散在物除去装置及び畦塗り機
【課題】簡単かつ小型な構造であって、しかも安価に畦塗り時に藁や雑草等の散在物を排除でき、設計の自由度が高く、さらにリバース(後進)作業時でも、何らの調整を行わなくても、散在物除去装置が圃場に引っ掛かるなどして作業の邪魔になることはほとんどない散在物除去装置及び畦塗り機を提供する。
【解決手段】開示される散在物除去装置51は、畦塗り機1に設けられ、圃場に散在する散在物を除去するものである。畦塗り機1は、前処理体41と、整畦体42と、シールドカバー44とを備え、走行機体に連結されている。整畦体42は、前処理体41により耕耘された土壌に基づいて畦を整形する。シールドカバー44は、前処理体41の一部を覆うとともに、前処理体41により耕耘された土壌を整畦体42に供給するものである。圃場に散在する散在物を除去する散在物除去装置51は、シールドカバー44の畦塗り機1の進行方向前方に設けられている。
【解決手段】開示される散在物除去装置51は、畦塗り機1に設けられ、圃場に散在する散在物を除去するものである。畦塗り機1は、前処理体41と、整畦体42と、シールドカバー44とを備え、走行機体に連結されている。整畦体42は、前処理体41により耕耘された土壌に基づいて畦を整形する。シールドカバー44は、前処理体41の一部を覆うとともに、前処理体41により耕耘された土壌を整畦体42に供給するものである。圃場に散在する散在物を除去する散在物除去装置51は、シールドカバー44の畦塗り機1の進行方向前方に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用トラクタ等の走行機体に装着されて圃場の外縁に亘って畦を整形する畦塗り機に設けられ、圃場に散在する散在物を除去する散在物除去装置及びこの散在物除去装置を備えた畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の畦塗り機には、フレームと、ロータリ(前処理体)と、畦塗り体とを備えたものがある。上記前処理体は、上記フレームに回転自在に設けられ、畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削爪を有している。また、上記畦塗り体は、上記前処理体の進行方向後方に位置して上記フレームに回転自在に設けられ、上記前処理体の各切削爪により跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する。さらに、上記フレームには、前処理体の進行方向前方に位置して藁や雑草等の雑物を排除する雑物排除手段が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。以下、この技術を第1の従来例と呼ぶ。
【0003】
また、従来の畦塗り機には、走行機体に連結機構によりフレームを連結し、このフレームに旧畦上に土を盛り上げる回転ロータを設けたものもある。この畦塗り機では、上記フレームに上記回転ロータの上方を覆うカバー部材を設け、上記回転ロータの進行方向後方位置に整畦体を設け、この整畦体を整畦動作させる整畦機構を設けている。さらに、この畦塗り機では、上記フレームに圃場面に接地可能な安定部材を配設するとともに、上記安定部材の進行方向前方位置に安定部材の安定進行を可能とする障害物除去機構を配設している(例えば、特許文献2参照。)。以下、この技術を第2の従来例と呼ぶ。
【0004】
さらに、従来の畦塗り機には、前処理体により耕耘された土壌を飛散させずに整畦体に供給するためのサイドカバー(シールドカバー)を設けたものがある。この畦塗り機では、上記シールドカバーを上下一対の平行リンクにより上下動自在に支持するとともに、上記シールドカバーの下げ位置を規制するストッパを設け、下げ位置より上方に自由に回動できるようにしている(例えば、特許文献3参照。)。以下、この技術を第3の従来例と呼ぶ。
【0005】
【特許文献1】特開平9−28105号公報
【特許文献2】特開平6−209601号公報
【特許文献3】特開2002−125406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した第1の従来例では、特許文献1の図1及び図3から分かるように、雑物排除手段の作業領域が前処理体の作業領域にほぼ重なっているため、装置が大がかりとなるという問題があった。また、上記した第1の従来例では、トラクタのPTO軸からの出力が入力軸に加えられ、この入力軸に連結された傘歯車等を介して雑物排除手段が駆動されている。したがって、構造が複雑であるとともに、設計に自由度が少ないという問題があった。これにより、畦塗り機の価格が高くなるという問題があった。
【0007】
また、上記した第2の従来例では、特許文献2の図8又は図10から分かるように、障害物除去機構は、フレームにバーを介して固定されている。したがって、この障害物除去機構をリバース(後進)作業可能な畦塗り機に取り付けた場合、リバース(後進)作業時には、障害物除去機構が圃場に引っ掛かり、作業の邪魔になることが予想される。なお、上記した第2の従来例では、障害物除去機構が上下調整自在に構成されているが、リバース(後進)作業を行うごとに障害物除去機構を圃場面に接触しないように高さ調整するのでは使い勝手が悪いと思われる。
【0008】
ところで、上記した第3の従来例に係る畦塗り機には、第1の従来例に係る雑物排除手段や第2の従来例に係る障害物除去機構が設けられていない。したがって、畦塗り作業をする過程において、図11(a)に示すように、シールドカバー44と圃場面GLとの隙間に上記散在物101が堆積し始め、シールドカバー44前方で団子状となるおそれがある。図11は、後述する本発明の実施の形態1に係る畦塗り機1(図1参照)から散在物除去装置51を取り除いた構成(図3参照)のB方向からの矢視図である。
【0009】
そのまま畦塗り作業を継続すると、上記団子状の散在物101がシールドカバー44と圃場面GLとの隙間からシールドカバー44内に進入しようとし、シールドカバー44、さらには畦塗り作業を行う作業部自体が上記団子状の散在物101のために圃場面から浮き上がり、畦塗り作業ができなくなる場合がある。このような場合、一旦畦塗り作業を中止して、上記団子状の散在物101を手作業により除去する必要がある。このため、作業効率が良くないという問題があった。
【0010】
そこで、第3の従来例に係る畦塗り機に、第1の従来例に係る雑物排除手段又は第2の従来例に係る障害物除去機構を設けることが考えられる。しかし、第3の従来例と第1及び第2の従来例とでは、畦塗り機の構造が大幅に異なっているために、第1の従来例に係る雑物排除手段又は第2の従来例に係る障害物除去機構をその構造を維持したまま第3の従来例に係る畦塗り機に設けることはできない。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題を解決することを課題の一例とするものであり、これらの課題を解決することができる畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る散在物除去装置は、畦の一部及び圃場を耕耘する前処理体と、前記前処理体により耕耘された土壌に基づいて前記畦を整形する整畦体と、前記前処理体の一部を覆うとともに、前記前処理体により耕耘された前記土壌を前記整畦体に供給するカバーとを備え、走行機体に連結される畦塗り機に設けられ、前記圃場に散在する散在物を除去する散在物除去装置であって、前記散在物除去装置は、前記カバーの前記畦塗り機の進行方向前方に設けられていることを特徴としている。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、前記散在物を前記畦塗り機の進行方向を基準として前記畦を形成する側とは反対側へ除去する除去部材を有していることを特徴としている。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、前記圃場面からの高さが調整可能であることを特徴としている。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、前記走行機体側へ回動可能であることを特徴としている。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、前記走行機体から離れる側への回動を規制するストッパを有していることを特徴としている。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、前記畦塗り機の進行方向と直交する方向に位置調整可能であることを特徴としている。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項2乃至6のいずれかに記載の散在物除去装置に係り、前記除去部材は、前記圃場面となす角度が調整可能であることを特徴としている。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、動力を持たない非駆動式であることを特徴としている。
【0020】
また、請求項9に記載の発明に係る畦塗り機は、請求項1乃至8のいずれかに記載の散在物除去装置を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、散在物除去装置がカバーの畦塗り機の進行方向前方に設けられているので、簡単で小型な構造であって、かつ、安価に畦塗り時に藁や雑草等の散在物を排除することができる。また、動力を持たない非駆動式であるので、設計の自由度が高い。さらに、走行機体側へ回動可能であるので、リバース(後進)作業時でも、何らの調整を行わなくても、散在物除去装置が圃場に引っ掛かるなどして作業の邪魔になることはほとんどない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る畦塗り機1の構成を示す正面図、図2は図1に示す畦塗り機1の構成を示す平面図である。また、図3は、図1に示す畦塗り機1において、本発明の特徴である散在物除去装置51を取り除いた状態における構成を示す正面図である。図1及び図3において、破線は、グランドレベルGL、すなわち、圃場面上を示している。本実施の形態1に係る畦塗り機1は、農用トラクタ等の走行機体2の後部(図2においてY2方向側)に装着され、走行機体2の前進動(図2においてY1方向への移動)又は後進動(図2においてY2方向への移動)に応じて圃場の外縁に亘って畦を整形するものである。
【0023】
この畦塗り機1は、装着部11と、オフセット部12と、作業部13とから概略構成されている。装着部11は、一対の連結フレーム21a及び21bと、ヒッチフレーム22と、ギアボックス23とを備えている。一対の連結フレーム21a及び21bは、走行機体2の後部(図2においてY2方向側)に3点リンクヒッチ機構(図示略)を介して連結可能に構成されている。ヒッチフレーム22は、並列する連結フレーム21a及び21bを互いに畦塗り機1の幅方向(図1〜図3おいてX1−X2方向)に連結している。ヒッチフレーム22の上方(図1及び図3においてZ1方向側)には、ギアボックス23が配設されている。ギアボックス23は、走行機体2のPTO軸にユニバーサルジョイント等(いずれも図示略)を介して連結可能に構成されている。
【0024】
オフセット部12は、装着部11の後方(図2においてY2方向側)に、鉛直軸回りに揺動自在に連結されている。一対の連結フレーム21a及び21bの後端側(図2においてY2方向側)には、図1〜図3においてX1−X2方向に所定の間隔を隔てて一対の支持アーム31a及び31bが取り付けられている。一対の支持アーム31a及び31bは、いずれも後方(図2においてY2方向側)へ突出して設けられており、図1及び図3においてZ1−Z2方向に回動可能に構成されている。
【0025】
また、一対の支持アーム31a及び31bの後端部(図2においてY2方向側)には、主フレーム32が固着されている。主フレーム32は、畦塗り機1の進行方向(図2においてY2方向)を基準として左側(図2においてX1方向側)に配設された支持アーム31aよりもさらに左側に延出している。主フレーム32の左端近傍と中央やや左端寄りには、図1〜図3においてX1−X2方向に所定間隔を隔てて、一対の支持軸33a及び33bが図1及び図3においてZ1−Z2方向に配設されている。これら一対の支持軸33a及び33bは、主フレーム32から図1及び図3においてZ1方向に突設されている。一方、主フレーム32の左端近傍下部には、図1及び図3に示すように、Z2方向へ延びて支持軸33cが配設されている。支持軸33cは、支持軸33aと略同軸上に配置されている。
【0026】
オフセット部12は、第1のリンクフレーム34と、第2のリンクフレーム35と、第3のリンクフレーム36(図1及び図3参照)と、後フレーム37とを有している。第1のリンクフレーム34の一端は、上記支持軸33aの上部に回動自在に連結されている。一方、第1のリンクフレーム34の他端は、図示しないが、後フレーム37に回動自在に連結されている。第2のリンクフレーム35は、第1のリンクフレーム34と所定間隔を隔てて略平行に並設されている。第2のリンクフレーム35の一端は、上記支持軸33bの上部に回動自在に連結されている。一方、第2のリンクフレーム35の他端は、図示しないが、後フレーム37に回動自在に連結されている。
【0027】
第3のリンクフレーム36の一端は、図1及び図3に示すように、支持軸33cの下部に回動自在に連結されている。一方、第3のリンクフレーム36の他端は、作業部13から延びる伝動フレーム38(後述)の左端下部に回動自在に連結されている。後フレーム37は、オフセット部12の移動端側に、主フレーム32と所定間隔を隔てて略平行に並設されて配設されている。以上説明した、第1のリンクフレーム34、第2のリンクフレーム35、第3のリンクフレーム36及び後フレーム37と、上記主フレーム32とは、平行リンク機構を構成している。オフセット部12は、図示せぬ揺動シリンダの伸縮動によって主フレーム32に対して揺動し、オフセット自在になる。
【0028】
作業部13は、オフセット部12の移動端側(後端側)に設けられた回動支点12aを中心として水平方向に回動可能に配設されている。作業部13は、走行機体2の前進動(図2においてY1方向への移動)又は後進動(図2においてY2方向への移動)及び走行機体2から伝達される動力によって畦塗り作業を行う。走行機体2のPTO軸(図示略)からの動力は、上記したギアボックス23の入力軸(図示略)に伝達され、この入力軸からギアボックス23内の駆動軸を経た後、複数のクラッチ及び伝動フレーム38に内蔵されたチェーン等からなる動力伝達機構(図示略)を通じ、作業部13に伝達される。
【0029】
作業部13は、前処理体41と、整畦体42とを有している。前処理体41は、走行機体2から動力を受け、旧畦及び圃場の各一部を耕耘して畦状に盛り上げるものである。前処理体41は、伝動フレーム38に連結されて支持され、伝動フレーム38内の動力伝達機構(図示略)を介して走行機体2から伝達された動力に基づいて、図1及び図3に示すA方向に回転する複数本の畦切り爪41a及び複数本の掃き出し爪41bを有している。図1及び図3の例では、4本の畦切り爪41aと2本の掃き出し爪41bが設けられている。畦切り爪41aは、旧畦及び圃場の各一部を図1及び図3において上から下に細かく砕きながら削る。一方、掃き出し爪41bは、畦切り爪41aに細かく砕かれた土壌を掃き出し、畦の側面及び上面に十分に供給する。前処理体41は、作業部13の走行中、整畦体42の前方位置で畦切り爪41aが旧畦の土壌を切り崩して緩めるとともに、掃き出し爪41bがこの土壌を掃き出し、畦の側面及び上面に十分に供給することにより、整畦体42による整形の準備をする。
【0030】
前処理体41の一部は、例えば、鉄等の金属製の板材を加工してなるシールドカバー44に覆われている。図1及び図3の例では、前処理体41のX1方向及びZ1方向がシールドカバー44に覆われている。シールドカバー44は、畦切り爪41aにより耕耘され、掃き出し爪41bにより掃き出された土壌を飛散させずに整畦体42に供給するためのものである。
【0031】
整畦体42は、前処理体41により耕耘された土壌を切り崩された旧畦上に塗り付けて畦に整形するものである。整畦体42は、回転可能に支持された多面体ドラム43を備えている。多面体ドラム43は、伝動フレーム38に連結されて支持され、伝動フレーム38内の動力伝達機構(図示略)を介して走行機体2からの動力が伝達されるように構成されている。
【0032】
シールドカバー44の前方には、散在物除去装置51が設けられている。散在物除去装置51は、図2に示すヒッチフレーム22の右端(X2方向)からX2方向に伸びる延長フレーム52に取り付けられている。延長フレーム52は、例えば、略角筒状を呈しており、ヒッチフレーム22の右端に溶接等により一体的に取り付けられている。延長フレーム52は、いずれも図示しないが、右端(図1及び図2に示すX2方向)からヒッチフレーム22との接続箇所に向けて、上下方向(図1に示すZ1−Z2方向)に複数の貫通孔が所定間隔を隔てて穿設されている。
【0033】
図4は散在物除去装置51の外観構成を示す斜視図、図5は図4に示す散在物除去装置51を回動させた状態における外観構成を示す斜視図である。散在物除去装置51は、連結部53と、作動部(除去部材)54と、スペーサ55と、ボルト56と、ナット57とから構成されている。連結部53は、連結筒材53aと、連結板材53bと、連結ピン53cと、抜け止めピン53dとから構成されている。
【0034】
連結筒材53aは、略角筒状を呈し、かつ、内周が延長フレーム52の外周よりわずかに大きく、延長フレーム52に遊嵌可能に構成されている。連結筒材53aの一端53aa近傍には、上下方向(図4に示すZ1−Z2方向)に貫通孔53acが穿設されている。一方、連結筒材53aの他端53abには、連結板材53bの上端53baが、例えば、溶接等により一体的に取り付けられている。連結板材53bは、例えば、鋼板からなり、下端53bbの近傍から上端53baに向かって所定間隔を隔てて、貫通孔53bc、53bd及び53beが穿設されている。貫通孔53bc、53bd及び53beは、作動部54の高さ調整のために設けられている。
【0035】
作動部54は、基体58と、すき板59と、ストッパ60とが一体的に形成されて構成されている。基体58は、例えば、鋼板からなり、下端58bから全体の略3分の1の部分(屈曲箇所)58cのところで略くの字状に屈曲している。すなわち、基体58は、上端58aから屈曲箇所58cまでの直線部58dと、屈曲箇所58cと下端58bまでの屈曲部58eとから構成されている。基体58の下端面58baは、連結板材53bと基体58を構成する直線部58dとがほぼ完全に重なった際に、圃場表面と略平行となるように形成されている。
【0036】
基体58が略くの字状に屈曲しているのは、圃場に散在する散在物をすくい上げて除去するためである。この屈曲の角度は、例えば、基体58を構成する屈曲部58eの先端及びすき板59の下端59aが圃場にわずかに進入した状態において、グランドレベルGLに対して約40〜50°である。屈曲の角度をグランドレベルGLに対して約40〜50°とするのは以下に示す理由による。まず、作業部13の前進作業時に畦塗り作業速度(例えば、約0.2〜1.2km/h)で効率的に散在物をすくい上げるためである。一方、作業部13の後進作業時に散在物を引っ掛けにくくして散在物を逃がすためである。
【0037】
基体58の連結板材53bと対向する面58fとは反対側の面であって、屈曲部58eの上端58ea及び直線部58dの一部には、すき板59が基体58と一体的に形成されている。すき板59を設けたのは、上記散在物を畦を形成する方向とは反対方向(図1〜図3のX1方向)へ除去するためである。すき板59の詳細な作用については後述する。
【0038】
さらに、作動部54全体の重心よりやや基体58の上端58a寄りには、図示しないが貫通孔が穿設されている。そして、上記図示せぬ貫通孔の中心軸と、上記貫通孔53bc〜53beのいずれかの中心軸とを重ねた後、基体58の連結板材53bと対向する面58fとは反対側の面側から上記図示せぬ貫通孔及び上記貫通孔53bc〜53beのいずれかにボルト56が挿通され、連結板材53bの面53bfから突出され、スペーサ55を介してナット57が螺合されている。これにより、作動部54は、ボルト56を回転軸として連結板材53bに対して回動可能に構成されている。上記貫通孔を作動部54全体の重心よりやや基体58の上端58a寄りに穿設するのは、作動部54が作動していない場合には、自重により基体58を構成する直線部58dの一部と連結板材53bとがほぼ重なる状態とするためである。
【0039】
基体58の上端58aであって、基体58の連結板材53bと対向する面58f側には、ストッパ60が基体58と一体的に形成されている。ストッパ60の略中央には、略U字状を呈する溝60aが穿設されている。
【0040】
以上説明した構造を有する散在物除去装置51は、連結部53を構成する連結筒材53aが延長フレーム52に遊嵌され、連結筒材53aに穿設された貫通孔53acと上記延長フレーム52に穿設された複数の貫通孔のいずれかとが位置合わせされた後、これらの貫通孔に連結ピン53cが挿通され、連結筒材53aの下面から突出された連結ピン53cの先端53ca近傍に穿設された貫通孔53cbに抜け止めピン53dが挿通されることにより、延長フレーム52に取り付けられる。すなわち、散在物除去装置51は、畦塗り機1の進行方向と直交する方向に位置調整可能である。したがって、シールドカバー44に混入する散在物を最も少なくすることができる最適な位置に散在物除去装置を51取り付けることができる。
【0041】
そして、作動部54が作動していない場合には、ストッパ60の溝60aの内底部60aaと、連結板材53bのストッパ60と対向する面53bgとの間には、わずかにクリアランスが設けられている。一方、前進作業状態において、作動部54が作動状態にある場合には、作動部54を構成する基体58の屈曲部58eとすき板59が圃場の土壌や藁等の散在物と接触することにより、作動部54がボルト56を回転軸として連結板材53bに対して進行方向後方に回動する。そして、ストッパ60の溝60aの内底部60aaに連結板材53bのストッパ60と対向する面53bgが当接することにより、作動部54の回動が規制される。
【0042】
次に、上記構成の畦塗り機1の動作について、図を参照して説明する。まず、走行機体2の後部(図2においてY2方向側)に設けられた3点リンクヒッチ機構(図示略)の一対の連結フレーム21a及び21bを連結するとともに、走行機体2のPTO軸に動力伝達軸(いずれも図示略)を介してギアボックス23の入力軸(図示略)を連結する。
【0043】
次に、圃場や旧畦の状況に応じて各種の調節をした後、走行機体2により畦塗り機1を畦際に沿って配設する。この走行機体2により畦塗り機1が畦際に沿って牽引進行されるとともに、走行機体2のPTO軸からの出力によって動力伝達軸(いずれも図示略)を介してギアボックス23の入力軸(図示略)が回転されると、この入力軸からギアボックス23内の駆動軸を経た後、複数のクラッチ及び伝動フレーム38に内蔵されたチェーン等からなる動力伝達機構(図示略)を通じ、作業部13に伝達される。
【0044】
これにより、前処理体41が左右方向(図2のX1−X2方向)に回転駆動されるとともに、整畦体42が進行方向(図2のY1方向)に向かって回転駆動される。したがって、前処理体41は、旧畦及び圃場の各一部を畦切り爪41aが図1及び図3において上から下に細かく砕きながら切り崩して緩めるとともに、掃き出し爪41bがこの土壌を掃き出し、シールドカバー44が畦切り爪41aにより耕耘され、掃き出し爪41bにより掃き出された土壌を飛散させずに整畦体42に供給する。また、整畦体42は、前処理体41により耕耘された土壌を切り崩された旧畦上に塗り付けて畦に整形する。
【0045】
この際、作業部13を構成するシールドカバー44の前方に設けられている散在物除去装置51は、シールドカバー44の前方であって、圃場上に散在する藁や雑草等の散在物を左右方向(図1のX1−X2方向)の外方(図1〜図3においてX1方向)に向かって放出して除去する。すなわち、畦塗り作業をする過程において、散在物除去装置51の前に堆積し始めた散在物は、団子状となったとしても、図6に示す散在物除去装置51の作動部54を構成するすき板59の下端59aに引っ掛かった後、同じく作動部54を構成する基体58の屈曲箇所58c近傍(図6においてハッチングを施した部分)に当接し、図6においてC方向に流れ、D方向には流れない。これは、団子状となった散在物は、散在物が通過する中心線O−O’より図中左側に基体58が存在するためである。
【0046】
この場合、前進作業状態において、作動部54を構成する基体58の屈曲部58eとすき板59が圃場の土壌や藁等の散在物と接触することにより圧力を受けて、作動部54がボルト56を回転軸として連結板材53bに対して進行方向後方に回動する。そして、ストッパ60の溝60aの内底部60aaに連結板材53bのストッパ60と対向する面53bgが当接することにより、作動部54の回動が規制される。
【0047】
したがって、シールドカバー44の前方であって、旧畦の畦際の表面に散在する藁や雑草等の散在物が十分に掻き分けられ又は抜き取られて左右方向(図1のX1−X2方向)の外方(図1〜図3においてX1方向)に向かって放出され、既に図6を参照して説明したように、シールドカバー44の進行位置前方から除去される。これにより、上記散在物除去装置51がない場合に発生する不都合、すなわち、図11(a)に示すシールドカバー44と圃場面との間における団子状の散在物101の堆積及びシールドカバー44内への進入並びに、図11(b)に示す堆積した団子状の散在物101によるシールドカバー44及び作業部13の浮き上がりを防止することができる。この結果、畦塗り作業を継続しても、畦塗り作業ができなくなることはなく、一旦畦塗り作業を中止して圃場面に堆積した散在物を手作業により除去する必要がない。この分、作業効率が向上する。また、図1〜図3において、X1方向へ散在物を放出することにより、前処理体41側への散在物の流入が少なくなるため、畦形成土内への散在物の混入が少なく、畦表面も固く締まったきれいな畦ができることになる。
【0048】
このように、本発明の実施の形態1によれば、散在物除去装置51の作業領域は、シールドカバー44の前方にほぼ限定されているので、装置を小型に構成することができる。また、本発明の実施の形態1によれば、駆動手段を必要としないので、構造が簡単であるとともに、設計の自由度が大きいという利点がある。これにより、畦塗り機1の価格を低く抑えることができる。
【0049】
また、本発明の実施の形態1によれば、図5から分かるように、散在物除去装置51を構成する作動部54は、連結板材53bに回動可能に取り付けられている。したがって、リバース(後進)作業時であっても、散在物除去装置51が圃場に引っ掛かることがなく、作業の邪魔になることはない。この場合、作業者は、作業を中断して何らかの操作をする必要がないので、使い勝手が良い。
【0050】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る散在物除去装置を構成する作動部(除去部材)61の外観構成を示す斜視図である。本実施の形態2に係る作動部61は、例えば、図1及び図2に示す畦塗り機1において、散在物除去装置51を構成する作動部54に換えて、連結部53に取り付けられるものである。この作動部61以外の畦塗り機の構成は上記した実施の形態1に係る畦塗り機1の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0051】
すなわち、本発明の実施の形態2に係る散在物除去装置は、図4及び図5に示す連結部53と、スペーサ55と、ボルト56と、ナット57と、図7に示す作動部61とから構成されている。作動部61は、基体62と、すき部63と、ストッパ64とが一体的に形成されて構成されている。基体62は、例えば、鋼板からなる。作動部61全体の重心よりやや基体62の上端62a寄りには、貫通孔62cが穿設されている。
【0052】
そして、上記貫通孔62cの中心軸と、図4及び図5に示す貫通孔53bc〜53beのいずれかの中心軸とを重ねた後、基体62の連結板材53b(図4及び図5参照)と対向する面62dとは反対側の面62e側から上記貫通孔62c及び上記貫通孔53bc〜53beのいずれかにボルト56が挿通され、連結板材53bの面53bfから突出され、スペーサ55を介してナット57が螺合される。これにより、作動部材61は、図4及び図5に示すボルト56を回転軸として連結板材53bに対して回動可能となる。
【0053】
上記貫通孔62cを作動部61全体の重心よりやや基体62の上端62a寄りに穿設するのは、作動部61が作動していない場合には、自重により基体62と連結板材53b(図4及び図5参照)とがほぼ重なる状態とするためである。
【0054】
基体62の下端62bには、すき部63の一端が取り付けられている。すき部63は、平面形状が略円弧形状を呈している。すき部63の下端面63aは、連結板材53b(図4及び図5参照)と基体62とがほぼ完全に重なった際に、圃場表面と略平行となるように形成されている。
【0055】
基体62の上端62aであって、畦塗り機の進行方向後方側には、ストッパ64が基体62と一体的に形成されている。ストッパ64は、直線部64aと屈曲部64bとが略直角をなして接続されてなる略L字状を呈している。作動部材61が作動していない場合には、ストッパ64の屈曲部64bと、図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ64と対向する面53bgとの間には、わずかにクリアランスが設けられている。
【0056】
一方、前進作業状態において、作動部材61が作動状態にある場合には、作動部材61を構成するすき部63が圃場の土壌や藁等の散在物と接触することにより、作動部材61が図4及び図5に示すボルト56を回転軸として図4及び図5に示す連結板材53bに対して進行方向後方に回動する。そして、ストッパ64の屈曲部64bに図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ64と対向する面53bgが当接することにより、作動部材61の回動が規制される。
【0057】
なお、上記構成を有する作動部61を備えた散在物除去装置を含めた畦塗り機の動作については、上記した実施の形態1における散在物除去装置51を含めた畦塗り機1の動作と略同様であるので、その説明を省略する。以上説明したように、本発明の実施の形態2によれば、上記した実施の形態1の場合と略同様の効果を得ることができる。
【0058】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態3に係る散在物除去装置を構成する作動部(除去部材)71の外観構成を示す斜視図である。本実施の形態3に係る作動部71は、例えば、図1及び図2に示す畦塗り機1において、散在物除去装置51を構成する作動部54に換えて、連結部53に取り付けられるものである。この作動部71以外の畦塗り機の構成は上記した実施の形態1に係る畦塗り機1の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0059】
すなわち、本発明の実施の形態3に係る散在物除去装置は、図4及び図5に示す連結部53と、スペーサ55と、ボルト56と、ナット57と、図8に示す作動部71とから構成されている。作動部71は、垂直基体72と、水平基体73と、すき部74と、ストッパ75とが一体的に形成されて構成されている。垂直基体72は、例えば、鋼板からなる。作動部71全体の重心よりやや垂直基体72の上端72a寄りには、貫通孔72cが穿設されている。
【0060】
そして、上記貫通孔72cの中心軸と、図4及び図5に示す貫通孔53bc〜53beのいずれかの中心軸とを重ねた後、垂直基体72の連結板材53b(図4及び図5参照)と対向する面72dとは反対側の面72e側から上記貫通孔72c及び上記貫通孔53bc〜53beのいずれかにボルト56が挿通され、連結板材53bの面53bfから突出され、スペーサ55を介してナット57が螺合される。これにより、作動部材71は、図4及び図5に示すボルト56を回転軸として連結板材53bに対して回動可能となる。
【0061】
上記貫通孔72cを作動部71全体の重心よりやや垂直基体72の上端72a寄りに穿設するのは、作動部71が作動していない場合には、自重により垂直基体72と連結板材53b(図4及び図5参照)とがほぼ重なる状態とするためである。
【0062】
垂直基体72の下端72bには、水平基体73の後端73a近傍が取り付けられている。水平基体73は、例えば、鋼板からなる。水平基体73の前端73bには、すき部74が取り付けられている。すき部74は、平面形状が略矢尻形状を呈している。すき部74の最大幅W1は、シールドカバー44の幅W(図3参照)に略等しい又は大きい。上記最大幅W1がシールドカバー44の幅W(図3参照)に略等しい又は大きいのは、シールドカバー44に圃場に散在している藁等の散在物が極力引っ掛かってたまらないようにするためである。すき部74の下端面74aは、連結板材53b(図4及び図5参照)と垂直基体72とがほぼ完全に重なった際に、圃場表面と略平行となるように形成されている。
【0063】
垂直基体72の上端72aであって、畦塗り機の進行方向後方側には、ストッパ75が垂直基体72と一体的に形成されている。ストッパ75は、直線部75aと屈曲部75bとが略直角をなして接続されてなる略L字状を呈している。作動部材71が作動していない場合には、ストッパ75の屈曲部75bと、図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ75と対向する面53bgとの間には、わずかにクリアランスが設けられている。
【0064】
一方、前進作業状態において、作動部材71が作動状態にある場合には、作動部材71を構成するすき部74が圃場の土壌や藁等の散在物と接触することにより、作動部材71が図4及び図5に示すボルト56を回転軸として図4及び図5に示す連結板材53bに対して進行方向後方に回動する。そして、ストッパ745の屈曲部75bに図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ75と対向する面53bgが当接することにより、作動部材71の回動が規制される。
【0065】
なお、上記構成を有する作動部71を備えた散在物除去装置を含めた畦塗り機の動作については、上記した実施の形態1における散在物除去装置51を含めた畦塗り機1の動作と略同様であるので、その説明を省略する。以上説明したように、本発明の実施の形態3によれば、上記した実施の形態1の場合と略同様の効果を得ることができる。
【0066】
実施の形態4.
図9は、本発明の実施の形態4に係る散在物除去装置を構成する作動部(除去部材)81の外観構成を示す斜視図である。本実施の形態4に係る作動部81は、例えば、図1及び図2に示す畦塗り機1において、散在物除去装置51を構成する作動部54に換えて、連結部53に取り付けられるものである。この作動部81以外の畦塗り機の構成は上記した実施の形態1に係る畦塗り機1の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
すなわち、本発明の実施の形態4に係る散在物除去装置は、図4及び図5に示す連結部53と、スペーサ55と、ボルト56と、ナット57と、図9に示す作動部81とから構成されている。作動部81は、基体82と、すき部83と、ストッパ84とが一体的に形成されて構成されている。基体82は、例えば、鋼板からなる。作動部81全体の重心よりやや基体82の上端82a寄りには、貫通孔82cが穿設されている。
【0068】
そして、上記貫通孔82cの中心軸と、図4及び図5に示す貫通孔53bc〜53beのいずれかの中心軸とを重ねた後、基体82の連結板材53b(図4及び図5参照)と対向する面82dとは反対側の面82e側から上記貫通孔82c及び上記貫通孔53bc〜53beのいずれかにボルト56が挿通され、連結板材53bの面53bfから突出され、スペーサ55を介してナット57が螺合される。これにより、作動部材81は、図4及び図5に示すボルト56を回転軸として連結板材53bに対して回動可能となる。
【0069】
上記貫通孔82cを作動部81全体の重心よりやや基体82の上端82a寄りに穿設するのは、作動部81が作動していない場合には、自重により基体82と連結板材53b(図4及び図5参照)とがほぼ重なる状態とするためである。
【0070】
基体82の下端82bには、すき部83の一端が取り付けられている。すき部83は、平面形状が略三角形状を呈している。すき部83の最大幅W2は、シールドカバー44の幅W(図3参照)に略等しい又は大きい。上記最大幅W2がシールドカバー44の幅W(図3参照)に略等しい又は大きいのは、シールドカバー44に圃場に散在している藁等の散在物が極力引っ掛かってたまらないようにするためである。すき部83の下端面83aは、連結板材53b(図4及び図5参照)と基体82とがほぼ完全に重なった際に、圃場表面と略平行となるように形成されている。
【0071】
基体82の上端82aであって、畦塗り機の進行方向後方側には、ストッパ84が基体82と一体的に形成されている。ストッパ84は、直線部84aと屈曲部84bとが略直角をなして接続されてなる略L字状を呈している。作動部材81が作動していない場合には、ストッパ84の屈曲部84bと、図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ84と対向する面53bgとの間には、わずかにクリアランスが設けられている。
【0072】
一方、前進作業状態において、作動部材81が作動状態にある場合には、作動部材81を構成するすき部83が圃場の土壌や藁等の散在物と接触することにより、作動部材81が図4及び図5に示すボルト56を回転軸として図4及び図5に示す連結板材53bに対して進行方向後方に回動する。そして、ストッパ84の屈曲部84bに図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ84と対向する面53bgが当接することにより、作動部材81の回動が規制される。
【0073】
なお、上記構成を有する作動部81を備えた散在物除去装置を含めた畦塗り機の動作については、上記した実施の形態1における散在物除去装置51を含めた畦塗り機1の動作と略同様であるので、その説明を省略する。以上説明したように、本発明の実施の形態4によれば、上記した実施の形態1の場合と略同様の効果を得ることができる。
【0074】
実施の形態5.
上述の各実施の形態では、作動部54、61、71又は81の高さを調整するために、連結板材53bに複数の貫通孔を穿設する例を示したが、これに限定されない。作動部54、61、71又は81の高さを調整するために、例えば、図10に示すように、高さ調整機構91を設けても良い。この高さ調整機構91は、作動部54、61、71又は81が取り付けられるロッドネジ部材(図示略)と、例えば、図1及び図2に示す延長フレーム52に固定されてロッドネジ部材に螺合するウォームギア部材92とからなっている。このウォームギア部材92でロッドネジ部材を垂直方向に上下動させることにより、作動部54、61、71又は81を上下方向に任意に高さ調整できるようになっている。ウォームギア部材92は、上記ロッドネジ部材を貫通させるケーシング93と、貫通したロッドネジ部材に螺合するギア(図示略)と、このギアに螺合するウォーム(図示略)と、このウォームを回転させるハンドル94とから構成されている。そして、ハンドル94を回転させることにより、ロッドネジ部材、すなわち、作動部54、61、71又は81を上下動させることができるように構成されている。このように構成すれば、ハンドル94を回転させるだけで作動部54、61、71又は81の高さを調整することができ、操作性が一層向上する。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、上述の実施の形態1において、基体58を屈曲箇所58cの近傍で直線部58dと屈曲部58eとに2分割するとともに、直線部58dに対して屈曲部58eをボルト及びナット等の締結部材で固定可能に構成し、すき板59が設けられた屈曲部58eの圃場面となす角度を調整した後、上記締結部材で締結可能に構成しても良い。これにより、屈曲部58eの先端及びすき板59の下端59aが圃場に進入する深度を変更することができる。このため、圃場の土壌の質に応じて散在物を除去するのに最適な上記深度に調整することができる。
また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態1に係る畦塗り機の構成を示す正面図である。
【図2】図1に示す畦塗り機の構成を示す平面図である。
【図3】図1に示す畦塗り機から散在物除去装置を取り除いた状態における構成を示す正面図である。
【図4】図1に示す畦塗り機を構成する散在物除去装置の外観構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示す散在物除去装置を構成する作動部を回動させた状態における外観構成を示す斜視図である。
【図6】図4に示す散在物除去装置を構成する作動部の動作を説明するための概念図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る散在物除去装置を構成する作動部の外観構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る散在物除去装置を構成する作動部の外観構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る散在物除去装置を構成する作動部の外観構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態5に係る散在物除去装置の高さ調整機構の外観構成を示す概念図である。
【図11】従来技術の問題点を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0077】
1…畦塗り機、2…走行機体、11…装着部、12…オフセット部、12a…回動支点、13…作業部、21a,21b…連結フレーム、22…ヒッチフレーム、23…ギアボックス、31a,31b…支持アーム、32…主フレーム、33a,33b,33c…支持軸、34…第1のリンクフレーム、35…第2のリンクフレーム、36…第3のリンクフレーム、37…後フレーム、38…伝動フレーム、41…前処理体、41a…畦切り爪、41b…掃き出し爪、42…整畦体、43…多面体ドラム、44…シールドカバー、51…散在物除去装置、52…延長フレーム、53…連結部、53a…連結筒材、53aa…一端、53ab…他端、53ac…貫通孔、53b…連結板材、53ba,58a,58ea,62a,72a,82a…上端、53bb,58b,59a,62b,72b,82b…下端、53bc,53bd,53be,62c…貫通孔、53bf,53bg,58f,62d,62e,72d,72e,82d,82e…面、53c…連結ピン、53d…抜け止めピン、54,61,71,81…作動部(除去部材)、55…スペーサ、56…ボルト、57…ナット、58,62,82…基体、58ba,63a,74a,83a…下端面、58c…屈曲箇所、58d,64a,75a,84a…直線部、58e,64b,75b,84b…屈曲部、59…すき板、60,64,75,84…ストッパ、60a…溝、60aa…内底部、63,74,83…すき部、72…垂直基体、73…水平基体、73a…後端、73b…前端、91…高さ調整機構,92…ウォームギア部材、93…ケーシング、94…ハンドル
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用トラクタ等の走行機体に装着されて圃場の外縁に亘って畦を整形する畦塗り機に設けられ、圃場に散在する散在物を除去する散在物除去装置及びこの散在物除去装置を備えた畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の畦塗り機には、フレームと、ロータリ(前処理体)と、畦塗り体とを備えたものがある。上記前処理体は、上記フレームに回転自在に設けられ、畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削爪を有している。また、上記畦塗り体は、上記前処理体の進行方向後方に位置して上記フレームに回転自在に設けられ、上記前処理体の各切削爪により跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する。さらに、上記フレームには、前処理体の進行方向前方に位置して藁や雑草等の雑物を排除する雑物排除手段が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。以下、この技術を第1の従来例と呼ぶ。
【0003】
また、従来の畦塗り機には、走行機体に連結機構によりフレームを連結し、このフレームに旧畦上に土を盛り上げる回転ロータを設けたものもある。この畦塗り機では、上記フレームに上記回転ロータの上方を覆うカバー部材を設け、上記回転ロータの進行方向後方位置に整畦体を設け、この整畦体を整畦動作させる整畦機構を設けている。さらに、この畦塗り機では、上記フレームに圃場面に接地可能な安定部材を配設するとともに、上記安定部材の進行方向前方位置に安定部材の安定進行を可能とする障害物除去機構を配設している(例えば、特許文献2参照。)。以下、この技術を第2の従来例と呼ぶ。
【0004】
さらに、従来の畦塗り機には、前処理体により耕耘された土壌を飛散させずに整畦体に供給するためのサイドカバー(シールドカバー)を設けたものがある。この畦塗り機では、上記シールドカバーを上下一対の平行リンクにより上下動自在に支持するとともに、上記シールドカバーの下げ位置を規制するストッパを設け、下げ位置より上方に自由に回動できるようにしている(例えば、特許文献3参照。)。以下、この技術を第3の従来例と呼ぶ。
【0005】
【特許文献1】特開平9−28105号公報
【特許文献2】特開平6−209601号公報
【特許文献3】特開2002−125406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した第1の従来例では、特許文献1の図1及び図3から分かるように、雑物排除手段の作業領域が前処理体の作業領域にほぼ重なっているため、装置が大がかりとなるという問題があった。また、上記した第1の従来例では、トラクタのPTO軸からの出力が入力軸に加えられ、この入力軸に連結された傘歯車等を介して雑物排除手段が駆動されている。したがって、構造が複雑であるとともに、設計に自由度が少ないという問題があった。これにより、畦塗り機の価格が高くなるという問題があった。
【0007】
また、上記した第2の従来例では、特許文献2の図8又は図10から分かるように、障害物除去機構は、フレームにバーを介して固定されている。したがって、この障害物除去機構をリバース(後進)作業可能な畦塗り機に取り付けた場合、リバース(後進)作業時には、障害物除去機構が圃場に引っ掛かり、作業の邪魔になることが予想される。なお、上記した第2の従来例では、障害物除去機構が上下調整自在に構成されているが、リバース(後進)作業を行うごとに障害物除去機構を圃場面に接触しないように高さ調整するのでは使い勝手が悪いと思われる。
【0008】
ところで、上記した第3の従来例に係る畦塗り機には、第1の従来例に係る雑物排除手段や第2の従来例に係る障害物除去機構が設けられていない。したがって、畦塗り作業をする過程において、図11(a)に示すように、シールドカバー44と圃場面GLとの隙間に上記散在物101が堆積し始め、シールドカバー44前方で団子状となるおそれがある。図11は、後述する本発明の実施の形態1に係る畦塗り機1(図1参照)から散在物除去装置51を取り除いた構成(図3参照)のB方向からの矢視図である。
【0009】
そのまま畦塗り作業を継続すると、上記団子状の散在物101がシールドカバー44と圃場面GLとの隙間からシールドカバー44内に進入しようとし、シールドカバー44、さらには畦塗り作業を行う作業部自体が上記団子状の散在物101のために圃場面から浮き上がり、畦塗り作業ができなくなる場合がある。このような場合、一旦畦塗り作業を中止して、上記団子状の散在物101を手作業により除去する必要がある。このため、作業効率が良くないという問題があった。
【0010】
そこで、第3の従来例に係る畦塗り機に、第1の従来例に係る雑物排除手段又は第2の従来例に係る障害物除去機構を設けることが考えられる。しかし、第3の従来例と第1及び第2の従来例とでは、畦塗り機の構造が大幅に異なっているために、第1の従来例に係る雑物排除手段又は第2の従来例に係る障害物除去機構をその構造を維持したまま第3の従来例に係る畦塗り機に設けることはできない。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題を解決することを課題の一例とするものであり、これらの課題を解決することができる畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る散在物除去装置は、畦の一部及び圃場を耕耘する前処理体と、前記前処理体により耕耘された土壌に基づいて前記畦を整形する整畦体と、前記前処理体の一部を覆うとともに、前記前処理体により耕耘された前記土壌を前記整畦体に供給するカバーとを備え、走行機体に連結される畦塗り機に設けられ、前記圃場に散在する散在物を除去する散在物除去装置であって、前記散在物除去装置は、前記カバーの前記畦塗り機の進行方向前方に設けられていることを特徴としている。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、前記散在物を前記畦塗り機の進行方向を基準として前記畦を形成する側とは反対側へ除去する除去部材を有していることを特徴としている。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、前記圃場面からの高さが調整可能であることを特徴としている。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、前記走行機体側へ回動可能であることを特徴としている。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、前記走行機体から離れる側への回動を規制するストッパを有していることを特徴としている。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、前記畦塗り機の進行方向と直交する方向に位置調整可能であることを特徴としている。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項2乃至6のいずれかに記載の散在物除去装置に係り、前記除去部材は、前記圃場面となす角度が調整可能であることを特徴としている。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の散在物除去装置に係り、前記散在物除去装置は、動力を持たない非駆動式であることを特徴としている。
【0020】
また、請求項9に記載の発明に係る畦塗り機は、請求項1乃至8のいずれかに記載の散在物除去装置を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、散在物除去装置がカバーの畦塗り機の進行方向前方に設けられているので、簡単で小型な構造であって、かつ、安価に畦塗り時に藁や雑草等の散在物を排除することができる。また、動力を持たない非駆動式であるので、設計の自由度が高い。さらに、走行機体側へ回動可能であるので、リバース(後進)作業時でも、何らの調整を行わなくても、散在物除去装置が圃場に引っ掛かるなどして作業の邪魔になることはほとんどない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る畦塗り機1の構成を示す正面図、図2は図1に示す畦塗り機1の構成を示す平面図である。また、図3は、図1に示す畦塗り機1において、本発明の特徴である散在物除去装置51を取り除いた状態における構成を示す正面図である。図1及び図3において、破線は、グランドレベルGL、すなわち、圃場面上を示している。本実施の形態1に係る畦塗り機1は、農用トラクタ等の走行機体2の後部(図2においてY2方向側)に装着され、走行機体2の前進動(図2においてY1方向への移動)又は後進動(図2においてY2方向への移動)に応じて圃場の外縁に亘って畦を整形するものである。
【0023】
この畦塗り機1は、装着部11と、オフセット部12と、作業部13とから概略構成されている。装着部11は、一対の連結フレーム21a及び21bと、ヒッチフレーム22と、ギアボックス23とを備えている。一対の連結フレーム21a及び21bは、走行機体2の後部(図2においてY2方向側)に3点リンクヒッチ機構(図示略)を介して連結可能に構成されている。ヒッチフレーム22は、並列する連結フレーム21a及び21bを互いに畦塗り機1の幅方向(図1〜図3おいてX1−X2方向)に連結している。ヒッチフレーム22の上方(図1及び図3においてZ1方向側)には、ギアボックス23が配設されている。ギアボックス23は、走行機体2のPTO軸にユニバーサルジョイント等(いずれも図示略)を介して連結可能に構成されている。
【0024】
オフセット部12は、装着部11の後方(図2においてY2方向側)に、鉛直軸回りに揺動自在に連結されている。一対の連結フレーム21a及び21bの後端側(図2においてY2方向側)には、図1〜図3においてX1−X2方向に所定の間隔を隔てて一対の支持アーム31a及び31bが取り付けられている。一対の支持アーム31a及び31bは、いずれも後方(図2においてY2方向側)へ突出して設けられており、図1及び図3においてZ1−Z2方向に回動可能に構成されている。
【0025】
また、一対の支持アーム31a及び31bの後端部(図2においてY2方向側)には、主フレーム32が固着されている。主フレーム32は、畦塗り機1の進行方向(図2においてY2方向)を基準として左側(図2においてX1方向側)に配設された支持アーム31aよりもさらに左側に延出している。主フレーム32の左端近傍と中央やや左端寄りには、図1〜図3においてX1−X2方向に所定間隔を隔てて、一対の支持軸33a及び33bが図1及び図3においてZ1−Z2方向に配設されている。これら一対の支持軸33a及び33bは、主フレーム32から図1及び図3においてZ1方向に突設されている。一方、主フレーム32の左端近傍下部には、図1及び図3に示すように、Z2方向へ延びて支持軸33cが配設されている。支持軸33cは、支持軸33aと略同軸上に配置されている。
【0026】
オフセット部12は、第1のリンクフレーム34と、第2のリンクフレーム35と、第3のリンクフレーム36(図1及び図3参照)と、後フレーム37とを有している。第1のリンクフレーム34の一端は、上記支持軸33aの上部に回動自在に連結されている。一方、第1のリンクフレーム34の他端は、図示しないが、後フレーム37に回動自在に連結されている。第2のリンクフレーム35は、第1のリンクフレーム34と所定間隔を隔てて略平行に並設されている。第2のリンクフレーム35の一端は、上記支持軸33bの上部に回動自在に連結されている。一方、第2のリンクフレーム35の他端は、図示しないが、後フレーム37に回動自在に連結されている。
【0027】
第3のリンクフレーム36の一端は、図1及び図3に示すように、支持軸33cの下部に回動自在に連結されている。一方、第3のリンクフレーム36の他端は、作業部13から延びる伝動フレーム38(後述)の左端下部に回動自在に連結されている。後フレーム37は、オフセット部12の移動端側に、主フレーム32と所定間隔を隔てて略平行に並設されて配設されている。以上説明した、第1のリンクフレーム34、第2のリンクフレーム35、第3のリンクフレーム36及び後フレーム37と、上記主フレーム32とは、平行リンク機構を構成している。オフセット部12は、図示せぬ揺動シリンダの伸縮動によって主フレーム32に対して揺動し、オフセット自在になる。
【0028】
作業部13は、オフセット部12の移動端側(後端側)に設けられた回動支点12aを中心として水平方向に回動可能に配設されている。作業部13は、走行機体2の前進動(図2においてY1方向への移動)又は後進動(図2においてY2方向への移動)及び走行機体2から伝達される動力によって畦塗り作業を行う。走行機体2のPTO軸(図示略)からの動力は、上記したギアボックス23の入力軸(図示略)に伝達され、この入力軸からギアボックス23内の駆動軸を経た後、複数のクラッチ及び伝動フレーム38に内蔵されたチェーン等からなる動力伝達機構(図示略)を通じ、作業部13に伝達される。
【0029】
作業部13は、前処理体41と、整畦体42とを有している。前処理体41は、走行機体2から動力を受け、旧畦及び圃場の各一部を耕耘して畦状に盛り上げるものである。前処理体41は、伝動フレーム38に連結されて支持され、伝動フレーム38内の動力伝達機構(図示略)を介して走行機体2から伝達された動力に基づいて、図1及び図3に示すA方向に回転する複数本の畦切り爪41a及び複数本の掃き出し爪41bを有している。図1及び図3の例では、4本の畦切り爪41aと2本の掃き出し爪41bが設けられている。畦切り爪41aは、旧畦及び圃場の各一部を図1及び図3において上から下に細かく砕きながら削る。一方、掃き出し爪41bは、畦切り爪41aに細かく砕かれた土壌を掃き出し、畦の側面及び上面に十分に供給する。前処理体41は、作業部13の走行中、整畦体42の前方位置で畦切り爪41aが旧畦の土壌を切り崩して緩めるとともに、掃き出し爪41bがこの土壌を掃き出し、畦の側面及び上面に十分に供給することにより、整畦体42による整形の準備をする。
【0030】
前処理体41の一部は、例えば、鉄等の金属製の板材を加工してなるシールドカバー44に覆われている。図1及び図3の例では、前処理体41のX1方向及びZ1方向がシールドカバー44に覆われている。シールドカバー44は、畦切り爪41aにより耕耘され、掃き出し爪41bにより掃き出された土壌を飛散させずに整畦体42に供給するためのものである。
【0031】
整畦体42は、前処理体41により耕耘された土壌を切り崩された旧畦上に塗り付けて畦に整形するものである。整畦体42は、回転可能に支持された多面体ドラム43を備えている。多面体ドラム43は、伝動フレーム38に連結されて支持され、伝動フレーム38内の動力伝達機構(図示略)を介して走行機体2からの動力が伝達されるように構成されている。
【0032】
シールドカバー44の前方には、散在物除去装置51が設けられている。散在物除去装置51は、図2に示すヒッチフレーム22の右端(X2方向)からX2方向に伸びる延長フレーム52に取り付けられている。延長フレーム52は、例えば、略角筒状を呈しており、ヒッチフレーム22の右端に溶接等により一体的に取り付けられている。延長フレーム52は、いずれも図示しないが、右端(図1及び図2に示すX2方向)からヒッチフレーム22との接続箇所に向けて、上下方向(図1に示すZ1−Z2方向)に複数の貫通孔が所定間隔を隔てて穿設されている。
【0033】
図4は散在物除去装置51の外観構成を示す斜視図、図5は図4に示す散在物除去装置51を回動させた状態における外観構成を示す斜視図である。散在物除去装置51は、連結部53と、作動部(除去部材)54と、スペーサ55と、ボルト56と、ナット57とから構成されている。連結部53は、連結筒材53aと、連結板材53bと、連結ピン53cと、抜け止めピン53dとから構成されている。
【0034】
連結筒材53aは、略角筒状を呈し、かつ、内周が延長フレーム52の外周よりわずかに大きく、延長フレーム52に遊嵌可能に構成されている。連結筒材53aの一端53aa近傍には、上下方向(図4に示すZ1−Z2方向)に貫通孔53acが穿設されている。一方、連結筒材53aの他端53abには、連結板材53bの上端53baが、例えば、溶接等により一体的に取り付けられている。連結板材53bは、例えば、鋼板からなり、下端53bbの近傍から上端53baに向かって所定間隔を隔てて、貫通孔53bc、53bd及び53beが穿設されている。貫通孔53bc、53bd及び53beは、作動部54の高さ調整のために設けられている。
【0035】
作動部54は、基体58と、すき板59と、ストッパ60とが一体的に形成されて構成されている。基体58は、例えば、鋼板からなり、下端58bから全体の略3分の1の部分(屈曲箇所)58cのところで略くの字状に屈曲している。すなわち、基体58は、上端58aから屈曲箇所58cまでの直線部58dと、屈曲箇所58cと下端58bまでの屈曲部58eとから構成されている。基体58の下端面58baは、連結板材53bと基体58を構成する直線部58dとがほぼ完全に重なった際に、圃場表面と略平行となるように形成されている。
【0036】
基体58が略くの字状に屈曲しているのは、圃場に散在する散在物をすくい上げて除去するためである。この屈曲の角度は、例えば、基体58を構成する屈曲部58eの先端及びすき板59の下端59aが圃場にわずかに進入した状態において、グランドレベルGLに対して約40〜50°である。屈曲の角度をグランドレベルGLに対して約40〜50°とするのは以下に示す理由による。まず、作業部13の前進作業時に畦塗り作業速度(例えば、約0.2〜1.2km/h)で効率的に散在物をすくい上げるためである。一方、作業部13の後進作業時に散在物を引っ掛けにくくして散在物を逃がすためである。
【0037】
基体58の連結板材53bと対向する面58fとは反対側の面であって、屈曲部58eの上端58ea及び直線部58dの一部には、すき板59が基体58と一体的に形成されている。すき板59を設けたのは、上記散在物を畦を形成する方向とは反対方向(図1〜図3のX1方向)へ除去するためである。すき板59の詳細な作用については後述する。
【0038】
さらに、作動部54全体の重心よりやや基体58の上端58a寄りには、図示しないが貫通孔が穿設されている。そして、上記図示せぬ貫通孔の中心軸と、上記貫通孔53bc〜53beのいずれかの中心軸とを重ねた後、基体58の連結板材53bと対向する面58fとは反対側の面側から上記図示せぬ貫通孔及び上記貫通孔53bc〜53beのいずれかにボルト56が挿通され、連結板材53bの面53bfから突出され、スペーサ55を介してナット57が螺合されている。これにより、作動部54は、ボルト56を回転軸として連結板材53bに対して回動可能に構成されている。上記貫通孔を作動部54全体の重心よりやや基体58の上端58a寄りに穿設するのは、作動部54が作動していない場合には、自重により基体58を構成する直線部58dの一部と連結板材53bとがほぼ重なる状態とするためである。
【0039】
基体58の上端58aであって、基体58の連結板材53bと対向する面58f側には、ストッパ60が基体58と一体的に形成されている。ストッパ60の略中央には、略U字状を呈する溝60aが穿設されている。
【0040】
以上説明した構造を有する散在物除去装置51は、連結部53を構成する連結筒材53aが延長フレーム52に遊嵌され、連結筒材53aに穿設された貫通孔53acと上記延長フレーム52に穿設された複数の貫通孔のいずれかとが位置合わせされた後、これらの貫通孔に連結ピン53cが挿通され、連結筒材53aの下面から突出された連結ピン53cの先端53ca近傍に穿設された貫通孔53cbに抜け止めピン53dが挿通されることにより、延長フレーム52に取り付けられる。すなわち、散在物除去装置51は、畦塗り機1の進行方向と直交する方向に位置調整可能である。したがって、シールドカバー44に混入する散在物を最も少なくすることができる最適な位置に散在物除去装置を51取り付けることができる。
【0041】
そして、作動部54が作動していない場合には、ストッパ60の溝60aの内底部60aaと、連結板材53bのストッパ60と対向する面53bgとの間には、わずかにクリアランスが設けられている。一方、前進作業状態において、作動部54が作動状態にある場合には、作動部54を構成する基体58の屈曲部58eとすき板59が圃場の土壌や藁等の散在物と接触することにより、作動部54がボルト56を回転軸として連結板材53bに対して進行方向後方に回動する。そして、ストッパ60の溝60aの内底部60aaに連結板材53bのストッパ60と対向する面53bgが当接することにより、作動部54の回動が規制される。
【0042】
次に、上記構成の畦塗り機1の動作について、図を参照して説明する。まず、走行機体2の後部(図2においてY2方向側)に設けられた3点リンクヒッチ機構(図示略)の一対の連結フレーム21a及び21bを連結するとともに、走行機体2のPTO軸に動力伝達軸(いずれも図示略)を介してギアボックス23の入力軸(図示略)を連結する。
【0043】
次に、圃場や旧畦の状況に応じて各種の調節をした後、走行機体2により畦塗り機1を畦際に沿って配設する。この走行機体2により畦塗り機1が畦際に沿って牽引進行されるとともに、走行機体2のPTO軸からの出力によって動力伝達軸(いずれも図示略)を介してギアボックス23の入力軸(図示略)が回転されると、この入力軸からギアボックス23内の駆動軸を経た後、複数のクラッチ及び伝動フレーム38に内蔵されたチェーン等からなる動力伝達機構(図示略)を通じ、作業部13に伝達される。
【0044】
これにより、前処理体41が左右方向(図2のX1−X2方向)に回転駆動されるとともに、整畦体42が進行方向(図2のY1方向)に向かって回転駆動される。したがって、前処理体41は、旧畦及び圃場の各一部を畦切り爪41aが図1及び図3において上から下に細かく砕きながら切り崩して緩めるとともに、掃き出し爪41bがこの土壌を掃き出し、シールドカバー44が畦切り爪41aにより耕耘され、掃き出し爪41bにより掃き出された土壌を飛散させずに整畦体42に供給する。また、整畦体42は、前処理体41により耕耘された土壌を切り崩された旧畦上に塗り付けて畦に整形する。
【0045】
この際、作業部13を構成するシールドカバー44の前方に設けられている散在物除去装置51は、シールドカバー44の前方であって、圃場上に散在する藁や雑草等の散在物を左右方向(図1のX1−X2方向)の外方(図1〜図3においてX1方向)に向かって放出して除去する。すなわち、畦塗り作業をする過程において、散在物除去装置51の前に堆積し始めた散在物は、団子状となったとしても、図6に示す散在物除去装置51の作動部54を構成するすき板59の下端59aに引っ掛かった後、同じく作動部54を構成する基体58の屈曲箇所58c近傍(図6においてハッチングを施した部分)に当接し、図6においてC方向に流れ、D方向には流れない。これは、団子状となった散在物は、散在物が通過する中心線O−O’より図中左側に基体58が存在するためである。
【0046】
この場合、前進作業状態において、作動部54を構成する基体58の屈曲部58eとすき板59が圃場の土壌や藁等の散在物と接触することにより圧力を受けて、作動部54がボルト56を回転軸として連結板材53bに対して進行方向後方に回動する。そして、ストッパ60の溝60aの内底部60aaに連結板材53bのストッパ60と対向する面53bgが当接することにより、作動部54の回動が規制される。
【0047】
したがって、シールドカバー44の前方であって、旧畦の畦際の表面に散在する藁や雑草等の散在物が十分に掻き分けられ又は抜き取られて左右方向(図1のX1−X2方向)の外方(図1〜図3においてX1方向)に向かって放出され、既に図6を参照して説明したように、シールドカバー44の進行位置前方から除去される。これにより、上記散在物除去装置51がない場合に発生する不都合、すなわち、図11(a)に示すシールドカバー44と圃場面との間における団子状の散在物101の堆積及びシールドカバー44内への進入並びに、図11(b)に示す堆積した団子状の散在物101によるシールドカバー44及び作業部13の浮き上がりを防止することができる。この結果、畦塗り作業を継続しても、畦塗り作業ができなくなることはなく、一旦畦塗り作業を中止して圃場面に堆積した散在物を手作業により除去する必要がない。この分、作業効率が向上する。また、図1〜図3において、X1方向へ散在物を放出することにより、前処理体41側への散在物の流入が少なくなるため、畦形成土内への散在物の混入が少なく、畦表面も固く締まったきれいな畦ができることになる。
【0048】
このように、本発明の実施の形態1によれば、散在物除去装置51の作業領域は、シールドカバー44の前方にほぼ限定されているので、装置を小型に構成することができる。また、本発明の実施の形態1によれば、駆動手段を必要としないので、構造が簡単であるとともに、設計の自由度が大きいという利点がある。これにより、畦塗り機1の価格を低く抑えることができる。
【0049】
また、本発明の実施の形態1によれば、図5から分かるように、散在物除去装置51を構成する作動部54は、連結板材53bに回動可能に取り付けられている。したがって、リバース(後進)作業時であっても、散在物除去装置51が圃場に引っ掛かることがなく、作業の邪魔になることはない。この場合、作業者は、作業を中断して何らかの操作をする必要がないので、使い勝手が良い。
【0050】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る散在物除去装置を構成する作動部(除去部材)61の外観構成を示す斜視図である。本実施の形態2に係る作動部61は、例えば、図1及び図2に示す畦塗り機1において、散在物除去装置51を構成する作動部54に換えて、連結部53に取り付けられるものである。この作動部61以外の畦塗り機の構成は上記した実施の形態1に係る畦塗り機1の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0051】
すなわち、本発明の実施の形態2に係る散在物除去装置は、図4及び図5に示す連結部53と、スペーサ55と、ボルト56と、ナット57と、図7に示す作動部61とから構成されている。作動部61は、基体62と、すき部63と、ストッパ64とが一体的に形成されて構成されている。基体62は、例えば、鋼板からなる。作動部61全体の重心よりやや基体62の上端62a寄りには、貫通孔62cが穿設されている。
【0052】
そして、上記貫通孔62cの中心軸と、図4及び図5に示す貫通孔53bc〜53beのいずれかの中心軸とを重ねた後、基体62の連結板材53b(図4及び図5参照)と対向する面62dとは反対側の面62e側から上記貫通孔62c及び上記貫通孔53bc〜53beのいずれかにボルト56が挿通され、連結板材53bの面53bfから突出され、スペーサ55を介してナット57が螺合される。これにより、作動部材61は、図4及び図5に示すボルト56を回転軸として連結板材53bに対して回動可能となる。
【0053】
上記貫通孔62cを作動部61全体の重心よりやや基体62の上端62a寄りに穿設するのは、作動部61が作動していない場合には、自重により基体62と連結板材53b(図4及び図5参照)とがほぼ重なる状態とするためである。
【0054】
基体62の下端62bには、すき部63の一端が取り付けられている。すき部63は、平面形状が略円弧形状を呈している。すき部63の下端面63aは、連結板材53b(図4及び図5参照)と基体62とがほぼ完全に重なった際に、圃場表面と略平行となるように形成されている。
【0055】
基体62の上端62aであって、畦塗り機の進行方向後方側には、ストッパ64が基体62と一体的に形成されている。ストッパ64は、直線部64aと屈曲部64bとが略直角をなして接続されてなる略L字状を呈している。作動部材61が作動していない場合には、ストッパ64の屈曲部64bと、図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ64と対向する面53bgとの間には、わずかにクリアランスが設けられている。
【0056】
一方、前進作業状態において、作動部材61が作動状態にある場合には、作動部材61を構成するすき部63が圃場の土壌や藁等の散在物と接触することにより、作動部材61が図4及び図5に示すボルト56を回転軸として図4及び図5に示す連結板材53bに対して進行方向後方に回動する。そして、ストッパ64の屈曲部64bに図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ64と対向する面53bgが当接することにより、作動部材61の回動が規制される。
【0057】
なお、上記構成を有する作動部61を備えた散在物除去装置を含めた畦塗り機の動作については、上記した実施の形態1における散在物除去装置51を含めた畦塗り機1の動作と略同様であるので、その説明を省略する。以上説明したように、本発明の実施の形態2によれば、上記した実施の形態1の場合と略同様の効果を得ることができる。
【0058】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態3に係る散在物除去装置を構成する作動部(除去部材)71の外観構成を示す斜視図である。本実施の形態3に係る作動部71は、例えば、図1及び図2に示す畦塗り機1において、散在物除去装置51を構成する作動部54に換えて、連結部53に取り付けられるものである。この作動部71以外の畦塗り機の構成は上記した実施の形態1に係る畦塗り機1の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0059】
すなわち、本発明の実施の形態3に係る散在物除去装置は、図4及び図5に示す連結部53と、スペーサ55と、ボルト56と、ナット57と、図8に示す作動部71とから構成されている。作動部71は、垂直基体72と、水平基体73と、すき部74と、ストッパ75とが一体的に形成されて構成されている。垂直基体72は、例えば、鋼板からなる。作動部71全体の重心よりやや垂直基体72の上端72a寄りには、貫通孔72cが穿設されている。
【0060】
そして、上記貫通孔72cの中心軸と、図4及び図5に示す貫通孔53bc〜53beのいずれかの中心軸とを重ねた後、垂直基体72の連結板材53b(図4及び図5参照)と対向する面72dとは反対側の面72e側から上記貫通孔72c及び上記貫通孔53bc〜53beのいずれかにボルト56が挿通され、連結板材53bの面53bfから突出され、スペーサ55を介してナット57が螺合される。これにより、作動部材71は、図4及び図5に示すボルト56を回転軸として連結板材53bに対して回動可能となる。
【0061】
上記貫通孔72cを作動部71全体の重心よりやや垂直基体72の上端72a寄りに穿設するのは、作動部71が作動していない場合には、自重により垂直基体72と連結板材53b(図4及び図5参照)とがほぼ重なる状態とするためである。
【0062】
垂直基体72の下端72bには、水平基体73の後端73a近傍が取り付けられている。水平基体73は、例えば、鋼板からなる。水平基体73の前端73bには、すき部74が取り付けられている。すき部74は、平面形状が略矢尻形状を呈している。すき部74の最大幅W1は、シールドカバー44の幅W(図3参照)に略等しい又は大きい。上記最大幅W1がシールドカバー44の幅W(図3参照)に略等しい又は大きいのは、シールドカバー44に圃場に散在している藁等の散在物が極力引っ掛かってたまらないようにするためである。すき部74の下端面74aは、連結板材53b(図4及び図5参照)と垂直基体72とがほぼ完全に重なった際に、圃場表面と略平行となるように形成されている。
【0063】
垂直基体72の上端72aであって、畦塗り機の進行方向後方側には、ストッパ75が垂直基体72と一体的に形成されている。ストッパ75は、直線部75aと屈曲部75bとが略直角をなして接続されてなる略L字状を呈している。作動部材71が作動していない場合には、ストッパ75の屈曲部75bと、図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ75と対向する面53bgとの間には、わずかにクリアランスが設けられている。
【0064】
一方、前進作業状態において、作動部材71が作動状態にある場合には、作動部材71を構成するすき部74が圃場の土壌や藁等の散在物と接触することにより、作動部材71が図4及び図5に示すボルト56を回転軸として図4及び図5に示す連結板材53bに対して進行方向後方に回動する。そして、ストッパ745の屈曲部75bに図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ75と対向する面53bgが当接することにより、作動部材71の回動が規制される。
【0065】
なお、上記構成を有する作動部71を備えた散在物除去装置を含めた畦塗り機の動作については、上記した実施の形態1における散在物除去装置51を含めた畦塗り機1の動作と略同様であるので、その説明を省略する。以上説明したように、本発明の実施の形態3によれば、上記した実施の形態1の場合と略同様の効果を得ることができる。
【0066】
実施の形態4.
図9は、本発明の実施の形態4に係る散在物除去装置を構成する作動部(除去部材)81の外観構成を示す斜視図である。本実施の形態4に係る作動部81は、例えば、図1及び図2に示す畦塗り機1において、散在物除去装置51を構成する作動部54に換えて、連結部53に取り付けられるものである。この作動部81以外の畦塗り機の構成は上記した実施の形態1に係る畦塗り機1の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
すなわち、本発明の実施の形態4に係る散在物除去装置は、図4及び図5に示す連結部53と、スペーサ55と、ボルト56と、ナット57と、図9に示す作動部81とから構成されている。作動部81は、基体82と、すき部83と、ストッパ84とが一体的に形成されて構成されている。基体82は、例えば、鋼板からなる。作動部81全体の重心よりやや基体82の上端82a寄りには、貫通孔82cが穿設されている。
【0068】
そして、上記貫通孔82cの中心軸と、図4及び図5に示す貫通孔53bc〜53beのいずれかの中心軸とを重ねた後、基体82の連結板材53b(図4及び図5参照)と対向する面82dとは反対側の面82e側から上記貫通孔82c及び上記貫通孔53bc〜53beのいずれかにボルト56が挿通され、連結板材53bの面53bfから突出され、スペーサ55を介してナット57が螺合される。これにより、作動部材81は、図4及び図5に示すボルト56を回転軸として連結板材53bに対して回動可能となる。
【0069】
上記貫通孔82cを作動部81全体の重心よりやや基体82の上端82a寄りに穿設するのは、作動部81が作動していない場合には、自重により基体82と連結板材53b(図4及び図5参照)とがほぼ重なる状態とするためである。
【0070】
基体82の下端82bには、すき部83の一端が取り付けられている。すき部83は、平面形状が略三角形状を呈している。すき部83の最大幅W2は、シールドカバー44の幅W(図3参照)に略等しい又は大きい。上記最大幅W2がシールドカバー44の幅W(図3参照)に略等しい又は大きいのは、シールドカバー44に圃場に散在している藁等の散在物が極力引っ掛かってたまらないようにするためである。すき部83の下端面83aは、連結板材53b(図4及び図5参照)と基体82とがほぼ完全に重なった際に、圃場表面と略平行となるように形成されている。
【0071】
基体82の上端82aであって、畦塗り機の進行方向後方側には、ストッパ84が基体82と一体的に形成されている。ストッパ84は、直線部84aと屈曲部84bとが略直角をなして接続されてなる略L字状を呈している。作動部材81が作動していない場合には、ストッパ84の屈曲部84bと、図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ84と対向する面53bgとの間には、わずかにクリアランスが設けられている。
【0072】
一方、前進作業状態において、作動部材81が作動状態にある場合には、作動部材81を構成するすき部83が圃場の土壌や藁等の散在物と接触することにより、作動部材81が図4及び図5に示すボルト56を回転軸として図4及び図5に示す連結板材53bに対して進行方向後方に回動する。そして、ストッパ84の屈曲部84bに図4及び図5に示す連結板材53bのストッパ84と対向する面53bgが当接することにより、作動部材81の回動が規制される。
【0073】
なお、上記構成を有する作動部81を備えた散在物除去装置を含めた畦塗り機の動作については、上記した実施の形態1における散在物除去装置51を含めた畦塗り機1の動作と略同様であるので、その説明を省略する。以上説明したように、本発明の実施の形態4によれば、上記した実施の形態1の場合と略同様の効果を得ることができる。
【0074】
実施の形態5.
上述の各実施の形態では、作動部54、61、71又は81の高さを調整するために、連結板材53bに複数の貫通孔を穿設する例を示したが、これに限定されない。作動部54、61、71又は81の高さを調整するために、例えば、図10に示すように、高さ調整機構91を設けても良い。この高さ調整機構91は、作動部54、61、71又は81が取り付けられるロッドネジ部材(図示略)と、例えば、図1及び図2に示す延長フレーム52に固定されてロッドネジ部材に螺合するウォームギア部材92とからなっている。このウォームギア部材92でロッドネジ部材を垂直方向に上下動させることにより、作動部54、61、71又は81を上下方向に任意に高さ調整できるようになっている。ウォームギア部材92は、上記ロッドネジ部材を貫通させるケーシング93と、貫通したロッドネジ部材に螺合するギア(図示略)と、このギアに螺合するウォーム(図示略)と、このウォームを回転させるハンドル94とから構成されている。そして、ハンドル94を回転させることにより、ロッドネジ部材、すなわち、作動部54、61、71又は81を上下動させることができるように構成されている。このように構成すれば、ハンドル94を回転させるだけで作動部54、61、71又は81の高さを調整することができ、操作性が一層向上する。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、上述の実施の形態1において、基体58を屈曲箇所58cの近傍で直線部58dと屈曲部58eとに2分割するとともに、直線部58dに対して屈曲部58eをボルト及びナット等の締結部材で固定可能に構成し、すき板59が設けられた屈曲部58eの圃場面となす角度を調整した後、上記締結部材で締結可能に構成しても良い。これにより、屈曲部58eの先端及びすき板59の下端59aが圃場に進入する深度を変更することができる。このため、圃場の土壌の質に応じて散在物を除去するのに最適な上記深度に調整することができる。
また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態1に係る畦塗り機の構成を示す正面図である。
【図2】図1に示す畦塗り機の構成を示す平面図である。
【図3】図1に示す畦塗り機から散在物除去装置を取り除いた状態における構成を示す正面図である。
【図4】図1に示す畦塗り機を構成する散在物除去装置の外観構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示す散在物除去装置を構成する作動部を回動させた状態における外観構成を示す斜視図である。
【図6】図4に示す散在物除去装置を構成する作動部の動作を説明するための概念図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る散在物除去装置を構成する作動部の外観構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る散在物除去装置を構成する作動部の外観構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る散在物除去装置を構成する作動部の外観構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態5に係る散在物除去装置の高さ調整機構の外観構成を示す概念図である。
【図11】従来技術の問題点を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0077】
1…畦塗り機、2…走行機体、11…装着部、12…オフセット部、12a…回動支点、13…作業部、21a,21b…連結フレーム、22…ヒッチフレーム、23…ギアボックス、31a,31b…支持アーム、32…主フレーム、33a,33b,33c…支持軸、34…第1のリンクフレーム、35…第2のリンクフレーム、36…第3のリンクフレーム、37…後フレーム、38…伝動フレーム、41…前処理体、41a…畦切り爪、41b…掃き出し爪、42…整畦体、43…多面体ドラム、44…シールドカバー、51…散在物除去装置、52…延長フレーム、53…連結部、53a…連結筒材、53aa…一端、53ab…他端、53ac…貫通孔、53b…連結板材、53ba,58a,58ea,62a,72a,82a…上端、53bb,58b,59a,62b,72b,82b…下端、53bc,53bd,53be,62c…貫通孔、53bf,53bg,58f,62d,62e,72d,72e,82d,82e…面、53c…連結ピン、53d…抜け止めピン、54,61,71,81…作動部(除去部材)、55…スペーサ、56…ボルト、57…ナット、58,62,82…基体、58ba,63a,74a,83a…下端面、58c…屈曲箇所、58d,64a,75a,84a…直線部、58e,64b,75b,84b…屈曲部、59…すき板、60,64,75,84…ストッパ、60a…溝、60aa…内底部、63,74,83…すき部、72…垂直基体、73…水平基体、73a…後端、73b…前端、91…高さ調整機構,92…ウォームギア部材、93…ケーシング、94…ハンドル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畦の一部及び圃場を耕耘する前処理体と、前記前処理体により耕耘された土壌に基づいて前記畦を整形する整畦体と、前記前処理体の一部を覆うとともに、前記前処理体により耕耘された前記土壌を前記整畦体に供給するカバーとを備え、走行機体に連結される畦塗り機に設けられ、前記圃場に散在する散在物を除去する散在物除去装置であって、
前記散在物除去装置は、前記カバーの前記畦塗り機の進行方向前方に設けられている
ことを特徴とする散在物除去装置。
【請求項2】
前記散在物除去装置は、前記散在物を前記畦塗り機の進行方向を基準として前記畦を形成する側とは反対側へ除去する除去部材を有していることを特徴とする請求項1に記載の散在物除去装置。
【請求項3】
前記散在物除去装置は、前記圃場面からの高さが調整可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の散在物除去装置。
【請求項4】
前記散在物除去装置は、前記走行機体側へ回動可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の散在物除去装置。
【請求項5】
前記散在物除去装置は、前記走行機体から離れる側への回動を規制するストッパを有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の散在物除去装置。
【請求項6】
前記散在物除去装置は、前記畦塗り機の進行方向と直交する方向に位置調整可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の散在物除去装置畦塗り機。
【請求項7】
前記除去部材は、前記圃場面となす角度が調整可能であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の散在物除去装置。
【請求項8】
前記散在物除去装置は、動力を持たない非駆動式であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の散在物除去装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の散在物除去装置を備えていることを特徴とする畦塗り機。
【請求項1】
畦の一部及び圃場を耕耘する前処理体と、前記前処理体により耕耘された土壌に基づいて前記畦を整形する整畦体と、前記前処理体の一部を覆うとともに、前記前処理体により耕耘された前記土壌を前記整畦体に供給するカバーとを備え、走行機体に連結される畦塗り機に設けられ、前記圃場に散在する散在物を除去する散在物除去装置であって、
前記散在物除去装置は、前記カバーの前記畦塗り機の進行方向前方に設けられている
ことを特徴とする散在物除去装置。
【請求項2】
前記散在物除去装置は、前記散在物を前記畦塗り機の進行方向を基準として前記畦を形成する側とは反対側へ除去する除去部材を有していることを特徴とする請求項1に記載の散在物除去装置。
【請求項3】
前記散在物除去装置は、前記圃場面からの高さが調整可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の散在物除去装置。
【請求項4】
前記散在物除去装置は、前記走行機体側へ回動可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の散在物除去装置。
【請求項5】
前記散在物除去装置は、前記走行機体から離れる側への回動を規制するストッパを有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の散在物除去装置。
【請求項6】
前記散在物除去装置は、前記畦塗り機の進行方向と直交する方向に位置調整可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の散在物除去装置畦塗り機。
【請求項7】
前記除去部材は、前記圃場面となす角度が調整可能であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の散在物除去装置。
【請求項8】
前記散在物除去装置は、動力を持たない非駆動式であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の散在物除去装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の散在物除去装置を備えていることを特徴とする畦塗り機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−268435(P2009−268435A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123803(P2008−123803)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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