク位置が必要条件を満たしている否かを判定する。
【0042】
S208において、ピーク位置が検出されていないと判定した場合又は検出されたピーク位置が必要条件を満たしていないと判定した場合に、システムコントローラ105は、処理をS204に戻す。言い換えれば、AF評価値のピーク位置を検出するまで、システムコントローラ105は、S204〜S208のループ処理を繰り返す。なお、S204〜S208の処理中であってもフォーカスレンズ101の駆動は継続されており、ピーク位置が検出されるまで、フィールド毎のAF評価値の算出やピーク位置検出が繰り返される。
【0043】
また、S208において、ピーク位置を検出したと判定した場合、システムコントローラ105は、レンズ駆動部102を制御して、AF処理部117から伝達されたピーク位置に対応したフォーカスレンズ位置にフォーカスレンズ101を移動させる(S209)。その後、システムコントローラ105は、図2のフローチャートの動作を終了させる。これ以後は、利用者のシャッターボタンの全押し操作を受けて撮影動作を実行する。
【0044】
次に、ピーク位置検出処理の詳細について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。ここでは、2フィールド読み出しのインターレース方式の場合のピーク位置検出処理を説明する。AF処理部117は、現在フィールドを基準として過去3フィールド前までのAF評価値が連続して増減を繰り返す分布であるか否かを判定する(S301)。
連続して増減を繰り返す分布とは、4フィールドのAF評価値Cn(n=1,2,3,4)が、図5に示すようにして、フォーカスレンズの位置変化に対して千鳥状に並ぶ(増減を繰り返す)形状のことを言うものとする。OddフィールドとEvenフィールドとで被写体のコントラストが大きく異なる場合には、AF評価値が、連続して増減を繰り返す分布になり易い。
AF評価値が連続して増減を繰り返す分布であるか否かは、AF評価値の大小関係を比較することによって判定する。具体的には、連続する2つのAF評価値のそれぞれに対し、隣接するAF評価値が共に小さい又は共に大きい関係にあるかを判断し、2つのAF評価値の両方が共に小さい又は共に大きい関係であるか否かを判断することで、AF評価値が連続して増減を繰り返す分布であるか否かを判断する。より具体的には、以下の何れかの条件を満たすときに、AF評価値が連続して増減を繰り返す分布であると判定する。
C1>C2かつ、C2<C3かつ、C3>C4
または、
C1<C2かつ、C2>C3かつ、C3<C4
【0045】
S301において、AF評価値が、連続して増減を繰り返す分布であると判定した場合、AF処理部117は、4フィールドのAF評価値のうちのそれぞれ隣接する2フィールド間のAF評価値の中間値(平均値)を算出する。図5では、AF評価値C1とC2の中間値をM1、AF評価値C2とC3の中間値をM2、AF評価値C3とC4の中間値をM3として示している。中間値を算出した後、AF処理部117は、中間値3点が「山型」になっているか否かを判定する(S302)。
「山型」形状とは、3フィールドの中間値Mn(n=1,2,3)が、図5に示すようにして、フォーカスレンズの位置変化に対して山型に並ぶ(増加、減少となる)形状のことを言うものとする。
中間値の変化が山型の変化であるか否かは、中間値の大小関係を比較することによって判定する。具体的には、以下の条件を満たすときに、中間値の変化が山型の変化であると判定する。
M1<M2かつM2>M3
【0046】
S302において、中間値3点が山型であると判定した場合は、中間値3点の間にAF評価値のピーク位置があると判断する。この場合に、AF処理部117は、中間値3点を用いて第1の補間演算を行い、ピーク位置を検出する(S303)。その後、AF処理部117は、ピーク位置検出処理を終了させる。ここで、S303における第1の補間演算としては、例えばラグランジュ補間を用いる。ラグランジュ補間は、与えられた複数の点を通る補間曲線を演算によって求める補間法である。一般に、m次の補間曲線を、ラグランジュ補間によって求めるためには、(m+1)個の点が必要となる。例えば、3点の場合には、ラグランジュ補間によって、この3点を通る2次の補間曲線が算出される。一般に、ピーク位置の近傍では、AF評価値の分布をほぼ放物線として近似することができる。このため、補間演算として、ラグランジュ補間を用いることが有効である。
【0047】
また、S301において、AF評価値が連続して増減を繰り返す分布でないと判定した場合、AF処理部117は、AF評価値がピーク位置を超えたか否かを判定する(ステップS304)。ここでは、AF評価値の最大値に比べて最も新しいAF評価値(図5の例ではC4)が、予め決められた量だけ減少しているか否かを判定する。減少していない場合にはピーク位置を超えていないと判定する。また、減少している場合にはピーク位置を超えていると判定する。
【0048】
S302において、中間値3点が山型でないと判定した場合、又はS304において、AF評価値がピーク位置を超えていないと判定した場合に、AF処理部117は、ピーク位置検出処理を終了させる。この場合には、現在のフォーカスレンズ位置が合焦位置ではないので、次のフォーカスレンズ位置で再びピーク位置検出処理が行われる。
【0049】
また、S304において、AF評価値がピーク位置を超えていると判定した場合に、AF処理部117は、4フィールドのAF評価値を用いて第2の補間演算を行い、ピーク位置を検出する(S305)。その後、AF処理部117は、ピーク位置検出処理を終了させる。ここで、S305における第2の補間演算としては、例えば最小二乗法を用いる。最小二乗法を用いた補間は、与えられた複数の点に対する差分二乗和が最小となる補間曲線を演算によって求める補間法である。
【0050】
以上説明したように、本実施形態においては、インターレース方式で画像信号を読み出してコントラストAFを行う場合において、現在フィールドを含む複数の連続するフィールドのAF評価値の分布を判断するようにしている。インターレース方式で画像信号を読み出す場合、フィールド毎にAF評価値の変化の仕方が大きく異なる可能性がある。本実施形態では、このようなAF評価値が連続して増減を繰り返す分布となる状況を判断し、連続して増減を繰り返す分布に適した補間演算を実行するようにしている。具体的には、AF評価値が連続して増減を繰り返す分布の場合には、隣接するフィールド間のAF評価値の中間値(平均値)を求め、この中間値の補間曲線を求めるようにしている。中間値のピーク位置に対応したレンズ位置にフォーカスレンズ101を停止させるようにすれば、1フレームの平均としてのボケ量を最小とすることが可能である。
【0051】
これにより、インターレースで撮影された画像信号を用いて合焦位置を検出する場合でも、AF精度が低下することがない。また、補間演算によって真の合焦位置を検出することにより、フォーカスレンズの駆動速度が大きくなってもAF精度が低下することがない。このため、高速のコントラストAFを行うことも可能である。
さらに、AF評価値が連続して増減を繰り返す分布でない場合には、中間値を用いずにピーク位置検出を行うようにしている。このため、常に中間値を用いてピーク位置検出を行う場合よりも、高速のコントラストAFを行うことが可能である。
【0052】
ここで、前述の実施形態においては、2フィールドのインターレース方式で画像信号を読み出す例を示している。しかしながら、本実施形態の技術は、1つのフレームの画像信号を、3フィールド以上に分けて読み出すインターレース方式にも適用可能である。
また、前述の実施形態においては、現在フィールドを含む4フィールドのAF評価値の分布を判断するようにしている。しかしながら、4フィールド以上であれば判断を行うことができる。ただし、補間曲線を求める際には、真のピーク位置の近傍の3点のAF評価値を用いることが望ましい。
【0053】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。また、前述の各動作フローチャートの説明において、便宜上「まず」、「次に」等を用いて動作を説明しているが、この順で動作を実施することが必須であることを意味するものではない。
【0054】
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0055】
101…フォーカスレンズ、102…レンズ駆動部、103…絞り、104…絞り駆動部、105…システムコントローラ、106…撮像素子、107…相関二重サンプリング(CDS)回路、108…増幅回路(AMP)、109…アナログ/デジタル(A/D)変換部、110…ユーザインターフェイス(UI)制御部、111…ユーザインターフェイス(UI)、112…バス、113…画像処理部、114…撮像素子駆動部、115…メモリ、116…AE処理部、117…AF処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズを駆動するレンズ駆動部と、
前記フォーカスレンズを介して被写体を撮像して画像信号を得る撮像素子と、
前記撮像素子で得られた画像信号をインターレース方式で読み出し、該インターレース方式で読み出されたそれぞれのフィールドの画像信号からAF評価値を算出する評価値算出部と、
連続する複数の前記AF評価値が増減を繰り返す分布であるか否かを判断する判断部と、
前記複数のAF評価値が増減を繰り返す分布であると判断された場合には、前記複数の隣接するAF評価値の中間値から補間曲線を求めて合焦位置を算出する第1の補間演算を行い、前記AF評価値が増減を繰り返す分布でないと判断された場合には、前記AF評価値の補間曲線を求めて合焦位置を算出する第2の補間演算を行う合焦位置算出部と、
前記レンズ駆動部を制御し、前記合焦位置に前記フォーカスレンズを駆動させる制御部と、
を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記複数の連続する2つのAF評価値のそれぞれに対し、隣接するAF評価値が共に小さい又は共に大きい関係にあるかを判断し、前記2つのAF評価値が共に前記関係であるか否かを判断することで、前記複数のAF評価値が増減を繰り返す分布であるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記判断部は、連続する複数の前記AF評価値であるC1乃至C4がC1>C2かつ、C2<C3かつ、C3>C4、または、C1<C2かつ、C2>C3かつ、C3<C4であるか否かを判断することで、前記複数のAF評価値が増減を繰り返す分布であるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記合焦位置算出部は、前記複数のAF評価値が増減を繰り返す分布であると判断され、前記中間値の分布形状が山型である場合に、前記第1の補間演算によって前記中間値の補間曲線を求めて合焦位置を算出することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の補間演算は、ラグランジュ補間であり、前記第2の補間演算は、最小二乗法を用いた補間であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
レンズ駆動部が、フォーカスレンズを駆動し、
撮像素子が、前記フォーカスレンズを介して被写体を撮像して画像信号を得て、
評価値算出部が、前記撮像素子で得られた画像信号をインターレース方式で読み出し、該インターレースで読み出されたそれぞれのフィールドの画像信号からAF評価値を算出し、
判断部が、連続する複数の前記AF評価値が、増減を繰り返す分布であるか否かを判断し、
合焦位置算出部が、前記複数のAF評価値が増減を繰り返す分布であると判断された場合には、前記複数の隣接するAF評価値の中間値から補間曲線を求めて合焦位置を算出する第1の補間演算を行い、前記AF評価値が前記分布でないと判断された場合には、前記AF評価値の補間曲線を求めて合焦位置を算出する第2の補間演算を行い、
制御部が、前記レンズ駆動部を制御し、前記合焦位置に前記フォーカスレンズを駆動させる、
ことを特徴とする撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113903(P2013−113903A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257644(P2011−257644)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】