説明

操作子駆動装置付き電子音源

【課題】ペダルやキー等の操作子をアクチュエータによって駆動する操作子駆動装置付き電子音源において、アクチュエータによる電力消費の効率化を図ること。
【解決手段】鍵盤の各鍵それぞれには、各鍵それぞれの特徴に基づいて所定の加算ポイントが予め設定されており、電源部から電力供給されているすべての各鍵それぞれに予め設定される加算ポイントの合計値を算出し、算出された合計値が基準値を超えているか否かを判断する。合計値が基準値を超えていないと判断されている間は、新たに演奏データに従って動作順となった鍵に対応するプル型ソレノイドへの電源部による電力供給を許可する。合計値が基準値を超えていると判断されている間は、新たに演奏データに従って動作順となった鍵に対応するプル型ソレノイドへの電源部による電力供給を許可しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏データに従ってキーソレノイドやペダルソレノイド等のアクチュエータへ電力を供給し、これらのアクチュエータによってキーやペダル等の操作子を駆動する装置(操作子駆動装置)を備えた電子音源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ペダルやキー等の操作子をアクチュエータによって駆動することで自動演奏を行う自動演奏機能付きの鍵盤楽器が知られている。
具体的には、この種の自動演奏機能付きの鍵盤楽器では、記録媒体に記録された演奏データを読み出し、この読み出した演奏データに従ってキーソレノイドやペダルソレノイド等のアクチュエータへ電力を供給し、これらのアクチュエータによってキーやペダル等の操作子を駆動するようになっている。
【0003】
また、この種の自動演奏機能付きの鍵盤楽器の中には、アクチュエータへ供給される電力の積算値を算出し、算出した積算値が基準値を超えたときには、アクチュエータへの電力供給を停止することによりアクチュエータを保護するものもある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2626121号公報(第3頁、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような自動演奏機能付きの鍵盤楽器による多彩な自動演奏を実現するためには、同時に駆動可能なアクチュエータの数量を増加する必要があるが、その分アクチュエータに電力を供給する電源部の容量を大きくする必要があり、電源部の大型化やこれに伴う装置内のレイアウトの制約、コストアップなどを招くという問題があった。また、同時に駆動可能なアクチュエータの数量が増加すれば、アクチュエータによる総発熱量も増加して装置内の温度が上昇して好ましくない。
【0006】
また、同時に駆動可能なアクチュエータの数量を増加させない場合でも、電源部の小型化やこれに伴う装置内のレイアウトの自由度向上、コストダウンなどの実現が求められている。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、演奏データに従ってキーソレノイドやペダルソレノイド等のアクチュエータへ電力を供給し、これらのアクチュエータによってキーやペダル等の操作子を駆動する装置(操作子駆動装置)を備えた電子音源において、アクチュエータによる電力消費の効率化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る操作子駆動装置付き電子音源(1:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄で用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、複数の操作子(50,60)と、前記複数の操作子(50,60)それぞれに対応して設けられ、対応する前記操作子(50,60)をそれぞれ駆動する複数のアクチュエータ(31)と、前記アクチュエータ(31)に電力供給する電源部と、演奏データに従って動作順となった前記操作子(50,60)に対応するアクチュエータ(31)に前記電源部から電力供給させることで自動演奏を行う制御部(42)と、を備える。
【0009】
そして、複数のアクチュエータ(31)それぞれには、各アクチュエータ(31)それぞれの特徴に基づいて所定の係数が予め設定されており、制御部(42)が、電源部から電力供給されているすべてのアクチュエータ(31)それぞれに予め設定される係数の合計値を算出し、算出された合計値が基準値を超えているか否かを判断する。
【0010】
合計値が基準値を超えていないと判断されている間は、制御部(42)が、新たに演奏データに従って動作順となった操作子(50,60)に対応するアクチュエータ(31)への電源部による電力供給を許可する。
【0011】
一方、合計値が基準値を超えていると判断されている間は、制御部(42)が、新たに演奏データに従って動作順となった操作子(50,60)に対応するアクチュエータ(31)への電源部による電力供給を許可しない。
【0012】
このことにより、同時に駆動可能なアクチュエータ(31)の数量が増加しても、電源部の容量を大きくする必要がなく、電源部の大型化やこれに伴う装置内のレイアウトの制約、コストアップなどの諸問題が発生せず、また、同時に駆動可能なアクチュエータ(31)の数量の増加に起因するアクチュエータ(31)による総発熱量の増加および装置内の温度上昇も発生しない。
【0013】
また、同時に駆動可能なアクチュエータ(31)の数量を増加させない場合でも、電源部の小型化やこれに伴う装置内のレイアウトの自由度向上、コストダウンなどの実現が可能となる。
【0014】
したがって、操作子駆動装置付き電子音源(1)におけるアクチュエータ(31)による電力消費の効率化を図ることができる。
また、上記課題を解決するためになされた請求項2に係る操作子駆動装置付き電子音源(1)は、請求項1に記載の操作子駆動装置付き電子音源(1)において、前記複数のアクチュエータ(31)それぞれに予め設定される係数の値については、それぞれの特徴としての、対応する前記操作子(50,60)の動作時にノートオンが保持される場合にはノートオン時の係数よりも小さい値が所定の第一補正値として用いられ、ノートオンが保持された後にノートオフされる場合には、前記第一補正値よりもさらに小さい値が所定の第二補正値として用いられることを特徴とする。
【0015】
このように構成された本発明の操作子駆動装置付き電子音源(1)によれば、ノートオンが保持される場合のアクチュエータ(31)の電力消費量が、ノートオン時のアクチュエータ(31)の電力消費量よりも小さいことや、ノートオンが保持された後にノートオフされる場合のアクチュエータの電力消費量が、ノートオンが保持される場合のアクチュエータ(31)の電力消費量よりも小さいことに応じて、複数のアクチュエータ(31)それぞれに予め設定される係数の値を変更することができ、演奏状況に拘わらずに係数の値を一律に設定する場合に比べて、アクチュエータ(31)による電力消費の無駄が少なくなる。したがって、操作子駆動装置付き電子音源(1)におけるアクチュエータ(31)による電力消費の更なる効率化を図ることができる。
【0016】
また、上記課題を解決するためになされた請求項3に係る操作子駆動装置付き電子音源(1)は、請求項1または請求項2の何れか1項に記載の操作子駆動装置付き電子音源(1)において、前記複数のアクチュエータ(31)それぞれに予め設定される係数の値については、それぞれの特徴としての、対応する前記操作子(50,60)の動作時に発音される音高の高さに基づき、低音側に行くに従って大きくなるとともに高音側に行くに従って小さくなるよう設定されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成された本発明の操作子駆動装置付き電子音源(1)によれば、各鍵盤(10)に対応して設定されるハンマー(52)の錘が低音側に行くに従って大きくなるとともに高音側に行くに従って小さくなることに応じて、複数のアクチュエータ(31)それぞれに予め設定される係数の値を操作子(50,60)ごとに設定することができ、係数の値を一律に設定する場合に比べて、アクチュエータ(31)による電力消費の無駄が少なくなる。したがって、操作子駆動装置付き電子音源(1)におけるアクチュエータ(31)による電力消費の更なる効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】操作子駆動装置付き電子音源の全体構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は自動演奏処理を示すフローチャートであり、(b)はプランジャーのストローク長とプル型ソレノイドに電力供給された場合にプランジャーを吸引する力との関係を示す説明図である。
【図3】(a)はプル型ソレノイドの構成を示す側面図であり、(b)はプル型ソレノイドの構成を示す説明図(1)であり、(c)はプル型ソレノイドの構成を示す説明図(2)である。
【図4】(a)はプランジャーのストローク長とプル型ソレノイドに電力供給された場合にプランジャーを吸引する力との関係を示す説明図であり、(b)は押鍵状態によるプル型ソレノイドによる電力消費量を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[1.操作子駆動装置付き電子音源1の全体構成の説明]
図1に示すように、操作子駆動装置付き電子音源(以下、電子音源)1は、演奏データに従ってキーソレノイドやペダルソレノイド等のアクチュエータへ電力を供給し、これらのアクチュエータによってキーやペダル等の操作子を駆動する装置(操作子駆動装置)を備える電子音源である。
【0020】
具体的には、電子音源1は、複数の鍵を有する鍵盤50と、複数のダンパーペダルを有するダンパーペダル機構60と、各種のキーやスイッチからなる操作パネル70と、操作子としての鍵盤50およびダンパーペダル機構60を駆動するためのアクチュエータとしてのソレノイド30と、ソレノイド30を駆動させるソレノイド駆動回路28と、鍵の位置およびダンパーペダルの位置を検出する位置センサ32と、上述の鍵盤50、操作パネル70、ソレノイド駆動回路28および位置センサ32との間で各種信号をやりとりするインタフェース部(I/F)40と、電子音源1全体の動作を制御する制御部としてのCPU42と、各種時間を計時するタイマ43と、CPU42が実行するプログラムなどを記憶しているROM44と、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグ、バッファデータ、CPU42による処理結果などを一時的に記憶するRAM46と、図示しないMIDI機器等からの演奏データをMIDI信号として入力したり図示しない外部機器等へMIDI信号を出力したりするMIDIインタフェース部(I/F)90と、種々の波形データを記憶する波形メモリ91と、波形メモリ91から読み込んだ波形データに基づいて楽音波形及び効果音波形を生成する音源回路(TG)92と、TG92によって生成された楽音波形及び効果音波形にエフェクト付与するデジタル信号処理回路(DSP)93と、DSP93によってエフェクト付与された楽音波形及び効果音波形に関するデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換回路(DAC)94と、DAC94によってデジタル信号から変換されたアナログ信号を増幅するスピーカ出力回路(AMP)95と、AMP95によって増幅されたアナログ信号に基づいて楽音を出力するスピーカ96と、を備えている。
【0021】
これらのうち、インタフェース部40、CPU42、ROM44、RAM46、MIDIインタフェース部(I/F)90、TG92およびDSP93については、バス80を介してそれぞれ通信可能に接続されている。
【0022】
また、電子音源1の各部には、図示しない電源部から電力供給される。
なお、波形メモリ91、TG92、DSP93、DAC94、AMP95およびスピーカ96が楽音出力装置を構成し、ソレノイド30およびソレノイド駆動回路28が操作子駆動装置を構成する。また、CPU42は、楽音出力装置と操作子駆動装置とをそれぞれ独立して制御する。
【0023】
なお、演奏データは、例えば、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)コードで構成され、楽音出力装置による楽音の出力および操作子駆動装置によって駆動される鍵盤50やダンパーペダル機構60の動作を規定する。
【0024】
ソレノイド30は、図3(a)に示すように、鍵盤50の有する各鍵51に対して、プル型ソレノイド31を備える。
このうちのプル型ソレノイド31は、鍵51の前後方向に沿ってプランジャー31aが配置され、通電時にプランジャー31aが後方に移動するようになっている。
【0025】
また、プランジャー31aにはワイヤー31cを介してカム31bが連結されている。このカム31bは、鍵51の前後方向に沿って配置されて先端側に錘を有するとともに後端側で鍵51を下方から支持する回動可能なハンマー52の先端側を下方から支持し、ワイヤー31cでプランジャー31aと連結されるとともに回動可能になっている。
【0026】
そして、プル型ソレノイド31に電力供給されると、プランジャー31aを内部に吸引する力が増大して(図4(a)参照)、プランジャー31aが内部に吸引されて吸着し(図3(c)参照)、プランジャー31aとワイヤー31cで連結されたカム31bが回動してハンマー52の先端側を押し上げ、ハンマー52の後端側に支持されていた鍵51が支えを失って前方へ回動する(ノートオン、図4(b)参照)。
【0027】
一方、プル型ソレノイド31への電力供給が停止されると、プランジャー31aを吸引する力が減少して(図4(a)参照)、ハンマー52が錘のある先端側でカム31bの先端を押し下げるとともに後端側で鍵51を押し上げるように回動する(ノートオフ、図4(b)参照)。このとき、回動するカム31bにワイヤー31cで連結されるプランジャー31aがプル型ソレノイド31内部から引き出される(図3(b)参照)。
【0028】
なお、電子音源1の他の構成は公知技術に従っているのでここではその詳細な説明は省略する。
[2.メイン処理の説明]
次に、電子音源1のCPU42が実行するメイン処理を説明する。
【0029】
本処理は、電子音源1の電源がオンになった場合に繰り返し実行される。
このメインルーチンが起動すると、まず、各種変数に初期値をセットすることやRAM46における記憶領域を解放することなどの初期化処理を経て、電子音源1に対する操作に基づくイベントが発生したか否かがチェックされる。
【0030】
イベントが発生したと判定されたら、発生したイベントの種別に応じたイベント処理を開始するよう指示する。なお、イベントの具体例としては、押鍵や離鍵、自動演奏などがある。
【0031】
こうしてイベント処理が行われた後、または、イベントが発生していないと判定された場合には、戻って電子音源1に対する操作に基づくイベントが発生したか否かが再びチェックされる。
【0032】
[3.自動演奏処理の説明]
次に、電子音源1のCPU42が実行するイベント処理としての自動演奏処理を、図2(a)のフローチャートおよび図2(b)を参照して説明する。なお、図2(b)は、押鍵状態によるプル型ソレノイド31による電力消費量を示す。
【0033】
本処理は、メイン処理の実行時に自動演奏イベントが発生したときに繰り返し実行される。
まず、イベントとしての押鍵指示が発生したか否かを判断する(S105)。
【0034】
イベントが発生していないと判断する場合には、イベントが発生したと判断するまで待機する(S105:NO)。
一方、イベントが発生したと判断する場合には(S105:YES)、ポイント変数の値を初期化する(S110)。
【0035】
続いて、鍵盤50が有する88個の鍵についての計算処理を実行する(S115〜S140)。
計算処理の最初のステップであるS115では、鍵盤50が有する88個の鍵のうちのN番目の鍵を選択する。なお、自動演奏処理の実行が開始されてから最初に本S105を実行する際には変数Nには数値「1」を設定し、以後S140から本S105に戻る度に、変数Nの値をインクリメントする。
【0036】
続いて、S120では、N番目の鍵がノートオン中であるか否かを判断するため、N番目の鍵がノートオンされてから経過した時間がt0〜t1であるか否かを判断する。
ノートオンからの経過時間がt0〜t1ではないと判断する場合には(S120:NO)、N番目の鍵がノートオン中ではなくノートオン状態に保持されていると考えられるため、後述するS130に移行する。
【0037】
一方、ノートオンからの経過時間がt0〜t1であると判断する場合には(S120:YES)、N番目の鍵がノートオン中であると判断して、ポイント変数に加算ポイントである数値「2」を加算し(S125)、後述するS130に移行する。
【0038】
また、S130では、N番目の鍵がノートオン状態に保持されているか否かを判断するため、N番目の鍵がノートオンからの経過時間がt1〜t2であるか否かを判断する。
ノートオンからの経過時間がt1〜t2ではないと判断する場合には(S130:NO)、N番目の鍵がノートオフに移行したと考えられるため、ポイント変数には何も加算せず、後述するS140に移行する。
【0039】
一方、ノートオンからの経過時間がt1〜t2であると判断する場合には(S130:YES)、N番目の鍵がノートオン状態に保持されていると判断して、ポイント変数に加算ポイントである数値「1」を加算し(S135)、後述するS140に移行する。
【0040】
なお、鍵盤50の各鍵(プル型ソレノイド31)それぞれに予め設定される加算ポイント(係数)の値については、それぞれの特徴としての、対応する鍵盤50の各鍵やダンパーペダル機構60の各ダンパーペダルの動作時にノートオンが保持される場合にはノートオン時の加算ポイント(本実施形態では数値「2」)よりも小さい値(本実施形態では数値「1」、第一補正値に相当)として用いられ、ノートオンが保持された後にノートオフされる場合にはさらに小さい値(本実施形態では数値「0」、第二補正値に相当)として用いられる。この加算ポイント値については、ROM44やRAM46にマップとして登録しておいて必要時に読み出して利用するようにしてもよいし、諸条件に基づき必要時に算出するようにしてもよい。
【0041】
S140では、変数Nの値が数値「88」ではない場合には、鍵盤50が有する88個の鍵すべての状態を確認していないと判断して、S105に戻る。一方、変数Nの値が数値「88」である場合には、鍵盤50が有する88個の鍵すべての状態を確認していると判断して、本計算処理を終了してS145に移行する。
【0042】
S145では、ポイント変数の値が基準値よりも小さいか否かを判断する。
ポイント変数の値が基準値よりも小さくはないと判断する場合には(S145:NO)、これ以上イベントを発生させるとソレノイド30による電力消費量が大きくなって電源部が供給可能な電力量を超えたりソレノイド30による総発熱量も増加して装置内の温度が上昇したりして好ましくないため、先のS105で受け付けたイベントである押鍵指示に基づく押鍵動作を実行せず、そのままS105に戻って次のイベント発生まで待機する。
【0043】
一方、ポイント変数の値が基準値よりも小さいと判断する場合には(S145:YES)、このイベントを発生させても、ソレノイド30による電力消費量が電源部が供給可能な電力量を超えるおそれがなく、ソレノイド30による総発熱量も許容範囲内と考えられるため、先のS105で受け付けたイベントである押鍵指示に基づく押鍵動作を実行する(S150)。
【0044】
そして、本処理を終了する。
[4.実施形態の効果]
(1)このように本実施形態の電子音源1によれば、次のような作用効果を奏する。
【0045】
(1−1)同時に駆動可能なプル型ソレノイド31の数量が増加しても、電源部の容量を大きくする必要がなく、電源部の大型化やこれに伴う装置内のレイアウトの制約、コストアップなどの諸問題が発生せず、また、同時に駆動可能なプル型ソレノイド31の数量の増加に起因するプル型ソレノイド31による総発熱量の増加および装置内の温度上昇も発生しない。
【0046】
(1−2)また、同時に駆動可能なプル型ソレノイド31の数量を増加させない場合でも、電源部の小型化やこれに伴う装置内のレイアウトの自由度向上、コストダウンなどの実現が可能となる。
【0047】
(1−3)したがって、電子音源1におけるプル型ソレノイド31による電力消費の効率化を図ることができる。
(2)また、本実施形態の電子音源1によれば、ノートオンが保持される場合のプル型ソレノイド31の電力消費量が、ノートオン時のプル型ソレノイド31の電力消費量よりも小さいことや、ノートオンが保持された後にノートオフされる場合のプル型ソレノイド31の電力消費量が、ノートオンが保持される場合のプル型ソレノイド31の電力消費量よりも小さいことに応じて、複数のプル型ソレノイド31それぞれに予め設定される係数の値を変更することができ、演奏状況に拘わらずに係数の値を一律に設定する場合に比べて、プル型ソレノイド31による電力消費の無駄が少なくなる。したがって、電子音源1におけるプル型ソレノイド31による電力消費の更なる効率化を図ることができる。
【0048】
[5.他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0049】
上記実施形態では、鍵盤50のすべての鍵に対して同一値の加算ポイントを設定しているが、これには限られず、鍵盤ごとに加算ポイントを変更するようにしてもよい。
例えば、鍵盤50の各鍵(プル型ソレノイド31)それぞれに予め設定される加算ポイント(係数)の値については、それぞれの特徴としての、対応する鍵盤50の各鍵の動作時に発音される音高の高さに基づき、低音側に行くに従って大きくなるとともに高音側に行くに従って小さくなるよう設定してもよい。
【0050】
このことにより、鍵盤10の各鍵に対応して設定されるハンマー52の錘が低音側に行くに従って大きくなるとともに高音側に行くに従って小さくなることに応じて、プル型ソレノイド31それぞれに予め設定される係数の値を鍵やダンパーペダルごとに設定することができ、係数の値を一律に設定する場合に比べて、プル型ソレノイド31による電力消費の無駄が少なくなる。したがって、電子音源1におけるプル型ソレノイド31による電力消費の更なる効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…操作子駆動装置付き電子音源、28…ソレノイド駆動回路、30…ソレノイド、32…位置センサ、40…インタフェース部、42…CPU、43…タイマ、44…ROM、46…RAM、50…鍵盤、60…ダンパーペダル機構、70…操作パネル、80…バス、90…MIDIインタフェース部、91…波形メモリ、92…音源回路(TG)、93…デジタル信号処理回路(DSP)、94…D/A変換回路(DAC)、95…スピーカ出力回路(AMP)、96…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の操作子と、
前記複数の操作子それぞれに対応して設けられ、対応する前記操作子をそれぞれ駆動する複数のアクチュエータと、
前記アクチュエータに電力供給する電源部と、
演奏データに従って動作順となった前記操作子に対応するアクチュエータに前記電源部から電力供給させることで自動演奏を行う制御部と、
を備える操作子駆動装置付き電子音源であって、
前記複数のアクチュエータそれぞれには、各アクチュエータそれぞれの特徴に基づいて所定の係数が予め設定されており、
前記制御部は、前記電源部から電力供給されているすべてのアクチュエータそれぞれに予め設定される係数の合計値を算出し、算出された合計値が基準値を超えているか否かを判断し、前記合計値が前記基準値を超えていないと判断されている間は、新たに前記演奏データに従って動作順となった前記操作子に対応するアクチュエータへの前記電源部による電力供給を許可し、一方、前記合計値が前記基準値を超えていると判断されている間は、新たに前記演奏データに従って動作順となった前記操作子に対応するアクチュエータへの前記電源部による電力供給を許可しないこと
を特徴とする操作子駆動装置付き電子音源。
【請求項2】
請求項1に記載の操作子駆動装置付き電子音源において、
前記複数のアクチュエータそれぞれに予め設定される係数の値については、それぞれの特徴としての、対応する前記操作子の動作時にノートオンが保持される場合にはノートオン時の係数よりも小さい値が所定の第一補正値として用いられ、ノートオンが保持された後にノートオフされる場合には、前記第一補正値よりもさらに小さい値が所定の第二補正値として用いられることを特徴とする操作子駆動装置付き電子音源。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れか1項に記載の操作子駆動装置付き電子音源において、
前記複数のアクチュエータそれぞれに予め設定される係数の値については、それぞれの特徴としての、対応する前記操作子の動作時に発音される音高の高さに基づき、低音側に行くに従って大きくなるとともに高音側に行くに従って小さくなるよう設定されていることを特徴とする操作子駆動装置付き電子音源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−215329(P2011−215329A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82647(P2010−82647)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】