説明

撮像装置

【課題】2次元画像の撮像と3次元画像の撮像とを好適に行えるようにした実用的な撮像装置を提供すること。
【解決手段】開口1a有する基板1には、電流制御式のアクチュエータAと、二つのステッピングモータM1,M2が取り付けられている。基板1と中間板2との間には、それらのモータM1,M2の出力軸M1−1,M2−1に取り付けられたシャッタ板13,14が配置されており、中間板2とカバー板3との間には、アクチュエータAによって往復回転させられる光路分割板12が配置されている。2次元画像を撮像するときには、開口部1aを全開にしておいて行い、3次元画像を撮像するときは、光路分割板12を開口1aに進入させておいてから、シャッタ板13,14を相反する方向へフル回転させることによって、光路分割板12の開口12a,12bを交互に開閉するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元画像と3次元画像とを選択的に撮像することの可能な撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2次元(2D)画像と3次元(3D)画像とを選択して撮像することの可能な種々の方式の撮像装置が知られているが、それらの方式のうちの一つを硬性内視鏡装置に適用した場合の例が、下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載されている撮像装置は、2次元画像を撮像するときは、対物光学系に入射した被写体光の光路に、2次元画像撮像用の一つの開口を配置し、その開口の略全域を通過した被写体光を撮像素子で受光するようにしているが、3次元画像(立体画像)を撮像するときは、切替え装置によって、対物光学系に入射した被写体光の光路内に、上記の2次元画像撮像用の開口に代えて、その開口よりも小さな3次元画像撮像用の二つの開口を配置するようにし、対物光学系に入射した被写体光を、光軸を間にした視差のある二つの被写体光に分割(瞳分割)している。そして、それらの二つの開口よりも撮像素子側には、一つの回転シャッタが配置されていて、3次元画像を撮像するときには、180度回転するたびに、それらの二つの開口の開閉関係が逆になるようにして、それらの開口を通過した被写体光を、同じ撮像素子で交互に受光するようにしている。
【0004】
ところで、このような回転シャッタは、2次元画像を撮像するときには回転を停止させておくことになるが、そのまま単に停止状態にしただけでは、2次元画像撮像用の大きな開口を通過した光路内に、3次元画像撮像用の二つの開口のうちの一方を閉じ、他方を開かせるようにしたときの状態のままで存在していることになってしまう。そのため、何らかの手段を講じないと、2次元画像を撮像するに際して、2次元画像撮像用の大きな開口に切り替えたにもかかわらず、その開口の略全領域を通過した被写体光が撮像素子まで達しなくなり、所期の明るい画像を得ることができなくなってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1に記載の撮像装置では、2次元画像の撮像モードと3次元画像の撮像モードとを切り替えるときには、その都度、回転シャッタを駆動モータと共に光軸と直交する方向へ移動させるようにし、2次元画像の撮像モードを選択したときには、上記の2次元画像撮像用の開口に対して、予め回転シャッタに形成しておいた大きな開口が重なるようにし、上記の2次元画像撮像用の開口の略全領域を通過した被写体光が撮像素子まで達するようにしている。本発明は、このように、2次元画像の撮像時には、撮像素子に達する被写体光が、2次元画像撮像用の大きな開口の略全領域から得られ、3次元画像の撮像時には、3次元画像撮像用の小さな二つの開口からシャッタ装置を介して交互に得られるようにした方式の撮像装置に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−96867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1には、2次元画像の撮像モードと3次元画像の撮像モードとの切り替えに際し、上記のように回転シャッタを移動させることが記載されていて、そのようにした場合における回転シャッタ自体の具体的な構成も開示されているが、回転シャッタとその駆動モータとを移動可能にするための構成については全く開示されていない。ところが、実際に製品化する場合を考えてみると、撮像モードを切り替えるたびに、駆動モータを含む回転シャッタ装置全体を好適に移動させ得る実用的な構成を実現するのは、決して容易なことではない。そのため、撮影モードを切り替えるたびに、回転シャッタ装置全体を移動させずに、それと同等な目的を達成することの可能な撮像装置の実現が期待されている。
【0008】
また、特許文献1に記載されている撮像装置の場合には、2次元画像の撮像モードと3次元画像の撮像モードとの選択に際し、2次元画像撮像用の大きな開口と3次元画像撮像用の小さな二つの開口とを切り替える必要がある。ところが、特許文献1には、それらの三つの開口を形成した板部材(瞳分割絞り)だけは開示されているが、その板部材を往復作動させるための開口切替え装置の構成が、全く開示されていない。そのため、開口の切替えを好適に行えるようにした実用的な開口切替え装置の実現が期待されている。更に、そのような回転シャッタ装置と開口切替え装置とは、それらの構成部品を、撮像素子などと同様にして、撮像装置本体に対して一つ一つ順に組み付けていくようにしてもよいが、量産上では、極力それらの回転シャッタ装置と開口切替え装置とを一つにユニット化しておいてから組み付け得るようにすることが要求されている。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、撮像に先立って、2次元画像の撮像モードでの撮像を選択したときは、対物光学系に入射した被写体光を、大きな一つの開口を用いて撮像素子へ導くようにし、3次元画像の撮像モードでの撮像を選択したときは、光軸を間にした小さな二つの開口を用い、シャッタ装置を介して撮像素子に交互に導くようにした撮像装置であって、撮像モードの切り替えに際しては、従来のようにシャッタ装置全体を移動させなくてもよいようにすると共に、開口の切り替えが好適に行え、さらに、シャッタ装置と開口切替え装置とのユニット化に対する要求にも応え得る極めて実用的な撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の撮像装置は、対物光学系に入射した被写体光の光軸を中心にして第1開口を形成している基板と、前記第1開口よりも小さくて互いに略同じ大きさをした第2及び第3開口を形成している光路分割板と、前記光路分割板を前記第1開口に進退させ進入させた状態では前記第1開口内において前記第2開口と前記第3開口とが光軸を間にして配置されるようにする第1駆動手段と、前記第2開口と前記第3開口が前記第1開口内に配置されているとき第2駆動手段によって回転され前記第2開口を開閉する第1シャッタ板と、前記第2開口と前記第3開口が前記第1開口内に配置されているとき第3駆動手段によって回転され前記第3開口を開閉する第2シャッタ板と、2次元画像の撮像時には前記第1開口を通過してきた被写体光を受光し3次元画像の撮像時には前記第1シャッタ板と第2シャッタ板との回転によって前記第2開口と第3開口とを交互に通過してきた被写体光を受光するようにした撮像素子と、を備えているようにする。
【0011】
その場合、前記光路分割板と、前記第1駆動手段と、前記第2駆動手段と、前記第3駆動手段とのうちの少なくとも一つが、前記基板に取り付けられているようにすることが好ましいが、とりわけ、前記第1駆動手段が、前記基板の一方の面に取り付けられていて、前記光路分割板が前記基板の他方の面に回転可能に取り付けられており、前記第1駆動手段は、永久磁石を有する回転子が固定子コイルに対する電流の供給方向に対応した方向へ所定の角度範囲内でだけ往復回転させられる電流制御式のアクチュエータであって、該回転子の径方向位置において該回転子と一体的に回転する出力ピンが、前記基板の前記他方の面側で前記光路分割板に連結されており、前記光路分割板は該出力ピンの往復作動によって、前記第1開口に進退させられるようにするのが好ましい。
【0012】
また、前記第2駆動手段と前記第3駆動手段とがステッピングモータであって前記基板の同じ面に取り付けられており、前記第1シャッタ板と前記第2シャッタ板とは前記基板の反対側において、それらのステッピングモータの出力軸に取り付けられているようにすると、2次元画像の撮像可能状態と3次元画像の撮像可能状態との切替え装置と、3次元画像の撮像に用いられるシャッタ装置とを、ユニットとして構成したものが得られ、しかも、その場合において、前記第1駆動手段と、前記第2駆動手段と、前記第3駆動手段とが、前記基板の同じ面に取り付けられているようにすると、コンパクトで低コストな、撮像装置用のユニットが得られる。
【0013】
更に、本発明の撮像装置においては、前記光路分割板に代えて、前記第2開口を形成した第1光路規制板と、前記第3開口を形成した第2光路規制板とを備えており、該第1光路規制板と該第2光路規制板とは、前記第1駆動手段によって同時に相反する方向へ回転させられ、前記第1開口に進退させられるようにすると、撮像装置を小型化するのに好適な構成になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、2次元画像の撮像モードでの撮像を選択したときには、対物光学系に入射した被写体光を、大きな一つの開口を用いて撮像素子へ導き、3次元画像の撮像モードでの撮像を選択したときには光軸を間にした小さな二つの開口を用いシャッタ装置を介して撮像素子に交互に導くようにした方式の撮像装置において、2次元画像の撮像モードと3次元画像の撮像モードとの切替え時には、第1駆動手段によって、3次元画像撮像用の二つの開口を形成した一つの光路分割板、もしくは、それらの開口を別々に形成した二つの光路規制板を、基板に形成された2次元画像撮像用の開口に進退させるようにし、且つ3次元画像の撮像時には、3次元画像撮像用の二つの開口を各々のシャッタ装置によって交互に開閉させるようにすると共に、2次元画像の撮像モードに切り替えたときは、従来のようにシャッタ装置全体を移動させず、シャッタ板のみを2次元画像撮像用の開口から退いた状態で停止させるだけにしたので、極めて実用的な構成を実現でき、シャッタ装置と開口切替え装置とを同一の基板に取り付けることによって、ユニット化も容易であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】撮影待機状態を示す実施例1の平面図である。
【図2】図1の状態から光路分割板を作動させた状態を示す平面図である。
【図3】図2の状態から一方のシャッタ板を90度回転させた状態を示す平面図である。
【図4】図3の状態から両方のシャッタ板を相反する方向へ90度回転させた状態を示す平面図である。
【図5】図4の状態から両方のシャッタ板を相反する方向へさらに90度回転させた状態を示す平面図である。
【図6】図5の状態から両方のシャッタ板を相反する方向へさらに90度回転させた状態を示す平面図である。
【図7】撮影待機状態を示す実施例2の平面図である。
【図8】図7の状態から光路分割板を作動させた後、一方のシャッタ板を180度回転させた状態を示す平面図である。
【図9】撮影待機状態を示す実施例3の平面図である。
【図10】図9の状態において基板を取り除いて見た平面図である。
【図11】図10の状態から2枚の光路分割板を作動させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の撮像装置は、2次元画像と3次元画像とを選択して撮像することの可能な撮像装置である。そして、本発明の撮像装置は、2次元画像と3次元画像のいずれか一方を選択しておいて、各々の画像の被写体(被写界)をモニターで観察することができるようにするだけの製品に採用することもできるし、そのようにして観察しながら、被写体の撮像情報を、記憶装置に記憶させる(以下、撮影という)ことを可能にした製品にも採用することができる。
【0017】
また、撮影可能とする場合には、2次元画像と3次元画像の両方について、静止画と動画のいずれか一方についてだけを撮影可能にした製品にも、また、静止画と動画の両方とも撮影可能にした製品にも採用することができるほか、2次元画像と3次元画像のいずれか一方を静止画として撮影でき、他方を動画として撮影可能にした製品にも採用することができる。
【0018】
しかも、それらのいずれの場合においても、照明装置や遠隔操作装置などを併設すれば、直接肉眼で観察することのできない場所での探索用,医療用などの光学製品に採用することも可能である。そのため、本発明の撮像装置は、種々の産業分野における画像での認識装置に採用することが可能なものである。
【0019】
しかしながら、それらの製品に実施された場合の全ての態様を説明するのは大変であるし、また、その必要もないと考える。そこで、以下においては、本発明の撮像装置が、静止画と動画の両方を撮影することの可能な単体のデジタルカメラに採用され得るように構成した三つの実施例を説明する。そのため、図示しないが、それらのデジタルカメラには、2次元画像を得るための撮影と3次元画像を得るための撮影とを選択するための選択手段と、静止画を撮影するための静止画用レリーズボタンと、動画を撮影するための動画用レリーズボタンとが、撮影者によって操作可能に設けられているものとする。
【0020】
また、それらの実施例の説明に用いられる図面は、図1〜図6が、実施例1を説明するためのものであり、図7及び図8が、実施例2を説明するためのものであり、図9〜図11が、実施例3を説明するためのものである。尚、それらの図面には、対物光学系などの光学系や撮像素子が示されておらず、それらを除いた本発明の構成をユニット化したものだけが示されている。しかしながら、対物光学系は、各々の実施例の撮影待機状態を示している図1,図7,図9において、図面の手前側に配置されていることを前提にしている。そのため、撮像素子は、それらの図面の背面側に配置されていることになるが、本発明の撮像装置は、そのような配置に限定されるものではなく、それらの図面の背面側に対物光学系を配置し、手前側に撮像素子を配置するようにしてもよいものである。
【実施例1】
【0021】
最初に、図1〜図6を用いて実施例1を説明する。尚、図1は、撮影待機状態を示した平面図であり、図2は、3次元画像の撮影を行うために、図1の状態から光路分割板を作動させた状態を示す平面図である。また、図3は、図2の状態から一方のシャッタ板を90度回転させた状態を示す平面図であり、図4は、図3の状態から両方のシャッタ板を相反する方向へ90度回転させた状態を示す平面図である。更に、図5は、図4の状態から両方のシャッタ板を相反する方向へさらに90度回転させた状態を示す平面図であり、図6は、図5の状態から両方のシャッタ板を相反する方向へさらに90度回転させた状態を示す平面図である。
【0022】
そこで先ず、主に図1を用いて、本実施例の構成を説明する。本実施例の基板1は、平面外形形状が円形をしており、その中央には、本発明の第1開口に相当する被写体光路用の開口1aが形成されている。この開口1aは、対物光学系に入射した被写体光の光軸Oを中心にして円形に形成されており、2次元画像の撮像時においても3次元画像の撮像時においても、その被写体光の光路上に常に配置されており、2次元画像の撮像時には、その略全領域を通過した被写体光が、結像光学系を介して、撮像素子に導かれるようになっている。
【0023】
また、図1の背面側、即ち撮像素子側の面には、基板1と同じ平面外形形状をした中間板2とカバー板3とが、図示していない複数のねじによって、順に取り付けられている。そして、基板1と中間板2との間には、後述する二つのシャッタ板10,11の収容室を構成し、中間板2とカバー板3との間には、後述する光路分割板12の収容室を構成している。また、中間板2とカバー板3の中央にも円形をした被写体光路用の開口2a,3aが形成されているが、それらの直径は、基板1の開口1aの直径よりも僅かに大きい。尚、図1においては、基板1と中間板2の一部を破断することによって、中間板2とカバー板3の一部が見えるように示してある。
【0024】
基板1の収容室外の面、即ち本実施例においては基板1の被写体側の面には、電流制御式のアクチュエータAと、二つのステッピングモータM1,M2が取り付けられている。それらのうち、アクチュエータAは、本発明の第1駆動手段に相当するものであり、二つのステッピングモータM1,M2は、本発明の第2駆動手段と第3駆動手段に相当するものである。
【0025】
それらの駆動手段のうち、電流制御式のアクチュエータAは、例えば、特開2009−300661号公報などに記載されている周知のアクチュエータと実質的に同じであって、後述するように、永久磁石を有している回転子4が、固定子コイル6に対する電流の通電方向に対応した方向へ、所定の角度範囲内でだけ回転することの可能なアクチュエータである。他方、二つのステッピングモータM1,M2は、単体で市販されている同じ構成のステッピングモータであって、回転子は往復回転が可能なものであるが、本実施例においては、後述の作動説明からも分かるように、各々所定の一方方向へだけ回転させるようにしている。
【0026】
そこで、それらのアクチュエータAとステッピングモータM1,M2とが、基板1に対してどのように取り付けられているかを説明する。先ず、アクチュエータAは、回転子4と、固定子枠5と、固定子コイル6と、ヨーク7とで構成されている。それらのうち、回転子4は、径方向に2極に着磁された永久磁石からなる円筒状の本体部4aと、その本体部4aと一体であって径方向へ張り出して形成された合成樹脂製の腕部4bと、その腕部4bの先端に設けられた出力ピン4cとで構成されていて、基板1に立設された回転子取付け軸1bに対して回転可能に嵌合させられており、出力ピン4cは、基板1に設けられた円弧状の長孔1cから、中間板2とカバー板3との間に構成された収容室内に挿入されている。
【0027】
また、基板1の被写体側の面には、合成樹脂製の固定子枠5が、長手方向の両端で、二つのねじ8,9によって取り付けられていて、基板1との間に上記の回転子4が配置されるようにしている。そして、この固定子枠5には、中空部が基板1側に存在するようにして筒状のボビン部5aが形成されており、その外側には固定子コイル6が巻回されている。また、二つの脚部を有していて全体として略U字形をしているヨーク7は、一方の脚部をボビン部5aの中空部に貫通させていて、両方の脚部の先端を磁極部とし、回転子4の上記本体部4aの円周面に対向させている。
【0028】
他方、二つのステッピングモータM1,M2は、基板1に対してそれらの出力軸M1−1,M2−1を垂直にし、図示していない適宜な手段によって取り付けられている。そして、それらの出力軸M1−1,M2−1は、基板1に設けられた図示していない孔から、基板1と中間板2との間に構成された収容室内に挿入されている。
【0029】
尚、本発明の第1駆動手段に相当する電流制御式のアクチュエータAは、上記のように構成されているが、本発明の第1駆動手段は、このような構成のアクチュエータに限定されず、例えば、特開2007−174794号公報に記載された構成のアクチュエータであっても構わない。しかしながら、周知のように、本実施例のように構成されたアクチュエータAの方が、図示されているようなユニットを、全体として扁平に構成することができるという利点がある。更に、本発明の第1駆動手段は、電流制御式のアクチュエータには限定されるものでもなく、上記のステッピングモータM1,M2を含む種々のタイプのステッピングモータを用いるようにしても構わない。
【0030】
次に、上記の二つの収容室内の構成を説明する。先ず、基板1と中間板2との間に構成された収容室には、二つのシャッタ板10,11が配置されている。これらのシャッタ板10,11は、ステッピングモータM1,M2の出力軸M1−1,M2−1に取り付けられていて、各々、二つの遮光部10a,10b、11a,11bを有しているが、それらの二つずつの遮光部10a,10b、11a,11bは、いずれも出力軸M1−1,M2−1から垂直方向へ略90度の広がりを有する扇形状をしていて、出力軸M1−1,M2−1を間にして対称的に形成されている。そして、シャッタ板10の遮光部10a,10bと、シャッタ板11の遮光部11a,11bとは、後述するように、ステッピングモータM1,M2の出力軸M1−1,M2−1の相反する方向への回転によって、基板1の開口1a内における異なる領域を、交互に通過し得るようになっている。
【0031】
他方、中間板2とカバー板3との間に構成された収容室には、光路分割板12が配置されている。この光路分割板12は、直径の同じ二つの開口12a,12bを有していて、基板1に立設された軸1dに対して回転可能に取り付けられており、その長孔12cには、上記の回転子4に設けられている出力ピン4cが挿入されている。そのため、この光路分割板12は、回転子4の往復回転により、基板1に設けられた二つのストッパ1e,1fによって規制される角度範囲内でだけ往復回転をさせられ、開口1a内に進退させられるようになっている。そして、開口1a内に進入させられたときは、二つの開口12a,12bを、開口1a内において、対物光学系に入射した被写体光の光軸Oの両側、即ち開口1aの中心の左右両側に配置し、開口1a内のその他の領域を覆うようになっている。
【0032】
尚、本実施例の場合には、絞り装置を備えていないが、備えるようにすることも可能である。周知のように、絞り装置の典型的なものとしては、特開2010−85437号公報などに記載されている絞り装置のように、本実施例における開口1aよりも直径の小さな絞り開口を有した1枚の絞り羽根を、駆動手段によって往復作動させ、開口1a内に進退させるタイプのもの(以下、単一式絞り装置という)と、特開2010−128357号公報などに記載されている絞り装置のように、複数枚の羽根を駆動手段によって同時に同じ方向へ往復回転させ、光軸Oを中心にした絞り開口を他段階的に変化させ得るタイプのもの(以下、多段階式絞り装置という)が知られている。
【0033】
そこで、本実施例に対して、いずれかの絞り装置を備えるようにするためには、例えば、本実施例の中間板2とカバー板3との間の収容室を、第2の中間板で仕切って二つの収容室にし、中間板2と第2の中間板との間の収容室には光路分割板12を配置し、第2の中間板とカバー板3との間の収容室には絞り羽根を配置するようにすればよいことになるが、絞り装置が単一式絞り装置の場合には、第2の中間板で仕切ることなく、中間板2とカバー板3の間の収容室に、光路分割板12と共に絞り羽根を配置するようにすることも可能である。また、絞り装置の駆動手段は、本実施例の各駆動手段のように、基板1の収容室外となる面(図1の下方領域)に取り付けるのが好ましいが、特に絞り装置が多段階式絞り装置の場合には、カバー板3を厚くして、その収容室外となる面に取り付けるようにした方が良い場合もある。
【0034】
このような構成をしている本実施例の撮像装置は、既に述べたように、静止画と動画の両方を撮影することの可能な、単体のデジタルカメラに採用された場合を想定していて、そのデジタルカメラには、2次元画像を得るための撮影と3次元画像を得るための撮影とを選択するための選択手段と、静止画を撮影するための静止画用レリーズボタンと、動画を撮影するための動画用レリーズボタンとが設けられていることを前提にしている。また、それらの選択手段と二つのレリーズボタンとを操作することによって全ての撮影が好適に行われるようにするために、図示していない本実施例の撮像素子には、CCDではなく、CMOSが採用されている。そして、このことは、以下に説明する他の実施例の場合も同じである。
【0035】
そこで次に、図1〜図6を用いて本実施例の作動を説明するが、図2〜図6においては、作動説明に必要な最小限の部材及び部位にだけ符号を付けてある。先ず、2次元の静止画を撮影する場合を説明する。図1は、カメラの電源がオンになっていて、撮影者が、上記の図示していない選択手段によって、2次元画像の撮影を選択しているときの撮影待機状態を示したものであり、光路分割板12は開口1aから退いている。また、絞り装置を設けるようにした場合には、絞り板も開口1aから退いている。そのため、この図1の状態においては、デジタルカメラの対物光学系に入射した被写体光は、開口1aの全領域を通過して図示していない撮像素子に到達しているため、撮影者は、カメラに設けられた図示していないモニターで、被写体の2次元画像を観察することが可能になっている。
【0036】
ところで、この図1の状態においては、アクチュエータAの固定子コイル6に対して電流が供給されていない。しかしながら、周知のように、このときには、回転子4の永久磁石の磁極と、ヨーク7の磁極部との対向配置関係によって、両者間には吸引力が作用しており、回転子4には時計方向へ回転する力が与えられている。ところが、光路分割板12がストッパ1eに接触しているため、回転子4は回転することができない状態になっている。そのため、この状態においては、カメラをどのような姿勢にしても、開口1aの全開状態が、安定的に維持されている。
【0037】
また、このことからも分かるように、このような機能は、カメラの電源スイッチがオフになっているときにも得られることになる。そのため、携帯中における通常の振動に対しても、この状態は確実に維持されている。また、仮に、大きな衝撃が加わって、光路分割板12がストッパ1eから若干離されてしまうようなことがあったとしても、回転子4とヨーク7との間に作用している上記の吸引力によって、直ちに図1の状態に復帰させられることになる。
【0038】
このような図1の撮影待機状態において、2次元の静止画を撮影する場合には、カメラに設けられている、上記の図示していない静止画用レリーズボタンを押すようにする。そこで、絞り装置を備えているときには、周知のように、測光回路による被写体光の測定結果によって、被写体が非常に明るい場合には、絞り羽根を開口1a内に作動させておいてから撮影が行われ、そうでない場合には、直ちに撮影が行われることになるが、本実施例の場合には、絞り装置を備えていないので、直ちに撮影が行われる。
【0039】
そして、その撮影は、それまで撮像素子に蓄積されていた観察画像用の電荷が放出されることによって開始され、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、図示していない露光時間制御回路からの信号によって、それまで蓄積された電荷は、撮像情報として、撮像情報処理回路を介して記憶装置に記憶され、2次元の静止画の撮影が終了する。従って、この撮影の場合には、アクチュエータAとステッピングモータM1,M2には全く通電されることがなく、撮影待機状態に復帰したことになる。しかし、絞り装置を備えた場合には、撮影が終了すると、絞り羽根を開口1aから退かせることによって撮影待機状態に復帰したことになる。
【0040】
次に、2次元の動画撮影を行う場合を説明する。この場合には、上記の選択手段が2次元画像での撮影を選択した状態になっているときは、そのままでよいが、3次元画像での撮影を選択した状態になっているときには、選択手段を操作して、2次元画像の撮影を選択した状態にする必要がある。しかしながら、本実施例の場合には、そのように選択手段を操作した場合であっても、アクチュエータAの固定子コイル6には通電されず、回転子4は回転されない。つまり、本実施例の場合には、2次元画像の撮影(静止画撮影及び動画撮影)のときも、3次元画像の撮影(静止画撮影及び動画撮影)のときも、撮影待機状態は同じであって、図1に示された状態ということである。
【0041】
そのため、この動画撮影を行う場合には、モニターによって、2次元画像の被写体を観察しておいてから、レリーズボタンを押し続けることになるが、そのレリーズボタンは、上記の静止画用レリーズボタンではなく、動画用レリーズボタンを押すことになる。また、この場合にも、絞り装置を備えていて、被写体光量を減じて撮影する場合には、上記したようにして絞り装置を作動させておいてから、動画撮影が開始されることになるが、動画撮影を比較的長い時間行えるようにしたカメラの場合には、単一式絞り装置よりも多段階式絞り装置を備えた方が、撮影中における被写体の変化に対応して、絞り開口を自動的に変化させるようにすることができるので有利である。
【0042】
このようにして、動画用レリーズボタンを押して撮影が開始されると、動画用レリーズボタンを押している限り、撮像素子の電荷の蓄積と放出とが短かい周期で繰り返され、放出の都度、その時点での撮像情報が記憶装置に記憶されていく。そして、動画用レリーズボタンを離すと、その信号で撮影が終了し、撮影待機状態に復帰する。また、絞り装置を備えている場合には、絞り羽根が、開口1aから退いて停止した段階で撮影待機状態に復帰したことになる。従って、この撮影の場合にも、アクチュエータAと二つのステッピングモータM1,M2には、通電されない。
【0043】
次に、3次元の静止画撮影の場合を説明する。この場合には、上記の選択手段が2次元画像での撮影を選択した状態になっているときは、選択手段を操作して、3次元画像での撮影を選択した状態にする必要がある。そして、本実施例の場合には、上記したように、3次元画像での撮影を選択した場合であっても、その撮影待機状態は、2次元画像での撮影を選択した場合の撮影待機状態と全く同じであり、図1に示された状態である。そのため、この場合にも、撮影前においては、モニターによって、2次元画像の被写体を観察することになる。
【0044】
この3次元の静止画撮影を行なうときは、3次元画像の撮影であっても、静止画の撮影であることには変わりがないので、上記の静止画用レリーズボタンを押すことになる。そして、このときには、絞り装置を備えている場合であっても、後述する3次元の動画撮影を行う場合と同様に、絞り羽根を作動させることはない。
【0045】
しかし、この場合には、3次元画像での撮影が選択されているため、実際に撮影が開始される前に、先ず、アクチュエータAの固定子コイル6に対して電流が順方向に供給される。それによって、回転子4は反時計方向へ回転させられるので、光路分割板12は、出力ピン4cによって時計方向へ回転させられ、ストッパ1fに当接して停止させられる。図2は、その状態を示したものであって、開口1a内には、光軸Oの左右両側に、二つの小さな開口12a,12bが配置された状態になる。本実施例の場合、この状態が得られても、固定子コイル6に対する通電を断たないが、既に説明した理由によって、通電を断ってもこの状態は確実に維持されるので、断つようにしても構わない。
【0046】
このようにして図2の状態が得られると、次には、二つのステッピングモータM1,M2に対して、相互の印加開始時間をずらせてパルスを与える。即ち、先ず、最初に回転を開始させられたシャッタ板10が、図2の状態から反時計方向へ90度回転させられると、図3に示された状態になる。このようにして、光路分割板12の一方の開口12aが完全に覆われ、他方の開口12bが覆われていない状態になると、図示していない撮像素子にそれまで蓄積されていた電荷が放出され、開口12bを通過してきた被写体光によって、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、図示していない露光時間制御回路からの信号で、それまでに蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送され、記憶される。
【0047】
その後も、シャッタ板10が、図3の状態から反時計方向へ90度回転され、且つ図3の状態が得られた後になってから回転を開始させられたシャッタ板11が、シャッタ板10と同じ速度で時計方向へ90度回転させられると、図4に示された状態になる。このように、光路分割板12の一方の開口12aが全開にされ、他方の開口12bが完全に覆われた状態にさせられると、図示していない撮像素子にそれまで蓄積されていた電荷が放出され、開口12aを通過してきた被写体光によって、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、図示していない露光時間制御回路からの信号によって、蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に記憶される。
【0048】
このようにして、視差のある二つの画像の撮影が終了したあとも、シャッタ板10は、さらに反時計方向へ90度回転させられ、シャッタ板11は、さらに時計方向へ90度回転させられて、図5に示された状態になるが、このときには撮影は行われない。その後、シャッタ板10,11がさらに90度回転させられると、図6に示された状態になるが、このときにも撮影は行われない。そして、この状態になると、もはや、シャッタ板10は、それ以上回転させられないが、シャッタ板11の方は、さらに反時計方向へ90度回転させられ、図2に示された状態になって停止させられる。
【0049】
そして、その状態になると、アクチュエータAの固定子コイル6に対して、今度は、電流が逆方向に供給されるので、回転子4は、時計方向へ回転させられる。それによって、光路分割板12は反時計方向へ回転させられ、ストッパ1eに当接することによって停止させられる。その後、固定子コイル6に対する通電を断つと、図1の撮影待機状態に復帰したことになる。
【0050】
尚、上記の作動説明においては、便宜上、各々のシャッタ板10,11が、あたかも、90度ごとに一時的に停止させられるかのような印象を受けるように説明されている。勿論、シャッタ板10,11をそのように回転させても構わないが、実際には、連続的に回転させるようにするのが普通である。
【0051】
また、上記の作動説明では、図3の状態になった後、開口12bを通過した被写体光による撮像が開始される場合で説明したが、必ずしもそのようにしなければならないというものではない。例えば、図3の状態になる直前、即ち、シャッタ板10によって、開口12aが完全に覆われた瞬間から図3の状態になるまでの間に、撮像を開始させても構わない。そして、このことは、本実施例の下記の3次元の動画撮影を行う場合にも言えることであるし、また、二つのシャッタ板の形状が異なってはいるものの、同じようなことは、下記の各実施例における3次元画像の撮影の場合にも言えることである。
【0052】
最後に、3次元の動画撮影を行う場合を説明する。この場合も、上記の選択手段が3次元画像での撮影を選択する状態になっていたときは、そのままでよいが、2次元画像での撮影を選択する状態になっていたときには、選択手段を操作して、3次元画像での撮影を選択する状態にする必要がある。そして、上記したように、3次元画像での撮影を選択した場合でも、その撮影待機状態は、図1に示された状態である。そのため、この場合にも、撮影前においては、モニターによって、2次元画像の被写体を観察することになる。
【0053】
撮影するときには、上記の動画用レリーズボタンを押し、撮影を終了させるまで押し続けることになる。そこで先ず、動画用レリーズボタンを押すと、上記の3次元の静止画像の撮影のときと同様に、実際に撮影が開始される前に、先ず、アクチュエータAの固定子コイル6に対して電流が順方向に供給され、回転子4を反時計方向へ回転させる。そのため、光路分割板12は、出力ピン4cによって時計方向へ回転させられ、ストッパ1fに当接して停止させられる。その結果、図2に示されているように、開口1a内に二つの小さな開口12a,12bを配置した状態にさせられる。
【0054】
このようにして図2に示された状態が得られると、二つのステッピングモータM1,M2に対して、相互の回転開始時間がずれるようにして、パルスが順に印加される。そこで先ず、ステッピングモータM1にパルスが印加されて、シャッタ板10が、反時計方向へ90度回転させられると、図3に示されているように、光路分割板12の一方の開口12aが完全に覆われ、他方の開口12bだけが全開状態になる。すると、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、開口12bを通過してきた被写体光によって、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送され、記憶される。
【0055】
その後、シャッタ板10がさらに反時計方向へ90度回転し、且つシャッタ板11が回転を開始して時計方向へ90度回転すると、図4の状態になる。このように、光路分割板12の一方の開口12aが全開になっていて、他方の開口12bが完全に覆われた状態になると、図示していない撮像素子にそれまで蓄積されていた電荷が放出され、開口12aを通過してきた被写体光によって、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送され、記憶される。
【0056】
このようにして、視差のある二つの画像の撮影が終了するが、ここまでの作動は、上記した3次元の静止画を撮影する場合と同じである。しかしながら、このあとは異なっている。即ち、上記のようにして図4の状態において、開口12aを通過してきた被写体光による撮影が終了した後、シャッタ板10が反時計方向へ90度回転し、シャッタ板11が時計方向へ90度回転することによって、図5に示された状態になると、撮像素子にそれまで蓄積された電荷が放出され、今度は、開口12bを通過してきた被写体光によって、2回目の撮影画像用の電荷が新たに蓄積されていくようになる。このようにして、それ以後は、両方のシャッタ板10,11が相反する方向へ90度回転するごとに、開口12aを通過した被写体光による撮影と、開口12bを通過した被写体光による撮影とが、交互に連続して行われることになる。
【0057】
このように短い周期で交互に行われる連続撮影は、撮影者が、それまで押していた動画用レリーズボタンから、指を離すことによって終了することになる。そこで、動画用レリーズボタンから指を離すと、それによって発せられた終了信号によって、アクチュエータAとステッピングモータM1,M2を、所定の時間だけ作動させ得るようにする。そして、その間に、先ず、アクチュエータAの固定子コイル6には、逆方向の電流が供給され、回転子4が、時計方向へ回転させられる。そのため、光路分割板12は、反時計方向へ回転させられ、ストッパ1eに当接することによって停止させられる。
【0058】
他方、相反する方向への回転を続けていた二つのステッピングモータM1,M2は、図6の状態になると、先ずステッピングモータM1の回転が停止させられ、その後、シャッタ板11が時計方向へ90度回転させられたところでステッピングモータM2の回転が停止させられる。このようにして、光路分割板12とシャッタ板10,11の回転が停止させられ、アクチュエータAの固定子コイル6に対する通電が断たれると、図1に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0059】
尚、本実施例の作動説明においては、図1の撮影待機状態で観察できる被写体画像は、いずれも2次元画像である場合で説明したが、そのような2次元画像のほかに、3次元画像でも観察できるようにすることは容易である。そのようにしたい場合は、デジタルカメラに、3次元画像での観察専用のボタンを備えておき、そのボタンを押しているときは、記憶装置に記憶させることなく、上記した3次元の動画撮影の場合と同様にして作動させ、撮像素子で撮像した画像をモニターに表示させるようにすればよい。
【0060】
また、上記の作動説明では、3次元画像を撮影する場合であっても、図1の状態を撮影待機状態にしているが、それは、モニターでの観察画像の明るさを、2次元画像を撮影する場合におけるモニターでの観察画像の明るさと同じにするためである。しかしながら、回路上で明るさの切換えが行えるように構成されている場合には、選択手段によって、2次元画像の撮影状態から3次元画像の撮影状態に切り替えられたときに、固定子コイル6に対して順方向への電流を供給し、図2の状態にしたあと、その電流の供給を断つようにしても差し支えない。従って、選択手段によって3次元画像の撮影状態を2次元画像の撮影状態に切り替えたときは、固定子コイル6に対して逆方向の電流を供給することになる。
【0061】
更に、上記の作動説明は、本実施例の撮像装置が、2次元の静止画と動画の撮影、及び3次元の静止画と動画の撮影、のいずれをも可能にしたデジタルカメラに採用された場合で説明した。しかし、上記の説明からも理解できるように、本実施例の撮像装置は、動画用レリーズボタンを備えることなく、2次元と3次元の静止画だけを撮影可能にしたカメラにも採用することが可能であり、また、静止画用レリーズボタンを備えることなく、2次元と3次元の動画だけを撮影可能にしたカメラに採用することも可能である。更に、動画用レリーズボタンと静止画用レリーズボタンの両方を備えてはいるが、選択手段によって、2次元画像での撮影と3次元画像での撮影のいずれか一方を選択した場合には、それらの一方のレリーズボタンだけがロックされ、撮影を行えなくなるようにしたカメラにも採用することが可能である。そして、これらのことは、以下の各実施例の場合にも言えることである。
【実施例2】
【0062】
次に、図7及び図8を用いて実施例2を説明するが、図7は、本実施例の撮影待機状態を示す平面図であり、図8は、図7の状態から光路分割板を作動させた後、一方のシャッタ板を180度回転させた状態を示す平面図である。先ず、本実施例の構成は、上記の実施例1の構成と殆ど同じであり、二つのステッピングモータの出力軸に取り付けられているシャッタ板の形状が異なっているだけである。そこで、図7及び図8においては、シャッタ板以外の部材及び部位に、実施例1の場合と同じ符号を付けておいたので、それらについての説明は省略する。そして、本実施例のシャッタ板13,14は、実施例1のシャッタ板10,11とは異なり、各々、半月状をした一つの遮光部13a,14aだけを有している。
【0063】
このような構成の差異からも分かるように、撮影を行うときの本実施例の作動は、実施例1の作動と、非常に似たものになる。即ち、図7は、上記したように、本実施例の撮影待機状態を示したものであるが、このとき、開口1aは全開状態となっていて、開口1aの略全領域を通過した被写体光が、図示していない撮像素子に導かれるようになっている。そのため、2次元の静止画撮影と2次元の動画撮影の作動は、実施例1の場合と全く同じである。そのため、それらについての作動説明は省略する。
【0064】
また、上記の実施例1の作動説明からも分かるように、3次元の動画撮影の作動は、実質的に、3次元の静止画撮影の作動を繰り返して、連続的に行うようにしている。そのため、3次元の動画撮影の作動を説明すれば、必然的に3次元の静止画撮影の作動も理解することができると考える。そこで、本実施例の具体的な作動説明は、3次元の動画撮影の場合についてだけとする。尚、その作動についても、実施例1の場合と実質的に同じ点が多いので、それらの点は、簡略化したり、省略したりして説明する。
【0065】
3次元の動画撮影を行う場合には、先ず、カメラに備えられている図示していない選択手段が3次元画像での撮影を選択した状態になっている必要がある。図7に示された撮影待機状態は、そのような状態である。この状態においては、開口1aを通過した被写体光は、殆ど図示していない撮像素子に達しているため、モニターによって、2次元画像の被写体を観察することが可能になっている。
【0066】
撮影を行うときは、カメラに備えられている図示していない動画用レリーズボタンを、撮影を終了させたいときまで押し続ける。先ず、動画用レリーズボタンを押すと、実際に撮影が開始される前に、アクチュエータAの固定子コイル6に対して電流が順方向に供給され、回転子4を反時計方向へ回転させて、光路分割板12を、ストッパ1fに当接するまで開口1a内に進入させる。その結果、光路分割板12に形成された二つの開口12a,12bは、開口1aの中心を間にして、左右両側に配置された状態になる。その後、二つのステッピングモータM1,M2に対し、相互の回転開始時間をずらせて、パルスを印加する。
【0067】
そこで先ず、ステッピングモータM1にパルスが印加されると、シャッタ板13は、反時計方向へ180度回転させられ、図8に示した状態になって、光路分割板12の一方の開口12aを完全に覆った状態にする。そうすると、それまでに撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、全開となっている方の開口12bを通過してきた被写体光により、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、蓄積された電荷が、撮像情報として図示していない記憶装置に記憶される。
【0068】
その後、シャッタ板13がさらに反時計方向へ180度回転し、且つもう一方のシャッタ板14が回転を開始させられて時計方向へ180度回転すると、光路分割板12の一方の開口12aが全開になり、他方の開口12bが完全に覆われた、図示されていない状態になる。そこで、撮像素子にそれまで蓄積されていた電荷は放出され、開口12aを通過してきた被写体光によって、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に記憶される。
【0069】
その後は、二つのシャッタ板13,14が相反する方向へ1回転するたびに、視差のある二つの画像が順に撮影されていく。そして、所定時間経過後において、撮影者が、それまで押していた動画用レリーズボタンから指を離すと、アクチュエータAの固定子コイル6に対して逆方向の電流が供給される。それによって、光路分割板12が、反時計方向へ回転させられ、ストッパ1eに当接して停止させられると、固定子コイル6に対する通電が断たれる。他方、動画用レリーズボタンから指を離した後、シャッタ板13が開口1aから退いて、シャッタ板14が開口12bを覆った状態になると、ステッピングモータM1の回転が停止させられ、その後、シャッタ板14だけが時計方向へ180度回転して開口1aから退くと、ステッピングモータM2の回転も停止させられる。それによって、図7に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0070】
このような作動説明からも分かるように、本実施例が、上記の実施例1の場合と異なる点は、本実施例の場合には、同時に回転する二つのシャッタ板13,14が1回転すると、視差のある二つで一組の画像を一組分だけ撮影しているのに対して、実施例1の場合には、同時に回転する二つのシャッタ板10,11の1回転によって、視差のある二つで一組の画像を二組分撮影していることである。
【0071】
そのため、ステッピングモータM1,M2の回転数が、両方の実施例間において同じであると仮定すると、実施例1の方が、より自然な動きの動画を得ることができる。しかしながら、ステッピングモータM1,M2の固有の回転数が大きい場合には、短時間で沢山の画像情報を記憶しなければならなくなるため、図示していない撮像素子や撮像情報処理回路の性能によっては、処理しきれなくなる(応答不能になる)場合がある。そのため、いずれの実施例を採用した方がよいかは、ステッピングモータM1,M2の性能も含めて、カメラの仕様によって決められることになる。
【0072】
尚、本実施例と実施例1とでは、シャッタ板の形状が半月状であるか扇形状であるかの違いはあるものの、その他の点については上記の実施例1の場合と実質的に同じであるため、実施例1の説明中で述べた種々の変形例などについての説明は、本実施例の場合にも適用される。
【実施例3】
【0073】
次に、図9〜図11を用いて実施例3を説明する。本実施例は、上記の実施例1,2における光路分割板12を、一つずつの開口を有していて、アクチュエータAによって相反する方向へ回転させられる二つの光路規制板で構成するようにし、また、上記の実施例2におけるシャッタ板13,14と同じシャッタ板が、ステッピングモータM1,M2の出力軸M1−1,M2−1に直接取り付けられておらず、減速歯車機構を介して、回転させられるようにし、さらに、実施例1,2の基板1に、二つの光電センサーを取り付けるようにしたものである。そして、その上に、本実施例の場合には、実施例1,2においては備えていなかった絞り装置を備えている。
【0074】
そこで、本実施例の構成を説明するが、本実施例の場合にも、各図においては、実施例1,2における構成部材及び部位と実質的に同じものに、同じ符号を付けてある。そのため、それらの構成については、説明を簡略化したり省略したりすることにする。尚、図9は、撮影待機状態を示す平面図であり、図10は、図9の状態において基板を取り除いて示した平面図であり、図11は、図10の状態から2枚の光路分割板を作動させた状態を示す平面図である。
【0075】
先ず、図9に示されている本実施例の基板1には、上記の実施例1,2の場合と同様にして、その中央に、開口1aが形成されている。また、図9においては、基板1の一部を破断して示し、図10においては、中間板2の一部を破断して示しているように、基板1の撮像素子側の面には、図示していない複数のねじなどによって、中間板2と、第2中間板15と、カバー板3とが順に取り付けられており、基板1と中間板2との間にシャッタ板の収容室を構成し、中間板2と第2中間板15との間に二つの光路規制板の収容室を構成し、第2中間板15とカバー板3との間に絞り羽根の収容室を構成している。
【0076】
それらのうち、基板1は、実施例1,2の場合と同様に厚い板部材である。また、中間板2も、実施例1,2の場合と同様に薄い板部材である。それに対して、第2中間板15は、比較的厚い板部材であり、また、カバー板2も、実施例1,2の場合とは異なり、厚い板部材である。そして、中間板2と、第2中間板15と、カバー板3にも、その中央に、基板1の開口1aと重なるところに開口2a,15a,3a(図10,図11参照)が形成されているが、本実施例の場合には、開口1aの直径が一番小さくて、開口2a,15a,3aの順に大きくなっている。
【0077】
図9に示されているように、基板1の被写体側の面には、電流制御式のアクチュエータAが取り付けられている。このアクチュエータAの構成は、実施例1,2におけるアクチュエータAとは、一部の構成部材の形状や組み付け方が異なってはいるものの、実質的には同じである。そのため、各構成部材と部位には、実施例1,2における符号をそのまま付けておき、それらの説明を省略する。そして、回転子4の出力ピン4cは、上記の実施例1,2の場合と同様に、基板1の長孔1cと、中間板2の長孔2b(図10参照)を貫通して、中間板2と第2中間板15との間の収容室に挿入されている。
【0078】
図10は、図9から基板1を取り除いて、撮像素子側(中間板2側)を見た平面図であるが、この図10から分かるように、中間板2と第2中間板15との間の収容室には、二つの光路規制板16,17が配置されている。そして、これらの光路規制板16,17には、実施例1,2において、光路分割板12に形成されていた二つの開口12a,13aに相当する開口16a,17aが、別々に形成されている。
【0079】
また、これらの光路規制板16,17は、各々、基板1に立設された軸1g,1hに対して回転可能に取り付けられている。そして、符号を付けるのを省略しているが、光路規制板16,17には、実施例1,2における光路分割板12の長孔12cに相当する長孔が各々形成されており、回転子4に設けられた出力ピン4cが、それらの両方の長孔に挿入されている。そのため、二つの光路規制板16,17は、回転子4が往復回転すると、相反する方向へ同時に往復回転させられるようになっており、それらの往復回転は、基板1に設けられたストッパ1i,1jによって停止させられるようになっている。
【0080】
尚、図10及び図11には、基板1が示されておらず、また、回転子4も全体形状が示されていないので、上記の軸1g,1hと、ストッパ1i,1jと、出力ピン4cとは、いずれもハッチングを付け、それらの断面だけが示されている。また、軸1g,1hと、ストッパ1i,1jとは、各々、中間板2に形成された孔2c,2dと、孔2e,2fとを貫通させられている。
【0081】
他方、図9に示されているように、基板1の被写体側の面には、モータ取付け板18が取り付けられている。このモータ取付け板18は、開口1aを囲むように形成された円弧状の二つのブリッジ部18a,18bと、それらの両側に形成された平板状の二つの取付け部18c,18dとからなっていて、基板1との間に所定の間隔をあけ、四つのねじ19,20,21,22によって取り付けられている。そして、その取付け部18cには、ステッピングモータM1が二つのねじ23,24によって取り付けられ、取付け部18dには、ステッピングモータM2が二つのねじ25,26によって取り付けられている。
【0082】
本実施例の二つのステッピングモータM1,M2は、実施例1,2におけるステッピングモータM1,M2とは、接続端子の配列が異なっているだけであって、実質的には同じである。そして、それらの出力軸M1−1,M2−1の先端は、取付け部18c,18dに設けられた図示していない孔を貫通して、基板1との間に存在しており、そこに、出力歯車27,28を固定している。そのため、それらの出力歯車27,28の回転は、以下に説明する減速歯車機構を介し、基板1と中間板2との間に配置されているシャッタ板13,14に伝えられるようになっている。そして、本実施例のシャッタ板13,14は、実施例2の場合と全く同じ形状をしている。
【0083】
基板1と、モータ取付け板18の二つの取付け部18c,18dとの間には、歯車30,31と歯車32,33とが、各々、開口1aの両側に分かれて配置されており、いずれも、取付け部18c,18dに立設された軸18e,18f,18g,18hに対して回転可能に取り付けられている。また、歯車31,33には、円柱部31a,33aが一体成形によって同軸的に形成されており、その円柱部31a,33aの一部は、基板1に形成された各々の孔から、基板1と中間板2との間の収容室に挿入されていて、その挿入端には、シャッタ板13,14が周知の熱カシメ加工で固定されている。そのため、出力歯車27,28の回転は、直径の大きな歯車30,32を介して減速され、歯車31,33に伝達されることによって、シャッタ板13,14が回転させられるようになっている。尚、図10及び図11においては、円柱部31a,33aが断面で示されている。
【0084】
次に、基板1の中間板2側の面に取り付けられている二つの光電センサー34,35について説明する。これらの光電センサー34,35は、一般にフォトインターラプタと言われていて、発光部と受光部とを有しており、それらの間をシャッタ板13,14の一部が通過し得るようにしている。そして、シャッタ板13,14によって光路を遮断されていないときはH信号を出し、光路を遮断されているときはL信号を出すようになっており、両方の光電センサー34,35から出力され信号の相互間隔によって、シャッタ板13,14の相対的な回転位置関係が分かるようになっている。
【0085】
そこで、本実施例の作動説明に入る前に、本実施例では、どうしてこのような光電センサー34,35を備えているのかを説明しておく。周知のように、ステッピングモータの回転子は、カメラの姿勢を変えたぐらいでは、回転してしまうようなことがない。このことは、カメラの電源スイッチをオフにして普通に携帯している場合にも言えることである。ところが、ステッピングモータといえども、カメラに大きな衝撃が加わると、回転子が若干回転させられてしまうことがある。そして、ステッピングモータの場合には、一旦回転してしまうと、その回転させられた位置で停止状態を維持してしまうようになる。そのため、仮に、本実施例においてそのような現象が生じたとすると、図9において、二つのシャッタ板13,14の少なくとも一方が、どちらかの方向へ若干回転して停止した状態にさせられてしまう。
【0086】
そこで、本実施例の場合には、カメラの電源スイッチをオンにしたときには、二つの光電センサー34,35に通電すると共に、所定の時間だけ、二つのステッピングモータM1,M2の回転子を回転させるようにしている。そして、その間に、光電センサー34,35によって、二つのシャッタ板13,14の相対的な回転位置関係を検出し、その結果、両者の位相が所期の位相からずれてしまっているときには、その位相を自動的に調整し、その後の停止状態では、図9の撮影待機状態が得られるようにしている。
【0087】
尚、本実施例の場合には、光電センサー34,35は、基板1とカバー板3との間に配置されている。そのため、図10及び図11に示されているように、中間板2と第2中間板15には、同じ形状の切欠き部2g,15bと、やはり同じ形状をした切欠き部2h,15cとが形成されている。また、光電センサー34,35に接続するコンセンセントを、それらの切欠き部2g,15b、2h,15c内に配置できるようにするために、図9に示されているように、基板1にも、切欠き部1k,1mが形成されている。
【0088】
最後に、本実施例における絞り装置について簡単に説明する。本実施例の絞り装置は、多段階式の絞り装置である。しかしながら、その駆動手段であるステッピングモータM3(図10,図11参照)は、上記の特開2010−128357号公報に記載されているステッピングモータのように、構成部材を、基板1に対して順に取り付けるタイプのものではなく、本実施例における上記のステッピングモータM1,M2と同様に、ユニットとして市販されているタイプのものである。
【0089】
そして、本実施例の場合には、そのステッピングモータM3は、カバー板3の撮像素子側の面に取り付けられており、また、図示していないが、特開2010−128357号公報に記載されている複数枚の絞り羽根と絞り駆動リングに相当する部材は、第2中間板15とカバー板3との間の収容室に配置されている。また、ステッピングモータM3の出力軸M3−1の先端には出力歯車36が取り付けられており、その回転を、絞り駆動リングに対して直接又は間接に伝達し得るようになっている。尚、ステッピングモータM3は、基板1の被写体側の面に取り付けるようにすることも可能であって、そのようにした場合には、本実施例の場合よりもユニット全体を扁平にすることが可能になる。
【0090】
次に、本実施例の作動を説明するが、その作動は、上記のような構成上での差異による違いはあるものの、基本的には、実施例1,2の場合と、大きく変わるものではない。そのため、簡単に説明することにする。図9及び図10は、本実施例の撮影待機状態を示したものであるが、このとき、開口1aは全開状態となっていて、開口1aの略全領域を通過した被写体光が、図示していない撮像素子に導かれるようになっている。そのため、2次元の静止画撮影を行うときと、2次元の動画撮影を行うときは、カメラに設けられている図示していない選択手段を、2次元画像の撮影を選択した状態にしておく必要がある。
【0091】
そして、2次元の静止画撮影を行うときは、モニターで、被写体を観察しながら、カメラに設けられている図示していない静止画用レリーズボタンを押す。そうすると、先ずステッピングモータM3に通電し、被写体光の測定結果に基づいて、図示していない絞り羽根を所定の絞り開口制御状態になるまで作動させる。そして、所定の絞り開口が得られると、それまで撮像素子に蓄積されていた観察画像用の電荷を放出することによって実際の撮影が開始され、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、それまで蓄積された電荷を撮像情報として記憶装置に記憶させる。その後、ステッピングピングモータM3を逆転させ、絞り羽根を開口1aから退去させると、撮影待機状態に復帰したことになる。
【0092】
また、2次元の動画撮影を行う場合には、モニターによって、2次元画像の被写体を観察しながら、動画用レリーズボタンを押すことになるが、この場合にも、上記のようにして絞り装置を作動させた後に撮影が開始されることになる。そして、その撮影は、上記の実施例1における2次元の動画撮影の場合と全く同じように行われるが、本実施例の場合には、多段階式の絞り装置を備えているため、撮影中に被写体光の明るさが変化すると、ステッピングピングモータM3は、それに対応して正・逆転させられ、絞り開口の大きさを変化させることになる。その後、動画用レリーズボタンを離すと撮影は終了するが、ステッピングピングモータM3には、その後も所定の時間だけ通電され、絞り羽根を開口1aから退去させることによって、撮影待機状態に復帰する。
【0093】
次に、3次元画像の撮影について説明するが、この場合には、カメラに設けられている図示していない選択手段を、3次元画像の撮影を選択した状態にしておく必要がある。そして、上記の実施例2の説明中でも述べたように、本実施例の場合にも、3次元の動画撮影の作動は、実質的に、3次元の静止画撮影の作動を連続的に行うようにしたものである。そのため、3次元の動画撮影の作動を説明すれば、必然的に3次元の静止画撮影の作動も理解することができるので、本実施例の作動説明も、実施例2の場合と同様に、3次元の動画撮影についてだけ行うことにする。尚、3次元画像の撮影に際しては、絞り装置を作動させないので、ステッピングモータM3には通電されることがない。また、本実施例の場合にも、3次元画像の撮影時における撮影待機状態は、2次元画像の撮影時における撮影待機状態と同じであって、図9及び図10に示された状態である。
【0094】
図9及び図10に示された撮影待機状態において、モニターによって、2次元画像の被写体を観察しながら、図示していない動画用レリーズボタンを押すと、実際に撮影が開始される前に、アクチュエータAの固定子コイル6に対して電流が順方向に供給され、回転子4を反時計方向へ回転させる。そのため、一方の光路規制板16は時計方向へ回転させられて開口部1a内に進入し、ストッパ1jに当接して停止させられる。また、他方の光路規制板17は反時計方向へ回転させられて開口部1a内に進入し、ストッパ1iに当接して停止させられる。その結果、光路規制板16,17に形成された各々の開口16a,17aは、図11に示されているように、光軸Oの左右両側に配置された状態になる。
【0095】
その後、二つのステッピングモータM1,M2に対して、タイミングをずらせて、パルスを順に印加する。そこで先ず、ステッピングモータM1にパルスが印加されると、その回転は出力歯車27から歯車30を介して歯車31に伝えられ、シャッタ板13は、反時計方向へ180度回転させられ、光路規制板16の開口16aを完全に覆った状態にする。そうすると、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、光路規制板17の開口17aを通過してきた被写体光により、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、蓄積された電荷が、撮像情報として図示していない記憶装置に記憶される。
【0096】
その後、シャッタ板16がさらに反時計方向へ180度回転させられ、且つもう一方のシャッタ板17も、ステッピングモータM2によって歯車28,32,33を介して回転を開始させられ、時計方向へ180度回転させられると、今度は、光路規制板16の開口16aが全開になり、光路規制板17の開口17aが完全に覆われた状態になる。そこで、撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、開口16aを通過してきた被写体光によって、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、そのようにして蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に記憶される。
【0097】
そして、その後は、二つのシャッタ板13,14が相反する方向へ1回転するたびに、視差のある二つの画像の撮影が行われていく。そして、撮影者が、それまで押していた動画用レリーズボタンから指を離すと、一方では、アクチュエータAの固定子コイル6に逆方向の電流が供給されるので、光路規制板16は反時計方向へ回転され、光路規制板17は時計方向へ回転されて、開口1aから退いてゆき、各々ストッパ1i,1jに当接して停止させられる。そして、その後、固定子コイル6に対する通電が断たれる。また、他方では、シャッタ板13が図10の状態になったとき、ステッピングモータM1の回転が停止させられ、続いて、シャッタ板14が時計方向へ180度回転したとき、ステッピングモータM1の回転が停止され、図9及び図10に示された撮影待機状態に復帰する。
【0098】
このような作動説明から分かるように、本実施例が、上記の実施例2の場合と異なる点は、シャッタ板13,14が、ステッピングモータM1,M2に直結して回転させられるのではなく、減速歯車機構を介して、減速して回転させられていることである。そのため、ステッピングモータM1,M2の回転数が、実施例2の場合と同じであるとすれば、実施例2の方が、よりスムーズな動きの動画を得ることができることになる。しかしながら、既に実施例2の説明中でも述べたように、カメラの仕様によっては、本実施例の構成を採用した方がよい場合がある。
【0099】
尚、本実施例は、光路規制板16,17の1枚当たりの大きさが、実施例1,2で採用されていた光路分割板12よりも小さいため、開口1aから退いているときの収容スペースが小さくて済み、基板1を小さくすることができるという利点があるが、そのような必要性がない場合には、光路規制板16,17の代りに、実施例1,2のように、光路分割板12を採用しても構わない。また、反対に、実施例1,2において、光路分割板12の代りに、本実施例の光路規制板16,17を採用するようにしても構わない。更に、本実施例に採用されているような減速歯車機構を実施例1,2に採用するようにしても構わない。
【符号の説明】
【0100】
O 光軸
A アクチュエータ
M1,M2,M3 ステッピングモータ
M1−1,M2−1,M3−1 出力軸
1 基板
1a,2a,3a,12a,12b,15a,16a,17a 開口
1b 回転子取付け軸
1c,12c,2b 長孔
1d,1g,1h,18e,18f,18g,18h 軸
1e,1f,1i,1j ストッパ
1k,1m,2g,2h,15b,15c 切欠き部
2 中間板
2c,2d,2e,2f 孔
3 カバー板
4 回転子
4a 本体部
4b 腕部
4c 出力ピン
5 固定子枠
5a ボビン部
6 固定子コイル
7 ヨーク
8,9,19,20,21,22,23,24,25,26 ねじ
10,11,13,14 シャッタ板
10a,11a,13a,14a 遮光部
12 光路分割板
15 第2中間板
16,17 光路規制板
18 モータ取付け板
18a,18b ブリッジ部
18c,18d 取付け部
27,28,36 出力歯車
30,31,32,33 歯車
31a,33a 円柱部
34,35 光電センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物光学系に入射した被写体光の光軸を中心にして第1開口を形成している基板と、前記第1開口よりも小さくて互いに略同じ大きさをした第2及び第3開口を形成している光路分割板と、前記光路分割板を前記第1開口に進退させ進入させた状態では前記第1開口内において前記第2開口と前記第3開口とが光軸を間にして配置されるようにする第1駆動手段と、前記第2開口と前記第3開口が前記第1開口内に配置されているとき第2駆動手段によって回転され前記第2開口を開閉する第1シャッタ板と、前記第2開口と前記第3開口が前記第1開口内に配置されているとき第3駆動手段によって回転され前記第3開口を開閉する第2シャッタ板と、2次元画像の撮像時には前記第1開口を通過してきた被写体光を受光し3次元画像の撮像時には前記第1シャッタ板と第2シャッタ板との回転によって前記第2開口と第3開口とを交互に通過してきた被写体光を受光するようにした撮像素子と、を備えていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記光路分割板と、前記第1駆動手段と、前記第2駆動手段と、前記第3駆動手段とのうちの少なくとも一つが、前記基板に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1駆動手段が、前記基板の一方の面に取り付けられていて、前記光路分割板が前記基板の他方の面に回転可能に取り付けられており、前記第1駆動手段は、永久磁石を有する回転子が固定子コイルに対する電流の供給方向に対応した方向へ所定の角度範囲内でだけ往復回転させられる電流制御式のアクチュエータであって、該回転子の径方向位置において該回転子と一体的に回転する出力ピンが、前記基板の前記他方の面側で前記光路分割板に連結されており、前記光路分割板は該出力ピンの往復作動によって、前記第1開口に進退させられるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第2駆動手段と前記第3駆動手段とがステッピングモータであって前記基板の同じ面に取り付けられており、前記第1シャッタ板と前記第2シャッタ板とは前記基板の反対側において、それらのステッピングモータの出力軸に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1駆動手段と、前記第2駆動手段と、前記第3駆動手段とが、前記基板の同じ面に取り付けられていることを特徴とする請求項1,3,4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記光路分割板に代えて、前記第2開口を形成した第1光路規制板と、前記第3開口を形成した第2光路規制板とを備えており、該第1光路規制板と該第2光路規制板とは、前記第1駆動手段によって同時に相反する方向へ回転させられ、前記第1開口に進退させられるようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−97104(P2013−97104A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238649(P2011−238649)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】