説明

放射線汚染物の保管方法

【課題】簡易な構造で放射線を遮蔽することができる放射線汚染物の保管方法を提供する。
【解決手段】第1放射線汚染物46の外側を第1放射線汚染物46よりも放射線濃度が低い第2放射線汚染物48で囲む放射線汚染物の保管方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線汚染物を保管する放射線汚染物の保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線汚染された地域において再び人々が生活できるように、放射線汚染を受けた土砂、植物、汚泥等の放射線汚染物の除去を行う。除去されたこれらの放射線汚染物(以下、「除去物」とする)は、中間貯蔵施設や最終処分場において長期に保管されるが、これらの施設を建設して稼動させるまでには長い時間を要するので、その前段階として仮置き場に除去物を一時的に保管することが検討されている。
【0003】
放射線を遮蔽する技術として、コンクリートによって形成された放射線遮蔽構造が多く利用されている。例えば、特許文献1の放射線遮蔽構造は、対向する鋼板と、この鋼板の間に打設されたコンクリートとによって構成されている。
【0004】
しかし、このような放射線遮蔽構造により外周部を取り囲んで仮置き場を建設する場合、建設にかなりの手間が掛かってしまう。特に、仮置き場は一時的な保管施設なので、短時間での建設が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−317242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る事実を考慮し、簡易な構造で放射線を遮蔽することができる放射線汚染物の保管方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、第1放射線汚染物の外側を前記第1放射線汚染物よりも放射線濃度が低い第2放射線汚染物で囲む放射線汚染物の保管方法である。
【0008】
請求項1に記載の発明では、第1放射線汚染物から放射される放射線を第2放射線汚染物により遮蔽し、この放射線が第2放射線汚染物の外側へ漏洩することを抑制できる。よって、第1放射線汚染物の外側を第2放射線汚染物で囲むだけの簡易な構造で、第1放射線汚染物から放射される放射線を遮蔽できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記第1放射線汚染物の上方を前記第2放射線汚染物で覆っている。
【0010】
請求項2に記載の発明では、第1放射線汚染物から放射される放射線の一部である散乱線(スカイシャイン)を第2放射線汚染物が遮蔽し、この散乱線が第2放射線汚染物の外側へ漏洩することを抑制できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記第2放射線汚染物の外周を放射線遮蔽体で取り囲んでいる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、放射線遮蔽体によって、第2放射線汚染物から放射される放射線を遮蔽できる。また、第1放射線汚染物の外側を囲む第2放射線汚染物は、第1放射線汚染物よりも放射線濃度が低いので、第2放射線汚染物の外周を取り囲む放射線遮蔽体の構成を簡易化できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記第1放射線汚染物及び前記第2放射線汚染物は、収容体に詰め込んで積み重ねられ、前記放射線遮蔽体は、放射線で汚染されていない土壌が詰め込まれた収容体を積み重ねて構成されている。
【0014】
請求項4に記載の発明では、第1放射線汚染物及び第2放射線汚染物を収容体に詰め込むことにより、第1放射線汚染物及び第2放射線汚染物を容易に移動させることができ、また、風によって第1放射線汚染物及び第2放射線汚染物が飛散するのを防ぐことができる。
【0015】
また、放射線遮蔽体の形成にコンクリートを使用しないので、放射線遮蔽体を構築するコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記構成としたので、簡易な構造で放射線を遮蔽することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る保管施設を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る保管施設を示す正面断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る収容体の配置状況を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る収容体の配置手順を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る収容体の配置手順を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る収容体の配置方法の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る収容体の配置方法の変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る保管施設の変形例を示す正面断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る保管施設の変形例を示す正面断面図である。
【図10】本発明の実施例に係る数値シミュレーションのモデルを示す説明図である。
【図11】本発明の実施例に係る数値シミュレーションのモデルを示す説明図である。
【図12】本発明の実施例に係る除去物からの距離に対する散乱線線量を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る放射線汚染物の保管方法について説明する。
【0019】
図1の平面図には、本発明の実施形態に係る放射線汚染物の保管施設(以下、「保管施設」とする)10が示されている。保管施設10では、放射線汚染された地域(以下、「除染エリア」とする)から運び込まれた除去物を一時的に保管する。保管施設10で保管された除去物は、後に中間貯蔵施設や最終処分場に移送される。
【0020】
ここで、除去物とは、除染エリアにおいて再び人々が生活できるように除去された放射線汚染物であり、例えば、地盤表層を剥ぎ取った土壌や砂利等の土砂、コンクリートやアスファルト等の切削粉塵、側溝に堆積された汚泥、焼却灰等の塵埃、及び植物の枯葉、草類、表皮、幹、枝、根などが挙げられる。
【0021】
除去物は、除染エリア又は保管施設10内において、後に説明する収容体L、M、Hに詰め込まれた状態で、保管施設10に備えられた除去物保管ヤード12に保管される。除染エリアにおいて除去物を収容体L、M、Hに詰め込んだ場合には、除去物を詰め込んだ収容体L、M、Hをトラック等の搬送車両に積み込んで保管施設10に移送し、保管施設10において除去物を収容体L、M、Hに詰め込む場合には、除去物を積載したトラック等の搬送車両により除去物を保管施設10に移送する。
【0022】
保管施設10には、除去物保管ヤード12、放射線遮蔽体としての周壁14、土壌処理前仮置きヤード16、土壌処理ヤード18、焼却処理前仮置きヤード20、焼却処理ヤード22、駐車場24、管理棟26が備えられている。
【0023】
土壌処理ヤード18では、除去物として保管施設10に搬入された土壌を洗浄して、この土壌から放射性物質を取り除く。放射性物質が取り除かれた土壌は、除染エリアに戻される。焼却処理ヤード22では、植物の枯葉、草類、表皮、幹、枝、根等の可燃性を有する除去物を燃焼する。これにより、除去物の容量を小さくした状態で、除去物保管ヤード12に保管できるので、多くの量の除去物を除去物保管ヤード12に保管することができる。
【0024】
土壌処理前仮置きヤード16は、土壌処理ヤード18で処理する除去物を仮置きするためのヤードであり、焼却処理前仮置きヤード20は、焼却施設ヤード22で処理する除去物を仮置きするためのヤードである。
【0025】
除去物保管ヤード12では、本発明の放射線汚染物の保管方法により、除去物が保管されている。図1に示すように、除去物保管ヤード12は、3つの領域(低濃度除去物保管領域28、中濃度除去物保管領域30、高濃度除去物保管領域32)に区分けされている。平面視にて、高濃度除去物保管領域32は、除去物保管ヤード12の略中央部に配置されており、中濃度除去物保管領域30は、高濃度除去物保管領域32の外周全てを囲むように配置されており、低濃度除去物保管領域28は、中濃度除去物保管領域30の外周全てを囲むように配置されている。
【0026】
図1のA−A断面図である図2に示すように、地盤34の表層を50cmほど掘削した掘削地盤面36の上には、ゼオライト層38が形成されており、このゼオライト層38の上に、鉄筋コンクリートによって形成された床版40が設けられている。すなわち、床版40は、直接基礎を構成している。
【0027】
床版40の上面には、床版40の中央部から外周部に向かって低くなる1/150程度の排水勾配が形成されており、床版40の外周部には、床版40と一体となるように鉄筋コンクリートによって形成された遮水壁42が立てられている。遮水壁42の内壁面に隣接する床版40の上面には、排水溝44が形成されている。
【0028】
図2に示すように、正面視及び側面視にて(図2は、正面視した断面図)、高濃度除去物保管領域32は、床版40の略中央部に配置されており、中濃度除去物保管領域30は、高濃度除去物保管領域32の側方と上方とを囲むように配置されており、低濃度除去物保管領域28は、中濃度除去物保管領域30の側方と上方とを囲むように配置されている。
【0029】
図1、2に示すように、高濃度除去物保管領域32には、高濃度除去物46が詰め込まれた収容体Hが複数配置されている。収容体Hは、床版40の略中央部上面に設置された収容器52内に複数敷き並べられ積み重ねられて配置されている。
【0030】
収容器52は、鉄筋コンクリートによって形成された筒体を上下に複数積み上げることによって形成されている。最下部に位置する筒体には、この筒体の下面開口部を塞ぐように底部材がこの筒体と一体に設けられており、最上部に位置する筒体の上面の開口部は、コンクリート板(特に、軽量化が図られたコンクリート板)、鉄板、鉛板等により構成された蓋部材54によって取り外し可能に塞がれている。
【0031】
中濃度除去物保管領域30には、中濃度除去物48が詰め込まれた収容体Mが、床版40及び蓋部材54の上に複数敷き並べられ積み重ねられて配置されている(図2には、蓋部材54の上に一段分の収容体Mが敷き並べられている例が描かれている)。
【0032】
低濃度除去物保管領域28には、低濃度除去物50が詰め込まれた収容体Lが、床版40、及び蓋部材54の上に載置された収容体Mの上に、複数敷き並べられ積み重ねられて配置されている。
【0033】
収容体L、M、Hは、高濃度除去物46、中濃度除去物48、及び低濃度除去物50を塊状に収容できるものであればよい。例えば、収容体L、M、Hを、ポリエチレンやポリプロピレン等の丈夫な化学繊維で織られたシートによって形成された袋状の包材としてもよいし、ドラム缶や他の容器としてもよい。
【0034】
ここで、低濃度除去物50は、8000Bq/kg以下の放射線濃度を有する除去物であり、中濃度除去物48は、8000Bq/kgよりも大きく100000Bq/kg以下の放射線濃度を有する除去物であり、高濃度除去物46は、100000Bq/kgよりも大きい放射線濃度を有する除去物である。
【0035】
図1に示すように、周壁14は、平面視にて除去物保管ヤード12(低濃度除去物保管領域28、中濃度除去物保管領域30、及び高濃度除去物保管領域32)の外周を取り囲むようにして配置されている。また、図2に示すように、周壁14は、放射線で汚染されていない土壌(以下。「非汚染土壌」とする)56が詰め込まれた収容体Nを複数敷き並べ積み重ねて構成されている。
【0036】
収容体Nは、土壌を塊状に収容できるものであればよく、収容体L、M、Hと同様の包材、ドラム缶、容器等を用いることができる。また、収容体Nに詰め込む非汚染土壌56は、床版40を設置するために掘削した地盤34の表層を用いれば、周壁14を形成する材料の有効利用が図れるので好ましい。放射線によって汚染されていない土壌は、略5cmよりも深い位置の地盤34から得ることができる。
【0037】
図2に示すように、周壁14の高さは、中濃度除去物保管領域30及び高濃度除去物保管領域32の高さよりも高くなっている。図1に示すように、周壁14は、周壁14の周方向に対して一部が途切れており、この途切れている部分が保管施設10の出入口58になっている。出入口58には、保管施設10に対する、人、車両等の出入りを規制する開閉式ゲート60が設けられている。
【0038】
これまで説明したように、本発明の放射線汚染物の保管方法は、高濃度除去物46を第1放射線汚染物とした場合に、第1放射線汚染物としての高濃度除去物46の外側を、第1放射線汚染物よりも放射線濃度が低い第2放射線汚染物としての中濃度除去物48で囲み、中濃度除去物48の外周を放射線遮蔽体としての周壁14で取り囲むとともに、高濃度除去物46の上方を中濃度除去物48で覆う構成になっている。
【0039】
また、本発明の放射線汚染物の保管方法は、中濃度除去物48を第1放射線汚染物とした場合に、第1放射線汚染物としての中濃度除去物48の外側を、第1放射線汚染物よりも放射線濃度が低い第2放射線汚染物としての低濃度除去物50で囲み、低濃度除去物50の外周を放射線遮蔽体としての周壁14で取り囲むとともに、中濃度除去物48の上方を低濃度除去物50で覆う構成になっている。
【0040】
保管施設10に備えられる各ヤードの大きさは、低濃度除去物50、中濃度除去物48、及び高濃度除去物46の保管量や、これらの保管量の割合等を考慮して適宜決めればよい。例えば、平面寸法において、保管施設10の外形を200m×200m、除去物保管ヤード12の外形を80m×120m、高濃度除去物保管領域32の外形を20m×16m、中濃度除去物保管領域30の外形を90m×50m、低濃度除去物保管領域28の外形を120m×80mとしてもよい。
【0041】
図2に示すように、収容体Lは、上部が山形状になるように積み重ねられ、この上部を遮水シート62によって覆うことにより屋根を形成している。
【0042】
図2に示すように、収容体L、M、Hを除去物保管ヤード12に搬入し配置している際に発生した雨水や、収容体L、M、Hから流れ出た湧水等の地盤34中への漏洩は、床版40及び遮水壁42により防がれ、床版40の有する排水勾配によって、排水溝44に集水される。そして、集水された水は、放射性物質の除去処理が適切に行われた後に排水される。
【0043】
図1に示すように、除去物保管ヤード12には測定孔64が設けられている。測定孔64は、排水溝44に溜まった排水の放射線濃度を測定し、収容体L、M、Hから放射性物質が漏洩していないかを監視する。周壁14付近外側の地盤34中には、測定孔66が設けられている。測定孔66は、測定孔66の下部に溜まった地下水の放射線濃度を測定し、除去物保管ヤード12から近隣の地盤34へ放射性物質が漏洩していないかを監視する。なお、測定孔64、66の配置や数は、適宜決めればよい。
【0044】
また、周壁14付近外側では、放射線の空気線量を測定し、保管施設10からこの保管施設10の外側へ放射線が漏洩していないか監視する。
【0045】
収容体L、M、Hを除去物保管ヤード12に配置する手順は、保管する除去物の量や種類に応じて適宜決めればよい。収容体L、M、Hを除去物保管ヤード12に配置する手順の一例を紹介すると、まず、図1、3に示すように、地盤34の表層を掘削してゼオライト層38及び床版40を形成し、ラフタークレーン68の走行及び設置が可能な仮設道路70を除去物保管ヤード12に設けた後に、地盤34上に、非汚染土壌56が詰め込まれた収容体Nを複数敷き並べ積み重ねて、周壁14を構築する。収容体L、M、H、Nは、仮設道路70に設置されたラフタークレーン68によって移設する。
【0046】
次に、図4(a)、(b)に示すように、床版40の上に、一段目の収容体L、M、Hを敷き並べて配置する。
【0047】
次に、図4(c)に示すように、下段の収容体L、M、Hの上に一段分の収容体L、M、Hを敷き並べて積み重ねる作業を、収容体L、M、Hが所定の高さになるまで繰り返す。
【0048】
次に、図4(d)に示すように、収容器52の上面開口部を蓋部材54によって塞いだ後に、収容体Lの上に一段分の収容体Lを敷き並べて積み重ね、収容体M及び蓋部材54の上に一段分の収容体Mを敷き並べて積み重ねる。
【0049】
次に、収容体L、Mが所定の高さになるまで、下段の収容体L、Mの上に一段分の収容体L、Mを敷き並べて積み重ねる作業を繰り返す。
【0050】
次に、図4(e)に示すように、収容体Mの上に一段分の収容体Lを敷き並べて積み重ねる。
【0051】
次に、収容体Lが所定の高さになるまで、収容体Lの上に一段分の収容体Lを敷き並べて積み重ねる作業を繰り返す。
【0052】
このように、図4に示す収容体L、M、Hの配置手順では、一段分の収容体L、M、Hを複数敷き並べ積み重ねる作業を繰り返すことによって、除去物保管ヤード12に収容体L、M、Hを配置する。
【0053】
収容体L、M、Hを除去物保管ヤード12に配置する手順の他の一例を紹介すると、まず、図1、3に示すように、地盤34の表層を掘削してゼオライト層38及び床版40を形成し、ラフタークレーン68の走行及び設置が可能な仮設道路70を除去物保管ヤード12に設けた後に、地盤34上に、非汚染土壌56が詰め込まれた収容体Nを複数敷き並べ積み重ねて、周壁14を構築する。収容体L、M、H、Nは、仮設道路70に設置されたラフタークレーン68によって移設する。
【0054】
次に、図5(a)、(b)に示すように、平面視にて中濃度除去物保管領域30の外側に配置する全ての収容体Lを床版40の上に敷き並べ積み重ねて配置する。
【0055】
次に、図5(c)に示すように、平面視にて高濃度除去物保管領域32の外側に配置する全ての収容体Mを床版40の上に敷き並べ積み重ねて配置する。
【0056】
次に、図5(d)に示すように、収容器52内に収容体Hを敷き並べ積み重ねて配置した後に、収容器52の上面開口部を蓋部材54によって塞ぐ。
【0057】
次に、図5(e)に示すように、残りの収容体M、Lを敷き並べ積み重ねて配置する。
【0058】
なお、図4、5で示した手順において、配置作業の途中段階での収容体H、M(高濃度除去物46、中濃度除去物48)からの散乱線(スカイシャイン)の影響が問題になる場合には、収容器52の上面開口部を蓋部材54によって塞いだり、収容体Mの上方を放射線遮蔽性を有するシート材等によって養生したりすることを適宜行う。
【0059】
次に、本発明の実施形態に係る放射線汚染物の保管方法の作用及び効果について説明する。
【0060】
本発明の実施形態の放射線汚染物の保管方法では、図2に示すように、高濃度除去物保管領域32に複数配置された収容体Hに詰め込まれた高濃度除去物46から放射される放射線を、中濃度除去物保管領域30に複数配置された収容体Mに詰め込まれた中濃度除去物48によって形成された遮蔽層と、低濃度除去物保管領域28に複数配置された収容体Lに詰め込まれた低濃度除去物50によって形成された遮蔽層とが遮蔽し、この放射線が除去物保管ヤード12の外側へ漏洩することを抑制できる。
【0061】
また、中濃度除去物保管領域30に複数配置された収容体Mに詰め込まれた中濃度除去物48から放射される放射線を、低濃度除去物保管領域28に複数配置された収容体Lに詰め込まれた低濃度除去物50によって形成された遮蔽層が遮蔽し、この放射線が除去物保管ヤード12の外側へ漏洩することを抑制できる。
【0062】
よって、高濃度除去物46が詰め込まれた収容体Hが複数配置された高濃度除去物保管領域32の外側を、中濃度除去物48が詰め込まれた収容体Mが複数配置された中濃度除去物保管領域30で囲み、中濃度除去物48が詰め込まれた収容体Mが複数配置された中濃度除去物保管領域30の外側を、低濃度除去物50が詰め込まれた収容体Lが複数配置された低濃度除去物保管領域28で囲むだけの簡易な構造で、高濃度除去物保管領域32に複数配置された収容体Hに詰め込まれた高濃度除去物46、及び中濃度除去物保管領域30に複数配置された収容体Mに詰め込まれた中濃度除去物48から放射される放射線を遮蔽できる。また、保管施設10内の放射線量を低く抑えることができる。
【0063】
また、周壁14によって、低濃度除去物保管領域28に複数配置された収容体Lに詰め込まれた低濃度除去物50から、周壁14の外側へ放射線が漏洩するのを防ぐことができる。特に、高濃度除去物保管領域32及び中濃度除去物保管領域30の外側に配置される低濃度除去物保管領域28に複数配置された収容体Lに詰め込まれた低濃度除去物50は、高濃度除去物保管領域32に複数配置された収容体Hに詰め込まれた高濃度除去物46や、中濃度除去物保管領域30に複数配置された収容体Mに詰め込まれた中濃度除去物48よりも放射線濃度が低いので、低濃度除去物保管領域28の外周を取り囲む放射線遮蔽体としての周壁14の構成を簡易化できる。
【0064】
これらにより、高濃度除去物保管領域32に複数配置された収容体Hに詰め込まれた高濃度除去物46、中濃度除去物保管領域30に複数配置された収容体Mに詰め込まれた中濃度除去物48、及び低濃度除去物保管領域28に複数配置された収容体Lに詰め込まれた低濃度除去物50から放射される放射線を簡易な構造で遮蔽することができる。
【0065】
また、高濃度除去物保管領域32に複数配置された収容体Hに詰め込まれた高濃度除去物46から放射される放射線の一部である散乱線(スカイシャイン)を、中濃度除去物保管領域30に複数配置された収容体Mに詰め込まれた中濃度除去物48によって形成され高濃度除去物保管領域32の上方を覆う遮蔽層と、低濃度除去物保管領域28に複数配置された収容体Lに詰め込まれた低濃度除去物50によって形成され中濃度除去物保管領域30の上方を覆う遮蔽層とが遮蔽し、この散乱線(スカイシャイン)が除去物保管ヤード12の外側へ漏洩することを抑制できる。
【0066】
また、中濃度除去物保管領域30に複数配置された収容体Mに詰め込まれた中濃度除去物48から放射される放射線の一部である散乱線(スカイシャイン)を、低濃度除去物保管領域28に複数配置された収容体Lに詰め込まれた低濃度除去物50によって形成され中濃度除去物保管領域30の上方を覆う遮蔽層が遮蔽し、この散乱線(スカイシャイン)が除去物保管ヤード12の外側へ漏洩することを抑制できる。
【0067】
また、低濃度除去物50、中濃度除去物48、及び高濃度除去物46を収容体L、M、Hに詰め込むことにより、これらの除去物をラフタークレーンやフォークリフト等の揚重機や、トラック等の搬送車両等によって、容易に移動させることができる。また、風によってこれらの除去物が飛散するのを防ぐことができる。
【0068】
また、放射線遮蔽体としての周壁14の形成にコンクリートを使用しないので、放射線遮蔽体を構築するコストを低減することができる。
【0069】
また、放射線濃度の高い、高濃度除去物46や中濃度除去物48を詰め込んだ収容体H、Mが、除去物保管ヤード12の内側に配置されているので、除去物保管ヤード12の外周部から収容体H、Mまでの距離を長くすることができる。これによって、距離を離すことにより放射線のエネルギーを弱める効果が期待できるので、除去物保管ヤード12の外周部から保管施設10の外周部までの距離を長くしなくても、収容体H、Mに詰め込まれた高濃度除去物46や中濃度除去物48から放射される放射線のエネルギーを弱めて保管施設10の外側へ放射線が漏洩することを防ぐことができる。すなわち、保管施設10の敷地を小さくすることができる。
【0070】
また、放射線遮蔽性を有する収容器52内に、放射線濃度の高い高濃度除去物46を配置することによって、高濃度除去物46から放射される放射線の遮蔽効果を高めることができる。
【0071】
また、図2に示すように、床版40は、地盤34の表層を掘削した地耐力のある掘削地盤面36の上に設けられているので、床版40が不同沈下することによりこの床版40に亀裂が生じることを防ぐことができる。また、仮に、床版40に亀裂が生じてしまった場合においても、この亀裂から地盤34へ進入しようとする湧水等に含まれる放射性物質をゼオライト層38によって吸収して、地盤34中へ漏洩するのを防ぐことができる。
【0072】
また、保管施設10は、保管された放射線汚染物(除去物)から放射される放射線が保管施設10の外側へ漏洩することを防ぐとともに、放射線汚染物(除去物)をまとめて管理することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0074】
なお、本発明の実施形態では、除去物保管ヤード12を3つの領域(低濃度除去物保管領域28、中濃度除去物保管領域30、高濃度除去物保管領域32)に区分けし、高濃度除去物保管領域32の外側を囲むように中濃度除去物保管領域30を配置し、中濃度除去物保管領域30の外側を囲むように低濃度除去物保管領域28を配置することにより、高濃度除去物46の外側を中濃度除去物48で囲むとともに、中濃度除去物48の外側を低濃度除去物50で囲む例を示したが、ある放射線濃度を有する除去物の外側をこの除去物よりも低い放射線濃度を有する除去物で囲む構成を有していれば、除去物保管ヤード12をいくつの領域に区分けしてもよい。
【0075】
例えば、除去物保管ヤード12を2つの領域(低濃度除去物保管領域、高濃度除去物保管領域)に区分けし、高濃度除去物保管領域の外側を囲むように低濃度除去物保管領域を配置するようにしてもよいし、除去物保管ヤード12を4つの領域(第1〜第4濃度除去物保管領域)に区分けし、第1濃度除去物保管領域の外側を囲むように第2濃度除去物保管領域を配置し、第2濃度除去物保管領域の外側を囲むように第3濃度除去物保管領域を配置し、第3濃度除去物保管領域の外側を囲むように第4濃度除去物保管領域を配置するようにしてもよい。
【0076】
また、本発明の実施形態では、除去物を放射線濃度に基づいて3つのグループ(高濃度除去物46、中濃度除去物48、低濃度除去物50)に仕分けた例を示したが、除去物はいくつのグループに仕分けてもよいし、各グループの放射線濃度の値の範囲をどのように設定してもよい。
【0077】
また、この仕分けは、除去物を除染エリアで除去してから除去物保管ヤード10に配置するまでの間の、どのタイミングで行ってもよい。例えば、除染エリアで収容体H、M、Lに除去物を詰め込んで、この収容体H、M、Lに詰め込まれた除去物の放射線濃度を除染エリア又は保管施設10内で測定してグループを判定するようにしてもよいし、保管施設10内で収容体H、M、Lに除去物を詰め込んだときに、この収容体H、M、Lに詰め込まれた除去物の放射線濃度を測定してグループを判定するようにしてもよい。
【0078】
また、放射線濃度の測定は、収容体H、M、Lに詰め込む前に行ってもよい。例えば、除去物を除去する前に、この除去する場所の放射線濃度を測定してグループ判定を行い、この場所から除去された除去物をこのグループとするようにしてもよい。
【0079】
また、本発明の実施形態では、収容体H、M、Lを複数敷き並べて積み重ねることによって除去物保管ヤード12に収容体H、M、Lを配置する例を示したが、これらの収容体H、M、Lは、収容体H、M、L同士を接触させて配置してもよいし、隙間を空けて配置してもよい。また、中濃度除去物保管領域30と低濃度除去物保管領域28との間にコンクリート等によって形成された仕切り壁を設けるようにしてもよい。
【0080】
また、本発明の実施形態では、鉄筋コンクリートによって形成された収容器52内に、高濃度除去物46が詰め込まれた収容体Hを配置した例を示したが、収容器52内に配置された除去物から放射される放射線を遮蔽できれば、収容器52はどのような材料によって形成してもよい。例えば、収容器52を、鉄、鉛、タングステン等により形成してもよい。また、低濃度除去物保管領域28に配置される収容体Lや、中濃度除去物保管領域30に配置される収容体Mを、収容器52と同様の構成の収容器内に配置するようにしてもよいし、収容器52と同様の放射線遮蔽性を有する材料で形成した壁で、低濃度除去物保管領域28や中濃度除去物保管領域30の側方や上方を取り囲むようにしてもよい。
【0081】
また、本発明の実施形態では、正面視及び側面視にて、中濃度除去物48を高濃度除去物46の上方に配置し、低濃度除去物50を中濃度除去物48の上方に配置した例を示したが、高濃度除去物46や中濃度除去物48から放射される散乱線(スカイシャイン)が保管施設10の外側へ漏洩しなければ、高濃度除去物46の上方に中濃度除去物48を配置したり、中濃度除去物48の上方に低濃度除去物50を配置したりしなくてもよい。
【0082】
高濃度除去物46や中濃度除去物48から放射される散乱線(スカイシャイン)が保管施設10の外側へ漏洩することが考えられる場合には、高濃度除去物46の上方に中濃度除去物48を配置したり、中濃度除去物48の上方に低濃度除去物50を配置したりする以外に、例えば、図6、7に示すような方法を用いてもよい。
【0083】
図6の正面断面図では、収容体H、M、L内に詰め込まれた除去物72の上面に、この除去物を覆うように厚さ20cmほど非汚染土壌74(放射線に汚染されていない土壌)を詰め込んでいる。これにより、非汚染土壌74による略水平の遮蔽層が複数形成される。
【0084】
図7の正面断面図では、除去物72が詰め込まれた収容体H、M、Lの上面に、鉄板や鉛板等からなる放射線遮蔽板76を配置し、この放射線遮蔽板76の上面に次の段の収容体H、M、Lを載置している。これにより、放射線遮蔽板76による略水平の遮蔽層が複数形成される。
【0085】
また、屋根を構成する遮水シート62(図2を参照のこと)の上面を、非汚染土壌74(放射線に汚染されていない土壌)で覆ったり、屋根面を鉛、鉄、タングステン、コンクリート(特に、軽量化を図ったコンクリート)で形成したりすれば、高濃度除去物46や中濃度除去物48から放射される散乱線(スカイシャイン)の遮蔽性を向上させることができる。
【0086】
また、本発明の実施形態では、放射線で汚染されていない土壌が詰め込まれた収容体Nを複数敷き並べ積み重ねることによって周壁14を構成した例を示したが、周壁14は、この周壁14の外側へ放射線が漏洩することを防ぐことができれば、どのような材料によって形成してもよい。地盤34の掘削土を用いれば、掘削土の有効利用を図ることができる。
【0087】
また、低濃度除去物保管領域28に複数配置された収容体Lに詰め込まれた低濃度除去物50から、保管施設10の外側へ放射線が漏洩しなければ、周壁14は設けなくてもよい。例えば、放射線のエネルギーが弱まって保管施設10の外側へ放射線放射線が漏洩しないだけの距離を、低濃度除去物保管領域28の外周部から保管施設10の外周部までの間に確保できれば、周壁14は設けなくてもよい。
【0088】
また、本発明の実施形態では、図2に示すように、地盤34の表層を掘削した掘削地盤面36の上にゼオライト層38を介して床版40を設けた例を示したが、図8、9に示すように、地盤34を深く掘削してこの掘削地盤面78、80の上にゼオライト層38を介して床版40を設けるようにしてもよい。このようにすれば、地盤34を放射線遮蔽壁とすることができる。図9では、高濃度除去物保管領域32を地盤34のより深い位置に配置し、高濃度除去物46よりも放射線濃度の低い中濃度除去物48が配置されている中濃度除去物保管領域30を高濃度除去物保管領域32よりも浅い位置に配置し、中濃度除去物48よりも放射線濃度の低い低濃度除去物50が配置されている低濃度除去物保管領域28を中濃度除去物保管領域30よりも浅い位置に配置することによって、図8よりも地盤34の掘削量を小さくすることができる。
【0089】
また、本発明の実施形態では、床版40を直接基礎とした例を示したが、床版40を支持杭によって支持するようにしてもよいし、地盤34に地盤改良を施し、この地盤改良が施された地盤上に除去物を配置するようにしてもよい。地盤34に地盤改良を施せば、この地盤に遮水性を付与することができるので、この地盤からの放射性物質の漏洩防止が期待できる。
【0090】
また、本発明の実施形態で示した放射性汚染物の保管方法は、必要となる仕様に応じて、低濃度除去物保管領域28、中濃度除去物保管領域30、及び高濃度除去物保管領域32の厚さ等を適宜設定することにより、中間貯蔵施設に適用することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0092】
(実施例)
【0093】
本実施例では、数値シミュレーションによって評価した放射線遮蔽効果について説明する。
【0094】
図10には、放射線の一部である直線線の遮蔽効果を評価するモデル82が示されている。モデル82では、平坦な地盤84の上面に8000Bq/kgの低濃度除去物86が配置され、この低濃度除去物86から距離dだけ離れた測定点90との間に非汚染土壌(放射線によって汚染されていない土壌)によって形成された放射線遮蔽壁88が立てられている。低濃度除去物86と放射線遮蔽壁88との高さは同じになっている。
【0095】
モデル82に対して数値シミュレーションを行った結果、放射線遮蔽壁88の厚さtを30cm以上とし、距離dを10m以上にすれば、測定点90での空間線量が1mSv/年以下になるので、測定点90での直線線の影響が小さいことがわかった。
【0096】
図11には、放射線の一部である散乱線(スカイシャイン)の遮蔽効果を評価するモデル92が示されている。モデル92では、平坦な地盤84上に、8000Bq/kgの低濃度除去物86と、100000Bq/kgの中濃度除去物94と、1000000Bq/kgの高濃度除去物104とが配置され、左側に配置された低濃度除去物86の端部から離れた位置に非汚染土壌(放射線によって汚染されていない土壌)によって形成された放射線遮蔽壁88が立てられている。中濃度除去物94の上面は、放射線遮蔽性を有する遮蔽蓋96によって覆われており、中濃度除去物94と放射線遮蔽壁88との高さは同じになっている。また、高濃度除去物104の上面は蓋部材54で覆われている。
【0097】
図12には、モデル92に対して数値シミュレーションを行った結果のグラフ(左側に配置された低濃度放射線除去物86の端部からの距離d(横軸)に対する中濃度除去物94から放射される散乱線線量(縦軸))が示されている。値98は、遮蔽蓋96を厚さtが20cmの土壌とした場合の値を示し、値100は、遮蔽蓋96を厚さtが2cmの鉄板とした場合の値を示し、値102は、遮蔽蓋96を設けない場合の値を示している。
【0098】
図12からわかるように、遮蔽蓋96を厚さtが20cmの土壌とした値98の場合には、距離dが30m以上となる測定点90において散乱線線量を1mSv/年以下とすることができ、遮蔽蓋96を厚さtが2cmの鉄板とした値100の場合には、距離dが50m以上となる測定点90において散乱線線量を1mSv/年以下とすることができる。
【符号の説明】
【0099】
14 周壁(放射線遮蔽体)
46 高濃度除去物(第1放射線汚染物)
48 中濃度除去物(第1放射線汚染物、第2放射線汚染物)
50 低濃度除去物(第2放射線汚染物)
56 非汚染土壌(放射線で汚染されていない土壌)
H、M、L、N 収容体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1放射線汚染物の外側を前記第1放射線汚染物よりも放射線濃度が低い第2放射線汚染物で囲む放射線汚染物の保管方法。
【請求項2】
前記第1放射線汚染物の上方を前記第2放射線汚染物で覆っている請求項1に記載の放射線汚染物の保管方法。
【請求項3】
前記第2放射線汚染物の外周を放射線遮蔽体で取り囲む請求項2に記載の放射線汚染物の保管方法。
【請求項4】
前記第1放射線汚染物及び前記第2放射線汚染物は、収容体に詰め込んで積み重ねられ、前記放射線遮蔽体は、放射線で汚染されていない土壌が詰め込まれた収容体を積み重ねて構成されている請求項3に記載の放射線汚染物の保管方法。



































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−104794(P2013−104794A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249085(P2011−249085)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)