説明

支柱

【課題】支柱本体の下部に流れ込んだ雨水等を滞留させずに下方に排水することができ、また支柱本体の下端を隠すようにした支柱を提供する。
【解決手段】設置面に取付けられるベース部4と、上方に向けて立設される筒状部5とを備えた支柱ホルダー2の筒状部5に、支柱本体1の下部が外嵌されて固定ボルトB2を介して筒状部5に固定された支柱において、ベース部4の上面に筒状部5の外周に沿ってリング状の溝部44を設け、支柱本体1の下端をベース部4の溝部44に挿入し、更に溝部44に溜まった水をベース部4の下方に排水させる水抜き孔55を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、工場、公園等の敷地境界部や隣地境界部に沿って取付けられるフェンスや柵等に関し、特にこれらに用いられる支柱ホルダーに取付けられた支柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅、工場、公園等の敷地境界部や隣地境界部に沿って取付けられるフェンスにおいて、その支柱を設置する場合は、コンクリート基礎を用いて支柱下端部を埋設するものや、打ち込み装置等を用いて支柱を土面に直接打設するものや、コンクリート面等の上に支柱ホルダーを設置し、その上に支柱を立設させるもの等が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、建物構造体から立設したアンカーボルトを挿通するための開口を有する底板部と、該底板部の外周に端部が取付けられた側板部と、前記底板部から前記側板部より外方へと延びた係止突出部とを有し、支柱の筒状基部を前記側板部に被せ且つ前記手すりユニットの筒状基部の端縁を前記係止突出部により係止する様にしてなる手すりユニット取付け用アンカーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−49383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のような支柱立設装置において、一般的に、筒状基部の端縁は、切断等の加工時の僅かなバリや、めっき処理。塗装処理等による表面処理によって生じる僅かな液溜りによって、平坦でなく、不規則な突出部が生じた場合が多く、このような筒状基部の端縁を前記係止突出部により係止させると、筒状基部と係合突出部との僅かな隙間に雨水が入り込んで部分的な滞留が生じて錆が発生しやすくなり、また発生した錆が雨水と共に錆水として係止突出部の上部を越え、或いは係止突出部の端部から流れ出て、錆水の跡により景観性を損なう恐れがあり、また筒状基部の端縁が外観に露出すると美感に欠けることも懸念される。
【0006】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、支柱本体の下部に流れ込んだ雨水等を滞留させずに下方に排水することができ、また支柱本体の下端を隠すようにした支柱を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわちこの発明に係る支柱は、設置面に取付けられるベース部と、ベース部から上方に向けて立設される筒状部とを備えた支柱ホルダーの前記筒状部に、支柱本体の下部が外嵌されて固定ボルトを介して前記筒状部に固定された支柱であって、前記ベース部の上面には、筒状部の外周に沿ってリング状の溝部が設けられ、前記支柱本体の下端が、前記ベース部の溝部に挿入されると共に、溝部に溜まった水をベース部の下方に排水させる水抜き孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る支柱は、前記構成に加えて、ベース部には上下に貫通する貫通孔が設けられ、筒状部の下端が、ベース部の下面より上方の位置で該貫通孔の側壁に接合され、かつ前記筒状部の周壁に水抜き孔が形成され、溝部に溜まった水を前記水抜き孔から貫通孔を通ってベース部の下方に排水させるようになされたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記支柱本体の下端は、前記ベース部の溝部に挿入されてベース部の上面より下方に配置されると共に、溝部に溜まった水をベース部の下方に排水させる水抜き孔が形成されているので、雨水等が支柱本体の端縁付近に滞留しても、それはリング状の溝部に溜まることとなるが、溝部で滞留することなく、水抜き孔を経てベース部の下方に排水される
【0010】
また本発明において、ベース部には上下に貫通する貫通孔が設けられ、筒状部の下端が、ベース部の下面より上方の位置で該貫通孔の側壁に接合され、かつ前記筒状部の周壁に水抜き孔が形成され、溝部に溜まった水を前記水抜き孔から貫通孔を通ってベース部の下方に排水させるようになされていれば、筒状部の下端をベース部の下面より突出させないので、設置面に設置する際に、傾き等の不具合が生じることがなく、またリング状の溝部に滞留した雨水等を前記水抜き孔から貫通孔を通ってベース部の下方に確実に排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る支柱を用いて設置されたフェンスの一形態を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の支柱において用いられた支柱ホルダーの説明図である。
【図4】図3のA−A断面における、一部省略の拡大断面図である。
【図5】図1の支柱本体及び支柱ホルダー付近の分解説明図である。
【図6】図1の支柱ホルダーに支柱本体を取付けた状態を示す分解説明図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】図6のC−C断面図である。
【図9】図7の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0013】
図1−2において、1は支柱本体、2は支柱本体1が固定される支柱ホルダーであって、支柱Pは、支柱本体1と支柱ホルダー2とから主に構成され、設置面上に固定される。
【0014】
支柱本体1は、一般には強度的に安定しておりコストの安い丸パイプ状の鋼管が用いられるが、支柱ホルダー2で固定できる形態であれば多角形状、丸パイプ状の鋼管でもよい。またステンレス合金やアルミニウム合金等の他の金属を用いたものでもよい。かかる支柱Pは、本形態では、設置面に適宜間隔をおいて設けられており、そして支柱Pの間に格子状のパネル3が連結金具31、中間金具32を介して架設されてフェンスFが形成されている。
【0015】
パネル3は、一般には、正面視矩形状の金属板や線材を格子状に接合した格子体からなるパネルが好適に用いられるが、パネル3の前後で敷地境界部等を明示して、その境界部を容易に乗り越えて侵入できないものであればよい。
【0016】
すなわち、パネル3は、本形態では、多数の縦線材33と横線材34とが格子状に配置され、その交差部で溶接により接合されたものである。縦線材33及び横線材34は、一般には強度的に安定しておりコストの安い鋼線が好適に用いられるが、ステンレス合金やアルミニウム合金などの他の金属からなる線材を用いてもよい。また縦線材33及び横線材34の耐食性や耐候性を高めるために金属めっきや塗装を施してもよい。
【0017】
図3―4は、支柱ホルダーの説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、図4は(a)のA−A断面図である。支柱ホルダー2は、設置面上に固定されるベース部4と、ベース部4から上方に向けて立設された筒状部5とを有している。まずベース部4は、一般には、鋼板を平面視矩形状に加工したものであって、本形態では、ベース部4の隅部に、上下に貫通するアンカー孔41が形成されている。また筒状部5は、ベース部4から上方に向けて立設されたものであって、本形態では、ベース部4の中央部に立設されている。そしてこの筒状部5に支柱本体1が外嵌される。
【0018】
支柱ホルダー2について、更に詳しく説明すると、本形態では、ベース部4の中央部に上下方向に貫通する貫通孔42が設けられ、前記貫通孔42に筒状部5が挿入され、筒状部5の下端51が貫通孔42の側壁に溶接によって接合されている。これにより、筒状部5の内部に浸入した雨水等は貫通孔42を通ってベース部4の下方に流すことができる。また筒状部5の下端縁52は、ベース部4の下面より上方に位置しており、筒状部5を貫通孔42内で溶接によって接合しても、その筒状部5の下端51や溶接部43がベース部4の下面より下方に突出しないことから、ベース部4を設置面に取付ける際に、前記筒状部5の下端51や溶接部43によってベース部4が傾いて設置されることを防ぐことができる。
【0019】
本形態では、支柱ホルダー2は、ベース部4に設けた貫通孔42に筒状部5を挿入して溶接によって接合したものであるが、例えば図示しないが、ベース部4の上面に上方に向けて開口する有底孔を設けて、その有底孔に筒状部5の下端面を接合したものでもよい。また支柱ホルダー2は鋼板からなるベース部4と鋼管からなる筒状部5との二部材を溶接によって接合して形成されているが、他の金属を用いてもよく、更にアルミニウム合金や鋳鉄を用いて、支柱ホルダー2を一体的に形成してもよい。
【0020】
次に、支柱Pについて、図5−9を用いて更に詳しく説明する。まず、支柱ホルダー2のベース部4は、設置面に設けられた雌ねじアンカー(図示せず)に対して、スプリングワッシャS1、ワッシャW1を介してアンカー孔41に固定ボルトB1を挿通させて雌ねじアンカーに締結させて、設置面上に固定される。本形態では、アンカー孔41はベース部4の四隅に一個ずつ設けられているが、ベース部4を設置面に強固に固定できればよく、アンカー孔41の形成数は特に限定されるものではない。またアンカー孔41は、左右に横長の平面視小判型に形成されており、雌ねじアンカーの僅かな配置ずれ等は、アンカー孔41によって吸収することができる。
【0021】
固定ボルトB1は、設置面に設けられた雌ねじアンカーに締結されるものであるが、例えば、全ねじボルト等のアンカーボルトを設置面に打設し、該アンカーボルトがベース部4のアンカー孔41を通って、ワッシャ、スプリングワッシャを介して、ナットに締結する形態でもよく、また設置面にドリル等で孔を開け、接着剤入りのカプセルを孔に挿入し、全ねじボルト等のアンカーボルトを打ち込んでカプセル中の接着剤と化学反応させて固化する、いわゆるケミカルアンカーを用いてもよい。
【0022】
ベース部4には、筒状部5の外周の周りに沿って下方に向けて設けられた平面視リング状の溝部44が設けられており、図5―6に示すように、支柱本体1の下部を筒状部5に外嵌した際、支柱本体1の下端11が前記溝部44内に挿入される。すなわち、溝部44の幅である溝部44を形成している両側壁間の寸法R1は、支柱本体1の下端11の肉厚R2より幅広となされている。すなわち、支柱本体1の下部を設置現場で切断加工した際に生じるバリ等や、支柱本体1を予め工場等で加工した場合のめっきや塗装処理よる液溜まり等による僅かな突出部が生じた場合であっても、支柱本体1の下部を溝部44内に挿入することができるようになされている。
【0023】
そして、これにより、支柱本体1の下端11の端縁12は、ベース部4の上面より下方に位置すると共に、溝部44内に挿入されているので、筒状部5に対する支柱本体1のがたつきが抑えられ、また溝部44内に隠れて外部からは下端11が目視されにくく、意匠性を高めることができる。
【0024】
支柱本体1は、図7−9に示すように、本形態では固定ボルトB2を介して筒状部5に固定される。具体的には、筒状部5の周壁53には、前記固定ボルトB2が螺着されるねじ孔54が横設されている。一方、支柱本体1には、筒状部5に外嵌した際に、前記ねじ孔54と同じ高さ位置に透孔13が設けられている。透孔13は、ねじ孔54のねじ部の外径より大径であるので、支柱本体1を筒状部5に外嵌した際に、支柱本体1の高さ方向の僅かな位置ずれ等は、透孔13によって吸収することができる。
【0025】
筒状部5のねじ孔54は、本形態では、同じ高さに相対向して二個一対設けられており、この一対のねじ孔54が上下方向に間隔をおいて二対設けられている。また支柱本体1の透孔13も、前記ねじ孔54の位置に合わせて、上下に二対設けられている。これにより、支柱本体1の垂直方向の傾きの調整と、支柱本体1の円周方向の位置調整をすることができる。
【0026】
また本形態では、筒状部5の周壁53が、溝部44の一方の側壁を兼ねている。すなわち、ベース部4の貫通孔42は、その上部が径大となるように該貫通孔42の上部側壁が切り欠かれて平面視リング状の中空部を有する段部45が形成されて、段付き孔となされると共に、筒状部5の下端51が前記貫通孔42に挿入されて溶接で接合されることによって、筒状部5の周壁53と段部45とによって、前記溝部44が形成されている。更に、筒状部5の周壁53には、下端縁52から上方に向かって切溝が切り欠かれて、溝部44から貫通孔42に通じる水抜き孔55が前記切溝により形成されている。
【0027】
ここで、支柱本体1の下部を筒状部5に外挿して、支柱本体1の下端11を溝部44に挿入した際、前述の通り、前記下端11の端縁12は必ずしも平滑ではないことから、溝部44の底面に接した箇所と接していない箇所とが生じる。そのため、雨水等が支柱本体1の外周面に沿って溝部44内に流れ込んだ場合や、支柱本体1に設けられた透孔13等の孔から雨水等が浸入した場合でも、前記支柱本体1の端縁12と溝部44の底部との間に生じた隙間を通って、筒状部5の水抜き孔55から貫通孔42を通ってベース部の下方に排出されて、溝部42内に雨水等が長期滞留することなく支柱本体11やベース部4、筒状部5等の錆の発生を抑えることができる。また錆が発生した場合であっても、その錆水がベース部4の上面に溢れにくく、錆水の流れ跡等が生じて外観が悪くなることを防ぐことができる。
【0028】
筒状部5の水抜き孔55の下端は、ベース部4の上面より下方であれば、溝部44に溜まった雨水等を貫通孔42に流すことができるが、溝部44の底面と同じ位置かそれより低い位置となるように設けておけば、溝部44に流れ込んだ雨水等を貫通孔42に流して、溝部44内に滞留しにくくなるので更に好ましい。また水抜き孔55は、少なくとも一個あればよいが、本形態のように筒状部5の相対向する位置に二個一対設けておけば、ベース部4を設置した際に、設置面の不陸等によって僅かに傾きが生じ、ベース部4も僅かに傾いて取付けられた場合でも、溝部44内に浸入した雨水は、一方の水抜き孔55から排出されて溝部44内に滞留しにくくなるので好ましい。また水抜き孔55を三個以上設けて、雨水等の排水性を高める構成としてもよいが、水抜き孔55の設置数を増やし過ぎると、ベース部4と筒状部5との接合強度が低下するおそれがあるので、必要な接合強度を有する範囲で、水抜き孔55の設置することができる。
【0029】
支柱本体1は、本形態では、丸パイプ状であるので、支柱本体1が外嵌される支柱ホルダー2の筒状部5も丸パイプ形状であり、支柱本体1の下端11が挿入されるベース部4の溝部44も平面視円形であるが、図示しないが、支柱本体1として角パイプ状であれば、筒状部も角パイプ状とし、更に溝部も平面視四角形状としたものを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、支柱ホルダーに支柱本体を強固に固定することができるので、支柱間に格子パネルや板状パネル等を取付けるフェンスの支柱や、そのフェンスで用いられる門扉の門柱のための支柱ホルダーとしてのみではなく、柵や車両止め等に用いられる支柱や支柱間にビーム材を架設した柵のための支柱ホルダーとしても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 支柱本体
11 下端
12 端縁
13 透孔
2 支柱ホルダー
3 パネル
31 連結金具
32 中間金具
33 縦線材
34 横線材
4 ベース部
41 アンカー孔
42 貫通孔
43 溶接部
44 溝部
45 段部
5 筒状体
51 下端
52 下端縁
53 周壁
54 ねじ孔
55 水抜き孔
B1、B2 固定ボルト
F フェンス
P 支柱
R1 側壁間の寸法
R2 肉厚
S1 スプリングワッシャ
W1 ワッシャ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に取付けられるベース部と、ベース部から上方に向けて立設される筒状部とを備えた支柱ホルダーの前記筒状部に、支柱本体の下部が外嵌されて固定ボルトを介して前記筒状部に固定された支柱であって、前記ベース部の上面には、筒状部の外周に沿ってリング状の溝部が設けられ、前記支柱本体の下端が、前記ベース部の溝部に挿入されると共に、溝部に溜まった水をベース部の下方に排水させる水抜き孔が形成されていることを特徴とする支柱。
【請求項2】
ベース部には上下に貫通する貫通孔が設けられ、筒状部の下端が、ベース部の下面より上方の位置で該貫通孔の側壁に接合され、かつ前記筒状部の周壁に水抜き孔が形成され、溝部に溜まった水を前記水抜き孔から貫通孔を通ってベース部の下方に排水させるようになされたことを特徴とする請求項1に記載の支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113056(P2013−113056A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262541(P2011−262541)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】