説明

操作手段の異常検出装置

【課題】 ジョイスティックの異常を検出する異常検出装置を提供する。
【解決手段】 操作手段としてのジョイスティック1の操作量に応じて変化する電圧をそれぞれ出力する第1、第2ポテンショメータ2、3と、第1、第2ポテンショメータ2、3の出力を入力するコントローラ10を備えた操作手段の異常検出装置において、第1、第2ポテンショメータ2、3のそれぞれには基準電圧が供給され、第1ポテンショメータ2は、ジョイスティック1の操作量に比例して電圧を出力し、第2ポテンショメータ3は、ジョイスティック1の操作量に反比例して電圧を出力し、コントローラ10は、第1、第2ポテンショメータ2、3のそれぞれの出力電圧の合計を演算し、演算した出力電圧の合計に基づいてジョイスティック1の異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧機器の制御に用いられる操作手段の異常検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の操作手段の異常検出装置として特許文献1に記載の技術がある。この技術について図4を用いて説明する。
【0003】
この従来技術は、操作手段としてのジョイスティック11と、このジョイスティック11と電気的に接続し、図示しないアクチュエータを制御するコントローラ20からなる。
【0004】
ジョイスティック11には、ジョイスティック11の操作に応じて抵抗値が変化するポテンショメータ12が設けられる。ポテンショメータ12は、抵抗体12aと、この抵抗体12a上を摺動する摺動子12bからなり、摺動子12bの抵抗体12aに対する位置によりポテンショメータ12の抵抗値が設定される。抵抗体12aの一端の端子13には、電源用配線15を介して基準電圧が供給され、他端の端子14はアース用電線16に接続する。電源用電線15及びアース用電線16には、それぞれ固定抵抗15a、16aが設置される
摺動子12bは信号用配線17を介してコントローラ20のCPU21に接続する。CPU21には、摺動子12bの位置に応じた電圧信号が入力され、図示しないアクチュエータを制御する。
【0005】
ジョイスティック11に異常が発生した場合、例えば、信号用配線17が、電源用配線15やアース用配線16に短絡した場合には、コントローラ20はジョイスティック11の異常を検出して、ジョイスティック11により制御を禁止する。このジョイスティック11の異常を検出する方法を以下に説明する。
【0006】
今、電源電圧を5V(ボルト)として、ポテンショメータ12の最大抵抗を1kΩ、固定抵抗15a、16aをそれぞれ50Ωとすると、信号用配線17からコントローラ20に出力される電圧は、以下で示される。
最大電圧:(5V÷(50Ω+1kΩ+50Ω))×(50Ω+1kΩ)=4.77V
最小電圧:(5V÷(50Ω+1kΩ+50Ω))×50Ω=0.23V
すなわち、固定抵抗15a、16aが設けられていない場合のポテンショメータ12の有効電圧範囲が0Vから5Vであるのに対して、固定抵抗15a、16aを設けることにより、有効電圧範囲が0.23Vから4.77Vに狭まることになる。
【0007】
信号用配線17がグラウンドに短絡した場合には、ポテンショメータの出力電圧は0Vとなり、固定抵抗15a、16aを備えた場合の有効電圧範囲から外れることになる。したがって、有効電圧範囲を外れる電圧が出力された場合にジョイスティック11に異常が生じたと判断することができる。
【特許文献1】特開昭58−127502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術の異常検出方法では、例えば、ポテンショメータ12が固着したような場合にはジョイスティック11を操作しても出力電圧は一定となり、出力電圧が有効電圧範囲内の場合にはコントローラ20は異常を検出ができないという課題がある。また、固定抵抗15a、16aを設けることにより、有効電圧範囲が狭まることになるため、操作領域が制限され、インチング操作等微小操作の操作性が低下する。
【0009】
そこで本発明は、ポテンショメータの有効電圧範囲が制限されることなく、かつ有効電圧範囲内での異常検出を可能とするジョイスティックの異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のは、操作手段の操作量に応じて変化する電圧をそれぞれ出力する第1、第2ポテンショメータと、第1、第2ポテンショメータの出力を入力するコントローラを備えた操作手段の異常検出装置において、第1、第2ポテンショメータのそれぞれには基準電圧が供給され、第1ポテンショメータは、操作手段の操作量に比例して電圧を出力し、第2ポテンショメータは、操作手段の操作量に反比例して電圧を出力し、コントローラは、第1、第2ポテンショメータのそれぞれの出力電圧の合計を演算し、演算した出力電圧の合計に基づいて操作手段の異常を検出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ポテンショメータの一方が固着したような場合に出力電圧が一定となっても、操作手段の異常を検出することができる。また、ポテンショメータに供給される電圧の有効電圧範囲が狭まることがなく、操作領域が制限されず、インチング操作等微小操作の操作性が低下することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1を用いて本発明の第1の実施形態の構成を説明する。本実施形態のジョイスティックの異常検出装置は、ジョイスティック1と、このジョイスティック1と電気的に接続し、ジョイスティックの出力に応じて図示しないアクチュエータを制御するコントローラ10からなる。
【0013】
ジョイスティック1には、このジョイスティック1のレバー操作に応じて抵抗値が変化する第1、第2ポテンショメータ2、3が設けられる。それぞれのポテンショメータ2、3は、同一抵抗値の抵抗体2a、3aと、この抵抗体2a、3a上をジョイスティック1の操作に応じて摺動する摺動子2b、3bからなる。それぞれの摺動子2b、3bの抵抗体2a、3aに対する位置により第1、第2ポテンショメータ2、3の抵抗値が設定される。抵抗体2a、3aを接続したときの一端の端子4には、第1電源用配線7aが接続し、他端の端子5には端子4と端子5間を結ぶ第2電源用配線7bが接続する。さらに第1ポテンショメータ2と第2ポテンショメータ3の間の中間端子6にはアース用電線9が接続され、端子4と中間端子6間及び端子5と中間端子6間に基準電圧が供給される。
【0014】
摺動子2bは信号用配線8aを介してコントローラ10のCPU10aに接続する。CPU10aには、摺動子2bの位置に応じた電圧信号が入力され、図示しないアクチュエータを制御する。同様に摺動子3bは信号用配線8bを介してコントローラ10のCPU10aに接続する。CPU10aには、摺動子3bの位置に応じた電圧信号が入力される。なお、これら2つの摺動子2a、3aは常にジョイスティック1の操作量に応じて同一方向に同じだけ変位する。
【0015】
CPU10aには、図示しない入力インターフェース、A/D変換器が備えられ、摺動子2b、3bから入力された電圧信号はこれら入力インターフェースとA/D変換器を介してCPU10aに取り込まれる。
【0016】
図2は、第1ポテンショメータ2および第2ポテンショメータ3の出力電圧と、ジョイスティック1のレバー操作量との関係を示す図である。基準電圧を5Vとした場合にジョイスティック1の操作範囲(例えば、最小角度−20°から最大角度20°)で出力電圧は0Vから5Vまで変化する。このとき、第1ポテンショメータ2の出力電圧と第2ポテンショメータ3の出力電圧は相反する傾向を示す。すなわち、第1ポテンショメータ2では、ジョイスティック1を−20°から20°まで操作させた場合の出力電圧は0Vから5.0Vに、ジョイスティック1の操作量に比例的に変化する(図中、信号1で示す)。つまり第1ポテンショメータ2の抵抗値は最大抵抗値から最小抵抗値に比例的に変化する。一方、第2ポテンショメータ3では、ジョイスティック1を−20°から20°まで操作させた場合の出力電圧は5.0Vから0Vに、ジョイスティック1の操作量に反比例的に変化する(図中、信号2で示す)。つまり第2ポテンショメータ3の抵抗値は、最小抵抗値から最大抵抗値に反比例的に変化する。したがって、第1ポテンショメータ2の出力電圧と第2ポテンショメータ3の出力電圧の合計値は、常に基準電圧と等しい5Vとなる。
【0017】
図3は、本実施形態のジョイスティック1の異常検出制御を説明するフローチャートである。この異常検出制御はコントローラ10により実施され、所定の時間間隔(例えば、5msec)で行なわれる。
【0018】
本実施形態の異常検出方法は、第1ポテンショメータ2の出力電圧と第2ポテンショメータ3の出力電圧の合計が、図2に示したように正常時には常に基準電圧(5V)を示すことに着目し、この出力電圧の合計が5Vの場合には、ジョイスティック1は正常であると判定し、5Vを示さない場合にはジョイスティック1に異常が生じていると判定するものである。
【0019】
以下、フローチャートを用いて本実施形態のジョイスティック1の異常検出方法について説明するが、図3に示すフローチャートは、部品バラツキを考慮して、ジョイスティック1の出力電圧の合計が基準電圧を含む所定の範囲(例えば、4.0Vから6.0Vの範囲)であればジョイスティック1は正常であると判定するフローチャートである。
【0020】
まずステップ1(図中、S1で示す。以下同様。)では、CPU10aに取り込まれた各ポテンショメータ2、3の出力電圧の合計が第1の所定値(4.0V)未満であるかどうかを判定する。第1の所定値以上であればステップ2に進み、第2の所定値(6.0V)を超えているかどうかの判定を実施する。出力電圧の合計が第2の所定値以下であれば制御を終了する。出力電圧の合計が、第1の所定値以上で第2の所定値以下であれば、ジョイスティック1の異常はないと判定する。
【0021】
一方、ステップ1で出力電圧の合計が第1の所定値未満の場合、またはステップ2で合計の出力電圧が第2の所定値を越えている場合には、ステップ3に進む。ステップ3では、ジョイスティック1の異常判定の回数を計測するカウンタのカウント数をインクリメントする。
【0022】
続くステップ4では、カウンタのカウント数が所定カウント数を超えたかどうかを判定し、超えた場合にはステップ5に進み、ジョイスティック1に異常が発生したとしてジョイスティック1による制御を禁止する。つまりステップ3とステップ4では、所定の範囲内にない出力電圧の合計が所定回数継続的に出力された場合に、ジョイスティック1の異常と判定するようにした。これによりジョイスティック1の異常の検出を精度よく実施することができる。
【0023】
次に本実施形態の作用を説明する。
【0024】
ジョイスティック1が作業者により操作され、その操作量に応じて第1、第2ポテンショメータ2、3の摺動子2b、3bが抵抗体2a、3a上を摺動する。この摺動子2b、3bの摺動により第1、第2ポテンショメータ2、3の抵抗値が変化して、ジョイスティック1の操作量に応じた出力電圧が、コントローラ10に入力される。コントローラ10は、入力された電圧に基づいて図示しないアクチュエータを制御する。
【0025】
コントローラ10は、第1ポテンショメータ2の出力電圧と第2ポテンショメータ3の出力電圧との合計を演算し、出力電圧の合計が、基準電圧を含む所定の範囲にあるかどうかを判定する。ここで、第1、第2ポテンショメータのそれぞれの出力電圧の合計は図2に示すように、正常時には一定値(基準電圧)となる。合計の出力電圧が基準電圧を含む所定の電圧の範囲にない場合にはジョイスティック1に異常が生じたと判定し、ジョイスティック1による制御を禁止する。
【0026】
なお、一方のポテンショメータ2または3が固着したような場合でも、本実施形態では、所定時間間隔で異常検出制御を実施するため、ジョイスティック1を操作した時点で、異常を検出することができる。
【0027】
したがって、本発明では、操作手段としてのジョイスティック1の操作量に応じて変化する電圧をそれぞれ出力する第1、第2ポテンショメータ2、3と、第1、第2ポテンショメータ2、3の出力を入力するコントローラ10を備えた操作手段の異常検出装置において、第1、第2ポテンショメータ2、3のそれぞれには基準電圧が供給され、第1ポテンショメータ2は、ジョイスティック1の操作量に比例して電圧を出力し、第2ポテンショメータ3は、ジョイスティック1の操作量に反比例して電圧を出力し、コントローラ10は、第1、第2ポテンショメータ2、3のそれぞれの出力電圧の合計を演算し、演算した出力電圧の合計に基づいてジョイスティック1の異常を検出するため、ポテンショメータの一方が固着したような場合に出力電圧が一定となっても、ジョイスティック1の異常を検出することができる。また、ポテンショメータ2、3に供給される電圧の有効電圧範囲が狭まることがなく、操作領域が制限されず、インチング操作等微小操作の操作性が低下することがない。
【0028】
なお、本実施形態では、ポテンショメータとして接触式のポテンショメータを用いて説明したが、ホール素子を用いた非接触式のポテンショメータであってもよい。
【0029】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、ポテンショメータを用いた操作手段の異常検出に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を説明する図である。
【図2】第1ポテンショメータおよび第2ポテンショメータの出力電圧と、ジョイスティックの操作量との関係を示す図である。
【図3】ジョイスティックの異常検出制御を説明するフローチャートである。
【図4】従来の構成を説明する図である図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ジョイスティック
2 第1ポテンショメータ
2a 抵抗体
2b 摺動子
3 第2ポテンショメータ
3a 抵抗体
3b 摺動子
4、5、6 端子
7a、7b 電源用配線
8a、8b 信号用配線
9 アース用配線
10 コントローラ
10a CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作手段の操作量に応じて変化する電圧をそれぞれ出力する第1、第2ポテンショメータと、
第1、第2ポテンショメータの出力を入力するコントローラを備えた操作手段の異常検出装置において、
前記第1、第2ポテンショメータのそれぞれには基準電圧が供給され、
前記第1ポテンショメータは、前記操作手段の操作量に比例して電圧を出力し、前記第2ポテンショメータは、前記操作手段の操作量に反比例して電圧を出力し、
前記コントローラは、前記第1、第2ポテンショメータのそれぞれの出力電圧の合計を演算し、演算した出力電圧の合計に基づいて前記操作手段の異常を検出することを特徴とする操作手段の異常検出装置。
【請求項2】
前記コントローラは、演算した出力電圧の合計が前記基準電圧を含む所定範囲にない場合に前記操作手段は異常であると判定することを特徴とする請求項1に記載の操作手段の異常検出装置。
【請求項3】
前記第1ポテンショメータは、前記操作手段の操作範囲の最小値で0Vを、最大値で基準電圧を示し、
前記第2ポテンショメータは、前記操作手段の操作範囲の最小値で基準電圧を、最大値で0Vを示すことを特徴とする請求項1または2に記載の操作手段の異常検出装置。
【請求項4】
前記第1ポテンショメータの抵抗値は、前記操作手段の操作範囲の最小値で最大抵抗値を、操作範囲の最大値で最小抵抗値を示し、
前記第2ポテンショメータの抵抗値は、前記操作手段の操作範囲の最小値で最小抵抗値を、操作範囲の最大値で最大抵抗値を示すことを特徴とする請求項3に記載の操作手段の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−322737(P2006−322737A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144033(P2005−144033)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】