説明

改良型ソールを有するシューズ

【課題】ユーザーの足または脚における負傷の発現を著しく低減し又はなくすことができ、かつ快適に使用することができるスポーツシューズを提供すること。
【解決手段】ソール(2)の接地面(8)は第1サポート部分(31)を有し、第1サポート部分は、側方縁(6)から内側縁(7)に至るまで前端(5)に沿って延びる第1区分(32)と、第1区分から後端(4)の方向に、かつ側方縁から中足骨ゾーン(23)内の内側縁の方向に延びる第2区分(33)とを備える。接地面は、第1サポート部分の第1区分(32)から後端(4)の方向に、かつ第1サポート部分の第2区分(33)から中足骨ゾーン(23)内の内側縁の方向に延びる第2サポート部分(34)を有する。第1サポート部分の平均摩擦係数は第2サポート部分の平均摩擦係数よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツシューズに関し、特にラケット競技を行うためのスポーツシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
これらのシューズは、テニス、バドミントン、スカッシュ等の分野、その他の分野で使用することができる。
【0003】
このタイプのシューズは、アウトソールと、通常は柔軟性を有するアッパー部とを備え、アッパー部は通常は低い。地面との接触のためにアウトソールが設けてある。
【0004】
既知のように、アウトソールの長さは後端から前端までであり、幅は側方縁と内側縁との間の距離であり、高さは、地面を踏みつけるようになされている接地面と、アッパー部に連結するようになされている結合面との間の距離である。
【0005】
アウトソールは地面と協動するシューズの部分を成すので、多数の負荷が存在するところである。アウトソールは特に、ユーザーから発せられる推進力、または地面から発せられる反力を伝達する。接触面をこれらの負荷に適合させる必要があるのはこの理由による。これらの負荷は特に、地面および行うスポーツに応じて性質が変化する強い応力である。応力は、非常に変化する速度および加速度または減速度で行われるユーザーの運動によって生じる。これらの運動は、始動、制動、スリップ、着地または再着地、さらには突然の方向転換に由来するものである。
【0006】
たとえばあらゆる方向に短い距離をきわめて頻繁に移動しなければならないテニスの分野においてこれが該当する。これらの移動によりユーザーは高い頻度で繰り返し加速および減速を行うことが必要になる。したがって接地面は強い応力を多数回受ける。接地面は加速時のみならず特に制動時、摩擦による摩耗応力を受けるようになる。実際、特にボールを打つ態勢をとる際に、ユーザーは特にクレーコートでは地面上でアウトソールをスリップさせる。
【0007】
先行技術では、シューズ、特にアウトソールに加えられる応力が勘案されている。
【0008】
特に、接地面が高い摩耗強度を有する必要があるテニスの分野ではこのことが言える。こうしてシューズの寿命は長くなり、ユーザーは強い加速を行ったり、強い制動を行ったりすることができる。これによりユーザーはすばやく移動したり、ボールを打つ際に所望の位置に正確につくことが可能になる。
【0009】
既知のテニスシューズは全体としてはユーザーのニーズに応えてはいるものの、いくつかの問題を有している。
【0010】
まず相当数のユーザーが特にシューズを通じて伝わってくる応力の強さを原因とする負傷、外傷を受ける。
【0011】
この現象と同時に、特に合成材、コンクリート、さらにはタールを材質とするハードコートにおいては、足および脚の快適性を満足させることができない。一方、クレーコートではより柔軟な地面が実現される。したがって従来のシューズはクレーコートには適しているものの、硬い材質のコートにはあまり適してはいないと言える。
【0012】
また、全体的構造に関するシューズの劣化、すなわち、とりわけ端部においてアッパー部が時々ソール部から外れるという現象も見られた。
【0013】
またユーザーのエネルギー効率が最適ではないこともわかった。ユーザーはゲームの速さに合わせるために多くのエネルギーを消費しなければならない。実際、ラケットおよびボールの分野で実現された進歩により競技速度が上昇した。その結果、ユーザーはよりすばやく移動しなければならなくなるが、従来のシューズではそれを実現することが困難である。改良が提案されたのはこのような理由による。
【0014】
たとえば文献FR2912038号によれば、シューズのソールの接地面、すなわち地面を踏みつけるようになされている面は2つのサポート部分を有する。そのうちの1つは内側縁のグリップを促進し、他方は側方縁のスリップ運動を促進する。実際には、横方向における接地面のグリップを変更することである。
【0015】
文献FR2912038号によるシューズは、摩耗およびグリップの問題を解消することを主なねらいとしている。このシューズは従来のシューズの使用時に見られたいくつかの有害な影響を低減はしたものの、著しい進歩をもたらしてはいない。
【0016】
これに対し本発明は一般的にラケット競技またはその他の競技を行うためのシューズを改良することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】フランス国特許第2912038号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、ユーザーの足または脚における負傷の発現を著しく低減し、さらにはなくすことである。
【0019】
本発明の目的はまた、シューズの使用をより快適にすることである。特にテニスシューズに関してはハードコートにおいてクレーコートの快適さを再現することも目的とする。
【0020】
本発明の別の目的は、シューズの不意の劣化を著しく低減、さらには防止することである。本発明は特にアウトソールからのアッパー部のあらゆる外れを防止することを目的とする。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、ユーザーが新しい材料に適合し、特にその競技速度を上げることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
これを行うため、本発明は、特にラケット競技を行うためのスポーツシューズにおいて、アウトソールとアッパー部を備えるシューズであって、アウトソールの長さが後端から前端までであり、幅が側方縁と内側縁との間の距離であり、高さが接地面と結合面との間の距離であり、アウトソールが、後端から前端までの間に、リアゾーン、センターゾーン、中足骨ゾーン、さらにフロントゾーンを有するシューズを提供する。
【0023】
本発明によるシューズは、接地面が第1サポート部分を有し、第1サポート部分が、側方縁からフロントゾーン内の内側縁に至るまで前端に沿って延在する第1区分と、第1区分から後端の方向に、かつ側方縁から中足骨ゾーン内の内側縁の方向に延在する第2区分とを備え、接地面がまた、第1サポート部分の第1区分から後端の方向に、かつ第1サポート部分の第2区分から中足骨ゾーン内の内側縁の方向に延在する第2サポート部分を有し、第1サポート部分の平均摩擦係数が第2サポート部分の平均摩擦係数よりも大きいことを特徴とする。
【0024】
第1サポート部分はユーザーのつま先および足中骨の側部において延在する。加速に伴う応力の大部分が伝達されるのは足のこの部位である。実際、ユーザーは自身の反応においてより敏速になろうとして踵を上げる。したがって、制動時に純粋にサポートを得るために足がより平坦になる時に第2サポート部分は効果的である。実際には、第1および第2サポート部分は相互補完的である。第1サポート部分のグリップがより高いことにより、アウトソールには加速するための応力伝達性が付与される。第2サポート部分のグリップが低いこと、さらにはそのスリップ性能により、地面上でシューズがより平坦になっている時にはソールはスリップすることができる。そのような状況は移動の最後の制動時またはスリップ時に発生する。第2サポート部分がスリップできることからユーザーは制動を予測することができる。このことはつまり、ユーザーがより早めに制動してスリップするということであり、このスリップは従来のシューズを使用した場合に発生するスリップよりも明らかに長くなる。本発明のシューズを使用した場合、ユーザーは制動に伴うスリップの間、安定した状況にある。それはある意味、自身の姿勢を制御しながら進むスキーヤーのようなものである。結果としてユーザーは制動中にボールを打つことができる。ユーザーは、先行技術によるシューズを使用した場合に発生していた状況とは異なり、打球する際に停止するのを待つ必要がなくなる。その結果ユーザーは競技速度を上げることができ、そのことは1つのアドバンテージとなる。
【0025】
この種のシューズを使用した場合、ユーザーはハードコート上でクレーコートの感触および効果を得る。ユーザーが受ける負傷は少なくなる。
【0026】
またスリップ時間が長いと制動時間が増加することもわかる。したがって足または脚に加えられる負荷は少なくなるが、それはより長い時間で散逸されるからである。このことから得られる長所は、ユーザーの足または脚における負傷が著しく低減されること、さらには皆無になることである。
【0027】
また本発明によりシューズの使用がより快適になることがわかる。事実、スリップ性能により、シューズは、通常はクレーコートで得られる感覚、つまりクレーコートで得られる快適性をハードコートにおいて提供できるようになる。
【0028】
さらに、有利には、シューズの不意の劣化が軽減され、さらには皆無になることが認められる。具体的には、応力が低減されるのでアッパー部はアウトソールに固定された状態を保つ。次の長所はシューズが軽量であることである。事実、特に横方向の力に対するシューズの強度を確保するためにシューズを補強する必要、すなわちシューズを重量化する必要はなくなった。
【0029】
最後に、先行技術によって提供されたシューズは本発明により全体的に改良された。
【0030】
本発明のその他の特徴および長所は、非限定的実施形態による本発明の実施方法を図示する添付の図面を参照して行う以下の説明により、より良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に関して提案する第1の実施形態によるシューズのアッパー側の前方斜視図である。
【図2】図1のシューズの下面図である。
【図3】図2のIII−IIIによる断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態についての図3と同様の断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態についての図3と同様の断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態についての図3と同様の断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態についての図3と同様の断面図である。
【図8】本発明の第6の実施形態についての図3と同様の断面図である。
【図9】本発明の第7の実施形態についての図2と同様の下面図である。
【図10】本発明の第8の実施形態についての図2と同様の下面図である。
【図11】本発明の第9の実施形態についての図2と同様の下面図である。
【図12】図11のXII−XIIによる断面図である。
【図13】本発明の第10の実施形態についての図2と同様の下面図である。
【図14】本発明の第11の実施形態についての図2と同様の下面図である。
【図15】本発明の第12の実施形態についての図2と同様の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に記述する本願発明の実施形態は、テニスなどのラケット競技を行うためのシューズに関する。しかしながら、本発明は、同じスリップのニーズが求められる限り、他の分野に適用することができる。
【0033】
以下、図1乃至図3を使用して第1の実施形態について記載する。
【0034】
ユーザーの足を収納するためにテニスシューズが用意される。
【0035】
既知のようにシューズ1はアウトソール2およびアッパー部3を備える。シューズ1のアウトソールのサイズとしては、その長さは後端すなわちヒール4から前端すなわちトゥ5までであり、幅は側方縁6と内側縁7との間の距離である。その結果、当然ながら、アウトソール2の長さはヒール4からトゥ5までとなり、幅は側方縁6と内側縁7との間の距離となることが認められる。またソール2の高さすなわち厚さは、接地面8と結合面9との間の距離であり、後者は場合によっては緩衝層46を伴う。接地面8は地面に触れるように構成されていることは言うまでもない。一方、結合面9は、たとえば接着によりソール2をシューズの残りの部分に固定するのに用いられる。
【0036】
図示するように、アッパー部3は、上部を除く足を取り囲むようになっている下部10を備える。しかしながら、下部も上部も含むアッパー部を設けることも可能である。なおシューズ1はアッパー部3の可逆締め付け具12を具備することに留意されたい。この締め付け具12は当業者にはきわめてよく知られているものであるため、ここでは詳細に記述することはしない。
【0037】
シューズについての説明を容易にする目的から、アウトソール2は連続する4つのゾーンを有することを詳細情報として記しておく。ソール2は、後端4から前端5までの間に、後端4から足の踵付近に至るリアゾーン21と、そこからアーチ付近に至るセンターゾーン22と、そこから中足骨付近に至る中足骨ゾーン23と、そこからつま先付近に至るフロントゾーン24とを有する。
【0038】
本発明によれば、特に図2に示すように、接地面8は第1サポート部分31を有し、この第1サポート部分31は、側方縁(6)からフロントゾーン(24)内の内側縁(7)に至るまで前端(5)に沿って所定の幅で延在する第1区分32と、第1区分32から後端4の方向に、かつ側方縁6から中足骨ゾーン23内の内側縁7の方向に所定の幅で延在する第2区分33を備えている。 接地面8はまた、第1サポート部分31の第1区分32から後端4の方向に、かつ第1サポート部分31の第2区分33から中足骨ゾーン23内の内側縁7の方向に延在する第2サポート部分34を有する。足の略先端側に位置する第1サポート部分31の平均摩擦係数は、該第1サポート部分よりも足の略土踏まず側に位置する第2サポート部分34の平均摩擦係数よりも大きい。
【0039】
この配置により、接地面8は、つま先ならびに中足骨の側方部分において十分に高い摩擦係数を有することができる。なお比較までに、接地面8の摩擦係数は中足骨の内側縁部分34において著しく低い。これにより、加速するのに必要な高いグリップならびに制動するための滑り性がアウトソール2に付与される。事実、加速の場合には第1サポート部分31に強い力がかかり、制動の場合には第2サポート部分34に強い力がかかることがわかった。
【0040】
第1の実施形態によれば、接地面8の第2サポート部分34は、第1サポート部分31の第2区分33から内側縁7まで延在するが、それに限定されるものではない。接地面8の摩擦係数が低くなるところで中足骨の内側縁部分が着地するのはこの理由による。それにより、足が前部で平坦接地する際のクレーコート地面上でのシューズのスリップが容易になる。毎回のスリップ毎にエネルギーが散逸され、それによりユーザーの脚内の応力が低減される。
【0041】
第1サポート部分31および第2サポート部分34は両者でフロントゾーン24および中足骨ゾーン23を覆うものとされる。実際、これら2つのゾーンは、動きの際に最も変形する足の部分に対向した態様で延在する。踏ん張りの主要部分を制御するのは足のこの部分である。2つのサポート部分31、34をフロントゾーン24および中足骨ゾーン23内に配置したことにより、特にテニスコートがハードコートを有する場合におけるテニスコート上の移動に関連する加速および制動の制御が促進される。
【0042】
たとえば、第1サポート部分31の第1区分32は、前端5から後端4の方向にシューズの長さの10%乃至25%の距離で延在するようになっている。これによりソール2はつま先の付近において地面によくグリップすることとなり、把持力を有することとなる。
【0043】
また、第1サポート部分31の第2区分33はシューズの幅の10%乃至35%の距離で横方向に延在する。その結果、少なくとも片方の足については前方の踏ん張りが横方向に偏移するので、ユーザーは加速する際またはスマッシュを打つ際のグリップを得ることができる。
【0044】
グリップ力がより高い第1サポート部分31について同等の摩擦係数を有するゴムまたは材料を使用し、第2サポート部分34については、摩擦係数が低いポリウレタン、ポリアミド、ポリエチレン、EVAなどの材料を使用することにより良好な結果が得られた。この第2サポート部分34については、この部分のグリップ(把持力)を少なくする、すなわちスリップ(すべり力)を増加させるようになされた他の材料を加えたゴムであってもよい。たとえば微小ガラス球をゴムに加えることができる。
【0045】
第1サポート部分31を構成する材料の摩擦係数を0.5乃至2にし、第2サポート部分34を構成する材料の摩擦係数を0.2乃至0.7にすることにより良好な結果が得られた。値の範囲は一部分しか重なっていないが、2つのサポート部分31、34それぞれについての摩擦係数の選択は、最も高い摩擦係数を最も低い摩擦係数で割った値が2.5乃至10になるような比率であるが、それに限定されるものではない。たとえば第2サポート部分34の摩擦係数が0.2であるとすると、第1サポート部分31の摩擦係数は0.5乃至2である。さらに、第2サポート部分34の摩擦係数が0.7であるとすると、第1サポート部分31の摩擦係数は1.75乃至2である。これらの値は例として示したものであり、その他の組み合せも可能である。
【0046】
それぞれの部分の摩擦係数の組み合せはシューズのアウトソールの全体としての包括的摩擦係数に影響を及ぼす。この包括的摩擦係数はたとえば規格EN13287に準拠して測定することができるが、この規格はその一般的な原理において、たとえばセラミックまたはステンレスで構成された平坦な基準表面にシューズを置くことから成る。したがってアウトソールの接地面8は、測定を行うための基準面と接触している。上で示した摩擦係数の組み合せは大部分の場合、0.45乃至0.8の包括的摩擦係数の値に相当する。
【0047】
図3においては、第1サポート部分31は第2サポート部分34と同じ高さであることがわかる。これらの部分は双方とも同一面内で延びている。それにより、少なくともフロントゾーン24および中足骨ゾーン23内において、より一様な表面が接地面8に付与される。その結果、グリップ状態からスリップ状態への移行が漸進的に行われる。このことはユーザーの疲労の低減に寄与する。
【0048】
更に、図2に示された実施例においては、接地面8が、リアゾーン21内の側方縁6に沿って延在する第3サポート部分41を含み、接地面8が、第3サポート部分41からリアゾーン21内の内側縁7の方向に延在する第4サポート部分42を含み、第3サポート部分41の平均摩擦係数が第4サポート部分42の平均摩擦係数よりも大きくされている。これにより、リアゾーン21のレベル、すなわち足の踵付近、におけるソール2のグリップおよびスリップを制御することが可能になる。実際にはこれは前部で得られた応力を補完することである。そこでもやはり、リアゾーン21内のグリップは側方縁6側で行われ、それによりたとえばスマッシュ時には踵が安定する。
【0049】
同じく第1の実施形態によれば、第4サポート部分42は第3サポート部分41から内側縁7まで延在する。したがってこれらのサポート部分42、41は全体でソール2のリアゾーン21を包含する。したがってユーザーにとっては踵におけるグリップまたはスリップを制御することがより容易になる。
【0050】
たとえば第3サポート部分41はシューズの幅の10%乃至45%の距離で横方向に延在する。この配置はハードコートにおける制動時の踵のスリップにとって好都合である。
【0051】
同じく第1の実施形態によれば、ソール2の接地面8のセンターゾーン22は凹面である。したがって、必然的にリアゾーン21だけか、中足骨ゾーン23およびフロントゾーン24が地面に触れるようになる。この配置はフロントサポートとリアサポートとを明白に分けるものである。
【0052】
サポート部分31、34、41、42のうちの少なくとも1つは合成樹脂材料の層で作製されてもよい。
【0053】
特に図3に関して言えば、限定を意図するものではないが、各サポート部分すなわちサポート層31、34、41、42は、側方縁6や内側縁7に延びる。その結果、ソール2のグリップまたはスリップ効果は接地面8においてのみ有効である。
【0054】
他の実施形態を図4乃至図15により以下に示す。便宜上の理由から、第1の実施形態と共通する要素は同じ符号で示してある。主として、第1の実施形態と相違する部分について述べる。
【0055】
まず、図4を用いて示したのは第2の実施形態である。実際にはこれは図3と同様な横断面図である。ここでは第2サポート部分34は第1サポート部分31より突き出ている。この実施形態により制動時のスリップ力が増大される。この突出量は0.1mm乃至3mmで良好な結果が得られ、0.3mm乃至0.8mmの間の突出量の値がより好適である。
【0056】
一方、図5の第3の実施形態の場合、第1サポート部分31は第2サポート部分34より突き出ている。この場合、依然としてスリップは顕著であるが、上述した実施形態で得られるスリップと比較すれば軽減されている。
【0057】
図6を参照する第4の実施形態に関しては、第2サポート部分34は内側縁7におけるアッパー部3側に延びる。これにより、ユーザーが脚を曲げた時には有効となることがある効果であるスリップ効果が内側縁7上で得られる。
【0058】
次に第5の実施形態についての図7を参照すると、側方縁6におけるアッパー部3側に延びるのは第1サポート部分31である。これにより、たとえばスマッシュを行う、あるいは加速を開始する際に有効な効果であるグリップ効果が側方縁6上で得られる。
【0059】
図8による第6の実施形態は、内側縁7上にスリップ効果を集中させ、側方縁6上にグリップ効果を集中させる構成を示している。このために、第2サポート部分34は内側縁7におけるアッパー部3側に延び、第1サポート部分31は側方縁6におけるアッパー部3側に延びる。
【0060】
図9に記載の第7の実施形態の場合、第1サポート部分31は接地面8の全周にわたって延在し、前端5、側方縁6、後端4および内側縁7に沿ってアーチゾーンまで延びることもまた認められる。また第2サポート部分34は、第1サポート部分31で形成される部位内のソールのセンターゾーン内を長手方向に延びる。この構造は、平坦な足で地面上で行うスリップに適する。そのような構造をもつシューズは百戦錬磨のプレーヤーに好適である。ここでは第2サポート部分34は、図2で規定しているリアゾーン21、センターゾーン22、中足骨ゾーン23およびフロントゾーン24の4つのゾーン内を延び、リアゾーン21の長さの60%以上の値だけ、リアゾーン21内を長さ方向に延びる。フロント及び中足骨ゾーンにおける第1サポート部分31により、より速くサポートを得て、スリップの終了時に再び始動することができる。第2の実施形態にならって、第1サポート部分31に対し第2サポート部分34を突出させる配置を実現することができるが、それは必須ではない。
【0061】
図10に記載の第8の実施形態の場合、第1サポート部分31は、第1区分32から後端4の方向に延びかつ内側縁7から側方縁6の方向に延びる第3区分38を備える。シューズはまた、側方縁6およびリアゾーン21内の後端4に沿って延びる第3サポート部分41を備え、第2サポート部分34は第1サポート部分31から第3サポート部分41まで長手方向に延在する。この配置により図9に記載の実施形態と比較してスリップ効果が若干増大する。
【0062】
次に図11および図12により第9の実施形態を示す。この場合、アウトソール2は、接地面8を画定する摩耗層45、ならびに結合面9から摩耗層45まで延在する合成樹脂材層46を備え、該合成樹脂材層46は該摩耗層を横断するようにして延びている。第2サポート部分34内では摩耗層45は切り欠かれ、したがって摩耗層は合成樹脂材層46が露出する切り欠き部47を有する。摩耗層45はゴムまたはそれと同等の任意の材料で作製されるが、それに限定されるものではない。一方、合成樹脂材層は、たとえばエチレンビニルアセテートフォームまたはそれと同等の任意の材料で作製される。たとえば、合成樹脂材料層46は摩耗層の切り欠き部または穴47に充填されるようになっている。それにより接地面8に均質な表面が付与される。該充填された部分は磨耗層45と比較して摩擦係数が低いゾーンを画定する。
【0063】
また、接地面8はリアゾーン21内の側方縁6に沿って延びる第3サポート部分41を有する。接地面8は第3サポート部分41からリアゾーン21内の内側縁7の方向に延びる第4サポート部分42を有する。また第4サポート部分42内では摩耗層45は切り抜き加工されており、第3サポート部分41にはより低い摩擦係数が付与される。シューズの後部における製造方法は前部と同じである。
【0064】
図13により第10の実施形態を示す。ここにおいても同様に、第1サポート部分31は接地面8の全周にわたって延在し、前端5、側方縁6、後端4および内側縁7に沿い、親指の関節部位において面積増大部分31aを有する。第2サポート部分34は、第1サポート部分31で形成される部分の内側を長手方向に延在する。この実施形態に特有なことは、第2サポート部分34がリアゾーン21の長さの60%以下の値の長さでリアゾーン21内を長手方向に延びていることである。これにより踵のスリップ性が低下する。他方、第2サポート部分34は、中足骨ゾーン23とフロントゾーン24の境界において、親指の関節のゾーン31aのところで横方向の幅の減少部51を有する。これにより中足骨におけるスリップ性能が低下し、それにより、スリップの終了時に、より優れたサポート力の回復を確保することができる。この実施形態によるシューズは競技レベルがきわめて高い競技者に好適である。
【0065】
図14により第11の実施形態を示す。そこでも同じく第1サポート部分31は、前端5、側方縁6、後端4および内側縁7に沿って接地面8の全周にわたって延在している。第2サポート部分34は、第1サポート部分31で形成される部分の内側を長手方向に延在する。この実施形態に特有なことは、第2サポート部分34がリアゾーン21の長さの15%以下の値だけリアゾーン21内を長手方向に延びていることである。これにより踵のスリップ性が若干多く低下する。この実施形態によるシューズは中級レベルの競技者に好適である。
【0066】
図15により第12の実施形態を示す。そこでも同じく第1サポート部分31は、前端5、側方縁6、後端4および内側縁7に沿って接地面8の全周にわたって延在する。この実施形態に特有なことは、第2サポート部分34が分割されていることである。この第2サポート部分34は、フロントゾーン24内に画成されているフロント部分55、及び中足骨ゾーン23内に画成されている後部部分56を備える。フロント部分55および後部部分56は、第1サポート部分31に位置するクロスブリッジ57により分割される。この実施形態によるシューズは、スリップ能をシューズの前半分に限定するので、上級レベルの競技者に好適である。
【0067】
いずれの場合も、本発明にかかるシューズは、当業者にとって既知の材料を用いて既知の製造手法により実現されるものである。
【0068】
もちろん本発明は、上記で説明した実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載した技術的範囲に入りうるあらゆる同等の技術を含むものである。
【0069】
尚、上記したサポート部分の形状は変えることができることに留意すべきである。
【0070】
第1サポート部分31と第2サポート部分34を構成する材料とは、それぞれ異なる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラケット競技を行うためのスポーツシューズ(1)であって、アウトソール(2)とアッパー部(3)を備え、前記アウトソール(2)は、後端(4)から前端(5)までの長さと、側方縁(6)と内側縁(7)との間の距離の幅と、接地面(8)と結合面(9)との間の距離の高さを有し、前記アウトソール(2)は、前記後端(4)から前記前端(5)までの間に、リアゾーン(21)、センターゾーン(22)、中足骨ゾーン(23)、及びフロントゾーン(24)を有し、
前記接地面(8)が第1サポート部分(31)を有し、前記第1サポート部分(31)は、前記側方縁(6)から前記フロントゾーン(24)内の前記内側縁(7)に至るまで前記前端(5)に沿って延在する第1区分(32)と、前記第1区分(32)から前記後端(4)の方向に、かつ前記側方縁(6)から前記中足骨ゾーン(23)内の前記内側縁(7)の方向に延在する第2区分(33)を備え、前記接地面(8)が、前記第1サポート部分(31)の前記第1区分(32)から前記後端(4)の方向に、かつ前記第1サポート部分(31)の前記第2区分(33)から前記中足骨ゾーン(23)内の前記内側縁(7)の方向に延在する第2サポート部分(34)を有し、前記第1サポート部分(31)の平均摩擦係数が前記第2サポート部分(34)の平均摩擦係数よりも大きいことを特徴とするシューズ(1)。
【請求項2】
前記第2サポート部分(34)が前記第1サポート部分(31)の前記第2区分(33)から前記内側縁(7)の方向に延びることを特徴とする、請求項1に記載のシューズ(1)。
【請求項3】
前記第1サポート部分(31)および前記第2サポート部分(34)が両者で前記フロントゾーン(24)および前記中足骨ゾーン(23)を覆うことを特徴とする、請求項1または2に記載のシューズ(1)。
【請求項4】
前記第1サポート部分(31)の前記第1区分(32)が、前記前端(5)から前記後端(4)の方向に前記シューズの長さの10%乃至25%の距離で延在していることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシューズ(1)。
【請求項5】
前記第1サポート部分(31)の前記第2区分(33)は前記シューズの幅の10%乃至35%の距離で横方向に延在することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシューズ(1)。
【請求項6】
前記第1サポート部分(31)が前記第2サポート部分(34)と同じ高さであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシューズ(1)。
【請求項7】
前記接地面(8)が、前記リアゾーン(21)内の前記側方縁(6)に沿って延在する第3サポート部分(41)を含み、前記接地面(8)が、前記第3サポート部分(41)から前記リアゾーン(21)内の前記内側縁(7)の方向に延在する第4サポート部分(42)を含み、前記第3サポート部分(41)の平均摩擦係数が前記第4サポート部分(42)の平均摩擦係数よりも大きいことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシューズ(1)。
【請求項8】
前記第4サポート部分(42)が前記第3サポート部分(41)から前記内側縁(7)まで延びることを特徴とする、請求項7に記載のシューズ(1)。
【請求項9】
前記第3サポート部分(41)が前記シューズの幅の10%乃至45%の距離で横方向に延在することを特徴とする、請求項7または8に記載のシューズ(1)。
【請求項10】
前記センターゾーン(22)において前記接地面(8)が凹面であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシューズ(1)。
【請求項11】
前記サポート部分(31、34、41、42)のうちの少なくとも1つが合成樹脂材の層で作製されることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のシューズ(1)。
【請求項12】
各サポート部分が、前記側方縁(6)または前記内側縁(7)に沿って延在していることを特徴とする、請求項11に記載のシューズ(1)。
【請求項13】
前記第2サポート部分(34)が前記第1サポート部分(31)に比べて突き出ていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシューズ(1)。
【請求項14】
前記第1サポート部分(31)が前記第2サポート部分(34)に比べて突き出ていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシューズ(1)。
【請求項15】
前記第2サポート部分(34)が前記内側縁(7)における前記アッパー部(3)側に延びていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシューズ(1)。
【請求項16】
前記第1サポート部分(31)が前記側方縁(6)における前記アッパー部(3)側に延びていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシューズ(1)。
【請求項17】
前記第1サポート部分(31)が、前記前端(5)、前記側方縁(6)、前記後端(4)および前記内側縁(7)に沿って前記接地面(8)のほぼ全周にわたって延び、前記第2サポート部分(34)が、前記第1サポート部分(31)で形成される部分の内側で長手方向に延在していることを特徴とする、請求項1に記載のシューズ(1)。
【請求項18】
前記第1サポート部分(31)が、前記第1区分(32)から前記後端(4)の方向に、かつ前記内側縁(7)から前記側方縁(6)の方向に延在する第3区分(38)を備え、前記側方縁(6)および前記リアゾーン(21)内の前記後端(4)に沿って延在する第3サポート部分(41)を更に備え、前記第2サポート部分(34)が前記第1サポート部分(31)から前記第3サポート部分(41)まで長手方向に延在することを特徴とする、請求項1に記載のシューズ(1)。
【請求項19】
前記アウトソール(2)が、前記接地面(8)を画定する摩耗層(45)と、前記結合面(9)から前記摩耗層まで延在しかつ前記摩耗層を横断するように延びている合成樹脂材層(46)を備え、前記第2サポート部分(34)内において前記摩耗層(45)の切欠き部(47)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のシューズ(1)。
【請求項20】
前記接地面(8)が前記リアゾーン(21)内の前記側方縁(6)に沿って延在する第3サポート部分(41)を有し、前記接地面(8)が前記第3サポート部分(41)から前記リアゾーン(21)内の前記内側縁(7)の方向に延在する第4サポート部分(42)を有し、前記第4サポート部分(42)内において前記摩耗層(45)の切欠き部(47)が設けられていることを特徴とする、請求項19に記載のシューズ(1)。
【請求項21】
前記第2サポート部分(34)が、前記リアゾーン(21)の長さの60%以下の値の長さで、前記リアゾーン(21)内を長手方向に延在することを特徴とする、請求項17に記載のシューズ(1)。
【請求項22】
前記第2サポート部分(34)が、前記中足骨ゾーン(23)と前記フロントゾーン(24)との境界において横方向の幅の減少部(51)を有することを特徴とする、請求項17または21に記載のシューズ(1)。
【請求項23】
前記第2サポート部分(34)が分割されていることを特徴とする、請求項17に記載のシューズ(1)。
【請求項24】
前記第2サポート部分(34)が、前記フロントゾーン(24)に画成されているフロント部分、及び前記中足骨ゾーン(23)に画成されている後部部分(56)を備えることを特徴とする、請求項23に記載のシューズ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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