説明

撮影モード自動選択装置を備えたカメラ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
本発明は、撮影モードを複数の撮影モードの中から自動選択できる撮影モード自動選択装置を備えたカメラに関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】
近年のカメラ、特に一眼レフカメラは、複数のプログラム露出モードを備えている。撮影者は自身の好みによって、あるいは被写体の条件に応じて、適切なシャッタ速度、絞り値が設定されるような露出モードを、複数の露出モードの中から選択しなければならなかった。選択操作は、押しボタンスイッチ、あるいはダイヤルスイッチによるものがある。いずれにしても、従来は撮影者自身が操作しなければならないので操作がわずらわしく、せっかく選択しても、被写体の状態が変わるなどによって選択し直す必要が生じる。このように再び選択する操作は非常にわずらわしく、速写性も損ねる。
【0003】
そこで、撮影条件に応じた最適な撮影モードを自動選択可能なカメラが望まれている。しかし、撮影者は、通常は自動選択された撮影モードで満足していても、ときには選択された撮影モード以外の撮影モードを選択したいと欲する場合もある。かかる場合に、撮影者が折角撮影モードをマニュアル選択しても、撮影の際に撮影モードが自動選択されては困る。一方、撮影モードをマニュアルで選択するモードと自動選択するモードとをスイッチ操作で選択するのも煩わしい。
【0004】
【発明の目的】
本発明は上記カメラの問題に鑑みてなされたもので、撮影条件に応じた最適な撮影モードを自動選択可能とする一方、撮影者が欲する撮影モードのマニュアル選択も簡単にできるカメラを提供することを目的とする。
【0005】
【発明の概要】
この目的を達成する本発明は、レリーズボタンの半押しで測光処理および測距処理を実行し、前記レリーズボタンの全押しで撮影処理を実行するカメラであって、前記レリーズボタンが半押しされたときに、前記測距処理により得た撮影距離データに基づいて、撮影距離が所定範囲より遠い場合は風景モードを、近い場合は近接モードを選択し、前記撮影距離データが所定範囲内の場合は撮影レンズの焦点距離データおよび前記撮影距離データに基づいて演算した撮影倍率が所定範囲内のときは人物モードを選択し、撮影倍率が所定範囲外のときはノーマルモードを選択する撮影モード自動選択手段;および、前記自動選択される撮影モードを含む複数の撮影モードの中から任意の撮影モードをマニュアル操作を受けて選択する撮影モードマニュアル選択手段;を備え、前記撮影モードマニュアル選択手段によって撮影モードがマニュアル選択されたときは、前記撮影モード自動選択手段による撮影モード自動選択が禁止されること、に特徴を有する。
より実際的には、前記撮影モード自動選択手段によって撮影モードが自動選択された後に撮影モードマニュアル選択手段によって撮影モードがマニュアル選択されても、前記撮影モード自動選択手段による撮影モード自動選択を可能にするスイッチ手段を備える構成にする。
さらに好ましい実施形態では、前記撮影モード自動選択手段によって撮影モードが自動選択された後に撮影モードマニュアル選択手段によって撮影モードがマニュアル選択されたときは、前記レリーズボタンが全押しされて撮影処理が終了したとき、または所定時間経過後に前記撮影モード自動選択手段による撮影モード自動選択を可能にする。
さらに本発明の実施形態では、前記撮影モード自動選択手段、撮影モードマニュアル選択手段を含むカメラ回路と、カメラが撮影可能な状態になってから何らかの操作が所定時間実行されなかったときに前記カメラ回路を待機状態にするタイマーを備え、前記撮影モード自動選択手段によって撮影モードが選択された後に撮影モードマニュアル選択手段によって撮影モードがマニュアル選択されていても、前記タイマーにより前記カメラ回路が待機状態になったときには前記撮影モード自動選択手段による撮影モード自動選択を可能にすることに特徴を有する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係るカメラの実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の撮影モード自動選択装置を搭載した自動焦点(AF)一眼レフカメラのカメラボディの一実施の形態を背後から見た斜視図、図2は、このカメラの制御系をブロックで示す図である。
この一眼レフカメラは、複数の撮影モード(プログラム露出モード)の中から、焦点距離および撮影距離情報に基づいた適切な撮影モードを自動選択する撮影モード自動選択モードを備えている。
【0007】
このカメラボディ11には、着脱自在な交換レンズの一つとして、撮影レンズ51が装着される。撮影レンズ51は、詳細は図示しないが、例えばパワーズームレンズであって、焦点距離が28mm〜80mmの間で、内蔵したズームモータ(図示せず)により任意に変更可能に設定されている。このカメラボディ11の上面には、ペンタプリズムおよび内蔵フラッシュを収納したペンタルーフ部13が膨出形成されている。内蔵フラッシュは、発光部がポップアップ可能にペンタルーフ部に設けられている。ペンタルーフ部13の横には、メインスイッチレバー14が、カメラボディ11の前後方向にスライド自在に装着されている。メインスイッチレバー14はOFF位置およびAUTO位置にスライド可能なスライドスイッチである。メインスイッチレバー14のOFF位置では電源がOFFし、AUTO位置では電源および撮影モード自動選択モードがONする。
【0008】
本実施の形態における撮影モード自動選択モード(以下、「ピクチャー自動設定モード」という。)は、プログラム露出モードを、初心者の撮影に適するノーマルモード、人物の全身または上半身撮影に適する人物モード(ポートレートモード)、遠距離の風景撮影に適する風景モード、被写体を近接状態で撮影するのに適する近接モード(マクロモード)、および移動する被写体の撮影に適する動体モードの中から、撮影レンズ51の撮影距離及び焦点距離情報に基づいてカメラが自動選択するモードである。
【0009】
カメラボディ11の右端部にはグリップ部が膨出形成されていて、このグリップ部の上端面に最前部にシャッタ釦15が押し込み操作自在に配設されている。このシャッタ釦15の後方に位置に、指定された可変データをアップ/ダウンさせる為のアップ/ダウンレバー16が、撮影レンズ51の光軸に略平行な軸線回りに(即ち、カメラボディ11の略前後方向に沿って延出する軸線回りに)揺動操作自在に配設され、アップ/ダウンレバー16の後方に切換え釦17が押し込み操作自在に配置されている。カメラボディ11の背面上部には、露出補正釦18が押し込み操作自在に配置されている。
【0010】
さらにこのカメラボディ11には、表示手段として、外部表示LCD31及びファインダ内表示LCD41を備えている。外部表示LCD31は、選択された露出モード、シャッタ速度、絞り値Av及び撮影枚数を表示する。ファインダ内表示LCD41は、選択された露出モード、シャッタ速度Tv、絞りFナンバーおよび合焦非合焦を表示する。
【0011】
外部表示LCD31の表示およびファインダ内表示LCD41の表示の態様について、図3及び図4を参照してより詳細に説明する。図3は、外部表示LCD31の一実施例を示している。この外部表示LCD31には、5個の露出モードを表示するピクチャーが上部に横一列に描かれている。左から順に、ノーマルモードを示すピクチャー(スマイル顔)32a、人物モードを示すピクチャー(人物)32b、風景モードを示すピクチャー(山)32c、近接モードを示すピクチャー(花)32d、動体モードを示すピクチャー(走っている人)32eである。これらのピクチャー32a〜32eは、本実施例では液晶ではなく、印刷によって描かれている。そして、いずれのモードが選択されているかを識別する枠33a〜33eが、各ピクチャーを囲む枠線として、液晶セグメントによって形成されている。選択されたモードに対応するピクチャー32a〜32eを囲む枠33a〜33eが点灯する。図3において、(A)はノーマルモードが選択された状態、(B)はポートレートモードが選択された状態、(C)は風景モードが選択された状態、(D)は近接モードが選択された状態、(E)は動体モードが選択された状態をそれぞれ表示している。
【0012】
ピクチャー32a〜32eの下方には、シャッタ速度Tv表示部34a、絞り値Av表示部34b、及び撮影枚数表示部34cが液晶セグメントで形成されている。
【0013】
図4は、ファインダ内表示LCD41の一実施例を示してある。このファインダ内表示LCDパネル41において表示される内容は、外部表示LCD31の表示内容を実質的に簡略化したものである。ファインダ内表示LCD41は、視野の短辺の外側に見られるように配置されていて、上からシャッタ速度表示部43a、絞りFナンバー表示部43bが配置されている。この下に、順番にノーマルモードを示すピクチャー(スマイル顔)42a、人物モードを示すピクチャー(人物)42b、風景モードを示すピクチャー(山)42c、近接モードを示すピクチャー(花)42d、動体モードを示すピクチャー(走っている人)42eが配置されている。これらのピクチャー42a〜42eは液晶セグメントで形成されていて、選択されたピクチャー42a〜42eが点灯する。図4において、(A)はノーマルモードが選択された状態、(B)はポートレートモードが選択された状態、(C)は風景モードが選択された状態、(D)は近接モードが選択された状態、(E)は動体モードが選択された状態をそれぞれ表示している。なお、風景モードを示すピクチャー42cの横に設けられた六角形に表示素子は、合焦非合焦の別を表示する合焦表示部44である。
このファインダ内LCD41の表示によって撮影者は、ファインダーを覗いて被写体を観察しつつ、どのピクチャー(プログラム露出モード)が選択されているのかを容易に知ることができる。
【0014】
『AF一眼レフカメラの制御系』
図2を参照して、AF一眼レフカメラにおける制御系の構成を説明する。
詳細は図示しないが、撮影レンズ51のズーム光学系からカメラボディ11内に入射した被写体光束は、大部分がメインミラーによりファインダ光学系を構成するペンタミラー(図示せず。)に向かって反射され、さらに反射光の一部が測光用ICの受光素子94に入射する。一方、カメラボディ11内に入射した被写体光束のうち、メインミラーの図示しないハーフミラー部に入射した被写体光束が反射されてAFセンサユニット61に入射する。AFセンサユニット61は、例えばCCDラインセンサを備えた周知の位相差式センサユニットであり、ボディ側CPU20は、AFセンサユニット61から入力した画像データに基づいてデフォーカス量を演算し、図示しないAFモータを駆動して撮影レンズ51の焦点調節レンズを、デフォーカス量が0ないし小さくなる位置まで駆動する。
【0015】
測光用ICは、被写体光束を受光する受光素子94を備えていて、この受光素子94が受光量に応じて発生する電気信号を測光回路96において対数圧縮し、A/D変換回路98においてA/D変換し、測光信号としてボディ側CPU20に出力する。ボディ側CPU20は、測光信号およびフィルム感度情報に基づいて所定の演算を実行し、露出用の適正シャッタ速度および絞り値を算出する。そして、これらのシャッタ速度および絞り値に基づいて露出制御装置23を駆動する。詳細は図示しないが、露出制御装置23は、フォーカルプレーンシャッタ装置及び撮影レンズの絞りを駆動する絞り駆動装置を備えている。更に、このボディ側CPU20は、レリーズに際して、図示しないモータドライブ回路を介して図示しないミラーモータを駆動して、メインミラーのアップ/ダウン処理を行ない、露光終了後には図示しない巻上モータを駆動してフィルムを巻上げる。また、このカメラボディ11は内蔵ストロボ回路(内蔵フラッシュ)63を備え、外付けストロボ(外部フラッシュ)65が装着されている。ボディ側CPU20は、外付けストロボ65との間でフラッシュ通信を行なってガイドナンバーなどのストロボデータを読み込み、これらのフラッシュ63、65の充電、発光、発光停止制御などを行なう。
【0016】
更に、ボディ側CPU20は、レンズマウント部に設けられた接続端子群と、撮影レンズのマウント部に設けられた図示しない接続端子群との接続を介して、レンズ側CPU53との間でデータ、コマンド等の通信を行なう。
【0017】
また、ボディ側CPU20は、カメラ全体を統括的に制御するプログラムをメモリしたROM、所定のデータをメモリするRAMを内蔵した制御部20aと、露出モード選択のための条件演算、AF(オートフォーカス)演算、AE演算等の演算処理を実行する演算部20bと、タイマカウンタ20cとを備え、制御部20aには、コントローラ25を介して外部メモリ手段としてEEPROM27が接続されている。このEEPROM27には、カメラボディ11特有の各種定数のほかに、露出モード選択のための条件演算、AF(オートフォーカス)演算、露出演算等の演算処理に必要な各種関数、定数などがメモリされている。
【0018】
更に、ボディ側CPU20には、メインスイッチレバー14のスライド位置に応じてオン/オフするメインスイッチ70、シャッタ釦15の半押しでオンする測光スイッチ74、シャッタ釦15の全押しでオンするレリーズスイッチ76、アップダウンレバー16に連動してオン/オフするアップスイッチ78、ダウンスイッチ80、切換え釦17の押し込みに連動してオンする切換えスイッチ82、露出補正釦18の押し込みに連動してオンする露出補正スイッチ84などが接続されている。
【0019】
『撮影レンズ』
本実施の形態では、撮影レンズ51の焦点距離及び撮影距離に基づく条件および合焦状態に応じてプログラム露出モードを、ノーマル、人物、風景、近接及び動体モードの中から選択する撮影モード自動選択(ピクチャー自動設定)処理が可能なことに特徴を有する。この処理を可能にする撮影レンズ51内には、現在設定されている焦点距離を検出する焦点距離検出機構55及び撮影距離を検出する撮影距離検出機構57を備え、検出機構55、57はレンズ側CPU53と接続されている。これらの検出機構55、57が検出した焦点距離及び撮影距離をレンズボディ間通信によってカメラボディ11に転送し、ボディ側CPU20によって所定の処理を施している。
【0020】
撮影レンズ51は、図示しないが、公知の変倍レンズ群および焦点調節レンズ群を備え、変倍レンズ群を撮影レンズ51に搭載されたズームモータまたは撮影者の手動操作によって移動させてズーミングし、焦点調節レンズ群をカメラボディ11に搭載されたAFモータによって移動させて焦点調節する構成である。焦点距離fは、変倍レンズ群の位置として、焦点距離検出機構55の焦点距離検出コード板によって検出する。
【0021】
本実施の形態では、焦点距離を、焦点調節レンズ群の位置を焦点距離コードで検出し、この焦点距離コードを、レンズROMにメモリしてあるテーブルデータによってアペックス換算の焦点距離fvに変換する。焦点距離(mm)とアペックス換算の焦点距離fvとの関係を表1に示した。
【表1】



単焦点距離の場合は、その焦点距離fvをレンズROMにメモリしておいてもよい。
【0022】
本実施の形態では、焦点調節レンズ群の位置を、最短撮影距離を基準として、距離のアペックス換算値Dvで1ステップ単位で8ステップ分検出する構成である。表2には、撮影距離(m)とアペックス距離Dvの対応を示している。
【表2】



【0023】
ピントが合う被写体までの距離、つまり撮影距離は、まず、変倍レンズ群のレンズ位置として、撮影距離検出機構57の距離コード板(図示せず)によって検出し、これを撮影距離に変換する。本実施の形態では、撮影距離を、最短撮影距離からの差として求める。つまり、最短撮影距離をDvnear、焦点調節レンズ群の検知位置を、最短撮影距離からの差分の距離データをΔDvとして、撮影距離Dvを式、Dv=Dvnear+ΔDv
によって求める。表3には、撮影距離コードとΔDvとの関係を示している。
【表3】



【0024】
最短撮影距離Dvnear、最短撮影距離からの差分ΔDV、焦点距離fvはレンズ側CPU53からボディ側CPU20に送られる。本実施例では、最短撮影距離Dvnear、最短撮影距離からの差分ΔDVは、8ビットの撮影距離データとしてカメラボディ11に送られる。
【0025】
カメラボディ11は、撮影レンズ51から受信した最短撮影距離Dvnear、最短撮影距離からの差分ΔDV、焦点距離fvデータに基づいて、撮影倍率Mvを下記式によって算出する。
Mv=(Dv+20)/2−fv
撮影倍率Mvと撮影倍率との関係を下記表4に示す。
【表4】



【0026】
本実施の形態では、ピクチャー自動設定処理において、以上の撮影距離、撮影倍率をモード選択の条件として使用する。
【0027】
『カメラの制御』
次に、本実施の形態のカメラの動作について、図5〜図14に示したフローチャートを参照して説明する。この制御は、ボディ側CPU20の内部ROMにメモリされたプログラムによって、ボディ側CPU20によって実行される。
【0028】
本実施の形態では、ピクチャー自動設定処理、あるいはマニュアル操作によって設定可能なピクチャーモード(プログラム露出モード)として、ノーマルモード、人物モード、風景モード、近接モードおよび動体モードを有する。
【0029】
このピクチャー自動設定処理は、撮影距離、撮影倍率、動体か否かの条件に基づいて、最も適したプログラム露出モードを選択することに特徴を有する。なお、PICTMODEは、ピクチャーモードを識別する識別子であり、ピクチャーナンバーは、0がノーマルモード、1が人物モード、2が風景モード、3が近接モードおよび4が動体モードを識別する。本実施の形態では、メインスイッチレバー14がAUTO位置にスライドされると、ピクチャー自動設定処理を選択するが、その際初期モードとしてノーマルモードを選択する。
【0030】
ピクチャーモードのマニュアル設定(ピクチャーマニュアル設定)は、メインスイッチレバー(メインスイッチ手段)14がAUTO位置にあるときにアップ/ダウンレバーアップ/ダウンスイッチ手段)16の操作で行う。ピクチャーマニュアル設定処理がなされると自動ピクト禁止フラグに“1”がセットされて、ピクチャー自動設定処理が禁止される。ピクチャー自動設定処理禁止の解除は、切換え釦17操作(切換えスイッチ82のON)、撮影(露光)終了、PON タイマーのタイムアップによって実行される。
【0031】
図5は、メインルーチンであるSTART処理である。START処理は、ボディ側CPU20のRAM、ポートなどのイニシャライズ、測光スイッチ74、レリーズスイッチ76などのスイッチチェックを実行して、スイッチオンなどの操作がされるのを待ち、操作がされたときにはその操作に応じた処理を実行する撮影待機処理である。また、このSTART処理には、バッテリが装填されたときに入る。バッテリが装填されている間は、ボディ側CPU20には常時バッテリの電力が供給されている。なお、以下「ステップ」をSと略する。
【0032】
START処理に入ると、まず割込み処理を禁止して、RAM、レジスタ、フラグなどをイニシャライズし、PH(パワーホールド)ON、つまり、バッテリの電力を周辺回路に供給する(S101、S103、S105)。そして、EEPROM27に保存されているデータをボディ側CPU20のRAMに書き込む(S107)。以上の処理が終了すると、メインスイッチ70がオフ状態のときに繰り返し実行する、POFFループへと処理は進む。
【0033】
『POFFループ』
POFFループ処理は、スイッチの状態をチェックして、オンしたスイッチ状態に応じた処理に進む待機処理である。
POFFループ処理に入ると、まず、自動ピクト禁止フラグに“0”をセットする(S109)。自動ピクト禁止フラグは、ピクチャー(プログラム露出モード)自動設定を許可するしないかを設定するフラグであって、“0”は設定を許可し、“1”は設定を禁止する。そして、SW操作表示処理を実行する(S111)。SW操作表示処理においては、メインスイッチ70、レリーズスイッチ76、測光スイッチ74、アップスイッチ78、ダウンスイッチ80のオン・オフの状態に応じた処理を実行する。これに基づいて外部表示LCDパネルおよび内部表示LCDパネルの表示の制御を行う。
【0034】
メインスイッチ70がオンし、かつモードスイッチ(露出モード自動設定スイッチ)72、レリーズスイッチ76、測光スイッチ74、アップスイッチ78、ダウンスイッチ80のいずれかがオンすると、図6のRESTART処理を実行する(S113:ON、S115、S117、S119、S121)。
【0035】
メインスイッチ70がオフ状態の間は、S115〜S121をスキップし、内蔵フラッシュ充電処理をコールし、128ms タイマーをスタートし、PHOFF処理(周辺回路への電源供給を遮断)して128ms タイマーがタイムアップするのを待つ(S125、S127、S129)。そして、タイムアップしたら、S109に戻って、S109からS129の処理を繰り返す。
【0036】
『RESTART処理』
次に、START処理において、レリーズスイッチ76、測光スイッチ74、アップスイッチ78、ダウンスイッチ80のいずれかがオンしたときに進むRESTART処理について、図6に示したフローチャートを参照して説明する。
【0037】
RESTART処理に入ると、まず、パワーホールドONしてカメラのハードウエア全体(電気回路全体)に電源を供給し(S201)、再度EEPROM27のデータを読み込んでRAMに書き込む(S203)。S205では、以降に実行されるPON ループの繰り返し回数(80)をカウンタPON タイマにセットして、PON ループ処理に進む。
【0038】
『PON ループ』
PON ループ処理では、カメラボディ11と撮影レンズ51、外付けフラッシュ65との通信、測光処理、測光結果に基づいて、Tv/Av値を算出するAE演算などを実行し、レリーズ処理の制御も行なう。
【0039】
まず、PON ループの繰り返しの周期を定めるために、128msタイマをスタートさせ(S211)、外部表示LCDパネルおよびファインダ内表示LCDパネルの表示をSW操作表示処理により制御する(S213)。メインスイッチ70がオンしていれば、外付けフラッシュ65からカメラボディ11へのデータ通信およびカメラボディ11と撮影レンズ51間の通信を行なう(S215:メインSW=ON、S217、S219)。次に、測光処理を行ない、測光データに基づいてAE演算を行なう(S221、S223)。AE演算の結果に基づいて、所定のフラッシュデータをカメラボディ11からフラッシュ65に送信した後、演算結果を含めた表示処理を、SW操作表示処理により行う(S225、S227)。さらに、ストロボ発光のときは内蔵フラッシュ回路63の充電処理を行う(S229)。
【0040】
そして、AF処理を行ない(S231)、レリーズスイッチ76の状態をチェックする(S233)。シャッタ釦15が全押しされてレリーズスイッチ76がオンした場合は(S233:レリーズSW=ON)、合焦フラグに“1”がセットされていること(合焦していること)を条件にレリーズ処理を実行する(S247:合焦フラグ=1)。レリーズスイッチ76がOFF状態の場合(S233:レリーズSW=OFF)、あるいはレリーズスイッチ76がONしていても合焦してないときには(S233:レリーズSW=ON、S247:合焦フラグ=0)、128msタイマがタイムアップするまでは、レリーズスイッチ76の状態をモニタしつつ、繰り返しAF処理を実行する(S231からS235、または231、S233、S247、S235)。
【0041】
128ms経過後、測光スイッチ74、アップスイッチ78、ダウンスイッチ80が全てOFF状態のときはPON タイマを1デクリメントし、PON タイマが0になるまでPON ループ処理を繰り返す(S235:YES、S237:OFF、S239:OFF、S241:OFF、S243、S245:PON タイマ≠0、S211)。このPON ループ処理をS205でセットした回数(80回)だけ繰り返し、PON タイマが0になると、POFFループへ戻る(S211〜S245:PON タイマ=0)。POFFループへ戻ると、S109において自動ピクト禁止フラグに“0”が入れられるので、マニュアル操作によってピクチャーマニュアル設定をしていても、以後ピクチャー自動設定が可能になる。
【0042】
PON ループ処理中に合焦し、レリーズスイッチ76がONしたときには、レリーズ処理に抜ける(S233:レリーズSW=ON、S247:合焦フラグ=1)。
【0043】
『SW操作表示』
S111、S213、S227で実行されるSW操作表示処理について、図7に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。このSW操作表示処理は、このカメラのスイッチなどの状態をチェックしてその状態に応じた表示を行う処理である。
SW操作表示処理に入ると、フィルムのローディングエラーかどうかをチェックし、ローディングエラーであればローディングエラー表示処理を実行してリターンする(S301:YES、S331)。フィルムローディングエラーでなければ、リワインドエンドであるか(フィルム巻き戻し終了かどうか)をチェックし、リワインドエンドであればリワインドエンド表示処理を実行してリターンする(S303:YES、S333)。
【0044】
ローディングエラーでもリワインドエンドでもないときには、以下の処理を実行する。
メインスイッチ70がオフのときは、動体ピクトフラグに“0”を入れ、外部表示LCD31及びファインダ内表示LCD41の表示をオフしてからリターンする(S305:メインスイッチOFF、S307、S309)。動体ピクトフラグは、被写体が動体であるかどうかを識別するフラグであって、動体であると判断したときに“1”をセットする。
【0045】
メインスイッチ70がオンしていたときは、UP/DOWN 処理を実行、つまり、アップスイッチ78またはダウンスイッチ80がオンしていたときにはそれに応じた処理を実行する(S305:メインスイッチON、S311)。
【0046】
次に切換えスイッチ82がONしているかどうか、つまり、ピクチャー自動設定の禁止を解除するかどうかをチェックし(S313)、切換えスイッチ82がONしているときはピクチャー自動設定を許可するために自動ピクト禁止フラグに“0”をセットしてS317に進む(S313:切換えスイッチON、S315)。
【0047】
切換えスイッチ82がOFFしているときは、S315をジャンプしてS317に進む(S313:切換えスイッチOFF)。つまり、自動ピクト禁止フラグに“1”がセットされている場合はそのままの状態でS317に進む。S317では、自動ピクト禁止フラグをチェックし、“0”のときにはピクチャー自動設定処理を実行してS321に進む(S317、S319、S321)。自動ピクト禁止フラグが“1”のときには自動ピクト禁止なので、S319をジャンプしてS321に進む(S317、S321)。
【0048】
S321では、ピクチャー自動設定モードを表示し、シャッタ速度Tv、絞り値Av、その他、撮影枚数などを表示してリターンする。
【0049】
SW操作表示処理において、S313、S315による自動ピクト禁止フラグのクリア処理により、データUP処理、データDOWN処理においてセットされた自動ピクト禁止フラグがクリアされ、ピクチャー自動設定が可能になる。
【0050】
『ピクチャー自動設定』
次に、S319のピクチャー自動設定処理の詳細について、図8を参照して説明する。本実施の形態では、ピクチャー自動設定処理、あるいはマニュアル操作によって設定可能なピクチャーモード(プログラム露出モード)として、ノーマルモード、人物モード、風景モード、近接モードおよび動体モードを有する。
【0051】
本実施の形態では、メインスイッチレバー14がAUTO位置にスライドされると、ピクチャー自動設定処理を選択するが、その際初期モードとしてノーマルモードを選択する。
【0052】
ピクチャーモードのマニュアル設定(ピクチャーマニュアル設定)は、メインスイッチレバー14がAUTO位置にあるときにアップ/ダウンレバー16の操作で行う。ピクチャーマニュアル設定処理がなされると自動ピクト禁止フラグに“1”がセットれて、ピクチャー自動設定処理が禁止される。
【0053】
ピクチャー自動設定処理に入ると、まず測光スイッチ74がONしているかどうかをチェックし、OFFしていたらリターンし、ONしていたらS402に進む(S401)。S402では、PICTMODEに0を入れてノーマルモードを設定する)。
【0054】
次に、撮影レンズ51の焦点距離fvおよび撮影距離Dvに基づいて式、
Mv=(Dv+20)/2−fv
によって撮影倍率Mvを算出する(S403)。そして、撮影レンズ51から入力した撮影距離コードが最短撮影距離(7)かどうかをチェックし、最短撮影距離(7)であればPICTMODEに3を入れて(近接モードを選択して)リターンする(S405:YES、S407)。
【0055】
撮影距離コードが7でなければ、撮影倍率が4よりも小さいかどうかをチェックし、4以上であれば動体ピクトフラグをチェックして、動体ピクトフラグに“1”がセットされていれば被写体が動体であると検知しているので、撮影倍率が4未満であるか、4以上であっても動体ピクトフラグに“0”がセットされていれば、撮影距離コードが3(遠距離の被写体)であるかどうかをチェックする(S409:YES、S415、またはS409:NO、S411:0、S415)。撮影距離コードが3であれば、PICTMODEに2を入れて(風景モードを選択して)リターンする(S415:YES、S417)。
【0056】
撮影距離コードが3でなければ、撮影倍率Mvが6よりも大きいかどうかをチェックする(S415:NO、S418)。撮影倍率Mvが6よりも大きければ撮影距離コードが2であるかどうか(無限遠かどうか)をチェックし、撮影距離コードが2であればPICTMODEに2を入れて(風景モードを選択して)リターンする(S418:YES、S419:YES、S421)。
【0057】
撮影倍率Mvが6より大きくても撮影距離コードが2ではないとき、または撮影倍率Mvが6以下のときは、撮影倍率Mvが4以上6以下であるかどうかをチェックする(S418:YES、S419:NO、S423、またはS418:NO、S423)。撮影倍率Mvが4以上6以下であればPICTMODEに1を入れて(人物モードを選択して)リターンする(S423:YES、S425)。撮影倍率Mvが4以上6以下でないときはそのままリターンする(S423:NO)。この場合は、S402で設定されたノーマルモード(PICTMODE=0)が選択されている。
【0058】
以上の処理によってPICTMODEを選択すると、LCD31、41に、選択したPICTMODEのナンバーに応じた表示を行う(図3参照)。PICTMODEが0のときはノーマルモードなので図3(A)の表示をおこない、PICTMODEが1のときは人物モードなので図3(B)の表示をおこない、PICTMODEが2のときは風景モードなので図3(C)の表示をおこない、PICTMODEが3のときは近接モードなので図3(D)の表示をおこない、PICTMODEが4のときは動体モードなので図3(E)の表示をおこなう。撮影者は、この表示によって、どのピクチャーモード(プログラム露出モード)が選択されているのかを容易に知ることができる。
【0059】
『UP/DOWN 処理』
S311のUP/DOWN 処理の詳細について、図9を参照して説明する。このUP/DOWN 処理は、アップスイッチ78がオンしたときは、露出補正量など、選択可能なデータの段階的にアップ処理を行い、ダウンスイッチ80がオンしたときは選択可能なデータのダウン処理を行う。本実施の形態では、アップスイッチ78またはダウンスイッチ80が1回オンする毎にデータを1段階アップまたはダウンする。
【0060】
この処理に入ると、まずアップスイッチ78の状態をチェックして、オフしていればアップフラグ(UPフラグ)に“0”を入れてS509に進む(S501:アップスイッチOFF、S503)。オンしていれば、アップフラグをチェックして、“0”がセットされていれば、データアップ処理を実行した後、アップフラグに“1”をセットしてからS509に進み(S501:アップスイッチON、S505:アップフラグ=0、S507、S508)、“1”がセットされていればすでにデータアップ処理を実行しているのでS507をジャンプしてS509に進む(S501:アップスイッチON、S505:アップフラグ=1)。
【0061】
S509ではダウンスイッチ80の状態をチェックし、オフしていればダウンフラグ(DOWNフラグ)に“0”を入れてリターンし(S509:ダウンスイッチOFF、S511)、オンしていれば、ダウンフラグをチェックして、“0”がセットされていれば、データダウン処理を実行した後、ダウンフラグに“1”をセットしてからリターンし(S509:ダウンスイッチON、S513:ダウンフラグ=0、S515、S516)、“1”がセットされていればすでにデータダウン処理を実行しているのでそのままリターンする(S509:ダウンスイッチON、S513:ダウンフラグ=1)。
【0062】
『データアップ処理及びデータダウン処理』
S507、S515のデータアップ処理及びデータダウン処理について、図10及び図11を参照して説明する。図示実施例では、ピクチャーモードのマニュアル選択と、露出補正量の設定ができる。露出補正量の補正は、露出補正釦18が押し込まれた状態(露出補正スイッチ84がオン)でアップ/ダウンレバー16が操作されたときに実行し、ピクチャーモードのマニュアル設定はメインスイッチレバー14がAUTO位置にある状態でアップ/ダウンレバー16が操作されたときに実行する。
【0063】
データアップ処理では、まず、露出補正スイッチ84がオンしているかどうかをチェックする(S551)。露出補正スイッチ84がオンしていなければピクチャーナンバーを1インクリメントおよびピクチャーナンバーのリミット処理を実行し、自動ピクト禁止フラグに“1”をセットしてリターンする(S551:OFF、S553、S555、S557)。このようにピクチャーマニュアル設定処理によって自動ピクト禁止フラグに“1”がセットされると、ピクチャー自動設定が禁止される。
【0064】
露出補正スイッチ84がONしているときは、露出補正量を0.5Ev単位でインクリメントし、リミット処理を施してリターンする(S559、S561)。ピクチャーナンバーのリミット処理とは、ピクチャーナンバーが4になったら、それ以上の値は設定しない処理であり、露出補正値のリミット処理とは、露出補正値が限界値、例えば+2.0Evに達したら、それ以上の値は設定しない処理である。
【0065】
同様にデータダウン処理では、まず、露出補正スイッチ84がオンしているかどうかをチェックする(S571)。露出補正スイッチ84がオンしていなければピクチャーナンバーを1デクリメントおよびピクチャーナンバーのリミット処理を実行し、自動ピクト禁止フラグに“1”をセットしてリターンする(S571:OFF、S573、S575、S577)。自動ピクト禁止フラグに“1”がセットされたことで、ピクチャー自動設定が禁止される。
【0066】
露出補正スイッチ84がONしているときは、露出補正量を0.5Ev単位でデクリメントし、リミット処理を施してリターンする(S559、S561)。ピクチャーナンバーのリミット処理とは、ピクチャーナンバーが0になったら、それ以下の値は設定しない処理であり、露出補正値のリミット処理とは、露出補正値が限界値、例えば−2.0Evに達したら、それ以下の値は設定しない処理である。
【0067】
『AE演算』
S223のAE演算処理について、図12を参照してより詳細に説明する。AE処理に入ると、先ず、ボディ側CPU20のRAMをイニシャライズし、測光等に関する各種フラグをイニシャライズした後、レンズ補正演算処理を実行する(S601、S603、S605)。このレンズ補正演算処理では、図6示した「RESTART」処理中のレンズ通信(S219)において、レンズ側CPU53から入力した撮影レンズの種類に応じた各種レンズデータに基づいて、レンズ補正演算処理を実行する。
【0068】
次に、A/D変換回路98から出力される分割測光用の各センサ(受光素子94)からの被写体輝度データをそれぞれ、演算に適した演算用被写体輝度Bvに変換し、さらに、この演算用被写体輝度Bvと、S605において演算したレンズ補正値により、各センサ毎の光量値Lv′を求め、この各センサ毎の光量値Lv′から、分割測光アルゴリズムに基づいてその被写体に適した1個の光量値Lv′を算出する(S607〜S611)。
【0069】
そして、予め演算に適するように変換した演算用フィルム感度Svおよび演算用露出補正値Xvに基づいて光量値Lvを求めてから(S613)、内蔵フラッシュ及び外付けフラッシュの充電完了状態を入力する(S615)。そして、充電完了状態でなければプログラム演算処理を実行し(S617:NO、S619)、充電完了状態であればフラッシュプログラム演算を実行するS617:YES、S621)。
【0070】
プログラム演算が終了すると、EEパルス数を演算し、外部フラッシュデータを設定し、TTLデータを設定してリターンする(S623、S625、S627)。EEパルス数は、撮影レンズの絞りを絞り込む絞り装置が絞り込み動作時に出力するパルスであって、制御用の絞り値Avに対応させて絞り込み機構を止めるために用いる。外部フラッシュデータには、発光光量に関するデータや、先幕シンクロ、後幕シンクロのデータが含まれる。TTLデータには、フラッシュの発光を停止させるTTLダイレクト測光素子の積分値データが含まれる。
【0071】
AF処理について、図13に示したフローチャートを参照して説明する。
『測光スイッチ74がオフの場合』
このフローチャートに入ると、まず、測光スイッチ74がオンしているかどうかをチェックして、測光スイッチ74がオンしていなければ、合焦フラグに“0”を入れ、AF作動中フラグに0を入れ、動体判断用カウンタ初期設定処理を実行してからリターンする(S701:測光スイッチOFF、S703、S705、S707)。合焦フラグは、合焦状態にあるかどうかを識別するフラグで、合焦状態にあるときに“1”をセットする。AF作動中フラグはAF動作を実行している途中かどうかを識別するフラグで、AF動作を開始したら“1”をセットする。動体判断用カウンタは、被写体を動体と判定するためのカウンタであって、所定回数、例えば3回、AFレンズ駆動を行っても合焦できなかったときに動体と判定する。
【0072】
『測光スイッチ74がオン、かつ連続レリーズではない場合』
次に、測光スイッチ74がオンし、連続レリーズではない場合、つまり、レリーズスイッチ76がオンされると1枚のみ露光するモードの場合について説明する。なお、連続レリーズとは、レリーズスイッチ76がオンしている間、連続撮影するモードであり、不図示のドライブスイッチがオンのときに連続撮影モードに入る。
【0073】
測光スイッチ74がオンしたときは、AF作動中フラグをチェックするが、最初はAF作動中フラグはクリアされているので、動体ピクトフラグに“0”を入れ、AF動作中フラグに“1”をセットする(S701:測光スイッチON、S711:AF作動中フラグ=0、S713、S715)。そして、連続レリーズフラグをチェックして、0であれば連続レリーズではないので合焦チェックを行い(S717:連続レリーズフラグ=0、S719)、“1”であれば連続レリーズなので合焦チェックをスキップする(S717:連続レリーズフラグ=1、S721)。
【0074】
S719の合焦フラグチェックにおいて、合焦フラグが“0”と判定したときは、AFセンサユニット61にCCD積分を行わせ、積分データを入力し、デフォーカス演算を実行する(S721、S723、S725)。そして、合焦フラグチェックを行い、合焦していないときには連続レリーズフラグチェックを行う(S727:合焦フラグ=0、S729)。連続レリーズフラグが“0”のときは、デフォーカス(デフォーカス量の絶対値)が合焦幅よりも小さいかどうか(合焦とみなせる範囲かどうか)をチェックし、合焦幅よりも大きいときには合焦フラグに“0”を入れる(SS735:NO、S737)。そして、焦点調節レンズの駆動方向が前回と同じかどうかをチェックし、同じであれば動体判断用カウンタを1減算し、動体判断用カウンタが0になっていなければS725で求めたデフォーカス量に基づいてAFモータを駆動し、リターンする(S739:YES、S741、S743:NO、S747)。
【0075】
非合焦での2回目以降のAF処理では、S701、S711、S717、S719のチェック処理を経てS721〜S725のAF演算処理を実行し、S727、S729のチェック処理を経てS735のデフォーカスチェック処理に至る。そして、このデフォーカスチェック処理において、デフォーカスが所定値よりも小さくなったときは、合焦フラグチェックを行い、非合焦で入ってきたときは合焦フラグが“0”なので、合焦フラグに“1”をセットし、所定時間待ってからCCD積分処理に戻る(S735:YES、S751、S753、S721)。そしてCCD積分処理、積分データ入力処理及びデフォーカス演算処理を実行し、合焦フラグチェック処理を経てデフォーカスが所定値よりも大きいかどうかをチェックし(S721、S723、S725、S727:合焦フラグ=1、S731:YES)、大きければ動体ピクトフラグに“1”をセットする(S733)。移動する被写体のときには一旦合焦しても時間が経過すると、非合焦状態になるなど、デフォーカス(焦点位置)に変化がある。そこで、一旦合焦したときには、所定時間後、一定時間内にデフォーカスチェックを行い、デフォーカス量が所定値よりも大きくなったときには、被写体が動いているとみなして、動体モードを選択するためのチェックである。
【0076】
デフォーカスが合焦幅に収まっているときは、合焦チェックを行うが、合焦フラグには“1”がセットされているのでリターンする(S735:YES、S749:合焦フラグ=1)。次にこのAF処理に入ったときは、S701、S711、S717を経て、S719からリターンする。
【0077】
『動体モードを選択する場合』
動体モードを選択する場合について説明する。測光スイッチ74がオンして1回目の処理では、S701、S711からS719の処理を経て、CCD積分、積分データ入力、デフォーカス演算処理(S721〜S725)を行い、デフォーカスが合焦幅以内に収まっていなかったときには(S735:NO)、合焦フラグに“0”を入れ、前回はレンズ駆動していなかったのでS747に飛んでレンズ駆動処理を行ってリターンする(S737、S739:NO、S747)。2回目以降のAF処理では、S701、S711、S717からS735を経てS737に進み合焦フラグに“0”を入れる。レンズ駆動方向が前回と同一であれば(S739:YES)、動体判断用カウンタを1減算し、動体判断用カウンタが0でなければレンズ駆動処理後リターンする(S743:NO、S747)。以上、2回目以降の処理を繰り返し、動体判断用カウンタが0になったら、動体ピクトフラグに“1”をセットする(S743:YES、S745)。これによって、動体モードが選択されることとなる。なお、2回目以降の処理において、レンズ駆動方向が前回と変わったときは、被写体の移動速度が遅くなったか、停止したか、移動方向が変わっているので、動体判断用カウンタに初期値を入れる(S739:NO、S740)。
【0078】
『測光スイッチ74がオン、かつ連続レリーズの場合』
連続レリーズフラグは、ドライブスイッチのオンで1回目のレリーズが終了するときに“1”がセットされる。連続レリーズフラグに“1”がセットされると、S719の合焦フラグチェック処理をスキップし、必ずS731のデフォーカスチェック処理を通ることに特徴を有する。つまり、連続撮影では、被写体が移動しているか、あるいは構図が刻々と変化している場合が一般的なので、S719の合焦フラグチェック処理(S719)をスキップしてデフォーカスを求める処理(S721からS725)を継続し、未合焦でも必ず、デフォーカス(絶対値)が所定値よりも大きいかどうかのチェック処理を実行して、所定値よりも大きい場合は動体ピクトフラグに“1”をセットし、動体モードを選択する(S731:YES、S733)。
【0079】
『レリーズ処理』
図14は、レリーズ処理に関するフローチャートである。レリーズ処理では、測光処理(S801)、フラッシュからカメラボディへのデータ通信(S803)、AE演算(S805)、AE演算結果に基づくカメラボディからフラッシュへのデータ通信(S807)、SW操作表示処理(S809)が行なわれた後に、ミラーアップ、絞り制御(S811)、露光処理(S813)、フィルム巻き上げ、ミラーダウン(S815)の一連の露出動作を実行する。そして、連続ドライブかどうかをチェックし(S817)、連続ドライブのときには、レリーズスイッチ76がオンしていることを条件に、連続レリーズフラグに“1”をセットしてPON ループ処理に戻る(S819、S821)。
【0080】
一方、ドライブスイッチがOFFしているとき、あるいはドライブスイッチがONしていてもレリーズスイッチ76がOFFしているときは、連続レリーズフラグに“0”を入れ、自動ピクト禁止フラグに“0”を入れてピクチャー自動選択処理を許可してからPON ループ処理に戻る(S817:OFF、またはS819:OFFからS823、S825)。自動ピクト禁止フラグに“0”を入れることで、禁止されていたピクチャー自動設定が許可される、つまり撮影が終了したらピクチャー自動設定が可能になる。
【0081】
以上の通り本発明の実施の形態では、ノーマル、人物、風景、近接、動体モード(プログラム露出モード)の中から、焦点距離、撮影距離及び被写体の移動状況に応じて最も適したプログラム露出モードをカメラが自動選択するので、撮影者は撮影条件を考えて適切なプログラム露出モードを選択する、という操作をしなくても済む。一方、自動選択されたプログラム露出モードが望みのモードではなかったときなど、マニュアルで選択したい場合は、ピクチャー自動設定モードを変えることなく、アップダウンスイッチの操作によって簡単にマニュアル選択可能であり、しかもこの場合は、撮影が終了するまで、あるいは所定時間が経過するまでピクチャー自動設定は禁止され、マニュアル選択したモードが維持されるので大変便利である。
【0082】
以上の本発明の実施の形態では、マニュアル選択したモードは、1コマ撮影した後は必ずピクチャーモードに復帰する構成である。本発明の別の実施の形態では、撮影が終了してもピクチャー自動設定の禁止を解除せず、タイマにより禁止を解除をする構成にできる。例えば、図14のS825を削除して、撮影が終了してもピクチャー自動設定の禁止を解除しないようにする。そうすれば、PONタイマによる解除、測光スイッチのオフにより禁止が解除される。
【0083】
なお、本実施の形態におけるピクチャー自動設定モードを、例えばピクチャーマニュアル設定モードとを択一的に選択する構成とし、ピクチャー自動設定モードを選択したときには上記ピクチャーマニュアル設定モードでの動作も可能とし、ピクチャーマニュアル設定モードを設定したときにはピクチャー自動設定モードでは動作しない構成としてもよい。
【0084】
また、本実施の形態では、自動選択したピクチャー(露出モード)に対応するピクチャー(アイコン)を表示するので、撮影者は、自動選択された、あるいはマニュアル選択された露出モードを簡単確実に認識できる。本実施の形態では5個のプログラム露出モードの中から選択可能としたが、本発明はこれらのプログラム露出モードに限定されない。
【0085】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り本発明のカメラによれば、複数の撮影モードの選択が可能なカメラであって、前記複数の撮影モードの中から任意の撮影モードをマニュアル操作により、あるいは撮影条件に基づいて適切な撮影モードを自動選択する撮影モード自動選択手段を備え、マニュアル操作により選択したときは撮影モード自動選択を実行しないので、適切な撮影モードが自動選択されるので撮影モードの選択に煩わされることがなく、しかも、自動選択された撮影モード以外の撮影モードを選択したい場合も、自動選択モードとマニュアル選択モードとを切り換えることなくマニュアル選択できる。このように本発明は、簡単にマニュアル操作による撮影モードの選択が可能であり、しかもマニュアル選択した撮影モードは、一定条件下で維持されるので、撮影モード自動選択下での撮影モードのマニュアル選択が非常に容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るカメラが適用される一眼レフレックスカメラのカメラボディの一実施例の構成を背面から見て示す斜視図である。
【図2】本発明を適用した一眼レフレックスカメラの一実施の形態の制御系の主要部をブロックで示す図である。
【図3】同一眼レフカメラの外部表示手段の表示態様を示す図である。
【図4】同一眼レフカメラのファインダ内表示手段の表示態様を示す図である。
【図5】同一眼レフカメラの動作に関するメインルーチン(START)をフローチャートで示す図である。
【図6】同一眼レフカメラのRESTART(リスタート)処理に関するフローチャートを示す図である。
【図7】同一眼レフカメラのSW操作表示処理に関するフローチャートを示す図である。
【図8】同一眼レフカメラのピクチャー自動設定処理に関するフローチャートを示す図である。
【図9】同一眼レフカメラのUP/DOWN 処理に関するフローチャートを示す図である。
【図10】同一眼レフカメラのデータUP(アップ)処理に関するフローチャートを示す図である。
【図11】同一眼レフカメラのデータDOWN(ダウン)処理に関するフローチャートを示す図である。
【図12】同一眼レフカメラのAE演算処理に関するフローチャートを示す図である。
【図13】同一眼レフカメラのAF(自動焦点調整)処理に関するフローチャートを示す図である。
【図14】同一眼レフカメラのレリーズ処理に関するフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
11 カメラボディ
14 メインスイッチレバー
15 シャッタ釦
16 アップ/ダウンレバー
17 切換え釦
20 ボディ側CPU
23 露出制御装置
25 コントローラ
27 EEPROM
31 外部表示LCD
41 ファインダ内表示LCD
51 撮影レンズ(パワーズームレンズ)
53 レンズ側CPU
61 AFセンサユニット
70 メインスイッチ
74 測光スイッチ
76 レリーズスイッチ
82 切換えスイッチ
94 受光素子
096 測光回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レリーズボタンの半押しで測光処理および測距処理を実行し、前記レリーズボタンの全押しで撮影処理を実行するカメラであって、
前記レリーズボタンが半押しされたときに、前記測距処理により得た撮影距離データに基づいて、撮影距離が所定範囲より遠い場合は風景モードを、近い場合は近接モードを選択し、前記撮影距離データが所定範囲内の場合は撮影レンズの焦点距離データおよび前記撮影距離データに基づいて演算した撮影倍率が所定範囲内のときは人物モードを選択し、撮影倍率が所定範囲外のときはノーマルモードを選択する撮影モード自動選択手段;および、
前記自動選択される撮影モードを含む複数の撮影モードの中から任意の撮影モードをマニュアル操作を受けて選択する撮影モードマニュアル選択手段;を備え、
前記撮影モードマニュアル選択手段によって撮影モードがマニュアル選択されたときは、前記撮影モード自動選択手段による撮影モード自動選択が禁止されること、を特徴とする撮影モード自動選択装置を備えたカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の撮影モード自動選択装置を備えたカメラは、前記撮影モード自動選択手段によって撮影モードが自動選択された後に撮影モードマニュアル選択手段によって撮影モードがマニュアル選択されても、前記撮影モード自動選択手段による撮影モード自動選択を可能にするスイッチ手段を備えていることを特徴とする撮影モード自動選択装置を備えたカメラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮影モード自動選択装置を備えたカメラは、前記撮影モード自動選択手段によって撮影モードが自動選択された後に撮影モードマニュアル選択手段によって撮影モードがマニュアル選択されたときは、前記レリーズボタンが全押しされて撮影処理が終了したときに、前記撮影モード自動選択手段による撮影モード自動選択を可能にすることを特徴とする撮影モード自動選択装置を備えたカメラ。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の撮影モード自動選択装置を備えたカメラは、前記撮影モード自動選択手段によって撮影モードが自動選択された後に撮影モードマニュアル選択手段によって撮影モードがマニュアル選択されても、所定時間経過後に前記撮影モード自動選択手段による撮影モード自動選択を可能にすることを特徴とする撮影モード自動選択装置を備えたカメラ。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の撮影モード自動選択装置を備えたカメラは、前記撮影モード自動選択手段、撮影モードマニュアル選択手段を含むカメラ回路と、カメラが撮影可能な状態になってから何らかの操作が所定時間実行されなかったときに前記カメラ回路を待機状態にするタイマーを備え、前記撮影モード自動選択手段によって撮影モードが選択された後に撮影モードマニュアル選択手段によって撮影モードがマニュアル選択されていても、前記タイマーにより前記カメラ回路が待機状態になったときには前記撮影モード自動選択手段による撮影モード自動選択を可能にすることを特徴とする撮影モード自動選択装置を備えたカメラ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の撮影モード自動選択装置を備えたカメラは、該カメラの電源をオン/オフするとともに、前記撮影モード自動選択手段による撮影モード選択を可能にするメインスイッチ手段と、該メインスイッチ手段により前記撮影モード自動選択手段による撮影モード自動選択が可能な状態で操作されたときに、前記撮影モードマニュアル選択手段を作動させて撮影モードをマニュアル選択するアップ/ダウンスイッチ手段を備えている撮影モード自動選択装置を備えたカメラ。
【請求項7】
請求項6記載の撮影モード自動選択装置を備えたカメラはさらに、前記撮影モードマニュアル選択手段によって撮影モードがマニュアル選択された状態において前記撮影モード自動選択手段による撮影モード自動選択を可能にする切換えスイッチを備えている撮影モード自動選択装置を備えたカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【特許番号】特許第3869505号(P3869505)
【登録日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【発行日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−325714
【出願日】平成8年12月5日(1996.12.5)
【公開番号】特開平10−161174
【公開日】平成10年6月19日(1998.6.19)
【審査請求日】平成15年8月6日(2003.8.6)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【参考文献】
【文献】実開平02−024826(JP,U)
【文献】特開平08−076170(JP,A)
【文献】実開平02−051327(JP,U)