説明

操作スイッチ

【課題】簡単な構造で、操作スイッチがロック状態であるか否かを一目で容易に識別することを可能にする。
【解決手段】本発明の操作スイッチは、接点を有する接点部2と、この接点部2の接点を切り替え操作するための押ボタン13を有する操作部1とを備える。押ボタン13の側面には、ロック確認穴33が設けられたハウジング3が配置されており、押ボタン13の側面にはロック状態表示部12が設けられている。ロック状態表示部12は、押ボタン13の側面を彩色することにより形成され、押ボタン13がハウジング3に対して回転移動したときハウジング3のロック確認穴33に合致して、ロック確認穴33から視認可能となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、押ボタンスイッチ、非常停止スイッチ、回転式のセレクタスイッチなどの操作スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、制御盤や電気機器などには、操作対象となる機器の押ボタンスイッチやセレクタスイッチ(切り替えスイッチ)など、各種の操作スイッチ及び各種の表示ランプ類が配置されている。
【0003】
また、工作機械等の制御パネルには、例えば、安全装置として押ボタン式の非常停止スイッチが配置されており、非常時にその非常停止スイッチを押込み操作することにより、機械の主回路への電源供給を遮断して動作を停止できるようになっている。
【0004】
制御パネルなどに配置される操作スイッチのうち、非常停止スイッチなど、作業者の安全を確保するスイッチについては、スイッチが操作状態か非操作状態かを判断するために、操作状態判別手段が設けられている場合がある。
【0005】
従来の押ボタンスイッチにおける操作状態判別手段については、例えば特許文献1に記載がある。この種の押ボタンスイッチは、器体内に固定したスイッチと、このスイッチを入切操作するボタンとを有し、ボタンの一部が器体外に突出して構成されている。ボタンの側面は、上部と下部とで色分けされており、ボタンを押込み操作したときにスイッチが入るとともに、色分けされた下部が器体内に隠れて、操作状態であることを表示できる仕組みとなっている。
【特許文献1】実開昭63−20327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例のような押ボタンスイッチでは、器体内に隠れるボタンの色分け部分を、当該ボタンを押込み操作したときの、押込み方向のストローク長さ以下で形成しておかなければ、押込み操作時に色分け部分が器体外に見えてしまうという欠点がある。すなわち、ボタンのストローク長さが、そのまま器体外に現れる色分け部分となるので、このストローク長さを十分に確保していなければ、ボタンの非操作時に色分け部分を視認しにくく、他方、ボタンの操作時にはその分だけ押込み操作のストロークが長くなって操作性に劣るといった問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、スイッチの操作ストローク長さにかかわらず、簡単な構造で、スイッチが操作状態であるか否かを一目で容易に識別することのできる操作スイッチを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明は、接点を有する接点部と、この接点部の接点を切り替え操作するための手動操作部材を有する操作部とを備え、手動操作部材の側面に沿うハウジングが配置された操作スイッチであって、このハウジングには少なくとも一箇所にロック確認穴が設けられるとともに、手動操作部材の側面にはロック状態表示部が設けられており、このロック状態表示部は、手動操作部材がハウジングに対して回転移動したときハウジングのロック確認穴に合致して、ロック確認穴から視認可能となるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
このような発明によれば、手動操作部材が非操作状態であるとき、ハウジングのロック確認穴からは手動操作部材の側面のロック状態表示部は見えず、手動操作部材を操作したときにはじめてロック状態表示部がロック確認穴に合致して、視認できるようになっている。また、かかる視認の可否は、手動操作部材がハウジングに対して回転移動することに起因してなされるものであるので、手動操作部材の軸方向の動作(例えば、スイッチの押込み操作時のストローク)にかかわらず実現させることができる。
【0010】
前記ロック状態表示部としては、手動操作部材の側面を彩色することにより形成されていることが好ましい。あるいは、前記ロック状態表示部は、手動操作部材の側面に彩色部材が埋設されて形成されていてもよい。
【0011】
このようにロック状態表示部が彩色されていることにより、ロック確認穴を通して視認しやすくなり、スイッチが操作状態であるか否かを容易に判断することができる。
【0012】
また、本発明は前記構成において、ロック確認穴が、ハウジングの外周長Wに対して周方向に1/2W以下の間隔で複数箇所に設けられていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、ハウジングの側面には複数個のロック確認穴が形成される。そして、このハウジングの側面をどの方向から見たときにも、複数個のロック確認穴のうち、いずれかのロック確認穴を視認することができる。したがって、スイッチが操作状態であるか否かを一目で容易に認識することが可能になる。
【0014】
さらに、本発明では、前記手動操作部材がハウジング内に押し込まれたとき、この手動操作部材が弾性体の弾性力によって回転し、ロック状態表示部がロック確認穴に合致しうるように構成されていてもよい。
【0015】
このように手動操作部材を回転構造とすることにより、スイッチの操作時、または非操作時に、手動操作部材の押込み操作方向に多少動いても、その動きで接点部の接点が切り替わることがなく、誤動作を防止するとともに、操作性も高められる。
【発明の効果】
【0016】
上述のように構成される本発明の押ボタンスイッチによれば、スイッチ操作のストローク長さが短くても、スイッチが操作状態であるか否かを一目で確実に識別することができ、スイッチ操作の誤認を防ぎ、作業者の安全性を高めるとともに、その構造も簡単に構成されるので汎用性の高いものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る操作スイッチの最良の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、ここでは、本発明を非常停止スイッチ(プッシュロックターンリセット式押ボタンスイッチ)に適用した例について説明する。
【0018】
図1〜図4は本発明に係る操作スイッチの一例を示し、図1は操作スイッチの押込み前の状態を示す斜視図、図2は図1の操作スイッチの押込み後の状態を示す斜視図、図3は図1の操作スイッチの分解斜視図、図4は操作スイッチの押ボタンの一部を模式的に示す説明図である。
【0019】
例示の形態の非常停止スイッチは、操作部1、接点部2及びハウジング3を備えている。接点部2には、図示はしないが、接点部アクチュエータを有するB接点が内蔵されている。
【0020】
操作部1は、円筒形状の操作部本体11に手動操作部材としての押ボタン13を備え、操作部本体11内には押ボタン13を回転させる適宜の回転駆動機構が納められている。押ボタン13は、接点部2の接点を切り替え操作する部分であり、操作部本体11に対し軸方向に摺動自在に設けられるとともに、操作部本体11の中心軸を中心として回転自在となされている。
【0021】
操作部本体11の側面には円形筒状のハウジング3が設けられている。ハウジング3の側板31は押ボタン13の側面に沿って配置されている。また、操作部本体11とハウジング3とは、操作部本体11に外周面に設けられた係合凹部10と、ハウジング3の内周面側に突設された係合凸部34とが互いに係合することにより嵌め合わされている。
【0022】
そして、ハウジング3と係合した操作部本体11は、図示しない操作パネルなどの取付穴にパネル表側から挿入され、締付ナット15(ねじ溝は図示省略)を雄ねじ部34a(ねじ山は図示省略)にねじ込んで締め付けることにより、操作パネルの裏面側から操作パネルに固定される。
【0023】
なお、操作部本体11の雄ねじ部11aの後方側には、円筒形状の連結部11bが設けられている。この連結部11bの外周面には連結溝11c等が形成されており、その連結溝11c等を利用して、接点部2を操作部1に連結することができるようになっている。
【0024】
また、図3に示すように、押ボタン13の側面には係止溝131が形成されている。また、ハウジング3の側板31の内面にはストッパ32が形成されている。なお、例示の形態では、ハウジング3のストッパ32と、押ボタン13の略L字形の係止溝131(図4参照)とは、それぞれ2箇所ずつ設けられている。
【0025】
かかるハウジング3の側板31には、少なくとも一箇所にロック確認穴33が設けられている。このロック確認穴33は、ハウジング3の外周長Wに対して周方向に1/2W以下の間隔で複数箇所に設けられることが好ましい。
【0026】
例示の形態では、ロック確認穴33はハウジング3の側板31の4箇所に周方向に配設されている。これにより、ハウジング3の側板31をどの方向から見ても、少なくともいずれか一つのロック確認穴33を視認することができるように構成されている。
【0027】
また、これら4つのロック確認穴33は、すべて略四角形の同形状に開口して形成されている。各ロック確認穴33は、押込み方向(図1における矢符A方向)の開口幅が、押ボタン13の操作ストロークに依らずに、オペレータの視認性の観点から決定することができる。この場合、押しボタン13を操作する際に、押ボタン13が押し込まれる軸方向の長さを押ボタン13の操作ストロークL1とすれば、各ロック確認穴33の押込み方向の開口幅L2の方が、操作ストロークL1よりも長くなるように設定されている。
【0028】
これに対し、押ボタン13の側面には、前記ロック確認穴33と同数のロック状態表示部12が設けられている。このロック状態表示部12は、押ボタン13とは異なる色、例えば非常停止用スイッチの場合に押ボタン13が赤色であればロック状態表示部12を緑色とするなどの視認されやすい色で、押ボタン13の側面を略四角形状に彩色することにより形成されている。
【0029】
このロック状態表示部12は、押ボタン13がハウジング3に対して回転移動したとき、ハウジング3のロック確認穴33に合致して、ロック確認穴33を通して視認しうるように配置されている。したがって、ロック状態表示部12は、押ボタン13のロック確認穴33の大きさと同等以上の大きさで形成されている。
【0030】
かかるロック状態表示部12は、押ボタン13の側面に凹部を形成しておき、当該凹部にブロック状の彩色部材が埋設されて形成されていてもよい。
【0031】
これらのハウジング3のロック確認穴33…33と、押ボタン13のロック状態表示部12…12との位置関係について説明すると、押ボタン13が押込み前の状態のときには、図1に示すように、ハウジング3のロック確認穴33…33からは押ボタン13の無彩色の側面が見え、当該側面から円周方向に、押ボタン13の回転量に相当する距離だけずれた位置にロック状態表示部12…12がそれぞれ配置されている。すなわち、図1の状態においては、ロック確認穴33とロック状態表示部12とは、互いに重なり合う部分がない状態となっている。一方、図2に示す押ボタン13の押込み後の状態のときには、ハウジング3のロック確認穴33…33の全てが押ボタン13のロック状態表示部12に合致するようになっている。
【0032】
このような手法により、ハウジング3の側面をどの方向から見たときにもロック確認穴33からスイッチが操作状態であるか否かを一目で認識することが可能になる。また、押ボタン13の操作ストロークL1よりもロック確認穴33の押込み方向の開口幅L2の方が長く形成されているので、押ボタン13の押込み方向の動作に比して大きい表示部を形成することができ、その視認が容易なものとなる。
【0033】
次に、このような押ボタン13の操作について説明する。
【0034】
図1に示す状態(ボタン押込み前の状態)から、押ボタン13が押し込まれると、例えば、ねじりコイルばね等の弾性体が圧縮(押込み方向の圧縮)され、操作部アクチュエータが接点部2側に向けて移動するというように、内蔵された適宜の回転駆動機構により回転する。この場合、操作部アクチュエータの移動過程では、接点部2の接点部アクチュエータが移動するとともに、操作部本体11内部のロック片が操作部アクチュエータにより外方に押されて乗り越えたときに接点部2のB接点が開離してOFF状態となるものである。
【0035】
そして、B接点が開離すると、ハウジング3のストッパ32による押ボタン13の回転規制が解除され、押ボタン13がねじりコイルばね等の弾性体の弾性力(復元力)によって回転を開始し、係止溝131内の押し方向溝131aから回転方向溝131bにストッパ32が入り込む。これにより、押ボタン13が回転終点まで回転した状態で係止溝131内の回転方向溝131bにストッパ32が配置されるとともに、押ボタン13のロック確認穴33が、ハウジング3のロック状態表示部12に合致することになる。
【0036】
したがって、ハウジング3のロック確認穴33を通してロック状態表示部12が見え、ロック状態であることを一目で認識することができるようになっている。このため、かかる非常停止スイッチが複数個設置されているとき、どのスイッチが操作され、また作動しているのか、という判断を即座に行うことができる。
【0037】
これとは逆に、ロック状態の解除を行う場合には、押ボタン13を上記したねじりコイルばね等による回転方向とは逆向きに、ねじりコイルばね等の弾性力に抗して回転させる。これにより、ハウジング3のストッパ32が押ボタン13の係止溝131に沿って移動し、その係止溝131の角部を越えた時点でストッパ32の係止が解除される。すると、押ボタン13が押込み方向の逆向き(接点部2に対して離反する向き)に移動し、接点部2のB接点がON状態となり、図1に示すような操作前の状態に戻る。
【0038】
なお、上記の例では、本発明を非常停止スイッチに適用した例を示しているが、本発明はこれに限られることなく、一般的な押ボタンスイッチ、回転式のセレクタスイッチなどの他の操作スイッチにも適用可能である。
【0039】
また、ハウジング3のロック確認穴33は、上記の例では 複数箇所に設けられたものについて説明したが、本発明はこれに限られることなく、ハウジング3の側板31において少なくとも一箇所に設けられていればロック状態表示部12を視認することが可能となるので、所期の効果が得られる。この場合、ロック状態表示部12はロック確認穴33の数に対応して設けられることは言うまでもない。
【0040】
また、上記説明においては接点部2にB接点を設けた例を示したが、本発明はこれに限られることなく、接点部2にA接点(常時開)を設けておいてもよい。また、一つの押ボタンスイッチに複数の接点を設ける場合、全ての接点をA接点またはB接点としてもよいし、A接点とB接点を組み合わせた構成としてもよい。
【0041】
また、以上の説明では、押ボタン13を押して回転させるとロック確認穴33から視認される色が変わるようにロック状態表示部12を設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、押ボタン13を上記とは逆の方向へ回転させて元の状態に戻すとロック確認穴33から視認される色が変わるようにロック状態表示部12を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、押ボタンスイッチ、非常停止スイッチ、回転式のセレクタスイッチなどの操作スイッチにおいて、当該スイッチがロック状態か否かを容易に識別するために好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る操作スイッチ(押込み前の状態)の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の操作スイッチの押込み後の状態を示す斜視図である。
【図3】図1の操作スイッチの分解斜視図である。
【図4】図1の操作スイッチの押ボタンの一部を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 操作部
11 操作部本体
11a 雄ねじ部
11b 連結部
11c 連結溝
12 ロック状態表示部
13 押ボタン(手動操作部材)
131 係止溝
15 締付ナット
2 接点部
3 フランジ
31 側板
32 ストッパ
33 ロック確認穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点を有する接点部と、この接点部の接点を切り替え操作するための手動操作部材を有する操作部とを備え、手動操作部材の側面に沿うハウジングが配置された操作スイッチであって、
このハウジングには少なくとも一箇所にロック確認穴が設けられるとともに、手動操作部材の側面にはロック状態表示部が設けられており、
このロック状態表示部は、手動操作部材がハウジングに対して回転移動したときハウジングのロック確認穴に合致して、ロック確認穴から視認可能となるように構成されていることを特徴とする操作スイッチ。
【請求項2】
ロック状態表示部は、手動操作部材の側面を彩色することにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の操作スイッチ。
【請求項3】
ロック状態表示部は、手動操作部材の側面に彩色部材が埋設されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の操作スイッチ。
【請求項4】
ロック確認穴は、ハウジングの外周長Wに対して周方向に1/2W以下の間隔で複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の操作スイッチ。
【請求項5】
手動操作部材がハウジング内に押し込まれたとき、この手動操作部材が弾性体の弾性力によって回転し、ロック状態表示部がロック確認穴に合致しうることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の操作スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−207611(P2007−207611A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25948(P2006−25948)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】