説明

敷きマット

【課題】表面が水で濡れても滑りが抑えられ、転倒して怪我をするといった危険性を減らすことができる敷きマットを提供する。
【解決手段】表面で開口した複数の縦孔5を有する非発泡樹脂製の敷きマットMであって、該敷きマットMの表面に所定粒度の砥粒が固着された表面押しロール61の表面を押し付けて型押しすることにより滑り止め面7を成形した構成からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床、玄関、浴室等建物の中または出入口に敷かれる非発泡樹脂製の敷きマットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の敷きマットには、例えば表面で開口する複数の縦孔を設けた非発泡樹脂製の敷きマットがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特公平6−55403号公報(第4−5頁、図5,図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記敷きマットは、例えばポリ塩化ビニル等の非発泡樹脂材により成形されており、特に浴室では水や石鹸液が掛かるなどしてその表面がつるつるし、非常に滑り易い状態になる。このため、健常者はもとより高齢者や障害者にとっては、滑って足をとられ転倒し怪我をするといった事故が起きているのが現状である。
【0004】
そこで、本発明は前記課題を解決すべくなされたもので、表面が水や石鹸液で濡れたとしても滑りが抑えられ、転倒して怪我をするといった危険性を減らすことができる敷きマットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するため、本発明に係る敷きマットは、表面で開口した複数の縦孔を有する非発泡樹脂製の敷きマットであって、該敷きマットの表面に所定粒度の砥粒を型押しすることにより滑り止め面を成形した構成からなる。所定粒度とは、♯20〜♯40の間の粒度をいい、この中から選択して設定される。
【0006】
前記砥粒の粒度は、例えば♯40であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、敷きマットの表面に所定粒度の砥粒を型押しすることにより滑り止め面を成形したので、敷きマットの表面が粗面となりざらついてすべり抵抗値が高められる。これにより、敷きマットの滑り止め機能が向上し、転倒して怪我をするといった危険性を減らすことができる。特に、前記滑り止め面では、その面に沿ったいずれの方向に対しても滑りにくいという有益な効果がある。
【0008】
また、砥粒の粒度を♯40にすれば、すべり抵抗値が高くなって、滑り止め機能がより一層向上するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る敷きマットの実施の形態を図面に基づき説明する。本発明に係る敷きマットは、例えばホテル、銀行、スーパーマーケット等建物の出入口または浴室、プールの更衣室といった建物の中に敷設される。
【0010】
図1は本発明に係る敷きマットの表から見た一部の斜視図、図2は同裏から見た一部の斜視図、図3は同一部の拡大断面図である。この敷きマットMは、軟質塩化ビニル樹脂またはスチレン・ブタジエンといった非発泡・熱可塑性樹脂から成形される。
【0011】
更に詳しく説明すると、敷きマットMは、図1及び図2に示すように真直ぐでありかつ同じ向きに所定の間隔離して平行に並ぶ複数本の細長いストリップ1と、該各細長いストリップ1間に介在しその長手方向に沿って連続する波状に湾曲すると共にそれら屈曲部2の頂部2aが隣り合う細長いストリップ1,1の対向する一側面3,3に接着される波状のストリップ4と、から構成される。これにより、各細長いストリップ1と各波状のストリップ4とにより囲われる部位に表面と裏面とで開口する無数の縦孔5が設けられる。
【0012】
図示は省略するが、前記敷きマットMは、押出し機ダイスの下面に細長いストリップ1と波状のストリップ4を押出すための開口が所定の間隔離して交互に列設される。この場合、いずれの開口も細長の長方形状をしており、しかも、細長いストリップ1を押出す開口よりも波状のストリップ4を押出す開口の方が、その短手方向の幅を広く成形している。そして、一定の流速で溶融したプラスチック材料を前記各開口から押出すと、真直ぐな細長いストリップ1よりも波状のストリップ4の方が早く流下する。これにより、細長いストリップ1間に波状に屈曲したストリップ4が接着して成形される。
【0013】
そして、敷きマットMの表面全体には、後記するように所定粒度の砥粒が固着された表面押しロール61の外周面61aを所定温度の熱を掛けた状態で押し付け型押しすることにより、無数の窪み6を有するざらざらとした粗い滑り止め面7が成形される。砥粒の粒度は♯20〜♯40の間で選択される。いずれの窪み6もその形状が不均一であって一定ではないことから、敷きマットMの表面上ではどの方向に対しても滑りにくく、この点で滑り止め機能に優れる。前記滑り止め面7は、敷きマットMの表面全体ではなく所望の模様が表れるように成形しても良いが、できればその表面全体に成形することが望ましい。
【0014】
次に、前記敷きマットMの製造方法を説明する。図4は製造工程の概略説明図であり、製造工程には、マット供給部10、糊付け部20、乾燥処理部30、冷却処理部40、加熱処理部50、表面押し部60、マット巻取部70がそれぞれこの順に並設されている。
【0015】
マット供給部10には、細長いストリップ1間に波状のストリップ4が介在して構成され、表面と裏面が開口する無数の縦孔5を有する敷きマットMの原反mが巻回した状態で配置される。糊付け部20には、巻回された前記原反mより後方であってやや上方位置に糊21を噴霧する糊タンク22が配置され、その後方に原反mの厚みよりやや狭い間隔を離して上下一対の糊絞りロール23,23が2組並設されている。前記糊21は、例えば、塩化ビニルペーストレジンが使用される。
【0016】
乾燥処理部30には、乾燥処理コンベヤ31が水平に配置され、その上方に乾燥処理コンベヤ31の搬送部の上面を覆うようにして乾燥室32が配置される。この乾燥室32は、160度〜170度の温風が内部に噴出され、原反mに噴霧された糊を乾燥処理できるようになっている。
【0017】
冷却処理部40には、冷却処理コンベヤ41が水平に配置され、その上方に冷却処理コンベヤ41の搬送部の上面を覆うようにして冷却処理室42が配置される。この冷却処理室42内の上部には、外部に設置したモータ43の駆動軸44に接続され該モータ43の駆動により自在に回転するファン45が配設される。そして、このファン45の回転により常温、すなわち15度〜30度程度、の空気を前記搬送部に向けて吹き付けられるようになっている。加熱処理部50には、遠赤外線によって搬送される原反mの表面を所定の温度(例えば、170度)に加熱できるヒータ51が配置されている。
【0018】
表面押し部60には、上下にそれぞれ表面押しロール61と裏面受けロール62とが原反mの厚みよりやや狭い間隔を離して配置される。そして、表面押しロール61は、例えばその外周面全体に研磨用の砥粒が均一にまぶされ固着されている。本実施の形態にあっては、ロール本体の外周面全体に粒度が♯40である研磨帯(図示せず。)をエポキシ接着剤により貼着している。この方法によらず、例えばロール本体の外周面にエポキシ接着剤を塗布すると共に直接前記粒度が♯40の砥粒をまぶし固着するようにしても良い。また、砥粒の粒度は♯20〜♯40のものが使用されるが、できれば粒度♯40の砥粒を使用したものが好ましい。
【0019】
最後に、マット巻取部70には、2個の巻取りロール71,71が水平に並置され、成形された製品が巻き取られるようになっている。
【0020】
そして、初めのマット供給部10から所定の速度で水平に引出された敷きマットMの原反mは、糊付け部20でその表層に糊タンク22から溶融した糊21を噴霧すると共にその後各糊絞りロール対23,23により余分な糊21が落とされる。前記原反mの送り速度は、その厚みにより異なるが、毎分50cm〜150cmの間で適宜選択される。次に、乾燥処理部30で糊21の付いた原反mに熱風を吹きかけてその糊21を乾燥させる。
【0021】
このようにして糊21が噴霧された原反mは、冷却処理室40でファン45により風が送られて冷却される。これにより、各細長いストリップ1の一側面3に波状のストリップ4の各湾曲する屈曲部2の頂部2aが糊21によってしっかりと接着される。
【0022】
続いて、加熱処理部50では、原反mの表面を再び170度で加熱する。更に、表面押し部60では、原反mの表面全体に表面押しロール61の外周面61aを押し付ける。これによって、前記外周面61aにまぶして固着された砥粒が原反mの表面に型押しされて食い込み、原反mの表面全体に無数の窪み6を有する粗い滑り止め面7が成形される。冷却処理部40により原反mを一旦冷却するのは、これをしないと表面押し部60で表面押しロール61を原反mの表面に押し付ける際、原反mが熱により柔らかくなりすぎて押し潰され変形してしまうからである。
【0023】
最後は、前記原反mの両側の耳部が切り落とされ、これがマット巻取部70にて巻取りロール71,71により製品として巻き取られる。この製品は所定の長さに切断されて敷きマットMとして使用されることになる。
【0024】
このようにして成形される敷きマットMは、図1に示すようにその表面全体に滑り止め面7が成形され、無数の窪み6を有するざらついた粗面となる。これにより、敷きマットMの表面のすべり抵抗値を高めることができ、滑り止め機能が向上して転倒し怪我をするといった危険性を減らすことができる。特に、浴室やプールの更衣室など水や石鹸液が掛かる場所では特にその効果が顕著である。しかも、滑り止め面7に沿ったいずれの方向に対しても滑りにくいので、実益がある。
【0025】
ここで、本発明に係る敷きマットMの滑り防止機能が高められるという実験結果を示す。
試料
A:マット供給部にある原反そのものを所定の長さにカットした敷きマット。
B:試料Aの表面に熱を加えながら15メッシュの金網を押し当てて格子状
の溝を成形した敷きマット。
C:本発明に係る敷きマット。
試料Bについては、細長いストリップ1と金網の一方向の線が互いに平行になるように金網を配置する。
試験方法
試料A〜Cについて、それぞれ乾燥状態と湿潤状態(水を掛ける。)とですべり抵抗値を測定して比較する。また、この方法は、(財)化学物質評価研究機構 JIS A1407に準拠する(23度にて)。なお、すべり抵抗値の数値が大きくなると滑りにくくなる。
【0026】
試験結果
状態 試験の方向 すべり抵抗値
A B C
乾燥状態 縦方向 0.54 0.44 0.66
乾燥状態 横方向 0.56 0.42 0.64
湿潤状態 縦方向 0.44 0.43 0.56
湿潤状態 横方向 0.48 0.43 0.54
縦方向とは細長いストリップ1の長手方向と平行な方向をいい、横方向とは細長いストリップ1の長手方向と直交する方向をいう。
【0027】
以上の結果から、乾燥状態及び湿潤状態のいずれの状態においても、試料Cである本発明に係る敷きマットMのすべり抵抗値が、他の試料A、Bに比較して高いことがわかる。これは、本発明に係る敷きマットMに滑り止め面7を成形したからにほかならない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る敷きマットの表から見た一部の斜視図。
【図2】同裏から見た一部の斜視図。
【図3】同一部の拡大断面図。
【図4】同製造工程の概略説明図。
【符号の説明】
【0029】
5 縦孔
6 窪み
7 滑り止め面
M 敷きマット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面で開口した複数の縦孔を有する非発泡樹脂製の敷きマットであって、前記敷きマットの表面に所定粒度の砥粒を型押しすることにより滑り止め面を成形したことを特徴とする敷きマット。
【請求項2】
前記砥粒の粒度は♯40である請求項1記載の敷きマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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