説明

擬似太陽光照射装置

【課題】被照射面での擬似太陽光のスペクトル分布のずれを抑制する。
【解決手段】擬似太陽光照射装置1は、光源22、23を収容し、光源22、23の光をスペクトル調整して擬似太陽光を得る光学フィルタ26A、27Aを放射面に設けた擬似太陽光照射ボックス6を有し、擬似太陽光照射ボックス6の放射面に対向させて被照射体10の被照射面10Aを配置した擬似太陽光照射装置1において、擬似太陽光照射ボックス6の放射面には、複数の光学フィルタ26A、27Aを、それぞれが被照射面10A上の領域に擬似太陽光を照射するように設け、光学フィルタ26A、27Aのそれぞれを、光源22、23から光学フィルタ26A、27Aに垂直入射した光の透過光Dが照射対象とする領域の略中央を照射するように設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似太陽光を照射する擬似太陽光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の光電変換特性などの、各種太陽エネルギ利用機器の性能測定及び加速劣化試験のために、自然太陽光のスペクトル分布を再現した擬似太陽光を、被照射体に照射する擬似太陽光照射装置が知られている。
この種の擬似太陽光照射装置においては、キセノンランプ等の光源を箱体の中に設置し、多層蒸着膜が形成されたスペクトル調整用の透過型の光学フィルタを箱体の放射面に設け、光源の光を該光学フィルタに通すことで放射面から擬似太陽光を放射する照射ボックスが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−296319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、光学フィルタに光が斜入射するため、被照射面に照射される擬似太陽光のスペクトル分布が自然太陽光のスペクトル分布からずれる、という問題がある。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、被照射面での擬似太陽光のスペクトル分布のずれを抑制する擬似太陽光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の擬似太陽光照射装置は、光源を収容し、前記光源の光をスペクトル調整して擬似太陽光を得る光学フィルタを放射面に設けた擬似太陽光照射ボックスを有し、前記擬似太陽光照射ボックスの放射面に対向させて被照射体の被照射面を配置した擬似太陽光照射装置において、前記擬似太陽光照射ボックスの放射面には、複数の前記光学フィルタを、それぞれが前記被照射面上の領域に前記擬似太陽光を照射するように設け、前記光学フィルタのそれぞれを、前記光源から前記光学フィルタに垂直入射した光の透過光が照射対象とする領域の略中央を照射するように設けたことを特徴とする。
【0006】
また本発明は、上記の擬似太陽光照射装置において、前記擬似太陽光照射ボックスの上面及び下面の各々に前記放射面を形成し、各放射面に前記光学フィルタを設け、前記擬似太陽光照射ボックスの上面の放射面に対向させて前記被照射体の被照射面を配置し、前記下面の放射面に対向させて反射面を配置し、前記被照射体の被照射面に、前記上面の放射面から放射される直接光、及び前記反射面で反射された反射光を照射する構成とし、前記擬似太陽光照射ボックスの上面の放射面には、複数の前記光学フィルタを、それぞれが前記被照射面上の領域に前記擬似太陽光を照射するように設け、前記下面の放射面には、複数の前記光学フィルタを、それぞれが前記反射面上の領域に前記擬似太陽光を照射するように設け、前記上面及び下面の光学フィルタのそれぞれを、前記光源から前記光学フィルタに垂直入射した光の透過光が照射対象とする領域の略中央を照射するように設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各領域において、その中央部と縁部との間でのスペクトル分布のずれが抑制され、被照射面全体を略同じスペクトル分布の光で照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る擬似太陽光照射装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】擬似太陽光照射装置の右半分を示す平面図である。
【図3】擬似太陽光照射装置を示す横断面図である。
【図4】擬似太陽光照射ボックスの構成を示す図である。
【図5】擬似太陽光照射装置の左半分を示す縦断面図である。
【図6】擬似太陽光照射ボックスに吸収部材を配置しない場合の被照射面のスペクトル分布を示す図である。
【図7】擬似太陽光照射ボックスに吸収部材を配置した場合の被照射面のスペクトル分布を示す図である。
【図8】擬似太陽光照射ボックスの上下の放射面にIRカットフィルタを一枚ずつ配置した場合の被照射面のスペクトル分布を示す図である。
【図9】擬似太陽光照射ボックスに、被照射面の領域ごとにIRカットフィルタを、このIRカットフィルタに垂直入射する光の透過光が照射対象とする領域の略中央をそれぞれ照射するように設けた場合の被照射面のスペクトル分布を示す図である。
【図10】擬似太陽光照射ボックスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態における擬似太陽光照射装置の構成を模式的に示す縦断面図である。なお、図1中Wは幅方向を、Hは高さ方向を示している。
擬似太陽光照射装置1は、複数の角柱状のフレーム2を格子状に組んだ枠体4を有し、この枠体4は、本実施の形態では、長さが略2300mm、幅が略1300mm、高さが略1180mmの寸法に構成されている。枠体4の四方の各側面は、遮光板(不図示)で覆われている。
【0010】
擬似太陽光照射装置1は、この枠体4の長さ方向において対面する側面間に、擬似太陽光を放射する擬似太陽光照射ボックス6を渡設し、この擬似太陽光照射ボックス6の下面6Aに対向させて反射面(被照射面)8を配置すると共に、擬似太陽光照射ボックス6の上面6Bに対向させて太陽電池パネル等の平坦な被照射面10Aを有する被照射体10を配置して構成されている。
【0011】
反射面8は、擬似太陽光照射ボックス6の下面6Aからの擬似太陽光を反射して被照射面10Aを照射する反射板30を傾動自在に保持する複数(本実施の形態では、18個)の反射装置32を有して構成されている。
被照射体10は、枠体4の上に取り付けられた試料支持枠12に載置されることで、擬似太陽光照射ボックス6から所定の距離Lだけ離間した位置に被照射面10Aが配置されている。この被照射面10Aは、擬似太陽光照射ボックス6の上面6Bから放射される直接光と、反射面8で反射された反射光によって照射される。すなわち、反射光の配光を制御することで、被照射面10Aでの直接光の照度むらを補償し、被照射面10Aでの照度の均一性を図ることができる。
【0012】
図2は、擬似太陽光照射装置1の右半分を示す平面図である。図3は、擬似太陽光照射装置1を示す横断面図である。
擬似太陽光照射ボックス6の中には、2本の直管型のランプ(光源)22、23が擬似太陽光照射ボックス6に沿って同軸に配置されている。これらのランプ22、23には、自然太陽光に近い光を発するキセノンランプ等が用いられている。ランプ22、23のそれぞれの両端部には、端子台40が配設されている。
【0013】
反射板30は、表面が金属の板材であり、擬似太陽光照射ボックス6に沿って略平行に延在している。この反射板30と、反射板30を保持する保持具31とにより反射装置32が構成されている。そして、枠体4の底床4A上に、複数の反射装置32が並設されることで、複数の反射板30が敷き詰められて設けられ、これらの反射板30により反射面8が形成されている。
保持具31は、反射板30の傾斜角度を調節するための角度調整機構を有し、これにより、反射板30のそれぞれを、互いに独立して光の反射角度を調整することができるようになっている。このとき、図1に示すように、枠体4の幅方向における両側面に近い幾つかの保持具31の高さが順次高くなされており、両側面側の反射板30の反射光が内側の反射板30に遮蔽されるのを防止している。
【0014】
また、枠体4の長さ方向において対面する側面側には、図2及び図3に示すように、長さ方向における両端側に向けて光を反射する補助反射面50が設けられている。補助反射面50は、擬似太陽光照射ボックス6に沿って略平行に延在する表面が金属の板材が複数配列されて構成されている。この補助反射面50は、例えば、擬似太陽光照射ボックス6の長さ方向における両端側での直接光の照度低下が顕著な場合に、この補助反射面50の反射角度(傾斜角度)を調整して照度低下を補うことなどに使用可能である。
【0015】
図4は、擬似太陽光照射ボックス6の構成を示す図である。
擬似太陽光照射ボックス6は、擬似太陽光照射ボックス6の長手方向の両側面20A、20Bを構成する長板状の一対のサイドフレーム24、24と、上面6Bを構成する複数(本実施の形態では、一対)のフィルタ26、26と、下面6Aを構成する複数(本実施の形態では、一対)のフィルタ27、27と、これらサイドフレーム24及びフィルタ26、27を組み留める金具28とを有している。
サイドフレーム24は、光遮光性材により形成され、或いは、光の透過を防止する遮光材が塗布されている。
【0016】
フィルタ26は、外側に配置されて放射面を構成するIRカットフィルタ(光学フィルタ)26Aと、各サイドフレーム24に載置されてIRカットフィルタ26Aを内側から保持するIRカットフィルタ保持具26Bとを備えている。フィルタ27は、内側に配置されて放射面を構成するIRカットフィルタ(光学フィルタ)27Aと、各サイドフレーム24に嵌め込まれてIRカットフィルタ27Aを外側から保持するIRカットフィルタ保持具27Bとを備えている。
IRカットフィルタ保持具26B、27Bは、アクリル等の透明な材質で形成されている。IRカットフィルタ26A、27Aは、赤外波長成分をカットする多層蒸着膜が蒸着形成されたスペクトル調整用の透過型の光学フィルタであり、ランプ22、23の発する光から赤外波長成分を除去することで擬似太陽光を生成する。
【0017】
IRカットフィルタ26A、27Aでカットしたスペクトル成分の光(赤外波長成分の光)は、図4に矢印A及び矢印Bで示すように、該IRカットフィルタ26A、27Aの裏面で反射される。このように上面6B及び下面6AのIRカットフィルタ26A、27Aの裏面で反射した裏面反射光A、Bは、直接的に、或いは、擬似太陽光照射ボックス6の内面等で反射して、他方のIRカットフィルタ26A、27Aに向かうことになる。
【0018】
擬似太陽光照射ボックス6内には、裏面反射光A、Bを吸収する一対の吸収部材21、21がランプ22、23を挟んで両側面20A、20Bの各々に設けられている。
吸収部材21は、擬似太陽光照射ボックス6の長手方向に延在し、平面が水平に配置された板材であり、その表面が光を吸収する性質を有するように、例えば、アルミニウムなどの金属材料の上に黒アルマイト処理するか、又は、さらにその上に例えばガラスクロスにフッ素樹脂ディスパージョンをコーディングした黒色の遮光シートを被せる等の光吸収処理を施したものを用いて形成されている。また、吸収部材21は、裏面反射光A、Bを十分に吸収し、また、上面6B及び下面6AのIRカットフィルタ26A、27Aで生じ他方のIRカットフィルタ26A、27Aに向う裏面反射光A、Bを十分に遮蔽可能にするために、その先端21Aをランプ22、23に当接しない程度の近傍にまで延出させて配置されている。
【0019】
図5は、図1の擬似太陽光照射装置1の左半分を示す縦断面図であって、ランプ22、23の下側に配置される反射装置32を省略したものである。
上記被照射面10Aは、擬似太陽光照射ボックス6(ランプ22、23)を中心として左右の2つの領域に等分割され、図5に示すように、擬似太陽光照射ボックス6の上面6Bに設けた左半分のIRカットフィルタ26Aが被照射面10A上の左半分の領域X1に擬似太陽光を照射するように設けられるとともに、右半分のIRカットフィルタ26Aが被照射面10A上の右半分の領域に擬似太陽光を照射するように設けられている。
また、反射面8も同様に、擬似太陽光照射ボックス6(ランプ22、23)を中心として左右の2つの領域に等分割され、擬似太陽光照射ボックス6の下面6Aに設けた左半分のIRカットフィルタ27Aが反射面8上の左半分の領域に擬似太陽光を照射し、右半分のIRカットフィルタ27Aが反射面8上の右半分の領域に擬似太陽光を照射するように設けられている。
【0020】
このとき、ランプ22、23の中心から被照射面10Aまでの距離Lと、被照射面10Aの左半分の領域X1の横幅Z1とに基づいて、ランプ22、23からみた左半部の領域X1の照射角度θはArctan(Z1/L)として規定され、また、被照射面10Aがランプ22、23を中心に左右対称であるから、右半部の領域の照射角度も左半分の領域X1と同じ照射角度θとなる。
同様に、下面2Bにおいては、ランプ22、23の中心から反射面8までの距離と、反射面8の左右の半分の領域の横幅とに基づいて、ランプ22、23からみた左右の領域への照射角度φが規定される。
【0021】
そして、上記吸収部材21は、図4に示すように、擬似太陽光照射ボックス6内で、ランプ22、23からみて照射角度θ、φの範囲を避けた位置に配置されており、これにより、被照射面10A、又は反射面8に向う光が吸収部材21により遮蔽されるのを防止すると共に、上記のように吸収部材21の先端21Aを照射角度θ、φの範囲を避けた位置でランプ22、23の近傍まで側面20A、20Bから最大限延出させることで、上面及び下面のIRカットフィルタ26A、27Aから他方のIRカットフィルタ26A、27Aに向う裏面反射光A、Bが吸収部材21で十分に遮蔽されることとなる。
【0022】
図6は擬似太陽光照射ボックス6に吸収部材21を配置しない場合の被照射面10Aのスペクトル分布を示し、図7は擬似太陽光照射ボックス6に吸収部材21を配置した場合の被照射面10Aのスペクトル分布を示す。
なお、図6及び図7は、横軸に波長の長さを、縦軸に波長550nmにおける光量を1とした場合の相対光量を示している。また、図6及び図7に示すM1〜M5は、図5に示すように、被照射面10A上の左半分の領域X1を幅方向に5等分した各位置を指し、同図には、これら位置M1〜M5ごとにスペクトル分布を示している。
【0023】
図6に示すように、擬似太陽光照射ボックス6内に吸収部材21を設けない場合、同図に範囲Iで示した約800nm以上の所定の赤外波長領域において、位置M1〜M5の各々での相対光量が全体的に高くなっている。これに対して、図7に示すように、擬似太陽光照射ボックス6内に上記吸収部材21を設けた場合、範囲Iにおいて、位置M1〜M5の各々で相対光量が全体的に低くなっている。
【0024】
詳述すると、一般に、光源からの光が透過型の光学フィルタを透過する際、カットしたスペクトル成分の光が該光学フィルタの裏面で反射される。したがって、何ら対策を施さなければ、上面6B及び下面6AのIRカットフィルタ26A、27Aの各々で生じた裏面反射光A、Bが、これら上面6B及び下面6AのIRカットフィルタ26A、27Aに斜入射し、その入射角度によってはIRカットフィルタ26A、27Aを透過して、被照射面10Aに照射されてしまう。このため、被照射面10Aの位置M1〜M5の中で赤外光が過度に照射される位置が生じ、図6に示すように、範囲Iにおいて位置M1〜M5の各々での相対光量が全体的に所望の値より高くなる。
【0025】
これに対して、擬似太陽光照射ボックス6内に吸収部材21を設ける構成とすることで、上面6B及び下面6AのIRカットフィルタ26A、27Aから他方のIRカットフィルタ26A、27Aに向う裏面反射光A、Bが吸収部材21により十分に吸収及び遮蔽されるため、位置M1〜M5の中で赤外光が過度に照射される位置は無くなり、この結果、図7に示すように、範囲Iにおいて位置M1〜M5の各々での相対光量が全体的に所望の値に近くなる。
そして、このような結果により、被照射面10Aの各位置M1〜M5に対して、赤外成分の光が比較的少ないスペクトル分布の擬似太陽光が照射されていることが示される。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、上面6B及び下面6AのIRカットフィルタ26A、27Aの間に吸収部材21が配置されているため、IRカットフィルタ26A、27Aで裏面反射した裏面反射光A、Bは、擬似太陽光照射ボックス6に設けられた吸収部材21に吸収され、被照射面10Aに照射される事が無く、被照射面10Aの全体に、所望のスペクトル分布の擬似太陽光を均一に照射することができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、吸収部材21は、ランプ22、23からの光の照射角度θ、φを避けて配置されているので、被照射体10及び反射面8への光を遮ることが無く、これにより、被照射面10Aの照度分布が均一に維持される。また、吸収部材21は、その先端21Aをランプ22、23に当接しない程度の近傍まで側面20A、20Bから延出させて配置されているので、IRカットフィルタ26A、27Aで裏面反射した裏面反射光A、Bを十分に遮蔽及び吸収することができる。
【0028】
ところで、一般に、多層蒸着膜が形成された光学フィルタは、光の入射角度が垂直入射した場合に所望の分光透過特性が得られるものの、斜入射した場合には、分光透過特性が短波長側にシフトし、赤外波長領域を透過する傾向があり、この傾向は、光学フィルタへの入射角度が垂直入射から離れるほど(斜入射の度合いが大きくなるほど)顕著になることが従来から知られている(例えば、実開平6−15003号公報)。
【0029】
このため、例えば図10の概念図に示すような構成の擬似太陽光照射ボックス106においては、擬似太陽光のスペクトル分布が所望のスペクトル分布から大きくずれてしまう。詳述すると、この図の擬似太陽光照射ボックス106においては、被照射面100Aに対して1枚の光学フィルタ126を略平行に対向配置し、また、反射面108に対しても1枚の光学フィルタ127を略平行に対向配置して構成されている。
この構成においては、ランプ122から被照射面10A又は反射面8の中央に向う光Pに対して縁部に向う光Q(裏面反射光を含む)ほど光学フィルタ126、127への斜入射の度合いが大きくなる。したがって、この構成の擬似太陽光照射ボックス106においては、縁部に向う光Qほど赤外波長領域の光量が透過され易くなり、被照射面10A及び反射面8では、縁部側での擬似太陽光のスペクトル分布が所望のスペクトル分布から大きくずれてしまう、という問題がある。特に、被照射面10Aが広くなるほど、被照射面10A又は反射面8の中央に向う光Pの方向と縁部に向う光Qの方向との成す角度が大きくなるため(光学フィルタ126、127への斜入射の度合いが大きくなるため)、この問題は顕著になる。
【0030】
そこで本実施形態においては、被照射体10の被照射面10Aを、擬似太陽光照射ボックス6(ランプ22、23)を中心として左右の2つの領域に等分割し、擬似太陽光照射ボックス6の上面6Bには、各領域に向う光ごとにIRカットフィルタ26Aを設け、さらに、各IRカットフィルタ26Aに垂直入射した光の透過光が、照射対象とする領域の略中央を照射するように各IRカットフィルタ26Aを設けている。
【0031】
より具体的には、図4に示すように、上面6Bには、被照射面10A上の左半分の領域X1(図5)を照射するための左半分のIRカットフィルタ26Aと、右半分の領域を照射するための右半分のIRカットフィルタ26Aとが設けられており、例えば、左半分のIRカットフィルタ26Aにおいては、図5に示すように、ランプ22、23から垂直入射する光の透過光Dが左半分の領域X1の中央である位置M3付近を照射する姿勢で配置されている。
【0032】
すなわち、ランプ22、23から垂直入射する光の透過光Dの照射角度θaは、図5に示すように、ランプ22、23の中心から被照射面10Aまでの距離Lと、被照射面10Aの左半分の領域X1の横幅Z1とに基づいて、照射角度θa=Arctan(Z1/(2L))として規定される。したがって、この照射角度θaに対して直交するように上記IRカットフィルタ26Aが水平面に対して角度α(=θa)だけ傾けた姿勢で配置されることで、ランプ22、23から垂直入射する光の透過光Dが左半分の領域X1の略中央である位置M3を照射するようになる。
【0033】
本実施の形態では、ランプ22、23の中心から被照射面10Aまでの距離Lが比較的小さいため、図5に示すように、照射角度θaが上記照射角度θの約半分(θ/2)に比較的近い値となり、この照射角度(θ/2)の光線がIRカットフィルタ26Aに垂直入射するように設計している。具体的には、本実施形態の擬似太陽光照射装置1は、領域X1の全体を照射する照射角度θが45度となるよう構成されており、照射角度22.5度(=θ/2)の光線がIRカットフィルタ26Aに垂直入射するように設計している。
これと同様に、右半分のIRカットフィルタ26Aも、垂直入射した光が被照射面10A上の右半分の略中央を照射するように設けられている。
【0034】
このようにIRカットフィルタ26Aを配置することで、例えば、被照射面10A上の左半分の領域X1においては、中央の位置M3に向う光Dに対し、縁部分(位置M1、M5)には、ランプ22、23からIRカットフィルタ26Aに斜入射した光の透過光が照射されるものの、垂直入射した光の透過光Dが例えば位置M1を照射するような従来の構成に比べ、縁部分に向う光とフィルタへの垂直入射の光の透過光Dとが成す角度を約半分にすることができ、IRカットフィルタ26Aを透過する際の透過分光特性のずれを抑制することができる。
これにより、被照射面10Aにおいて、縁部である位置M1、M5に照射される擬似太陽光のスペクトル分布のずれが抑制され、被照射面10A全体に対し、略同じスペクトル分布の擬似太陽光を照射することができる。
【0035】
また、図4及び図5に示すように、反射面8に対向する下面6Aにおいても、反射面8上の左半分の領域を照射するための左半分のIRカットフィルタ27Aと、右半分の領域を照射するための右半分のIRカットフィルタ27Aとが設けられ、各IRカットフィルタ27Aは、ランプ22、23から垂直入射する光の透過光Dが、照射対象とする領域(反射面8の片方)の略中央を照射するように設けられている。
すなわち、各IRカットフィルタ27Aの照射角度φに対して、照射角度(φ/2)の光線がIRカットフィルタ27Aに垂直入射するように、これらのIRカットフィルタ27Aが配置角度β(=φa)だけ傾けた姿勢で配置される。そして、本実施形態では、反射面8上の半分の領域を照射する照射角度φが66.8度となるよう構成されており、照射角度33.4度(=φ/2)の光線がIRカットフィルタ26Aに垂直入射するように設計している。
これにより、反射面8においても、縁部に照射される擬似太陽光のスペクトル分布のずれが抑制される。
【0036】
図8は、擬似太陽光照射ボックス6の上面6B及び下面6Aのそれぞれに、1枚のIRカットフィルタ26A、27Aを、被照射面10A又は反射面8と平行に配置した場合に、被照射面10Aの各位置M1〜M5で得られるスペクトル分布を示す図である。これに対して、図9は、擬似太陽光照射ボックス6の上面6B及び下面6Aのそれぞれに、複数(例えば、2枚)のIRカットフィルタ26A、27Aを設け、照射対象とする領域の略中央をIRカットフィルタ26A、27Aに垂直入射した光の透過光Dが照射するようにIRカットフィルタ26A、27Aの各々を設けた場合に、被照射面10Aの各位置M1〜M5で得られるスペクトル分布を示す図である。
なお、図8及び図9は、横軸に波長の長さを、縦軸に波長550nmにおける光量を1とした場合の光量の割合を示している。
【0037】
図8に示すように、擬似太陽光照射ボックス6の上面6B及び下面6Aのそれぞれに1枚のIRカットフィルタ26A、27Aを配置しただけの構成の場合、赤外域の750nm付近の波長を含む範囲Jにおいて、位置M1〜M5の各々での光量にばらつきが生じている。これに対して、図9に示すように、本実施形態の構成の擬似太陽光照射ボックス6の場合、範囲Jにおいて、位置M1〜M5の各々で光量のばらつき(スペクトル分布のばらつき)が小さくなっている。
これにより、IRカットフィルタ26Aへの入射角度の違いにより生じる透過分光特性のずれの影響が抑制され、被照射面10A全体を所望のスペクトル分布の光で照射されていることが示される。
【0038】
このように、本実施形態によれば、被照射面10Aを複数の領域(本実施形態では左右の領域)に分け、擬似太陽光照射ボックス6の上面6Bには、それぞれの領域ごとにIRカットフィルタ26Aを設けると共に、これらのIRカットフィルタ26Aの各々を、ランプ22、23から垂直入射する光の透過光Dが各領域の略中央を照射する構成としたため、各領域において、その中央部と縁部との間でのスペクトル分布のずれが抑制され、被照射面10A全体を略同じスペクトル分布の光で照射することができる。
【0039】
さらに、被照射面10Aを複数の領域に分け、それぞれの領域ごとにIRカットフィルタ26Aを設ける構成としているため、被照射面10Aが大面積化した場合でも、それに合わせて複数の領域を設定し、それぞれに対応するIRカットフィルタ26Aを設ければ良いため、フィルタ設計が容易となる。
【0040】
これに加え、本実施形態によれば、反射面8に対しても、複数の領域(本実施形態では左右の領域)に分け、擬似太陽光照射ボックス6の下面6Aに、それぞれの領域ごとにIRカットフィルタ27Aを設けると共に、これらのIRカットフィルタ27Aの各々を、ランプ22、23から垂直入射する光の透過光Dが各領域の略中央を照射する構成としたため、反射面8全体を略同じスペクトル分布の光で照射することができる。
この結果、擬似太陽光照射ボックス6の上面6Bからの直射光による照度むらに応じて、反射面8の配光を制御することで、被照射面10A全体を略同じスペクトル分布の光で、なおかつ、照度むらを抑えて照射することができる。
【0041】
但し、上記実施の形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
【0042】
例えば、本実施の形態では、被照射面10Aを2つの領域に分け、各領域ごとにIRカットフィルタ26A、27Aが設けられているが、これに限らず、被照射面10Aを3つ以上の領域に分け、それぞれに対応するIRカットフィルタを設けても良い。この場合、各IRカットフィルタは、該IRカットフィルタに垂直入射する光の透過光が照射対象とする領域の略中央をそれぞれ照射するように設けられる。
【符号の説明】
【0043】
1 擬似太陽光照射装置
6 擬似太陽光照射ボックス
6A 下面
6B 上面
8 反射面
10 被照射体
10A 被照射面
21 吸収部材
22、23 ランプ(光源)
26、27 フィルタ
26A、27A IRカットフィルタ(光学フィルタ)
26B、27B IRカットフィルタ保持具
30 反射板
A、B 裏面反射光
M3 位置(略中央)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を収容し、前記光源の光をスペクトル調整して擬似太陽光を得る光学フィルタを放射面に設けた擬似太陽光照射ボックスを有し、前記擬似太陽光照射ボックスの放射面に対向させて被照射体の被照射面を配置した擬似太陽光照射装置において、
前記擬似太陽光照射ボックスの放射面には、複数の前記光学フィルタを、それぞれが前記被照射面上の領域に前記擬似太陽光を照射するように設け、
前記光学フィルタのそれぞれを、前記光源から前記光学フィルタに垂直入射した光の透過光が照射対象とする領域の略中央を照射するように設けたことを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の擬似太陽光照射装置において、
前記擬似太陽光照射ボックスの上面及び下面の各々に前記放射面を形成し、各放射面に前記光学フィルタを設け、
前記擬似太陽光照射ボックスの上面の放射面に対向させて前記被照射体の被照射面を配置し、前記下面の放射面に対向させて反射面を配置し、前記被照射体の被照射面に、前記上面の放射面から放射される直接光、及び前記反射面で反射された反射光を照射する構成とし、
前記擬似太陽光照射ボックスの上面の放射面には、複数の前記光学フィルタを、それぞれが前記被照射面上の領域に前記擬似太陽光を照射するように設け、
前記下面の放射面には、複数の前記光学フィルタを、それぞれが前記反射面上の領域に前記擬似太陽光を照射するように設け、
前記上面及び下面の光学フィルタのそれぞれを、前記光源から前記光学フィルタに垂直入射した光の透過光が照射対象とする領域の略中央を照射するように設けたことを特徴とする擬似太陽光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−225937(P2012−225937A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171800(P2012−171800)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2008−116604(P2008−116604)の分割
【原出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】