説明

散布装置及び散布車

【課題】植物が生長して背が高くなった場合であっても何ら問題なく肥料等の散布ができる散布装置を実現することを目的とする。
【解決手段】 筺体内に回転羽根を回転自在に支持し、該筺体における上記回転羽根の回転方向側の側面に側面開口部を形成することにより側方散布部を形成し、粒状物貯蔵部から上記筺体内に供給される粒状物を上記回転羽根の回転により上記側面開口部から飛散させるように構成し、上記側面開口部の下辺に、上記回転羽根の回転方向に沿う案内面を有し、上記回転羽根にて上記側面開口部方向に飛ばされる粒状物を案内して斜め上方に飛散させるガイド板を突設し、上記ガイド板は複数枚のガイド板から構成し、上記各ガイド板は、上記側面開口部の上記下辺から側方への突出角度が互いに異なるように突設することにより、上記各ガイド板に沿って飛散する粒状物の飛散距離が異なるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦、稲(水田)、果樹、野菜、芝等の圃場に肥料等を散布するための散布装置及び該散布装置を具備する散布車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粒状の肥料を麦等の圃場に散布する装置として、散布装置の両側に進行方向に平行な軸を有する回転羽根を設け、回転する回転羽根に粒状の肥料を供給することにより、回転羽根の回転により、散布装置の左右方向に肥料を飛ばし、圃場の所定範囲に施肥を行う装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、施肥装置であって、進行方向に直交する垂直の回転軸を有する円形ファンを設けると共に、当該ファンに粒状の肥料を供給することにより、該ファンの回転により施肥装置の左右方向に肥料を散布する装置が提案されている(特許文献2,3)。
【0004】
また、散布装置の左右方向に長い散布管を設け、該散布管を圃場の麦の上部に位置させ、該散布管から下方向けて肥料を散布する装置が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−301795
【特許文献2】特開平7−203735
【特許文献3】実公昭43−17655
【特許文献4】特開平7−227191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の装置では、左右の回転羽根から略水平方向に向けて肥料が散布されるため、成長して麦等の植物の背が高くなると、散布される肥料が手前に位置する植物の茎に当たりそこで落下するため、回転羽根から遠くに位置する植物に十分な施肥が行われ難いという課題がある。また、水平方向に飛散する肥料等が勢い良く植物の茎に当接し、植物の茎を損傷することもあった。
【0007】
上記特許文献2,3の装置では、中央の単一のファンにより肥料を散布するものであるから、左右方向以外の方向にもランダムに散布されるおそれがあり、効率的な施肥が行われ難いという課題がある。また、散布は水平方向に相当の速度で飛ばされるので、上記と同様の課題がある。
【0008】
上記特許文献4の装置では、散布管自体を昇降することによって植物の上部から散布が可能である点で上記課題は解消するが、左右の散布範囲が散布管の長さに依存するので、広範囲の散布装置を実現する場合は、装置が大型となるし、植物が散布管の上限位置を超えた場合は、散布管を広げたままの圃場内の移動自体が困難となるという課題もある。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、植物が生長して背が高くなった場合であっても何ら問題なく肥料等の散布ができ、しかも手前位置から遠方位置まで万遍なく施肥を実現し得る散布装置を実現することを目的とする。
【0010】
また、本発明は広範囲に亙り効率的な肥料等の散布を実現し得る散布装置を具備した散布車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、粒状物貯蔵部と、該粒状物貯蔵部に貯蔵された粒状物を送出す送出ローラ部と、該送出ローラ部から送出された粒状物を空中に散布する側方散布部とを機枠に固定することにより構成された散布装置において、筺体内に回転羽根を回転自在に支持し、該筺体における上記回転羽根の回転方向側の側面に側面開口部を形成することにより上記側方散布部を形成し、上記粒状物貯蔵部から上記筺体内に供給される粒状物を上記回転羽根の回転により上記側面開口部から飛散させるように構成し、上記各回転羽根の外側縁部は上記筺体内側面に接触しないように上記筺体内側面から所定距離を離間して配置すると共に、上記回転羽根の回転軸に回転羽根駆動モータを接続し、上記側面開口部の下辺に、上記回転羽根の回転方向に沿う案内面を有し、上記回転羽根にて上記側面開口部方向に飛ばされる粒状物を案内して斜め上方に飛散させるガイド板を突設し、上記ガイド板は複数枚のガイド板から構成し、上記各ガイド板は、上記側面開口部の上記下辺から側方への突出角度が互いに異なるように突設することにより、上記各ガイド板によって上記粒状物の飛散距離が異なるように構成したものであることを特徴とする散布装置により構成される。
【0012】
上記機枠は例えばコ字状取付板(15a),U型固定アングル(31)、取付アングル(33)等により構成することができる。上記粒状物貯蔵部は例えばタンク(8)により構成することができる。上記粒状物は例えば粒状の肥料である。上記送出ローラ部は例えば肥料送りローラ(9)、下部ホッパー部(10a,10b)、ホース(11a,11b)等により構成することができる。上記回転羽根の外側縁部は、羽根板(24)の他縁(24b’)により構成することができる。上記側方散布部は側方散布部(12a又は12a’)により構成することができる。上記ガイド板は例えば湾曲ガイド板(27A〜27C)により構成することができる。上記案内面は、例えば上記ガイド板の湾曲部(27’)により構成することができる。このように構成すると、回転羽根の回転により粒状物を側面開口部を介して斜め上方に向けて飛散させることができ、これにより圃場における植物の上部から肥料等の粒状物を落下させることで散布することができ、粒状物を横方向に勢い良く飛ばすことにより植物(作物)の茎等を破損する等の事態を防止することができる。また、突出角度が異なる複数のガイド板を設けたので、一のガイド板によって高く飛ばされて遠距離まで飛散される粒状物と、他のガイド板によって低く飛ばされてより短い距離まで飛散される粒状物と、回転羽根から途中で離脱することにより中距離まで飛散される粒状物と、回転羽根から初期段階で離脱して最も近距離に飛ばされる粒状物が混在し、これにより遠距離から近距離まで万遍なく粒状物を散布することができる。そして、側方の斜め上方向に粒状物を散布することができるため、例えば圃場における左右方向の広い範囲に亘って、肥料等の粒状物を植物の上部から落下させることで散布することができ、背の低い新芽の時期においても、またある程度成長した時期においても、植物を傷つけることなく、適切に肥料の散布を行うことができる。
【0013】
第2に、上記各ガイド板は下向き湾曲部を有する湾曲ガイド板によって構成されており、上記下向き湾曲部の接線の水平線に対する下向き傾斜角度が互いに異なるものであることを特徴とする上記第1記載の散布装置により構成される。
【0014】
従って、例えば下向き傾斜角度が大と小の湾曲ガイド板を設けることにより、下向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板によって粉粒体をより高く遠距離に飛ばすことができ、下向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板によって粒状体を低く近距離に飛ばすことができ、また中間距離及び最も近距離に飛ばされる粒状物が混在し、結果として、遠距離から近距離に万遍なく粉粒体を飛散させることができる。
【0015】
第3に、上記ガイド板を、上記下向き湾曲部の接線の水平線に対する下向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板と、上記下向き湾曲部の接線の水平線に対する下向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板により構成し、上記下向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板によって上記粒状物を所定距離まで飛散させると共に、上記下向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板によって上記粒状物を上記所定距離より短い距離まで飛散させるものであることを特徴とする上記第2記載の散布装置により構成される。
【0016】
従って、下向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板は粉粒体を所定距離(例えば遠距離)まで飛ばすことができ、下向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板は粒状体をより低く飛ばすので、上記所定距離(遠距離)より短い距離まで飛ばすことができ、さらに中間距離及び最も近距離に飛ばされる粒状物が混在し、結果として、遠距離から近距離に万遍なく粉粒体を飛散させることができる。ここで、下向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板と同角度が大の湾曲ガイド板を示すが、これは2種類の下向き傾斜角度を有する2枚の湾曲ガイド板のみをいうのではなく、例えば下向き傾斜角度が小、中、大の3枚の湾曲ガイド板であっても、下向き傾斜角度「小」と「中」の湾曲ガイド板に着目すると、下向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板と上記下向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板により構成されているとみなされるし、下向き傾斜角度「中」と「大」の湾曲ガイド板に着目すると、下向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板と下向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板により構成されているとみなされるのである。よって、角度の大小は相対的な概念であり、湾曲ガイド板の枚数を限定するものではない。
【0017】
第4に、上記各ガイド板は、その先端縁の水平線に対する上向き傾斜角度が大のガイド板と、上記先端縁の水平線に対する上向き傾斜角度が小のガイド板とにより構成し、上記上向き傾斜角度が大のガイド板によって上記粒状物を所定距離まで飛散させると共に、上記上向き傾斜角度が小のガイド板によって上記粒状物を上記所定距離より短い距離まで飛散させるものであることを特徴とする上記第1記載の散布装置により構成される。
【0018】
このように構成すると、上記上向き傾斜角度が大のガイド板によって上記粒状物を所定距離(例えば遠距離)まで飛散させると共に、上記上向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板によって上記粒状物を上記所定距離より短い距離まで飛散させることができ、さらに中間距離及び最も近距離に飛ばされる粒状物が混在し、結果として、遠距離から近距離に万遍なく粒状体を飛散させることができる。ここで、上向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板と同角度が小の湾曲ガイド板を示すが、これは2種類の上向き傾斜角度を有する2枚の湾曲ガイド板のみをいうのではなく、例えば上向き傾斜角度が大、中、小の3枚の湾曲ガイド板であっても、上向き傾斜角度「大」と「中」の湾曲ガイド板に着目すると、上向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板と上記上向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板により構成されているとみなされるし、上向き傾斜角度「中」と「小」の湾曲ガイド板に着目すると、上向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板と上向き傾斜角度が中の湾曲ガイド板により構成されているとみなされる。よって、角度の大小は相対的な概念であり、湾曲ガイド板の枚数を限定するものではない。
【0019】
第5に、上記粒状物貯蔵部から上記送出ローラ部により送り出された粒状物を下方向けて散布する下向散布部を上記側方散布部に隣接して上記機枠に固定し、上記下向散布部は上記送出ローラ部より送り出されてきた上記粒状物を下方に案内する案内板を有しており、上記案内板上には、上方から落下してくる上記粒状物が当接して上記粒状物を左右に振り分ける誘導突起と、上記誘導突起の下方の左右位置に設けられ、上記左右に振り分けられた上記粒状物が当接して上記粒状物をさらに左右に振り分ける一対の補助誘導突起とが設けられているものであることを特徴とする上記第1〜4の何れかに記載の散布装置により構成される。
【0020】
上記下向散布部は下向散布部(12b,12b’)により構成することができる。このように構成すると、下向散布部においても下方の左右方向の所定の範囲に粒状物を散布することができ、側方だけではなく中央部下方を含めて肥料等の粒状物を万遍なく散布することができる。
【0021】
第6に、上記第1〜5の何れかに記載の散布装置を具備する散布車であって、上記散布装置を上記側方散布部の上記側面開口部が上記散布車の進行方向に対して右側又は左側に位置するように上記散布車に配置したものであることを特徴とする散布装置を具備する散布車により構成される。
【0022】
上記散布車は散布車(2)により構成することができる。このように構成すると、散布車によって圃場における広範囲に亘って肥料等の粒状物を植物の上方から落下させることにより散布することができる。これにより、植物の成長時期、即ち植物の背の高低に拘わらず、適切に粒状物を散布することができる。また、散布装置の側面開口部を若干下向きに傾斜させることにより、粒状物を左斜め上方又は右斜め上方に適切な角度で飛散させることができ、粒状物は上方に向けて円弧を描くように飛散し、植物の上方から落下させることにより散布することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は上述のように構成したので、圃場における植物の上部から肥料等の粒状物を落下させることで粒状物を散布することができるので、圃場における植物の成長初期の段階は勿論、成長して植物の背が高くなった場合においても、植物の茎や葉を傷めることなく、広範囲に効率的に肥料等の粒状物を散布することができる。
【0024】
また、角度の異なる複数のガイド板によって遠距離から近距離まで粒状物を散布することができ、遠距離から近距離まで万遍なく肥料等の粒状物を散布することができる。即ち、角度の異なる複数のガイド板によって肥料を斜め上方に向けた異なる角度で飛散させることができるので、肥料を斜め上方に高く飛ばす際に、ガイド板によって肥料の飛び出し高さを異ならせることにより、複数種類の肥料の飛散距離を発生させることができ、これにより、遠距離から近距離まで万遍なく肥料を散布することを可能としたものである。
【0025】
また、粒状物を左斜め上方又は右斜め上方に適切な角度で飛散させることができ、粒状物は上方に向けて円弧を描くように飛散し、植物の上方から落下させることにより適切に散布することができる。
【0026】
また、本発明の散布車によると、麦畑等に限らず水田においても、きわめて効率的に広範囲の肥料散布等を行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る散布装置を適用した散布車の側面図である。
【図2】同上装置の散布機の一部断面側面図である。
【図3】同上装置を適用した散布車の正面図である。
【図4】(a)は同上装置の散布部の正面図、(b)は同散布部の側面断面図である。
【図5】同上装置の回転羽根の斜視図である。
【図6】同上装置を適用した散布車の散布機の正面図である。
【図7】同上装置の散布部の電気的構成を示す電気回路図である。
【図8】同上散布車により圃場(麦)において肥料散布する状況を示す図である。
【図9】同上装置の散布部の側面断面図である。
【図10】(a)は同上装置により成長した麦に肥料を散布する状況を示す図、(b)は同上装置により麦の新芽に肥料を散布する状況を示す図である。
【図11】同上装置の散布部の平面図である。
【図12】(a)は、下向散布部の側面図、(b)は下向散布部の正面図である。
【図13】(a)は両端の散布機におけるシャッターを示す該シャッター近傍の散布機の横断面図、(b)は中央部の散布機における分割されたシャッターを示す該シャッター近傍の散布機の横断面図である。
【図14】同上散布車により圃場(水田)において肥料散布する状況を示す図である。
【図15】同上散布車により片側散布を行う状況を示す図である。
【図16】(a)は同上装置の散布部の他の実施形態の正面図、(b)は同散布部の他の実施形態の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る散布装置1を詳細に説明する。
図1は上記散布装置1を農薬等の散布車2の前部2aにセットした状態を示す側面図である。かかる図において、上記散布車2は、前輪3a(2輪)及び後輪3b(2輪)を有し、左右方向に水平に伸びる農薬等の散布管4を有しており(図1では散布管4を支点4aから車体に沿って後方に折り畳んだ状態を示す)、圃場においては、当該散布管4を支点4aを基点として左右に開いて、当該管4に沿った複数個所から下方向けて農薬等を散布するものである。このような散布車2は例えば圃場における農薬散布等の各種管理作業を行う所謂乗用管理機である。
【0029】
この散布管4の1本の長さは片側で最大で7mであり、車幅が約1mであることを考慮すると、左右合わせると最大で約15mの範囲(左散布管7m+前輪3a間1m+右散布管7m)に農薬等を散布し得る能力を有している。
【0030】
上記散布車2の前部2aの左右方向フレーム2b(図3参照)の上面には(図2参照)、2つのL字型アングル7,7の下部がボルト及びナットBで起立固定されており、これらアングル7,7の上端前面側に上記左右方向フレーム2bと略同じ長さの水平角棒5がボルト及びナットBにより固定されている。そして、上記水平角棒5には、前後方向支持アングル6の後端の取付管6aが挿通されており、当該アングル6は、その前端上面に設けられた凹型取付部6bの左右方向凹部6b’を上方に向けた状態で水平に固定されている。
【0031】
この前後方向支持アングル6は、図3に示すように、上記水平角棒5の中心線Pを中心として、左側に所定間隔を以って2個、右側に所定間隔を以って2個固定されており、左側2個の支持アングル6,6の上記凹型取付部6b,6bの左右方向凹部6b’,6b’には後述の散布機7a,7bを支持する短水平支持杆14aが載置されボルト及びナットBで各々上記左右方向凹部6b’,6b’に固定され、右側2個の支持アングル6,6の上記凹型取付部6b,6bの上記左右方向凹部6b’,6b’には後述の散布機7c,7dを支持する短水平支持杆14bが載置されると共にボルト及びナットBで上記左右方向凹部6b’,6b’に固定されている。
【0032】
このように上記散布装置1は、図3に示すように、4台の散布機7a,7b,7c,7dを上記水平角棒5に一定間隔で横方向に並べた状態で、1つのユニットを構成している。また、後述するが、上記左端の散布機7aの側方散布部12aから左斜め上方(矢印C1,C2,C3方向)に向けて肥料を散布し(肥料の最大到達距離約7m、領域E1)(図8参照)、右端の散布機7dの側方散布部12a’から右斜め上方(矢印C1,C2,C3)に向けて肥料を散布し(肥料の最大到達距離約7m、領域E2)、かつ中央の2つの散布機7b,7cの下端に設けられた下向散布部12b,12b’から下方に向けて(Y1,Y2,Y3,Y4方向)肥料を散布することで(左右方向に約1mの範囲、領域E3)、左右方向に全体として最大約15m(左7m+中央1m+右7m)の範囲に亙って均等に肥料を散布することができるものである。
【0033】
上記散布機7a,7bは、1本の上記短水平支持杆14aに一対のコ字状取付板15a,15bを以って立設支持されており、上記短水平支持杆14aは、上述のように、上記前後方向支持アングル6,6の前端の凹型取付部6b,6bの左右方向凹部6b’,6b’上に嵌合固定され、ボルト及びナットBにて固定することにより、上記散布車2の前部2aの左側に固定されている(図3参照)。
【0034】
上記散布機7c,7dは、1本の上記短水平支持杆14bに一対のコ字状取付板15c,15dを以って立設支持されており、上記短水平支持杆14bは、上述のように、上記前後方向支持アングル6,6の後端の凹型取付部6b,6bの左右方向凹部6b’,6b’上に嵌合固定され、ボルト及びナットBにて固定することにより、上記散布車2の前部2aの右側に固定されている(図3参照)。
【0035】
上記散布車2の左右方向フレーム2bは可動フレーム2b’に支持されており(図1)、該可動フレーム2b’は、昇降駆動モータM5により支軸2b”を支点として回動可能であり(図1矢印G,T方向)、これにより上記左右方向フレーム2bも矢印I,J方向に昇降自在となっている(図1、2点鎖線参照)。従って上記左右方向フレーム2bに取り付けられた上記散布装置1も、上記左右方向フレーム2bの昇降により矢印I,J方向に昇降可能となっている。これは、後述の側方散布部12a,12a’及び下向散布部12b,12b’の高さを調整するものであり、通常これらの散布部の高さを圃場における植物の上端位置(丈)に合わせることができるように構成している。
【0036】
これらの散布機7a乃至7dの基本的な構成は同一であるので、以下、散布機7a(図2)を例にその構造を説明し、他の散布機7b乃至7dについては、同一部分に同一符号を附してそれらの説明は便宜上省略する。尚、シャッター、ホースの取り回し構成等、各散布機毎に異なる点については、その都度説明する。
【0037】
同図において、8はタンクであり、本実施形態の場合は、該タンク8内に粒状の肥料が投入される。このタンク8の下端部には開口8aがあり(図13参照)、投入された肥料は該開口8aから下方の肥料送りローラ9に落下する。この送りローラ9の外周面には肥料を収納して下方に送るための凹部9aが設けられており、凹部9a内に投入された肥料は該ローラ9の矢印A方向の回転により下方に送られ、上記ローラ9の下部に左右方向に並設された2つの下部ポッパー部10a,10bに落下される。そして、このホッパー部10a,10bの下端開口には各々ホース11a,11bが各々接続されている。
【0038】
また、上記開口8aには該開口8aを開閉する方形板によるシャッターSが設けられている(図13(a))。このシャッターSはタンク8を支持する水平フレーム15a’(15d’)の両側案内ガイドレール46,46に左右縁部を案内されることにより該レール46,46に沿って前後にスライド自在に設けられており、シャッターSを閉鎖することにより、タンク8内の肥料の上記送りローラ9への供給を停止することができる。このシャッターSは前方にスライドすることにより、上記開口8aを開口し、後方にスライドすることにより該開口8aを閉鎖し得るものである。このシャッターSの構造は、両端の散布機7a,7dにおいては同一であるが、中央部の散布機7b,7cにおいては若干異なっている。
【0039】
中央部の散布機7b,7cでは、上記シャッターSは図13(b)に示すように、上記開口8aを左右に二分割する左右のシャッターS1,S2に分離されており、左右独立して開閉できるように構成されている。即ち、上記水平フレーム15b’(15c’)には左右の両側案内ガイドレール46,46の他、中央ガイドレール47が設けられており、両開閉シャッターS1,S2は左右のガイドレール46及び中央ガイドレール47に案内されることにより、両レールに沿って左右独立して開閉できるように構成されている。
【0040】
このように中央部の散布機7b,7cにおいてシャッターS1,S2を左右に2分割したのは、該散布機7bについて説明すると、上記開口8aから下方に落下する肥料の内、左側から落下する肥料は送りローラ9の左側部分により左側のホッパー部10aを介して側方散布部12aに落下して行き左斜め上方に散布され、上記開口8aから下方に落下する肥料の内、右側から落下する肥料は送りローラ9の右側部分より右側のホッパー部10bを介して下向散布部12bから下方に散布されるので、側方散布部12aに供給される肥料と、下向散布部12bに供給される肥料を独立して供給、停止の制御を行えるように構成したものである。
【0041】
即ち、上記シャッターS1を開、上記シャッターS2を閉鎖することにより、上記側方散布部12aに肥料を供給しながら、下向散布部12bに供給される肥料のみを停止することができ、また逆に上記側方散布部12aに供給される肥料のみを停止し、下向散布部12bのみに肥料を供給する、等という制御を可能とするためである。尚、上記散布機7cにおいても同様である。
【0042】
このように各散布機7a〜7dにシャッターS,S1,S2を設けることにより、例えば左側及び下側のみ散布して、右側の散布を停止する場合は、散布機7a,7bのシャッターS及びシャッターS1,S2を開き、散布機7cのシャッターS1のみ開き、上記散布機7cのシャッターS2と散布機7dのシャッターSを閉鎖することにより、実現することができる。また、逆に、右側及び下側のみ散布して、左側の散布を停止する場合は、散布機7c,7dのシャッターS1,S2及びシャッターSを開き、散布機7bのシャッターS2のみ開き、上記散布機7bのシャッターS1と散布機7aのシャッターSを閉鎖することにより、実現することができる。
【0043】
上記散布機7aの肥料送りローラ9と隣接する散布機7bの肥料送りローラ9の中心には1本の共通の駆動シャフト9’が設けられており、当該駆動シャフト9’は取付板15aを貫通し、左端の取付板15aから左方に突出し、当該突出部をローラ駆動モータM1により回転駆動されるように構成されている。これにより上記散布機7a,7bの上記送りローラ9,9は上記駆動シャフト9’により同時に同方向(矢印A方向)に回転駆動される。
【0044】
また、散布機7cと散布機7dの肥料送りローラ9,9の中心にも同様に1本の共通の駆動シャフト9’が設けられており、当該駆動シャフト9’は取付板15dを貫通して設けられており、右端の取付板15dから右方に突出し、当該突出部をローラ駆動モータM2により回転駆動し得るように構成されている。これにより上記散布機7c,7dの上記送りローラ9,9は上記駆動シャフト9’により同時に同方向(矢印A方向)に回転駆動される。
【0045】
上記散布機7aの上記ホース11a,11b内に投入された肥料は、当該ホースにより下方に誘導され、ホース下端に設けられた側方散布部12aにおいて回転羽根13により当該散布車2の左上方向(図3矢印C1,C2,C3方向)に飛ばされるように構成されている(図8、図9参照)。
【0046】
上記各散布機7a乃至7dにおいて、左側2つの散布機7a,7bの散布部12a,12bの構成と、右側2つの散布機7c,7dの散布部12a’,12b’の構成は上記中心線Pを中心とする左右対称構造となっている。即ち、左右端部の側方散布部12a,12a’は、回転羽根13により各々肥料を左斜め上方向、右斜め上方向に飛ばすものであり(図8参照)、中央左右の下向散布部12b,12b’は各々ホース11d,11eにより下方に散布するものである(図3矢印Y1〜Y4方向、図8参照)。
【0047】
そして、上記散布機7aの2本のホース11a,11bは各下端が側方散布部12aのホース支持管26に接続されており、また、上記散布機7bの2本のホース11c,11dの内、下部ホッパー部10aに接続された散布機7a側のホース11cは、同様に上記散布部12aの上記ホース支持管26に接続されており、各々のホース11a,11b,11c内を通って落下してきた肥料は上記回転羽根13により左斜め上方向に散布されるものである。
【0048】
また、上記散布機7bの下部ホッパー部10bに接続された他方のホース11dはその下端が下向散布部12bに接続固定されており、当該ホース11c内を通って落下してきた肥料は、該ホース11d下端11d’から下方に散布される(矢印Y1〜Y4方向)。
【0049】
また上記散布機7dの下部ホッパー部10a,10bに接続された2本のホース11g,11hは各下端が側方散布部12a’のホース支持管26に接続されており、また、上記散布機7cの2本のホース11e,11fのうち、散布機7d側の下部ホッパー部10bに接続されたホース11fは同様にその下端が側方散布部12a’の上記ホース支持管26に接続されており、該ホース11f,11g,11hを通って落下してきた肥料は上記側方散布部12a’の回転羽根13により右斜め上方向(図3、矢印C1〜C3方向)に飛ばされる(図8参照)。
【0050】
さらに、上記散布機7cの下部ホッパー部10aに接続された他方のホース11eは下向散布部12b’に接続固定されており、当該ホース11eを通って落下してきた肥料は、該ホース11e下端11e’から下方に散布される(矢印Y1〜Y4方向)。
【0051】
上記肥料の散布エリアは、図8に示すように、上記側方散布部12aでは散布車2の左側の近傍位置から遠方位置まで最大約7mの領域E1であり、上記側方散布部12a’では散布車2の右側の近傍位置から遠方位置まで最大約7mの領域E2である。また中央の散布部12bは下方の範囲e1、中央の散布部12bは下方の範囲e2であり(図3)、これらの散布部12a,12a’,12b,12b’により散布車2を中心として左側に7m、中央部に1m(E3=e1+e2)、右側に7mの合計15mの範囲に肥料を散布することができる。
【0052】
次に、側方散布部12a,12bの構成について詳述する。該側方散布部は、回転羽根による回転型の散布部12a,12a’と、回転羽根を使用しない落下型の下向散布部12b,12b’とから構成されている。これらの散布部は上述のように、中心線Pにより左右対称に設けられているので、左側の側方散布部12a,12bの説明を行い、右側の散布部12a’,12b’については、同一部分には同一符号を附してそれらの説明は便宜上省略する。
【0053】
上記側方散布部12aは、図4(a)に示すように、回転羽根収納筐体(筺体)21と、当該筐体21に連設されたモータ収納筐体22とから構成されており、当該筐体22の内部に固設された回転羽根駆動モータM3の回転シャフト22aが上記回転羽根収納筐体21の長手方向の略中心に配置されている。尚、他方の側方散布部12a’の回転羽根駆動モータを回転羽根駆動モータM4とする(図7参照)。
【0054】
この回転シャフト22aには、軸方向からみて120度毎の角度を持って3箇所に羽根板固定短板23が放射状に設けられており(図5参照)、これら3箇所の羽根板固定短板23各々に羽根板(回転羽根)24が各々ボルト及びナットBにより固定されている。尚、25,25は上記羽根板24の両端部を支持する支持円盤である。
【0055】
上記各羽根板固定短板23は例えば金属により構成されており、各短板23に羽根板24が固定されている。上記羽根板24は、ゴム板製の羽根板24aとその表面側の略前面を覆うように積層状態で固定された金属板24bとから構成されており、該金属板24bは回転羽根の回転方向側に設けられている。このように回転羽根をゴム板24aと回転羽根24bの2重構造としたのは、ゴム板24aの弾性的な力と、金属板24bの硬さを利用して、近距離から遠距離まで万遍なく肥料を適切に飛ばすことを可能とするためである。
【0056】
上記各羽根板24は、長方形状を成し、その長手方向の一縁24a’が上記固定短板23にボルト及びナットBを持って固定され、長手方向の他端(外側縁部)24b’が上記回転羽根収納筐体21の内壁に接近した位置となるように設置されている。尚、上記羽根板24の他端24b’は図4(b)に示すように、筺体21内壁に対して所定間隔を置いており、かつ後述の湾曲ガイド板(ガイド板)27A〜27Cに対しても所定間隔を置いて、接触しない位置にあるように構成している。
【0057】
上記湾曲ガイド板27A〜27Cは、3枚の角度の異なる湾曲ガイド板27A,27B,27Cより構成されている。これらの湾曲ガイド板27A,27B,27Cは何れも側面開口部21bの下辺21b’より下に凸状に湾曲する下向き湾曲部(案内面)27’を有しており、その先端縁27A’,27B’,27C’(図9)が若干上向きとなるような湾曲面を各々構成しているものであり、各ガイド板毎に上記側面開口部21bの下辺21b’から側方への突出角度が互いに異なるように突設されている。このように構成することによって、各ガイド板27A〜27Cによって上記肥料の飛散距離が異なるように構成している。
【0058】
上記3枚の湾曲ガイド板27A〜27Cは、この実施形態では、各々略同一の曲率円弧面を有する湾曲ガイド板を用いており、上記下辺21b’から側方への突出角度のみを異ならせた構成となっている。
【0059】
よって、図9に示すように、水平線Hに対する下向き傾斜角度θ1が最も大きい湾曲ガイド板27Aの先端縁27A’の、水平線H1に対する上向き傾斜角度α1が最小で、上記水平線Hに対する下向き傾斜角度θ2が中間の湾曲ガイド板27Bの先端縁27B’の、水平線H2に対する上向き傾斜角度α2が中間で、上記水平線Hに対する下向き傾斜角度θ3が最も小さい湾曲ガイド板27Cの、先端縁27C’の水平線H3に対する上向き傾斜角度α3が最も大きくなるように構成されている。
【0060】
詳述すると、最も駆動モータM3に近い位置にある湾曲ガイド板27Aは、その湾曲部27’の外面の接線L1(図9)の水平線Hに対する下向き傾斜角度θ1が最も大きく、よって最も下向きに湾曲している。従って、先端縁27A’の傾きは水平線H1に近い角度であるが、水平線H1より若干左斜め上向きの角度(水平線H1に対する上向き傾斜角度)α1となるように構成されている。
【0061】
上記湾曲ガイド板27Aに隣接する湾曲ガイド板27Bは、その湾曲部27’の外面の接線L2の水平線Hに対する下向き傾斜角度θ2が、上記角度θ1よりも若干小さく(θ2<θ1)、よって中間の下向き角度で下向きに湾曲している。従って、先端部27B’の傾きが上記角度α1よりもより若干上向きの中間の左斜め上向きの角度(水平線H2に対する上向き傾斜角度)α2(>α1)となるように構成されている。
【0062】
上記湾曲ガイド板27Bに隣接する湾曲ガイド板27Cは、その湾曲部27’の外面の接線L3の水平線Hに対する下向き傾斜角度θ3が上記角度θ2よりも若干小さく(θ3<θ2)、よって最も浅く下向きに湾曲している。従って、先端部27C’の傾きが上記角度α2よりも若干上方の角度、即ち、最も上に向いた左斜め上向きの角度(水平線H3に対する上向き傾斜角度)α3(>α2)となるように構成されている。
【0063】
従って、上記3つの湾曲ガイド板27A,27B,27Cの上記水平線Hに対する角度は、θ1>θ2>θ3と、上記駆動モータM3から遠ざかるにつれて、上記下向き傾斜角度が徐々に小さくなるように構成されており、同時に、各湾曲ガイド板27A,27B,27Cの先端縁27A’,27B’,27C’は、上記駆動モータM3から遠ざかるにつれて、上記上向き傾斜角度が、α1<α2<α3と、徐々に大きくなるように構成されている。
【0064】
このように上記湾曲ガイド板は、下向き湾曲部27’を有する複数の湾曲ガイド板によって構成されており、上記湾曲部27’の共通水平線Hに対する下向き傾斜角度が互いに異なるように構成されている。また、上記各湾曲ガイド板は、その先端縁の水平線に対する上向き傾斜角度が大のガイド板と、上記先端縁の水平線に対する上向き傾斜角度が小(上記大より小さい小の)ガイド板とにより構成し、上記上向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板によって上記肥料を所定距離(例えば遠距離又は中距離)まで飛散させると共に、上記上向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板によって上記肥料を上記所定距離より短い距離(中距離又は短距離)まで飛散させるように構成されている。
【0065】
このように構成すると、上記羽根板24が矢印B方向に回転したとき、その表面の回転により、上記湾曲ガイド板27Aに沿って斜め上方に飛ばされる肥料は、最も浅い上向角度α1の先端部27A’より、最も低い上向き角度(略角度α1)にて矢印C1方向に飛ばされ、よってこの湾曲ガイド板27Aに沿って飛ばされた肥料は、最も手前に落下することになる。即ち、最も近い距離まで飛ばされる。
【0066】
上記湾曲ガイド板27Bに沿って斜め上方に飛ばされる肥料は、上記角度α1より若干大きな中間の上向き傾斜角度(略α2)にて矢印C2方向に、上記湾曲ガイド板24Aによって飛ばされた肥料より、より高く飛ばされるため、この湾曲ガイド板24Bに沿って飛ばされた肥料は、上記湾曲ガイド板27Aによって飛ばされた肥料より遠くの中距離まで飛ばされる。
【0067】
上記湾曲ガイド板24Cに沿って斜め上方に飛ばされる肥料は、最も大きな上向き傾斜角度(略α3)にて矢印C3方向に飛ばされ、これにより上記湾曲ガイド板27Bによって飛ばされた肥料よりも、より高い位置まで舞い上がるため、最も遠くに飛ばされ、この湾曲ガイド板27Cによって飛ばされた肥料は、上記最も遠くの遠距離まで飛ばされる(図8参照)。
【0068】
このように、上記各湾曲ガイド板27A〜27Cは、上記側面開口部21bの上記下辺21b’から側方への突出角度が互いに異なるように突設することにより、各ガイド板27A〜27Cによって上記肥料の飛散距離が異なるように構成している。
このように、上記湾曲ガイド板を、上記湾曲部の接線の共通水平線Hに対する下向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板と、上記下向き傾斜角度が大の(上記小より大きい大の)湾曲ガイド板により構成し、上記下向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板によって上記肥料を所定距離(例えば遠距離又は中距離)まで飛散させると共に、上記下向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板によって上記肥料を上記所定距離より短い距離(中距離又は近距離)まで飛散させるように構成したものである。
【0069】
また、上述のように、上記羽根板24の他端24b’は、筺体21内壁に対して所定間隔を置いており、上記各湾曲ガイド板27A〜27Cに対しても所定間隔を介して接触しない位置にあるように構成している。このように構成すると、上記羽根板24が回転したとき、羽根板に当接してその表面の回転により所定距離(遠距離、中距離、近距離)まで飛ばされる肥料(図8矢印C1,C2,C3)と、羽根板24に係合するが、途中で羽根板24から離脱した後に上記湾曲ガイド板27A〜27Cに沿って飛ばされて、上記矢印C1で示す距離と矢印C2で示す距離の中間の距離まで飛ばされる肥料、上記矢印C2で示す距離と上記矢印C3で示す距離の中間の距離まで飛ばされる肥料が生じる。さらに、上記回転羽根24に係合せず又は早期に羽根板24から離脱して、羽根板24の回転の初期段階で羽根板24から落下して湾曲ガイド板27A〜27Cに沿って上方に舞い上がるが近距離(矢印C1より手前の距離)にて落下する肥料が発生する。従って、結果として近距離(矢印C1で示す距離より手前側)から遠距離(矢印C3にて示す距離)までの間において、万遍なく肥料を散布することができる(図8参照)。
【0070】
図16に示すものは、上記湾曲ガイド板の他の実施形態を示すものであり、図4の実施形態のものと比較して、湾曲ガイド板を2枚としたものである。具体的には、図4の下向き傾斜角度がθ2の湾曲ガイド板27BをモータM3方向に延長し、当該湾曲ガイド板27Bと、上記湾曲ガイド板27Cの2枚としたものである。このように構成しても、上記図4の実施形態に比べて肥料の飛距離が短くなるが、同様に万遍なく肥料を散布することができる。尚、上記湾曲ガイド板の数は限定されるものではなく、角度の異なる複数枚のガイド板であれば、4枚以上であっても良い。
【0071】
上記回転羽根収納筐体21は、その上面側に上記回転羽根13の長手方向に沿った導入口21aが開口されており、該導入口21aには上記ホース先端部を支持する上記ホース支持管26が突設されている。
【0072】
また、上記導入口21aに対向する上記筐体21の面は、側面開口部21bとなっており、該側面開口部21bから上記羽根板24の回転(矢印B方向)により肥料が放出されるように構成されている。上記側面開口部21bは、図4(a)に示すように、略長方形状の開口から形成されており、その下辺21b’には湾曲ガイド板27A〜27Cの各一端が固定されている。
【0073】
上記側面開口部21bの上辺には、その中央部に一定間隔(T)を置いて2箇所の切込28,28を設け、これら切込28,28間の部分を上記筺体21上面に対して直交するまで直角に折り曲げることにより起立片29が設けられ、これにより上記筺体21上面に上記側面開口部21bに連通する上面拡大開口部30が形成されている(図4(a)、図11参照)。この起立片29は、上記上辺の略全副(T)に亘って設けられており、図9に示すように、上記回転羽根13によって斜め上方に飛ばされる肥料(特に、湾曲ガイド板27Cにより最も高く飛ばされる肥料或いは湾曲ガイド板27Bによって左斜め上方に飛ばされる肥料等)を遮ることなく、肥料を左斜め上方に円滑に飛ばすために設けられたものである。また、上記起立片29は左斜め上方(矢印C1〜C3方向)に飛ぶ肥料を同方向にガイドする機能を有する。
【0074】
上記起立片29及び上面拡大開口部30を設けることにより、該起立片29により形成された上面拡大開口部30を通って左斜め上方に肥料を飛ばすことが可能となり、これにより図8に示すように、麦等の植物の上方からの肥料の散布を可能とすることができる。即ち、上記筺体21の上記側面開口部21bに連なる上面に上記側面開口部21bに連通する上面拡大開口部30を形成すると共に、該上面拡大開口部30の縁部に沿って起立片29が形成されている。
【0075】
上記側方散布部12aは、図6に示すように、上記筺体21の上下面の水平線qに対する傾斜角度βが45度下向きとなるようにU型固定アングル31の下面部31aに取付アングル33を以って固定されている(図4(b)参照)。即ち、上記散布装置1の上記側面開口部21bは、水平位置から若干下向きに傾斜した状態で上記散布車2に固定されている。よって、上記側面開口部21bも全体として水平より45度下方に傾斜して設置されていることになるが、上記回転羽根13は下方から上向き(矢印B方向)に回転するため、上記導入口21aから筺体21内部に導入された肥料は、上記回転羽根13により左斜め上方(矢印C1,C2,C3方向)に飛ばされることになる。
【0076】
上記側面開口部21bを45度下向きに傾斜させると、上記回転羽根13の矢印B方向の回転により、肥料は左斜め上方に適切な角度で飛び出し、全体として比較的高く上昇した後、落下するように飛散させることができる。
【0077】
よって、図8に示すように、全体として肥料は左斜め上方(右側の側方散布部12a’の場合は右斜め上方)に一旦高く飛ばされた後、曲線の軌跡を描きながら麦等の植物の上方から下方に落下していくことになり、成長過程の麦Q等(図10(b))に限らず、背の高い植物Q(図10(a))に対しても、上方から肥料Nを散布することができ、横方向から勢い良く飛んできた肥料等により植物が倒されることはない。
【0078】
上記実施形態は側方散布部12aについての説明であるが、側方散布部12a’については左右対称形状であるだけでその他の構成、作用は同一である。尚、上述のように、右側の散布部12a’に関しては、肥料の飛ぶ方向は右斜め上方となる(図8矢印C1,C2,C3参照)。
【0079】
図12に示すように、上記下向散布部12bは、上記ホース11dの下端11d’が挿通固定されたホース固定管32と、該ホース固定管32が固定された案内板45と該案内板45に上端を固定された幅広案内板45’とから構成されている。この下向散布部12bは、上記固定管32の側面に固定用横杆31aが固定されており、当該固定用横杆31aの端部が回動アーム31’下端の固定管31bに挿通固定されている。上記回動アーム31’はその上端部が上記U型固定アングル(機枠)31に回動支点Nを以って角度調整可能に設けられており、これにより、上記下向散布部12bは鉛直方向に対して角度γだけ前方に傾斜した状態で上記U型固定アングル(機枠)31に固定されている(図12(a))。
【0080】
50は上記案内板45における上記ホース下端11d’の直下の位置に前方に向けて突出した状態で固定された円筒状の誘導突起、51,52は上記案内板45において上記誘導突起50から等距離の位置の左右下方に前方に向けて突出した状態で固定された円筒状の補助誘導突起である。
【0081】
このように、上記粒状物貯蔵部から上記送出ローラ部により送り出された肥料を下方向けて散布する下向散布部12bを上記側方散布部12aに隣接して機枠(上記U型固定アングル31、上記回動アーム31’等)に固定し、上記下向散布部12bは上記送出ローラ部より送り出されてきた上記肥料を下方に案内する案内板45を有しており、上記案内板45上には、上方から落下してくる上記肥料が当接して上記粒状物を左右に振り分ける誘導突起50と、上記誘導突起50の下方の左右位置に設けられ、上記左右に振り分けられた上記肥料が当接して上記肥料をさらに左右に振り分ける一対の補助誘導突起51,52とが設けられている。
【0082】
よって、上記ホース11dの下端11d’から下方向けて落下する肥料は、まず上記誘導突起50の周面に当接して左右斜め下方(矢印Y1、Y2方向)に振り分けられるが、矢印Y1方向(左斜め下方)に誘導された肥料の一部はさらに補助誘導突起51の周面に当接して右斜め下方(矢印Y3方向)にも振り分けられて落下する。また、上記誘導突起50に当接して左右斜め下方(矢印Y1、Y2方向)に分散された後、矢印Y2方向(右斜め下方)に誘導された肥料の一部はさらに補助誘導突起52の周面に当接して左斜め下方(矢印Y4方向)に誘導されて落下する。
【0083】
よって、上記ホース11dから落下する肥料は、上記誘導突起50及び左側の補助誘導突起51により左右斜め下方(矢印Y1方向、Y3方向)に誘導されて落下され、上記誘導突起50及び右側の補助誘導突起52により左右斜め下方(矢印Y2方向、矢印Y4方向)に誘導されて落下されるため、下向き散布部12bにおいて、その下方のエリアにおいて万遍なく肥料を散布することができる。
【0084】
よって、上記ホース11dの下端11d’からは上記誘導突起50、補助誘導突起51、52によって誘導された肥料が下方のe1の範囲に落下する(図3参照)。上記下向散布部12b’も同一の構成を有しており、ホース下端11e’から上記誘導突起50、補助誘導突起51,52によって下方向けて肥料がe2の範囲に散布される。散布される肥料は上記案内板45,45’に沿って前方に向けて散布され、これら案内板45,45’により後方への落下が同様に防止される。従って、上記中心線Pを中心として、上記下向散布部12bと上記散布部12b’により前輪3a,3aの間の約1mの範囲(e1+e2)において肥料を散布することができる。この場合、上記下向散布部12bと12b’の各々の誘導突起50、補助誘導突起51,52によって肥料は矢印Y1,Y3,Y4,Y2方向に分散して散布されるので、上記エリアe1+e2の範囲(E3)において、肥料を万遍なく散布することができる。
【0085】
尚、上記下向散布部12b,12b’の前方傾斜角度γは、より小さい角度でもよく、或いは、上記下向散布部12b,12b’を鉛直方向に向けても良い。図12において45a,45a’は各々案内板45,45’における下端前方折曲片であり、落下する肥料を前方側に誘導するものである。
【0086】
図7に本発明の散布装置の電気的構成を説明する。同図は、本発明に係る散布機の送りローラを駆動するローラ駆動モータM1,M2と、側方散布部12a,12a’の回転羽根の駆動モータM3,M4を駆動するための電気的ブロック図である。散布車2のバッテリー41に散布スイッチSW1が接続されており、当該スイッチSW1に過電流制御回路42を介してローラ回転スイッチSW2、肥料送りローラ9用のモータ速度制御回路43、及び側方散布部12a,12a’用のモータ速度制御回路44が接続されている。上記モータ速度制御回路43は上記送りローラ9の回転速度を低速、中速、高速の3段階に切り換えるための速度切換スイッチ43aが設けられており、上記モータ速度制御回路44には上記散布部12a,12a’の回転羽根13の回転速度を低速、中速、高速の3段階に切り換えるための速度切換スイッチ44aが設けられている。上記モータ速度制御回路43にはトランジスタTR1を介してローラ駆動モータM1,M2が接続されており、上記モータ速度制御回路44にはトランジスタTr2,Tr3を介して各々回転羽根駆動モータM3,M4が接続されている。尚、上記各駆動モータM1,M2と過電流制御回路42との間にはモータM1,M2の負荷電流検出回路48、上記各駆動モータM3,M4と過電流制御回路42との間にはモータM3,M4の負荷電流検出回路49が接続されている。
【0087】
このように上記速度切換スイッチ43a,44aを切り換えることにより、上記トランジスタTr1又はTr2,Tr3を介して各駆動モータM1〜M4に印加される電圧を変化させ、上記各モータの回転速度を変化させるものである。
【0088】
従って、上記散布スイッチSW1をオンすると、速度切換スイッチ44aにて設定された速度にて散布用の回転羽根駆動モータM3及びM4が同時に回転する。かかる状態においてローラ回転スイッチSW2をオンすると、速度切換スイッチ43aにて設定されている速度にて送りローラ9の駆動モータM1,M2が同時に回転する。このとき、例えば側方散布部12a,12a’の回転速度を「高速」に設定した場合は、肥料の最大の飛距離(湾曲ガイド板24Cによって飛ばされる肥料)は片側で約7mであり、その分多くの量の肥料を飛ばす必要があるので、ローラの速度切換スイッチ43aも「高速」に設定し、ローラから散布部への肥料の供給量を最大量に設定する。
【0089】
一方、例えば散布部12a,12a’の回転速度を「低速」に設定した場合は、肥料の最大の飛距離は片側で約2.5m(湾曲ガイド板24Cによって飛ばされる肥料)(左約2.5m+中央約1m+右約2.5mで左右全体で約6m)であり、比較的少ない肥料を散布部に供給すればよいので、ローラの速度切換スイッチ43aも「低速」に設定すれば良い。尚、速度設定スイッチ44aを「中速」に設定した場合は、肥料の最大の飛距離(湾曲ガイド板24Cによって飛ばされる肥料)はその中間の片側約4.5m(左約4.5m+中央約1m+右約4.5mで左右全体で約10m)であるので、速度切換スイッチ43aも「中速」に設定すれば良い。このように、回転羽根駆動モータの回転速度に対応して、ローラ駆動モータの回転速度を連動させることにより、側方散布部における肥料の散布距離と、送りローラにおける肥料の側方散布部への供給量とを、適切に設定することができる。
【0090】
本発明は上述のように構成されるものであるから、以下本発明の動作を説明する。
【0091】
図8、図14に示すように散布車2にて圃場(図8は麦畑、図14は水田)に乗り入れて、左約7m、右約7m、中央約1mの範囲に肥料を散布する場合について説明する。
【0092】
速度切換スイッチ43a,44aを何れも「高速」に設定し、上記散布装置1の各タンク8に粒状の肥料を入れ、散布スイッチSW1をオンして、側方散布部12a,12a’の回転羽根13を駆動するモータM3,M4を高速で回転駆動する。さらにローラ用のスイッチSW2をオンすると、各散布機7a乃至7dの肥料送りローラ9が高速で回転し、タンク8内の肥料を1粒ずつ下方に誘導し、各肥料はホース11a乃至11gを介して下方の散布部12a,12b,12a’,12b’に誘導される。
【0093】
上記ホース11a,11b,11cを通って落下してくる肥料は側方散布部12aの導入口21aから筺体21内に落下していく。上記筺体21内では回転羽根13が高速で矢印B方向に回転しているため、肥料は当該回転羽根13の羽根板24によって筺体21の側面開口部21bから左斜め上方(図9の矢印C1〜C3方向)に飛ばされる。
【0094】
上記湾曲ガイド板24Cに沿って斜め上方に飛ばされる肥料は、最も大きな上向き角度(略α3)にて矢印C3方向に飛ばされるため、よって、最も高い位置まで舞い上がり、最も遠く(約7m)に飛ばされる(図8参照)。
【0095】
上記湾曲ガイド板24Bに沿って斜め上方に飛ばされる肥料は、中間の上向き角度(略α2)にて矢印C2方向にばされるため、中間の高さまで舞い上がり中距離まで飛ばされる。
【0096】
上記湾曲ガイド板24Aに沿って斜め上方に飛ばされる肥料は、最も浅い上向角度の先端部27A’より、最も低い上向き角度(略α1)にて矢印C1方向に飛ばされ、よってこの湾曲ガイド板24Aに沿って飛ばされた肥料は、最も手前に落下することになる。
【0097】
このように、上記3枚の湾曲ガイド板27A〜27Cによって、結果として近距離から遠距離までの間において、万遍なく確実に肥料を散布することができる(図8参照)。
上記回転羽根13によって飛ばされる肥料は図8に示すように、全体が左斜め上方に一旦高く飛ばされた後に、円弧を描きながら圃場に落下することになるため、例えば麦Qの新芽のように背の低い場合には勿論(図10(b))、成長して背が高くなった場合(図10(a))においても、水平方向の領域E1の全範囲において、麦Qの上方から肥料Nを落下させるように散布することができる。これにより、水平方向に肥料を飛ばすことによって肥料が麦等の植物の茎、葉等に当接することによる麦等の植物の倒れ又は葉の破損を防止することができる。
【0098】
また、上記側面開口部21bから左斜め上方に飛ばされる肥料には、上記羽根板24Cよって確実に遠距離まで飛ばされるもの(図8矢印C3)、上記羽根板24Bよって確実に中距離まで飛ばされるもの(図8矢印C2)、上記羽根板24Aよって確実に近距離まで飛ばされるもの(図8矢印C1)、が存在するが、それ以外にも、上記羽根板24A〜Cの回転途中に羽根から離脱する等して各々遠距離、中距離、近距離まで飛ばされずに、それらの距離より短い距離までしか飛ばされないもの、即ち、上記遠距離と中距離の間までしか飛ばされないもの、上記中距離と上記近距離の間までしか飛ばされないもの、上記近距離より近い距離までした飛ばされないものが発生し、さらに導入口21aから羽根板24A〜Cに至るが、導入口21a近傍位置から早期に羽根板24A〜Cから離脱し、湾曲ガイド板27に沿って一旦上方に飛ばされるが近距離にて落下するものが発生し、各矢印の中間位置に飛ばされる肥料が各々発生するため、結果として領域E1の全部の範囲において、近距離から遠距離まで万遍なく肥料を散布することができる。
【0099】
上記説明では散布部12aの動作について説明したが、側方散布部12a’においても散布方向が右斜め上方となるだけで、同様の動作を行うことができる(図8右側矢印C1,C2,C3参照)。
【0100】
さらに、上記下向散布部12b,12b’においては、ホース11d,11eを通って落下してきた肥料が下方向けて(矢印Y1〜Y4方向)万遍なく落下させることができる。
【0101】
このように、結果として左約7m、右約7m、中央部約1mの左右方向合計15mの範囲において広範囲に万遍なく肥料を散布することができる。
【0102】
従って、上記散布を継続しながら散布車2を前方に進めることで、広範囲に肥料を散布することができる。
【0103】
圃場がより狭い場合は、上記切換スイッチ43a,44aを中速、又は低速に切り換えることによりローラ駆動モータM1,M2及び回転羽根駆動モータM3,M4の回転速度を中速、又は低速に切り換えることにより、散布部への肥料供給量を適切な量にしつつ、最大到達距離を圃場の広さに応じて減少することができる。この場合、肥料の最大到達距離(図8の矢印C3までの距離)が減少するが、当該減少した領域において、上記実施形態と同様に、肥料を上方から落下するように、しかも万遍なく散布することができるものである。
【0104】
また、散布車2の前部の左右方向フレーム2bを上下方向に昇降可能に構成することにより、散布部12a,12a’,12b,12b’の地面からの高さを調整することができる。通常は、散布部の開口の高さが植物の上端の高さと略一致するような高さに設定することが好ましい(図8、図14)。
【0105】
一方、散布機において、例えば左側及び下側だけの肥料散布を行う場合は、右側2つの散布機7c,7dのシャッターS2及びシャッターSを閉鎖すればよい。そうすると、上記散布機7c,7dにおいてタンク8内の肥料が側方散布部12a’に落下供給されなくなるので、左側の側方散布部12a及び下向散布部12b,12b’から左側及び下側だけ肥料を散布することができる(図15参照)。尚、右側及び下側だけ散布する場合は、左側の散布機7a,7bのシャッターS及びシャッターS1を同様に閉鎖すれば良い。
【0106】
このような左側のみ或いは右側のみの肥料散布の必要性は、圃場の規模や形状、周辺の建築物、隣接する圃場との関係等から非常に高く、本発明によると、広範囲への肥料散布を実現しつつ、上述のような片側散布を容易に行うことができる。しかも、肥料を長距離飛散し得るにもかかわらず長い棒状の器具等は一切使用しないので、散布車の片側を壁に接近させた状態で他方に散布する等の片側散布動作をも容易に行うことができる。
【0107】
以上のように本発明によると、回転羽根13の回転により粒状物を上面拡大開口部30及び側面開口部21bを介して斜め上方に向けて飛散させることができ、これにより圃場における麦、稲等の植物の上部から肥料等の粒状物を落下させることで散布することができ、粒状物を横方向に勢い良く飛ばすことにより植物の茎、葉等を破損する等の事態を防止することができる。
【0108】
また、角度の異なる複数のガイド板によって肥料を斜め上方に向けた異なる角度で飛散させることができるので、肥料を斜め上方に高く飛ばす際に、ガイド板によって肥料の飛び出し高さを異ならせることにより、複数種類の肥料の飛散距離を発生させることができ、これにより、遠距離から近距離まで万遍なく肥料を散布することを可能としたものである。
【0109】
また、回転羽根13の他端(外側縁部)24b’は筺体内側面から所定距離を離間して配置されているので、回転羽根13によって遠距離まで飛散される粒状物と、回転羽根13から途中で離脱することにより中距離まで飛散される粒状物と、回転羽根13から初期段階で離脱して近距離に飛ばされる粒状物が混在し、これにより遠距離から近距離まで万遍なく粒状物を散布することができる。
【0110】
また、左斜め上方向及び右斜め上方向に粒状物を散布することができるため、例えば圃場における左右方向の広い範囲に亘って、肥料等の粒状物を植物の上部から落下させることで散布することができ、背の低い新芽の時期においても、またある程度成長した時期においても、植物を傷つけることなく、適切に肥料の散布を行うことができる。
【0111】
また、中央部の散布部においても下方に粒状物を散布することができ、中央部を含めて左右方向に均等に肥料等の粒状物を散布することができる。
【0112】
また、回転羽根駆動モータM3,M4の回転速度を変更することにより、粒状物の飛散距離を調整することができる。
【0113】
また、散布部における肥料の飛散距離に合わせてローラの駆動モータの回転速度を変更することにより、散布部における肥料の飛散距離に合わせて側方散布部への肥料の供給量を調整することができる。
【0114】
また、散布車によって圃場における広範囲に亘って肥料等の粒状物を植物の上方から落下させることにより散布することができる。これにより、植物の成長時期、即ち植物の背の高低に拘わらず、適切に粒状物を散布することができる。
【0115】
また、散布部12a,12a’の側面開口部21bを若干下向きに傾斜させることにより、粒状物を左斜め上方又は右斜め上方に適切な角度で飛ばすことができ、粒状物は上方に向けて円弧を描くように飛散し、植物の上方から落下させることにより適切に散布することができる。
【0116】
また、シャッターを開閉することにより、左側又は右側のみの片側散布、或いは左側及び下側、右側及び下側等の片側散布を簡単に実現することができ、圃場の配置、形状等に合わせた肥料の片側散布を容易に実現することができる。
【0117】
また、上記実施形態においては、本発明に係る散布装置を乗用管理機に取り付ける場合を示したが、乗用管理機に限らず、トラクターその他の乗用移動車両の前面部に取り付けても良い。
【0118】
また、例えば、麦の追肥作業においては、刈取前の成長期に、従来型の施肥機を圃場に入れることができないため、人力による作業のみでしか施肥作業はできなかったが、本発明によれば、散布装置を散布車に搭載することで、背が高く成長した麦であっても、施肥作業が可能になり、人力での施肥作業をなくすことができ、一度に最大15mの幅で施肥作業ができるので、施肥作業時間も大幅に短縮できる。
【0119】
また、稲の施肥作業の場合にも、特に、田植え後、水田での施肥作業は、機械化が遅れている分野のひとつであったが、本発明によると、散布装置を散布車に搭載することで、散布車を水田に入れることで(図14参照)、水田での広範囲の施肥作業を効率的に行うことができ、同様に、水田においても、人力での施肥作業をなくすことができ、一度に最大15mの幅で施肥作業ができるので、施肥作業時間も大幅に短縮できる。
【0120】
また、側方散布部の散布距離に対応して送出ローラ部のローラの回転速度を変更することで側方散布部への粒状物の供給量を調整することができ、散布距離に応じて適切な肥料等の供給量を設定することができる。即ち、回転羽根の回転速度に応じて側方散布部への肥料等の供給量を連動して変更することができる。また、回転羽根の回転速度(飛散距離)に応じて側方散布部への肥料等の供給量を連動して自動的に変更制御できるように構成することもできる。
【0121】
また、本発明の散布車によると、麦畑に限らず水田等においても、きわめて効率的に広範囲の肥料散布等を行うことができるものである。
【0122】
上記実施形態では、散布機の4台を1ユニットとして設けた事例を示したが(図3の事例)、散布部12a,12a’を有する2台の散布機7a,7dを1ユニットとして散布車2に設置しても良いし、散布部12aを有する1台の散布機7aのみを散布車2に設置するように構成しても良い。
【0123】
尚、図1において、34はタンク8の蓋、35は散布車2のハンドル、36は運転者37のシート、38はエンジン収納部、39は車体フレーム、図10において、Nは粒状物としての肥料、Qは麦等の植物、Gは圃場である。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明に係る散布装置又は散布車は、麦又は稲等に対する肥料等の散布装置として用いることができる。また、肥料に限らず、種子等の粒状物の散布装置又は散布車としても広く用いることができるものである。
【符号の説明】
【0125】
1 散布装置
2 散布車
2b 左右方向フレーム(支持フレーム)
2b’ 可動フレーム
5 水平角棒(左右方向の水平支持杆)
8 タンク(粒状物貯蔵部)
9 肥料送りローラ
10a,10b 下部ホッパー部
11a〜11h ホース
12a,12a’ 側方散布部
12b,12b’ 下向散布部
13 回転羽根
21 回転羽根収納筺体(筺体)
21b 側面開口部
21b’ 下辺
24 羽根板(回転羽根)
24b’ 他端(外側縁部)
27A〜27C 湾曲ガイド板
27’ 下向き湾曲面(案内面)
29 起立片
30 上面拡大開口部
31 U型固定アングル
45 案内板
50 誘導突起
51,52 補助誘導突起
M1,M2 ローラ駆動モータ
M3,M4 回転羽根駆動モータ
M5 昇降駆動モータ
S 開閉シャッター
S1,S2 開閉シャッター
θ1〜θ3 下向き傾斜角度
α1〜α3 上向き傾斜角度
H,H1〜H3 水平線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物貯蔵部と、該粒状物貯蔵部に貯蔵された粒状物を送出す送出ローラ部と、該送出ローラ部から送出された粒状物を空中に散布する側方散布部とを機枠に固定することにより構成された散布装置において、
筺体内に回転羽根を回転自在に支持し、該筺体における上記回転羽根の回転方向側の側面に側面開口部を形成することにより上記側方散布部を形成し、
上記粒状物貯蔵部から上記筺体内に供給される粒状物を上記回転羽根の回転により上記側面開口部から飛散させるように構成し、
上記各回転羽根の外側縁部は上記筺体内側面に接触しないように上記筺体内側面から所定距離を離間して配置すると共に、上記回転羽根の回転軸に回転羽根駆動モータを接続し、
上記側面開口部の下辺に、上記回転羽根の回転方向に沿う案内面を有し、上記回転羽根にて上記側面開口部方向に飛ばされる粒状物を案内して斜め上方に飛散させるガイド板を突設し、
上記ガイド板は複数枚のガイド板から構成し、
上記各ガイド板は、上記側面開口部の上記下辺から側方への突出角度が互いに異なるように突設することにより、上記各ガイド板によって上記粒状物の飛散距離が異なるように構成したものであることを特徴とする散布装置。
【請求項2】
上記各ガイド板は下向き湾曲部を有する湾曲ガイド板によって構成されており、
上記下向き湾曲部の接線の水平線に対する下向き傾斜角度が互いに異なるものであることを特徴とする請求項1記載の散布装置。
【請求項3】
上記ガイド板を、上記下向き湾曲部の接線の水平線に対する下向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板と、上記下向き湾曲部の接線の水平線に対する下向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板により構成し、
上記下向き傾斜角度が小の湾曲ガイド板によって上記粒状物を所定距離まで飛散させると共に、上記下向き傾斜角度が大の湾曲ガイド板によって上記粒状物を上記所定距離より短い距離まで飛散させるものであることを特徴とする請求項2記載の散布装置。
【請求項4】
上記各ガイド板は、その先端縁の水平線に対する上向き傾斜角度が大のガイド板と、上記先端縁の水平線に対する上向き傾斜角度が小のガイド板とにより構成し、
上記上向き傾斜角度が大のガイド板によって上記粒状物を所定距離まで飛散させると共に、上記上向き傾斜角度が小のガイド板によって上記粒状物を上記所定距離より短い距離まで飛散させるものであることを特徴とする請求項1記載の散布装置。
【請求項5】
上記粒状物貯蔵部から上記送出ローラ部により送り出された粒状物を下方向けて散布する下向散布部を上記側方散布部に隣接して上記機枠に固定し、
上記下向散布部は上記送出ローラ部より送り出されてきた上記粒状物を下方に案内する案内板を有しており、
上記案内板上には、上方から落下してくる上記粒状物が当接して上記粒状物を左右に振り分ける誘導突起と、上記誘導突起の下方の左右位置に設けられ、上記左右に振り分けられた上記粒状物が当接して上記粒状物をさらに左右に振り分ける一対の補助誘導突起とが設けられているものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の散布装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の散布装置を具備する散布車であって、
上記散布装置を上記側方散布部の上記側面開口部が上記散布車の進行方向に対して右側又は左側に位置するように上記散布車に配置したものであることを特徴とする散布装置を具備する散布車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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